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特開2024-179787生産計画装置、生産計画方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179787
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】生産計画装置、生産計画方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20241219BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241219BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20241219BHJP
【FI】
G06Q10/04
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098922
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】中野 隆宏
【テーマコード(参考)】
3C100
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA16
3C100AA36
3C100BB05
3C100BB17
3C100BB36
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC04
5L049CC11
5L050CC04
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】部品の調達リスクに合わせて、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案することができる。
【解決手段】 部品の調達実績等に基づいて調達リスクの時系列変化を予測する調達リスク予測モデルと、作業実績に基づいて作業者の熟練度の時系列変化を予測する熟練度予測モデルを生成する予測モデル生成部と、調達リスク予測モデルおよび熟練度予測モデルを用いて、調達リスクの高まる時期と熟練度が低下する時期とが重なる重複時期を特定し、当該重なる期間のある部品を登録した内作切替案を生成する内作切替案生成部と、調達リスク予測モデルおよび熟練度予測モデルを用いて、作業者の熟練度に応じた生産効率および調達リスクが最適化される内作切替時期と、作業者への作業割付の組み合わせとを算出し、当該内作切替時期および作業割付に基づく生産計画を立案する生産計画生成部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の調達実績および取引市場状況に基づいて当該部品の調達リスクの時系列変化を予測する調達リスク予測モデル、および、作業者の作業実績に基づいて当該作業者の熟練度の時系列変化を予測する熟練度予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記調達リスクの高まる時期と、前記熟練度が低下する時期と、が重なる重複時期を特定し、当該重なる期間のある前記部品を登録した内作切替案を生成する内作切替案生成部と、
前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記作業者の熟練度に応じた生産効率、および、前記調達リスクが最適化される内作切替時期と、前記作業者への作業割付の組み合わせと、を算出し、当該内作切替時期および作業割付に基づく生産計画を立案する生産計画生成部と、を有する
ことを特徴とする生産計画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生産計画装置であって、
前記調達リスクには、
納期、価格、部品合格率、リードタイム、取引候補数および供給数に関する指標があり、
前記内作切替案生成部は、前記指標のうち、少なくともいずれか1以上の指標を用いて前記調達リスクの高まる時期を特定する
ことを特徴とする生産計画装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生産計画装置であって、
前記熟練度には、
作業時間および作業合格率に関する指標があり、
前記内作切替案生成部は、前記指標のうち、少なくともいずれか1以上の指標を用いて前記熟練度が低下する時期を特定する
ことを特徴とする生産計画装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生産計画装置であって、
前記生産計画生成部は、
前記生産効率および前記調達リスクが最適化されるように、現在から前記重複時期までの間に前記内作切替時期を設定する
ことを特徴とする生産計画装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生産計画装置であって、
算出された前記内作切替時期を含む前記内作切替案と、当該内作切替案に基づき生成された生産計画と、を含む画面情報を出力する出力部をさらに備える
ことを特徴とする生産計画装置。
【請求項6】
請求項1に記載の生産計画装置であって、
前記部品を内作に切り替えない場合の前記調達リスクおよび前記作業者の熟練度の時系列の予測結果と、算出した前記内作切替時期に前記部品を内作に切り替えた場合の前記調達リスクおよび前記作業者の熟練度の時系列の予測結果と、を含む画面情報を出力する出力部をさらに備える
ことを特徴とする生産計画装置。
【請求項7】
請求項1に記載の生産計画装置であって、
前記予測モデル生成部は、前記部品の製造先に対して支給する支給品の前記調達リスク予測モデルを生成し、
前記生産計画生成部は、前記部品および前記支給品の前記調達リスク予測モデルと、前記熟練度予測モデルと、を用いて、前記作業者の熟練度に応じた生産効率、および、前記調達リスクが最適化される前記内作切替時期と、前記作業者への作業割付の組み合わせと、を算出し、当該内作切替時期および作業割付に基づく生産計画を立案する
ことを特徴とする生産計画装置。
【請求項8】
生産計画装置が行う生産計画方法であって、
前記生産計画装置は、
部品の調達実績および取引市場状況に基づいて当該部品の調達リスクの時系列変化を予測する調達リスク予測モデル、および、作業者の作業実績に基づいて当該作業者の熟練度の時系列変化を予測する熟練度予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、
前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記調達リスクの高まる時期と、前記熟練度が低下する時期と、が重なる重複時期を特定し、当該重なる期間のある前記部品を登録した内作切替案を生成する内作切替案生成ステップと、
