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  • 特開-燃料電池セルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179805
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】燃料電池セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0286 20160101AFI20241219BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M8/0286
H01M8/0273
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098945
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 大樹
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA13
5H126AA15
5H126GG18
5H126HH01
5H126HH02
(57)【要約】
【課題】加熱圧着によるセパレータの変形を抑制できる燃料電池セルの製造方法を得ること。
【解決手段】樹脂フレーム31とセパレータ21を重ねて金型11で加熱圧着する燃料電池セル1の製造方法であって、金型11とセパレータ21との間でかつセパレータ21と樹脂フレーム31とを接着する接着ラインLc上にガスケット41を配置し、加熱圧着時にガスケット41を介して加圧を行うことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フレームとセパレータを重ねて金型で加熱圧着する燃料電池セルの製造方法であって、
前記金型と前記セパレータとの間でかつ前記セパレータと前記樹脂フレームとを接着する接着ライン上にガスケットを配置し、前記加熱圧着時に前記ガスケットを介して加圧を行うことを特徴とする燃料電池セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、水素(H)、エアー、及び冷却水(FCC)の3つの流体が供給される。したがって、燃料電池セルでは、これら3つの流体が交わらないようにシールする必要がある。特許文献1には、樹脂フレームとセパレータとを加熱圧着する燃料電池セルの製造方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-150046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑接着により接着力を発現させるためには、熱可塑樹脂を溶融させるための熱量と基材同士を密着させるための面圧とが必要である。互いに平板状の基材である樹脂フレームとセパレータとを加熱圧着する場合、金型によってセパレータを加圧することが多いが、このとき、セパレータは金型とセパレータとの間の摩擦力によって動きが拘束されてしまう。この状態でセパレータが加熱されると、セパレータは線膨張によって面に沿って広がる方向に膨張しようとする。しかしながら、セパレータの摩擦力で拘束された部分は動くことができないので、セパレータの拘束部よりも内側の部分に歪みが生じ、セパレータが変形、座屈するおそれがある。このように、熱可塑接着によってシールを行う場合に、加熱時の線膨張が課題となる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加熱圧着によるセパレータの変形を抑制できる燃料電池セルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の燃料電池セルの製造方法は、樹脂フレームとセパレータを重ねて金型で加熱圧着する燃料電池セルの製造方法であって、前記金型と前記セパレータとの間でかつ前記セパレータと前記樹脂フレームとを接着する接着ライン上にガスケットを配置し、前記加熱圧着時に前記ガスケットを介して加圧を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱圧着によるセパレータの変形を抑制できる燃料電池セルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】接着シール構造の例を示す燃料電池セルの断面図。
図2】第1実施形態における燃料電池セルの製造方法を説明する図。
図3】第2実施形態における燃料電池セルの製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態における燃料電池セルの製造方法について説明する。
本実施形態の燃料電池は、固体高分子型燃料電池であるが、固体酸化物型燃料電池などの他の種類の燃料電池であってもよい。
【0010】
図1は、燃料電池の接着シール構造を模式的に示す断面図である。
燃料電池は、単セルである燃料電池セル1を複数積層したスタック構造を有している。燃料電池セル1は、一対のセパレータ21と、その一対のセパレータ21の間に挟まれる樹脂フレーム31とを有している。セパレータ21は、例えばステンレスやチタンなどの金属製材料からなる薄板部材によって構成されている。セパレータ21には、樹脂フレーム31との間、及び、隣接する他のセパレータ21との間にガスを通過させるための流路を形成するための凹部22、23が形成されている。
【0011】
