(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179830
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】媒体給送装置、及び媒体給送装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 3/12 20060101AFI20241219BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B65H3/12 310Z
B65H3/48 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099040
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小口 武
(72)【発明者】
【氏名】塩原 浩
(72)【発明者】
【氏名】村上 紘基
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA01
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC04
3F343GD01
3F343JB05
3F343JD28
3F343KB04
3F343LC02
3F343MB13
3F343MC07
3F343MC13
3F343MC16
(57)【要約】
【課題】吸着搬送部に吸着された媒体に吸着搬送部から垂れ下がった部分があると、搬送不良が発生する虞がある。
【解決手段】媒体給送装置40は、媒体束BMに向けて空気を吹き出すことで、媒体束BMから媒体Mを浮上させる浮上部52と、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mを吸着して搬送する吸着搬送部62と、を備え、吸着搬送部62は、Y軸方向と交差するX軸方向に並ぶ搬送部621,622を有し、搬送部621,622は、搬送部621の吸着面及び搬送部621の吸着面に媒体Mを吸着した状態で、Y軸方向に沿った回動軸68を中心に、それぞれ回動可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体束に向けて空気を吹き出すことで、前記媒体束から媒体を浮上させる浮上部と、
前記媒体束から浮上した最上位の前記媒体を吸着して搬送する吸着搬送部と、
を備え、
前記吸着搬送部は、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に並ぶ第1搬送部及び第2搬送部を有し、
前記第1搬送部及び前記第2搬送部は、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面に前記媒体を吸着した状態で、前記搬送方向に沿った回動軸を中心に、それぞれ回動可能である、
ことを特徴とする媒体給送装置。
【請求項2】
前記浮上部による空気の吹き出しが停止した状態で、前記第1搬送部及び前記第2搬送部が回動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体給送装置。
【請求項3】
前記第1搬送部及び前記第2搬送部は、水平姿勢と、第1傾斜姿勢と、に回動可能であり、
前記水平姿勢では、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面が水平であり、
前記第1傾斜姿勢では、
前記吸着搬送部の前記幅方向における一端である前記第1搬送部の吸着面の前記幅方向における一端が、前記第1搬送部の吸着面の前記幅方向における他端より下方に位置し、
前記吸着搬送部の前記幅方向における他端である前記第2搬送部の吸着面の前記幅方向における一端が、前記第2搬送部の吸着面の前記幅方向における他端より下方に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体給送装置。
【請求項4】
前記吸着搬送部の前記搬送方向における下流に、前記吸着搬送部によって搬送される前記媒体を受け入れる受入口を有する給送経路をさらに備え、
前記受入口は、前記幅方向における外側が中央より下方となる湾曲形状を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体給送装置。
【請求項5】
前記第1搬送部及び前記第2搬送部は、水平姿勢と、第2傾斜姿勢と、に回動可能であり、
前記水平姿勢では、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面が水平であり、
前記第2傾斜姿勢では、
前記吸着搬送部の前記幅方向における一端である前記第1搬送部の吸着面の前記幅方向における一端が、前記第1搬送部の吸着面の前記幅方向における他端より上方に位置し、
前記吸着搬送部の前記幅方向における他端である前記第2搬送部の吸着面の前記幅方向における一端が、前記第2搬送部の吸着面の前記幅方向における他端より上方に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体給送装置。
【請求項6】
前記吸着搬送部の前記搬送方向における下流に、前記吸着搬送部によって搬送される前記媒体を受け入れる受入口を有する給送経路をさらに備え、
前記受入口は、前記幅方向における外側が中央より上方となる湾曲形状を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体給送装置。
【請求項7】
前記吸着搬送部を制御する制御部をさらに備え、
前記第1搬送部及び前記第2搬送部は、水平姿勢と、第1傾斜姿勢と、第2傾斜姿勢と、に回動可能であり、
前記水平姿勢では、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面が水平であり、
前記第1傾斜姿勢では、
前記吸着搬送部の前記幅方向における一端である前記第1搬送部の吸着面の前記幅方向における一端が、前記第1搬送部の吸着面の前記幅方向における他端より下方に位置し、
前記吸着搬送部の前記幅方向における他端である前記第2搬送部の吸着面の前記幅方向における一端が、前記第2搬送部の吸着面の前記幅方向における他端より下方に位置し、
前記第2傾斜姿勢では、
前記吸着搬送部の前記一端である前記第1搬送部の吸着面の前記一端が、前記第1搬送部の吸着面の前記他端より上方に位置し、
前記吸着搬送部の前記他端である前記第2搬送部の吸着面の前記一端が、前記第2搬送部の吸着面の前記他端より上方に位置し、
前記媒体の前記幅方向における長さが、前記水平姿勢における、前記第1搬送部の前記一端と前記第2搬送部の前記一端との距離以下の場合、前記制御部は前記第1搬送部及び前記第2搬送部を前記第1傾斜姿勢にし、
前記媒体の前記幅方向における長さが、前記水平姿勢における、前記第1搬送部の前記一端と前記第2搬送部の前記一端との距離よりも長い場合、前記制御部は前記第1搬送部及び前記第2搬送部を前記第2傾斜姿勢にする、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体給送装置。
【請求項8】
空気を吹き出すことで、前記媒体束から浮上した複数の前記媒体を、前記吸着搬送部によって吸着される前記媒体と、前記媒体束に向けて降下する前記媒体と、に分離する分離部をさらに備え、
前記分離部は、前記幅方向に空気を吹き出す、
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体給送装置。
【請求項9】
前記分離部は、前記第1搬送部及び前記第2搬送部が前記第2傾斜姿勢にある状態で、空気の吹き出しを停止する、
ことを特徴とする請求項8に記載の媒体給送装置。
【請求項10】
空気を吹き出すことで、前記媒体束から浮上した複数の前記媒体を、前記吸着搬送部によって吸着される前記媒体と、前記媒体束に向けて降下する前記媒体と、に分離する分離部をさらに備え、
前記分離部は、
前記幅方向及び前記搬送方向に空気を吹き出し可能であり、
前記第1搬送部及び前記第2搬送部が前記第2傾斜姿勢にある場合に、前記幅方向に空気を吹き出す、
ことを特徴とする請求項7に記載の媒体給送装置。
【請求項11】
前記分離部は、前記第1搬送部及び前記第2搬送部が前記第1傾斜姿勢または前記第2傾斜姿勢にある状態で、空気の吹き出しを停止する、
ことを特徴とする請求項10に記載の媒体給送装置。
【請求項12】
前記第1搬送部は、前記搬送方向に沿った第1回動軸を中心に回動可能であり、
前記第2搬送部は、前記搬送方向に沿った第2回動軸を中心に回動可能であり、
前記第1回動軸と前記第2回動軸とを前記幅方向に沿って相対移動させる移動部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体給送装置。
【請求項13】
前記吸着搬送部の前記搬送方向における下流に、前記吸着搬送部によって搬送される前記媒体を受け入れる受入口を有する給送経路と、
前記吸着搬送部を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記媒体の先端が前記受入口よりも前記搬送方向における上流に位置するときに、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面を傾斜させ、
前記媒体の先端が前記受入口よりも前記搬送方向における下流に位置するときに、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面を水平にする、
