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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179795
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ドアモジュール取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20241219BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60J5/04 Z
B60J1/17 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098931
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 直之
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩史
【テーマコード(参考)】
3D127
【Fターム(参考)】
3D127AA19
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127EE15
3D127EE29
3D127GG01
(57)【要約】
【課題】ドアモジュールを構成するカバー部材に小さい熱膨張係数(高い熱膨張性)および高い強度や剛性を求めたり、別の補強部品を追加することなく、ドアモジュールのドアパネルへの取り付けが比較的容易なドアモジュール取付構造を提供する。
【解決手段】レギュレータレール22には、上端部に室内側に向けて突出する状態でボルト36bが固定されており、そのボルト36bを乗物室外側からドアパネル12における開口部18aの上側に貫通形成されたパネル貫通孔62に挿通させた状態で、レギュレータレール22の上端をドアパネル12に固定するとともに、レギュレータレール22の下端部およびカバー部材20の下端部を、ドアパネル12の下端取付部70に対してその下端取付部70の乗物室内側に共締めする構造とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室内側に開口する開口部を有するドアパネルと、前記開口部に対して取り付けられるドアモジュールと、を含んで構成される乗物用ドアにおいて、前記ドアモジュールを前記ドアパネルに対して取り付けるためのドアモジュール取付構造であって、
前記ドアモジュールは、前記開口部を覆う主体となる板状のカバー部材と、ウインドウを昇降可能に保持するレギュレータレールと、を備え、
前記レギュレータレールは、前記カバー部材の乗物室外側に、上下方向に延びて上端部が前記カバー部材の上縁から上方に突出した状態で固定され、
前記レギュレータレールには、上端部に室内側に向けて突出する状態でボルトが固定されており、
前記ドアパネルは、前記開口部の上側に貫通形成されたパネル貫通孔と、前記開口部の下側に前記ドアモジュールの下端を取り付けるための下端取付部と、を有し、
前記ボルトを乗物室外側から前記パネル貫通孔に挿通させた状態で、前記レギュレータレールの上端が前記ドアパネルに固定されるとともに、前記レギュレータレールの下端部および前記カバー部材の下端部が前記下端取付部に対して該下端取付部の乗物室内側に共締めされているドアモジュール取付構造。
【請求項2】
前記ドアモジュールは、前記カバー部材の上端部と前記レギュレータレールとの間に乗物室内外方向における隙間がある状態とされており、
前記ドアパネルの前記開口部の上縁が前記隙間に入り込んだ状態で、前記ドアモジュールが前記ドアパネルに取り付けられている請求項1に記載のドアモジュール取付構造。
【請求項3】
前記カバー部材の上端部には、前記ドアパネルの前記上縁の下方において乗物室外側面から乗物室外側に向かって張り出した張出部が形成されている請求項2に記載のドアモジュール取付構造。
【請求項4】
前記張出部は、前記ボルトとの間の上下方向の距離が、前記パネル貫通孔から前記開口部の上縁までの上下方向の距離と等しくされている請求項3に記載のドアモジュール取付構造。
【請求項5】
前記レギュレータレールは、下端部に乗物室内外方向に貫通するレール貫通孔を有し、
前記カバー部材は、前記レール貫通孔と同軸的に貫通形成されたカバー貫通孔を有し、
