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特開2024-179822炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179822
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241219BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652L
H01L29/78 658A
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/78 653C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099030
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】野坂 隆之
(57)【要約】
【課題】層間絶縁膜にクラックが発生することを抑制できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、第1主面を有する炭化珪素基板を備え、前記第1主面には、側面と、前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた層間絶縁膜と、をさらに備え、前記層間絶縁膜は、リン原子を含み、前記ゲート電極の上端を通り前記第1主面に平行な仮想面と、前記第1主面とが面一である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する炭化珪素基板を備え、
前記第1主面には、側面と、前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチが設けられており、
前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の上に設けられた層間絶縁膜と、
をさらに備え、
前記層間絶縁膜は、リン原子を含み、
前記ゲート電極の上端を通り前記第1主面に平行な仮想面と、前記第1主面とが面一である、
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極の上面の最大高さRzは、20nm以下である、
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記ゲートトレンチの前記底面の幅は、前記ゲートトレンチの開口部の幅の1/2より小さい、
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ゲートトレンチの前記底面の幅は、前記ゲートトレンチの開口部の幅の1/2以上である、
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1主面と前記ゲートトレンチの前記側面とがなす角度は、45°以上65°以下である、
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート電極の上面は、上に凸となる曲面である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート電極の上面は、下に凸となる曲面である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
第1主面を有する炭化珪素基板を準備する工程と、
前記第1主面に、側面と前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチを形成する工程と、
前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極を形成する工程と、
化学機械研磨によって前記ゲート電極の上面が前記第1主面と面一となるように研磨する工程と、
前記ゲート電極の上にリン原子を含む層間絶縁膜を形成する工程と、
を有する、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
研磨された前記ゲート電極の前記上面に対してドライエッチングを行うことにより、前記ゲート電極の前記上面を曲面にする工程を有する、
請求項8に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体装置の一つとして、炭化珪素基板にゲートトレンチが形成され、ゲートトレンチ内にゲート絶縁膜およびゲート電極が設けられたトレンチゲート型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-77787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトレンチゲート型MOSFETでは、ゲート電極の角部の近傍において層間絶縁膜に応力が集中し、層間絶縁膜にクラックが発生する場合がある。
【0005】
本開示は、層間絶縁膜にクラックが発生することを抑制できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の炭化珪素半導体装置は、第1主面を有する炭化珪素基板を備え、前記第1主面には、側面と、前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた層間絶縁膜と、をさらに備え、前記層間絶縁膜は、リン原子を含み、前記ゲート電極の上端を通り前記第1主面に平行な仮想面と、前記第1主面とが面一である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、層間絶縁膜にクラックが発生することを抑制できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図2図2は、図1の炭化珪素半導体装置におけるゲート電極を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図4図4は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図5図5は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図6図6は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図7図7は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図8図8は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図9図9は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
