(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179820
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】モータ制御装置および洗濯機
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099007
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】馬飼野 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚礼
(72)【発明者】
【氏名】吉野 知也
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA09
5H505BB06
5H505CC05
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505FF05
5H505GG04
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ18
5H505KK05
5H505LL16
5H505LL22
5H505LL24
(57)【要約】
【課題】モータ制御装置において、モータの適切な停止判定を実現する。
【解決手段】電力変換器70に対する制御モードとして、電力変換器70の全相を同一のスイッチング状態にするブレーキモードと、1相を他相と異なるスイッチング状態にすることにより、電流検出部を介してモータMに流れる電流を検出する電流検出モードと、を交互に選択し、選択した制御モードに基づくスイッチング指令SWを電力変換器70に供給するスイッチング指令生成部51と、電流検出モードにおいて検出した電流検出値Idcが、所定時間以上に渡って所定の第1の閾値未満であったことを条件として、モータMが停止した旨を判定する停止判定部58と、をモータ制御装置MCに設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにPWM変調波による電力を供給する電力変換器と、
前記電力変換器または前記モータに流れる電流の検出結果である電流検出値を出力する電流検出部と、
前記電力変換器に対する制御モードとして、前記電力変換器の全相を同一のスイッチング状態にするブレーキモードと、1相を他相と異なるスイッチング状態にすることにより、前記電流検出部を介して前記モータに流れる電流を検出する電流検出モードと、を交互に選択し、選択した前記制御モードに基づくスイッチング指令を前記電力変換器に供給するスイッチング指令生成部と、
前記電流検出モードにおいて検出した前記電流検出値が、所定時間以上に渡って所定の第1の閾値未満であったことを条件として、前記モータが停止した旨を判定する停止判定部と、を備える
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記電流検出モードを発生させる電流検出モード発生間隔として、第1の所定値を指定する第1の発生間隔制御部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記電流検出モード発生間隔として、前記第1の所定値よりも長い第2の所定値を指定する第2の発生間隔制御部をさらに備え、
前記第1の発生間隔制御部は、前記電流検出値のピーク値である電流ピーク値が、前記第1の閾値よりも高い所定の第2の閾値未満になったことを条件として、前記電流検出モード発生間隔として前記第1の所定値を指定する
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
交流電圧源によって印加された交流電圧を整流した結果である整流電圧を前記電力変換器に印加する整流回路と、
前記電流検出モード発生間隔を、前記第2の所定値よりも長い間隔に設定するとともに、前記整流電圧が高くなるほど前記電流検出モード発生間隔を長くする第3の発生間隔制御部と、をさらに備え、
前記第2の発生間隔制御部は、所定時間以上に渡って前記整流電圧が、所定の高電圧閾値未満であったことを条件として、前記電流検出モード発生間隔として、前記第2の所定値を指定する
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記モータは、複数相の巻線を備えるものであり、
前記スイッチング指令生成部は、前記電流検出モードにおいて、複数相の全ての前記巻線に流れる電流を循環的に検出し、または、複数相の全ての前記巻線に流れる電流をランダムに検出する
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータと、