乗物室内側から前記カバー貫通孔および前記レール貫通孔を挿通して、前記下端取付部との間で、前記レギュレータレールおよび前記カバー部材を共締めする下端締結具を備えている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドアモジュール取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアモジュールをドアパネルに取り付けるためのドアモジュール取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2には、レギュレータレール等の複数の機能部品が一体化されるドアモジュールが、ドアパネルの開口部に取り付けられることで構成される乗物用ドア(車両用ドア)が記載されている。下記特許文献1に記載のドアにおいては、レギュレータレール(ウインドーレギュレータ6)が、開口部を覆う主体となる板状のカバー部材(モジュールベース7)に対してのみ固定されている。一方、下記特許文献2に記載のドアにおいては、レギュレータレール(ガイドレール19)はカバー部材に対して固定されるだけでなく、レギュレータレールがカバー部材の上縁,下縁より延び出して、その延び出した上下の端部の各々において、ドアパネル(インナパネル2)に対しても固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-166726号公報
【特許文献2】特開2003-104052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のドアにおいて、ドアモジュールのドアパネルへの取り付けは、カバー部材をドアパネルに対して固定するのみであるため、その取り付け作業が比較的容易である。しかしながら、周囲の温度等によってレギュレータレールとドアパネルとの間でズレが生じないように、ドアモジュールのカバー部材は、熱膨張し難い材質で成形されることが望まれる。また、レギュレータ側から作用する力によって、ドアモジュールが変形や破損することのないよう、強度や剛性を高めたり、別の補強部品を追加したりする必要がある。したがって、カバー部材の重量が大きくなったり、コストが高くなったりするという問題が生じる。
【0005】
一方で、上記特許文献2に記載のドアは、レギュレータレールがドアパネルに締結されるため、上記特許文献1のような問題は生じない。しかしながら、上記特許文献2に記載のドアは、ドアパネルの開口部内にレギュレータレール全体を挿入する必要があるものの、レギュレータレールがカバー部材の上縁,下縁の両側から延び出しているため、カバー部材よりさらに小さな開口部内に挿入する作業の作業性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、ドアモジュールを構成するカバー部材に小さい熱膨張係数(高い熱膨張性)および高い強度や剛性を求めたり、別の補強部品を追加することなく、ドアモジュールのドアパネルへの取り付けが比較的容易なドアモジュール取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願に開示されるドアモジュール取付構造は、下記の構成とされている。
(1)乗物室内側に開口する開口部を有するドアパネルと、前記開口部に対して取り付けられるドアモジュールと、を含んで構成される乗物用ドアにおいて、前記ドアモジュールを前記ドアパネルに対して取り付けるためのドアモジュール取付構造であって、
前記ドアモジュールは、前記開口部を覆う主体となる板状のカバー部材と、ウインドウを昇降可能に保持するレギュレータレールと、を備え、
前記レギュレータレールは、前記カバー部材の乗物室外側に、上下方向に延びて上端部が前記カバー部材の上縁から上方に突出した状態で固定され、
前記レギュレータレールには、上端部に室内側に向けて突出する状態でボルトが固定されており、
前記ドアパネルは、前記開口部の上側に貫通形成されたパネル貫通孔と、前記開口部の下側に前記ドアモジュールの下端を取り付けるための下端取付部と、を有し、
前記ボルトを乗物室外側から前記パネル貫通孔に挿通させた状態で、前記レギュレータレールの上端が前記ドアパネルに固定されるとともに、前記レギュレータレールの下端部および前記カバー部材の下端部が前記下端取付部に対して該下端取付部の乗物室内側に共締めされているドアモジュール取付構造。
【0008】
