(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179811
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】密閉構造体用冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20241219BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20241219BHJP
H01L 23/38 20060101ALI20241219BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F28D15/02 D
F28D15/02 K
F28D15/02 L
H01L23/46 B
H01L23/38
H05K7/20 S
H05K7/20 R
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098960
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】514118723
【氏名又は名称】中部抵抗器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107825
【弁理士】
【氏名又は名称】細見 吉生
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 久明
(72)【発明者】
【氏名】大串 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】竹市 剛志
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA07
5E322AA10
5E322AA11
5E322BA01
5E322BA04
5E322BA05
5E322BB03
5E322DB06
5E322DB08
5E322DC01
5F136AA01
5F136CC18
5F136CC24
5F136FA03
5F136JA03
(57)【要約】
【課題】 外気とペルチェ素子とで密閉構造体の内気を冷却する冷却装置において、ヒートパイプの管壁の熱伝導に起因するペルチェ素子の冷却効率の低下を生じさせない。
【解決手段】 冷却装置2Aは、a)内気流通部3に設けられる第1受熱フィン11と、ペルチェ素子4Aの吸熱面に熱的に接触する第1伝熱ブロック12と、これらに熱接合される第1ヒートパイプ13とを含む第1のヒートパイプユニット10、b)ペルチェ素子4Aの放熱面に熱的に接触する第2伝熱ブロック21と、外気流通部5に設けられる第2放熱フィン22と、これらに熱接合される第2ヒートパイプ23とを含む第2のヒートパイプユニット20、および、c)内気流通部3に設けられる第3受熱フィン31と、外気流通部5に設けられる第3放熱フィン32と、これらに熱接合される第3ヒートパイプ33とを含む第3のヒートパイプユニット30、を有するものとして構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉構造体の内気を冷却するための密閉構造体用冷却装置であって、
内気流通部に設けられる第1受熱フィンと、ペルチェ素子の吸熱面に熱的に接触する第1伝熱ブロックと、これらに一体的に熱接合される第1ヒートパイプとを含む第1のヒートパイプユニット、
ペルチェ素子の放熱面に熱的に接触する第2伝熱ブロックと、外気流通部に設けられる第2放熱フィンと、これらに一体的に熱接合される第2ヒートパイプとを含む第2のヒートパイプユニット、
および、内気流通部に設けられる第3受熱フィンと、外気流通部に設けられる第3放熱フィンと、これらに一体的に熱接合される第3ヒートパイプとを含む第3のヒートパイプユニット
を有することを特徴とする密閉構造体用冷却装置。
【請求項2】
内気流通部に設けられる上記の第1受熱フィンと第3受熱フィンとが、上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとの双方に熱接合する一体の内気側受熱フィンであることを特徴とする請求項1に記載の密閉構造体用冷却装置。
【請求項3】
上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとが、互いに一体となった受熱管部分を下部に有していて、
当該受熱管部分が上記の内気側受熱フィンに熱接合され、
当該受熱管部分の上方に分岐部を有し、当該分岐部の先に上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとが分かれて延び、それぞれが、上記分岐部よりも上方にある上記の第1伝熱ブロックおよび第3放熱フィンに熱接合されている
ことを特徴とする請求項2に記載の密閉構造体用冷却装置。
【請求項4】
上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとが、互いに一体となった受熱管部分を下部に有していて、
当該受熱管部分が上記の内気側受熱フィンに熱接合され、
当該受熱管部分の上方に分岐部を有し、当該分岐部の先に上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとが分かれて延び、それぞれが、上記分岐部よりも下方にある上記の第1伝熱ブロックと、上記分岐部よりも上方にある第3放熱フィンとに熱接合されていて、
上記の第1伝熱ブロックに熱接合された上記の第1ヒートパイプの下端が、上記の内気側受熱フィンと熱接合された上記受熱管部分の下端と連通されている
ことを特徴とする請求項2に記載の密閉構造体用冷却装置。
