(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179823
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】植物の育成方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20241219BHJP
【FI】
A01G9/02 101W
A01G9/02 101J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099031
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】517056310
【氏名又は名称】株式会社Edge Creators
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 匡志
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NA10
2B327NC08
2B327NC25
2B327NC38
2B327NC39
2B327NC42
2B327NC56
2B327ND01
2B327QA03
2B327QB03
2B327QB22
2B327QB28
2B327QC11
2B327QC38
2B327QC46
2B327QC49
2B327RA03
2B327RA06
2B327RA14
2B327RA22
2B327RA26
2B327RB02
2B327RB04
2B327RC09
2B327RC32
2B327RE10
2B327UA10
2B327UA13
2B327VA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鉢の内部の透水性をよくするとともに植えた植物の成長に貢献することができる植物の育成方法を提供すること。
【解決手段】培養土が収容された植物の育成容器1の培養土Sと育成容器1の側壁部6との間に、複数のプラスチック製の脚の両端部において複数の脚同士が相互に角度を持って接合されることで構成された三次元網目構造体からなる透水性クッション材21を配置して植物を育成するようにした。これによって、過湿にならず根腐れが防止されるとともに、植物の培養土S中で発根した一部が透水性クッション材21内に進入して三次元網目構造体に絡むようになるため、培養土Sの側方に一部植物の根が露出して成長する領域ができることとなり植物育成に貢献する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養土が収容された植物の育成容器の前記培養土と前記育成容器の側壁との間に、複数の棒状プラスチックの両端部において前記複数の棒状プラスチック同士が相互に角度を持って接合されることで構成された三次元網目構造体からなる透水性クッション材を配置して植物を育成することを特徴とする植物の育成方法。
【請求項2】
前記棒状プラスチックは1mm~4mmの長さ、かつ0.1mm~2mmの太さとされ、長さと太さの比は10:1~10:5であることを特徴とする請求項1に記載の植物の育成方法。
【請求項3】
複数の前記棒状プラスチックで包囲される領域の面積は平均値で0.5mm2~5mm2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物の育成方法。
【請求項4】
前記透水性クッション材は前記培養土が収容されている前記育成容器の側壁の内周全域に配設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の植物の育成方法。
【請求項5】
培養土が収容される植物の育成容器は培養土が収容される内容器と、前記内容器を収容するる外容器とを備え、前記内容器の底部には内外に連通する小孔が設けられ、前記外容器に貯水した水を前記小孔を通じて前記内容器内の培養土に供給することを特徴とする請求項1に記載の植物の育成方法。
【請求項6】
前記外容器は前記内容器ともども上方から蓋部材によって覆われることを特徴とする請求項5に記載の植物の育成方法。
【請求項7】
前記小孔の平均径は0.3~1.5mmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の植物の育成方法。
【請求項8】
