(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179836
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20241219BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099049
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦史
(72)【発明者】
【氏名】岸本 俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真也
(72)【発明者】
【氏名】山下 達也
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA03
4F206AA04
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD19
4F206AD27
4F206AE03
4F206AH33
4F206AR021
4F206AR06
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F206JM05
4F206JM13
4F206JN22
4F206JP11
(57)【要約】
【課題】本開示は、インサート部材の変形を抑制可能な成形体の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】
本開示においては、第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部を表面に有するインサート部材を準備する準備工程と、上記インサート部材における上記第1樹脂部を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した第2熱可塑性樹脂を、上記第1樹脂部および上記金型の間の空間に充填する充填工程と、上記空間に充填された上記第2熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、を有する成形体の製造方法であって、上記保圧工程において、上記第1樹脂部の内部温度が上記第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは、第1保持圧力を印加し、上記内部温度が上記荷重たわみ温度に達した後は、上記第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する、成形体の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部を表面に有するインサート部材を準備する準備工程と、
前記インサート部材における前記第1樹脂部を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した第2熱可塑性樹脂を、前記第1樹脂部および前記金型の間の空間に充填する充填工程と、
前記空間に充填された前記第2熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、
を有する成形体の製造方法であって、
前記保圧工程において、前記第1樹脂部の内部温度が前記第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは、第1保持圧力を印加し、前記内部温度が前記荷重たわみ温度に達した後は、前記第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する、成形体の製造方法。
【請求項2】
第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部を表面に有するインサート部材を準備する準備工程と、
前記インサート部材における前記第1樹脂部を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した第2熱可塑性樹脂を、前記第1樹脂部および前記金型の間の空間に充填する充填工程と、
前記空間に充填された前記第2熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、
を有する成形体の製造方法であって、
前記保圧工程において、前記射出成形装置のスクリュの単位時間あたりの進み量(dL/dt)が変化点に達するまでは、第1保持圧力を印加し、前記dL/dtが前記変化点に達した後は、前記第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する、成形体の製造方法。
【請求項3】
前記第1熱可塑性樹脂および前記第2熱可塑性樹脂は、それぞれ、ポリオレフィンであり、
前記第1保持圧力は、1.5MPa以上であり、
前記第2保持圧力は、1.5MPa未満である、請求項1または請求項2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記成形体は、蓄電モジュールに用いられる部材であり、
前記インサート部材は、複数の電極が厚さ方向に積層された電極体と、前記電極体の外縁に沿って配置された樹脂製のシール部と、を有し、
前記電極は、集電体および活物質層を有し、
前記シール部が、前記第1樹脂部である、請求項1または請求項2に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記電極体は、前記電極として、バイポーラ電極を有する、請求項4に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形においては、通常、金型内の空間(キャビティ)に、溶融樹脂を充填する充填工程と、上記空間に充填された樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、が行われる。例えば特許文献1には、型締め後、金型キャビティの温度が所定の温度以上になっていることを確認して射出動作を開始し、射出スクリュが設定された充填完了位置に到達したこと、及び金型キャビティが所定温度に到達したことを検知確認して射出充填工程を完了し、その後、保圧工程に切換え、保圧工程は設定保圧時間、及び/又は、設定金型キャビティ温度によって完了する射出成形方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑性樹脂を含有する樹脂部を表面に有するインサート部材に対して、射出成形を行うと、射出された樹脂の熱が樹脂部に伝導し、樹脂部が軟化する場合がある。軟化した樹脂部に、保圧工程において高い保持圧力が印加されると、軟化した樹脂部が変形し、インサート部材が変形する場合がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、インサート部材の変形を抑制可能な成形体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部を表面に有するインサート部材を準備する準備工程と、
