(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179808
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】手指リハビリ用具
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61H1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098954
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 良治
(72)【発明者】
【氏名】大木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西 一茂
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA07
4C046BB05
4C046DD03
4C046DD36
(57)【要約】
【課題】患者の拘縮した手により簡単に装着できるようにした手指リハビリ用具を提供する。
【解決手段】当該手指リハビリ用具10は、手の甲側部分16及び手の平側部分18、並びにそれらに形成された第1気室20及び第2気室22を有するシート状本体14を備える。手指リハビリ用具10はさらに、シート状本体14の一端部32と他端部36とを連結してシート状本体14を手の周りで筒状とする第1及び第2面ファスナー34、38を備える。手の平側部分18を折り畳んだ状態で手の平と曲がった指との間に挿入し、手の甲側部分16を手の甲に被せて第1及び第2面ファスナー34、38で一端部32と他端部36とを連結することにより、手指リハビリ用具10は手の周りに装着される。第1及び第2気室20、22に圧縮空気を供給すると、それらが膨脹して折り畳まれた手の平側部分18が展開し、手の甲側部分16と手の平側部分18との間で指が伸ばされる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って並べて配置された手の甲側部分及び手の平側部分、並びに前記手の甲側部分に形成された第1気室及び前記手の平側部分に形成された第2気室を有するシート状本体と、
前記シート状本体に設けられ、前記第1方向での前記シート状本体の前記手の甲側部分にある一端部と前記手の平側部分にある他端部とを連結して前記シート状本体を手の周りで筒状とするようにされた第1連結手段と、
を備え、
前記手の平側部分は、前記第1方向に交差する第2方向に折り畳み可能に構成されており、
前記手の平側部分を折り畳んだ状態で患者の手の平と曲がった指との間に挿入し、前記手の甲側部分を前記患者の手の甲に被せて前記第1連結手段で前記一端部と前記他端部とを連結することにより、手の周りに装着可能とされ、
前記患者の手の周りに装着した状態で前記第1気室及び前記第2気室に圧縮空気を供給したときに、前記第1気室及び第2気室が膨脹して前記手の平側部分が折り畳まれた状態から展開し、前記患者の曲がった指が前記手の甲側部分と前記手の平側部分との間に挟まれて伸ばされるようにした、手指リハビリ用具。
【請求項2】
前記第1連結手段が、当該手指リハビリ用具を前記患者の手に装着したときに、前記手の親指と人差し指との間の位置となるように前記シート状本体に配置され、
前記シート状本体に設けられ、前記第1連結手段に隣接して配置された第2連結手段をさらに備え、
当該手指リハビリ用具が前記患者の手の周りに装着された状態で前記第1気室及び第2気室に圧縮空気を供給して前記手の平側部分が展開したときに、前記第2連結手段が前記シート状本体の前記一端部と前記他端部とを前記手の人差し指の周りで連結可能となるようにされた、請求項1に記載の手指リハビリ用具。
【請求項3】
前記第1連結手段及び前記第2連結手段が、それぞれ、前記手の甲側部分と前記手の平側部分に配置された一組の面ファスナーで構成されている、請求項2に記載の手指リハビリ用具。
【請求項4】
シート状本体に設けられた第3連結手段をさらに備え、
当該手指リハビリ用具が前記患者の手の周りに装着された状態で前記第1気室及び第2気室に圧縮空気を供給して前記手の平側部分が展開したときに、前記第3連結手段が前記手の甲側部分と前記手の平側部分を前記手の手首の周りで連結可能となるようにされた、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の手指リハビリ用具。