洗濯物が投入される洗濯槽と、
前記洗濯物を攪拌する攪拌羽と、を備え、
前記モータは、前記洗濯槽または前記攪拌羽を回転駆動する
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
前記洗濯槽および前記攪拌羽を収納する筐体と、
前記筐体に装着されたフタと、
前記停止判定部が、前記モータが停止した旨を判定すると、前記フタのロックを解除するドアロック部と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項6に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置および洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期電動機であるモータは、回転子内の磁極位置に応じて固定子コイルに通電を行う必要があり、そのために回転子の位置情報を検出する位置検出センサを設ける場合がある。一方、位置検出センサの設置により、センサコストの増加や、センサ故障のリスクが生じる。そこで、位置検出センサを用いない、位置センサレス制御にて永久磁石同期電動機を駆動する方法が知られている。また、種々の理由により、モータが停止しているか否かを判定すべき場合がある。例えば洗濯機等の製品では、安全のために洗濯槽を回転させるモータの停止後にドアロックを解除することが望ましく、モータの停止を正確に検知することが望まれている。例えば、下記特許文献1、2には、モータが停止しているか否かを判定する、モータの停止判定を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-068324号公報
【特許文献2】特開2005-006453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、一層適切にモータの停止判定を行いたいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、モータの適切な停止判定を実現できるモータ制御装置および洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明のモータ制御装置は、モータにPWM変調波による電力を供給する電力変換器と、前記電力変換器または前記モータに流れる電流の検出結果である電流検出値を出力する電流検出部と、前記電力変換器に対する制御モードとして、前記電力変換器の全相を同一のスイッチング状態にするブレーキモードと、1相を他相と異なるスイッチング状態にすることにより、前記電流検出部を介して前記モータに流れる電流を検出する電流検出モードと、を交互に選択し、選択した前記制御モードに基づくスイッチング指令を前記電力変換器に供給するスイッチング指令生成部と、前記電流検出モードにおいて検出した前記電流検出値が、所定時間以上に渡って所定の第1の閾値未満であったことを条件として、前記モータが停止した旨を判定する停止判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、モータの適切な停止判定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態によるモータ制御システムのブロック図である。
【
図6】スイッチング指令生成部における各種波形の例を示す図である。
【
図10】第2実施形態におけるスイッチング指令生成部の各種波形の例を示す図である。
【
図11】第2実施形態における電流検出値の波形の一例を示す図である。
【
図12】第3実施形態による縦型洗濯機の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
位置センサレス制御の手法には、モータの回転により生じる誘起電圧を利用する方法と、モータの突極性を利用した高周波信号重畳方式と、が考えられる。誘起電圧を利用する方法では、モータに印加した電圧とその際に流れた電流と、の関係から誘起電圧を推定しモータの回転速度を導出する。誘起電圧はモータの回転速度に比例して生じるため、モータの回転速度が低速の場合には精度が悪化する。また、高周波信号重畳方式では、低速域においても位置センサレスでモータの回転速度を検出可能であるが、突極比を持つモータ以外には適用できない問題がある。また、高周波信号重畳方式では、位置探査用の高周波電圧をモータに印加することから、高周波雑音が発生するという問題がある。
【0009】