前記小孔の平均密度は1cm2当たり5~30個であることを特徴とする請求項7に記載の植物の育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養土が給水過多にならず、培養土に植えた植物の根の発育を促進することができる植物の育成方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透水性の低い植木鉢やプランター等の容器に培養土を入れて種や苗等の植物を植えた場合に、過湿になってしまい根腐れを起こしやすい。透水性の低くない容器であっても水をやりすぎたり培養土の水はけが悪いと土中の酸素不足で根腐れは発生する。このような根腐れを防止するための先行技術として特許文献1を示す。特許文献1の技術では土中の水はけをよくするために半割円筒形状のフェンス状の網部材からなる根腐れ防止具1を鉢2の内側に配置させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では根腐れ防止具1によって根腐れは防止できるものの、根腐れ防止具1の外側領域は鉢2との間に空間を構成するだけであって、格段その空間は植物の根が張ることを予定しているものではなく、植物の成長に積極的に貢献するというものではない。本発明は、鉢の内部の透水性をよくするとともに植えた植物の成長に貢献することができる植物の育成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための第1の手段として、培養土が収容された植物の育成容器の前記培養土と前記育成容器の側壁との間に、複数の棒状プラスチックの両端部において前記複数の棒状プラスチック同士が相互に角度を持って接合されることで構成された三次元網目構造体からなる透水性クッション材を配置して植物を育成するようにした。
これによって、培養土に一旦供給した水分が育成容器の側壁側から排出され、過湿にならず根腐れが防止されるとともに、育成容器の側壁側で培養土に接する部分が三次元網目構造体からなる透水性クッション材であるため、植物の培養土中で発根した一部が透水性クッション材内に進入して三次元網目構造体に絡むようになるため、培養土の側方に一部植物の根が露出して成長する領域ができることとなり植物育成に貢献する。
【0006】
「透水性クッション材」は三次元網目構造体の集合体である。三次元網目構造体のみで構成されてもよく、一部に三次元網目構造体ではない部分を含んでいてもよい。
「三次元網目構造体」は複数の棒状プラスチック同士が相互に角度を持って接合されて構成されている。三次元網目構造体は、例えば発泡成形によって構成される。発泡成形はプラスチック原料として例えばポリウレタンやポリエステルやシリコーン等の前駆体としてのポリマーを調整し、これを発泡させ、発泡状態で固化した成形品の膜を物理的あるいは化学的に取り除くことで成形することができる。膜を取り除くことで線状(棒状)プラスチックが残って三次元網目構造体を構築できる。他のプラスチック原料を用いることも可能である。このように構築された三次元網目構造体は棒状プラスチックの端部同士が相互に接合して架橋された形態となる。架橋状態の棒状プラスチックは3~6本程度の端部が接合した形態として現れる。このような三次元網目構造体は全体として弾性・可撓性を有することとなる。
複数の棒状プラスチックで包囲された領域(以下、セル)の大きさによって三次元網目構造体の物理的性質が異なる。透水性についてはセルがごく小さいといわゆるスポンジとなって表面張力と毛細管現象が発現されてかえって吸水(保水)してしまう。本発明では透水性を必要とするため、透水性を有する三次元網目構造体としては表面張力と毛細管現象が発現されない(あるいは発現されにくい)ほどセルが大きいことが必要である。つまり、三次元網目構造体は空隙の多い目の粗い形態であることがよい。セルの大きさは言い換えればセルを構成する棒状プラスチックの長さと太さの比に比例する。
また、あまりセルが大きすぎても培養土が空隙からこぼれてしまうためよくない。培養土は植物によって様々な種類や粒径の土を用いるため、調整した培養土に応じた目の透水性クッション材を用いることがよい。
棒状プラスチックは1mm~4mmの長さ、かつ0.1mm~2mmの太さの範囲で、長さと太さのサイズにおいてそれらの比は10:1~10:5であると表面張力と毛細管現象は無視できるほど小さくなるためよい。棒状プラスチックがこのようなサイズの透水性クッション材(三次元網目構造体)は保水されにくく透水性を有する。また、このようなサイズの棒状プラスチックで構成されるセルであれば、培養土も透水性クッション材から下方に脱落しにくくなる。このような効果が期待できる透水性クッション材をセルの大きさ(面積)で表現すれば、棒状プラスチックで包囲されるセルの多角形形状の面積が、平均値で0.5mm2~5mm2であることがよい。尚、由来となる発泡状態によってセルの大きさは異なり大小面積の異なるセルが混在する。
