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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179797
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】オゾン発生装置用の電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241219BHJP
   C01B 13/11 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02M7/48 E
C01B13/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098933
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 亮太
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】高根 直也
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴恵
(72)【発明者】
【氏名】深田 洋行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 美智子
【テーマコード(参考)】
4G042
5H770
【Fターム(参考)】
4G042CA01
4G042CB24
4G042CC03
4G042CC16
4G042CD04
5H770AA09
5H770BA20
5H770CA02
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA11
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA01Z
5H770HA02Z
5H770HA03Z
(57)【要約】
【課題】共振周波数よりも低い基本周波数で運転したときのオゾン生成効率を改善する。
【解決手段】実施形態のオゾン発生装置用の電源装置は、交流電圧が放電管に印加されることでオゾンを生成するオゾン発生器を備えるオゾン発生装置に設けられる電源装置であって、入力された直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、前記インバータから出力された交流電圧を昇圧する変圧器と、前記オゾン発生器に流れる突入電流を低減するリアクトルと、を備える。前記リアクトルの誘導成分(L成分)と、前記オゾン発生器の容量成分(C成分)と、によって決まる共振周波数が、前記インバータの最高周波数よりも高く設定されており、前記電源装置は、前記インバータの出力電圧と基本周波数の間の相関関係情報に基づいて、前記インバータの目標出力電圧に応じた基本周波数を用いて前記インバータを制御する制御部を、備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧が放電管に印加されることでオゾンを生成するオゾン発生器を備えるオゾン発生装置に設けられる電源装置であって、
入力された直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、
前記インバータから出力された交流電圧を昇圧する変圧器と、
前記オゾン発生器に流れる突入電流を低減するリアクトルと、を備え、
前記リアクトルの誘導成分(L成分)と、前記オゾン発生器の容量成分(C成分)と、によって決まる共振周波数が、前記インバータの最高周波数よりも高く設定されており、
前記電源装置は、前記インバータの出力電圧と基本周波数の間の相関関係情報に基づいて、前記インバータの目標出力電圧に応じた基本周波数を用いて前記インバータを制御する制御部を、備えるオゾン発生装置用の電源装置。
【請求項2】
前記オゾン発生器から発生したオゾンの量であるオゾン発生量を検出するオゾン発生量検出部を、さらに備え、
前記制御部は、前記オゾン発生量検出部によって検出されたオゾン発生量がオゾン発生量指令値に対して過不足のある場合は、オゾン発生量が前記オゾン発生量指令値に近づくように、前記インバータを制御するときの基本周波数を変更する、請求項1に記載のオゾン発生装置用の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、V/f制御によって、前記インバータの目標出力電圧に応じた基本周波数を用いて前記インバータを制御する、請求項1に記載のオゾン発生装置用の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、PWM制御によって、前記インバータの目標出力電圧に応じた基本周波数を用いて前記インバータを制御する、請求項3に記載のオゾン発生装置用の電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、PDM制御によって、前記インバータの目標出力電圧に応じた基本周波数を用いて前記インバータを制御する、請求項3に記載のオゾン発生装置用の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、オゾン発生装置用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン発生装置は、特殊な負荷であるため、専用電源によって駆動している。例えば、オゾン発生装置用の電源装置は、商用電源の一例である三相電源から供給される交流電力を、コンバータにおいて直流電力に変換する。つづいて、電源装置は、コンバータから出力される直流電力を、高周波インバータによって高周波の交流電力に変換した後、トランスを介してオゾン発生装置に供給する。