上述した特許文献1の技術を応用すると、印加する高周波信号を工夫することにより、高周波音を抑制できると考えられる。しかし、この技術によれば、モータ制御装置が停電等でリセットされ、モータが惰性回転しフリーラン(空転)状態となった場合には回転子位置を見失い、モータの回転速度を正確に推定できなくなるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2の技術を応用すると、モータを駆動するインバータを短絡ブレーキモードにし、検出した電流値が三相以上一致した場合にモータの停止判定を行えると考えられる。しかし、この技術によれば、検出電流に重畳するノイズ等によってモータの停止/非停止状態を誤検知する場合がある。そこで、後述する実施形態は、位置センサレス制御のモータ制御装置において、停電等によってモータがフリーラン状態となった場合においても、騒音を抑制しつつ、正確にモータの停止判定を行うものである。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態によるモータ制御システム100のブロック図である。
図1において、モータ制御システム100は、モータMと、モータ制御装置MCと、を備えている。モータMは、例えば永久磁石型同期電動機であり、図示は省略するが、U相,V相,W相の巻線を備えている。また、モータ制御装置MCは、電力変換器70と、制御部50と、を備えている。モータ制御装置MCは、例えば一枚の制御基板に実装されている。
【0012】
また、制御部50は、スイッチング指令生成部51と、高速制御部52(第3の発生間隔制御部)と、中速制御部54(第2の発生間隔制御部)と、低速制御部56(第1の発生間隔制御部)と、停止判定部58と、を備えている。スイッチング指令生成部51は、高速制御部52、中速制御部54または低速制御部56からの指令に基づいて、電力変換器70に対して、PWM(Pulse Width Modulation)のスイッチング指令SWを出力する。なお、高速制御部52、中速制御部54および低速制御部56の詳細について詳細は後述する。
【0013】
電力変換器70は、スイッチング指令生成部51から供給されたスイッチング指令SWに基づいてモータMにPWM変調波の電圧を印加する。電力変換器70は、電流検出値Idcおよびコンデンサ電圧Vc(詳細は後述する)を制御部50に通知する。停止判定部58は、電流検出値Idcに基づいてモータMが停止したか否かを判定し、その結果を停止判定信号JSとして出力する。なお、停止判定信号JSは、“1”(停止中)または“0”(回転中)となる二値信号である。但し、停止判定信号JSが“1”(停止中)になる場合とは、必ずしもモータMが完全に停止した状態に限られず、モータMの用途に応じて、「停止中である」とみなして差し支えない程度に低速回転している場合も含めてよい。
【0014】
図2は、コンピュータ980のブロック図である。
図1に示した制御部50は、
図2に示すコンピュータ980を、1台または複数台備えている。
図2において、コンピュータ980は、CPU(Central Processing Unit)981と、記憶部982と、通信I/F(インタフェース)983と、入出力I/F984と、DSP(Digital Signal Processor)985と、を備える。ここで、記憶部982は、RAM982aと、ROM982bと、を備える。通信I/F983は、通信回路986に接続される。入出力I/F984は、入出力装置987に接続される。
【0015】
ROM982bには、CPU981およびDSP985によって実行される制御プログラムや各種データ等が記憶されている。CPU981およびDSP985は、これら制御プログラムを実行することにより、各種機能を実現する。先に
図1に示した、制御部50の内部は、制御プログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0016】
図3は電力変換器70のブロック図である。
図3において、電力変換器70は、整流回路72と、直流電圧検出部74と、インバータ回路76と、を備えている。整流回路72は、交流電圧源E(例えば商用電源)から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。整流回路72は、ダイオードブリッジによる全波整流回路(図示せず)と、平滑コンデンサ(図示せず)と、を備えている。直流電圧検出部74は、該平滑コンデンサの電圧、すなわち整流回路72の出力電圧を検出し、検出結果をコンデンサ電圧Vc(整流電圧)として出力する。また、インバータ回路76は、上アームにおける半導体素子S1,S3,S5と、下アームにおける半導体素子S2,S4,S6と、これら半導体素子S1~S6に並列接続されたダイオードDと、電流検出部Rsと、を備えている。
【0017】
半導体素子S1~S6は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。上述したスイッチング指令生成部51(