ことを特徴とする請求項1から請求項3、請求項5、請求項8、請求項9、及び請求項12のいずれか一項に記載の媒体給送装置。
【請求項14】
前記給送経路は、前記受入口よりも前記搬送方向における下流に、前記媒体を挟んで搬送する給送ローラー対を有し、
前記制御部は、前記媒体の先端が前記給送ローラー対よりも前記搬送方向における上流に位置するときに、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面を水平にする、
ことを特徴とする請求項13に記載の媒体給送装置。
【請求項15】
前記吸着搬送部の前記搬送方向における下流に、前記吸着搬送部によって搬送される前記媒体を受け入れる受入口を有する給送経路をさらに備え、
前記制御部は、
前記媒体の先端が前記受入口よりも前記搬送方向における上流に位置するときに、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面を傾斜させ、
前記媒体の先端が前記受入口よりも前記搬送方向における下流に位置するときに、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面を水平にする、
ことを特徴とする請求項7、請求項10、及び請求項11のいずれか一項に記載の媒体給送装置。
【請求項16】
前記給送経路は、前記受入口よりも前記搬送方向における下流に、前記媒体を挟んで搬送する給送ローラー対を有し、
前記制御部は、前記媒体の先端が前記給送ローラー対よりも前記搬送方向における上流に位置するときに、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面を水平にする、
ことを特徴とする請求項15に記載の媒体給送装置。
【請求項17】
媒体束に向けて空気を吹き出すことで、前記媒体束から媒体を浮上させる浮上部と、
浮上した最上位の前記媒体を、吸着して搬送する吸着搬送部と、
を備え、
前記吸着搬送部は、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に並ぶ第1搬送部及び第2搬送部を有する媒体給送装置の制御方法であって、
前記浮上部から前記媒体束に空気を吹き出して前記媒体を浮上させることと、
前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面に、前記媒体を吸着させることと、
前記浮上部からの空気の吹き出しを停止させることと、
前記第1搬送部及び前記第2搬送部を、前記搬送方向に沿った回動軸を中心に、回動させることと、
を含む、
ことを特徴とする媒体給送装置の制御方法。
【請求項18】
前記媒体給送装置は、前記吸着搬送部よりも前記搬送方向における下流に、前記媒体を挟んで搬送する給送ローラー対をさらに備え、
前記媒体の先端が前記給送ローラー対よりも前記搬送方向における上流に位置するときに、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面を水平にすること、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の媒体給送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体給送装置、及び媒体給送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トレイに支持されたシートに向けてエアを吹き付けてシートを浮上させるエア吹き付け部と、浮上させたシートのうちの最上位のシートを吸着して搬送する吸着搬送機構とを備えるシート給送装置が開示されている。また、吸着搬送機構は、吸着したシートを、シートに画像を形成する装置本体に向けて搬送することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるシート給送装置では、吸着搬送機構に吸着されたシートのうちの吸着搬送機構に吸着されていない部分が垂れ下がることがある。この状態で、吸着搬送機構によりシートが搬送されると、シートの垂れ下がった部分が周辺の部材に接触することで、搬送不良が発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
媒体給送装置は、媒体束に向けて空気を吹き出すことで、前記媒体束から媒体を浮上させる浮上部と、前記媒体束から浮上した最上位の前記媒体を吸着して搬送する吸着搬送部と、を備え、前記吸着搬送部は、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に並ぶ第1搬送部及び第2搬送部を有し、前記第1搬送部及び前記第2搬送部は、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面に前記媒体を吸着した状態で、前記搬送方向に沿った回動軸を中心に、それぞれ回動可能である。
【0006】
媒体給送装置の制御方法は、媒体束に向けて空気を吹き出すことで、前記媒体束から媒体を浮上させる浮上部と、浮上した最上位の前記媒体を、吸着して搬送する吸着搬送部と、を備え、前記吸着搬送部は、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に並ぶ第1搬送部及び第2搬送部を有する媒体給送装置の制御方法であって、前記浮上部から前記媒体束に空気を吹き出して前記媒体を浮上させることと、前記第1搬送部の吸着面及び前記第2搬送部の吸着面に、前記媒体を吸着させることと、前記浮上部からの空気の吹き出しを停止させることと、前記第1搬送部及び前記第2搬送部を、前記搬送方向に沿った回動軸を中心に、回動させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】媒体給送装置を備える印刷システムの一実施形態を示す模式側面図。
【
図2】印刷システムの電気的構成を示すブロック図。
【
図5】媒体給送装置の吸着搬送部が媒体を吸着した状態を示す模式図。
【
図6】媒体給送装置の吸着搬送部が媒体を吸着した状態を示す模式図。
【
図7】媒体給送装置の吸着搬送部が媒体を吸着した状態を示す模式図。
【
図8】媒体給送装置の吸着搬送部が媒体を吸着した状態を示す模式図。
【
図9】媒体給送装置の吸着搬送部が媒体を吸着した状態を示す模式図。
【
図11】準備動作を行う媒体給送装置を示す模式側面図。
【
図12】浮上部の駆動を停止した媒体給送装置を示す模式側面図。
【
図13】吸着搬送部の回動を行った媒体給送装置を示す模式側面図。
【
図14】分離部の駆動を停止した媒体給送装置を示す模式側面図。
【
図15】吸着搬送部による媒体の搬送を行う媒体給送装置を示す模式側面図。
【
図16】吸着搬送部による媒体の搬送を行う媒体給送装置を示す模式側面図。
【
図17】媒体給送装置の給送経路を示す模式側面図。
【
図18】分離部からの空気の吹き出しを行う媒体給送装置を示す模式側面図。
【
図19】媒体給送装置の給送経路の他の実施形態を示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に基づいて本開示を説明する。各図において同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。尚、本明細書において、「同じ」、「同一」、「同時」とは、完全に同じであることのみを指さない。例えば、本明細書において、「同じ」、「同一」、「同時」とは、測定誤差を考慮して同じである場合を含むものとする。
【0009】
また、例えば、本明細書において、「同じ」、「同一」、「同時」とは、部材の製造ばらつきを考慮して同じである場合を含むものとする。また、例えば、本明細書において、「同じ」、「同一」、「同時」とは、機能を損なわない範囲で同じである場合を含むものとする。よって、例えば、「両者の寸法が同じである」とは、測定誤差、部材の製造ばらつきを考慮し、両者の寸法差が、一方の寸法の±5パーセント以内、特に好ましくは±3パーセント以内であることを指す。
【0010】
1.実施形態1
本実施形態において、印刷システム1は、印刷用紙などの枚葉の用紙の一例である媒体Mに液体の一例であるインクを吐出することで印刷を行うインクジェット式プリンターを備える印刷システムである。
【0011】
尚、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向とする。向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用し、各図の矢印が向かう向きを+方向、矢印の反対方向を-方向として説明する。
【0012】
また、Z軸方向は、重力方向を示し、+Z方向は鉛直上向き、-Z方向は鉛直下向きを示す。また、X軸,Y軸を含む平面はX-Y面、X軸,Z軸を含む平面はX-Z面、Y軸,Z軸を含む平面はY-Z面として説明される。また、X-Y面は水平面となる。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つのX、Y、Zの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸として説明する。
【0013】
また、X軸方向は装置奥行方向であり、媒体Mの幅方向である。X軸方向のうち+X方向は装置前面から装置背面に向かう方向であり、-X方向は装置背面から装置前面に向かう方向である。
【0014】