【0003】
オゾン発生装置を等価回路で表した場合、誘電体電極を表す静電容量と、当該誘電体電極と金属電極との間の放電ギャップを表す静電容量と、を直列接続した回路となる。放電ギャップでは、当該放電ギャップに印加される放電ギャップ電圧が放電維持電圧を超えた場合に、当該放電ギャップに流入される原料ガス内でバリア放電が発生する。そして、当該バリア放電により、原料ガス中に含まれる酸素からオゾンを発生させる。このため、バリア放電は、等価回路で表した場合、定電圧特性を持ち、放電中、放電維持電圧を保持するため、ツェナーダイオードで表される。このように、オゾン発生装置は、容量性負荷となっているため、力率を改善するためにコイルが直列または並列に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4108108号公報
【特許文献2】国際公開第2020/179484号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】八木重典著、「バリア放電」、朝倉書店、2012年7月20日、p143-147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、オゾン発生装置用の電源装置の高調波インバータとして、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって、直流電力を交流電力に変換するインバータを用いた場合、容量性負荷のオゾン発生器と、誘導性負荷の電源装置のリアクトル(出力リアクトル)と、の共振周波数より低いインバータの基本周波数で運転しようとすると、各々の放電管に加わる電力がばらつくことで、オゾン生成効率が悪化する問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、共振周波数よりも低い基本周波数で運転したときのオゾン生成効率を改善することが可能なオゾン発生装置用の電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のオゾン発生装置用の電源装置は、交流電圧が放電管に印加されることでオゾンを生成するオゾン発生器を備えるオゾン発生装置に設けられる電源装置であって、入力された直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、前記インバータから出力された交流電圧を昇圧する変圧器と、前記オゾン発生器に流れる突入電流を低減するリアクトルと、を備える。前記リアクトルの誘導成分(L成分)と、前記オゾン発生器の容量成分(C成分)と、によって決まる共振周波数が、前記インバータの最高周波数よりも高く設定されており、前記電源装置は、前記インバータの出力電圧と基本周波数の間の相関関係情報に基づいて、前記インバータの目標出力電圧に応じた基本周波数を用いて前記インバータを制御する制御部を、備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置が有する電源装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置用の電源装置が有するインバータの出力特性の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置が有する電源装置の回路図の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置が有する電源装置の回路図の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置の構成図である。
図7図7は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置の制御のフローチャートである。
図8図8は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置の構成図である。
図9図9は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置用の電源装置が有するインバータの出力特性の一例を示す図である。
図10図10は、従来技術にかかるオゾン発生装置の制御のフローチャートである。
図11図11は、第2の実施形態にかかるオゾン発生装置用の電源装置が出力する交流電力の一例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態にかかるオゾン発生装置用の電源装置のうちインバータの出力特性の一例を示す図である。
図13図13は、第2の実施形態にかかるオゾン発生装置用の電源装置が出力する交流電力の一例を示す図である。
図14図14は、第2の実施形態にかかるオゾン発生装置用の電源装置のうちインバータの出力特性の一例を示す図である。