図1参照)は、スイッチング指令SWを出力する。このスイッチング指令SWは、スイッチング指令SW1~SW6を含んでおり、これらは、半導体素子S1~S6のオン/オフ状態をそれぞれ指定するものである。インバータ回路76は、スイッチング指令SW1~SW6に基づき、各半導体素子S1~S6をスイッチングし、U相,V相,W相の配線20U,20V,20Wを介して、PWM変調波の電圧をモータMに印加する。
【0018】
すなわち、インバータ回路76は、半導体素子S1,S2を介してモータMにU相電圧を印加し、半導体素子S3,S4を介してモータMにV相電圧を印加し、半導体素子S5,S6を介してモータMにW相電圧を印加する。配線20Pは直流電圧のプラスの電位側の配線であり、配線20Nはマイナスの電位側の配線である。電流検出部Rsは、シャント抵抗器(図示せず)を用いてモータMに流れた電流を検出するものであり、配線20Nに挿入されている。電流検出部Rsは、検出した電流値を電流検出値Idcとして出力する。
【0019】
次に、モータMを停止させる際の制御モードであるブレーキモードMBおよび電流検出モードMDについて説明する。
図4は、ブレーキモードMBの説明図である。
ブレーキモードMBにおいて、スイッチング指令生成部51(
図1参照)は、例えば、下アームにおける半導体素子S2,S4,S6をオン状態に設定し、上アームにおける半導体素子S1,S3,S5をオフ状態に設定するスイッチング指令SWを出力する。ブレーキモードMBにおいて、インバータ回路76は、モータMに生じる誘起電圧を短絡し、モータMの巻線内に電流を流しモータを減速させる。なお、ブレーキモードMBにおいては、図示の例とは逆に、上アームにおける半導体素子S1,S3,S5をオン状態に設定し、下アームにおける半導体素子S2,S4,S6をオフ状態に設定してもよい。
【0020】
図5は、電流検出モードMDの説明図である。
図5に示すように、電流検出モードMDにおいては、例えば、何れか1相の上アームにおける半導体素子(図示の例では半導体素子S1)と、他の2相の下アームにおける半導体素子(同、半導体素子S4,S6)と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態とするスイッチング指令SWを出力する。なお、図示の状態とは逆に、何れか2相の上アームにおける半導体素子と、他の1相の下アームにおける半導体素子と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態としてもよい。
【0021】
これにより、電流検出モードMDにおいては、モータMに流れた電流を電流検出部Rsで検出することが可能になる。ブレーキモードMBにおいては、モータMを素早く減速させることができる。一方、電流検出モードMDにおいては、電流検出部Rsを介して電流検出値Idcを検出することができる。そこで、スイッチング指令生成部51(
図1参照)は、モータMを停止される場合には、ブレーキモードMBおよび電流検出モードMDを交互に選択する。そして、スイッチング指令生成部51は、選択した制御モードを実現するスイッチング指令SWをインバータ回路76に供給することにより、半導体素子S1~S6のスイッチング状態を制御する。
【0022】
図6は、スイッチング指令生成部51における各種波形の例を示す図である。
スイッチング指令生成部51(
図1参照)は、図示の三角波信号Triと、U相,V相,W相の変調率を表す変調率指令信号Mu,Mv,Mwを生成する。三角波信号Triの周期をキャリア周期Tcと呼ぶ。スイッチング指令生成部51は、変調率指令信号Mu,Mv,Mwが三角波信号Triのレベルを超える期間に各々スイッチング指令SW1,SW3,SW5をオン状態とし、それ以外の期間をオフ状態とする。
【0023】
図示の例において、変調率指令信号Muは矩形パルス状であるため、スイッチング指令SW1も矩形パルス状になる。この変調率指令信号Muの周期を電流検出モード発生間隔Tswと呼ぶ。電流検出モード発生間隔Tswは、モータMの回転速度の検出を目的としていることから、図示のように、キャリア周期Tcよりも長い周期に設定する。一方、変調率指令信号Mv,Mwのレベルは、常に三角波信号Triのレベル未満であるため、スイッチング指令SW3,SW5は常にオフ状態になる。
【0024】
なお、スイッチング指令SW2,SW4,SW6の波形については図示を省略するが、これらの値は、スイッチング指令SW1,SW3,SW5に対して相補的な値になる。従って、スイッチング指令SW4,SW6は常にオン状態になる。これにより、
図6においてスイッチング指令SW1がオン状態である期間の制御モードは電流検出モードMD(