また、Y軸方向は、印刷システム1、印刷装置10、媒体給送装置40の幅方向である。また、Y軸方向は、媒体給送装置40における媒体Mの搬送方向である。印刷システム1を正面から見て+Y方向が左側、-Y方向が右側となる。印刷システム1の正面とは、ユーザーが印刷システム1に対して指示を与えるために操作される操作部19が位置する側の面である。
【0015】
Z軸方向は、印刷システム1、印刷装置10、媒体給送装置40が設置される設置面Gに対する法線方向である。よって、Z軸方向は、印刷システム1、印刷装置10、媒体給送装置40の高さ方向となる。
【0016】
また、以下では、各図に矢印で示す媒体Mの搬送方向において、媒体Mが送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。また、
図1には、印刷装置10における媒体Mの印刷経路T1を実線で示す。また、
図1には、印刷装置10における媒体Mの循環経路T2を二点鎖線で、印刷装置10における反転経路T3を破線で示す。
【0017】
図1に示すように、印刷システム1は、印刷装置10と、媒体給送装置40と、を備える。媒体給送装置40は、印刷装置10に対して+Y方向側となる隣り合う位置に設けられる。尚、印刷装置10と媒体給送装置40とは別体に配置されているが、印刷システム1は、印刷装置10と媒体給送装置40を一体に備えてもよい。
【0018】
図1に示すように、印刷装置10は、搬送部14と、印刷部15と、排出部18と、操作部19と、積載部31と、制御部91とを備える。搬送部14は、複数の搬送ローラー対13と、対向搬送部17と、案内フラップ16とを含む。また、印刷装置10は、媒体Mが搬送される印刷経路T1、循環経路T2、及び反転経路T3を備える。また、
図2に示すように、印刷装置10は、記憶部91bと、インターフェイス部91cとを備える。
【0019】
搬送ローラー対13は、印刷装置10内の印刷経路T1、循環経路T2、及び反転経路T3のそれぞれに複数対配置され、媒体Mを挟んで搬送する。
【0020】
対向搬送部17は、印刷部15に対向するように配置される。対向搬送部17は、媒体Mを吸着しながら搬送ベルトによって媒体Mを搬送する。対向搬送部17は、搬送ベルトが掛け渡された駆動プーリーと従動プーリーとを備える。媒体Mは、搬送ベルトの外周面である支持面に静電吸着された状態で搬送ベルトの回転に伴って搬送される。尚、対向搬送部17は、吸引ファンによる吸引力で搬送ベルトの支持面に媒体Mを吸着して搬送するサクション搬送機構であってもよい。
【0021】
印刷部15は、インクタンク(不図示)から供給されるインクを媒体Mに吐出することで画像の印刷を行う。印刷部15は、インクジェットヘッドを備える。インクジェッドヘッドは、水を主溶媒とする水系インク、有機溶剤を主溶媒とする油性インクを吐出可能である。印刷部15は、対向搬送部17の搬送ベルトの+Z方向側に位置し、Z軸方向において、印刷経路T1を挟んで搬送ベルトと対向する位置に設けられる。
【0022】
印刷部15は、搬送ベルトに支持されて搬送される媒体Mに、印刷データに基づいてインクをインクジェットヘッドから吐出することにより、媒体Mにインクを付着させる。これにより、媒体Mに、印刷データに基づく画像の形成が行われる。
【0023】
本実施形態の印刷部15は、X軸方向である媒体Mの幅方向に亘ってインクを同時に吐出可能な所謂ラインヘッドである。また、印刷データとは、媒体Mに印刷する画像データに基づき生成されたデータであって、印刷部15にインクの吐出により印刷を実行させるためのデータである。画像データには、テキストデータやイメージデータが含まれる。尚、印刷部15は、X軸方向に移動しながら媒体Mにインクを吐出する所謂シリアルヘッドであってもよい。
【0024】
案内フラップ16は、媒体Mが搬送される搬送経路が印刷経路T1と循環経路T2とに分岐する位置と、搬送経路が循環経路T2と反転経路T3とに分岐する位置に設けられる。搬送経路が印刷経路T1と循環経路T2とに分岐する位置では、案内フラップ16は、媒体Mの搬送経路を、積載部31に向かう印刷経路T1と、排出部18あるいは反転経路T3へ続く循環経路T2とに切り替える。搬送経路が循環経路T2と反転経路T3とに分岐する位置では、案内フラップ16は、搬送経路を、排出部18に向かう搬送経路と、反転経路T3へ続く搬送経路とに切り替える。尚、媒体Mは、反転経路T3において表裏が逆転し、再び印刷部15へ搬送される。
【0025】
排出部18は、印刷装置10の筐体から+Y方向に延びるトレイである。排出部18には、積載部31に排出されない媒体Mが積載される。
【0026】
積載部31は、印刷装置10の筐体から-Y方向に延びるトレイである。積載部31には、印刷部15により画像が印刷された媒体Mが積載される。
【0027】
操作部19は、印刷装置10のうち筐体の正面側となる-X方向側の側面上方に設けられる。操作部19は、タッチパネルよりなる表示部を有する。ユーザーは、表示部をタッチ操作することで、印刷システム1に指示を与えることが可能である。尚、操作部19は、操作ボタンを有する構成でもよい。
【0028】
図2に示すように、制御部91は、印刷装置10全体の動作を制御する演算処理装置として機能するCPU91a(Central Processing Unit)を有し、搬送部14、印刷部15等の各部の動作を制御する。制御部91は、後述する媒体給送装置40の制御部92と連係して、媒体給送装置40の載置部41、送風部51、搬送部61、給送部83を制御可能である。
【0029】
記憶部91bは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。ROMは、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリーである。RAMは、CPU91aが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリーである。
【0030】
インターフェイス部91cは、媒体給送装置40との間で各種情報の授受を行う。例えば、インターフェイス部91cは、印刷ジョブから取得される情報のうち、画像が印刷される媒体Mの情報である媒体情報等を、媒体給送装置40に送る。媒体Mの媒体情報は、例えば、媒体Mの紙種、サイズ、坪量、摩擦係数を含む紙質や、印刷ジョブに使用される媒体Mの数量等を含む。尚、媒体Mの坪量、摩擦係数を含む紙質は、媒体Mの紙種に含んでもよい。
【0031】
次に、本実施形態の媒体給送装置40について説明する。
図1、
図3、
図4に示すように、媒体給送装置40は、載置部41と、送風部51と、搬送部61と、給送経路81と、制御部92と、を備える。
【0032】
載置部41は、基台42と、媒体Mを載置可能な載置台43と、載置台43をZ軸方向に昇降可能な昇降部44と、を有する。昇降部44は、基台42に設けられる。
【0033】
昇降部44は、載置台43を昇降させることで、載置台43に載置される媒体MのZ軸方向の位置を、後述する送風部51が有する浮上部52から吹き出される空気を受ける高さに調整する。例えば、載置台43上に複数の媒体Mが積層されて媒体束BMを形成しているとする。この場合、本実施形態では、媒体束BMを構成する最上位の媒体MのZ軸方向の位置を、浮上部52が有する吹出口55の上下端の間となる位置に調整する。
【0034】
送風部51は、媒体Mに向けて空気を吹き出し可能に、基台42の+Z方向側に設けられる。本実施形態の送風部51は、載置台43上の媒体Mの四方を囲むように設けられる。このため、送風部51は、載置台43上の媒体Mの四方を囲む内側壁を有する。送風部51は、浮上部52と、分離部56と、を有する。
【0035】
浮上部52は、載置台43に載置される媒体Mに向けて空気を吹き出すことで、媒体Mを+Z方向に浮上させる。浮上部52は、空気管路53と、ファン54と、吹出口55と、を有する。ファン54は、空気管路53に取り付けられ、空気を空気管路53に送り込む。空気管路53に送り込まれる空気は、吹出口55から吹き出される。浮上部52は、浮上部521,522,523,524を含む。浮上部521,522,523,524の吹出口55は、Z軸方向において同じ位置に設けられる。
【0036】
図3に示すように、浮上部521は、載置台43の-Y方向側に隣り合う位置に設けられる。浮上部521の吹出口55は+Y方向に向かって開口する。よって、浮上部521は、+Y方向に空気を吹き出す。浮上部522は、載置台43の+Y方向側に隣り合う位置に設けられる。浮上部522の吹出口55は-Y方向に向かって開口する。よって、浮上部522は、-Y方向に空気を吹き出す。
【0037】
図4に示すように、浮上部523は、載置台43の-X方向側に隣り合う位置に設けられる。浮上部523の吹出口55は+X方向に向かって開口する。よって、浮上部523は、+X方向に空気を吹き出す。浮上部524は、載置台43の+X方向側に隣り合う位置に設けられる。浮上部524の吹出口55は-X方向に向かって開口する。よって、浮上部524は、-X方向に空気を吹き出す。
【0038】
分離部56は、空気を吹き出すことで、媒体束BMから浮上した複数の媒体Mを、後述する吸着搬送部62によって吸着される媒体Mと、媒体束BMに向けて降下する媒体Mと、に分離する。吸着搬送部62によって吸着される媒体Mは、媒体束BMから浮上した複数の媒体Mのうちの、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mである。
【0039】
図3、