図15図15は、第3の実施形態にかかるオゾン発生装置が有する電源装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかるオゾン発生装置用の電源装置について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置1000の構成の一例を示す図である。本実施形態にかかるオゾン発生装置1000は、誘電体バリア方式のオゾン発生装置である。図1において、y軸は、後述する気密容器14の中心軸に沿った軸である。x軸は、y軸に直交する軸である。z軸は、y軸およびx軸に直交する軸である。図1に示すように、オゾン発生装置1000は、装置本体11、高圧電源12、ヒューズ18、電源装置20等を備えている。装置本体11は、交流電圧が放電管に印加されることでオゾンを生成するオゾン発生器の例である。装置本体11は、気密容器14、誘電体電極15、金属電極16等を備える。
【0012】
気密容器14は、円筒状の容器である。具体的には、気密容器14は、y軸方向に沿った中心軸を有する円筒形状の容器である。また、気密容器14は、その内部に、誘電体電極15および金属電極16が収容される。気密容器14の外周部には、ガス入口141、ガス出口142、冷却水入口143、および、冷却水出口144が形成される。気密容器14は、ガス入口141を介して、外部から、酸素を含む原料ガスが供給される。原料ガスの圧力である原料ガス圧は、0.1~0.3MPa(メガパスカル)とすることが好ましい。そして、気密容器14は、ガス出口142を介して、未反応の原料ガスおよびオゾンを外部へ導出する。また、気密容器14は、冷却水入口143を介して、冷却水が流入される。そして、気密容器14は、冷却水出口144を介して、冷却水を外部へ排出する。
【0013】
誘電体電極15は、気密容器14の内部に設けられる。誘電体電極15は、誘電体部151と、導電膜152と、高圧供給端子153と、を有する。誘電体部151は、誘電性の材料を含み、y軸方向に沿った中心軸を有する円筒形状に形成されている。誘電体部151の中心軸は、気密容器14の中心軸と平行(ほぼ平行を含む。)である。高圧供給端子153は、導電膜152の内側に設けられ、導電膜152と電気的に接続されている。
【0014】
金属電極16は、導電性の材料を含む。金属電極16は、気密容器14の内部、かつ、誘電体電極15の外側に設けられる。金属電極16は、接地され、接地電位となっている。また、金属電極16は、スペーサ161を有する。スペーサ161は、金属電極16の一部から誘電体電極15に向かって突出して、金属電極16と誘電体電極15との間に放電ギャップ17を形成(維持)する。また、金属電極16は、気密容器14のない周面との間に冷却水が流入される水路162を形成する。水路162は、気密容器14の冷却水入口143および冷却水出口144とつながっている。したがって、冷却水入口143から流入される冷却水は、水路162を経由して、冷却水出口144から排出される。
【0015】
高圧電源12は、ヒューズ18および電源装置20を介して、高圧供給端子153と電気的に接続されている。そして、高圧電源12は、電源装置20、ヒューズ18、および高圧供給端子153を介して、誘電体電極15(導電膜152)に対して電圧を印加する。これにより、放電ギャップ17に流入される原料ガス中で放電を発生させ、当該放電によりオゾンを発生させる。冷却水供給部13は、例えば、ポンプである。冷却水供給部13は、気密容器14の冷却水入口143から気密容器14の水路162へ冷却水を供給する。
【0016】
次に、図2を用いて、本実施形態にかかるオゾン発生装置1000が有する電源装置20の構成の一例について説明する。図2は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置1000が有する電源装置20の構成の一例を示す図である。
【0017】
電源装置20は、高圧電源12から供給される交流電力を、あらかじめ設定された電圧の交流電力に変換して、当該交流電力の電圧を、誘電体電極15に印加する。本実施形態では、電源装置20は、図2に示すように、入力リアクトル21と、VVVFインバータ(Variable Voltage Variable Frequency:可変電圧可変周波数)22(以下、単に「インバータ」という場合もある。)と、零相リアクトル23と、抵抗24と、変圧器25と、出力リアクトル26と、を有する。
【0018】
入力リアクトル21は、高圧電源12とVVVFインバータ22との間に接続され、VVVFインバータ22から出力される交流電力に含まれる高調波を抑制する。
【0019】
VVVFインバータ22は、入力された直流電力を交流電力に変換して出力する。例えば、VVVFインバータ22は、PWM制御によって、スイッチング素子をオンオフして、直流電力を交流電力に変換して出力する。本実施形態では、VVVFインバータ22は、高圧電源12から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータを有する。次いで、VVVFインバータ22は、当該コンバータから出力される直流電力を、PWM制御によって、交流電力に変換する。その後、VVVFインバータ22は、交流電力の電圧を、装置本体11が有する誘電体電極15に印加する。
【0020】
なお、本実施形態では、VVVFインバータ22には、出力する交流電力の基本波形の基本周波数に比例して、該当出力する交流電力の電圧が高くなるVVVFインバータを用いているが、直流電力を交流電力に変換するインバータであればよい。また、VVVFインバータ22では、図3に示すように、出力する電圧と周波数の間に相関関係があって、電圧を変更することで周波数を変更できればよいため、パルス密度を変更するPDM(Pulse-density modulation)制御としてもよい。