図5参照)になり、スイッチング指令SW1がオフ状態である期間の制御モードはブレーキモードMB(
図4参照)になる。
【0025】
また、電流検出モード発生間隔Tswを短くすると、整流回路72(
図3参照)に含まれる平滑コンデンサ(図示せず)の電圧が上昇し、整流回路72の出力電圧が過電圧なる可能性がある。そのため、制御部50は、直流電圧検出部74が検出したコンデンサ電圧Vcが高くなるほど、電流検出モード発生間隔Tswを長くする(詳細は後述する)。
【0026】
図7は電流検出値Idcの波形の一例を示す図である。
上述したように、ブレーキモードMB(
図4参照)において電流検出値Idcは「0」になり、電流検出モードMD(
図5参照)において電流検出値Idcは「0」以外の値になり得る。
従って、
図7に示すように、電流検出値Idcの波形は、パルス状になる。そして、電流検出値Idcの包絡線は、モータMのU相巻線に流れるU相電流Iuに相当する。U相電流Iuは略正弦波状に変化するが、その1周期における最大値を電流ピーク値Idcpと呼ぶ。
【0027】
図8は、制御部50で実行される停止制御ルーチンのフローチャートである。
本停止制御ルーチンは、例えばモータMの運転中に脱調が発生した場合や、交流電圧源E(
図3参照)の電圧に瞬低が生じた場合等において、モータ制御装置MCにおいて起動される。
図8において処理がステップS2に進むと、高速制御部52(
図1参照)が高速制御モードの処理を実行する。高速制御モードにおいて、高速制御部52は、コンデンサ電圧Vcに応じて、電流検出モード発生間隔Tswを設定する。すなわち、高速制御部52は、電流検出モードMD(
図5参照)において、コンデンサ電圧Vcのピーク値が所定の高電圧閾値Vchを超えると、電流検出モード発生間隔Tswを長くする。一方、高速制御部52は、電流検出モードMDにおいてコンデンサ電圧Vcのピーク値が高電圧閾値Vch以下であると、電流検出モード発生間隔Tswを短くする。また、高速制御部52は、停止判定信号JSを“0”(回転中)に設定する。
【0028】
次に、処理がステップS4に進むと、中速制御部54は、所定の中速条件が充足されたか否かを判定する。ここで、中速条件とは、「コンデンサ電圧Vcが高電圧閾値Vchを超えなくなった」ということであり、より詳細には、「所定時間以上に渡ってコンデンサ電圧Vcが高電圧閾値Vch未満であった」ということである。ここで「No」と判定されると、処理はステップS2に戻り、高速制御部52による高速制御モードの動作が続行される。
【0029】
一方、ステップS4において「Yes」と判定されると、処理はステップS6に進み、中速制御部54が中速制御モードの処理を実行する。中速制御モードにおいて、中速制御部54は、電流検出モード発生間隔Tswを、高速制御モードの時よりも短い所定値Tsw2(第2の所定値、
図9参照)に設定する。このように、電流検出モード発生間隔Tswを短くすることにより、中速制御部54は、高速制御部52よりも高頻度に電流検出値Idcを取得できる。
【0030】
次に、処理がステップS8に進むと、低速制御部56は、所定の低速条件が充足されたか否かを判定する。ここで、低速条件とは、「電流ピーク値Idcp(
図7参照)が所定の低速閾値Idc2(第2の閾値、
図9参照)未満である」というものである。ここで「No」と判定されると、処理はステップS6に戻り、中速制御部54による中速制御モードの動作が続行される。
【0031】
一方、ステップS8において「Yes」と判定されると、処理はステップS10に進み、低速制御部56が低速制御モードの処理を実行する。低速制御モードにおいて、低速制御部56は、電流検出モード発生間隔Tswを、中速制御モードにおける所定値Tsw2よりもさらに短い所定値Tsw1(第1の所定値、
図9参照)に設定する。これにより、低速制御部56は、さらに高頻度に電流検出値Idcを取得できる。
【0032】
次に、処理がステップS8に進むと、停止判定部58は、所定の停止判定条件が充足されたか否かを判定する。ここで、停止判定条件とは、「モータMが停止している、または停止していると見做して差し支えない程度の速度で回転している」ということであり、より具体的には、「所定時間TW1以上に渡って、所定の停止判定閾値Idc1(第1の閾値、
図9参照)以上になる電流ピーク値Idcp(または電流検出値Idc)が検出されなかった」というものである。なお、停止判定閾値Idc1は、低速閾値Idc2よりもさらに低い値である。ここで「No」と判定されると、処理はステップS10に戻り、低速制御部56による低速制御モードの動作が続行される。
【0033】