【請求項5】
上記の内気側受熱フィンが、上記の第1伝熱ブロックの側方の位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の密閉構造体用冷却装置。
【請求項6】
上記の第3ヒートパイプにおける上記第3放熱フィンの下端部と、上記の第1ヒートパイプにおける上記第1伝熱ブロックの上端部との間が、それらのヒートパイプに沿って、各ヒートパイプの外径の10倍以上の距離だけ離れていることを特徴とする請求項4または5に記載の密閉構造体用冷却装置。
【請求項7】
上記のペルチェ素子への電流の向きが変更可能であることにより、密閉構造体の内気を加熱することが可能であることを特徴とする請求項4または5に記載の密閉構造体用冷却装置。
【請求項8】
上記した第1~第3のヒートパイプユニットを略同一の平面内に含むヒートパイプユニット群が、略同一の高さに略平行に複数組み付けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の密閉構造体用冷却装置。
【請求項9】
上記した第1~第3のヒートパイプユニットを略同一の平面内に含むヒートパイプユニット群が、略同一の高さに略平行に複数組み付けられているとともに、隣接するヒートパイプユニット群の間で上記の分岐部同士が連通されていることを特徴とする請求項3~5に記載の密閉構造体用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱する電子機器類を内部に有する筐体等の密閉構造体につき、内気(内部の空気)を冷却するための密閉構造体用冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉構造体の内気を冷却する装置として下記の特許文献1に記載のものがある。同文献1には
図9の構成が示されており(図中の大きめの文字による符号とそれへの引出し線は本件明細書での説明用に追記した)、冷却装置2’が、密閉構造体1’の内気をヒートパイプ81とペルチェ素子82、および外気を用いて冷却する。すなわち、内気流通部83から外気流通部84にかけてヒートパイプ81を取り付け、内気流通部83においてそのヒートパイプ81に受熱部85を設ける一方、外気流通部84において、同じヒートパイプ81の上端部と中ほどの部分とにそれぞれ第1および第2の放熱部86・87を設けている。第1放熱部86は、ファンを用いてヒートパイプ81を外気で冷却する部分であり、第2放熱部87は、ヒートパイプ81にペルチェ素子82の吸熱面を熱的に接触させた部分である。そのペルチェ素子82の放熱面は、上記とは別のファンによって冷却している。ヒートパイプ81内の作動液は、受熱部85で受け取った熱量を第2放熱部87および第1放熱部86において外気に放出するため、密閉構造体1’の内気を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の冷却装置2’には、下記の点で改善の余地があると考えられる。すなわち、
・ 第1および第2の放熱部86・87を同時に機能させる場合、第1放熱部86に熱的に接触しているヒートパイプの表面温度は、第2放熱部87でペルチェ素子82の吸熱面(低温面)と熱的に接触しているヒートパイプの表面温度よりも高くなる。そのため、第1放熱部86からペルチェ素子82の吸熱面に向けてヒートパイプ81の管壁の熱伝導による伝熱が生じ、その伝熱量の分だけペルチェ素子82による密閉構造体の内気を冷却する能力が低下する。一般的なヒートパイプの管壁材料としては熱伝導の高い銅、アルミ等の金属が使用されるため、この熱伝導の影響によるペルチェ素子82の冷却効率の低下は無視できない。
・ ヒートパイプ81に沿って設けられた上記の第1放熱部86および第2放熱部87が、密閉構造体1’の壁面に沿った外気流通部84の上下に配置されていて、それぞれの放熱部86・87にファンを設けて冷却風を導入しているため、ファンおよび通風部のスペースが大きくなり、装置が大型化しがちである。
【0005】
本発明は上記の点を考慮して、ヒートパイプの管壁の熱伝導に起因するペルチェ素子の冷却効率の低下を生じさせない等の利点を有する、改善された冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、密閉構造体の内気を冷却するための密閉構造体用冷却装置であって、
a) 内気流通部に設けられる第1受熱フィンと、ペルチェ素子の吸熱面に熱的に接触する第1伝熱ブロックと、これらに一体的に熱接合(伝熱可能に接合することをいう。以下同様)される第1ヒートパイプとを含む第1のヒートパイプユニット、
b) ペルチェ素子の放熱面に熱的に接触する第2伝熱ブロックと、外気流通部に設けられる第2放熱フィンと、これらに一体的に熱接合される第2ヒートパイプとを含む第2のヒートパイプユニット、および、
c) 内気流通部に設けられる第3受熱フィンと、外気流通部に設けられる第3放熱フィンと、これらに一体的に熱接合される第3ヒートパイプとを含む第3のヒートパイプユニット
を有することを特徴とする。
なお、上記において、受熱フィン、伝熱ブロック、ヒートパイプおよび放熱フィンのそれぞれには、ヒートパイプユニットの番号(第1~第3)に合わせて番号付けしている。したがって各名称中の番号は連番とはなっておらず、「第1放熱フィン」「第2受熱フィン」の名は上記説明中にない。
本発明による冷却装置の一例を
図1に示している。図示の冷却装置2Aは、密閉構造体1の内気を冷却する装置であって、上記a)~c)に該当する各ヒートパイプユニット10・20・30を有している。
【0007】
上記発明によると、
・ 第1のヒートパイプユニットにおいて、第1ヒートパイプにより内気からペルチェ素子の吸熱面に熱輸送されるため、内気がペルチェ素子によって冷却される。