図4に示すように、分離部56は、空気管路57と、ファン58と、吹出口59と、を有する。ファン58は、空気管路57に取り付けられ、空気を空気管路57に送り込む。空気管路57に送り込まれる空気は、吹出口59から吹き出される。分離部56は、分離部561,562,563,564を含む。分離部561,562,563,564の吹出口59は、Z軸方向において同じ位置に設けられる。
【0040】
また、分離部561,562,563,564の吹出口59は、浮上部521,522,523,524の吹出口55の+Z方向側に隣り合う位置に設けられる。また、分離部561,562,563,564の吹出口59は、送風部51の内側壁における+Z方向側の端に設けられる。
【0041】
図3に示すように、分離部561は、載置台43の-Y方向側に隣り合う位置に設けられる。分離部561の吹出口59は+Y方向に向かって開口する。よって、分離部561は、+Y方向に空気を吹き出す。分離部562は、載置台43の+Y方向側に隣り合う位置に設けられる。分離部562の吹出口59は-Y方向に向かって開口する。よって、分離部562は、-Y方向に空気を吹き出す。換言すると、分離部561,562は、Y軸方向に空気を吹き出す。
【0042】
図4に示すように、分離部563は、載置台43の-X方向側に隣り合う位置に設けられる。分離部563の吹出口59は+X方向に向かって開口する。よって、分離部563は、+X方向に空気を吹き出す。分離部564は、載置台43の+X方向側に隣り合う位置に設けられる。分離部564の吹出口59は-X方向に向かって開口する。よって、分離部564は、-X方向に空気を吹き出す。換言すると、分離部563,564は、X軸方向に空気を吹き出す。
【0043】
図3、
図4に示すように、搬送部61は、媒体Mを給送経路81に向かう-Y方向に搬送する。搬送部61は、吸着搬送部62と、保持部66と、移動部67と、を備える。搬送部61は、載置部41、及び送風部51の+Z方向側に設けられる。
【0044】
吸着搬送部62は、媒体Mを吸着して搬送する。吸着搬送部62は、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mを吸着して搬送可能に、載置台43の鉛直上方となる+Z方向側に設けられる。吸着搬送部62は、X軸方向に並ぶ搬送部621,622を有する。搬送部621は、搬送部622の-X方向側に位置する。搬送部621は第1搬送部の一例であり、搬送部622は第2搬送部の一例である。
【0045】
搬送部621,622は、載置台43に対向するように配置される。搬送部621,622は、搬送ベルト63、プーリー64、及び吸引ファン65を有する。搬送ベルト63は、Y軸方向に間隔を置いて設けられる一対のプーリー64に掛け渡される。搬送部621,622は、吸引ファン65による吸引力で搬送ベルト63の吸着面に媒体Mを吸着して搬送する所謂サクション搬送機構である。
【0046】
搬送部621,622は、搬送ベルト63の外周面である吸着面に媒体Mを吸着した状態で、プーリー64の回転駆動に伴い搬送ベルト63が回転することで、媒体Mを-Y方向に搬送する。尚、搬送部621,622は、搬送ベルト63の吸着面に媒体Mを静電吸着して搬送してもよい。
【0047】
保持部66は、移動部67に支持される回動軸68に設けられる。保持部66は、Y軸方向に延びる回動軸68の中心軸を中心にして回動可能に設けられる。回動軸68は、X軸方向に間隔を置いて並ぶ回動軸681,682を含む。回動軸681は、回動軸682の-X方向側に位置する。回動軸681は第1回動軸の一例であり、回動軸682は第2回動軸の一例である。保持部66は、回動軸681に設けられる保持部661と、回動軸682に設けられる保持部662と、を含む。
【0048】
保持部661は、搬送部621を保持する。保持部662は、搬送部622を保持する。よって、搬送部621,622は、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面に媒体Mを吸着した状態で、Y軸方向に沿った回動軸68を中心に、それぞれ回動可能である。
【0049】
移動部67は、
図4に示すように、X軸方向に間隔を置いて回動軸681,682を支持するガイド溝69を備える。移動部67は、回動軸681,682間のX軸方向における距離Lsを変更可能にX軸方向に延びるガイド溝69によって、回動軸681,682を支持する。換言すると、移動部67は、回動軸681と回動軸682とをX軸方向に沿って相対移動させることが可能である。本実施形態では、回動軸681,682間の距離Lsが変更される場合も、X軸方向における、ガイド溝69の中央から回動軸681までの距離と、ガイド溝69の中央から回動軸682までの距離と、は同じに維持される。
【0050】
回動軸681と回動軸682とをX軸方向に沿って相対移動させる機構としては、ラックピニオン機構が採用できる。例えば、ラックピニオン機構は、不図示の第1ラック、第2ラック、及び第1ラック及び第2ラックと噛み合うピニオン歯車により構成される。ピニオン歯車は、移動部67のX軸方向における中央に設けられる回転軸(不図示)に、回転可能に設けられる。また、ピニオン歯車を回転軸中心に回転させる駆動モーター(不図示)が、移動部67に設けられる。
【0051】
第1ラックは、移動部67のX軸方向における中央から-X方向に延び、移動部67にX軸方向にスライド可能に設けられる。また、第1ラックは、回動軸681を回転可能に保持する。第2ラックは、移動部67のX軸方向における中央から+X方向に延び、移動部67にX軸方向にスライド可能に設けられる。また、第2ラックは、回動軸682を回転可能に保持する。
【0052】
そして、駆動モーターの駆動により、ピニオン歯車を正転あるいは逆転させることで、第1ラックと第2ラックとがX軸方向に沿って相対移動する。これにより、回動軸681と回動軸682とがX軸方向に沿って相対移動する。
【0053】
本実施形態における回動軸681,682間のX軸方向における基準距離は、距離Ls1である。このため、例えば、移動部67が距離Lsを変更する構成を備えない場合、回動軸681,682間のX軸方向における距離は、距離Ls1に設定される。
【0054】
また、移動部67は、保持部661を回動軸681の中心軸中心に回動させることで、搬送部621の姿勢を変更可能である。また、移動部67は、保持部662を回動軸682の中心軸中心に回動させることで、搬送部622の姿勢を変更可能である。
【0055】
保持部66を回動軸68中心に回動させる機構としては、ウォームギヤ機構が採用できる。例えば、ウォームギヤ機構のはす歯歯車(不図示)が保持部66に取り付けられる。そして、はす歯歯車(不図示)に噛み合うねじ歯車(不図示)を備える駆動モーター(不図示)が移動部67に取り付けられる。そして、駆動モーターが駆動されることで、保持部66が回動軸68中心に回動する。搬送部621,622は、例えば、水平姿勢Phと、第1傾斜姿勢P1と、第2傾斜姿勢P2と、に回動可能である。
【0056】
図5、
図7に示すように、水平姿勢Phでは、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面が水平である。すなわち、水平姿勢Phでは、搬送部621の吸着面の-X方向側の端E1、及び+X方向側の端E2と、搬送部622の吸着面の-X方向側の端E3、及び+X方向側の端E4と、のZ軸方向における位置が同じである。
【0057】
端E1は、吸着搬送部62のX軸方向における一端の一例であり、搬送部621の吸着面のX軸方向における一端の一例である。また、端E2は、搬送部621の吸着面のX軸方向における他端の一例である。また、端E4は、吸着搬送部62のX軸方向における他端の一例であり、搬送部622の吸着面のX軸方向における一端の一例である。また、端E3は、搬送部622の吸着面のX軸方向における他端の一例である。
【0058】
図6、
図9に示すように、第1傾斜姿勢P1では、搬送部621の吸着面の端E1が端E2より-Z方向側に位置し、搬送部622の吸着面の端E4が端E3より-Z方向側に位置する。また、搬送部621の吸着面の端E1、及び搬送部622の端E4のZ軸方向における位置が同じである。また、搬送部621の吸着面の端E2、及び搬送部622の端E3のZ軸方向における位置が同じである。
【0059】
図8に示すように、第2傾斜姿勢P2では、搬送部621の吸着面の端E1が端E2より+Z方向側に位置し、搬送部622の吸着面の端E4が端E3より+Z方向側に位置する。また、搬送部621の吸着面の端E1、及び搬送部622の端E4のZ軸方向における位置が同じである。また、搬送部621の吸着面の端E2、及び搬送部622の端E3のZ軸方向における位置が同じである。
【0060】
尚、回動軸681,682間の距離Lsが変更されると、端E1,E2,E3,E4のX軸方向における位置は変化する。また、回動軸681,682間の距離Lsが変更されると、端E1,E4間のX軸方向における距離Lfも変化する。
【0061】
このため、本実施形態では、端E1,E4間のX軸方向における基準距離は、
図5に示す水平姿勢Phにおける端E1,E4間のX軸方向における距離Lf1に設定される。距離Lf1は、回動軸681,682間の距離Lsが距離Ls1のときの、水平姿勢Phにおける端E1,E4間のX軸方向における距離である。
【0062】
給送経路81は、吸着搬送部62により搬送方向における下流に搬送される媒体Mを、媒体給送装置40の外部に送出する搬送経路である。
