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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179819
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】駆動輪及び台車
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/06 20060101AFI20241219BHJP
   F16H 1/12 20060101ALI20241219BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20241219BHJP
   B62D 7/14 20060101ALI20241219BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16H1/06
F16H1/12
F16H48/08
B62D7/14 Z
B62B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098978
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 紘
【テーマコード(参考)】
3D034
3D050
3J009
3J027
【Fターム(参考)】
3D034CB09
3D034CC18
3D034CD12
3D034CE05
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050KK03
3D050KK14
3J009DA17
3J009EA05
3J009EA11
3J009EA23
3J009EA25
3J009EA37
3J009EA38
3J009EC01
3J027FA17
3J027FA36
3J027FB01
3J027HB07
(57)【要約】
【課題】差動式の全方向移動機構を備えつつ構成を簡素化すること。
【解決手段】駆動輪110は、同軸上に配置される第一入力軸25A及び第二入力軸25Bと、第一入力軸25Aと一体に同軸上に配置される第一出力軸40Aと、第一入力軸25A及び第二入力軸25Bとは別軸上に配置される第二出力軸40Bと、車輪15が設けられる回転自在な車軸37と、第二入力軸25Bの回転力を第二入力軸25Bと同じ回転方向で第二出力軸40Bに伝達する伝達機構13と、第一出力軸40Aの回転力を車軸37の所定部に伝達する第一変換ねじ歯車機構14Aと、第二出力軸40Bの回転力を車軸37の前記所定部に伝達する第二変換ねじ歯車機構14Bと、車軸37を介して車輪15を旋回可能に支持する旋回軸35と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に配置される第一入力軸及び第二入力軸と、
前記第一入力軸と一体に同軸上に配置される第一出力軸と、
前記第一入力軸及び前記第二入力軸とは別軸上に配置される第二出力軸と、
車輪が設けられる回転自在な車軸と、
前記第二入力軸の回転力を前記第二入力軸と同じ回転方向で前記第二出力軸に伝達する伝達機構と、
前記第一出力軸の回転力を前記車軸の所定部に伝達する第一動力変換機構と、
前記第二出力軸の回転力を前記車軸の前記所定部に伝達する第二動力変換機構と、
前記車軸を介して前記車輪を旋回可能に支持する旋回軸と、
を備える、駆動輪。
【請求項2】
前記車輪は、単輪であり、前記車軸の一端部に固定される、請求項1に記載の駆動輪。
【請求項3】
前記車輪は、前記車軸の一端部に固定された第一車輪と、前記車軸の他端部に軸受を介して回転自在に支持された第二車輪と、を含む、請求項1に記載の駆動輪。
【請求項4】
前記車輪は、前記車軸の一端部に固定された第一車輪と、前記車軸の他端部に固定された第二車輪と、を含み、
前記車軸は、前記第一動力変換機構及び前記第二動力変換機構に対して差動装置を介して接続される、
請求項1に記載の駆動輪。
【請求項5】
前記伝達機構は、ベルト伝達機構により構成される、
請求項1に記載の駆動輪。
【請求項6】
前記車軸の軸心に交差して鉛直方向に沿う前記車輪の回転軸心を、前記旋回軸の軸心に対して前記車軸の軸心に直交する水平方向にずれて配置する、請求項1から5のいずれか1項に記載の駆動輪。
【請求項7】
駆動輪と、
前記駆動輪が取付けられる台車本体と、
を備え、
前記駆動輪は、
同軸上に配置される第一入力軸及び第二入力軸と、
前記第一入力軸と一体に同軸上に配置される第一出力軸と、
前記第一入力軸及び前記第二入力軸とは別軸上に配置される第二出力軸と、
車輪が設けられる回転自在な車軸と、
前記第二入力軸の回転力を前記第二入力軸と同じ回転方向で前記第二出力軸に伝達する伝達機構と、
前記第一出力軸の回転力を前記車軸の所定部に伝達する第一動力変換機構と、
前記第二出力軸の回転力を前記車軸の前記所定部に伝達する第二動力変換機構と、
前記車軸を介して前記車輪を旋回可能に支持する旋回軸と、