・ 第2のヒートパイプユニットにおいて、第2ヒートパイプによりペルチェ素子の放熱面が外気で冷却される。
・ 第3のヒートパイプユニットにおいて、第3ヒートパイプにより内気が外気で冷却される。
そして上記の構成では、内気流通部の第1受熱フィンに熱接合された第1ヒートパイプの上端はペルチェ素子(第1伝熱ブロック)との接触部分にとどまり、外気流通部にまでは延伸していない。内気流通部の第3受熱フィンから外気流通部の第3放熱フィンにまで延びているのは、第1ヒートパイプとつながっていない第3ヒートパイプであり、これにペルチェ素子は熱接合されていない。そのため、ペルチェ素子による内気冷却と外気による内気冷却とを同時に実施しても、外気流通部からペルチェ素子の冷却面への伝熱が生じない。したがって、ペルチェ素子が冷却し得る熱量の全てが内気の冷却に利用でき、ペルチェ素子による内気の冷却効率の低下が生じない。
なお、ペルチェ素子は、ヒートポンプに比べて冷却性能が低く、冷却効率が極めて低いので、上記のような伝熱を生じさせないことは、ペルチェ素子の冷却性能を内気冷却に有効に利用するために重要である。その点は、ひいてはペルチェ素子の使用電力の低減にも大きく寄与するので、省エネ運転を可能にするともいえる。
【0008】
上記発明の冷却装置においては、さらに、内気流通部に設けられる上記の第1受熱フィンと第3受熱フィンとが、上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとの双方に熱接合する一体の内気側受熱フィンであると好ましい。
たとえば、
図1の装置では第1受熱フィン11と第3受熱フィン31とが分離した別々のものであるが、両者を一体にした共通の受熱フィンにするわけである。
【0009】
第1受熱フィンと第3受熱フィンとが、上記のように第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとの双方に熱接合する一体の内気側受熱フィンであるなら、ペルチェ素子による冷却か外気による冷却かの単独での運転をする際、受熱フィンの有効伝熱表面積を(
図1に示した例よりも)実質上拡大して使用することができ、それぞれの冷却性能を向上できる。
【0010】
発明の冷却装置においてさらに、
上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプの下方の一部が、互いに一体となった受熱管部分を有していて、
当該受熱管部分が上記の内気側受熱フィン(上記のとおり第1受熱フィンと第3受熱フィンとが一体になったもの)に熱接合され、
当該受熱管部分の上方に分岐部があり、当該分岐部の先に上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとが分かれて延び、それぞれが、上記分岐部よりも上方にある上記の第1伝熱ブロックおよび第3放熱フィンに熱接合されている
との構成をとるのも好ましい。
こうした冷却装置の一例を
図4に示す。図示の冷却装置2Bでは、上記第1・第3のヒートパイプユニット10・30における第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33とについて、下方の一部が、一体の受熱管部分43を形成し、その受熱管部分43が内気側受熱フィン41に熱接合されている。第2のヒートパイプユニット20については、上述の(
図1の)構成と変わりがない。
【0011】
こうした構成により、冷却装置の受熱部を簡素化できるので、製作コストの低減が図れる。また、受熱部の簡素化にともなって内気側の通風抵抗が低減されるため、内気ファンの風量を増大でき、装置の冷却性能を向上させることができる。
この冷却装置では、受熱管部分において内気側受熱フィンにより内気で加熱されて発生した作動液の蒸気は、分岐部を経由して第1ヒートパイプ内に上昇し、第1伝熱ブロックを介してペルチェ素子により冷却されて凝縮液化し、受熱管部分に下降して再び内気側受熱フィンにて加熱される。また、内気の温度が外気温より高い場合、受熱管部分において内気側受熱フィンにより内気で加熱されて発生した作動液の蒸気の一部は、分岐部を経由して第3ヒートパイプ内に移動し、第3放熱フィンにて外気で冷却されて凝縮液化し、受熱管部分に下降して再び内気側受熱フィンで加熱される。こうした動作が自動的に繰り返されて、内気がペルチェ素子または外気により冷却される。
なお、前記構成(
図1の例によるもの)においても、外気による冷却およびペルチェ素子による冷却のそれぞれ単独運転時には、内気からの受熱に寄与する受熱フィンの表面積は内気流通部に配置されているフィンの片側部分になるので、上記(
図4の例によるもの)のように受熱管部分を設けるとともに内気側受熱フィンを半減させても、前記構成の場合と同一の冷却性能を得ることができる。
【0012】
発明の冷却装置において、あるいはさらに、
上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプの下方の一部が、互いに一体となった受熱管部分を有していて、
当該受熱管部分が上記の内気側受熱フィンに熱接合され、
当該受熱管部分の上方に分岐部を有し、当該分岐部の先に上記の第1ヒートパイプと第3ヒートパイプとが分かれて延び、それぞれが、上記分岐部よりも下方にある上記の第1伝熱ブロックと、上記分岐部よりも上方にある第3放熱フィンとに熱接合されていて、
上記の第1伝熱ブロックに熱接合された上記の第1ヒートパイプの下端が、上記の内気側受熱フィンと熱接合された上記受熱管部分の下端と連通されている
との構成をとるのも好ましい。
こうした冷却装置の一例を