一方、ステップS12において「Yes」と判定されると、処理はステップS14に進み、停止判定部58が停止判定処理を実行する。すなわち、停止判定部58は、停止判定信号JSを“1”(停止中)に設定する。以上により、本ルーチンの処理が終了する。
【0034】
図9は、第1実施形態における各部の波形図である。
電気角速度ωeは、時刻t2に至る以前に略一定値であったが、時刻t2においてモータMに脱調が発生したため、時刻t2において、停止制御ルーチン(
図8)が起動されたものとする。次に、時刻t2以降の期間において、高速制御部52(
図1参照)が、上述した高速制御モードの処理を実行する。これにより、コンデンサ電圧Vcは断続的に高電圧閾値Vchに達する。当該期間において電気角速度ωeが徐々に低下すると、電流ピーク値Idcpも徐々に低下する。これにより、高速制御部52は、電流検出モード発生間隔Tswを徐々に短くする。
【0035】
次に、時刻t4において、「コンデンサ電圧Vcが高電圧閾値Vchを超えなくなった」という中速条件が充足されると、時刻t4以降の期間において、中速制御部54(
図1参照)が、上述した中速制御モードの処理を実行する。すなわち、中速制御部54は、電流検出モード発生間隔Tswを、高速制御モードの時よりも短い所定値Tsw2に設定する。
【0036】
次に、時刻t6において、「電流ピーク値Idcpが所定の低速閾値Idc2未満である」という低速条件が充足されると、時刻t6以降の期間において、低速制御部56(
図1参照)が上述した低速制御モードの処理を実行する。すなわち、低速制御部56は、電流検出モード発生間隔Tswを、中速制御モードにおける所定値Tsw2よりもさらに短い所定値Tsw1に設定する。
【0037】
ここで、時刻t8において、電流ピーク値Idcpは、停止判定閾値Idc1未満になり、それ以降、停止判定閾値Idc1以上になる電流ピーク値Idcpは検出されていない。従って、時刻t8から所定時間TW1が経過した時刻t10において、停止判定部58は停止判定条件が充足された旨を判定し、停止判定信号JSを“1”(停止中)に設定する。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第2実施形態の構成は、第1実施形態のもの(
図1~
図3参照)と同様である。すなわち、第2実施形態におけるスイッチング指令生成部51は、ブレーキモードMBと電流検出モードMDとを交互に適用してスイッチング指令SWを出力する点で第1実施形態のものと共通している。
【0039】
但し、本実施形態における電流検出モードMDには、図示は省略するが、U相電流検出サブモードMDU、V相電流検出サブモードMDV、およびW相電流検出サブモードMDWという3つのサブモードが存在する。そして、スイッチング指令生成部51は、電流検出モードMDを適用する場合には、これら3つのサブモードが循環的に選択する。
【0040】
U相電流検出サブモードMDUにおいては、
図5に示したように、U相の上アームにおける半導体素子S1と、他の2相の下アームにおける半導体素子S4,S6と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態とする。なお、これとは逆に、U相の下アームにおける半導体素子S2と、他の2相の上アームにおける半導体素子S3,S5と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態としてもよい。
【0041】
また、V相電流検出サブモードMDVにおいては、V相の上アームにおける半導体素子S3と、他の2相の下アームにおける半導体素子S2,S6と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態とする。なお、これとは逆に、V相の下アームにおける半導体素子S4と、他の2相の上アームにおける半導体素子S1,S5と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態としてもよい。
【0042】
また、W相電流検出サブモードMDWにおいては、W相の上アームにおける半導体素子S5と、他の2相の下アームにおける半導体素子S2,S4と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態とする。なお、これとは逆に、W相下アームにおける半導体素子S6と、他の2相の上アームにおける半導体素子S1,S3と、をオン状態とし、他の半導体素子をオフ状態としてもよい。
【0043】
図10は、第2実施形態におけるスイッチング指令生成部51の各種波形の例を示す図である。
図10において、三角波信号Triは第1実施形態のもの(