を備える、台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪及び台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に駆動輪及び駆動輪を用いた台車について開示されている。この駆動輪は、同軸上に配置される第一入力軸及び第二入力軸と、別軸上に配置される第一出力軸及び第二出力軸と、第一入力軸の回転力を第一出力軸に伝達する第一平歯車機構と、第二入力軸の回転力を第二出力軸に伝達する第二平歯車機構と、車軸に連結される車輪と、車軸を介して車輪を旋回可能に支持する旋回軸と、第一出力軸の回転力を車軸の一端部に伝達する第一動力変換機構と、第二出力軸の回転力を車軸の他端部に伝達する第二動力変換機構と、を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-024033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の駆動輪は、差動式の全方向移動機構を備える。そして、このような差動式の全方向移動機構を備えつつ、その基本構成を極力簡素化することが望まれる。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、差動式の全方向移動機構を備えつつ基本構成を簡素化することのできる駆動輪及び台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の一態様の駆動輪は、同軸上に配置される第一入力軸及び第二入力軸と、前記第一入力軸と一体に同軸上に配置される第一出力軸と、前記第一入力軸及び前記第二入力軸とは別軸上に配置される第二出力軸と、車輪が設けられる回転自在な車軸と、前記第二入力軸の回転力を前記第二入力軸と同じ回転方向で前記第二出力軸に伝達する伝達機構と、前記第一出力軸の回転力を前記車軸の所定部に伝達する第一動力変換機構と、前記第二出力軸の回転力を前記車軸の前記所定部に伝達する第二動力変換機構と、前記車軸を介して前記車輪を旋回可能に支持する旋回軸と、を備える。
【0007】
上記駆動輪の望ましい態様として、前記車輪は、単輪であり、前記車軸の一端部に固定される。
【0008】
上記駆動輪の望ましい態様として、前記車輪は、前記車軸の一端部に固定された第一車輪と、前記車軸の他端部に軸受を介して回転自在に支持された第二車輪と、を含む。
【0009】
上記駆動輪の望ましい態様として、前記車輪は、前記車軸の一端部に固定された第一車輪と、前記車軸の他端部に固定された第二車輪と、を含み、前記車軸は、前記第一動力変換機構及び前記第二動力変換機構に対して差動装置を介して接続される。
【0010】
上記駆動輪の望ましい態様として、前記車軸の軸心に交差して鉛直方向に沿う前記車輪の回転軸心を、前記旋回軸の軸心に対して前記車軸の軸心に直交する水平方向にずれて配置する。
【0011】
上記駆動輪の望ましい態様として、前記伝達機構は、ベルト伝達機構により構成される。
【0012】
上記の目的を達成するための本開示の一態様の台車は、上述のいずれか1つの駆動輪と、前記駆動輪が取付けられる台車本体と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、差動式の全方向移動機構を備えつつ基本構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1の駆動輪の基本構成を表す斜視図である。
図2図2は、実施形態1の駆動輪の基本構成を表す平面図である。
図3図3は、実施形態1の駆動輪の基本構成を表す右側面図である。
図4図4は、実施形態1の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
図5図5は、実施形態1の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
図6図6は、実施形態1の駆動輪の駆動系を表す平面図である。
図7図7は、実施形態1の駆動輪の駆動力伝達経路を表す模式図である。
図8図8は、実施形態2の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
図9図9は、実施形態2の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
図10図10は、実施形態3の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
図11図11は、実施形態3の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
図12図12は、実施形態4の駆動輪の駆動系を表す平面図である。
図13図13は、実施形態4の駆動輪の駆動力伝達経路を表す模式図である。
図14図14は、実施形態の台車の構成例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、本開示に係る駆動輪及び台車の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0016】
図14は、実施形態の台車の構成例を表す概略図である。
【0017】
台車100は、台車本体101と、取手部102と、4個の駆動輪110(120,130,140)と、電源部104と、制御装置105と、を含む。
【0018】
台車本体101は、例えば、平板材であり、平面視が矩形形状をなしている。台車本体101は、長手方向の一方側に取手部102が固定されている。台車本体101は、裏面側に4個の駆動輪110が四隅に装着される。4個の駆動輪110は、回転可能であると共に操舵可能となっている。また、台車本体101は、前後の駆動輪110の間の裏面に電源部104と制御装置105が装着されている。制御装置105は、コンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは、CPUのようなプロセッサ、及びROMまたはRAMのようなメモリを含む。従って、台車100は、制御装置105が駆動輪110を制御する。
【0019】
台車本体101は、平坦な面を構成することで、当該平坦な面に被運搬物を載せることができる。即ち、台車100は、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)として構成することができる。また、台車100は、台車本体101の平坦な面に沿って機材を配置することで走行する機器として構成することができる。機器としては、例えば、ハンドリフタや、フォークリフトや、ピッキングロボットや、医療機材等様々なものがある。