本願に開示のドアモジュール取付構造において、ドアモジュールは、レギュレータレールの上端のみがカバー部材の上側に延び出した構成とされている。そのため、ドアモジュールをドアパネルに取り付ける際には、レギュレータレールの上端を、ドアパネルの開口部内に挿入して、ドアパネルの乗物室外側からボルトをパネル貫通孔に通す必要がある。一方で、ドアモジュールの下端部は、ドアパネルの下端取付部に対して、その下端取付部の乗物室内側に、レギュレータレールの下端部およびカバー部材の下端部の両者を締結する構成とされている。つまり、本願に開示のドアモジュール取付構造を採用した場合、ドアモジュールをドアパネルに取り付ける作業は、ドアモジュールの上側をドアパネル側に傾斜させた状態で、レギュレータレールの上端をドアパネルの開口部内に挿入し、傾斜を戻すように回転させつつ、ボルトをパネル貫通孔に挿し込むことで、下端側は、ドアパネルの下端取付部の乗物室内側に、レギュレータレールの下端部とカバー部材の下端部とを合わせることができる。したがって、下端側は、乗物室内側からスクリューボルトや熱カシメ等によって、容易に締結することができる。
【0009】
また、本願に開示のドアモジュール取付構造は、レギュレータレールの上端および下端の両者をドアパネルに対して固定することができるため、カバー部材の材料に、強化繊維樹脂等の比較的熱膨張係数が小さく、強度や剛性の高い材料を用いる必要がない。強化繊維樹脂は、添加した繊維分、比重やコストが高くなる。したがって、本願に開示のドアモジュール構造によれば、乗物用ドアの軽量化を図ることができるとともに、コストを抑えることができる。なお、本願に開示のドアモジュール構造は、シングルレールタイプのものだけでなく、ダブルレールタイプのものに採用することもでできる。
【0010】
また、上記構成のドアモジュール取付構造において、以下に示す種々の態様とすることが可能である。なお、本発明は以下の態様に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0011】
(2)前記ドアモジュールは、前記カバー部材の上端部と前記レギュレータレールとの間に乗物室内外方向における隙間がある状態とされており、
前記ドアパネルの前記開口部の上縁が前記隙間に入り込んだ状態で、前記ドアモジュールが前記ドアパネルに取り付けられている(1)項に記載のドアモジュール取付構造。
【0012】
この構成に記載のドアモジュール取付構造は、開口部の上縁を乗物室内側から確実に覆うことができる。例えば、カバー部材の上縁が開口部の上縁より下方に位置する場合、それらの隙間から、雨水等がドアの乗物室内側に入り込む虞があり、その対策を行う必要があるが、この構成のドアモジュール取付構造によれば、開口部の上縁において、そのような対策が必要ない。
【0013】
(3)前記カバー部材の上端部には、前記ドアパネルの前記上縁の下方において乗物室外側面から乗物室外側に向かって張り出した張出部が形成されている(2)項に記載のドアモジュール取付構造。
【0014】
この構成のドアモジュール取付構造は、ドアモジュールをドアパネルに取り付ける際に、ドアパネルの開口部の上縁をカバー部材とレギュレータレールとの間に入り込ませるようにして持ち上げると、張出部が開口部の上縁に当接するため、その当接した部分を軸として、ドアモジュールを回転させることができるため、ドアモジュールのドアパネルへの取り付け作業の容易化を図ることができる。
【0015】
(4)前記張出部は、前記ボルトとの間の上下方向の距離が、前記パネル貫通孔から前記開口部の上縁までの上下方向の距離と等しくされている(3)項に記載のドアモジュール取付構造。
【0016】
この構成のドアモジュール取付構造は、張出部を開口部の上縁に当接させた状態とすると、その当接させた箇所から、ボルトまでの高さとパネル貫通孔までの距離が等しくなるため、その当接させた状態でドアモジュールを回転させれば、ボルトをパネル貫通孔に容易に挿し込むことができ、ドアモジュールのドアパネルへの取り付け作業がより容易になる。
【0017】
(5)前記レギュレータレールは、下端部に乗物室内外方向に貫通するレール貫通孔を有し、
前記カバー部材は、前記レール貫通孔と同軸的に貫通形成されたカバー貫通孔を有し、
乗物室内側から前記カバー貫通孔および前記レール貫通孔を挿通して、前記下端取付部との間で、前記レギュレータレールおよび前記カバー部材を共締めする下端締結具を備えている(1)項から(4)項のいずれか一項に記載のドアモジュール取付構造。
【0018】
