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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017983
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】起泡性流動ショートニング
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240201BHJP
   A21D 2/16 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
A23D9/00 502
A21D2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120996
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村尾 友紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 武
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK02
4B026DK05
4B026DK10
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX01
4B032DB05
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK09
4B032DK10
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK26
4B032DK47
4B032DP08
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】
起泡力を維持し、しっとりとした食感のケーキを得ることができる起泡剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明では、液体油及び(a)レシチン、(b)プロピレングリコール脂肪酸エステルおよび(c)エステル化率が5~40%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有した起泡性流動ショートニングを用いることで上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体油及び下記成分(a)~(c)を含有することを特徴とする起泡性流動ショートニング。
(a)レシチン
(b)プロピレングリコール脂肪酸エステル
(c)エステル化率が5~40%であるポリグリセリン脂肪酸エステル
【請求項2】
請求項1に記載の(b)および(c)の合計量が5~35重量%であることを特徴とする起泡性流動ショートニング。
【請求項3】
30℃で流動性を示す請求項1~3のいずれかに記載の起泡性流動ショートニング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡性流動ショートニングに関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジケーキやバターケーキ、シフォンケーキ等は卵を起泡させ、そこに砂糖、小麦粉、水、油脂などの材料を加えて製造される。油脂はケーキのしっとり感や風味を付与するためには欠かせない材料で、固体脂よりも、液体油の方がケーキをしっとりさせる効果が高い。しかし、起泡させた卵に溶かしバターや液体油を配合すると油脂の消泡作用により、生地中の泡が消えケーキが膨らまない問題があった。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、油脂に乳化剤を配合した起泡製剤が開発されている。起泡製剤にはいくつかの種類があり、水中油型の乳化油脂や油脂のみを使用したショートニングなどがある。起泡性の乳化油脂では大豆のタンパク質加水分解物や澱粉などを配合しケーキ生地の起泡力を向上させる方法(特許文献1、2)が提案されているが、起泡性乳化油脂は、スポンジケーキ等の油脂分が少なく生地比重も比較的軽いケーキ類に用いられるものであり、油脂分の多いしっとりとしたケーキ類には向いていない。このため油脂分の多いパウンドケーキでも生地を均一に起泡出来る起泡剤が必要とされている。
【0004】
起泡性のショートニングでは、常温で固体を含まない油脂に乳化剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステルや有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどを組み合わせて配合する方法(特許文献3)が提案されている。しかし、常温で固体を含まない油脂の配合割合が50重量%と少なく、ケーキ生地のしっとり感が不十分であることから、起泡力としっとり感を両立した起泡剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-057842号公報
【特許文献2】特開2005-102684号公報
【特許文献3】特開平04-008246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、起泡力を維持し、しっとりとした食感のケーキを得ることができる起泡剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、液体油及び下記成分(a)~(c)を含有することを特徴とする起泡性流動ショートニングを用いることで上記課題が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
(a)レシチン
(b)プロピレングリコール脂肪酸エステル
(c)エステル化率が5~40%であるポリグリセリン脂肪酸エステル
【発明の効果】
【0008】
本発明の起泡性流動ショートニングは、起泡性に優れ、長期保存した場合でも物性変化なく安定な起泡力、気泡安定性を示すものを提供することができる。さらに、本発明の起泡性流動ショートニングを用いることで、しっとりかつボリューム感があるケーキを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、範囲を表す「~」は上限と下限を含むものである。
【0010】
本発明は以下の通りである。
液体油及び下記成分(a)~(c)を含有することを特徴とする起泡性流動ショートニング。
(a)レシチン
(b)プロピレングリコール脂肪酸エステル
(c)エステル化率が5~40%であるポリグリセリン脂肪酸エステル
【0011】