前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記作業者の熟練度に応じた生産効率、および、前記調達リスクが最適化される内作切替時期と、前記作業者への作業割付の組み合わせと、を算出し、当該内作切替時期および作業割付に基づく生産計画を立案する生産計画生成ステップと、を行う
ことを特徴とする生産計画方法。
【請求項9】
請求項8に記載の生産計画方法であって、
前記生産計画装置は、
前記生産計画生成ステップの実行により、
前記生産効率および前記調達リスクが最適化されるように、現在から前記重複時期までの間に前記内作切替時期を設定する
ことを特徴とする生産計画方法。
【請求項10】
コンピュータを生産計画装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
部品の調達実績および取引市場状況に基づいて当該部品の調達リスクの時系列変化を予測する調達リスク予測モデル、および、作業者の作業実績に基づいて当該作業者の熟練度の時系列変化を予測する熟練度予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記調達リスクの高まる時期と、前記熟練度が低下する時期と、が重なる重複時期を特定し、当該重なる期間のある前記部品を登録した内作切替案を生成する内作切替案生成部と、
前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記作業者の熟練度に応じた生産効率、および、前記調達リスクが最適化される内作切替時期と、前記作業者への作業割付の組み合わせと、を算出し、当該内作切替時期および作業割付に基づく生産計画を立案する生産計画生成部と、して機能させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムであって、
前記生産計画生成部が、
前記生産効率および前記調達リスクが最適化されるように、現在から前記重複時期までの間に前記内作切替時期を設定する、ように機能させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産計画装置、生産計画方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業では、例えば、地政学リスクによるサプライチェーンの断絶や納期遅延などの調達リスクがあり、当該リスクが発生した場合に自社製造の生産停止やスループットの低下を招く虞がある。このような調達リスクに対応するため、製造業では、外注部品の価格や納期などの調達実績情報を常に確認し、調達リスクが高まった際に、迅速に対策することが必要となる。
【0003】
外注部品の価格高騰や長納期化した場合の対策の一つとしては、取引市場に調達可能な候補先が多数ある場合は、他の外注先に切替る、という方法がある。一方で、候補先が少なかったり、品質に懸念がある取引先の場合には、自社で内作する必要が生じる。しかしながら、部品や作業の内容によっては、自社内の熟練度が低い場合、内作に切り替えることが困難になる。
【0004】
なお、特許文献1には、部品の内作と外注を判断する方法として、内作の作製予定数と外注の作製予定数を適切に算出する方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、「製品に用いられる汎用部品a及び特注部品bを管理する部品生産管理システムであって、(a)在庫数情報を記憶するための記憶部と、(b)製造設備情報を取得する製造設備情報取得部と、(c)受注関連情報を取得する受注関連情報取得部と、(d)合計コストCが最小値となるように、社内製造設備Aで作製される汎用部品aの作製予定数xp(A,a)、社内製造設備Aで作製される特注部品xp(A,b)、社外製造設備Bで作製される汎用部品aの作製予定数xp(B,a)、社外製造設備Bで作製される特注部品bの作製予定数xp(B,b)を算出して、生産計画を作製する作成部と、(e)更新分とを備える」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-66956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、部品の在庫数、部品を作製するための材料の在庫量、社内および社外の設備の稼働状況などを基に、内作と外注の作製予定数を算出し、在庫量を考慮した内作と外注の判断および生産計画の立案を行っている。
【0007】
しかしながら、同文献の技術は、作業者の熟練度を考慮していないため、部品の生産能力の変化を予測することが難しい。また、同文献の技術は、外注の価格や納期などの調達状況に影響を与える情報を考慮していないため、外注の作製予定数の将来の変化を予測することが難しい。このような理由から、同文献の技術では、外注部品の調達リスクが高まった際の対策が困難になる、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、部品の調達リスクに合わせて、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係る生産計画装置は、部品の調達実績および取引市場状況に基づいて当該部品の調達リスクの時系列変化を予測する調達リスク予測モデル、および、作業者の作業実績に基づいて当該作業者の熟練度の時系列変化を予測する熟練度予測モデルを生成する予測モデル生成部と、前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記調達リスクの高まる時期と、前記熟練度が低下する時期と、が重なる重複時期を特定し、当該重なる期間のある前記部品を登録した内作切替案を生成する内作切替案生成部と、前記調達リスク予測モデルおよび前記熟練度予測モデルを用いて、前記作業者の熟練度に応じた生産効率、および、前記調達リスクが最適化される内作切替時期と、前記作業者への作業割付の組み合わせと、を算出し、当該内作切替時期および作業割付に基づく生産計画を立案する生産計画生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品の調達リスクに合わせて、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】生産計画システムの概略構成の一例を示した図である。
図2】調達実績情報の一例を示した図である。
図3】取引市場情報の一例を示した図である。
図4】作業実績情報の一例を示した図である。
図5】調達リスクと調達特徴量との関係の一例を示したグラフ図である。