上記インサート部材における上記第1樹脂部を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した第2熱可塑性樹脂を、上記第1樹脂部および上記金型の間の空間に充填する充填工程と、
上記空間に充填された上記第2熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、
を有する成形体の製造方法であって、
上記保圧工程において、上記第1樹脂部の内部温度が上記第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは、第1保持圧力を印加し、上記内部温度が上記荷重たわみ温度に達した後は、上記第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する、成形体の製造方法。
【0007】
[2]
第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部を表面に有するインサート部材を準備する準備工程と、
上記インサート部材における上記第1樹脂部を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した第2熱可塑性樹脂を、上記第1樹脂部および上記金型の間の空間に充填する充填工程と、
上記空間に充填された上記第2熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、
を有する成形体の製造方法であって、
上記保圧工程において、上記射出成形装置のスクリュの単位時間あたりの進み量(dL/dt)が変化点に達するまでは、第1保持圧力を印加し、上記dL/dtが上記変化点に達した後は、上記第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する、成形体の製造方法。
【0008】
[3]
上記第1熱可塑性樹脂および上記第2熱可塑性樹脂は、それぞれ、ポリオレフィンであり、
上記第1保持圧力は、1.5MPa以上であり、
上記第2保持圧力は、1.5MPa未満である、[1]または[2]に記載の成形体の製造方法。
【0009】
[4]
上記成形体は、蓄電モジュールに用いられる部材であり、
上記インサート部材は、複数の電極が厚さ方向に積層された電極体と、上記電極体の外縁に沿って配置された樹脂製のシール部と、を有し、
上記電極は、集電体および活物質層を有し、
上記シール部が、上記第1樹脂部である、[1]から[3]までのいずれかに記載の成形体の製造方法。
【0010】
[5]
上記電極体は、上記電極として、バイポーラ電極を有する、[4]に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示における成形体の製造方法は、インサート部材の変形を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示における準備工程、充填工程および保圧工程を例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における保圧工程での圧力制御を説明するグラフである。
【
図3】本開示における課題を説明する概略断面図である。
【
図4】本開示におけるインサート部材を例示する概略平面図および概略断面図である。
【
図5】本開示におけるインサート部材の製造方法を例示する概略断面図である。
【
図6】スクリュの進み量(L)の変化を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における成形体の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0014】
本開示における成形体の製造方法は、保圧工程における圧力制御の方法によって、2つの実施態様に大別される。以下、本開示における成形体の製造方法について、第1実施態様および第2実施態様に分けて、説明する。
【0015】
1.第1実施態様
図1は、本開示における準備工程、充填工程および保圧工程を例示する概略断面図である。まず、
図1(a)に示すように、第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部15を表面に有するインサート部材10を準備する(準備工程)。次に、インサート部材10における第1樹脂部15を金型20に挿入して固定する。次に、金型20におけるスプルー21に、射出成形装置30におけるノズル31を配置する。その後、
図1(b)に示すように、射出成形装置30におけるスクリュ33を、ノズル31側に移動させることで、シリンダ32に充填された第2熱可塑性樹脂R2を、第1樹脂部15および金型20の間の空間に充填する(充填工程)。次に、空間に充填された第2熱可塑性樹脂R2に保持圧力を印加する(保圧工程)。
【0016】
第1実施態様においては、
図1(b)に示すように、第1樹脂部15の内部温度(例えば、第1樹脂部15の表面Sから1mm内部の位置Pにおける温度)が、第1樹脂部15を構成する第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでの時間(以下、時間T
1と称する)を、例えば、Computer Aided Engineering(CAE)により事前に推定する。
図2に示すように、保圧工程において、第1樹脂部15の内部温度が第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは(保圧開始から時間T