【0021】
図2に戻って、零相リアクトル23は、VVVFインバータ22と高圧供給端子153とを接続する配線に流れるキャリア周波数成分の零相電流を打ち消すリアクトルである。抵抗24は、VVVFインバータ22の零相に電流が流れて、変圧器25の短絡を防止する。短絡の可能性がなければ、抵抗24はなくてもよい。
【0022】
変圧器25は、VVVFインバータ22から出力された交流電圧を昇圧する。具体的には、例えば、変圧器25は、VVVFインバータ22と誘電体電極15との間に接続され、VVVFインバータ22から出力される交流電力の電圧を、あらかじめ設定された電圧(例えば、2000V、4000V)に昇圧する。
【0023】
出力リアクトル26は、オゾン発生器に流れる突入電流を低減するリアクトルの例である。具体的には、例えば、出力リアクトル26は、誘電体電極15に対して直列に接続され、VVVFインバータ22におけるPWM制御によってスイッチング素子をオフからオンに切り替えた際に誘電体電極15に流れる突入電流を低減する。
【0024】
本実施形態の回路図の例を図4図5に示す。図4は、VVVFインバータ22が3相出力の場合で、インバータ出力の相間に対して、変圧器25、出力リアクトル26、装置本体11がそれぞれ接続されている。図5では、零相リアクトル23と抵抗24を除いた回路となっている。また、図5はVVVFインバータ22が単相出力の場合で、変圧器25、出力リアクトル26、装置本体11が直列接続されている。なお、VVVFインバータ22のスイッチング素子は、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)で記載しているが、その他のスイッチング素子に変更可能である。さらに、VVVFインバータ22のうち交流電力から直流電力に変換する部分では、ダイオード整流を行ってもよい。
【0025】
ところで、装置本体11は、等価回路で表した場合、誘電体電極15を表す静電容量と、放電ギャップ17を表す静電容量とを直列接続した回路となる。また、放電ギャップ17では、放電ギャップ17に印加される電圧が、放電ギャップ17内でバリア放電が発生する電圧である放電維持電圧を超えた場合に、放電ギャップ17内に流入される原料ガス内でバリア放電を発生させる。当該バリア放電によりオゾンを発生させる。バリア放電が発生している間、放電維持電圧が保持される。したがって、バリア放電は、等価回路で表した場合、定電圧特性を持つツェナーダイオードで表される。このように、装置本体11は、容量性負荷となっているので、力率を改善するために、電源装置20は誘導性の電源装置となる。
【0026】
そこで、非特許文献1のように、インバータ電圧に対して電流が進み位相となると、放電が不安定となり、装置本体11にかかる電圧が低下する問題があるため、インバータ電圧に対して電流が遅れ位相となるようにすることが望ましい。インバータ電圧に対して電流が遅れ位相となる場合、装置本体11と、電源装置20と、の共振周波数よりも高周波側で交流電力を調整することなる。したがって、共振周波数で電源装置20の出力する交流電力が最大となり、インバータの出力可能な最高周波数で出力する交流電力が最小となる。
【0027】
電源装置20が出力する交流電力Wは、周波数f、バリア放電の放電維持電圧V*、誘電体電極の静電容量Cd、放電ギャップによる静電容量Cg、装置本体にかかるピーク電圧V0pを用いて、以下の式(1)で表せる。
【数1】
【0028】
交流電力Wの値を調節するときは、構造由来のバリア放電の放電維持電圧V*、誘電体電極の静電容量Cd、放電ギャップによる静電容量Cgは変更できず、周波数fと装置本体にかかるピーク電圧V0pの2つを変更する。ピーク電圧V0pを最大値に固定すると、交流電力は周波数に比例するため、共振周波数を低下させると交流電力の最大値が低下する。インバータ電圧に対して電流が遅れ位相となるようにすると、共振周波数がインバータの出力可能な最高周波数より低い値となり、オゾン発生器に供給する必要な交流電力を満たせない可能性がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、共振周波数をインバータの出力可能な最高周波数より十分に高く設定する。具体的には、出力リアクトル26の誘導成分(L成分)と、装置本体11(オゾン発生器)の容量成分(C成分)と、によって決まる共振周波数を、インバータの最高周波数よりも高く設定する。そのためには、例えば、その条件を満たす構造の各部品を採用する。これにより、放電が不安定となる出力リアクトル26の電圧低下を抑制し、インバータ電圧に対して電流が進み位相でも電力調整をできるようになる。その結果、インバータの最高周波数で最大電力となり、インバータのもつ能力を最大限活用できる。
【0030】
このように、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置1000によれば、VVVFインバータ22が、V/f制御により周波数で出力する交流電力を調整するときに、共振周波数をインバータの最高周波数よりも高く設定していることで、オゾン発生装置1000の放電が不安定で装置本体11にかかる電圧低下を低減できる。
【0031】