図6】熟練度と作業特徴量との関係の一例を示したグラフ図である。
図7】生産数量情報の一例を示した図である。
図8】製品情報の一例を示した図である。
図9】製品情報の入力画面の一例を示す図である。
図10】作業者情報の一例を示した図である。
図11】内作切替案情報の一例を示した図である。
図12】生産計画情報の一例を示した図である。
図13】生産計画生成処理の一例を示したフロー図である。
図14】内作切替案のイメージの一例を示した図である。
図15】生産計画立案処理の一例を示したフロー図である。
図16】出力画面の一例を示した図である。
図17】画面情報の一例を示した図である。
図18】外注部品に用いられる材料の調達および支給のイメージの一例を示した図である。
図19】第二実施形態に係る調達実績情報の一例を示した図である。
図20】生産計画装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
<第一実施形態>
本実施形態に係る生産計画装置は、生産計画を生成(立案)する装置であって、特に、部品の調達リスクと、作業者の熟練度と、を考慮して、所望の調達リスクおよび生産効率を満足するように内作切替時期および生産計画を最適化する。
【0014】
具体的には、生産計画装置は、部品の調達リスクの時系列変化を予測するための調達リスク予測モデルと、作業者の生産性に関する熟練度の時系列変化を予測するための熟練度予測モデルと、を用いて、調達リスクが高まる時期と熟練度が低下する時期とが重複する部品を、外注から内作に切り替える対象部品として特定する。
【0015】
また、生産計画装置は、所望の調達リスクおよび生産効率を満足するように、内作切替時期と、内作切替時期以降の作業割付の組み合わせを繰り返し計算(シミュレーション)することで、内作切替時期および生産計画を最適化する。
【0016】
このような生産計画装置によれば、部品の調達リスクに合わせて、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案することができる。
【0017】
<生産計画システム1000の概略構成>
図1は本実施形態に係る生産計画装置100を含む生産計画システム1000の概略構成の一例を示した図である。図示するように、生産計画システム1000は、生産計画装置100と、外部装置200と、を有し、これらの装置は、ネットワークNを介して通信可能に接続されている。なお、ネットワークNは、例えばインターネット等の公衆網やLAN(Local Area Network)あるいはWAN(Wide Area Network)などである。
【0018】
<生産計画装置100の詳細>
生産計画装置100は、生産計画を生成(立案)する装置である。また、生産計画装置100は、図示するように、処理部110と、記憶部120と、入力部140と、出力部150と、通信部160と、を有している。
【0019】
処理部110は、生産計画装置100で実行される各種の処理を行う機能部である。なお、処理部110は、各々の処理を実行する個別の機能部として、予測モデル生成部111と、内作切替案生成部112と、生産計画生成部113と、を有している。
【0020】
予測モデル生成部111は、情報モデルを生成する処理を行う機能部である。具体的には、予測モデル生成部111は、調達リスク予測モデルと、熟練度予測モデルと、を生成する。なお、これらの情報モデルの生成処理については後述する。
【0021】
内作切替案生成部112は、内作切替案を生成する処理を行う機能部である。具体的には、内作切替案生成部112は、調達リスク予測モデルと、熟練度予測モデルと、を用いて、調達リスクおよび作業者の熟練度の時系列変化を予測し、調達リスクおよび熟練度の両方が同時期(同じ年月)に所定の閾値を超える部品を特定する。また、内作切替案生成部112は、特定した部品を外注から内作に切り替える対象部品として特定し、当該部品を登録した内作切替案を生成する。また、内作切替案生成部112は、算出された内作切替時期を内作切替案情報に登録する。
【0022】
生産計画生成部113は、製品の生産計画を生成(立案)する機能部である。具体的には、生産計画生成部113は、内作切替時期を変更しながら所望の生産効率および調達リスクが達成されるように各作業者への作業割付の組み合わせを繰り返し計算することで、生産効率が最大かつ調達リスクが最小となる最適化された生産計画を立案する。
【0023】
次に、記憶部120について説明する。記憶部120は、生産計画装置100で実行される処理に用いられる各種の情報を記憶する機能部である。また、記憶部120は、生産計画装置100で生成された情報についても記憶する。
【0024】
具体的には、記憶部120は、調達実績情報121と、取引市場情報122と、作業実績情報123と、調達リスク予測モデル124と、熟練度予測モデル125と、生産数量情報126と、製品情報127と、作業者情報128と、内作切替案情報129と、生産計画情報130と、を記憶している。
【0025】
図2は、調達実績情報121の一例を示した図である。調達実績情報121には、過去に外注部品を調達した際の調達実績に関する情報が登録されている。具体的には、調達実績情報121は、製品番号121a、部品番号121b、発注日時121c、発注数121d、入荷日時121e、入荷数121f、合格数121gおよび価格121hが対応付けられたレコードを有している。
【0026】
なお、製品番号121a、部品番号121b、発注日時121c、発注数121d、入荷日時121e、入荷数121fおよび価格121hは各々、対応する外注部品を用いて製造した製品の番号、その部品(外注部品)、外注した発注日時、発注した数量、入荷した日時、入荷した数量および発注した部品の価格を示す情報である。また、合格数121gは、入荷した部品の中で、不良の無い部品数すなわち歩留まりを示す情報である。
【0027】
図3は、取引市場情報122の一例を示した図である。取引市場情報122には、電子取引市場などで公開されている調達可能な部品に関する情報が登録されている。具体的には、取引市場情報122は、部品番号122a、取引先122b、情報取得日時122c、取引価格122d、標準納期122eおよび取引数122fが対応付けられたレコードを有している。
【0028】
なお、部品番号122a、取引先122b、情報取得日時122c、取引価格122d、標準納期122eおよび取引数122fは各々、調達可能な部品の番号、取引先、情報の取得日時、取引の価格、標準的な納期および取引可能な数量を示す情報である。
【0029】
このような調達実績情報121および取引市場情報122は、各部品の調達リスクを予測する調達リスク予測モデル124の生成に用いられる。
【0030】