【請求項5】
前記第3連結手段が、前記手の甲側部分と前記手の平側部分とのうちの一方に配置された面ファスナーと、前記手の甲側部分と前記手の平側部分とのうちの他方に配置されたベルトとからなり、前記ベルトを前記面ファスナー上を通るようにして前記手首の周りに巻き付けることにより前記ベルトが前記面ファスナーに係止されて、前記手の甲側部分と前記手の平側部分が前記手首の周りで連結されるようにされた、請求項4に記載の手指リハビリ用具。
【請求項6】
折り畳まれた前記手の平側部分を前記手の甲側部分で覆うようにして前記シート状本体を折り畳み、前記第1乃至第3連結手段のうちの少なくとも1つによって前記手の甲側部分と前記手の平側部分とを固定して収納形態に保持するようにされた、請求項4に記載の手指リハビリ用具。
【請求項7】
前記手の平側部分は、前記第2方向に4つ折りに折り畳み可能に構成されている、請求項1に記載の手指リハビリ用具。
【請求項8】
前記手の平側部分に配置された折り畳み保持用の面ファスナーをさらに備え、前記手の平側部分が4つ折りに折り畳まれたときに前記面ファスナーが前記手の平側部分の折り畳まれた部分を係止して前記手の平側部分を折り畳まれた状態に保持するようにされた、請求項7に記載の手指リハビリ用具。
【請求項9】
前記シート状本体が、前記第1気室に連通した空気供給口と、前記第1気室と前記第2気室とを連通する連通路と、をさらに有する、請求項1に記載の手指リハビリ用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘縮した手のリハビリを行なうための手指リハビリ用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脳血管障害、脳外傷、脳性麻痺、脊髄損傷などの中枢神経系の疾患及び障害、並びに梢神経障害、関節、筋肉などの障害に伴う肢体の機能障害に対して、その機能を改善させるためにリハビリ運動を行うことがある。このリハビリ運動は、通常、医師や理学療法士が、曲がった状態のまま動きが悪くなって関節の固くなった患者の手指を強制的に開いたり閉じたりするようにして行なわれる。また、医師や理学療法士の負担を軽減するために、患者に対するリハビリ運動を自動的に行なうようにしたリハビリ用具も開発されている(特許文献1、特許文献2)。特許文献1のリハビリ用具は、風船状本体の上に、手全体を挿入する手袋状の挿入固定部又は各指を挿入するための複数の指挿入固定部を備え、挿入固定部又は指挿入固定部に患者の手指を挿入した状態で風船状本体に圧縮空気を供給することにより患者の曲がった指を開くようになっている。また、特許文献2のリハビリ用具は、気密性を有する袋を内包したカバーに、手指を挿入する挿入部、及び掌と手首をそれぞれ固定する固定部材を備えており、これら挿入部及び固定部材によって患者の手を固定した状態で袋に圧縮空気を供給することにより患者の曲がった指を開くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-33604号公報
【特許文献2】特開2010-284451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来のリハビリ用具においては、患者の手に装着する際に各指を対応する固定部材に挿入して固定する必要がある。しかしながら、このようなリハビリ用具を必要とする患者の手指は拘縮して曲がった状態となっており、曲がった指を一本一本開きながらリハビリ用具に装着していくのは煩雑な作業となり多くの時間を要するものとなる。また、患者の拘縮の程度によっては、装着するのに十分な位置にまで指を伸ばすことが困難な場合もある。
【0005】
そこで本発明は、患者の拘縮した手により簡単に装着できるようにした手指リハビリ用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
第1方向に沿って並べて配置された手の甲側部分及び手の平側部分、並びに前記手の甲側部分に形成された第1気室及び前記手の平側部分に形成された第2気室を有するシート状本体と、
前記シート状本体に設けられ、前記第1方向での前記シート状本体の前記手の甲側部分にある一端部と前記手の平側部分にある他端部とを連結して前記シート状本体を手の周りで筒状とするようにされた第1連結手段と、
を備え、
前記手の平側部分は、前記第1方向に交差する第2方向に折り畳み可能に構成されており、