図3に示すように、給送経路81は、吸着搬送部62の-Y方向側に設けられる。本実施形態では、給送経路81は、印刷装置10の印刷経路T1と接続される。
【0063】
給送経路81は、吸着搬送部62の搬送方向における下流に、吸着搬送部62によって搬送される媒体Mを受け入れる受入口82を有する。受入口82は、吸着搬送部62の-Y方向側に位置し、+Y方向に向かって開口する。
図17に示すように、受入口82は、X軸方向における外側が中央より-Z方向側となる湾曲形状を有する。尚、
図5から
図9、及び
図18では、給送経路81を、二点鎖線で示す受入口82の外縁形状で簡略化して示している。
【0064】
本実施形態では、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢に第1傾斜姿勢P1を含む。このため、本実施形態の受入口82は、受入口82の開口形状を画定する外縁のうちの+Z方向側に位置する上縁が、X軸方向における外側が中央より-Z方向側に位置する湾曲形状を有する。尚、受入口82は、上縁に加えて、受入口82の開口形状を画定する外縁のうちの-Z方向側に位置する下縁が、X軸方向における外側が中央より-Z方向側に位置する湾曲形状を有してもよい。
【0065】
尚、本実施形態では、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢に第2傾斜姿勢P2を含む。この点を考慮して、
図19に示すように、給送経路81は、X軸方向における外側が中央より上方となる湾曲形状を有する受入口82を有してもよい。この場合、受入口82は、受入口82の開口形状を画定する外縁のうちの-Z方向側に位置する下縁が、X軸方向における外側が中央より+Z方向側に位置する湾曲形状を有する。尚、受入口82は、下縁に加えて、受入口82の開口形状を画定する外縁のうちの+Z方向側に位置する上縁が、X軸方向における外側が中央より+Z方向側に位置する湾曲形状を有してもよい。
【0066】
給送経路81は、受入口82よりも搬送方向における下流に、媒体Mを搬送する給送部83を有する。本実施形態の給送部83は、一対のローラーが媒体Mを挟んだ状態で回転することにより、媒体Mを搬送する給送ローラー対である。
図3に示すように、給送部83は、受入口82の-Y方向側に設けられる。本実施形態では、給送部83によって搬送される媒体Mは、印刷装置10の印刷経路T1に送出される。
【0067】
図2に示すように、制御部92は、媒体給送装置40全体の動作を制御する演算処理装置として機能するCPU92a(Central Processing Unit)を有する。制御部92は、印刷装置10の制御部91と連係して、載置部41、送風部51、搬送部61、給送部83の各部の動作を制御可能である。
【0068】
記憶部92bは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する。ROMは、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリーである。RAMは、CPU92aが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリーである。
【0069】
インターフェイス部92cは、印刷装置10との間で各種情報の授受を行う。例えば、インターフェイス部92cは、印刷ジョブから取得される情報のうち、画像が印刷される媒体Mの情報である媒体情報等を、印刷装置10から受ける。制御部92は、印刷装置10から取得した媒体Mの紙種、サイズ、印刷ジョブで使用される媒体Mの数量等の媒体情報に基づいて、載置部41、送風部51、搬送部61、給送部83の各部の動作を制御する。
【0070】
例えば、制御部92は、搬送部61の移動部67を制御することで、搬送部621,622の姿勢を変更する。制御部92は、媒体MのX軸方向における長さLmと、水平姿勢Phにおける端E1,E4間の距離Lf1と、を比較することで、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢を決定する。媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢は、例えば、後述する給送処理における準備動作において決定される。
【0071】
例えば、
図5に示すように、媒体MのX軸方向における長さLm1が、水平姿勢Phにおける端E1,E4間の距離Lf1と同じか短いとする。この場合、制御部92は、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢を
図6に示す第1傾斜姿勢P1に決定する。そして、後述する給送処理における吸着搬送部62の回動において、制御部92は、搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Phから第1傾斜姿勢P1にする。
【0072】
また、例えば、
図7に示すように、媒体MのX軸方向における長さLm2が、水平姿勢Phにおける端E1,E4間の距離Lf1より長いとする。この場合、制御部92は、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢を第2傾斜姿勢P2に決定する。そして、給送処理における吸着搬送部62の回動において、制御部92は、搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Phから第2傾斜姿勢P2にする。
【0073】
尚、例えば、取得した媒体Mの紙種、サイズ等の媒体情報から、媒体Mにおいて搬送部621,622の吸着面に吸着されない部分が垂れ下がらないと判断できるとする。この場合、制御部92は、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Phに決定する。
【0074】
また、移動部67が回動軸681,682間の距離Lsを変更する機能を有する場合、搬送部621,622の姿勢を傾斜させる姿勢変更処理において、制御部92は、回動軸681,682間の距離Lsを変更してもよい。
【0075】
例えば、
図7に示すように、媒体MのX軸方向における長さLm2が、水平姿勢Phにおける端E1,E4間の距離Lf1より長いとする。この場合、制御部92は、搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Phから
図8に示す第2傾斜姿勢P2にしつつ、回動軸681,682間の距離Lsを、距離Ls1から距離Ls1より短い距離Ls2に変更してもよい。これによれば、媒体Mを吸着した搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Phから第2傾斜姿勢P2にするときに、媒体Mが突っ張る状態になることを抑制できる。このため、媒体Mの損傷や搬送部621,622の吸着面からの媒体Mの剥がれなどが起きにくい。
【0076】
あるいは、この場合、制御部92は、水平姿勢Phにおける端E1,E4間の距離Lfが媒体MのX軸方向における長さLm2と同じか長くなるように、距離Lsを距離Ls1から距離Ls1より長い距離Ls3に変更してもよい。そして、制御部92は、搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Phから
図9に示す第1傾斜姿勢P1にしてもよい。これによれば、媒体MのX軸方向における両端が搬送部621,622の吸着面から下方に垂れることに起因して、媒体Mの搬送不良が発生することを抑制できる。
【0077】
尚、第1傾斜姿勢P1、及び第2傾斜姿勢P2における搬送部621,622の傾斜の程度、及び距離Lfは、制御部92が移動部67の制御することで、取得される媒体Mの紙種、サイズ等に対応して、適宜調整される。
【0078】
また、例えば、制御部92は、送風部51における浮上部52のファン54を制御する。そして、制御部92は、載置台43に載置される媒体Mに向けて浮上部52の吹出口55から空気を吹き出すことで、媒体束BMから媒体Mを+Z方向に浮上させる。また、例えば、制御部92は、送風部51における分離部56のファン58を制御する。そして、制御部92は、分離部56の吹出口59から空気を吹き出すことで、媒体束BMから浮上した複数の媒体Mを、吸着搬送部62によって吸着される媒体Mと、媒体束BMに向けて降下する媒体Mと、に分離する。
【0079】
尚、浮上部52の吹出口55、及び分離部56の吹出口59から吹き出される空気の方向は、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢によって、変更される。例えば、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢が第1傾斜姿勢P1に決定されているとする。この場合、
図11に示すように、制御部92は、浮上部521,522の吹出口55、分離部561,562の吹出口59から空気を吹き出す。
【0080】
また、例えば、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢が第2傾斜姿勢P2に決定されているとする。この場合、制御部92は、浮上部523,524の吹出口55、分離部563,564の吹出口59から空気を吹き出す。そして、制御部92は、搬送部621,622の姿勢を第2傾斜姿勢P2にし、浮上部523,524の吹出口55からの空気の吹き出しを停止する。
【0081】
そして、浮上部523,524の吹出口55からの空気の吹き出しを停止した後も、