図10図10は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
図11図11は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
図12図12は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
図13図13は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
図14図14は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図15図15は、図14の炭化珪素半導体装置におけるゲート電極を示す断面図である。
図16図16は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図17図17は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置を示す断面図である。
図18図18は、図17の炭化珪素半導体装置におけるゲート電極を示す断面図である。
図19図19は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面を有する炭化珪素基板を備え、前記第1主面には、側面と、前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチが設けられており、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の上に設けられた層間絶縁膜と、をさらに備え、前記層間絶縁膜は、リン原子を含み、前記ゲート電極の上端を通り前記第1主面に平行な仮想面と、前記第1主面とが面一である。この場合、層間絶縁膜の上面の凹凸が小さくなる。そのため、層間絶縁膜に加わる応力を緩和できる。その結果、クラックの発生を抑制できる。
【0012】
〔2〕 〔1〕において、前記ゲート電極の上面の最大高さRzは、20nm以下であってもよい。この場合、低抵抗かつ高信頼性の炭化珪素半導体装置が得られる。
【0013】
〔3〕 〔1〕または〔2〕において、前記ゲートトレンチの前記底面の幅は、前記ゲートトレンチの開口部の幅の1/2より小さくてもよい。この場合、低抵抗かつ高信頼性の炭化珪素半導体装置が得られる。
【0014】
〔4〕 〔1〕または〔2〕において、前記ゲートトレンチの前記底面の幅は、前記ゲートトレンチの開口部の幅の1/2以上であってもよい。この場合、セルピッチの縮小に有利であり、より低抵抗の炭化珪素半導体装置が得られる。
【0015】
〔5〕 〔1〕から〔4〕において、前記第1主面と前記ゲートトレンチの前記側面とがなす角度は、45°以上65°以下であってもよい。この場合、より低抵抗かつ高信頼性の炭化珪素半導体装置が得られる。
【0016】
〔6〕 〔1〕から〔5〕において、前記ゲート電極の上面は、上に凸となる曲面であってもよい。この場合、ゲート電極の端部近傍の層間絶縁膜に加わる応力を緩和しやすい。
【0017】
〔7〕 〔1〕から〔5〕において、前記ゲート電極の上面は、下に凸となる曲面であってもよい。この場合、ゲート電極の端部近傍の層間絶縁膜の厚さが厚くなり、ゲート電極の端部近傍の電界を緩和しやすい。
【0018】
〔8〕 本開示の他の一態様に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は、第1主面を有する炭化珪素基板を準備する工程と、前記第1主面に、側面と前記側面に連なる底面とを有するゲートトレンチを形成する工程と、前記側面および前記底面に接するゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜の上にゲート電極を形成する工程と、化学機械研磨によって前記ゲート電極の上面が前記第1主面と面一となるように研磨する工程と、前記ゲート電極の上にリン原子を含む層間絶縁膜を形成する工程と、を有する。この場合、層間絶縁膜の上面の凹凸が小さくなる。そのため、層間絶縁膜に加わる応力を緩和できる。その結果、クラックの発生を抑制できる。また、層間絶縁膜が局所的に薄くなることを抑制できる。そのため、ナトリウムなどの金属不純物の拡散に対するバリア性が向上する。
【0019】
〔9〕 〔8〕において、研磨された前記ゲート電極の前記上面に対してドライエッチングを行うことにより、前記ゲート電極の前記上面を曲面にする工程を有してもよい。ゲート電極の上面が上に凸となる曲面である場合、ゲート電極の端部近傍の層間絶縁膜に加わる応力を緩和しやすい。ゲート電極の上面が下に凸となる曲面である場合、ゲート電極の端部近傍の層間絶縁膜の厚さが厚くなり、ゲート電極の端部近傍の電界を緩和しやすい。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0021】
〔第1実施形態〕
(炭化珪素半導体装置)
第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Aについて説明する。図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Aを示す断面図である。図2は、図1の炭化珪素半導体装置100Aにおけるゲート電極82を示す断面図である。
【0022】
図1に示されるように、炭化珪素半導体装置100Aは、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、バリアメタル膜84と、ソース電極60と、ドレイン電極70とを主に有する。
【0023】
炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は、第1主面1を構成する。炭化珪素単結晶基板50は、第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50および炭化珪素エピタキシャル層40は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成される。炭化珪素単結晶基板50は、例えば窒素(N)等のn型不純物を含み、n型を有する。炭化珪素基板10には、半導体素子の一例として電界効果トランジスタが形成されている。