1が経過するまでは)、第1保持圧力を印加し、上記内部温度が上記荷重たわみ温度に達した後は(保圧開始から時間T
1が経過した後は)、第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する。その後、
図1(b)、(c)に示すように、金型20から成形体100を取り出す。
図1(c)に示すように、成形体100は、第1樹脂部15と、第1樹脂部15の表面を覆う第2樹脂部16と、を少なくとも有する。
【0017】
第1実施態様によれば、第1樹脂部の内部温度が第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは第1保持圧力を印加し、その後は、第1保持圧力より低い第2保持圧力を印加することで、インサート部材の変形を抑制した成形体を得ることができる。
【0018】
ここで、上述したように、熱可塑性樹脂を含有する樹脂部を表面に有するインサート部材に対して、射出成形を行うと、射出された樹脂の熱が樹脂部に伝導し、樹脂部が軟化する場合がある。軟化した樹脂部に、保圧工程において高い保持圧力が印加されると、軟化した樹脂部が変形し、インサート部材が変形する場合がある。具体的には、
図3に示すように、射出された第2熱可塑性樹脂R2の熱が第1樹脂部15に伝導し、第1樹脂部15が軟化する場合がある。軟化した第1樹脂部15に、保圧工程において高い保持圧力が印加されると、軟化した第1樹脂部15が変形し、インサート部材10が変形する場合がある。
【0019】
これに対して、第1実施態様においては、
図2に示すように、保圧工程において、第1樹脂部15の内部温度が第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは(保圧開始から時間T
1が経過するまでは)、第1保持圧力を印加し、上記内部温度が上記荷重たわみ温度に達した後は(保圧開始から時間T
1が経過した後は)、第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する。これにより、軟化した第1樹脂部15が保持圧力によって変形することを抑制できる。その結果、インサート部材10の変形を抑制することができる。
【0020】
(1)準備工程
第1実施態様における準備工程は、第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部を表面に有するインサート部材を準備する工程である。
【0021】
第1実施態様におけるインサート部材は、第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部を少なくとも有する。また、第1樹脂部は、通常、インサート部材の表面を構成するように配置されている。中でも、第1樹脂部は、インサート部材の側面(インサート部材の厚さ方向に延在する面)を構成するように配置されていることが好ましい。
【0022】
第1熱可塑性樹脂の一例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンが挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。高密度ポリエチレンの密度は、例えば、0.94g/cm3以上、0.973g/cm3以下である。一方、第1熱可塑性樹脂の他の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン(AS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)が挙げられる。
【0023】
第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度は特に限定されないが、例えば、60℃以上100℃以下であり、70℃以上90℃以下であってもよい。荷重たわみ温度は、JIS K7191に準拠して求められる。また、第1熱可塑性樹脂の融点は、例えば、100℃以上140℃以下であり、110℃以上130℃以下であってもよい。
【0024】
インサート部材は、基部と、上記基部上に配置された第1樹脂部と、を有することが好ましい。基部は、例えば、電極を有する電極体、金属製の金属体、樹脂製の樹脂体が挙げられる。また、厚さ方向から見たインサート部材の形状(平面視形状)は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の四角形;真円、楕円等の円が挙げられる。インサート部材の平面視形状を構成する各辺の長さは、特に限定されないが、それぞれ、例えば30cm以上であり、50cm以上であってもよく、100cm以上であってもよい。一方、上記各辺の長さは、それぞれ、例えば200cm以下である。また、インサート部材の厚さは、例えば、5cm以上30cm以下である。インサート部材が大型化するほど、後述する第2熱可塑性樹脂と接触する第1樹脂部の面積も大きくなるため、第1樹脂部の変形が生じやすくなる。これに対して、第1実施態様においては、保圧工程における保持圧力を制御することにより、第1樹脂部の変形が生じることを抑制できる。
【0025】
インサート部材の一例について、
図4(a)、(b)を用いて説明する。
図4(a)はインサート部材を例示する概略平面図であり、
図4(b)は
図4(a)のA-A断面図である。また、
図4(a)、(b)に示すインサート部材10は、電極体であり、典型的には、蓄電モジュールに用いられる部材である。
【0026】
図4(a)、(b)に示すインサート部材10は、複数の電極Eが厚さ方向D
1に積層された電極体EBと、電極体EBの外縁に沿って配置された樹脂製のシール部5と、を有する。
図4(a)に示すように、インサート部材10を厚さ方向から見た場合に、シール部5は、通常、電極Eの外縁全周に沿って配置される。また、シール部5が、上述した第1樹脂部15に該当する。また、
図4(b)に示す電極体EBは、電極Eとして、バイポーラ電極BPと、正極側端部電極CAと、負極側端部電極ANと、を有する。
【0027】
インサート部材10における電極Eは、集電体1と、活物質層(正極活物質層2および負極活物質層3の少なくとも一方)と、を有する。また、