図5に示す。上記第1・第3のヒートパイプユニット10・30における第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33との一部が、互いに一体となった受熱管部分53を下部に有し、その受熱管部分53が内気側受熱フィン41に熱接合されている。受熱管部分53の上方にある分岐部Yの先に第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33とが分かれて延び、それぞれが、下方にある第1伝熱ブロック12と上方にある第3放熱フィン32とに熱接合されている。そして、第1伝熱ブロック12に熱接合された第1ヒートパイプ13の下端が、連通管54にて受熱管部分53の下端と連通されている。
【0013】
こうした構成の冷却装置では、受熱管部分において内気側受熱フィンにより内気で加熱されて発生した作動液の蒸気が、分岐部を経由して第1ヒートパイプ内に移動し、第1伝熱ブロックを介してペルチェ素子により冷却されて凝縮液化する。液化した作動液は、第1ヒートパイプの下端から、連通管54を通って受熱管部分に環流し、元の内気側受熱フィンより受熱する。作動液のこの動作が自動的に繰り返されることで、内気からペルチェ素子の吸熱面に熱が移動して内気が冷却される。
また、内気の温度が外気温よりも高い場合は、受熱管部分において内気側受熱フィンにより内気で加熱されて発生した作動液の蒸気の一部は、分岐部を経由して第3ヒートパイプ内に移動し、第3放熱フィンにて外気で冷却されて凝縮液化し、元の受熱管部分に戻って受熱フィンから受熱する。この動作が自動的に繰り返されて、内気が外気により冷却される。
【0014】
図5に例示される上記構成の冷却装置において、内気側受熱フィンが、第1伝熱ブロックの側方(すなわち第1伝熱ブロックと概ね同じ高さ)の位置に配置されていると好ましい。
図5の例でも、内気側受熱フィン41を第1伝熱ブロック12の側方の、それとほぼ同じ高さ、すなわち
図1や
図4に示す位置よりも上方に設けている。
【0015】
内気側受熱フィンを上記のように第1伝熱ブロックの側方に配置すると、冷却装置の下部のスペースを削減することができ、その分だけ装置の高さ寸法を低減して装置をコンパクトにすることが可能になる。
【0016】
図5に例示される上記構成の冷却装置において、第3ヒートパイプにおける第3放熱フィンの下端部と、第1ヒートパイプにおける第1伝熱ブロックの上端部との間が、それらのヒートパイプに沿って、各ヒートパイプの外径の10倍以上の距離だけ離れているのが好ましい。
図5の例について述べると、上記は、第3放熱フィン32の下端部から第1伝熱ブロック12の上端部までの、ヒートパイプ33・13に沿った距離(伝熱距離)を確保することに該当する。ヒートパイプ33・13の外径が同じでない場合を想定して述べると、第3放熱フィン32の下端部から分岐部Yまでの第3ヒートパイプ33について外径がD33、長さがL33であり、分岐部Yから第1伝熱ブロック12の上端部までの第1ヒートパイプ13について外径がD13、長さがL13である場合、上記は、
L33/D33 + L13/D13 ≧ 10
とすることを示している。
【0017】
図5に例示される上記構成の冷却装置において、第3ヒートパイプの第3放熱フィンの下端部から第1伝熱ブロックの上端部までのパイプの距離は、それが短い方が、冷却装置をコンパクトにするうえでは好都合である。しかし、その距離が短すぎると、パイプの熱伝導による外気(放熱フィン)から第1伝熱ブロックへの伝熱影響のために、ペルチェ素子による内気の冷却効率が低下する。
上記のように当該距離をヒートパイプの外径の10倍以上にすると、ヒートパイプの管壁の熱伝導による伝熱量を、当該距離の無い(ヒートパイプの外径と同等レベルの)場合と比べて5分の1程度に低減することができる。それは、
図6に示す後述の検討結果によって説明できる。管壁の熱伝導による伝熱は第1伝熱ブロックを介してペルチェ素子に及ぶので、上記のように伝熱量を低減できると、ペルチェ素子による内気の冷却性能の低下を十分に抑制できることになる。冷却装置をコンパクトにする点を考慮して、当該距離はヒートパイプの外径の10倍以上・20倍以下の程度にすると有利である。
【0018】
図5に例示される上記構成の冷却装置において、ペルチェ素子への電流の向きが変更可能であり密閉構造体の内気を加熱できる、という構成をとるのも好ましい。
ペルチェ素子は、供給される電流の向きが逆になる(プラス・マイナスが入れ替わる)と、放熱面と吸熱面とが入れ替わるという特性を有している。
【0019】
ペルチェ素子への電流の向きが変更可能であると、密閉構造体の内気を加熱することも可能になる。電流の向きを逆にすると、ペルチェ素子の放熱面と吸熱面とが入れ替わり、第1伝熱ブロックがその素子の放熱面側となり高温になるからである。そうなると、放熱フィンへの外気の流れを停止させた場合、第1伝熱ブロックで加熱されて発生した作動液の蒸気が、第1ヒートパイプから分岐部を経由して受熱管部分に進み、内気側受熱フィンにおいて凝縮し内気に放熱する。
図5の例では、図示のループ回路内において作動液の蒸気が破線矢印とは反対方向(図において右回転)に流れ、内気側受熱フィンにて内気に放熱するわけである。つまり、上のようにした装置は、内気の冷却用のみならず内気の加熱用にも使用して、密閉構造体内の空気を常温よりも高い温度に保つことが可能になる。
【0020】
発明の冷却装置において、第1~第3のヒートパイプユニットを略同一の平面内に含むヒートパイプユニット群が、略同一の高さに略平行に複数組み付けられているのも好ましい。
【0021】
上記した第1~第3のヒートパイプユニットを一組のみ有する冷却装置では、発熱する複数の電子機器を内部に有する通常の規模の密閉構造体について十分に内気を冷却することは難しい。そのため、上記ヒートパイプユニットのセット(群)を複数組み込んで冷却装置を構成するのが一般的である。