本発明に係る液体油は、特に限定されるものではないが、20℃で液体であることが好ましい。例えば大豆油、ナタネ油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、綿実油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、オリーブ油、カラシ油、パームオレイン、米油、米糠油、小麦麦芽油、サフラワー油、ひまわり油およびこれらの分別油脂が例示される。更に、ジグリセライドおよび/またはモノグリセライドが含有または調合されているものであっても良い。
【0012】
液体油は、起泡性流動ショートニング全量に対し60~95重量%の割合で含有することが好ましく、65~90重量%含有することがより好ましい。
【0013】
本発明に係る(a)レシチンは、起泡性流動ショートニング全量に対し0.1~1重量%含有することが好ましく、0.25~0.7重量%がより好ましい。
【0014】
本発明に係るレシチンは油糧種子または動物原料から得られたもので、リン脂質を主成分とするものであれば特に限定されるものではないが、例えば大豆レシチンおよび卵黄レシチンなど油分を含む液状レシチン、液状レシチンから油分を除き乾燥した粉末レシチン、液状レシチンを分別精製した分別レシチン並びにレシチンを酵素で処理した酵素分解レシチンおよび酵素処理レシチンなどが例示される。
【0015】
本発明に係る(b)プロピレングリコール脂肪酸エステルは、起泡性流動ショートニング全量に対し3~20重量%含有することが好ましく、6~14重量%がより好ましい。
【0016】
本発明に係るプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸のエステル化反応によって得られる。プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては特に限定されないが、通常炭素数12~24の飽和または不飽和の脂肪酸が用いられる。前記脂肪酸は混合物であってもよく、前記脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0017】
本発明に係るプロピレングリコール脂肪酸エステルは、起泡性流動ショートニングの起泡性を発現させ、短時間でケーキの生地比重を低下させる点から、炭素数が12~22の飽和脂肪酸であることが好ましく、炭素数16~22がより好ましい。
【0018】
本発明に係る(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、起泡性流動ショートニング全量に対し0.5~20重量%含有することが好ましく、1~10重量%がより好ましい。
【0019】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン同士を脱水縮合したポリグリセリンと脂肪酸のエステル化反応によって得られる。
【0020】
ポリグリセリン脂肪酸エステルはその平均重合度が限定されるものではないが、2~10であることが好ましく、4~10であることが更に好ましい。ここで、平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、下記式(1)及び下記式(2)から算出される。
分子量=74n+18 ・・・(1)
水酸基価=56110(n+2)/分子量 ・・・(2)
【0021】
上記式(2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法、2003年度版」に準じて算出される。
【0022】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、通常炭素数8~24の飽和または不飽和の脂肪酸が用いられる。前記脂肪酸は混合物であってもよく、前記脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、及びその縮合物等が挙げられ、ポリグリセリン脂肪酸エステルを1種類用いる場合は、構成脂肪酸はラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エルカ酸から選ばれることが好ましい。また、気泡の安定性と流動性を両立させる観点から、構成脂肪酸が炭素数12~22の飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル(1)から選ばれる1種以上と、構成脂肪酸が炭素数18~22の不飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル(2)から選ばれる1種以上であることが特に好ましい。これらの中でも特に起泡性流動ショートニングの経時による性能の低下を抑制できる点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)はラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸で構成されることが最も好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)はオレイン酸で構成されることが最も好ましい。
【0023】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、従来公知のエステル化反応により製造することができる。例えば、脂肪酸とポリグリセリンとを水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒の存在下でエステル化反応させることにより製造することができる。エステル化は、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が所望の値になるまで行われる。
【0024】
ここで、エステル化率とは、水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリンに付加する脂肪酸のモル数(M)としたとき、下記式(3)で算出される値である。水酸基価とは、上記式(2)により算出される値である。
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100 ・・・(3)
【0025】
本発明に係るポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は5~40%であり、15~35%が好ましい。
【0026】
本発明に係る(b)プロピレングリコール脂肪酸エステルや(c)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、良好な起泡性と気泡の安定性を両立する目的で使用され、その合計量は5~35重量%が好ましく、8~30重量%がより好ましい。液体油に乳化剤を配合して調製される起泡性流動ショートニングの形態は、流動状からペースト状となるが、これらの総量が5~35重量%の範囲内のとき流動性が維持され、起泡力が高い。また、(b)はケーキ生地の起泡性、(c)はケーキ焼成時の気泡安定性、経時安定性、流動性を高めることから、(b)と(c)は併用することが望ましい。(b)と(c)の合計を100%としたとき、(b)は30~90%が好ましく、40~80%がより好ましい。また、(c)は10~70%が好ましく、20~60%がより好ましい。