図18に示すように、制御部92は、分離部563,564の吹出口59からの空気の吹き出しを継続する。そして、制御部92は、搬送部621,622が第2傾斜姿勢P2にある状態において、分離部563,564の吹出口59からの空気の吹き出しを停止する。
【0082】
次に、
図10に示すフローチャートを参照し、印刷装置10に媒体Mを供給する給送処理において制御部92が実行する処理について説明する。本実施形態において、制御部92が給送処理を行うときに実行する処理の流れは、媒体給送装置40の制御方法に該当する。給送処理は、例えば、印刷装置10の制御部91から印刷ジョブに使用される媒体Mの給送指示を受けたとき等に実行される。
【0083】
ステップS110において、制御部92は、準備動作を実行する。準備動作において、制御部92は、載置部41の昇降部44を制御することで、載置台43を昇降させる。そして、
図3に示すように、制御部92は、載置台43に載置される媒体MのZ軸方向の位置を、送風部51が有する浮上部52から吹き出される空気を受ける高さに調整する。
【0084】
そして、制御部92は、搬送部61における吸着搬送部62の吸引ファン65を駆動する。また、
図11に示すように、制御部92は、送風部51の浮上部52、及び分離部56を制御することで、吹出口55、吹出口59から空気を吹き出す。
【0085】
尚、準備動作において、制御部92は、印刷装置10から取得した媒体Mの紙種、サイズ等の媒体情報に基づいて、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢を決定する。すなわち、制御部92は、準備動作において、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Ph、第1傾斜姿勢P1、及び第2傾斜姿勢P2のうちの何れかに決定する。ここでは、制御部92は、媒体Mを吸着搬送するときの搬送部621,622の姿勢を第1傾斜姿勢P1に決定しているとする。
【0086】
この場合、
図11に示すように、制御部92は、浮上部521,522の吹出口55、分離部561,562の吹出口59から空気を吹き出す。これにより、載置台43上の媒体束BMのうち上方に位置する複数の媒体Mが+Z方向に浮上する。そして、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mが搬送部621,622の吸着面に吸着される。ステップS110の処理を終えると、制御部92は、処理をステップS120に移行する。
【0087】
ステップS120において、制御部92は、浮上部52の駆動を停止する。
図12に示すように、制御部92は、浮上部521,522の吹出口55からの空気の吹き出しを停止する。尚、分離部561,562の吹出口59からの空気の吹き出しは、継続される。
【0088】
これにより、媒体束BMから浮上した複数の媒体Mは、吸着搬送部62によって吸着される媒体Mと、媒体束BMに向けて降下する媒体Mと、に分離される。尚、吸着搬送部62によって吸着される媒体Mは、媒体束BMから浮上した複数の媒体Mのうちの、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mである。ステップS120の処理を終えると、制御部92は、処理をステップS130に移行する。
【0089】
ステップS130において、制御部92は、吸着搬送部62の回動を行う。制御部92は、移動部67を制御することで保持部66を回動する。これにより、制御部92は、搬送部621,622を水平姿勢PhからステップS110において決定した傾斜姿勢である第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2に回動する。
図13では、搬送部621,622は第1傾斜姿勢P1に回動している。
【0090】
尚、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2に回動するとき、浮上部52の吹出口55からの空気の吹き出しは停止されている。一方、分離部56の吹出口59からの空気の吹き出しは継続されている。換言すると、浮上部52による空気の吹き出しが停止した状態で、搬送部621,622が回動する。また、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2にある状態において、分離部56は、吹出口59から空気を吹き出す。ステップS130の処理を終えると、制御部92は、処理をステップS140に移行する。
【0091】
ステップS140において、制御部92は、分離部56の駆動を停止する。制御部92は、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2にある状態において、分離部56のファン58の駆動を停止する。換言すると、分離部56は、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2にある状態で、吹出口59からの空気の吹き出しを停止する。
図14では、搬送部621,622は第1傾斜姿勢P1に傾斜している。ステップS140の処理を終えると、制御部92は、処理をステップS150に移行する。
【0092】
ステップS150において、制御部92は、媒体Mの搬送を行う。制御部92は、搬送部621,622のプーリー64を駆動することで、搬送ベルト63を回転させる。これにより、制御部92は、-Y方向となる給送経路81に向けて、媒体Mを搬送する。尚、
図15に示すように、媒体Mの-Y方向の端である媒体Mの先端が給送経路81の受入口82より+Y方向側にあるとき、搬送部621,622は、第1傾斜姿勢P1及び第2傾斜姿勢P2のうちのいずれかの傾斜姿勢を維持している。
【0093】
そして、媒体Mが-Y方向に搬送されて、
図16に示すように、媒体Mの先端が給送経路81の受入口82に進入すると、制御部92は、搬送部621,622の姿勢を水平姿勢Phにする。換言すると、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82よりも+Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を傾斜させる。そして、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82よりも-Y方向側であって、かつ給送ローラー対よりも+Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を水平にする。
【0094】
また、制御部92は、給送ローラー対を駆動制御することで、給送経路81に搬送される媒体Mを、給送経路81と接続される印刷装置10の印刷経路T1に給送する。ステップS150の処理を終えると、制御部92は、処理をステップS160に移行する。
【0095】
ステップS160において、制御部92は、媒体Mの搬送動作を停止する。印刷ジョブに使用される媒体Mの搬送が終了すると、制御部92は、搬送部61、及び給送部83の駆動を停止する。ステップS160の処理を終えると、制御部92は給送処理を終了する。
【0096】
以上述べたように、実施形態1に係る媒体給送装置40、及び媒体給送装置40の制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0097】
媒体給送装置40は、媒体束BMに向けて空気を吹き出すことで、媒体束BMから媒体Mを浮上させる浮上部52と、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mを吸着して搬送する吸着搬送部62と、を備える。吸着搬送部62は、Y軸方向と交差するX軸方向に並ぶ搬送部621,622を有する。搬送部621,622は、搬送部621の吸着面及び搬送部621の吸着面に媒体Mを吸着した状態で、Y軸方向に沿った回動軸681,682を中心に、それぞれ回動可能である。
【0098】
これによれば、搬送部621,622がY軸方向に沿う軸を中心に回動可能であるため、X軸方向に沿って媒体Mを湾曲させることができる。これにより、媒体MにY軸方向に沿う方向から見て波形の形状を付与することで、媒体Mの-Y方向側の端である媒体Mの先端の垂れが抑制できる。
【0099】
浮上部52による空気の吹き出しが停止した状態で、搬送部621,622が回動する。これによれば、媒体MにY軸方向に沿う方向から見て波形の形状を付与しているため、浮上部52による空気の吹き出しを停止しても媒体Mの先端の垂れが抑制される。また、浮上部52による空気の吹き出しを停止することで、省電力や騒音低減の効果が得られる。
【0100】
搬送部621,622は、水平姿勢Phと、第1傾斜姿勢P1と、に回動可能である。水平姿勢Phでは、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面が水平である。また、第1傾斜姿勢P1では、搬送部621の吸着面の端E1が端E2より-Z方向側に位置し、搬送部622の吸着面の端E4が端E3より-Z方向側に位置する。
【0101】
これによれば、媒体Mに、Y軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が+Z方向側となる湾曲形状を形成することができる。例えば、媒体Mに、Y軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が-Z方向側となる湾曲形状を形成しようとするとする。この場合、媒体MのX軸方向における両端が動けないように吸着していると、媒体Mが突っ張る状態になる。