図4は、作業実績情報123の一例を示した図である。作業実績情報123には、製品の製造に関する作業実績が登録されている。具体的には、作業実績情報123は、製品番号123a、部品番号123b、工程番号123c、作業種類123d、作業者番号123e、作業開始日時123f、作業終了日時123g、投入数123h、合格数123iおよび作業特徴量123jが対応付けられたレコードを有している。
【0031】
なお、製品番号123a、部品番号123b、工程番号123c、作業種類123d、作業者番号123e、作業開始日時123f、作業終了日時123g、投入数123hおよび合格数123iは各々、製造した製品の番号、製品に用いた部品の番号、工程の番号、作業の種類、作業者の番号、作業の開始および終了日時、製造した製品の数および歩留まりを示す情報である。また、作業特徴量123jは、製品に用いた部品の長さ、質量および穴径などを示す情報であって、作業時間や作業合格率などの生産性に影響を与える情報である。
【0032】
このような作業実績情報123は、各作業者の熟練度を予測する熟練度予測モデル125の生成に用いられる。
【0033】
次に調達リスク予測モデル124について説明する。調達リスク予測モデル124は、調達実績や取引市場状況に応じて、調達リスクがどのように変化するかを予測するために用いられる情報モデルである。具体的には、調達リスク予測モデル124は、外注部品の調達状況(例えば、発注状況など)や、取引市場の状況(例えば、取引価格や取引数など)の特徴を示す調達特徴量に応じた調達リスクを出力する。
【0034】
より具体的には、調達リスク予測モデル124は、調達実績情報121および取引市場情報122を入力として、例えば、納期超過量(要求納期に対する超過量)、価格超過量(要求価格に対する超過量)および部品合格率(歩留まり)といった所定の指標により表現される調達リスクを出力する。
【0035】
なお、調達リスクの変化とその度合は部品ごとに異なるため、調達リスク予測モデル124は、部品ごとに生成されて記憶部120に格納されている。
【0036】
図5は、調達リスクと調達特徴量との関係の一例を示したグラフ図である。図示する例は、ある部品(部品番号:A04)の調達特徴量に対する納期超過量(調達リスク)について、時間t1~tnまでの変化を時系列で示している。なお、横軸は、調達した時の発注条件や取引市場状況などの特徴を示す多次元特徴量(パラメータ)を、次元削減により2次元の特徴量として表した調達特徴量を示している。また、縦軸は、調達リスクであって、図示する例では、要求納期に対する超過量を示している。
【0037】
なお、調達リスクを示す指標は、前述の納期超過量、価格超過量および部品合格率に限定されるものではない。例えば、要求されるリードタイム、取引候補数あるいは供給数(取引数)に対する超過量が調達リスクを示す指標として用いられても良い。また、これら全ての指標に対応する調達リスクが用いられる必要はなく、後述の処理においては、これらの指標のうち、少なくともいずれか1つ以上の指標が用いられれば良い。
【0038】
このように、調達リスク予測モデル124は、様々な調達特徴量に対応する時々の調達リスクを出力することができる。
【0039】
次に、熟練度予測モデル125について説明する。熟練度予測モデル125は、作業時間や作業合格率などの作業者の生産性に関する熟練度がどのように変化するかを予測するために用いられる情報モデルである。具体的には、熟練度予測モデル125は、作業実績の状況(例えば、作業で用いた部品や作業工程の特徴など)を作業特徴量とした場合の各々の作業特徴量に対応する熟練度を出力する。
【0040】
より具体的には、熟練度予測モデル125は、作業実績情報123を入力として、例えば、作業時間や作業合格率(歩留まり)といった所定の指標により表現される熟練度を出力する。なお、これら全ての指標に対応する熟練度が用いられる必要はなく、後述の処理においては、これらの指標のうち、少なくともいずれか1つ以上の指標が用いられれば良い。
【0041】
なお、熟練度の変化とその度合は作業者ごとに異なるため、熟練度予測モデル125は、作業者ごとに生成されて記憶部120に格納されている。
【0042】
図6は、熟練度と作業特徴量との関係の一例を示したグラフ図である。特に、図示する例は、ある作業者の作業特徴量に対する作業時間について、時間t1~tnまでの変化を時系列で示している。
【0043】
なお、横軸は、作業者が作業を行った部品や作業工程などの特徴を示す多次元特徴量(パラメータ)を次元削減により、2次元の特徴量として表した作業特徴量を示している。また、縦軸は、作業の熟練度であって、図示する例では、作業時間を示している。
【0044】
このように、熟練度予測モデル125は、様々な作業特徴量に対応する時々の熟練度を出力することができる。
【0045】
図7は、生産数量情報126の一例を示した図である。生産数量情報126には、今後生産する各製品の生産予定年月と数量が登録されている。具体的には、生産数量情報126は、製品番号126a、生産年月126bおよび数量126cが対応付けられたレコードを有している。
【0046】
なお、製品番号126a、生産年月126bおよび数量126cは各々、今後生産される製品の識別番号、生産の予定年月および生産数量を示す情報である。
【0047】
図8は、製品情報127の一例を示した図である。製品情報127は、製品を構成する部品に関する情報が登録されている。具体的には、製品情報127は、製品番号127a、部品ID127b、部品番号127c、部品名127dおよび手配種類127eが対応付けられたレコードを有している。
【0048】
なお、製品番号127a、部品ID127b、部品番号127c、部品名127dおよび手配種類127eは各々、製品の識別番号、部品の識別ID、部品の識別番号、部品の名称および手配の種類すなわち各部品を自社内で製造する内作部品か、あるいは外部の企業に製造委託する外注部品かを示す情報である。
【0049】
図9は、製品情報127の入力画面の一例を示す図である。「ファイル読込」ボタンは、製品情報127の読込み指示を入力するボタンである。当該ボタンが押下されると、製品情報127のファイル選択画面が表示され、指定したファイルが読込まれた結果が本画面に表示される。「製品」欄には、読み込んだファイルに該当する製品情報127の製品番号が表示される。「部品構成」の欄には、製品を構成する全部品の部品番号、部品名、手配種類が一覧で表示される。「製品イメージ」の欄には、製品または部品のイメージ画像が表示される。例えば、各部品に3D-CADなどの形状を表示するファイル情報が存在する場合、各部品の形状ファイルを用いて製品の形状状態が表示される。「登録ボタン」は、部品の一覧や製品の形状状態を確認したのち、ユーザが製品情報127として登録する際にその指示を入力するボタンである。登録ボタンが押下されると、製品情報127が記憶部120の製品情報127に格納される。