それに関し、上記のように、第1~第3のヒートパイプユニットが略同一の平面内に含まれるようにヒートパイプユニット群を構成し、同様のヒートパイプユニット群を略同一の高さに略平行に複数組み付けることとすると、十分な冷却能力を有する冷却装置をコンパクトに構成することが可能になる。
【0022】
ヒートパイプユニット群が上記のように構成され複数配置された冷却装置において、隣接するヒートパイプユニット群の間で上記の分岐部同士が連通されているとさらに好ましい。
図7および
図8は、図の紙面に対して垂直の方向に複数のヒートパイプユニット群が上記のとおり組み付けられた冷却装置における一組のヒートパイプユニット群を示すもので、隣接するヒートパイプユニット群における分岐部X(またはY)同士を、大径化したヘッダ管Xa(またはYa)によって連通させた例を示している。
【0023】
隣接するヒートパイプユニット群の間で分岐部同士が連通されていると、複数あるヒートパイプユニット群において、作動液の蒸気圧力が均一化され、作動液が特定のヒートパイプユニット群に偏在してしまうことが防止され、安定した冷却動作が行える。
【発明の効果】
【0024】
発明の密閉構造体用冷却装置によれば、外気による内気の冷却とペルチェ素子による内気の冷却とを同時に、または個別に実施することができ、もって内気の冷却を効率的に行うことができる。上記双方の冷却を同時に実施する場合にも、外気流通部からペルチェ素子の冷却面へのヒートパイプの管壁を通じた伝熱が生じないことから、ペルチェ素子による冷却能力の全てが内気の冷却に利用でき、冷却効率を高く保つことができる。
また、ヒートパイプユニットの構成とペルチェ素子の使用法によっては、密閉構造体の内気を加熱することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】発明の第1の実施例としての密閉構造体用冷却装置2Aを示す断面図である。なお、図の上方が鉛直方向の上方であり、各ヒートパイプについては、作動液の液面を示すとともに蒸気流(破線の矢印)と液流(実線の矢印)とのそれぞれの向きを示している(
図1~
図5および
図7・
図8においても同じ)。
【
図2】
図1の冷却装置2Aについて改変例を示す断面図である。
【
図3】
図1の冷却装置2Aについて別の改変例を示す断面図である。
【
図4】発明の第2の実施例としての密閉構造体用冷却装置2Bを示す断面図である。
【
図5】発明の第3の実施例としての密閉構造体用冷却装置2Cを示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、
図5の冷却装置2Cにおける第3放熱フィン32の下端部から第1伝熱ブロック12の上端部までのヒートパイプ33・13の距離(伝熱距離)Lを示す模式図であり、同(b)は、その距離Lとヒートパイプの管壁の熱伝導による伝熱量との関係を示す線図である。
【
図7】
図4の冷却装置2Bについて、隣接するヒートパイプユニット群における分岐部X同士を、大径化したヘッダ管Xaによって連通させた例を示す断面図である。
【
図8】
図5の冷却装置2Cについて、隣接するヒートパイプユニット群における分岐部Y同士を、大径化したヘッダ管Yaによって連通させた例を示す断面図である。
【
図9】特許文献1に示された密閉構造体用冷却装置2’を示す断面図である。本件明細書での説明のために、
図9では、大きい文字の符号とそれへの引出し線を追記している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の第1の実施例を
図1に示す。
密閉構造体1は電子機器類(図示省略)を内部に有する筐体であり、内気を冷却するために側部に冷却装置2Aを付属させている。冷却装置2Aは、ケーシング2aの内側に、内気流通部3とペルチェ素子部4と外気流通部5との3部分を、下部から上部にかけてこの順に有している。隣接する2部分の間は隔壁で仕切られていて、内気流通部3の内部のみが密閉構造体1の内部空間と通じている。内気流通部3では、密閉構造体1と通じた密閉空間内に内気ファン3Aが設けられていて、内気をその空間内に流して密閉構造体1内へ戻すことができる。そのファン3Aの作用により、密閉構造体1の内部には図中に矢印で示す内気の循環流が形成される。また、外気流通部5には、外気ファン5Aが排気口に設けられるとともに外気流入口5Bが形成されていて、外気を通過させ得るようになっている。
【0027】
冷却装置2Aの内部には、つぎのように3つのヒートパイプユニット10・20・30を取り付けている。すなわち、
1) 第1のヒートパイプユニット10: 内気流通部3に設けられた第1受熱フィン11と、ペルチェ素子4Aの吸熱面に熱的に接触している第1伝熱ブロック12と、これらに一体的に熱接合された第1ヒートパイプ13とを有している。
2) 第2のヒートパイプユニット20: ペルチェ素子4Aの放熱面に熱的に接触している第2伝熱ブロック21と、外気流通部5に設けられた第2放熱フィン22と、これらに一体的に熱接合された第2ヒートパイプ23とを有している。
3) 第3のヒートパイプユニット30: 内気流通部3に設けられた第3受熱フィン31と、外気流通部5に設けられた第3放熱フィン32と、これらに一体的に熱接合された第3ヒートパイプ33とを有している。
【0028】
このようにヒートパイプユニット10・20・30を配置した冷却装置2Aには、つぎのような作用がある。
・ 第1のヒートパイプユニット10においては、内気ファン3Aで送られる密閉構造体1の内気が第1受熱フィン11を介して第1ヒートパイプ13に熱を伝え、また、その熱を第1ヒートパイプ13が上方へ輸送し、第1伝熱ブロック12を介してペルチェ素子4Aの吸熱面に伝える。そのため、内気がペルチェ素子4Aによって冷却される。