なお、V/f制御とは、f(周波数)を変化させるときにV(出力電圧)との比率(V/f)が一定となるように出力電圧を制御するものである。ただし、V/f制御は、図9のV/f制御(1)のように比率(V/f)が単一のものに限定されず、図9のV/f制御(2)のように比率(V/f)が複数(例えば3つ)のものも含む。また、V/f制御を具体的に実現する手法としては、例えば、PWM制御やPDM制御があるが、これらに限定されない。
【0032】
そして、上述の制御により、共振周波数よりも低い基本周波数で運転したときのオゾン生成効率を改善することができる。これについて、以下に詳述する。
【0033】
本実施形態のVVVFインバータ22に対して電力制御する際に、図6のように、電源装置20の出力端近傍に電圧検出部203と電流検出部204を有し、電力計算部202で交流電力を計算する。そして、電力比較部201によって、電力計算部202で計算した交流電力を電力指令値と比較して、過不足があれば、制御部209は、VVVFインバータ22の交流電力の出力を調整する。例えば、制御部209は、VVVFインバータ22の出力電圧と基本周波数の間の相関関係情報に基づいて、VVVFインバータ22の目標出力電圧に応じた基本周波数を用いてVVVFインバータ22を制御する。
【0034】
また、例えば、制御部209は、オゾン発生量検出部206によって検出されたオゾン発生量がオゾン発生量指令値に対して過不足のある場合は、オゾン発生量がオゾン発生量指令値に近づくように、VVVFインバータ22を制御するときの基本周波数を変更する。
【0035】
また、例えば、制御部は、V/f制御(PWM制御、PDM制御など)によって、インバータの目標出力電圧に応じた基本周波数を用いてVVVFインバータ22を制御する。
【0036】
図7を用いて、VVVFインバータ22の交流電力の出力調整について説明する。ステップS11において、電力比較部201は、電力計算部202で計算した交流電力を電力指令値と比較して、過不足がなければステップS11に戻り、過不足があればステップS12に進む。
【0037】
ステップS12において、制御部209は、周波数を変更する。VVVFインバータ22の電圧は、図3のようなV/f制御により、出力している電圧と周波数の相関関係が決められており、周波数が変更になると、ステップS13において、インバータ電圧も変更になる。V/f制御で交流電力を変更できるようになると、誘導発動機で使用されている安価な汎用インバータを適用可能となる。
【0038】
なお、制御対象は交流電力だけに限ることはなく、図8のように、装置本体11のオゾン発生量でもよい。オゾン発生量検出部206によって検出したオゾン発生量(オゾン発生器から発生したオゾンの量)と、オゾン発生量指令値を、オゾン発生量比較部205で比較し、過不足あれば、制御部209は、オゾン発生量を調整するためにVVVFインバータ22の交流電力を調整すればよい。
【0039】
次に、V/f制御による電圧と周波数の関係が1つの比例関係だけではない場合の例を示す。V/f制御の拡張性により、電圧と周波数の関係をあらかじめ設定することで、比例以外にも設定できる。比例以外に設定する理由は、ピーク電圧V0pは周波数ごとに変化するため、実際の電源装置20が出力する交流電力Wは、周波数fに対して比例しないことである。そこで、図9に示すように、電圧が一定のV/f制御(1)や、複数(ここでは3つ)の傾きをもつV/f制御(2)としてもよい。
【0040】
一方で、従来のVVVFインバータの電力制御では、図10のように大きく2つのステップがあった。まず、1つめのステップでは、ステップS21において、交流電力を電力指令値と比較して、過不足がなければステップS21に戻り、過不足があればステップS22に進む。ステップS22において、電圧を変更する。
【0041】
2つ目のステップでは、ステップS23において、電圧と電流から力率を計算し、力率が極大になるように周波数を変更する。つまり、周波数の変更が不要な場合は処理を終了し、周波数の変更が必要な場合は、ステップS24において、周波数を変更する。このように、従来の電力制御方法では、力率を極大になるように制御するため、インバータに求められる電流を極小化し、インバータ定格の小容量化に寄与していた。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。
【0043】
装置本体11と、電源装置20と、の共振周波数において、共振周波数の低周波側(共振周波数よりも低周波側。以下同様)で装置本体11に供給する交流電力を調整するときと、共振周波数の高周波側で装置本体11に供給する交流電力を調整するときの比較を行う。比較対象は、装置本体11に供給する交流電力の最大値が同じときに、インバータの出力する電流値とする。インバータの出力電圧は、供給する交流電力が最大のときは、共振周波数の高周波側と低周波側において、同じ出力電圧となる。したがって、インバータの容量を決める要因はインバータの出力する電流値であるため、比較対象としてインバータの出力する電流値を選択した。
【0044】
共振周波数の低周波側と高周波側で交流電力を調整するときの交流電力と周波数応答を図11に示す。グラフG11に示すように、共振周波数(600Hz以上)の低周波側で交流電力を調整するときは、最高周波数で交流電力が最大となり、周波数の低下とともに、交流電力が減少する。また、共振周波数をインバータの最高周波数よりも大きくすることで、電力バランスが悪化することはない。
【0045】