また、透水性クッション材の厚みは培養土の種類や量、育成容器の大きさ等の条件に応じて適宜変更可能である。
【0007】
また、第2の手段として、前記棒状プラスチックは1mm~4mmの長さ、かつ0.1mm~2mmの太さとされ、長さと太さの比は10:1~10:5であるようにした。
このようなサイズとした理由は上記の通り本発明に最適であるからである。
また、第3の手段として、複数の前記棒状プラスチックで包囲される領域の面積は平均値で0.5mm2~5mm2であるようにした。
このようなサイズとした理由は上記の通り本発明に最適であるからである。
また、第4の手段として、前記透水性クッション材は前記培養土が収容されている前記育成容器の側壁の内周全域に配設されているようにした。
これによって、培養土から偏ることなくまんべんなく透水することができる。
【0008】
また、第5の手段として、培養土が収容される植物の育成容器は培養土が収容される内容器と、前記内容器を収容するる外容器とを備え、前記内容器の底部には内外に連通する小孔が設けられ、前記外容器に貯水した水を前記小孔を通じて前記内容器内の培養土に供給するようにした。
これによって、内容器の底部から貯水部内の水を小孔を通して内容器内に供給させて培養土に含浸させることができ、貯水部内の水の量や小孔の数や大きさ等を適宜変更することによって植物に応じて適切に水分を与えることができ、透水性クッション材とともに用いることで植物に応じたきめ細やかな水分管理をすることができる。
「小孔」は平均径が5mm以下とすることがよい。実験的に培養土が小孔から外容器の貯水部側にこぼれ落ちていかない限界的な孔の大きさが5mm程度であることがわかったからである。培養土の粘度や粒子の大きさや孔の形状によって下方に培養土がこぼれない孔の大きさは一様ではなく、植物の種類や植物の根の成長具合によって通年同じ条件ではないものの、多少のこぼれ落ちがあっても内容器内で培養土が保持される孔の大きさとしてはこの平均径が5mm以下となることがよい。平均径であるため、孔の形状が円形でなければ形状に応じた全周の平均値が5mm以下ということになる。
また、5mm以下という相対的に細い孔であるためベルヌーイの定理に従い周囲の貯水部の圧力によって、小孔の通路内の水の流速は早まることとなり、貯水部の水位に達するまでの速度は比較的早い。そして、貯水部の水位に達した後は、培養土の表面張力によって貯水部の水位よりも高い位置まで水が行き渡るようになる。
容器の素材は内容器に関しては培養土によって変色したり腐食したりしない素材で、水を含んだ培養土を受けるために厚みもあることがよい。例えば、プラスチック製であることがよい。プラスチック製であると成形性もよい。
外容器は水を入れることができればよいが、変色や内容器を支持する可能性もあるため、内容器と同様にプラスチック製であることがよい。
【0009】
また、第6の手段として、前記外容器は前記内容器ともども上方から蓋部材によって覆われるようにした。
このように蓋部材によって育成容器全体を覆うことで、透水性クッション材方向から排出した水分を育成容器内に留めることができ、培養土自体の過湿を抑えつつ育成容器内を高湿度に保つことができ、特に湿度を必要とするキノコのような植物を植える場合に好適である。
また、第7の手段として、前記小孔の平均径は0.3~1.5mmであるようにした。
このように孔がより小径であれば上記のように培養土に水を下方から供給する際にベルヌーイの定理に従い周囲の貯水部の水の圧力によって、小孔の通路内の水の流速は早まることとなる。より好適には0.5~1.2mmである。
また、第8の手段として、前記小孔の平均密度は1cm2当たり5~30個であるようにした。
あまりに小孔が多いと、小孔からの培養土が貯水部内にこぼれ落ち量が多くなり、培養土を受ける内容器の強度にも影響があるため、この程度の小孔の形成密度であることがよい。孔の径が大きくなれば相対的に小孔の平均密度は低くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養土に一旦供給した水分が育成容器の側壁側から排出され、過湿にならず根腐れが防止されるとともに、育成容器の側壁側で培養土に接する部分が三次元網目構造体からなる透水性クッション材であるため、植物の培養土中で発根した一部が透水性クッション材内に進入して三次元網目構造体に絡むようになるため、培養土の側方に一部植物の根が露出して成長する領域ができることとなり植物育成に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態の方法において使用する植物の育成容器の斜視図。
【
図2】(a)及び(b)は透水性クッション材21の三次元網目構造を拡大して説明する説明図。