・ 第2のヒートパイプユニット20においては、ペルチェ素子4Aの放熱面の熱を、第2伝熱ブロック21を介し第2ヒートパイプ23が受け取って上方の外気流通部5に輸送し、そこで第2放熱フィン22を介して外気に放散する。ペルチェ素子4Aの放熱面の冷却は、こうして第2のヒートパイプユニット20により効果的に行われる。ペルチェ素子4Aの放熱面が十分に冷却されると、そのペルチェ素子4Aの吸熱面の温度も低下するため、ペルチェ素子4Aによる上記した内気の冷却が円滑に行われる。
・ 第3のヒートパイプユニット30においては、内気ファン3Aで送られる密閉構造体1の内気が第3受熱フィン31を介して第3ヒートパイプ33に熱を伝え、また、その熱を第3ヒートパイプ33が上方の外気流通部5に輸送し、そこで第3放熱フィン32を介して外気に放散する。そのため、内気が外気によって冷却される。
【0029】
図1のように構成した冷却装置2Aでは、第1ヒートパイプ13の上部はペルチェ素子4Aの吸熱面側(第1伝熱ブロック12)とのみ熱的に接合し、第3ヒートパイプ33は外気流通部5の第3放熱フィン32とのみ熱的に接合している。つまり、外気流通部5からペルチェ素子4Aの冷却面への伝熱が生じないようにしている。そのため、ペルチェ素子4Aによる内気冷却と外気による内気冷却とを同時に実施しても、ペルチェ素子4Aによる内気冷却の効率が低下しない。
【0030】
また、この冷却装置2Aでは、第2放熱フィン22と第3放熱フィン32とを外気の流通部5に直列に配置し、共通の外気ファン5Aで外気を流すことにより双方のフィン22・32を冷却している。したがって、外気ファンの数を最少にするとともに外気の流通部5のスペースを小さくすることが可能となり、装置を低コストかつコンパクトなものに構成している。
【0031】
図1の冷却装置2Aについては、構成の一部をつぎのように改変することもできる。
a) 内気流通部3に設けられる第1受熱フィン11と第3受熱フィン31とは、共通のフィンとしてもよい。すなわち、2組のフィン11・31を、第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33との双方に熱接合する一体のフィンにすることが可能である。
b)
図2に示すように、第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33とを、U字状に連続する一体のものとするのもよい。図のようにU字状に連続させたヒートパイプ13・33を使用すると、それらが連続していない
図1の場合に比べてヒートパイプ13・33の下端部の接合加工が省略でき、内部の脱気および作動液の充填作業が半減できるので、製作コストの低減が図れる。
c)
図3のように、U字状に連続させたヒートパイプ13・33(または連続させていない個々のヒートパイプ13・33)を延伸し屈曲させて、当該ヒートパイプ13・33とそれらに熱的に接触している受熱フィン11・31とを密閉構造体1の筐体の内部に配置するようにしてもよい。このようにすると、冷却装置2Aの高さ寸法を低減できるとともに、受熱フィン11・31を通過する構造体1の内気の流れを円滑にすることができるので、内気をより効率的に冷却することが可能になる。
【0032】
図4には発明の第2の実施例を示している。この例は、
図1の実施例における第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33との一部を一体にしたもので、
図1の例とは下記の点で異なっている。
4) 第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33とのそれぞれの下部(分岐部Xより下方の部分)に、互いに一体となった受熱管部分43を連続させ、
5) 受熱管部分43を、前記の第1受熱フィン11と第3放熱フィン31とを一体にした内気側受熱フィン41に熱接合し、
6) 受熱管部分43の上方にある分岐部Xの先に第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33とを分岐させた状態で延伸させ、ヒートパイプ13・33のそれぞれを、分岐部Xよりも上方にある第1伝熱ブロック12と第3放熱フィン32に熱接合している。
【0033】
第1ヒートパイプ13の一部と第3ヒートパイプ33の一部とが受熱管部分43として一体になっているとしても、
図4の冷却装置2Bでは、
図1の冷却装置2Aと同様の作用により、密閉構造体1の内気をペルチェ素子4Aおよび外気によって冷却することができる。
そしてやはり、外気流通部5からペルチェ素子4Aの冷却面への伝熱が生じ難いため、ペルチェ素子4Aによる内気冷却と外気による内気冷却とを同時に実施しても、ペルチェ素子4Aによる内気冷却の効率は低下することがない。
また、この例では、受熱管部分43と内気側受熱フィン41からなる受熱部を簡素化できるので、装置の製作コストを低減できる。受熱部の簡素化にともなって内気側の通風抵抗を低減できるので、内気ファンの風量を増大することにより装置の冷却性能を向上させることも可能である。
【0034】
図5には発明の第3の実施例を示している。この例は、
図1の実施例における第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33との一部を受熱管部分43として一体にするとともに、ペルチェ素子4Aや内気側受熱フィン41の配置を変更し、またヒートパイプ13と受熱管部分43との各下端部を連通させてループ回路を形成したものである。すなわち、第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33とのそれぞれの下部に、互いに一体となった受熱管部分53を連続させ、その受熱管部分53を内気側受熱フィン41に熱接合しているという特徴を有するほか、