【0020】
なお、台車100及び機器は、駆動輪110の数や配置について上述した構成に限定されるものではない。例えば、台車100及び機器は、上述した4輪の形態において、台車100の後方側に1対の駆動輪110を取り付け、台車100の前方側に1対の従動輪を取り付けてもよい。また、図には明示しないが、台車100及び機器は、3輪以上の形態において、駆動輪110が1つであって他の車輪が全て従動輪であってもよい。また、図には明示しないが、台車100及び機器は、3輪以上の形態において、従動輪を有さず全ての車輪が駆動輪110であってよい。即ち、台車100及び機器は、3輪以上の形態において、駆動輪110が少なくとも1つあればよい。
【0021】
[駆動輪の実施形態1]
以下、駆動輪110について詳細に説明する。図1は、実施形態1の駆動輪の基本構成を表す斜視図である。図2は、実施形態1の駆動輪の基本構成を表す平面図である。図3は、実施形態1の駆動輪の基本構成を表す右側面図である。図4は、実施形態1の駆動輪の駆動系を表す断面図である。図5は、実施形態1の駆動輪の駆動系を表す断面図である。図6は、実施形態1の駆動輪の駆動系を表す平面図である。図7は、実施形態1の駆動輪の駆動力伝達経路を表す模式図である。
【0022】
なお、以下の説明では、互いに交差する第一方向、第二方向、及び第三方向のうち、第一方向を「前後方向X」といい、第二方向を「幅方向Y」といい、第三方向を「上下方向Z」という。前後方向Xと幅方向Yと上下方向Zとは、相互に直交する。前後方向Xは、典型的には、駆動輪110が直進する方向に沿う方向に相当する。
【0023】
駆動輪110は、上述したような台車100の台車本体101に固定される本体10を有し、この本体10を基に、駆動機構11と、旋回部12と、伝達機構13と、動力変換機構14と、車輪15と、が設けられる。
【0024】
本体10は、上下に板面を向けた板状に形成される。駆動機構11は、回転力を入力するもので主に本体10の上方に設けられる。旋回部12は、主に本体10の下方に配置される。伝達機構13は、駆動機構11によって入力された回転力を伝達する。動力変換機構14は、伝達機構13の回転力を車輪15に伝達する。車輪15は、単輪であり、駆動機構11、伝達機構13、及び動力変換機構14を介して入力された回転力によって回転自在であると共に、旋回部12によって操舵可能となっている。
【0025】
駆動機構11は、第一駆動機構としての第一ベルト駆動機構22Aと、第二駆動機構としての第二ベルト駆動機構22Bと、を有する。第一ベルト駆動機構22Aは、第一駆動部23A、第一駆動プーリ24A、第一入力軸25A、第一従動プーリ26A、及び第一駆動ベルト27Aを含む。第一駆動部23Aは、モータで構成される。第一駆動部23Aは、本体10に固定される。第一駆動部23Aは、本体10の上方に突出して上下方向に延びる駆動軸23Aaを有する。第一駆動プーリ24Aは、駆動軸23Aaに固定される。第一入力軸25Aは、駆動軸23Aaと平行となるように上下方向に延びて設けられ、軸心O1を中心として回転自在に支持される。第一従動プーリ26Aは、第一入力軸25Aの本体10の上方に突出した部分に固定される。第一従動プーリ26A及び第一駆動プーリ24Aは、第一入力軸25A及び駆動軸23Aaに直交する方向で並んで設けられる。第一駆動ベルト27Aは、環状に形成され、第一従動プーリ26A及び第一駆動プーリ24Aに掛け回される。従って、第一ベルト駆動機構22Aは、第一駆動部23Aの駆動により、第一駆動プーリ24Aが回転し、この回転が第一駆動プーリ24Aから第一駆動ベルト27Aを介して第一従動プーリ26Aに伝達されて第一入力軸25Aが回転する。
【0026】
第二ベルト駆動機構22Bは、第二駆動部23B、第二駆動プーリ24B、第二入力軸25B、第二従動プーリ26B、及び第二駆動ベルト27Bを含む。第二駆動部23Bは、モータで構成される。第二駆動部23Bは、本体10に固定される。第二駆動部23Bは、本体10の上方に突出して上下方向に延びる駆動軸23Baを有する。第二駆動プーリ24Bは、駆動軸23Baに固定される。第二駆動プーリ24Bは、第一駆動プーリ24Aと同径に形成される。第二入力軸25Bは、駆動軸23Baと平行となるように上下方向に延びて設けられ、軸心O1を中心として回転自在に支持される。第二入力軸25Bは、円筒形状をなして第一入力軸25Aを挿通し、第一入力軸25Aとは独立して回転するように第一入力軸25Aの外側に1対の中間軸受44(図4参照)を介して配置される。第二従動プーリ26Bは、第二入力軸25Bの本体10の上方に突出した部分に固定される。第二従動プーリ26Bは、第一従動プーリ26Aと同径に形成され、第一従動プーリ26Aの下方に位置する。第二従動プーリ26B及び第二駆動プーリ24Bは、第二入力軸25B及び駆動軸23Baに直交する方向で並んで設けられる。第二駆動ベルト27Bは、環状に形成され、第二従動プーリ26B及び第二駆動プーリ24Bに掛け回される。従って、第二ベルト駆動機構22Bは、第二駆動部23Bを駆動することで、第二駆動プーリ24Bが回転し、この回転が第二駆動プーリ24Bから第二駆動ベルト27Bを介して第二従動プーリ26Bに伝達されて第二入力軸25Bが回転する。
【0027】
旋回部12は、旋回軸35と、第一支持部材36Aと、第二支持部材36Bと、を含む。旋回軸35は、円板形状の中心を軸心O1とし、本体10において上下方向に貫通して形成された円形状の貫通部10aに旋回軸受45(図4参照)を介して回転自在に支持される。これにより、旋回軸35は、本体10に対して軸心O1を中心として相対的に回転可能に支持される。