【
図3】同じ植物の育成容器を構成する内容器の斜視図。
【
図4】(a)及び(b)は同じ植物の育成容器の使用方法を説明する説明図。
【
図5】同じ植物の育成方法において内容器内の培養土への外容器からの水の供給状態を説明する縦断面図。
【
図6】他の実施の形態の方法で使用する植物の育成容器の一部破断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の植物の育成容器を用いた植物の育成方法について図面に基づいて説明する。
図1、
図4及び
図5に示すように、植物の育成容器1は内容器2と外容器3とより構成されている。
図2及び
図3に示すように、着色されたプラスチック製の内容器2は本体筒部4と本体筒部4の上端において周囲に張り出して形成されたフランジ部5とから構成されている。本体筒部4は角部が面取りされた正六角柱形状の外観の側壁部6と側壁部6の下端位置に側壁部6と一体に成形された底板7とから構成されている。底板7には多数の(つまり複数の)内外に連通する小孔8が形成されている。小孔8は本実施の形態では円形の直径0.5mmのトンネル状の孔である。本実施の形態では小孔8は平均密度は1cm
2当たり9.2個の密度で底板7に整然と配置されている。
フランジ部5は正六角柱形状の側壁部6に沿って正六角柱形状となるように張り出され、外壁10と内壁11と外壁10と内壁11の間に配置された底板12とによって断面コ字状の上方に開口された溝として本体筒部4の全周に渡って形成されている。フランジ部5の底板12にはちょうど正六角柱形状の角部位置に上下に連通する水抜き穴13が形成されている。底板12の裏面の外壁10寄り位置には外壁10に沿って位置決めリブ15が底板12の全周に渡って形成されている。
【0013】
図1、
図4及び
図5に示すように、透明なプラスチック製の外容器3は側壁部16と側壁部16の下端位置に側壁部16と一体に成形された底板17とから構成されている。側壁部16は角部が面取りされた正六角柱形状でかつ上方側の間隔が広いテーパ状の外観に構成されている。外容器3の内部は貯水部18とされる。外容器3の側壁部16の上端形状は内容器2側のフランジ部5の外壁10下端形状と一致する。
このような構成の植物の育成容器1の使用方法について説明する。
図4に示すように外容器3上に内容器2をセットすると、外容器3の側壁部16上端に内容器2のフランジ部5の外壁10が載り、同時に内容器2側の位置決めリブ15が外容器3の側壁部16上端寄り内側に面した位置に配置されることとなり、外容器3上で内容器2の位置決めがされることとなる。この植物の育成容器1の使用可能状態において、内容器2は外容器3の貯水部18内に吊り下げ状に支持される。この状態で内容器2の底板7は外容器3の底板17から若干上方に底板17と平行に配置されることとなる。
【0014】
図1、
図4及び
図5に示すように、本体筒部4内には植物を育成するための培養土Sが収容されている。内容器2の側壁部6と培養土Sの間には透水性クッション材21が配設されている。透水性クッション材21は発泡成形したポリウレタン素材の目の粗い三次元網目構造体から構成されている。
図2(a)に示すように、透水性クッション材21は棒状プラスチックとしての複数の脚22の端部が相互に接合されて架橋された網目構造体を構成している。1本の脚22の長さは1mm~4mm程度であり、かつ0.1mm~2mmの太さの範囲であり、長さと太さのサイズにおいてそれらの比は10:1~10:2程度である。透水性クッション材21の脚22で包囲されたセルの面積は本実施の形態では平均値で0.5mm
2~0.7mm
2に収まる大きさで構成されている。
図2(b)に示すように、本実施の形態では4本の脚22の端部が接合した基本構造がもっとも多く、発泡の状態によって3~6本の脚22の端部が接合して三次元網目構造を構成する。透水性クッション材21は内容器2の側壁部6の内側の全周囲に配設されている。本実施の形態では透水性クッション材21は7mm程度の厚みのものを用いている。
【0015】
図5に示すように、培養土Sと透水性クッション材21が配設された内容器2を外容器3の貯水部18内に配置し、外容器3の貯水部18内に注水して実際に植物P(本実施の形態ではキノコ)を育成する。
内容器2内には貯水部18内の水は底板7の小孔8から徐々に培養土Sに含浸されていき、
図5において矢印Aで示す貯水部18の水位に至るまでは含水速度は速やかである。そして、矢印Aの水位に達した後は水は培養土Sの隙間を毛細管現象によって矢印B付近まで達する。矢印Bの高さは培養土Sの種類によって異なる。これによって植物Pの根に好適に水を供給することができる。植物Pの生育状況や種類によって貯水部18内の水位を適宜変更する。また、植物Pの生育状況や種類によって培養土Sも変更するようにする。貯水部18への水の追加は内容器2側のフランジ部5に適宜上方から注水することで、水は水抜き穴13から貯水部18に落下する。