樹脂フレーム31は、例えば膜電極接合体MEA(Membrane Electrode Assembly)を第1ガス拡散層と第2ガス拡散層で挟み込んで積層された膜電極ガス拡散層接合体MEGA(Membrane Electrode Gas Dffusion Layer Assembly)からなる電極32を有している。そして、樹脂フレーム31の外縁には、セパレータ21に加熱圧着され、セパレータ21との間をシールするセル内シールとなるセル内接着部33が設けられている。セル内接着部33は、熱可塑性の接着材によって構成されており、樹脂フレーム31に形成されている。
【0012】
互いに隣り合う燃料電池セル1のセパレータ21同士の間には、通過するガスをシールするためのセル間シール材となるガスケット41が配置されている。ガスケット41は、例えばゴムガスケットのような弾性を持つ材料によって構成されている。
【0013】
ガスケット41は、接着材や接着シート(いずれも図示せず)によって一方の燃料電池セル1のセパレータ21に接着されている。ガスケット41は、複数の燃料電池セル1を積層した状態で、燃料電池セル1同士の間、つまり、互いに対向する燃料電池セル1のセパレータ21同士の間に形成される間隔よりも高さが高く、高さ方向に圧縮された状態で燃料電池セル1同士の間に介在され、燃料電池セル1同士の間をシールする構成を有している。ガスケット41は、加熱時のセパレータ21もしくは樹脂フレーム31の線膨張による変位λに耐えられる弾性を有している。
【0014】
ガスケット41は、セパレータ21を間に介して樹脂フレーム31のセル内接着部33と積層方向に重なる位置で、かつ、セパレータ21と樹脂フレーム31とを重ねて加熱圧着する際にセパレータ21を間に介して樹脂フレーム31のセル内接着部33を加圧できる位置である接着ラインLc上に配置されている。
【0015】
図2は、第1実施形態における燃料電池セルの製造方法を説明する図である。
まず、一対のセパレータ21、樹脂フレーム31、およびガスケット41を準備する。次いで、一方のセパレータ21の外面でかつ接着ラインLc上となる位置にガスケット41を接着固定する。それから、一対のセパレータ21の間に樹脂フレーム31を挟み込んで重ね合わせた仮組状態とする。そして、図2(1)に示すように、仮組状態の単セルを一対の加熱金型11、12の間に配置し、加熱金型(上型)11と加熱金型(下型)12によって挟み込み、加熱加圧する。
【0016】
本実施形態では、ガスケット41が上型11に対向するように配置されている。ガスケット41は、上型11とセパレータ21との間に挟まれて圧縮され、その圧縮力を利用してセパレータ21と樹脂フレーム31を加圧する。セル内接着部33は、ガスケット41越しに加熱加圧され、セパレータ21に加熱圧着される。
【0017】
セル内接着部33は、上型11と下型12との間に挟み込まれて加熱加圧されることによってセパレータ21に接着され、セパレータ21との間をシールする。そして、上型11と下型12との間を開いて、燃料電池セル1を取り出す。ガスケット41は、上型11と下型12との間から取り出されると、図2(3)に示すように、自己の弾性復元力によって元の形状に戻る。
【0018】
燃料電池セル1は、ガスケット41と樹脂フレーム31のセル内接着部33が同一の接着ラインLc上に配置された構成を有している。したがって、図1に示すように、複数の燃料電池セル1を積層して締結した際に、ガスケットによる圧縮応力Fcがセル内接着部33に作用する。したがって、セパレータ21の凹部22を通過するガスのガス圧によりセル内接着部33に作用する剥離応力Fsを低減することができる(Fs-Fc)。その結果、セル内接着部33の接着強度が低くても、高い耐圧性とシール信頼性を確保できる。
【0019】
上記した燃料電池セル1の製造方法によれば、図2(1)に示すように、燃料電池セル1を製造する際に樹脂フレーム31とセパレータ21とが上型11と下型12の間に挟まれて、弾性を持つガスケット41越しに加熱加圧される。セパレータ21及び樹脂フレーム31は加熱加圧によって線膨張するが、図2(2)に示すように、セパレータ21の線膨張による変位λを、ガスケット41の弾性変形によって吸収することができ、セパレータ21の変形を抑制することができる。これにより、セパレータ21の材料として、チタンに比べて線膨張が大きいSUSを採用することが容易となる。
【0020】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態における燃料電池セルの製造方法について説明する。
図3は、第2実施形態における燃料電池セルの製造方法を説明する図である。
【0021】
本実施形態の燃料電池セルの製造方法では、図3(1)に示すように、加熱金型(上型)11に、耐熱性の高いガスケット13を取り付ける。そして、一対のセパレータ21の間に樹脂フレーム31を挟み込んで重ね合わせた仮組状態の単セルを一対の加熱金型11、12の間に配置し、上型11と下型12によって挟み込み、ガスケット13越しに加熱加圧する。そして、セパレータ21と樹脂フレーム31のセル内接着部33を加熱圧着した後に、上型11と下型12との間を開いて、図3(3)に示すように、燃料電池セル1を取り出す。そして、図3(4)に示すように、セパレータ21に耐熱性の低いガスケット41を貼り付ける。
【0022】
上記した燃料電池セルの製造方法によれば、上型11に耐熱性の高いガスケット13を貼り付けて、セル内接着部33を熱可塑接着し、後で耐熱性の低いガスケット41をセパレータ21に貼り付けることで、燃料電池セル1に耐熱性の低いガスケット41を採用することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0024】
1・・・燃料電池セル、11、12・・・加熱金型(金型)、13・・・ガスケット、21・・・セパレータ、31・・・樹脂フレーム、33・・・セル内接着部、41・・・ガスケット、Lc・・・接着ライン
図1
図2
図3