【0102】
一方、媒体Mに、Y軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が-Z方向側となる湾曲形状を形成する場合、そのような突っ張る状態にならない。このため、媒体Mの損傷や搬送部621,622の吸着面からの媒体Mの剥がれなどが起きにくい。
【0103】
上記の搬送部621,622を備える媒体給送装置40は、吸着搬送部62の-Y方向側に、吸着搬送部62によって搬送される媒体Mを受け入れる受入口82を有する給送経路81をさらに備える。そして、受入口82は、X軸方向における外側が中央より-Z方向側となる湾曲形状を有する。これによれば、受入口82は、媒体Mに付与される波形の形状に対応させた湾曲形状を有するため、媒体Mの搬送不良をより効果的に抑制できる。
【0104】
搬送部621,622は、水平姿勢Phと、第2傾斜姿勢P2と、に回動可能である。水平姿勢Phでは、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面が水平である。また、第2傾斜姿勢P2では、搬送部621の吸着面の端E1が端E2より+Z方向側に位置し、搬送部622の吸着面の端E4が端E3より+Z方向側に位置する。これによれば、媒体Mに、Y軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が-Z方向側となる湾曲形状を形成することができる。
【0105】
上記の搬送部621,622を備える媒体給送装置40は、吸着搬送部62の-Y方向側に、吸着搬送部62によって搬送される媒体Mを受け入れる受入口82を有する給送経路81をさらに備える。そして、受入口82は、X軸方向における外側が中央より+Z方向側となる湾曲形状を有する。これによれば、受入口82は、媒体Mに付与される波形の形状に対応させた湾曲形状を有するため、媒体Mの搬送不良をより効果的に抑制できる。
【0106】
媒体給送装置40は、吸着搬送部62を制御する制御部92をさらに備え、搬送部621,622は、水平姿勢Phと、第1傾斜姿勢P1と、第2傾斜姿勢P2と、に回動可能である。水平姿勢Phでは、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面が水平である。また、第1傾斜姿勢P1では、搬送部621の吸着面の端E1が端E2より-Z方向側に位置し、搬送部622の吸着面の端E4が端E3より-Z方向側に位置する。また、第2傾斜姿勢P2では、搬送部621の吸着面の端E1が端E2より+Z方向側に位置し、搬送部622の吸着面の端E4が端E3より+Z方向側に位置する。そして、媒体MのX軸方向における長さLm1が、水平姿勢Phにおける、端E1と端E4との距離Lf1と同じか短いとする。この場合、制御部92は、搬送部621,622を第1傾斜姿勢P1にする。そして、媒体MのX軸方向における長さLm2が、水平姿勢Phにおける、端E1と端E4との距離Lf1より長いとする。この場合、制御部92は、搬送部621,622を第2傾斜姿勢P2にする。
【0107】
これによれば、媒体MのX軸方向の長さが短い場合には、Y軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が+Z方向側となる湾曲形状に、媒体Mを形成することができる。このため、媒体Mの損傷や搬送部621,622の吸着面からの媒体Mの剥がれなどが起きにくい。一方で、媒体MのX軸方向の長さが長い場合には、Y軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が-Z方向側となる湾曲形状に、媒体Mを形成することができる。媒体MのX軸方向の長さが長い場合には、媒体MのX軸方向の端部が搬送部621,622の吸着面から垂れることがあるが、この端部の垂れによっても湾曲形状を形成することができる。よって、これらによれば、搬送部621,622の姿勢が、媒体MのX軸方向の長さに応じてより適切な傾斜姿勢にできる。
【0108】
媒体給送装置40は、空気を吹き出すことで、媒体束BMから浮上した複数の媒体Mを、吸着搬送部62によって吸着される媒体Mと、媒体束BMに向けて降下する媒体Mと、に分離する分離部56をさらに備える。そして、分離部56は、X軸方向に空気を吹き出す。これによれば、搬送部621,622に吸着された媒体MがY軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が-Z方向側となる湾曲形状に、媒体Mが形成された状態で、分離部56からX軸方向に空気を吹き出すことができる。これにより、搬送部621,622に吸着された媒体Mとその-Z方向側で浮上している媒体Mとの間に流入する空気が、浮上している媒体Mを降下させる方向に流れるため、媒体Mの分離が進みやすい。
【0109】
尚、搬送部621,622に吸着された媒体MがY軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が+Z方向側となる湾曲形状に媒体Mが形成された状態で、分離部56からX軸方向に空気を吹き出すとする。この場合、搬送部621,622に吸着された媒体Mとその-Z方向側で浮上している媒体Mとの間に流入する空気が、浮上している媒体Mの降下を妨げて、媒体Mの分離が抑制される虞がある。
【0110】
上記の媒体給送装置40において、分離部56は、搬送部621,622が第2傾斜姿勢P2にある状態で、空気の吹き出しを停止する。これによれば、分離部56からの空気の吹き出しを停止することで、搬送部621,622による媒体Mの吸着状態が不安定になることを抑制できる。
【0111】
媒体給送装置40は、空気を吹き出すことで、媒体束BMから浮上した複数の媒体Mを、吸着搬送部62によって吸着される媒体Mと、媒体束BMに向けて降下する媒体Mと、に分離する分離部56をさらに備える。そして、分離部56は、X軸方向及びY軸方向に空気を吹き出し可能であり、搬送部621,622が第2傾斜姿勢P2にある場合に、X軸方向に空気を吹き出す。これによれば、搬送部621,622に吸着された媒体MがY軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が下方となる湾曲形状に形成された状態で、分離部56から媒体MのX軸方向に空気を吹き出すことができる。これにより、搬送部621,622に吸着された媒体Mとその下方で浮上している媒体Mとの間に流入する空気が、浮上している媒体Mを降下させる方向に流れるため、媒体Mの分離が進みやすい。
【0112】
上記の媒体給送装置40において、分離部56は、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2にある状態で、空気の吹き出しを停止する。これによれば、分離部56からの空気の吹き出しを停止することで、搬送部621,622による媒体Mの吸着状態が不安定になることを抑制できる。
【0113】
搬送部621は、Y軸方向に沿った回動軸681を中心に回動可能であり、搬送部622は、Y軸方向に沿った回動軸682を中心に回動可能である。そして、媒体給送装置40は、回動軸681と回動軸682とをX軸方向に沿って相対移動させる移動部67をさらに備える。これによれば、媒体MのX軸方向における長さが変化しても、媒体MのX軸方向における両端まで搬送部621,622の吸着面に吸着することができる。また、X軸方向における長さが比較的長い媒体Mを、Y軸方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が+Z方向側となる湾曲形状に形成することができる。
【0114】
媒体給送装置40は、吸着搬送部62の-Y方向側に、吸着搬送部62によって搬送される媒体Mを受け入れる受入口82を有する給送経路81と、吸着搬送部62を制御する制御部92と、をさらに備える。そして、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82よりも+Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を傾斜させる。そして、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82よりも-Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を水平にする。これによれば、媒体Mを受入口82に進入させるときに、搬送部621,622の吸着面の傾斜を解消させることで、媒体Mの先端が給送経路81に接触することによる搬送不良をより効果的に抑制できる。
【0115】
上記の媒体給送装置40において、給送経路81は、受入口82よりも-Y方向側に、媒体Mを挟んで搬送する給送ローラー対を有する。そして、制御部92は、媒体Mの先端が給送ローラー対よりも+Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を水平にする。これによれば、媒体Mが給送経路81に接触することによる搬送不良をより効果的に抑制できる。
【0116】