前記患者の手の周りに装着した状態で前記手の平側部分を折り畳んだ状態で患者の手の平と曲がった指との間に挿入し、前記手の甲側部分を前記患者の手の甲に被せて前記第1連結手段で前記一端部と前記他端部とを連結することにより、手の周りに装着可能とされ、
前記第1気室及び前記第2気室に圧縮空気を供給したときに、前記第1気室及び第2気室が膨脹して前記手の平側部分が折り畳まれた状態から展開し、前記患者の曲がった指が前記手の甲側部分と前記手の平側部分との間に挟まれて伸ばされるようにした、手指リハビリ用具を提供する。
【0007】
当該リハビリ用具においては、シート状本体の手の平側部分を折り畳んだ状態で患者の手の平と曲がった指との間に挿入して患者の手に装着するようになっているため、装着時に患者の指をほとんど開く必要がない。したがって、装着時に指を大きく開く必要のあった従来の物に比べて、患者の拘縮した手に対する装着を容易に行なうことが可能となる。
【0008】
また、
前記第1連結手段が、当該手指リハビリ用具を前記患者の手に装着したときに、前記手の親指と人差し指との間の位置となるように前記シート状本体に配置され、
前記シート状本体に設けられ、前記第1連結手段に隣接して配置された第2連結手段をさらに備え、
当該手指リハビリ用具が前記患者の手の周りに装着された状態で前記第1気室及び第2気室に圧縮空気を供給して前記手の平側部分が展開したときに、前記第2連結手段が前記シート状本体の前記一端部と前記他端部とを前記手の人差し指の周りで連結可能となるようにすることができる。
【0009】
このような構成とすることにより、指が、手の甲側部分と手の平側部分との間により確実に挟まれて、第1及び第2気室の膨脹時に曲がった指がより適切に伸ばされるようにすることが可能となる。
【0010】
また、前記第1連結手段及び前記第2連結手段が、それぞれ、前記手の甲側部分と前記手の平側部分に配置された一組の面ファスナーで構成されているようにすることができる。
【0011】
さらに、
前記シート状本体に設けられた第3連結手段をさらに備え、
当該手指リハビリ用具が前記患者の手の周りに装着された状態で前記第1気室及び第2気室に圧縮空気を供給して前記手の平側部分が展開したときに、前記第3連結手段が前記手の甲側部分と前記手の平側部分を前記手の手首の周りで連結可能となるようにすることができる。
【0012】
また、前記第3連結手段が、前記手の甲側部分と前記手の平側部分とのうちの一方に配置された面ファスナーと、前記手の甲側部分と前記手の平側部分とのうちの他方に配置されたベルトとからなり、前記ベルトを前記面ファスナー上を通るようにして前記手首の周りに巻き付けることにより前記ベルトが前記面ファスナーに係止されて、前記手の甲側部分と前記手の平側部分が前記手首の周りで連結されるようにすることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、当該手指リハビリ用具が使用時に指側の方にずれてしまうことを防止することが可能となる。
【0014】
また、折り畳まれた前記手の平側部分を前記手の甲側部分で覆うようにして前記シート状本体を折り畳み、前記第1乃至第3連結手段のうちの少なくとも1つによって前記手の甲側部分と前記手の平側部分とを固定して収納形態に保持するようにすることができる。
【0015】
このような構成により、コンパクトに収納しておくことが可能になるとともに、手の平側部分が折り畳まれた状態となっていることにより、使用時に手の平側部分を折り畳む必要がなくなり、患者の手に迅速に装着することが可能となる。
【0016】
また、前記手の平側部分は、前記第2方向に4つ折りに折り畳み可能に構成されているようにすることができる。
【0017】
また、前記手の平側部分に配置された折り畳み保持用の面ファスナーをさらに備え、前記手の平側部分が4つ折りに折り畳まれたときに前記面ファスナーが前記手の平側部分の折り畳まれた部分を係止して前記手の平側部分を折り畳まれた状態に保持するようにすることができる。
【0018】
折り畳み保持用の面ファスナーにより手の平側部分が折り畳まれた状態に保持されるため、手の平側部分を折り畳んだ状態でより容易に患者の手の平と指との間に挿入することが可能となる。
【0019】
また、前記シート状本体が、前記第1気室に連通した空気供給口と、前記第1気室と前記第2気室とを連通する連通路と、をさらに有するようにすることができる。
【0020】