【0027】
本発明の起泡性流動ショートニングは30℃で流動性を示す。流動性とは、容器に充填した内容物が容器を傾けることで動く性質を指す。流動性は液体又は、固体が分散したスラリー状の物質で見られる性質で、流動性があることでハンドリング性が高く、ケーキ生地への練り込みが容易になる。
【0028】
本発明の起泡性流動ショートニングを用いてなる食品としては、通常のショートニングを用いる食品であれば、特に限定はないが、具体的には、食パン、菓子パン、デニッシュ・ペストリー、パイ等のベーカリー製品、シュー、ドーナツ、パウンドケーキ、スポンジケーキ、クッキー、ワッフル、マフィン、ハードビスケット、スコーン等の菓子製品に使用することができる。また、これらの用途における本発明の起泡性流動ショートニングの使用量は、使用用途により異なるものであり、特に限定されるものではない。
【実施例0029】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0030】
本発明に係る、合成例、実施例および比較例において、平均重合度が4のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#310」を、平均重合度が6のポリグリセリンに阪本薬品工業株式会社製「ポリグリセリン#500」を使用した。
【0031】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル1(PGFE1)の合成>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとパルミチン酸55.6g、ステアリン酸67.8gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率25%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0032】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル2(PGFE2)の合成>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとラウリン酸84.3gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率23%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0033】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル3(PGFE3)の合成>
平均重合度が6のポリグリセリン100gとオレイン酸65.0gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率16%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0034】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル4(PGFE4)の合成>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとオレイン酸118.9gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率23%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0035】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル5(PGFE5)の合成>
平均重合度が4のポリグリセリン100gとパルミチン酸200.0gとステアリン酸243.9gを反応容器に入れ、水酸化ナトリウムによるアルカリ性及び窒素気流下、250℃で反応させ、エステル化率88%のポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
【0036】
【表1】
【0037】
<起泡性流動ショートニング1の調製>
キャノーラ油89.5重量%にレシチン(Lec.)0.5重量%、プロピレングリコール脂肪酸エステル(PGE)7重量%、およびポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE1)を3重量%を配合し、70℃で溶解した。この混合物200gを冷却水循環ジャケット付ビーカーにて、70℃から20℃まで毎分2℃で冷却した。冷却中はスリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用いて回転数60rpmで撹拌した。これを、20℃で1日保存することにより起泡性流動ショートニング1を得た。
【0038】
<起泡性流動ショートニング2の調製>
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、PGFE2を用いたこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング2を調製した。
【0039】
<起泡性流動ショートニング3の調製>
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、PGFE3を用いたこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング3を調製した。
【0040】
<起泡性流動ショートニング4の調製>
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、PGFE4を用いたこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング4を調製した。
【0041】
<起泡性流動ショートニング5の調製>
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、PGFE1を1重量%およびPGFE4を2重量%用いたこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング5を調製した。
【0042】
<起泡性流動ショートニング6の調製>
PGEが6重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、PGFE1を2重量%およびPGFE4を2重量%用いたこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング6を調製した。