媒体給送装置40は、吸着搬送部62の-Y方向側に、吸着搬送部62によって搬送される媒体Mを受け入れる受入口82を有する給送経路81をさらに備える。そして、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82よりも+Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を傾斜させる。そして、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82よりも-Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を水平にする。これによれば、媒体Mを受入口82に進入させるときに、搬送部621,622の吸着面の傾斜を解消させることで、媒体Mの先端が給送経路81に接触することによる搬送不良をより効果的に抑制できる。
【0117】
上記の媒体給送装置40において、給送経路81は、受入口82よりも-Y方向側に、媒体Mを挟んで搬送する給送ローラー対を有する。そして、制御部92は、媒体Mの先端が給送ローラー対よりも+Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を水平にする。これによれば、媒体Mが給送経路81に接触することによる搬送不良をより効果的に抑制できる。
【0118】
媒体給送装置40は、媒体束BMに向けて空気を吹き出すことで、媒体束BMから媒体Mを浮上させる浮上部52と、浮上した最上位の媒体Mを、吸着して搬送する吸着搬送部62と、を備える。また、吸着搬送部62は、Y軸方向と交差するX軸方向に並ぶ搬送部621,622を有する。そして、媒体給送装置40の制御方法は、浮上部52から媒体束BMに空気を吹き出して媒体Mを浮上させることを含む。また、媒体給送装置40の制御方法は、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面に、媒体Mを吸着させることを含む。また、媒体給送装置40の制御方法は、浮上部52からの空気の吹き出しを停止させることを含む。また、媒体給送装置40の制御方法は、搬送部621,622を、Y軸方向に沿った回動軸681,682を中心に、回動させることを含む。これによれば、搬送部621,622に吸着される媒体Mの-Y方向側の端である媒体Mの先端の垂れが抑制できる。
【0119】
媒体給送装置40は、吸着搬送部62よりも-Y方向側に、媒体Mを挟んで搬送する給送ローラー対をさらに備える。そして、媒体給送装置40の制御方法は、媒体Mの先端が給送ローラー対よりも+Y方向側に位置するときに、搬送部621の吸着面及び搬送部622の吸着面を水平にすること、をさらに含む。これによれば、媒体給送装置40は、媒体Mの搬送不良を抑制できる。
【0120】
本開示の上記実施形態に係る媒体給送装置40は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。また、本開示の上記実施形態に係る媒体給送装置40の制御方法は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0121】
また、上記実施形態および以下に説明する他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。以下、他の実施形態について説明する。
【0122】
上記実施形態において、媒体給送装置40は、給送経路81に、給送部83を備えなくてもよい。この場合、制御部92は、搬送部61の吸着搬送部62が有する搬送部621,622を制御することで、媒体Mを給送経路81から媒体給送装置40の外部に送出してもよい。
【0123】
上記実施形態において、浮上部52は、ファン54の空気の取込口にシャッター(不図示)を有してもよい。この場合、制御部92は、シャッターを開閉することで、吹出口55からの空気の吹き出しを制御してもよい。
【0124】
上記実施形態において、分離部56は、吹出口59から水平方向に空気を吹き出さなくてもよい。例えば、分離部56は、浮上する媒体Mに向けて、吹出口59から斜め上方に空気を吹き出してもよい。
【0125】
上記実施形態において、回動軸68は回動軸681,682のうちいずれかを含まなくてもよい。この場合、例えば、搬送部621,622は、共通の回動軸681を中心に、それぞれ回動してもよい。また、この場合、回動軸681は、移動部67のX軸方向における中央に固定されてもよい。また、この場合、移動部67は、ガイド溝69を備えなくてもよい。
【0126】
上記実施形態において、搬送部621,622は、第1傾斜姿勢P1を取り得なくてもよい。この場合、送風部51は、分離部561,562を備えなくてもよい。また、この場合、送風部51は、浮上部521,522を備えなくてもよい。
【0127】
上記実施形態において、搬送部621,622は、第2傾斜姿勢P2を取り得なくてもよい。この場合、送風部51は、分離部563,564を備えなくてもよい。また、この場合、送風部51は、浮上部523,524を備えなくてもよい。
【0128】
上記実施形態において、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1にある場合に、分離部56は、分離部561の吹出口59からのみ空気を吹き出し、分離部562の吹出口59から空気を吹き出さなくてもよい。この場合、分離部56は、分離部562を備えなくてもよい。
【0129】
上記実施形態において、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1にある場合に、分離部56は、分離部563,564の吹出口59からX軸方向に空気を吹き出してもよい。あるいは、搬送部621,622が第1傾斜姿勢P1にある場合に、分離部56は、分離部561,562,563,564の吹出口59からX軸方向及びY軸方向に空気を吹き出してもよい。
【0130】
上記実施形態の給送処理において、制御部92は、浮上部52による空気の吹き出しが停止した状態で、搬送部621,622を回動させなくてもよい。例えば、制御部92は、搬送部621,622を回動させた後に、浮上部52による空気の吹き出しを停止してもよい。この場合、制御部92は、分離部56による空気の吹き出しを停止する前に、浮上部52による空気の吹き出しを停止してもよい。
【0131】
上記実施形態の給送処理において、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82よりも-Y方向に位置するときに、搬送部621,622の吸着面を傾斜した姿勢から水平にしなくてもよい。例えば、制御部92は、搬送部621,622による媒体Mの搬送を開始するタイミングで、搬送部621,622の吸着面を傾斜した姿勢から水平にしてもよい。また、例えば、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82に進入する直前に、搬送部621,622の吸着面を傾斜した姿勢から水平にしてもよい。また、例えば、制御部92は、媒体Mの先端が受入口82に進入するタイミングで、搬送部621,622の吸着面を傾斜した姿勢から水平にしてもよい。
【0132】
上記実施形態の給送処理における準備動作において、制御部92は、搬送部621,622を傾斜姿勢にし、吸着搬送部62の吸引ファン65を駆動した状態で、浮上部52のからの空気の吹き出しを開始してもよい。この場合、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mは、第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2にある搬送部621,622の吸着面に吸着される。これによれば、例えば、媒体Mを吸着した搬送部621,622を水平姿勢Phから傾斜姿勢としての第2傾斜姿勢P2にする必要がないので、媒体Mが突っ張り状態になることを抑制できる。
【0133】
上記実施形態の給送処理における準備動作において、制御部92は、搬送部621,622を傾斜姿勢にし、吸着搬送部62の吸引ファン65を駆動した状態で、浮上部52のからの空気の吹き出しを開始してもよい。この場合、媒体束BMから浮上した最上位の媒体Mは、第1傾斜姿勢P1または第2傾斜姿勢P2にある搬送部621,622の吸着面に吸着される。そして、例えば、制御部92は、媒体Mを吸着した搬送部621,622を傾斜姿勢としての第2傾斜姿勢P2から第1傾斜姿勢P1にしてもよい。そして、これにより、媒体Mは、搬送方向に沿う方向から見て媒体Mの端より中央が上方となる湾曲形状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1…印刷システム、10…印刷装置、13…搬送ローラー対、14…搬送部、15…印刷部、16…案内フラップ、17…対向搬送部、18…排出部、19…操作部、31…積載部、40…媒体給送装置、41…載置部、42…基台、43…載置台、44…昇降部、51…送風部、52,521,522,523,524…浮上部、53,57…空気管路、54、58…ファン、55、59…吹出口、56,561,562,563,564…分離部、61…搬送部、62…吸着搬送部、63…搬送ベルト、64…プーリー、65…吸引ファン、66,661,662…保持部、67…移動部、68,681,682…回動軸、69…ガイド溝、81…給送経路、82…受入口、83…給送部、91、92…制御部、91a,92a…CPU、91b,92b…記憶部、91c,92c…インターフェイス部、621、622…搬送部、E1,E2,E3,E4…端、Lf,Lf1…距離、Ls,Ls1,Ls2,Ls3…距離、M…媒体、P1…第1傾斜姿勢、P2…第2傾斜姿勢、T1…印刷経路、T2…循環経路、T3…反転経路。