以下、本発明に係る手指リハビリ用具の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る手指リハビリ用具の外側面を示す図である。気室は破線により示されている。
【
図2】
図1の手指リハビリ用具の内側面を示す図である。
【
図3】
図1の手指リハビリ用具の手の平側部分の上部及び下部を折り畳んだ状態を示す図である。
【
図4】
図3の状態からさらに手の平側部分を折り畳んで4つ折りにした状態を示す図である。
【
図5】
図4のように4つ折りに折り畳んだ手の平側部分を患者の手の平と曲がった指との間に挿入した状態を示す図である。
【
図6】
図5の状態から、手の甲側部分を患者の手の甲に被せた状態を示す図である。
【
図7】
図6の状態から、第1面ファスナーを第3面ファスナーに張り付けて、シート状本体の一端部と他端部とを連結し、当該手指リハビリ用具を手に仮装着した状態を示す図である。
【
図8】
図7の状態から、第1気室及び第2気室に圧縮空気を供給して第1気室及び第2気室を膨脹させた状態を示す図である。
【
図9】
図8の状態から、第2面ファスナーを第3面ファスナーに貼り付けるとともにベルトを第4面ファスナーに貼り付けて、当該手指リハビリ用具を手に装着した状態を示す図である。
【
図10】
図1の手指リハビリ用具を収納形態とする手順を示す図であり、
図4のように4つ折りに折り畳んだ状態から手の平側部分を手の甲側部分で覆った状態を示す図である。
【
図11】
図10の状態から、当該手指リハビリ用具を収納形態とした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る手指リハビリ用具10は、
図1及び
図2に示すように気室12が形成されたシート状本体14を備え、人の手の周りに筒状に装着されるように構成されている。シート状本体14は、
図1及び
図2に示すように、装着したときに手の甲側に位置するようになる手の甲側部分16と、手の平側に位置するようになる手の平側部分18とを有する。手の甲側部分16と手の平側部分18は、装着時に手の周囲方向となる第1方向(図で見て横方向)に沿って並べて配置されている。気室12は、手の甲側部分16に形成された第1気室20と、手の平側部分18に形成された第2気室22と、手の甲側部分16と手の平側部分18との間の3つの開口部24のうちの2つの間に形成された連通路26とからなる。第1気室20と第2気室22は連通路26を介して連通している。シート状本体14は第1気室20に連通した空気供給口28を有しており、空気供給口28には外部から圧縮空気を供給するためのチューブ30が接続されている。チューブ30から圧縮空気が供給されると、第1気室20と第2気室22が実質的に同時に膨脹する。なお、開口部24の間には樹脂製のチューブ31が配置されており、このチューブ31により連通路26が構成されている。このようなチューブ31を配置することにより連通路26が塞がって圧縮空気が第2気室に適切に供給されなくなることを防止している。
【0023】
当該手指リハビリ用具10はさらに、シート状本体14の外側面14aにおいて手の甲側部分16にある一端部32に配置された第1面ファスナー34と、シート状本体14の内側面において手の平側部分18にある他端部36に配置された第2面ファスナー38及び第3面ファスナー40と、を有する。後述するように、第2面ファスナー38及び第3面ファスナー40は、それぞれ第1面ファスナー34に貼り付けられてシート状本体14の一端部32と他端部36とを連結するために使用される。すなわち、第1面ファスナー34と第2面ファスナー38とで、シート状本体14の一端部32と他端部36とを連結する第1連結手段を構成し、第1面ファスナー34と第3面ファスナー40とで、同じくシート状本体14の一端部32と他端部36とを連結する第2連結手段を構成している。手の甲側部分16の外側面14aにはさらに、装着時に手首付近となる位置に配置された第4面ファスナー42が配置されている。シート状本体14にはさらに、2本の布製のベルト44、46が取り付けられている。後述するように、ベルト44、46を第4面ファスナー42上を通るように手首周りに巻き付けることにより、手の甲側部分16と手の平側部分18とを手首周りで連結するようになっている。すなわち、第4面ファスナー42とベルト44、46とで、手の甲側部分16と手の平側部分18とを連結する第3連結手段を構成している。
【0024】
図3及び
図4に示すように、シート状本体14の手の平側部分18は第1方向に交差する第2方向(図で見て上下方向)に折り畳み可能に構成されている。手の平側部分18を折り畳む際には、まず