【0043】
<起泡性流動ショートニング7の調製>
キャノーラ油79.5重量%、PGE14重量%、およびポリグリセリン脂肪酸エステルとしてPGFE4を6重量%用いたこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング7を調製した。
【0044】
<起泡性流動ショートニング8の調製>
グリセリンステアリン酸モノエステル(MG)を10重量%配合し、PGEとポリグリセリン脂肪酸エステルを配合しなかったこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング8を調製した。
【0045】
<起泡性流動ショートニング9の調製>
グリセリンステアリン酸モノエステル(MG)を3重量%配合し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを配合しなかったこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング9を調製した。
【0046】
<起泡性流動ショートニング10の調製>
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、PGFE5を用いたこと以外は、起泡性流動ショートニング1と同様にして起泡性流動ショートニング10を調製した。
【0047】
<流動性の評価>
調製した起泡性流動ショートニングを30mlのスクリュー管に15g充填し、30℃の恒温インキュベーターで保管した。
1日後と1か月後にスクリュー管を横に倒し、流動性を評価した。
[流動性の評価基準]
〇:倒すと同時に液面が流れる。
△:倒すと徐々に液面が流れる。
×:倒しても液面が動かない。
【0048】
上記により得られた起泡性流動ショートニングについて、配合の詳細と流動性を評価した結果を表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
<実施例1>
上白糖140gと、全卵140g、20℃で1日保存した起泡性流動ショートニング1を42gボウルに秤量し、卓上スタンドミキサー(商品名:KSM5:キッチンエイド社製)の低速(70rpm)で2分間混合した。その後、中速(130rpm)で比重が0.4になるまでミキシングをおこない、シュガーバッターを調製した。アタッチメントには6本組ワイヤーホイッパーを使用した。シュガーバッターの比重は容積100mlのカップを用いて以下の式(5)により算出した。
比重=(シュガーバッターをすり切り充填したカップの重量(g)-カップの空重量(g))/カップの容積(ml) ・・・(5)
次いで、水35.0gと、予め篩っておいた薄力粉140g、ベーキングパウダー1.4gを生地に加え、低速(70rpm)で30秒間撹拌しケーキ生地を調製した。オーブン(商品名:ミックベーカーWGT-11T:ワールド精機製)の上火を160℃、下火を170℃に設定し、庫内を170℃にした後、ステンレス製パウンド型(幅85mm×長さ180mm×高さ60mm)に生地を200g流しこんだ。型の中心部がへこむように充填し、オーブンで30分間焼成した。その後、室温にて2時間静置冷却しパウンドケーキを得た。
【0051】
<実施例2>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング2に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0052】
<実施例3>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング3に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0053】
<実施例4>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング4に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0054】
<実施例5>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング5に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0055】
<実施例6>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング6に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0056】
<実施例7>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング7に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0057】
<比較例1>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング8に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0058】
<比較例2>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング9に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0059】
<比較例3>
実施例1の起泡性流動ショートニング1を起泡性流動ショートニング10に変更したこと以外は実施例1と同様にしてケーキを調製した。
【0060】
<気泡安定性試験>
パウンドケーキの高さをノギスにて測定した。底面からケーキ頂点までの最大値をケーキ高さとして評価した。ケーキ高さが高いほど気泡安定性が良好であるとした。
【0061】
<経時安定性試験>
20℃で1か月間保管した起泡性流動ショートニングを用いて上記の評価と同様に試験した。
【0062】
<食感の評価>
20℃で1日保存した起泡性流動ショートニングを用いて調製したパウンドケーキの食感を以下の項目に従って官能評価した。
[評価基準]
◎:とても柔らかく、とてもしっとりしている
〇:柔らかく、しっとりしている
×:硬く、パサつく
【0063】
上記により得られたケーキの評価結果を表3に示した。
【0064】
【表3】
【0065】
本発明の起泡性流動ショートニングを用いた実施例1~7のパウンドケーキは比較例1~3に比べて、気泡安定性に優れ、ケーキを焼成した際のケーキ高さが高く、1か月間保管後の経時安定性も良好であった。また、実施例1~7のパウンドケーキは食感もしっとりしていて、起泡力と優れた食感を両立できるものとなっていた。