【0050】
図10は、作業者情報128の一例を示した図である。作業者情報128は、製品を製造する際の作業者に関する情報である。具体的には、作業者情報128は、作業者番号128aおよび作業予定日128bが対応付けられたレコードを有している。
【0051】
なお、作業者番号128aおよび作業予定日128bは各々、作業者を特定する番号および当該作業者が作業可能な予定日を示す情報である。
【0052】
図11は、内作切替案情報129の一例を示した図である。内作切替案情報129は、内作に切り替える対象部品に関する情報が登録されている。具体的には、内作切替案情報129には、製品情報127の手配種類が外注である部品について、調達リスクおよび作業者の熟練度の変化に伴って、今後、調達および内作が困難になる可能性のある対象部品および当該対象部品が使用されている対象製品と、内作の切替時期とが登録されている。より具体的には、内作切替案情報129は、製品番号129a、部品番号129bおよび内作切替時期129cが対応付けられたレコードを有している。
【0053】
なお、製品番号129a、部品番号129bおよび内作切替時期129cは各々、内作に切り替える対象部品が搭載(使用)される製品(対象製品)の識別番号、対象部品の識別番号および内作に切り替える時期を示す情報である。
【0054】
このような内作切替案情報129は、後述の内作切替案の生成処理および生産計画の立案処理で生成および更新される。
【0055】
図12は、生産計画情報130の一例を示した図である。生産計画情報130は、今後生産する製品の計画全般に関する情報が登録されている。具体的には、生産計画情報130は、製品番号130a、生産月130b、数量130c、部品番号130d、工程番号130eおよび作業者番号130fが対応付けられたレコードを有している。
【0056】
なお、製品番号130a、生産月130b、数量130c、部品番号130d、工程番号130eおよび作業者番号130fは各々、製品の識別番号、製品を生産する年月、生産される製品の数量、部品の識別番号、生産における各工程の識別番号および作業者の識別番号を示す情報である。
【0057】
このような生産計画情報130は、後述の生産計画生成処理により生成される。
【0058】
以上、記憶部120について説明した。
【0059】
図1に戻って説明する。入力部140は、生産計画装置100が備える入力装置を介して、生産計画装置100の使用者(オペレータ)からの指示や情報の入力を受け付ける機能部である。また、入力部140は、通信部160を介して、外部装置200からの指示や情報の入力を受け付ける。
【0060】
出力部150は、出力情報(表示情報を含む)を生成し、生産計画装置100あるいは外部装置200が備える出力装置(例えば、ディスプレイ)に表示情報を表示する機能部である。
【0061】
通信部160は、外部装置200との間で情報通信を行う機能部である。例えば、通信部160は、ネットワークNを介して、記憶部120内に格納されている各種の情報や、生産計画生成処理の実行指示などを外部装置200から受け付ける。また、例えば、通信部160は、生産計画装置100で生成された生産計画やその画面情報などを、ネットワークNを介して、外部装置200に送信(出力)する。
【0062】
以上、生産計画装置100の概略構成(機能ブロック)の一例について説明した。
【0063】
<生産計画生成処理の詳細>
次に、生産計画装置100で実行される生産計画生成処理について説明する。
【0064】
図13は、生産計画生成処理の一例を示したフロー図である。本処理は、例えば、入力部140を介して処理部110が生産計画装置100のオペレータから生産計画生成処理の実行指示を受け付けると開始される。
【0065】
処理が開始されると、予測モデル生成部111は、製品情報127の手配種類に「外注」が登録されている部品に関する情報を調達実績情報121および取引市場情報122から取得し、調達リスク予測モデル124を生成する(ステップS10)。また、記憶部120は、生成された調達リスク予測モデル124を記憶する。
【0066】
次に、予測モデル生成部111は、製品情報127の手配種類に「外注」が登録されている部品に関する情報を作業実績情報123から取得し、熟練度予測モデル125を生成する(ステップS20)。また、記憶部120は、生成された熟練度予測モデル125を記憶する。
【0067】
次に、内作切替案生成部112は、調達リスク予測モデル124と、熟練度予測モデル125とを記憶部120から取得し、内作切替案を生成する。また、記憶部120は、生成された内作切替案を記憶する(ステップS30)。
【0068】
次に、生産計画生成部113は、調達リスク予測モデル124と、熟練度予測モデル125と、生産数量情報126と、作業者情報128と、内作切替案情報129と、を記憶部120から取得し、生産計画を立案する(ステップS40)。また、記憶部120は、生成された生産計画を生産計画情報130に記憶する。また、出力部150は、生産計画情報130を記憶部120から取得し、ディスプレイに出力(表示)する。なお、出力部150は、例えば生産計画情報130など、生産計画装置100で生成された生産計画の表示情報(画面情報)を生成し、通信部160を介して、外部装置200に表示情報を出力(送信)しても良い。
【0069】
また、生産計画生成処理は、ステップS40の処理を行うと、本フローの処理を終了する。
【0070】
<調達リスク予測モデル124の生成処理の詳細>
調達リスク予測モデル124の生成処理(ステップS10)の詳細について説明する。
【0071】
まず、予測モデル生成部111は、手配種類に「外注」が登録されている部品を製品情報127から特定する。また、予測モデル生成部111は、特定した部品に関するレコードを調達実績情報121および取引市場情報122から各々、抽出する。
【0072】
また、予測モデル生成部111は、抽出した各部品に関する調達実績情報121および取引市場情報122を用いて、機械学習や統計解析など公知の手法により、各外注部品の調達リスクが時系列でどのように変化するかを予測するための調達リスク予測モデル124を生成する。
【0073】
なお、調達リスクの指標の一つである納期超過量は、例えば、調達実績情報121における発注日時121cと入荷日時121eとの差分を納期として用いる。また、調達リスクの指標の一つである部品合格率は、例えば、調達実績情報121の入荷数121fに対する合格数121gの割合を部品合格率として算出し、これを用いる。
【0074】