【0028】
旋回軸35は、図4に示すように、第一ベルト駆動機構22Aの第一入力軸25Aを軸心O1に沿って上下方向に貫通して配置し、第一入力軸受43(図4参照)を介して回転自在に支持する。従って、第一入力軸25Aは、旋回軸35に対して軸心O1を中心として相対的に回転可能に支持され、かつ本体10に対しても軸心O1を中心として相対的に回転可能に支持される。即ち、旋回軸35は、第一入力軸25Aの回転に関わらず、本体10に対して回転可能に設けられる。このため、実施形態の駆動輪110は、車輪15の旋回軸心である軸心O1上の第一入力軸25Aに回転力を入力することができる。また、旋回軸35は、第二ベルト駆動機構22Bの第二入力軸25Bを上方に向けて配置し、第二入力軸受49(図4参照)を介して回転自在に支持する。第二入力軸25Bは、上述したように、第一入力軸25Aを挿通し、第一入力軸25Aの外側に中間軸受44を介して回転自在に配置される。従って、第二入力軸25Bは、第一入力軸25Aを介し、旋回軸35に対して軸心O1を中心として相対的に回転可能に支持され、かつ本体10に対しても軸心O1を中心として相対的に回転可能に支持される。即ち、旋回軸35は、第二入力軸25Bの回転に関わらず、本体10に対して回転可能に設けられる。このため、実施形態の駆動輪110は、車輪15の旋回軸心である軸心O1上の第二入力軸25Bに回転力を入力することができる。このような構成により、第一入力軸25Aと第二入力軸25Bと旋回軸35とは、軸心O1に沿う同軸上に回転可能に配置される。
【0029】
旋回軸35は、円板形状の下部で車輪15の幅方向Yの両側に第一支持部材36Aと第二支持部材36Bが下方に延出するように設けられる。車輪15は、軸心O1が延びる方向(上下方向Z)に直交する軸心O2に沿って幅方向Yに沿って延びる車軸37が一体に設けられる。車軸37は、軸心O2に沿う一端部が第一支持部材36Aに対して車輪軸受48(図5参照)を介して回転自在に支持されると共に、軸心O2に沿う他端部が第二支持部材36Bに対して車輪軸受48を介して回転自在に支持される。
【0030】
伝達機構13は、図4及び図6に示すように、第一伝達機構13Aと第二伝達平歯車機構(第二伝達機構)13Bを有する。第一伝達機構13Aは、第一出力軸40Aを含み構成される。第二伝達平歯車機構13Bは、第二伝達駆動平歯車38B、第二伝達従動中間平歯車39Ba、第二伝達従動出力平歯車39Bb、第二出力軸40Bを含み構成される。
【0031】
第一伝達機構13Aにおいて、第一出力軸40Aは、第一入力軸25Aと一体に形成されて上下方向Zに延びて配置される。即ち、第一出力軸40Aは、第一入力軸25Aと同じものとして構成できる。第一出力軸40A(第一入力軸25A)は、旋回軸35の下部に一体に設けられた収容部35aに収容され、第一入力軸受43を介して回転自在に支持される。従って、第一出力軸40Aは、軸心O1と同軸上の軸心O3を中心として回転自在に支持される。
【0032】
第二伝達平歯車機構13Bにおいて、第二伝達駆動平歯車38B、第二伝達従動中間平歯車39Ba、第二伝達従動出力平歯車39Bbは、収容部35aに収容される。第二伝達駆動平歯車38Bは、第二入力軸25Bに固定される。第二入力軸25Bは、軸心O1に沿ってその一部が収容部35aに入り込み、収容部35aにおいて第二伝達駆動平歯車38Bが固定される。また、第二入力軸25Bは、上述したように第一入力軸25Aの外側に1対の中間軸受44を介して配置され、軸心O1を中心として回転自在に支持される。さらに、第二入力軸25Bは、上述したように旋回軸35において第二入力軸受49を介して回転自在に支持される。従って、第二伝達駆動平歯車38Bは、軸心O1を中心として回転する。
【0033】
第二伝達従動中間平歯車39Baは、第二伝達駆動平歯車38Bが噛み合う。第二伝達従動中間平歯車39Baは、収容部35aにおいて中間平歯車軸受46を介して支持されて、軸心O1に平行な軸心O6を中心として回転自在に支持される。
【0034】
第二伝達従動出力平歯車39Bbは、第二伝達従動中間平歯車39Baが噛み合う。第二伝達従動出力平歯車39Bbは、第二出力軸40Bに固定される。第二出力軸40Bは、収容部35aにおいて1対の第二出力軸受47を介して支持されて、軸心O1及び軸心O6に平行な軸心O4を中心として回転自在に支持される。
【0035】
動力変換機構14は、図4及び図5に示すように、第一動力変換機構としての第一変換ねじ歯車機構14Aと、第二動力変換機構としての第二変換ねじ歯車機構14Bとを有する。第一変換ねじ歯車機構14Aは、第一変換駆動ねじ歯車41A、従動ねじ歯車42により構成される。第二変換ねじ歯車機構14Bは、第二変換駆動ねじ歯車41B、上記従動ねじ歯車42により構成される。
【0036】
第一変換ねじ歯車機構14Aにおいて、第一変換駆動ねじ歯車41Aは、第一出力軸40Aの下部に固定される。従って、第一変換駆動ねじ歯車41Aは、第一出力軸40Aと共に軸心O3の廻りに回転する。また、従動ねじ歯車42は、車軸37に固定される。従って、従動ねじ歯車42は、車軸37の軸心O2を中心として回転する。車軸37の軸心O2は、第一出力軸40Aの軸心O3、及び第二出力軸40BのO4に直交する。そして、第一変換駆動ねじ歯車41Aは、従動ねじ歯車42に噛み合う。従って、第一変換ねじ歯車機構14Aは、第一出力軸40Aの軸心O3の廻りの回転を、車軸37の軸心O2の廻りの回転に変換する。
【0037】
第二変換ねじ歯車機構14Bにおいて、第二変換駆動ねじ歯車41Bは、第二出力軸40Bの下部に固定される。従って、第二変換駆動ねじ歯車41Bは、第二出力軸40Bと共に軸心O4の廻りに回転する。そして、第二変換駆動ねじ歯車41Bは、従動ねじ歯車42に噛み合う。従って、第二変換ねじ歯車機構14Bは、第二出力軸40Bの軸心O4の廻りの回転を、車軸37の軸心O2の廻りの回転に変換する。