一方で、グラフG21に示すように、共振周波数(200Hz)の高周波側で交流電力を調整するときは、共振周波数の200Hz近辺で交流電力が最大となり、周波数の増加とともに、交流電力が減少する。図11では、交流電力の最大値は共振周波数の低周波側と高周波側共に、同じ交流電力の値として、共振周波数の低周波側と高周波側の両者で交流電力を調整可能であることを確認した。
【0046】
そこで、共振周波数の低周波側と高周波側で交流電力を調整するときのインバータの電流(値)と周波数の関係を図12に示す。グラフG12に示すように、共振周波数の低周波側で交流電力を調整するときは、最高周波数から周波数の低下とともにインバータ電流も減少し、ある周波数で電流値が最小となり、さらに周波数が低下すると電流値は増加する。ある周波数で電流値が最小値ももつ理由は、交流電力の減少とともにインバータ電流が減少する要因と、共振周波数から基本周波数が大きく外れることで力率が低下してインバータ電流が増加する要因と、の影響度合いの違いによるものである。
【0047】
一方で、グラフG22に示すように、共振周波数の高周波側で交流電力を調整するときは、電流値は周波数の増加とともに単調に減少した。インバータ容量は、インバータ電流の最大値で決まる。図12では、共振周波数の低周波側で交流電力を調節した方(グラフG12)が、インバータ電流の最大値が高いため、共振周波数の高周波側で交流電力を調整する方(グラフG22)よりも定格容量が大きいインバータを選択することになり、高コスト化になってしまう。しかしながら、共振周波数の低周波側で交流電力を調節するときに、図9に示したようにV/f制御(1)をV/f制御(2)に変更すると、インバータ電流の最大値を抑えることが可能である。
【0048】
V/f制御を変更したときに、共振周波数の低周波側と高周波側で交流電力を調整するときの交流電力と周波数の関係を図13に示す。グラフG13に示すように、共振周波数の低周波側で交流電力を調整するときに、交流電力が最小となる周波数を、図11のときより、大きくした。なお、グラフG23は、共振周波数の高周波側で交流電力を調整するときを示す。
【0049】
その結果、共振周波数の低周波側と高周波側で交流電力を調整するときのインバータの電流と周波数の関係を図14に示す。共振周波数の低周波側で交流電力を調整するときに、交流電力が最小となる周波数を図12のときより大きくしたことで、グラフG14に示すように、インバータ電流の最大値が、最高周波数のときに変化した。インバータ電流の最大値となる周波数が変化した理由は、交流電力が最小となる周波数を大きくしたことにより、容量性のインピーダンスが小さくなり、力率が改善したため、交流電力が最小となる周波数でのインバータ電流が減少したためである。共振周波数の低周波側で交流電力を調整する方(グラフG14)が、共振周波数の高周波側で交流電力を調整する方(グラフG24)より、インバータ電流の最大値が半分以下のため、インバータの定格容量が半分以下のインバータを選択可能である。
【0050】
非特許文献1によると、インバータ電圧に対して電流が進み位相となると、放電が不安定のとき、装置本体11にかかる電圧が低下する問題が指摘されていた。この問題は出力リアクトル26が昇圧の役割を担っているために生じてしまう。交流電力の調整時に、どの周波数においても力率が最大になるようにインバータが出力電圧と、出力電流と、周波数と、を決めている。放電が不安定になると電流の増加量が減少し、出力リアクトル26は電流の増加量に応じて昇圧するため、装置本体11にかかる電圧が低下する。しかしながら、本実施形態では、装置本体11と、電源装置20と、の共振周波数をインバータの最高周波数よりも高く設定しているために、出力リアクトル26の値が小さくなる。その結果、出力リアクトル26を昇圧する機能はなく、インバータ電流の高調波成分を抑える機能しかない。したがって、放電が不安定になるときに、装置本体11にかかる電圧が低下する問題が発生しないため、共振周波数よりも低周波側で運転することが可能となった。
【0051】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第1の実施形態、第2の実施形態の少なくとも一方と同様の事項については、重複する説明を適宜省略する。
【0052】
本実施形態は、電源装置20内に含まれる出力リアクトル26の結線順序が、図2と比較して、異なっていても、装置本体11に交流電力を供給可能な一例を示す。図15における電源装置20の構成は、図2と比較して、出力リアクトル26が、変圧器25と装置本体11の間から、零相リアクトル23と抵抗24の間に移動した。装置本体11に交流電力を供給できれば、電源装置20内の構成要素の順番を入れ替えても問題ない。また、図8のように、零相リアクトル23と出力リアクトル26は連結されているため、電源装置20に誤動作がなければ、零相リアクトル23または出力リアクトル26がなくても問題ない。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
11…装置本体、12…高圧電源、14…気密容器、15…誘電体電極、16…金属電極、17…放電ギャップ、20…電源装置、21…入力リアクトル、22…VVVFインバータ、23…零相リアクトル、24…抵抗、25…変圧器、26…出力リアクトル、1000…オゾン発生装置
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