なお、調達リスク予測モデル124の生成手法は特に限定されるものではなく、多変量時系列データを入力とした深層学習(特に、LSTM:Long Short Term Memory)や、時間に関する情報も含めた説明変数を入力とし、目的変数(納期超過、価格超過、部品合格率)を予測する回帰手法などの公知技術が用いられれば良い。
【0075】
このように、予測モデル生成部111は、調達実績情報121および取引市場情報122を用いて、調達リスク予測モデル124を生成し、これを記憶部120に格納する。
【0076】
<熟練度予測モデル125の生成処理の詳細>
熟練度予測モデル125の生成処理(ステップS20)の詳細について説明する。
【0077】
まず、予測モデル生成部111は、手配種類に「外注」が登録されている部品を製品情報127から特定する。また、予測モデル生成部111は、特定した部品に関するレコードを作業実績情報123から抽出する。
【0078】
また、予測モデル生成部111は、抽出した各部品に関する作業実績情報123を用いて、機械学習や統計解析など公知の手法により、作業者の熟練度が時系列でどのように変化するかを予測するための熟練度予測モデル125を生成する。
【0079】
なお、熟練度の指標の一つである作業時間は、例えば、作業実績情報123の作業開始日時123fと作業終了日時123gとの差分を作業時間として用いる。また、熟練度の指標の一つである作業合格率は、例えば、作業実績情報123の投入数123hに対する合格数123iの割合を作業合格率として算出し、これを用いる。
【0080】
なお、熟練度予測モデル125の生成手法は特に限定されるものではなく、多変量時系列データを入力とした深層学習(特に、LSTM:Long Short Term Memory)や、時間に関する情報も含めた説明変数を入力とし、目的変数(作業時間、作業合格率)を予測する回帰手法などの公知技術が用いられれば良い。
【0081】
このように、予測モデル生成部111は、作業実績情報123を用いて、熟練度予測モデル125を生成し、これを記憶部120に格納する。
【0082】
<内作切替案の生成処理の詳細>
内作切替案の生成処理(ステップS30)の詳細について説明する。
【0083】
まず、内作切替案生成部112は、手配種類に「外注」が登録されている部品のレコードを製品情報127から特定する。また、内作切替案生成部112は、特定した部品について、調達実績情報121および取引市場情報122と、当該部品に対応する調達リスク予測モデル124と、を用いて、当該部品の時系列の調達リスクを算出する。具体的には、内作切替案生成部112は、特定した部品に関し、調達実績情報121および取引市場情報122の各項目に登録されている情報を調達リスク予測モデル124に入力し、各部品の時系列の調達リスクを示す情報の出力を得る。
【0084】
また、内作切替案生成部112は、手配種類に「外注」が登録されている部品のレコードを製品情報127から特定する。また、内作切替案生成部112は、特定した部品について、作業実績情報123と、各作業者の熟練度予測モデル125と、を用いて、各作業者の時系列の熟練度を算出する。具体的には、内作切替案生成部112は、特定した部品に関し、作業実績情報123の各項目に登録されている情報を熟練度予測モデル125に入力し、各作業者の時系列の熟練度を示す情報の出力を得る。
【0085】
また、内作切替案生成部112は、調達リスクの時系列の予測値が所定の閾値以上となる生産年月と、熟練度の時系列の予測値が所定の閾値未満となる生産年月と、を比較する。また、内作切替案生成部112は、両者に閾値を超える同一の生産年月が存在する場合、その部品(対象部品)の部品番号および当該部品を使用する製品(対象製品)の製品番号を登録した内作切替案情報129を生成する。
【0086】
図14は、内作切替案のイメージの一例を示した図である。図示するように、調達リスクが閾値を上回る時期(閾値以上の時期)と、作業者の熟練度が閾値を下回る時期(閾値未満の時期)と、の両方が重複する時期(斜線で示した部位)を有する部品は、調達リスクが閾値を超えたタイミングでは既に作業者の熟練度が低下しているため、内作に切り替えることが困難になる。
【0087】
そのため、生産計画生成部113は、後述の生産計画の生成処理において、現在から調達リスクおよび熟練度の両方が閾値を超える時期までの間の期間であって、調達リスクが最小かつ生産効率が最大となる、最適化された内作切替時期を反映した生産計画を立案する。すなわち、ステップS30の時点では、内作切替案情報129には、内作に切り替える必要のある対象部品が登録され、その内作切替時期については生産計画の立案時に特定され、内作切替案情報129に登録されることになる。
【0088】
<生産計画の立案処理の詳細>
図15は、生産計画立案処理の一例を示したフロー図である。処理が開始されると、生産計画生成部113は、内作切替案情報129に登録されている対象部品について、作業種類および作業特徴量を作業実績情報123から特定する(ステップS41)。
【0089】
次に、生産計画生成部113は、対象部品について、任意の内作切替時期を仮設定する(ステップS42)。具体的には、生産計画生成部113は、現在から調達リスクおよび熟練度の両方が閾値を超える時期までの間の期間であって、より遅い時期(例えば、閾値を超える時期が重複する月の前の月)を初期値とした任意の内作切替時期を仮設定する。
【0090】
次に、生産計画生成部113は、現状の生産ラインにおける所望の生産効率および調達リスクの閾値(例えば、所望の生産効率等の最小値)を設定する(ステップS43)。
【0091】
次に、生産計画生成部113は、仮設定した内作切替時期以降の各作業者への作業割付と、その際の製品の生産効率(スループット)と、を算出する(ステップS44)。なお、生産効率の指標は、例えば、単位時間あたりの製品生産数(完成数)や製品合格率を用いる。
【0092】
具体的には、生産計画生成部113は、作業者情報128に登録されている作業予定日を考慮して、作業者ごとに、任意の作業(例えば、対象部品を用いた製品の製造における各作業工程)を割り付ける。また、生産計画生成部113は、割り付けた作業の作業種類および作業特徴量を、作業者ごとに対応する熟練度予測モデル125に入力し、作業者ごとの作業時間と作業合格率の出力を得る。
【0093】
また、生産計画生成部113は、熟練度予測モデル125を介して取得した各作業者の作業時間および作業合格率を用いて、対象部品を用いて製造される製品の生産効率を算出する。なお、生産計画生成部113は、各作業者への作業割付の組み合わせを変更しながら生産効率を求めるシミュレーションを繰り返し実行する。
【0094】