【0038】
この動力変換機構14において、第一変換ねじ歯車機構14Aの第一変換駆動ねじ歯車41Aと、第二変換ねじ歯車機構14Bの第二変換駆動ねじ歯車41Bは、ピッチ円直径及び歯数が相互に同じである。
【0039】
また、図6に示すように、伝達機構13において、第一出力軸40Aは、旋回軸35の中心である軸心O1と軸心O3が同軸上に配置される。一方、伝達機構13において、第二出力軸40Bは、第一出力軸40Aの軸心O3に対して前後方向Xにずれて配置される。そして、動力変換機構14において、第一出力軸40Aに第一変換駆動ねじ歯車41Aが固定され、第二出力軸40Bに第二変換駆動ねじ歯車41Bが固定されて、車軸37に固定された従動ねじ歯車42に共に噛み合う。駆動輪110は、この構成によって、車軸37の軸心O2に交差する鉛直方向に沿う車輪15の回転軸心O5が、旋回軸35の軸心O1に対して車軸37の軸心O2に直交する水平方向(略前後方向X)にずれて(オフセットして)配置される。
【0040】
この駆動輪110は、駆動機構11によって第一入力軸25Aと第二入力軸25Bを回転することで車輪15の回転と操舵を行うことができる。例えば、第一入力軸25Aを回転し、第二入力軸25Bを第一入力軸25Aと逆方向に回転すると共に、第一入力軸25Aと第二入力軸25Bの回転数(回転速度)を同じにすることで、車輪15を操舵せずに回転することができる。このとき、第一入力軸25Aと第二入力軸25Bの回転数(回転速度)を異ならせることで、車輪15を回転または停止した状態で操舵することができる。
【0041】
ここで、駆動輪110の作動について説明する。図7に示すように、駆動輪110は、第一入力軸25Aを第一方向A1に回転すると、この第一入力軸25Aに一体の第一出力軸40Aが第二方向A2に回転し、この第一出力軸40Aを介して第一変換駆動ねじ歯車41Aが同方向に回転する。すると、第一変換駆動ねじ歯車41Aに噛み合う従動ねじ歯車42が第三方向Cに回転し、従動ねじ歯車42と一体の車軸37に第三方向Cの回転力を与える。一方、駆動輪110は、第二入力軸25Bを第一方向A1と逆方向の第一方向B1に回転すると、第二伝達駆動平歯車38Bが同方向に回転し、第二伝達駆動平歯車38Bに噛み合う第二伝達従動中間平歯車39Baを介して第二伝達従動出力平歯車39Bbが同方向の第二方向B2に回転する。第二伝達従動出力平歯車39Bbが第二方向B2に回転すると、第二伝達従動出力平歯車39Bbに第二出力軸40Bを介して一体に設けられた第二変換駆動ねじ歯車41Bが同方向に回転する。すると、第二変換駆動ねじ歯車41Bに噛み合う従動ねじ歯車42が第三方向Cに回転し、従動ねじ歯車42と一体の車軸37に第三方向Cの回転力を与える。ここで、第二方向A2と第二方向B2が逆の回転方向であることから、第一入力軸25Aと第二入力軸25Bが同回転数であれば、車輪15が旋回せずに回転する。
【0042】
このとき、駆動輪110は、第一入力軸25Aの回転数に対して第二入力軸25Bの回転数を低下させると、第二変換駆動ねじ歯車41Bから従動ねじ歯車42を介して車軸37に入力する回転数が、第一変換駆動ねじ歯車41Aから従動ねじ歯車42を介して車軸37に入力する回転数より低くなる。すると、その回転数差だけ旋回軸35が回転し、車輪15を旋回して操舵する。また、駆動輪110は、第一入力軸25Aまたは第二入力軸25Bの回転を停止すると、第一変換駆動ねじ歯車41Aまたは第二変換駆動ねじ歯車41Bから従動ねじ歯車42を介して車軸37に入力する回転数が0となり、車輪15が回転せずに旋回して操舵する。
【0043】
なお、実施形態の駆動輪110は、図には明示しないが、旋回位置検出部を有している。旋回位置検出部は、本体10に設けられ、旋回軸35の回転位置、即ち、本体10に対する旋回部12の回転位置を検出する。検出器の検出信号は、台車(機器)100の制御装置105に入力される。この結果、制御装置105において駆動輪110の旋回を制御できる。
【0044】
実施形態の駆動輪110は、同軸上に配置される第一入力軸25A及び第二入力軸25Bと、第一入力軸25Aと一体に同軸上に配置される第一出力軸40Aと、第一入力軸25A及び第二入力軸25Bとは別軸上に配置される第二出力軸40Bと、車輪15が設けられる回転自在な車軸37と、第二入力軸25Bの回転力を第二入力軸25Bと同じ回転方向で第二出力軸40Bに伝達する伝達機構13と、第一出力軸40Aの回転力を車軸37の所定部に伝達する第一動力変換機構(第一変換ねじ歯車機構)14Aと、第二出力軸40Bの回転力を車軸37の前記所定部に伝達する第二動力変換機構(第二変換ねじ歯車機構)14Bと、車軸37を介して車輪15を旋回可能に支持する旋回軸35と、を備える。
【0045】
この駆動輪110は、差動式の全方向移動機構を有する。即ち、駆動輪110では、第一入力軸25Aの回転力が第一出力軸40Aに直接伝達され、第二入力軸25Bの回転力が伝達機構13を介して第二出力軸40Bに伝達され、第一出力軸40A及び第二出力軸40Bから第一変換ねじ歯車機構14A及び第二変換ねじ歯車機構14Bを介して車軸37の所定部に伝達される。この駆動輪110は、第一入力軸25A及び第二入力軸25Bの回転数を調整することで、車軸37も設けられる車輪15の回転と車輪15の操舵を切替えることができる。
【0046】