【0024】
炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0025】
ドリフト領域11は、例えば窒素またはリン等のn型不純物を含み、n型を有する。
【0026】
ボディ領域12は、ドリフト領域11上に設けられている。ボディ領域12は、例えばアルミニウム(Al)等のp型不純物を含み、p型を有する。
【0027】
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、例えば窒素またはリン等のn型不純物を含み、n型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成する。
【0028】
コンタクト領域18は、例えばアルミニウム等のp型不純物を含み、p型を有する。コンタクト領域18は、第1主面1を構成する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。
【0029】
第1主面1には、複数のゲートトレンチ5が設けられている。各ゲートトレンチ5は、例えば第1主面1に平行な第1方向に延びる。複数のゲートトレンチ5は、例えば第1主面1に平行かつ第1方向と直交する第2方向に並んでいる。各ゲートトレンチ5は、ドリフト領域11からなる底面4を有する。各ゲートトレンチ5は、ソース領域13およびボディ領域12を貫通して底面4に連なる側面3を有する。底面4は、例えば第2主面2と平行な平面である。
【0030】
底面4の幅d2は、ゲートトレンチ5の開口部の幅d1の1/2より小さくてよい。この場合、低抵抗かつ高信頼性の炭化珪素半導体装置100Aが得られる。底面4の幅d2は、ゲートトレンチ5の開口部の幅d1の1/2以上であってよい。この場合、セルピッチの縮小に有利であり、より低抵抗の炭化珪素半導体装置100Aが得られる。
【0031】
幅d1は、第1点P1と第2点P2との間の距離である。第1点P1は、第1方向と直交する断面において、第1主面1と、側面3の接線L1との交点である。第2点P2は、第1方向と直交する断面において、第1主面1と、側面3の接線L2との交点である。
【0032】
幅d2は、第3点P3と第4点P4との間の距離である。第3点P3は、第1方向と直交する断面において、底面4と接線L1との交点である。第4点P4は、第1方向と直交する断面において、底面4と接線L2との交点である。
【0033】
第1主面1と側面3とがなす角度θは、45°以上65°以下であってもよい。この場合、より低抵抗かつ高信頼性の炭化珪素半導体装置100Aが得られる。角度θは、第1主面1と接線L1とのなす角である。
【0034】
ゲート絶縁膜81は、側面3および底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4においてドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11の各々と接する。ゲート絶縁膜81は、例えば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、例えば二酸化珪素を含む材料により構成される。
【0035】
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に設けられている。ゲート電極82は、例えば導電性不純物を含むポリシリコン(ポリSi)から構成される。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。
【0036】
ゲート電極82の上端を通り第1主面1に平行な仮想面82aと、第1主面1とは、面一である。この場合、層間絶縁膜83の上面の凹凸が小さくなる。そのため、層間絶縁膜83に加わる応力を緩和できる。その結果、クラックの発生を抑制できる。面一とは、実質的に面一であることを意味する。面一とは、仮想面82aと第1主面1との間に段差がない場合に限定されず、例えば仮想面82aと第1主面1との間にわずかな段差がある場合も含む。わずかな段差は、例えば100nm以下である。
【0037】
ゲート電極82の上面の最大高さRzは、20nm以下であってよい。この場合、低抵抗かつ高信頼性の炭化珪素半導体装置100Aが得られる。最大高さRzは、JIS B0601:2001に規定される最大高さである。最大高さRzは、例えば透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)または走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて炭化珪素半導体装置100Aの断面を観察することにより測定できる。
【0038】
層間絶縁膜83は、ゲート絶縁膜81およびゲート電極82に接して設けられている。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成される。層間絶縁膜83は、HTO(High Temperature Oxide)膜とPSG(Phosphorus Silicon Glass)膜との積層膜であってよい。この場合、ナトリウムなどの金属不純物が層間絶縁膜83に捕獲されやすい。層間絶縁膜83は、ソース電極60とゲート電極82とを電気的に絶縁する。
【0039】
層間絶縁膜83には、第2方向に一定の間隔でコンタクトホール90が形成されている。コンタクトホール90は、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第2方向で隣り合うコンタクトホール90の間にゲートトレンチ5が位置するように設けられている。コンタクトホール90は、第1方向に延びる。コンタクトホール90を通じて、ソース領域13およびコンタクト領域18が層間絶縁膜83から露出する。
【0040】
バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83の上面および側面を覆う。バリアメタル膜84は、層間絶縁膜83と接する。バリアメタル膜84は、例えば窒化チタン(TiN)を含む材料から構成される。バリアメタル膜84は、例えばチタン(Ti)膜と窒化チタン膜との積層膜である。
【0041】
ソース電極60は、第1主面1に接する。ソース電極60は、コンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。
【0042】
コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域18に接していてもよい。コンタクト電極61は、例えば第1電極領域61aと、第2電極領域61bとを有する。第1電極領域61aは、ソース領域13およびコンタクト領域18と接する。第1電極領域61aは、ソース領域13およびコンタクト領域18とオーミック接合する。第1電極領域61aは、例えばニッケルシリサイド(NiSi)を含む材料から構成される。第1電極領域61aは、チタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。第2電極領域61bは、バリアメタル膜84の上面および側面を覆う。第2電極領域61bは、設けられなくてもよい。第2電極領域61bは、例えばニッケルを含む材料から構成される。
【0043】
ソース配線62は、コンタクト電極61の上面および側面を覆う。ソース配線62は、例えばアルミニウムまたは銅(Cu)を含む材料から構成される。ソース配線62は、アルミニウムおよび銅を含む材料から構成されていてもよい。ソース電極60は、層間絶縁膜83によりゲート電極82から電気的に絶縁されている。
【0044】
ドレイン電極70は、第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接する。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、例えばニッケルシリサイドを含む材料から構成される。ドレイン電極70は、チタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されていてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合する。
【0045】
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
炭化珪素半導体装置100Aの製造方法について説明する。図3から図13は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Aの製造方法を示す断面図である。
【0046】
まず、図3に示されるように、炭化珪素単結晶基板50を準備する。次に、炭化珪素単結晶基板50の上に炭化珪素エピタキシャル層40を形成する。例えば、炭化珪素単結晶基板50は、窒素等のn型不純物を含み、n型を有する。例えば、炭化珪素エピタキシャル層40は、窒素等のn型不純物を添加したエピタキシャル成長により形成できる。このようにして、第1主面1と、第2主面2とを有する炭化珪素基板10が得られる。
【0047】
次に、図4に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層40へのイオン注入を行う。例えば、イオン注入により、ボディ領域12、ソース領域13およびコンタクト領域18が形成される。炭化珪素エピタキシャル層40の残部がドリフト領域11として機能する。ボディ領域12またはコンタクト領域18を形成するためのイオン注入においては、例えばアルミニウム等のp型不純物をイオン注入する。ソース領域13を形成するためのイオン注入においては、例えばリン等のn型不純物をイオン注入する。
【0048】
次に、図5に示されるように、ソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11に複数のゲートトレンチ5を形成する。ゲートトレンチ5は、次のようにして形成できる。
【0049】
まず、ゲートトレンチ5を形成しようとする領域上に開口を有するマスク(図示せず)を形成する。次に、マスクを用いて、ソース領域13の一部と、ボディ領域12の一部と、ドリフト領域11の一部とをエッチングにより除去する。エッチングは、例えば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)である。エッチングにより、ゲートトレンチ5を形成しようとする領域に、第1主面1に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられ、かつ第1主面1とほぼ平行な底部とを有する凹部が形成される。
【0050】
次に、凹部において熱エッチングを行う。熱エッチングは、第1主面1上にマスクが形成された状態で、例えば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応ガスを含む雰囲気での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、例えば、塩素(Cl)、三塩化ホウ素(BCl)、六フッ化硫黄(SF)または四フッ化炭素(CF)を含む。例えば、塩素ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。反応ガスは、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、例えば窒素(N)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスを利用できる。熱エッチングにより、第1主面1にゲートトレンチ5が形成される。ゲートトレンチ5は、ドリフト領域11からなる底面4と、ソース領域13およびボディ領域12を貫通して底面4に連なる側面3とを有する。熱エッチングの後、マスクが第1主面1から除去される。
【0051】
次に、図6に示されるように、ゲート絶縁膜81を形成する。例えば炭化珪素基板10を熱酸化することにより、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11と、コンタクト領域18とに接するゲート絶縁膜81が形成される。具体的には、炭化珪素基板10を、酸素を含む雰囲気において、例えば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱する。これにより、第1主面1と、側面3と、底面4とに接するゲート絶縁膜81が形成される。ゲート絶縁膜81が熱酸化により形成された場合、厳密には、炭化珪素基板10の一部がゲート絶縁膜81に取り込まれる。このため、以降の処理では、熱酸化の後のゲート絶縁膜81と炭化珪素基板10との間の界面に第1主面1、側面3および底面4が若干移動したものとする。
【0052】