図3に示すように、手の平側部分18の上部48及び下部50をそれぞれ折り畳む。手の平側部分18の外側面14aには、上部48及び下部50を折り畳む際にそれぞれの縁の位置を合わせるための目印線52が設けられている。また、手の平側部分18の内側面14bには、上部48及び下部50を山折りする位置を示す目印線54(
図2)が設けられている。上部48及び下部50を折り畳む際にはこれらの目印線52、54を目安にして折ることにより、適切な位置に折り畳むことができる。次いで、
図4に示すように、折り畳まれた上部48と下部50を重ねるようにしてさらに折り畳む。このようにして手の平側部分18を4つ折りに折り畳むと、手の平側部分18の外側面14aの中央やや上側に配置されている折り畳み保持用の面ファスナー56(
図1、
図3)が手の平側部分18の折り畳まれた部分に係合して手の平側部分18が折り畳まれた状態に保持される。なお、シート状本体14の内側面14bは、面ファスナー56に付着するような不織布により形成されている。
【0025】
当該手指リハビリ用具10を患者の手に装着する際には、手の平側部分18を、
図4のように折り畳まれた状態で、
図5に示すように患者の手の平と曲がった指との間に挿入する。手の平側部分18が折り畳まれていることにより、拘縮した患者の手の平と指の間にも容易に挿入することができる。次いで
図6に示すように、シート状本体14の手の甲側部分16を患者の手の甲に被せるようにする。そうすると、第2面ファスナー38が第1面ファスナー34の近くに位置するようになる。そして
図7に示すように、第2面ファスナー38を第1面ファスナー34に貼り付けることにより、シート状本体14の一端部32と他端部36とを連結して、シート状本体14を手の周りで環状にする。これにより当該手指リハビリ用具10は患者の手に仮装着された状態となる。
【0026】
手指リハビリ用具10が仮装着された状態で圧縮空気供給源に接続されたチューブ30から当該手指リハビリ用具10に圧縮空気を供給すると、第1気室20及び第2気室22が膨脹し、
図8に示すように、折り畳まれていた手の平側部分18が展開する。これにより、シート状本体14が全体として筒状になり、曲がっていた指が手の甲側部分16と手の平側部分18との間で挟まれて伸びた状態となる。第2面ファスナー38は、当該手指リハビリ用具10が装着された手の親指と人差し指との間の位置で第1面ファスナー34に留められている。このとき、第3面ファスナー40が第2面ファスナー38に隣接して人差し指の側に位置した状態となり、この第3面ファスナー40を
図9に示すように第1面ファスナー34に貼り付けることにより、シート状本体14の一端部32と他端部36とが人差し指の周りでも連結される。さらに、第2面ファスナー38よりも手首側に配置されている2本のベルト44、46をそれぞれ第4面ファスナー42上を通るようにして手首の周りに巻き付けることにより、ベルト44、46が第4面ファスナー42に係止されて、シート状本体14の手の甲側部分16と手の平側部分18とが手首の周りでも連結される。第1面ファスナー34と第3面ファスナー40とで構成される第2連結手段によって一端部32と他端部36とを連結することにより、手の甲側部分16の第1気室20と手の平側部分18の第2気室22との間で指が適切に挟まれるようになり、その間で指が適切に伸ばされるようにすることができる。また、第4面ファスナー42とベルト44、46とで構成される第3連結手段により手首周りで手の甲側部分16と手の平側部分18とを連結することにより、当該手指リハビリ用具10が指の側にずれてしまうことを防止することが可能となる。このようにして、当該手指リハビリ用具10は拘縮した手に装着される。
【0027】
手指リハビリ用具10が患者の手に装着されたら、第1気室20及び第2気室22内の圧縮空気の排気と、第1気室20及び第2気室22への圧縮空気の供給を周期的に繰り返すようにする。第1気室20及び第2気室22から圧縮空気が排気されると患者の指に加わっていた力が解除されて指は再び曲がった状態に戻り、第1気室20及び第2気室22に圧縮空気が供給されると患者の指は第1気室20と第2気室22との間で挟まれて伸びた状態となる。このように第1気室20及び第2気室22の膨縮を繰り返すことにより、拘縮した手の指の曲げ伸ばしを繰り返し行って、手のリハビリ運動を行なうことができる。圧縮空気を供給及び排気するタイミングや回数は患者の手の状態に応じて適宜変更することができる。シート状本体14は手の周りに筒状に装着されており、シート状本体14の上方から患者の手の指先を見ることができるようになっている。そのため、指に過度な力が作用して指がうっ血するなどの異常が生じていないかを容易に確認することができる。