特に、この駆動輪110は、第一入力軸25Aの回転力が第一出力軸40Aに直接伝達される。さらに、この駆動輪110は、第一変換ねじ歯車機構14Aが第一出力軸40Aの回転力を車軸37の所定部である従動ねじ歯車42に伝達し、第二変換ねじ歯車機構14Bが第二出力軸40Bの回転力を車軸37の前記所定部である従動ねじ歯車42に伝達する。従って、従来(例えば、特許文献1)では、第一入力軸25Aの回転力は、伝達機構を介して第一出力軸40Aに伝達されているが、この駆動輪110は、第一入力軸25Aの回転力が第一出力軸40Aに直接伝達される。しかも、従来(例えば、特許文献1)では、第一出力軸及び第二出力軸の各回転力は、それぞれ車軸の異なる部分に伝達されているが、この駆動輪110は、第一変換ねじ歯車機構14A及び第二変換ねじ歯車機構14Bは、第一出力軸40A及び第二出力軸40Bの各回転力を同じ従動ねじ歯車42に伝達する。この結果、実施形態の駆動輪110は、基本構成を簡素化できる。
【0047】
また、この駆動輪110では、車輪15は、単輪であり、車軸37の一端部に固定される。
【0048】
この駆動輪110によれば、双輪で構成される車輪を有する後述する実施形態1,2の駆動輪120,130と比較して基本構成を簡素化できる。
【0049】
また、この駆動輪110では、車軸37の軸心O2に交差して鉛直方向に沿う車輪15の回転軸心O5を、旋回軸35の軸心O1に対して車軸37の軸心O2に直交する水平方向にずれて配置する。
【0050】
この駆動輪110によれば、車輪15を駆動しないとき、車輪15は水平方向から作用する外力により受動的に旋回することができる。即ち、台車100を自動走行及び自動操舵することができ、かつ作業者が手動走行及び手動操舵することができる。
【0051】
また、実施形態の台車100は、上述した駆動輪110と、駆動輪110が取り付けられる台車本体101とを備える。そのため、台車100は、基本構造の簡素化を図ることができる。
【0052】
[駆動輪の実施形態2]
図8は、実施形態2の駆動輪の駆動系を表す断面図である。図9は、実施形態2の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
【0053】
実施形態2の駆動輪120は、上述した実施形態1の駆動輪110における車輪15を双輪とし、一方を車軸37に固定し、他方を車軸37に回転自在に支持する点が主に異なる。以下の実施形態2の駆動輪120の説明では、実施形態1の駆動輪110と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
車軸37は、軸心O2に沿う一端部側が第一支持部材36Aに対して車輪軸受48を介して回転自在に支持されると共に、軸心O2に沿う他端部側が第二支持部材36Bに対して車輪軸受48を介して回転自在に支持される。
【0055】
車輪15は、第一車輪15Aと第二車輪15Bとの双輪で構成される。第一車輪15Aは、第一支持部材36Aの幅方向Yの外側に突出した車軸37の一端部に固定される。
第二車輪15Bは、第二支持部材36Bの幅方向Yの外側に突出した車軸37の他端部に軸受50を介して回転自在に支持される。
【0056】
この駆動輪120は、駆動輪110と同様に作動する。従って、この駆動輪120は、第一入力軸25A及び第二入力軸25Bの回転数を調整することで、車軸37が設けられる車輪15の回転と車輪15の操舵を切替えることができる。
【0057】
特に、この駆動輪120は、第一入力軸25Aの回転力が第一出力軸40Aに直接伝達される。さらに、この駆動輪120は、第一変換ねじ歯車機構(第一動力変換機構)14Aが第一出力軸40Aの回転力を車軸37の所定部である従動ねじ歯車42に伝達し、第二変換ねじ歯車機構(第二動力変換機構)14Bが第二出力軸40Bの回転力を車軸37の前記所定部である従動ねじ歯車42に伝達する。従って、従来(例えば、特許文献1)では、第一入力軸25Aの回転力は、伝達機構を介して第一出力軸40Aに伝達されているが、この駆動輪120は、第一入力軸25Aの回転力が第一出力軸40Aに直接伝達される。しかも、従来(例えば、特許文献1)では、第一出力軸及び第二出力軸の各回転力は、それぞれ車軸の異なる部分に伝達されているが、この駆動輪120は、第一変換ねじ歯車機構14A及び第二変換ねじ歯車機構14Bは、第一出力軸40A及び第二出力軸40Bの各回転力を同じ従動ねじ歯車42に伝達する。この結果、実施形態の駆動輪120は、基本構成を簡素化できる。
【0058】
また、この駆動輪120では、車輪15は、車軸37の一端部に固定された第一車輪15Aと、車軸37の他端部に軸受50を介して回転自在に支持された第二車輪15Bと、を含む。
【0059】
この駆動輪120によれば、第一車輪15Aと第二車輪15Bの双輪によって走行を安定させることができる。その反面、双輪とすることで旋回時に第一車輪15Aと第二車輪15Bとに回転差が生じることになる。この点、この駆動輪120によれば、第一車輪15Aを車軸37に固定し、第二車輪15Bを車軸37に軸受50を介して回転自在に支持することで、旋回時の相互の車輪15A,15Bの回転差を吸収でき、安定した走行を確保できる。
【0060】
また、この駆動輪120では、車軸37の軸心O2に交差して鉛直方向に沿う車輪15の回転軸心O5を、旋回軸35の軸心O1に対して車軸37の軸心O2に直交する水平方向にずれて配置する。
【0061】
この駆動輪120によれば、車輪15を駆動しないとき、車輪15は水平方向から作用する外力により受動的に旋回することができる。即ち、台車100を自動走行及び自動操舵することができ、かつ作業者が手動走行及び手動操舵することができる。
【0062】
また、実施形態の台車100は、上述した駆動輪120と、駆動輪120が取り付けられる台車本体101とを備える。そのため、台車100は、基本構造の簡素化を図ることができる。
【0063】
[駆動輪の実施形態3]
図10は、実施形態3の駆動輪の駆動系を表す断面図である。図11は、実施形態3の駆動輪の駆動系を表す断面図である。
【0064】