次に、図7に示されるように、ゲート電極82を形成する。ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に形成される。ゲート電極82は、例えば減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。ゲート電極82は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11との各々に対面するように形成される。
【0053】
次に、図8に示されるように、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により、第1主面1が露出するまでゲート電極82を研磨する。これにより、ゲート電極82の上端を通り第1主面1に平行な仮想面82aが第1主面1と面一となる。この場合、層間絶縁膜83の上面の凹凸が小さくなる。そのため、層間絶縁膜83に加わる応力を緩和できる。その結果、クラックの発生を抑制できる。また、層間絶縁膜83が局所的に薄くなることを抑制できる。そのため、ナトリウムなどの金属不純物の拡散に対するバリア性が向上する。
【0054】
次に、図9に示されるように、ゲート電極82の上にリン原子を含む層間絶縁膜83を形成する。層間絶縁膜83は、次のようにして形成できる。
【0055】
まず、ゲート電極82を覆い、かつゲート絶縁膜81と接するように、層間絶縁膜83用の第1絶縁膜(図示せず)を形成する。第1絶縁膜は、例えばHTO膜である。第1絶縁膜は、例えばCVD法により形成される。第1絶縁膜の成膜温度は、例えば800℃以上であってよい。この場合、緻密な膜質の第1絶縁膜を形成できる。そのため、層間絶縁膜83の表面の凹凸が小さくなり、層間絶縁膜83とバリアメタル膜84との密着性が向上する。第1絶縁膜は、例えば減圧CVD法により形成される。減圧CVD法では、成膜温度が高温のため、緻密な膜質の第1絶縁膜を形成しやすい。次に、第1絶縁膜の上に第2絶縁膜を形成する。第2絶縁膜は、例えばPSG膜である。この場合、ナトリウムなどの金属不純物が層間絶縁膜83に捕獲されやすい。第2絶縁膜は、例えばCVD法により形成される。このようにして、HTO膜とPSG膜との積層膜からなる層間絶縁膜83を形成できる。第2絶縁膜を形成した後に、不活性ガスの雰囲気において、例えば1000℃の温度で加熱してもよい。この場合、層間絶縁膜83の表面の凹凸を小さくしやすい。
【0056】
次に、図10に示されるように、層間絶縁膜83のエッチングを行うことにより、層間絶縁膜83にコンタクトホール90を形成する。この結果、ソース領域13およびコンタクト領域18が層間絶縁膜83から露出する。
【0057】
次に、図11に示されるように、層間絶縁膜83の上面および側面を覆うバリアメタル膜84を形成する。バリアメタル膜84は、例えば窒化チタンを含む材料から構成される。バリアメタル膜84は、例えばチタン膜と窒化チタン膜との積層膜である。バリアメタル膜84は、例えばスパッタリング法により形成される。
【0058】
次に、図12に示されるように、第1主面1においてソース領域13およびコンタクト領域18に接するコンタクト電極61用の金属膜(図示せず)を形成する。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばスパッタリング法により形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばニッケルを含む材料から構成される。次に、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50に接するドレイン電極70用の金属膜を形成する。ドレイン電極70用の金属膜は、例えばニッケルを含む材料から構成される。
【0059】
次に、合金化アニールを行う。コンタクト電極61用の金属膜およびドレイン電極70用の金属膜が、例えば900℃以上1100℃以下の温度で5分間程度保持される。これにより、コンタクト電極61用の金属膜の少なくとも一部およびドレイン電極70用の金属膜の少なくとも一部が、炭化珪素基板10が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域13およびコンタクト領域18とオーミック接合する第1電極領域61aと、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合するドレイン電極70が形成される。バリアメタル膜84の上面および側面に、シリサイド化していない第2電極領域61bが形成される。第1電極領域61aは、チタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されてもよい。ドレイン電極70は、チタンと、アルミニウムと、シリコンとを含む材料から構成されてもよい。
【0060】
次に、図13に示されるように、ソース配線62を形成する。具体的には、コンタクト電極61を覆うソース配線62が形成される。ソース配線62は、例えばスパッタリング法により形成される。ソース配線62は、例えばアルミニウムまたは銅を含む材料から構成される。ソース配線62は、アルミニウムおよび銅を含む材料から構成されてもよい。このようにして、コンタクト電極61とソース配線62とを有するソース電極60が形成される。このようにして、電界効果トランジスタを含む炭化珪素半導体装置100Aを製造できる。
【0061】
〔第2実施形態〕
(炭化珪素半導体装置)
第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Bについて説明する。図14は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Bを示す断面図である。図15は、図14の炭化珪素半導体装置100Bにおけるゲート電極82を示す断面図である。
【0062】
図14および図15に示されるように、炭化珪素半導体装置100Bは、ゲート電極82の上面が上に凸となる曲面である構成において、炭化珪素半導体装置100Aと異なる。その他の構成は、炭化珪素半導体装置100Aと同じであってよい。以下、炭化珪素半導体装置100Aと異なる点を中心に説明する。
【0063】
ゲート電極82の上端を通り第1主面1に平行な仮想面82aと、第1主面1とは、面一である。この場合、層間絶縁膜83の上面の凹凸が小さくなる。そのため、層間絶縁膜83に加わる応力を緩和できる。その結果、クラックの発生を抑制できる。
【0064】
ゲート電極82の上面は、上に凸となる曲面である。この場合、ゲート電極82の端部近傍の層間絶縁膜83に加わる応力を緩和しやすい。