【0028】
当該手指リハビリ用具10は、使用しないときには小さく折り畳んだ収納形態とすることができる。収納形態とする際には、
図4のように折り畳まれている手の平側部分18を
図10に示すように手の甲側部分16で覆うようにしてシート状本体14を折り畳む。そして、
図11に示すように、手の甲側部分16の第4面ファスナー42が配置された部分を手の甲側部分16と手の平側部分18との間に挿入することにより、第4面ファスナー42が手の甲側部分16の表面に張り付いて手の甲側部分16が折り畳まれた状態に保持される。さらに、ベルト44を第1面ファスナー34に貼り付けることにより、ベルト44の位置が固定されると共に手の甲側部分16が折り畳まれた状態に保持される。当該手指リハビリ用具10は、このようにしてコンパクトな収納形態に保持しておくことができる。手指リハビリ用具10は、使用後に収納形態にして仕舞っておくこともできるし、収納形態にして出荷するようにすることもできる。使用前に収納形態としておくことにより、使用する際に手の平側部分18を
図4のように折り畳む作業を行なう必要がなくなるため、患者の手に素早く装着することが可能となる。
【0029】
このように本実施形態に係る手指リハビリ用具10は、シート状本体14の手の平側部分18を小さく折り畳んだ状態で患者の拘縮した手の手の平と指との間に挿入して装着できるようになっているため、装着時に患者の指を殆ど開く必要がない。そして、第1連結手段(第1面ファスナー34、第2面ファスナー38)によって患者の手に仮装着した状態で圧縮空気の力によって患者の指を伸びた状態とするようになっているため、医師や理学療法士が患者の指を開く必要がなく、装着作業を容易に行なうことが可能となる。また、第2連結手段(第1面ファスナー34、第3面ファスナー40)及び第3連結手段(第4面ファスナー42、ベルト44、46)でさらにシート状本体14を連結することにより、より確実な装着を行なうことが可能となる。
【0030】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、第1乃至第3連結手段により手指リハビリ用具を手に装着するようにしているが、必ずしも3つの連結手段を用いる必要はなく、例えば第1連結手段のみとしたり、第1連結手段に加えて第2連結手段と第3連結手段とのうちの一方のみを備えるようにしたりしてもよい。また、各連結手段を構成する面ファスナーやベルトの配置は任意に変更可能である。例えば、第3連結手段を構成する面ファスナーを手の平側部分に配置し、ベルトを手の甲側部分に配置するようにしてもよい。さらには、各連結手段は面ファスナー以外の構成とすることもできる。そのような構成としては、例えば、フックやスナップボタンによるものがある。上記実施形態においては、圧縮空気が供給される気室が、第1気室、第2気室、及び連通路により構成された1つの繋がった気室となっているが、第1気室と第2気室とを相互に分離して配置して、第1気室と第2気室のそれぞれに独立して圧縮空気を供給するように構成することもできる。また、3つ以上の気室を備える構成としてもよい。空気供給口の位置は、使用形態に合わせて任意に変更可能であり、例えば装着したときに手首側となる位置に配置したり、手の甲の中央付近となる位置に配置したりしてもよいし、第1気室と第2気室にそれぞれ設けるなど複数の空気供給口を配置したりしてもよい。シート状本体の手の平側部分の折り畳み方や折り畳み回数は任意に変更可能であり、例えばさらに小さく折り畳むことにより、より容易に患者の手の平と指の間に挿入できるようにすることも考えられる。
【符号の説明】
【0031】
10 手指リハビリ用具
12 気室
14 シート状本体
14a 外側面
14b 内側面
16 手の甲側部分
18 手の平側部分
20 第1気室
22 第2気室
24 開口部
26 連通路
28 空気供給口
30 チューブ
31 チューブ
32 一端部
34 第1面ファスナー
36 他端部
38 第2面ファスナー
40 第3面ファスナー
42 第4面ファスナー
44 ベルト
46 ベルト
48 上部
50 下部
52 目印線
54 目印線
56 面ファスナー