実施形態3の駆動輪130は、上述した実施形態1の駆動輪110における車輪15を双輪とし、かつ車軸37が第一動力変換機構14A及び第二動力変換機構14Bに対して差動装置51を介して接続される点が主に異なる。以下の実施形態3の駆動輪130の説明では、実施形態1の駆動輪110と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
車軸37は、一端部37A側と他端部37B側とに2分割される。
【0066】
車輪15は、第一車輪15Aと第二車輪15Bとの双輪で構成される。第一車輪15Aは、第一支持部材36Aの幅方向Yの外側に突出した車軸37の一端部37Aに固定される。第二車輪15Bは、第二支持部材36Bの幅方向Yの外側に突出した車軸37の他端部37Bに固定される。
【0067】
差動装置51は、動力変換機構14の従動ねじ歯車42及び車軸37に係り設けられる。差動装置51は、ケーシング51Aと、1対のサイド傘歯車51Ba,51Bbと、複数(実施形態では4個)の中央傘歯車51Cと、単一のリング歯車51Dと、を含む。
【0068】
ケーシング51Aは、車軸37の一端部37Aを軸心O2に沿って回転可能に貫通させると共に、車軸37の他端部37Bを軸心O2に沿って回転可能に貫通させる。ケーシング51Aは、第一支持部材36A及び第二支持部材36Bに対してそれぞれ車輪軸受48を介して軸心O2を中心に回転自在に支持される。従って、ケーシング51Aは、第一支持部材36A及び第二支持部材36Bに対して軸心O2を中心に回転し、車軸37の一端部37A及び他端部37Bを軸心O2を中心に回転可能に支持する。
【0069】
サイド傘歯車51Baは、ケーシング51Aの内部に収容され、車軸37の一端部37Aに固定される。従って、サイド傘歯車51Baは、車軸37の一端部37Aと共にケーシング51Aに対して回転可能に設けられる。サイド傘歯車51Bbは、ケーシング51Aの内部に収容され、車軸37の他端部37Bに固定される。サイド傘歯車51Baとサイド傘歯車51Bbは、互いに歯車部を対向して配置される。従って、サイド傘歯車51Bbは、車軸37の他端部37Bと共にケーシング51Aに対して回転可能に設けられる。
【0070】
中央傘歯車51Cは、ケーシング51Aの内部に収容され、対向するサイド傘歯車51Ba及びサイド傘歯車51Bbに噛み合うように設けられる。中央傘歯車51Cは、ケーシング51Aに対し、軸心O2に直交する中心軸の廻りに回転可能に支持される。従って、各中央傘歯車51Cは、サイド傘歯車51Ba及びサイド傘歯車51Bbに噛み合いつつ、ケーシング51Aと共に軸心O2を中心に回転する。
【0071】
リング歯車51Dは、軸心O2を中心としてケーシング51Aの外周に固定される。従って、リング歯車51Dは、ケーシング51Aと共に軸心O2を中心に回転する。このリング歯車51Dは、動力変換機構14の従動ねじ歯車42を構成する。
【0072】
従って、差動装置51は、従動ねじ歯車42(リング歯車51D)に回転力が伝達されることで、ケーシング51A、各中央傘歯車51C、各サイド傘歯車51Ba,51Bb、及び車軸37の一端部37Aと他端部37Bを介して第一車輪15Aと第二車輪15Bを回転させる。ここで、差動装置51は、旋回時に、第一車輪15Aと第二車輪15Bとに回転差が生じたとき、これを各中央傘歯車51C、及び各サイド傘歯車51Ba,51Bbの噛み合いで吸収する。
【0073】
この駆動輪130は、駆動輪110と同様に作動する。従って、この駆動輪130は、第一入力軸25A及び第二入力軸25Bの回転数を調整することで、車軸37が設けられる車輪15の回転と車輪15の操舵を切替えることができる。
【0074】
特に、この駆動輪130は、第一入力軸25Aの回転力が第一出力軸40Aに直接伝達される。さらに、この駆動輪130は、第一変換ねじ歯車機構(第一動力変換機構)14Aが第一出力軸40Aの回転力を車軸37の所定部である従動ねじ歯車42に伝達し、第二変換ねじ歯車機構(第二動力変換機構)14Bが第二出力軸40Bの回転力を車軸37の前記所定部である従動ねじ歯車42に伝達する。従って、従来(例えば、特許文献1)では、第一入力軸25Aの回転力は、伝達機構を介して第一出力軸40Aに伝達されているが、この駆動輪130は、第一入力軸25Aの回転力が第一出力軸40Aに直接伝達される。しかも、従来(例えば、特許文献1)では、第一出力軸及び第二出力軸の各回転力は、それぞれ車軸の異なる部分に伝達されているが、この駆動輪130は、第一変換ねじ歯車機構14A及び第二変換ねじ歯車機構14Bは、第一出力軸40A及び第二出力軸40Bの各回転力を同じ従動ねじ歯車42に伝達する。この結果、実施形態の駆動輪130は、基本構成を簡素化できる。
【0075】
また、この駆動輪130では、車輪15は、車軸37の一端部37Aに固定された第一車輪15Aと、車軸37の他端部37Bに固定された第二車輪15Bと、を含み、車軸37は、一端部37Aと他端部37Bが第一変換ねじ歯車機構14A及び第二変換ねじ歯車機構14Bに対して差動装置51を介して接続される。
【0076】
この駆動輪130によれば、第一車輪15Aと第二車輪15Bの双輪によって走行を安定させることができる。その反面、双輪とすることで旋回時に第一車輪15Aと第二車輪15Bとに回転差が生じることになる。この点、この駆動輪130によれば、差動装置51を有することで、旋回時の相互の車輪15A,15Bの回転差を吸収でき、安定した走行を確保できる。
【0077】
また、この駆動輪130では、車軸37の軸心O2に交差して鉛直方向に沿う車輪15の回転軸心O5を、旋回軸35の軸心O1に対して車軸37の軸心O2に直交する水平方向にずれて配置する。
【0078】