この構成のドアモジュール取付構造は、ドアモジュールのレギュレータレール下端部側の締結構造が具体化されている。例えば、乗物室内側からスクリューボルトにより締結する構成とすることができ、ドアパネルの下端取付部に対して、レギュレータレールおよびカバー部材を容易に共締めすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドアモジュールを構成するカバー部材に小さい熱膨張係数および高い強度や剛性を求めたり、別の補強部品を追加することなく、ドアモジュールのドアパネルへの取り付けが比較的容易なドアモジュール取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態のサイドドアを乗物室内側からの視点において示す正面図
図2】実施形態1のサイドドアの分解図
図3】ドアモジュールを乗物室外側からの視点において示す斜視図
図4】ドアモジュールの上端側の固定部を示す断面図(図1におけるA-A断面)
図5】ドアモジュールの下端側の固定部を示す断面図(図1におけるB-B断面)
図6】ドアモジュールをドアパネルに取り付ける過程を示す側面図
図7】ドアモジュールをドアパネルに取り付ける過程を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のドアモジュール取付構造は、車両用(乗物用)のサイドドア10に採用されており、本実施形態のサイドドア10について、図1から図7を参照しつつ詳しく説明する。本実施形態のサイドドア10は、フロントドアであり、図1および図2に示すように、鋼板製のドアパネル12と、ドアモジュール14と、を備えている。なお、ドアモジュール14の車室(乗物室)内側は、ドアトリムによって覆われる。ドアパネル12は、アウタパネル16と、中央に開口部18aが形成されて概して枠状をなすインナパネル18と、からなる。
【0022】
ドアモジュール14は、複数の機能部品を一体化させたものであり、概して板状で、インナパネル18の開口部18aを覆うカバー部材であるモジュールベース20を主体とし、そのモジュールベース20に対して複数の機能部品が取り付けられている。複数の機能部品としては、ウィンドウ(窓ガラス)を昇降させるためのレギュレータレール22、スピーカー24、側突時の衝撃を吸収するための衝撃吸収部材26等である。なお、スピーカー24と衝撃吸収部材26については、図1において取付位置のみ示している。
【0023】
モジュールベース20は、樹脂製で射出成形によって成形された概して板状の部材である。モジュールベース20は、外周縁に沿って複数の被締結部20aが設けられておりそれら被締結部20aが、インナパネル18の開口部18aの周辺に形成された固定部18bに対して、ボルトによって締結されることで、モジュールベース20はインナパネル18に固定され、開口部18aを塞ぐようになっている。
【0024】
モジュールベース20は、上述した機能部品が固定された状態で、インナパネル18に対して固定できるようになっており、本実施形態のサイドドア10は、従来のサービスホールからドアパネル内にアクセスして、複数の機能部品を順次取り付ける構成に比較して、作業性の良い構成となっている。
【0025】
本実施形態の特徴は、モジュールベース20と、それに取り付けるレギュレータレール22と、インナパネル18との関係であるため、それらを中心に説明する。本実施形態の車両が搭載するレギュレータは、図3に示すように、シングルレールタイプのものであり、レギュレータレール22は、モジュールベース20に対し、モジュールベース20の室外側で、かつ、前後方向における中央付近に、上下方向に延びる姿勢で固定される。レギュレータレール22は、レール本体30と、レール本体30の上端に固定された上側ブラケット32と、レール本体30の下端に固定された下側ブラケット34と、からなり、それら上側ブラケット32と下側ブラケット34とにおいて、モジュールベース20に固定されている。
【0026】
上側ブラケット32には、図3に示すように、4つの貫通孔32a,32bが設けられている。そして、図4に示すように、それらのうち下側の2つの貫通孔32aと、モジュールベース20に形成された貫通孔20bを挿通して、室外側からボルト36aが挿入され、室内側からナット(図示省略)で締結される。また、下側ブラケット34は、図5に示すように、レール本体30に形成された貫通孔30a,下側ブラケット34に形成された貫通孔34a、および、モジュールベース20に形成された貫通孔20cを利用して、リベット38によって締結されている。