また、生産計画生成部113は、仮設定した内作切替時期における作業割付の全組み合わせについて生産効率を求めた後、仮設定した内作切替時期を変更(例えば、現在よりに前倒しした時期に変更)し、その場合の生産効率を同様の方法で求める。
【0095】
また、生産計画生成部113は、このようにして仮設定する内作切替時期を順次、現在時点まで変更し、各時期における作業割付の各組み合わせに対応する生産効率を求める。また、生産計画生成部113は、各内作切替時期における各作業割付の生産効率を求めると、処理をステップS45に移行する。
【0096】
次に、生産計画生成部113は、調達リスクを算出する(ステップS45)。これは、対象部品に関する製品情報127の手配種類が外注から内作に変更となるため、生産計画生成部113は、対象部品が内作になった場合の調達リスクを算出し直す。
【0097】
具体的には、生産計画生成部113は、対象部品に対応する調達リスク予測モデル124を用いて、仮設定した内作切替時期以降の調達特徴量に対応する調達リスク(納期超過量など)を算出する。なお、対象部品は内作となるため、調達特徴量には、対象製品における対象部品の発注数を0(ゼロ)とし、生産数量情報126における各製品の生産数量に基づく各構成部品の発注数を計算して入力する。なお、このように対象部品の発注数を0(ゼロ)として入力するのは、対象部品が対象製品にのみ使われている場合である。例えば、対象部品が対象製品以外の他の製品にも使われている場合には、他の製品で使用される必要量から対象製品における対象部品の必要量を差し引いた(減少させた)発注数を調達特徴量に入力する。
【0098】
次に、生産計画生成部113は、生産数量を満足し、生産効率が最大化され、かつ、調達リスクが最小となる内作切替時期、作業割付およびその際の作業順序を特定する(ステップS46)。具体的には、生産計画生成部113は、生産数量情報126に登録されている生産数量を満足し、かつ、ステップS43で設定された閾値を超える生産効率および調達リスクとなる内作切替時期と、作業割付の組み合わせと、を特定する。
【0099】
また、生産計画生成部113は、特定した内作切替時期および作業割付の組み合わせの中から、生産効率が最大化され、かつ、調達リスクが最小の組み合わせを特定する。
【0100】
なお、内作切替案生成部112は、特定された内作切替時期を、対応する内作切替案情報129のレコードに登録する。
【0101】
次に、生産計画生成部113は、生産計画を立案する(ステップS47)。具体的には、生産計画生成部113は、ステップS46で特定した内作切替時期と、作業割付と、作業順序とを反映した生産計画を立案し、出力部150を介して、これをディスプレイに出力する。なお、立案された生産計画などの情報は、通信部160を介して、外部装置200に表示されても良い。
【0102】
図16は、内作切替案、および、生産計画を含む出力画面の一例を示した図である。図示するように、出力画面には、内作切替案である内作切替部品の製品番号、部品番号および内作切替時期が表示されている。また、出力画面には、生産効率および調達リスクが最適化された生産計画が表示されている。なお、図示する例は、部品番号「A04」を2023年10月から内作に切り替えることで、調達リスクに対して内作のための熟練度を確保しつつ、より高い生産効率となる生産計画を示している。
【0103】
なお、ディスプレイに表示される画面情報は生産計画に限られるものではなく、ユーザ指示に応じて、例えば、調達リスクおよび熟練度の予測結果が表示されても良い。
【0104】
図17は、調達リスクおよび熟練度の予測結果を示す画面情報の一例を示した図である。図示するように、当該画面には、内作切替を行わない場合の調達リスクおよび熟練度の予測結果と、内作切替を適切な時期に行った場合の調達リスクおよび熟練度の予測結果と、が比較可能に表示されている。
【0105】
以上、生産計画生成処理の詳細について説明した。
【0106】
このような生産計画装置100によれば、部品の調達リスクに合わせて、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案することができる。
【0107】
特に、生産計画装置は、調達リスクが高まる時期と、作業者の熟練度が低下する時期とが重複する時期のある部品を内作切替の対象部品とし、作業者の熟練度向上のための作業時間を考慮して、現在から当該重複時期までの間に内作切替時期を設定した生産計画を立案できる。さらに、生産計画装置は、内作切替時期について、生産効率が最大かつ調達リスクが最小となる内作切替時期を算出することができる。その結果、生産計画装置は、生産効率を最大限維持しつつ、作業者の習熟度向上を達成可能な内作切替案および生産計画を立案することができる。
【0108】
<第二実施形態>
第二実施形態では、外注部品の製造に必要な材料や子部品を取引先に支給し、支給した材料などを用いて製造された部品を調達する運用形態に適用可能な生産計画装置100について説明する。
【0109】
図18は、外注部品に用いられる材料の調達および支給のイメージの一例を示した図である。外注部品の調達方法は、取引先に仕様情報を提示し、仕様を満たす部品の製造に必要な材料や子部品を取引先(取引先A)自身が調達する場合と、仕様情報に加えて製造に必要な材料や子部品を取引先(取引先B)に支給する場合と、がある。
【0110】
なお、前者の場合は、第一実施形態に係る生産計画装置100により、部品の調達リスクに合わせて、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案することができる。
【0111】
一方で、後者の場合、外注部品の調達リスクは、自社が調達する材料や子部品の調達リスクと、取引先Bの製造に関わる調達リスクの両者が影響する。なお、取引先Bとの過去の調達実績情報121には、取引先Bの製造に関わる調達リスクの影響は含まれるが、当該情報には、材料と子部品の調達リスクの影響は含まれていない。
【0112】
そのため、本実施形態に係る生産計画装置100は、材料や子部品の調達リスクの影響についても考慮して、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案するものである。
【0113】
なお、以下では、第一実施形態と異なる構成および処理を中心に説明し、第一実施形態と同様の構成等については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0114】
図19は、本実施形態に係る調達実績情報121の一例を示した図である。図示するように、作業実績情報121は、図2に示した調達実績情報121の各項目に加えて、調達番号121aaおよび支給品121jjの項目を有している。これらの項目は、調達時に製造を請け負う取引先への手配と、材料や部品を調達する手配と、の両方が必要になるためであり、両者を関連付ける情報として設けている。