【0065】
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
炭化珪素半導体装置100Bの製造方法について説明する。図16は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Bの製造方法を示す断面図である。
【0066】
図16に示されるように、炭化珪素半導体装置100Bの製造方法は、研磨されたゲート電極82の上面を上に凸となる曲面にするようにドライエッチングを行う構成において、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と異なる。その他の構成は、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と同じであってよい。以下、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と異なる点を中心に説明する。
【0067】
まず、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と同様の手順によって、炭化珪素単結晶基板50の準備から化学機械研磨によるゲート電極82の研磨までを行う。これにより、ゲート電極82の上端を通り第1主面1に平行な仮想面82aが第1主面1と面一となる。
【0068】
次に、図16に示されるように、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ゲート電極82の上面を上に凸となる曲面にする。例えば、エッチングガスの流量、希釈ガスの流量、バイアス電圧などのドライエッチングの条件を調整し、第2方向における中央部より両端のエッチング速度を大きくすることにより、ゲート電極82の上面を上に凸となる曲面にできる。この場合、ゲート電極82の端部近傍の層間絶縁膜83に加わる応力を緩和しやすい。
【0069】
次に、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と同様の手順によって、層間絶縁膜83の形成からソース配線62の形成までを行う。このようにして、電界効果トランジスタを含む炭化珪素半導体装置100Bを製造できる。
【0070】
〔第3実施形態〕
(炭化珪素半導体装置)
第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Cについて説明する。図17は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Cを示す断面図である。図18は、図17の炭化珪素半導体装置100Cにおけるゲート電極82を示す断面図である。
【0071】
図17および図18に示されるように、炭化珪素半導体装置100Cは、ゲート電極82の上面が下に凸となる曲面である構成において、炭化珪素半導体装置100Aと異なる。その他の構成は、炭化珪素半導体装置100Aと同じであってよい。以下、炭化珪素半導体装置100Aと異なる点を中心に説明する。
【0072】
ゲート電極82の上端を通り第1主面1に平行な仮想面82aと、第1主面1とは、面一である。この場合、層間絶縁膜83の上面の凹凸が小さくなる。そのため、層間絶縁膜83に加わる応力を緩和できる。その結果、クラックの発生を抑制できる。
【0073】
ゲート電極82の上面は、下に凸となる曲面である。この場合、ゲート電極82の端部近傍の層間絶縁膜83の厚さが厚くなり、ゲート電極82の端部近傍の電界を緩和しやすい。
【0074】
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Cの製造方法について説明する。図19は、第3実施形態に係る炭化珪素半導体装置100Cの製造方法を示す断面図である。
【0075】
図19に示されるように、炭化珪素半導体装置100Cの製造方法は、研磨されたゲート電極82の上面を下に凸となる曲面にするようにドライエッチングを行う構成において、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と異なる。その他の構成は、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と同じであってよい。以下、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と異なる点を中心に説明する。
【0076】
まず、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と同様の手順によって、炭化珪素単結晶基板50の準備から化学機械研磨によるゲート電極82の研磨までを行う。これにより、ゲート電極82の上端を通り第1主面1に平行な仮想面82aが第1主面1と面一となる。
【0077】
次に、図19に示されるように、ドライエッチングにより、ゲート電極82の上面を下に凸となる曲面にする。例えば、エッチングガスの流量、希釈ガスの流量、バイアス電圧などのドライエッチングの条件を調整し、第2方向における両端より中央部のエッチング速度を大きくすることにより、ゲート電極82の上面を下に凸となる曲面にできる。この場合、ゲート電極82の端部近傍の層間絶縁膜83の厚さが厚くなり、ゲート電極82の端部近傍の電界を緩和しやすい。
【0078】
次に、炭化珪素半導体装置100Aの製造方法と同様の手順によって、層間絶縁膜83の形成からソース配線62の形成までを行う。このようにして、電界効果トランジスタを含む炭化珪素半導体装置100Cを製造できる。
【0079】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
18 コンタクト領域
40 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
60 ソース電極
61 コンタクト電極
61a 第1電極領域
61b 第2電極領域
62 ソース配線
70 ドレイン電極
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
82a 仮想面
83 層間絶縁膜
84 バリアメタル膜
90 コンタクトホール
100A、100B、100C 炭化珪素半導体装置
d1、d2 幅
L1、L2 接線
P1 第1点
P2 第2点
P3 第3点
P4 第4点
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19