【0027】
レギュレータレール22は、図2および図3に示すように、モジュールベース20に固定された状態において、上端がモジュールベース20の上縁より上方に突出した状態となっている。詳しく言えば、レール本体30の上端と、上側ブラケット32における上側の貫通孔32bが形成された上側部分が、モジュールベース20の上縁より上方に突出した状態となっている。一方、レギュレータレール22の下端は、モジュールベース20の下縁から突出することはなく、モジュールベース20の下縁より上側に収まった状態となっている。
【0028】
そして、ドアモジュール14をインナパネル18に取り付ける際には、レギュレータレール22の上端を、ドアパネル12内、つまり、インナパネル18の室外側に挿入する必要がある。本実施形態のサイドドア10は、そのような構成であっても、比較的簡便に取り付けることが可能とされている。以下に、ドアモジュール14のドアパネル12への取付方法について、図4図6図7を参照しつつ、詳しく説明する。
【0029】
まず、取り付け作業者は、レギュレータレール22等が固定されたドアモジュール14を、図6に示すように、上端側を室外側に傾斜させた状態で、そのレギュレータレール22の上端のみを、ドアモジュール14の開口部18aから挿入する。そして、ドアモジュール14を傾斜状態のまま、上方に持ち上げる。なお、ドアモジュール14は、モジュールベース20の上端部とレギュレータレール22(詳しく言えば、上側ブラケット32)との間に、車室内外方向における隙間がある状態とされている。
【0030】
モジュールベース20は、上縁部40が、自身の中央側の部分である本体部42に対して、室内側にオフセットした形状とされており、それら上縁部40と本体部42との間に段差部44が形成されている。一方、上側ブラケット32は、上側の貫通孔32bが形成された上側の部分50と、下側の貫通孔32aが形成された下側の部分52との間に室側側に凹んだ凹所54が形成されている。そのような構成から、ドアモジュール14は、モジュールベース20の上縁部40と、上側ブラケット32の凹所54の間に、車室内外方向における隙間Sが形成されている。また、この隙間Sは、上方に開口している。
【0031】
上述したモジュールベース20の段差部44には、図3に示すように、前後方向に間隔をおいて、4つのリブ(張出部)60が設けられている。これらリブ60は、図4図6図7に示すように、車室内外方向に延びるものとされ、一端が上縁部40の室外側面に接続され、他端が段差部44の室外側の端部まで、換言すれば、本体部42の室外側面42aまで延びている。
【0032】
ドアモジュール14を持ち上げる際、図6に示すように、インナパネル18における開口部18aの上縁18a1を、隙間Sに入り込ませ、その上縁18a1に上記リブ60を当接させるようにする。ドアモジュール14を持ち上げながら、開口部18aの上縁18a1にリブ60を当接させると、図7に示すように、モジュールベース20の上縁部40が、インナパネル18の室内側面に当接し、傾斜状態にあったドアモジュール14は、自然と起こされるように、回転させられることになる。換言すれば、ドアモジュール14は、上側部分が、リブ60と上縁18a1との当接部を中心に、室内側に向かって回転させられるのである。
【0033】
なお、インナパネル18には、上側ブラケット32の上側の貫通孔32bに挿入されたボルト36bを挿通させるためのパネル貫通孔62が形成されている。そして、図6に示すように、リブ60の上面は、ボルト36bとの間の上下方向の距離L1が、パネル貫通孔62から開口部18aの上縁18a1までの上下方向の距離L2と等しくされている。つまり、開口部18aの上縁18a1にリブ60を当接させると、ボルト36bがパネル貫通孔62と同じ高さ位置とされるため、前後方向の位置のみを合わせることで、ボルト36bのパネル貫通孔62に対する室外側からの挿入を、容易に行うことができる。そして、室内側からナット(図示省略)で締結することで、レギュレータレール22をインナパネル18に対して、固定することができる。
【0034】