培養土Sは周囲を透水性クッション材21によって包囲されているため、貯水部18内の水が培養土S内に浸透すると同時に、適宜透水性クッション材21に面した部分から蒸発する。また、植物Pの生育が進むと培養土S内に根が張り、一部の根が、透水性クッション材21に面した方向から透水性クッション材21内に進出して透水性クッション材21に絡むようになる。
【0016】
このように構成される植物の育成容器1では次のような効果が奏される。
(1)培養土Sは透水性クッション材21によって包囲されているため水はけがよく根腐れしにくくなる。特に貯水部18の水を下方から培養土Sに常時給水させるため、給水と排水を同時に行うこととなり水の循環がよいため植物の生育に好適となる。
(2)特にキノコを栽培する場合では培養土Sが菌床となって、透水性クッション材21内に菌根が及ぶこととなる。すると全体として水はけがよいが水分も十分供給される環境となるため生育がよくなる。透水性クッション材21内に及んだ菌根も外容器3の貯水部18上部に配置されることから貯水部18から蒸発する水分が及ぶため適度な過湿状態となる。
(3)透水性クッション材21は振動を吸収するように弾性に富んでいるため、静置した際に培養土S内部に外部の振動が伝わりにくく、発芽しにくい植物や発芽後に慎重に扱わないと細根が傷つきやすい植物の育成に好適である。
(4)上から散水せずに下方から培養土Sに給水するタイプの植物の育成容器1において、貯水部18への水の量を調整することで、培養土Sに任意の水位で下方から給水することができる。
(5)フランジ部5の溝内に注水することで貯水部18へ水を追加することができるため、作業性がよい。
(6)外容器3を透明にしているので、貯水部18の水位を外から目視でき、そのため貯水部18内の水の量を直ちに判断することができる。
(7)給水孔となる小孔8は径がごく小さいため培養土Sが小孔8から漏れ出しにくく、また小孔8はごく小さい径にもかかわらずベルヌーイの定理に従って貯水部18の水位に達するまでの速度は比較的速いものとなる。
【0017】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・
図6に示すように、育成容器1の上面に蓋25を被せるように配設して全体(内容器2と外容器3)を覆うように構成してもよい。蓋25は上方に膨らんだドーム状の形状となるように構成され、下部位置に内容器2側のフランジ部5の外壁10上端を包囲する係合部26が形成されている。蓋25は着色しても光を通すような透明あるいは半透明な素材であってよい。栽培する植物の性質や目的とする植物に応じて遮光性は決定される。例えば、もやしやキノコであれば遮光性が高いほうがよいため、光を通さない蓋25がよい。
このように育成容器1の上面を蓋25で覆ってしまうことで、育成容器1内部の湿度を高い状態で維持できることとなり、培養土Sの水はけがよく根腐れがしにくく、かつ生育環境が高湿度という条件を与えることができる。蓋25はドーム状であるため、十分な容積を内容器2の上部に保有することができ、植物が成長した場合でも衝突することがない。蓋25の高さは適宜変更することができる。
・育成容器1を構成する内容器2と外容器3の形状について上記は一例であり、他の形状で実施するようにしてもよい。例えば、内容器2のフランジ部5をもっと大きくして外容器3よりも外方に張り出させるようにしてもよい。外観も正六角柱形状ではなく、例えば円筒形形状であってもよい。
・内容器2の底板7の小孔8の形状や径の大きさやその数については適宜変更可能である。
・上記実施の形態では外容器3を透明に構成したが、透明でなくともよい。また、内容器2も透明に構成してもよい。
・透水性クッション材21の素材や厚みや脚22の長さと太さのサイズやセルの面積については上記は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
・上記では透水性クッション材21を培養土Sの全周囲に配置したが、部分的に透水性クッション材21のない部分を有していても構わない。
本発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または特許出願への変更等において権利取得する意思を有する。
【符号の説明】
【0018】
1…植物の育成容器、2…内容器、3…外容器、6…側壁部、21…透水性クッション材、22…棒状プラスチックとしての脚、S…培養土。