この駆動輪130によれば、車輪15を駆動しないとき、車輪15は水平方向から作用する外力により受動的に旋回することができる。即ち、台車100を自動走行及び自動操舵することができ、かつ作業者が手動走行及び手動操舵することができる。
【0079】
また、実施形態の台車100は、上述した駆動輪130と、駆動輪130が取り付けられる台車本体101とを備える。そのため、台車100は、基本構造の簡素化を図り、かつ比較的大きなトルクを得ることができる。
【0080】
[駆動輪の実施形態4]
図12は、実施形態4の駆動輪の駆動系を表す平面図である。図13は、実施形態4の駆動輪の駆動力伝達経路を表す模式図である。
【0081】
実施形態4の駆動輪140は、上述した実施形態1の駆動輪110における第二伝達機構13Bの構成が異なる。以下の実施形態4の駆動輪140の説明では、実施形態1の駆動輪110と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。また、駆動輪140は、駆動輪120,130の構成としても適用できる。
【0082】
第二伝達機構13Bは、第二伝達駆動プーリ38B、第二伝達従動プーリ39Bb、伝達ベルト39Bc、第二出力軸40Bを含み構成される。
【0083】
第二伝達駆動プーリ38Bは、駆動輪110の第二伝達駆動平歯車38Bに替えたものである。第二伝達駆動プーリ38Bは、第二入力軸25Bに固定される。従って、第二伝達駆動プーリ38B、第二入力軸25Bを介して軸心O1を中心として回転する。
【0084】
第二伝達従動プーリ39Bbは、第二伝達従動出力平歯車39Bbに替えたものである。第二伝達従動プーリ39Bbは、第二出力軸40Bに固定される。従って、第二伝達従動プーリ39Bbは、第二出力軸40Bを介して軸心O4を中心として回転自在に支持される。
【0085】
伝達ベルト39Bcは、第二伝達従動中間平歯車39Baに替えたものである。伝達ベルト39Bcは、環状に形成され、第二伝達駆動プーリ38B及び第二伝達従動プーリ39Bbに掛け回される。従って、伝達ベルト39Bcは、第二入力軸25Bを介した第二伝達駆動プーリ38Bの回転を、第二伝達従動プーリ39Bbに伝達し、第二出力軸40Bを回転させる。
【0086】
この駆動輪140は、図13に示すように、第一入力軸25Aを第一方向A1に回転すると、この第一入力軸25Aに一体の第一出力軸40Aが第二方向A2に回転し、この第一出力軸40Aを介して第一変換駆動ねじ歯車41Aが同方向に回転する。すると、第一変換駆動ねじ歯車41Aに噛み合う従動ねじ歯車42が第三方向Cに回転し、従動ねじ歯車42と一体の車軸37に第三方向Cの回転力を与える。一方、駆動輪140は、第二入力軸25Bを第一方向A1と逆方向の第一方向B1に回転すると、第二伝達駆動プーリ38Bが同方向に回転し、伝達ベルト39Bcを介して第二伝達従動プーリ39Bbが同方向の第二方向B2に回転する。第二伝達従動プーリ39Bbが第二方向B2に回転すると、第二伝達従動プーリ39Bbに第二出力軸40Bを介して一体に設けられた第二変換駆動ねじ歯車41Bが同方向に回転する。すると、第二変換駆動ねじ歯車41Bに噛み合う従動ねじ歯車42が第三方向Cに回転し、従動ねじ歯車42と一体の車軸37に第三方向Cの回転力を与える。ここで、第二方向A2と第二方向B2が逆の回転方向であることから、第一入力軸25Aと第二入力軸25Bが同回転数であれば、車輪15が旋回せずに回転する。
【0087】
このとき、駆動輪140は、第一入力軸25Aの回転数に対して第二入力軸25Bの回転数を低下させると、第二変換駆動ねじ歯車41Bから従動ねじ歯車42を介して車軸37に入力する回転数が、第一変換駆動ねじ歯車41Aから従動ねじ歯車42を介して車軸37に入力する回転数より低くなる。すると、その回転数差だけ旋回軸35が回転し、車輪15を旋回して操舵する。また、駆動輪140は、第一入力軸25Aまたは第二入力軸25Bの回転を停止すると、第一変換駆動ねじ歯車41Aまたは第二変換駆動ねじ歯車41Bから従動ねじ歯車42を介して車軸37に入力する回転数が0となり、車輪15が回転せずに旋回して操舵する。
【0088】
この駆動輪140及び台車100は、実施形態1の駆動輪110及び台車100と同様に作動でき、駆動輪110及び台車100と同様の作用効果を得ることができる。また、この駆動輪140の上記構成を駆動輪120,130及び台車100に適用することで、駆動輪120,130及び台車100と同様の作用効果を得ることができる。
【0089】
特に、この駆動輪140及び台車100においては、第二伝達機構13Bを、第二伝達駆動プーリ38B、第二伝達従動プーリ39Bb、伝達ベルト39Bcを含むベルト伝達機構とすることで、駆動輪110,120,130と比較して第二伝達従動中間平歯車39Baを配置するためのスペースを小さくできるため、全体の小型化を図ることができる。
【0090】
[変形例]
上述した駆動輪110,120,130,140において、動力変換機構14は、ねじ歯車機構14A,14A’,14B,14B’として説明したが、この限りではない。例えば、動力変換機構14は、図には明示しないが、傘歯車機構や、ウォーム歯車機構等であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
13 伝達機構
14A 第一変換ねじ歯車機構(第一動力変換機構)
14B 第二変換ねじ歯車機構(第二動力変換機構)
15 車輪
15A 第一車輪
15B 第二車輪
25A 第一入力軸
25B 第二入力軸
35 旋回軸
37 車軸
37A 一端部
37B 他端部
40A 第一出力軸
40B 第二出力軸
51 差動装置
100 台車
101 台車本体
110,120,130,140 駆動輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14