次いで、レギュレータレール22の下端の取付構造について説明する。図2に示すように、インナパネル18の開口部18aの下縁は、内側(上方側)に向かって膨らんだ山型形状とされており、その部分が、ドアモジュール14の下端を、レギュレータレール22の下端とともに取り付けるための下端取付部70とされている。上述したように、レギュレータレール22の上端において、ボルト36bをパネル貫通孔62に挿入すると、ドアモジュール14の下端、詳しく言えば、レギュレータレール22の下側ブラケット34が、下端取付部70に対して、室内側から重なることになる。下側ブラケット34には、図3に示すように、位置決め用突起72が設けられており、その位置決め用突起72を、下端取付部70に形成された位置決め貫通孔70aに挿入することで、インナパネル18に対するドアモジュール14の位置が定まることになる。さらに、その位置決め用突起72に隣接して、ドアモジュール14をインナパネル18に固定する部分が設けられる。
【0035】
ドアモジュール14には、下側ブラケット34に貫通形成されたレール挿通孔(レール貫通孔)34b、および、モジュールベース20に貫通形成されたベース挿通孔(カバー貫通孔)20dが、同軸的に設けられている。一方、下端取付部70には、位置決め貫通孔70aに隣接して、スクリューボルト74を挿し込むためのインサート部材76(図5参照)が固定されている。そして、ドアモジュール14の下端を下端取付部70に対して、室内側から重ねた後、室内側からスクリューボルト(下端締結具)74を、ベース挿通孔20dおよびレール挿通孔34bを挿通させて、インサート部材76にねじ込むこんで締結するようになっている。つまり、スクリューボルト74は、下端取付部70との間で、レギュレータレール22およびモジュールベース20を、共締めすることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態のサイドドア10は、レギュレータレール22の上端および下端の両者をドアパネル12(インナパネル18)に対して固定することができるため、カバー部材であるモジュールベース20の材料に、ガラス強化繊維樹脂等の比較的剛性の高い材料を用いる必要がなく、軽量化が図られるとともに、コストを抑えることができる。また、上述したように、レギュレータレール22がモジュールベース20から突出する構成のドアモジュール14であっても、ドアパネル12に対して、比較的容易に取り付けることができるようになっている。
【0037】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0038】
上記実施形態において、レギュレータレール22は、シングルレールタイプのレギュレータが備えるものであったが、ダブルレールタイプのレギュレータが備える2本のレギュレータレールをモジュールベース(カバー部材)に固定する構成のものに、本発明を採用することも可能である。
【0039】
上記実施形態において、張出部は、段差部44の上に設けたリブ60によって構成されていたが、それに限定されない。張出部は、開口部18aの上縁18a1の下方においてカバー部材の車室外側面から車室外側に向かって張り出したものであればよい。例えば、上縁部40の室側側面から室外側に向かって立設し、車両前後方向に延びる立壁を設け、その立壁の上面に、開口部18aの上縁18a1が当接するような構成としてもよい。
【0040】
本発明のドアモジュール取付構造は、レギュレータレールの上端に室内側に突出する状態でボルトを固定する構成であることを除いて、ドアモジュールをドアパネルに対して固定する方法および固定具は、特に限定されない。また、レギュレータレールとモジュールベースを固定する方法および固定具も、同様に、特に限定されない。
【0041】
上記実施形態では、自動車用のサイドドアを例示したが、本発明はそれに限らず、その他車両、鉄道、飛行機、船舶等のドアにおいて昇降可能なウインドウを設けるものに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…サイドドア〔乗物用ドア〕、12…ドアパネル、14…ドアモジュール、16…アウタパネル、18…インナパネル、18a…開口部、18a1…上縁、20…モジュールベース〔カバー部材〕、20d…ベース挿通孔〔カバー貫通孔〕、22…レギュレータレール、34b…レール挿通孔〔レール貫通孔〕、36b…ボルト、S…隙間、60…リブ〔張出部〕、62…パネル貫通孔、70…下端取付部、74…スクリューボルト〔下端締結具〕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7