図1または
図4の例と異なる下記の特徴を有している。
7) 受熱管部分53の上方にある分岐部Yの先に第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33とを分岐させた状態で延伸させ、ヒートパイプ13・33のそれぞれを、分岐部Yよりも下方にあるペルチェ素子4A(吸熱面側)の第1伝熱ブロック12と、分岐部Yよりも上方にある第3放熱フィン32に熱接合し、
8) 第1伝熱ブロック12に熱接合した第1ヒートパイプ13の下端を、内気側受熱フィン41と熱接合した受熱管部分53の下端に対し連通管54によって連通させている。
なお、
図5に示すとおり、内気流通部3の内部には、内気ファン3Aおよび内気側受熱フィン41とともに、ペルチェ素子4Aの第1伝熱ブロック12、ならびにそれらに熱接合したヒートパイプを配置している。ペルチェ素子部4には、ペルチェ素子4Aとその放熱面側に接触させた第2伝熱ブロック21、およびそれらに熱接合したヒートパイプ23を配置している。
【0035】
図5の構成をもつ冷却装置2Cでは、つぎのような作用により内気が冷却される。
・ 受熱管部分53において内気側受熱フィン41により内気で加熱されて発生した作動液の蒸気は、分岐部Yを経由して第1ヒートパイプ13内に移動し、第1伝熱ブロック12を介してペルチェ素子4Aにより冷却されて凝縮液化する。液化した作動液は、第1ヒートパイプ13の下端から、連通管54を通って受熱管部分53に環流し、元の内気側受熱フィンから受熱する。作動液のこの動作が自動的に繰り返されることで、内気からペルチェ素子の吸熱面に熱が移動して内気が冷却される。
・ 内気の温度が外気温よりも高い場合は、受熱管部分53において内気側受熱フィン41により内気で加熱されて発生した作動液の蒸気の一部は、分岐部Yを経由して第3ヒートパイプ33内に移動し、第3放熱フィン32にて外気で冷却されて凝縮液化し、元の受熱管部分53に戻って受熱フィン41から熱を受け取る。この動作が自動的に繰り返されて、内気が外気により冷却される。
【0036】
また、この冷却装置2Cでは、内気側受熱フィン41を、第1伝熱ブロック12の側方であって同ブロック12とほぼ同じ高さに配置している。
図1の受熱フィン11・31や
図4の内気側受熱フィン41に比べて上方に設けたことになる。これにより、装置の下部のスペースを削減することができ、その分だけ高さ寸法を低減して装置をコンパクトに構成できている。
【0037】
図5の冷却装置2Cは、ペルチェ素子4Aへ供給する直流電流の向きを変更できるよう構成している。電流の向きを逆にすると、ペルチェ素子4Aの放熱面と吸熱面とを入れ替えることができ、同じ装置2Cを用いて密閉構造体の内気を加熱することも可能になるからである。その場合、第1伝熱ブロック12を放熱面側(高温)にすると、放熱フィン32への外気の流れを停止させたとき、第1ヒートパイプ13内の作動液が第1伝熱ブロック12で加熱されて蒸気となり、分岐部Yを経由して受熱管部分53に進み、内気側受熱フィン41で凝縮して内気に放熱する。
【0038】
図1・
図4に示した装置とは違って、
図5の冷却装置2Cでは、ペルチェ素子4Aの吸熱面側(低温側)に熱的に接合している第1ヒートパイプ13の上部が、外気流通部5の第3放熱フィン32に熱的に接合している第3ヒートパイプ33とつながっている。そのため、外気流通部5からペルチェ素子4Aの冷却面へかけて管壁の熱伝導による伝熱が生じ得る。
図6(a)はその伝熱系統に関するもので、第3放熱フィン32の下端部から伝熱ブロック12の上端部までの、距離(伝熱距離)Lのヒートパイプ13・33の管壁を通じて、伝熱量Qがペルチェ素子4Aに伝わることを示している。
【0039】
ヒートパイプの容器(管壁)が銅管の場合について、高温部(外気流通部5の第3放熱フィン32の下端部)から低温部(吸熱面側の伝熱ブロック12)への管壁の熱伝導による伝熱量を計算した例を
図6(b)に示す。銅管は外径Dが8mm(内径7mm)で、25℃の外気が第3放熱フィン32に強制通風され、伝熱ブロック12の温度が0℃に維持される条件で、パイプ一本あたりの管壁の熱伝導による伝熱量Qを計算したものである。
高温部の下端面から低温部の上端面までの距離Lの増加にともなって上記の伝熱量Qは低下するが、距離Lが外径Dの10倍程度以上になると、Lの増加はQの低下にあまり寄与しなくなる。Lを極端に大きくとると伝熱量Qは限りなくゼロに近づくが装置が大型化する。しかし、伝熱距離Lをパイプ外径Dの10倍程度確保することで、管壁の熱伝導による伝熱量Qを、伝熱距離の無い(外径Dと同等レベルの)場合と比べて1/5程度に低減できる結果となっている。
ヒートパイプの使用方法にもよるが、一般的な条件(例えば外気が25℃、ペルチェ素子の低温面温度が0℃)で、伝熱距離をとらない(パイプ外径と同等レベルの)の場合の上記伝熱量はペルチェ素子自体が発揮する冷却能力Qcの20~30%程度に達するので、内気の冷却性能がその分だけ低下する。しかし、伝熱距離をパイプ外径の10倍以上とったときの伝熱量は、伝熱距離がパイプ外径と同等レベルでの伝熱量に比べて1/5程度に低下するので、ペルチェ素子による内気の冷却性能の低下を5%程度以下に抑えることができる。
【0040】
このように、
図5の構成の冷却装置2Cにおいても、第3ヒートパイプ33における放熱フィン32の下端面から、第1ヒートパイプ13における第1伝熱ブロック12の上端面までのパイプの距離を適切な程度確保することにより、パイプの熱伝導による外気からの伝熱影響を最小限に抑えることことができる。それにより、ペルチェ素子4Aによる内気の冷却効率の低下を十分に抑制することができる。