【0115】
なお、調達番号121aaは、部品に関する調達実績の識別情報である。また、支給品121jjは、対応する部品の調達において、材料や子部品の支給品がある場合、その調達番号121aaを指定するものである。なお、部品とその支給品とを紐付ける方法はこの限りではなく、例えば、在庫情報(図示せず)などを用いても良い。
【0116】
次に、本実施形態に係る生産計画装置100が実行する生産計画生成処理について説明する。
【0117】
生産計画装置100の予測モデル生成部111は、生産計画生成処理のステップS10において、各外注部品に関するレコードに加えて、支給品121jjに登録されている調達番号のレコードすなわち支給品に関するレコードを調達実績情報121および取引市場情報122から抽出する。また、予測モデル生成部111は、外注部品および支給品の各々に関する調達リスク予測モデル124を生成する。
【0118】
また、内作切替案生成部112は、ステップS30において、製品情報127の手配種類が「外注」になっている外注部品に加えて、外注部品に紐づく支給品についても内作切替案を生成する。具体的には、内作切替案生成部112は、調達リスクの時系列の予測値が所定の閾値以上となる生産年月と、熟練度の時系列の予測値が所定の閾値未満となる生産年月と、が同一の生産年月となる支給品を特定し、これを対象支給品として内作切替案に登録する。
【0119】
また、生産計画生成部113は、第一実施形態と同様に、ステップS40において、内作切替案情報129に登録されている部品すなわちステップS30で特定された外注部品、および、これに紐づく支給品に関する生産計画を立案する。具体的には、生産計画生成部113は、内作切替案に登録されている各対象部品および各支給品に関し、生産数量情報126に登録されている生産数量を満足し、かつ、ステップS43で設定された閾値を超える生産効率および調達リスクの内作切替時期、作業割付および作業順序の組み合わせを特定する。
【0120】
また、生産計画生成部113は、特定した組み合わせの中で、生産効率が最大かつ調達リスクが最小となる作業割付の組み合わせを特定し、その際の内作切替時期、作業割付および作業順序を反映した生産計画を立案する。なお、当該処理は、第一実施形態のステップS40と同様である。
【0121】
以上、第二実施形態に係る生産計画装置100について説明した。
【0122】
このような生産計画装置100によれば、製造委託の外注企業と、支給品の調達先が分かれている場合でも、支給品の調達リスクに合わせて、自社で内作するための作業者の習熟度を確保する内作切替案および生産計画を立案することができる。
【0123】
<生産計画装置100のハードウェア構成>
【0124】
図20は、生産計画装置100のハードウェア構成の一例を示した図である。図示するように、生産計画装置100は、入力装置310と、出力装置320と、処理装置330と、主記憶装置340と、補助記憶装置350と、通信装置360と、これらを電気的に相互接続するバス370と、を有している。
【0125】
入力装置310は、例えばタッチパネルやキーボードあるいはマウスなどの入力デバイスである。出力装置320は、液晶ディスプレイや有機ディスプレイなどの表示デバイスである。
【0126】
処理装置330は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。主記憶装置340は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリ装置である。
【0127】
補助記憶装置350は、デジタル情報を記憶可能ないわゆるハードディスク(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)あるいはフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。
【0128】
通信装置360は、ネットワークケーブルを介して有線通信を行う有線の通信装置、またはアンテナを介して無線通信を行う無線通信装置である。
【0129】
以上、生産計画装置100のハードウェア構成の一例について説明した。
【0130】
このような生産計画装置100の処理部110は、処理装置330に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置340あるいは補助記憶装置350に記憶され、プログラムの実行にあたって主記憶装置340上にロードされ、処理装置330により実行される。
【0131】
また、入力部140は、入力装置310により実現される。また、出力部150は、出力装置320により実現される。また、記憶部120は、主記憶装置340または補助記憶装置350あるいはこれらの組合せにより実現される。また、通信部160は、通信装置360により実現される。
【0132】
また、生産計画装置100の上記の各構成、機能、処理部110および処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記構成、機能は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD等の記憶装置またはICカード、SDカードおよびDVD等の記録媒体に置くことができる。
【0133】
また、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、同一の技術的思想の範囲内において様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0134】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0135】
100・・・生産計画装置、110・・・処理部、111・・・予測モデル生成部、112・・・内作切替案生成部、113・・・生産計画生成部、120・・・記憶部、121・・・調達実績情報、122・・・取引市場情報、123・・・作業実績情報、124・・・調達リスク予測モデル、125・・・熟練度予測モデル、126・・・生産数量情報、127・・・製品情報、128・・・作業者情報、129・・・内作切替案情報、130・・・生産計画情報、140・・・入力部、150・・・出力部、160・・・通信部、200・・・外部装置、310・・・入力装置、320・・・出力装置、330・・・処理装置、340・・・主記憶装置、350・・・補助記憶装置、360・・・通信装置、370・・・バス、N・・・ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20