図6参照)と同様であるが、本実施形態における変調率指令信号Mu,Mv,Mwは、図示のように、循環的に立ち上がる期間を有している。これにより、各スイッチング指令SW1,SW3,SW5においても、オン状態になる期間が循環的に生じている。
【0044】
図11は、第2実施形態における電流検出値Idcの波形の一例を示す図である。
第1実施形態のもの(
図8参照)と同様に、電流検出値Idcの波形は、パルス状になる。そして、各々のサブモードに対応するタイミングにおける電流検出値Idcの包絡線は、それぞれモータMのU相,V相,W相巻線に流れるU相電流Iu、V相電流IvおよびW相電流Iwに相当する。これらU相電流Iu、V相電流IvおよびW相電流Iwの周波数成分は、モータMの電気角速度ωeとなる。
【0045】
本実施形態における制御部50は、U相,V相,W相に各々対応する電流検出値Idcに基づいて、U相電流Iu、V相電流IvおよびW相電流Iwを検出し、各相に対応するピーク値を検出する。そして、これら各相に対応するピーク値の平均値を電流ピーク値Idcpとして、第1実施形態と同様の処理を行う。なお、上述の例では、スイッチング指令生成部51は、U相電流検出サブモードMDU、V相電流検出サブモードMDV、およびW相電流検出サブモードMDWを循環的に適用したが、これらサブモードをランダムに適用してもよい。
【0046】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態による縦型洗濯機200の模式的断面図である。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図12において、縦型洗濯機200(洗濯機)は、筐体6と、筐体6に装着された外フタ5(フタ)と、を備えている。また、縦型洗濯機200は、筐体6および外フタ5の内側に、水槽7と、洗濯槽3と、モータMと、モータ制御装置MCと、を備えている。ドアロック部11は、外フタ5を閉状態でロックする。
【0047】
洗濯工程では、洗濯槽3の中に洗濯物が投入され、給水装置8より洗濯水を水槽7に蓄え、モータMに接続された攪拌羽4のみを回転させ洗濯物を洗浄する。また、脱水工程では、モータMに接続されたクラッチ9を切り替え、洗濯槽3と攪拌羽4を共に回転させ遠心力で洗濯物の脱水を行う。
【0048】
また、停止判定信号JSは、第1実施形態のものと同様に、モータMの回転中は“0”になり、停止中は“1”になる。ここで“1”(停止中)とは、必ずしもモータMが完全に停止した状態ではなく、ユーザが洗濯槽3に触れても安全な程度の低速状態になった場合も含めてよい。ドアロック部11は、停止判定信号JSが“1”になったことを条件として、外フタ5のロック状態を解除し、外フタ5を開閉できるようにする。
【0049】
[実施形態の効果]
以上のように上述の実施形態によれば、モータ制御装置MCは、電力変換器70に対する制御モードとして、電力変換器70の全相を同一のスイッチング状態にするブレーキモードMBと、1相を他相と異なるスイッチング状態にすることにより、電流検出部Rsを介してモータMに流れる電流を検出する電流検出モードMDと、を交互に選択し、選択した制御モードに基づくスイッチング指令SWを電力変換器70に供給するスイッチング指令生成部51と、電流検出モードMDにおいて検出した電流検出値Idcが、所定時間TW1以上に渡って所定の第1の閾値(Idc1)未満であったことを条件として、モータMが停止した旨を判定する停止判定部58と、を備える。これにより、電流検出値Idcに基づいて、モータMの適切な停止判定を実現できる。
【0050】
また、モータ制御装置MCは、電流検出モードMDを発生させる電流検出モード発生間隔Tswとして、第1の所定値(Tsw1)を指定する第1の発生間隔制御部(56)をさらに備えると一層好ましい。これにより、第1の所定値(Tsw1)に対応する間隔で、電流検出値Idcを検出することができる。
【0051】
また、電流検出モード発生間隔Tswとして、第1の所定値(Tsw1)よりも長い第2の所定値(Tsw2)を指定する第2の発生間隔制御部(54)をさらに備え、第1の発生間隔制御部(56)は、電流検出値Idcのピーク値である電流ピーク値Idcpが、第1の閾値(Idc1)よりも高い所定の第2の閾値(Idc2)未満になったことを条件として、電流検出モード発生間隔Tswとして第1の所定値(Tsw1)を指定すると一層好ましい。これにより、電流検出モード発生間隔Tswとして第2の所定値(Tsw2)が適用されている期間は、ブレーキモードMBを適用する時間割合が大きくなるため、モータMに対して強い制動をかけることができ、モータMをより迅速に停止させることができる。
【0052】