【0041】
図7は、
図4の冷却装置2Bを一部改変した例を示す断面図である。
図1~
図5に示したいずれの冷却装置も、ヒートパイプユニット10・20・30を1組のみ有するものとして構成されることは稀であり、通常はヒートパイプユニット10・20・30を略同一の平面内に収めたヒートパイプユニット群を複数配置して構成される。
図7の例も、図示のヒートパイプユニット群が図の紙面と垂直の方向に複数配置されていて、図には、そうしたヒートパイプユニット群の1組のみを示している。
図7の冷却装置2Bでは、
図4の例と同様の図示のヒートパイプユニット群を略同一の高さに略平行に複数組配置するとともに、隣接するヒートパイプユニット群の間で、第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33との分岐部X同士を、やや太めのヘッダ管Xaによって連通させている。
こうしたことにより、冷却装置2Bを、十分な冷却能力を有するコンパクトなものに構成できるとともに、複数あるヒートパイプユニット群のいずれかに作動液が偏在してしまう不都合を防止できる。
【0042】
図8には、
図5の冷却装置2Cの一部を改変した例を示している。この例も、図示のヒートパイプユニット群が紙面と垂直の方向に複数配置されたものであり、そうしたヒートパイプユニット群の1組のみを
図8に示している。
図8の冷却装置2Cでも、
図5の例と同様に構成したヒートパイプユニット群を略同一の高さに略平行に複数組配置するとともに、隣接するヒートパイプユニット群の間で、第1ヒートパイプ13と第3ヒートパイプ33との間の分岐部Y同士を、やや太めのヘッダ管Yaで連通させている。またさらに、図示のように、第1ヒートパイプ13の下端と受熱管部分53の下端とをつなぐ連通管54の一部を、隣接するヒートパイプユニット群の間でやや太めのヘッダ管54aにより連通させるのもよい。
こうした構成により、冷却装置2Cを、十分な冷却能力を有するコンパクトなものに構成するとともに、いずれかのヒートパイプユニット群に作動液が偏在してしまう不都合を防止することができる。
【0043】
以上に示した冷却装置2A~2Cは、内気と外気との温度差に基づく外気による冷却(以下、外気冷却と略す)と、ペルチェ素子による冷却(以下、ペルチェ冷却と略す)とを併用することによって密閉構造体(筐体)の内気を冷却するものであるが、消費するエネルギーを節約するためには、以下のように適宜に切り替えて運転することが好ましい。
・ ペルチェ素子は、加えた電力がそのまま熱に変換されるので、ヒートポンプに比べると冷却効率が極めて悪い。そのため、外気温に関係なく常にペルチェ素子のみで冷却することは省エネ運転上不都合である。
・ 以上に示した各冷却装置では、外気冷却とペルチェ冷却とを同時に行うことも、それぞれ単独で行うことも可能である。
・ 電子機器の使用環境温度としての筐体内空気温度は、電子機器の種別と条件にもよるが一般的に27℃~40℃程度の値が推奨されている。
・ 例えば、筐体の内気温度を35℃に維持する場合の運転を例にすると、
i) 外気温20℃において外気冷却のみで筐体内の熱負荷を処理できる場合、外気温20℃以下ではペルチェ素子を駆動させず外気冷却のみ(外気ファンのみ)の運転とする。
ii) 外気温が20℃から35℃の範囲では、外気冷却のみでは筐体内の熱負荷に対応できないので、不足する熱処理分をペルチェ冷却により行うように、外気冷却とペルチェ冷却を併用する。
iii) 外気温が35℃を超えると、外気冷却による放熱能力が無くなるので、ペルチェ素子のみでの運転とする。
・ 以上のように外気冷却とペルチェ冷却を併用することで、通年での運転電力を最小限とする省エネ運転を行うことができる。
【0044】
また、上記した冷却装置2A~2Cにおいて、各ヒートパイプの作動液を動作温度に応じて選定するのも、有利な使用法である。
たとえば、ペルチェ素子による冷却において、ペルチェ素子の吸熱面に熱的に接触している第1のヒートパイプの動作温度は常温よりも低くなるので、作動液として、常温以下の使用において十分なヒートパイプ動作を行うフッ素系作動液を使用するとよい。一方、ペルチェ素子の放熱面に熱的に接触している第2のヒートパイプの動作温度は常温よりも高くなるので、作動液として常温以上の使用で優れたヒートパイプ動作を発揮する水を使用することができる。そのようにすると、広範な温度範囲で使用でき、総合的に性能の高い冷却装置を得ることができる。
【0045】
なお、上記において、冷却装置2A~2Cは密閉構造体の内気を冷却するものとして述べたが、電子部品等の発熱体を直接冷却するために使用することもできる。例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の電子部品を、受熱フィンの無いヒートパイプの蒸発部に熱的に接触させて直接に冷却するといった用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 密閉構造体
2A・2B・2C 冷却装置
3 内気流通部
4 ペルチェ素子部
4A ペルチェ素子
5 外気流通部
10 第1のヒートパイプユニット
11 第1受熱フィン
12 第1伝熱ブロック
13 第1ヒートパイプ
20 第2のヒートパイプユニット
21 第2伝熱ブロック
22 第2放熱フィン
23 第2ヒートパイプ
30 第3のヒートパイプユニット
31 第3受熱フィン
32 第3放熱フィン
33 第3ヒートパイプ
41 内気側受熱フィン
43・53 受熱管(合流管)部分
54 連通管
X・Y 分岐部
Xa・Ya・54a ヘッダ管