また、モータ制御装置MCは、交流電圧源Eによって印加された交流電圧を整流した結果である整流電圧(Vc)を電力変換器70に印加する整流回路72と、電流検出モード発生間隔Tswを、第2の所定値(Tsw2)よりも長い間隔に設定するとともに、整流電圧(Vc)が高くなるほど電流検出モード発生間隔Tswを長くする第3の発生間隔制御部(52)と、をさらに備え、第2の発生間隔制御部(54)は、所定時間以上に渡って整流電圧(Vc)が、所定の高電圧閾値Vch未満であったことを条件として、電流検出モード発生間隔Tswとして、第2の所定値(Tsw2)を指定すると一層好ましい。これにより、整流電圧(Vc)における過電圧を防止しつつ、電流検出値Idcを検出できる。
【0053】
また、第2実施形態のように、モータMは、複数相の巻線を備えるものであり、スイッチング指令生成部51は、電流検出モードMDにおいて、複数相の全ての巻線に流れる電流を循環的に検出し、または、複数相の全ての巻線に流れる電流をランダムに検出すると一層好ましい。
【0054】
複数相の全ての巻線に流れる電流を循環的に検出する場合には、半導体素子S1~S6における温度上昇を分散することができ、これら素子の寿命低下を抑制することができる。また、断線や素子故障が発生し、何れかのサブモードにおいて電流検出値Idcが取得できなくなった場合においても、他のサブモードにおいて検出した電流検出値Idcに基づいて、モータMの停止判定を行うことができる。さらに、複数相の全ての巻線に流れる電流をランダムに検出する場合には、モータMから生じるスイッチング音のスペクトルを拡散することができ、電流検出によって生じる雑音を、より低減することが可能となる。
【0055】
また、第3実施形態のように、洗濯機(200)は、上述した何れかのモータ制御装置MCと、モータMと、洗濯物が投入される洗濯槽3と、洗濯物を攪拌する攪拌羽4と、を備え、モータMは、洗濯槽3または攪拌羽4を回転駆動すると一層好ましい。これにより、モータ制御装置MCは、洗濯槽3または攪拌羽4の停止状態を適切に判定できる。
【0056】
また、洗濯機(200)は、洗濯槽3および攪拌羽4を収納する筐体6と、筐体6に装着されたフタ(5)と、停止判定部58が、モータMが停止した旨を判定すると、フタ(5)のロックを解除するドアロック部11と、をさらに備えると一層好ましい。これにより、モータ制御装置MCおよびドアロック部11は、洗濯槽3または攪拌羽4が停止した状態で、フタ(5)のロックを解除することができる。
【0057】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0058】
(1)上記各実施形態においては、制御部50は中速制御部54を備えているが、中速制御部54は必ずしも設けなくてもよい。すなわち、高速制御部52による高速制御モードの動作の実行中に、低速条件が充足されたか否かを低速制御部56が判定し、判定結果が肯定であった場合に低速制御部56が低速制御モードの動作を実行させてもよい。
【0059】
(2)第3実施形態においては洗濯機として縦型洗濯機200を適用した例を説明したが、洗濯機はドラム式洗濯機であってもよく、乾燥機能を備えた洗濯乾燥機であってもよい。
【0060】
(3)上記実施形態における制御部50のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、上述した各ブロック図、各フローチャートに対応する処理、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体(プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0061】
(4)上述した各ブロック図、各フローチャートに対応する処理、その他上述した各種処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0062】
(5)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
3 洗濯槽
4 攪拌羽
5 外フタ(フタ)
6 筐体
11 ドアロック部
51 スイッチング指令生成部
52 高速制御部(第3の発生間隔制御部)
54 中速制御部(第2の発生間隔制御部)
56 低速制御部(第1の発生間隔制御部)
58 停止判定部
70 電力変換器
72 整流回路
200 縦型洗濯機(洗濯機)
E 交流電圧源
M モータ
MB ブレーキモード
MC モータ制御装置
MD 電流検出モード
Rs 電流検出部
SW スイッチング指令
Vc コンデンサ電圧(整流電圧)
Idc 電流検出値
TW1 所定時間
Tsw 電流検出モード発生間隔
Vch 高電圧閾値
Idc1 停止判定閾値(第1の閾値)
Idc2 低速閾値(第2の閾値)
Idcp 電流ピーク値
Tsw1 所定値(第1の所定値)
Tsw2 所定値(第2の所定値)