図4(b)に示すように、バイポーラ電極BPは、集電体1と、集電体1の一方の主面上に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の主面上に配置された負極活物質層3と、を有する。また、正極側端部電極CAは、集電体1と、集電体1の一方の主面上に配置された正極活物質層2と、を有する。また、負極側端部電極ANは、集電体1と、集電体1の一方の主面上に配置された負極活物質層3と、を有する。
【0028】
図4(b)に示すように、インサート部材10は、厚さ方向D
1に積層された、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)を有していてもよい。発電単位は、通常、正極活物質層、セパレータおよび負極活物質層を有する単位である。後述するように、発電単位に電解液が供給されることで、電池として機能する。
図4(b)に示すように、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)は、互いに、直列接続されていてもよい。また、特に図示しないが、複数の発電単位は、互いに、並列接続されていてもよい。
【0029】
図4(b)において、発電単位U
1は、バイポーラ電極BP
1における正極活物質層2と、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。また、発電単位U
2は、バイポーラ電極BP
2における正極活物質層2と、バイポーラ電極BP
1における負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。このように、隣り合う2つのバイポーラ電極により、一つの発電単位が構成されていてもよい。また、発電単位U
3は、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2と、バイポーラ電極BP
2における負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、を有する。
【0030】
図4(a)、(b)に示すインサート部材10の作製方法は、特に限定されないが、例えば
図5に示す方法が挙げられる。
図5に示すように、複数の電極シートESを、厚さ方向D
1において積層する方法が挙げられる。
図5においては、電極シートESとして、バイポーラ電極BPを有する電極シートESと、正極側端部電極CAを有する電極シートESと、負極側端部電極ANを有する電極シートESと、を用いている。また、各々の電極シートESは、集電体1および活物質層(正極活物質層2、負極活物質層3)を有する電極Eと、集電体1の外縁に沿って配置された樹脂製の枠体51と、を有する。枠体51は、集電体1の一方の主面pの一部と、集電体1の他方の主面qの一部と、集電体1の外縁を構成する側面rの全体と、を覆っている。
【0031】
図5においては、バイポーラ電極BP
1における負極活物質層3と、バイポーラ電極BP
2における正極活物質層2とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BP
1における枠体51と、バイポーラ電極BP
2における枠体51との間に、別の枠体51(スペーサ51a)を配置する。同様に、バイポーラ電極BP
1における正極活物質層2と、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BP
1における枠体51と、負極側端部電極ANにおける枠体51との間に、別の枠体51(スペーサ51a)を配置する。同様に、バイポーラ電極BP
2における負極活物質層3と、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2とを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、バイポーラ電極BP
2における枠体51と、正極側端部電極CAにおける枠体51との間に、別の枠体51(スペーサ51a)を配置する。このように、複数の電極シートESを、厚さ方向D
1において積層し、厚さ方向D
1において隣り合う枠体51を溶着させることで、シール部(例えば、
図1におけるシール部5)が得られる。
【0032】
インサート部材の他の例としては、特に限定されないが、例えば、樹脂部材、金属部材、樹脂および金属の複合部材が挙げられる。樹脂部材としては、例えば、樹脂およびゴムの少なくとも一方から構成される、シート、板材または立体形状物品が挙げられる。金属部材としては、例えば、金属から構成される、シート、板材または立体形状物品が挙げられる。樹脂および金属の複合部材としては、樹脂およびゴムの少なくとも一方と、金属とから構成される、シート、板材または立体形状物品が挙げられる。樹脂および金属の複合部材の具体例としては、プリント基板、集積回路が挙げられる。
【0033】
(2)充填工程
第1実施態様における充填工程は、上記インサート部材における上記第1樹脂部を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した第2熱可塑性樹脂を、上記第1樹脂部および上記金型の間の空間に充填する工程である。
【0034】
第2熱可塑性樹脂については、上述した第1熱可塑性樹脂に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、第2熱可塑性樹脂は、第1樹脂部を構成する第1熱可塑性樹脂と相溶可能であることが好ましい。第1樹脂部および第2樹脂部の密着性が良好になるからである。第2熱可塑性樹脂および第1熱可塑性樹脂は、それぞれポリオレフィンであることが好ましく、それぞれポリエチレンであることがより好ましい。
【0035】
図1(a)に示すように、射出成形装置30は、ノズル31と、ノズル31に接続されたシリンダ32と、シリンダ32の内部空間を移動可能なスクリュ33と、シリンダ32に原料を供給するホッパ34とを有する。また、スクリュ33は、本体部33cと、ヘッド部33aと、本体部33cおよび先端部33aの間に配置された逆止リング33bと、を有する。ホッパ34に投入された第2熱可塑性樹脂R2は、加熱されたシリンダ32に落下する。シリンダ32に落下した第2熱可塑性樹脂R2は、スクリュ33の回転により、圧縮混錬されながらノズル31側に送られ、スクリュ33は、計量完了位置まで後退する。ノズル31における第2熱可塑性樹脂R2の温度は、特に限定されない。例えば第2熱可塑性樹脂R2がポリエチレンである場合、190℃以上210℃以下であることが好ましい。
【0036】
図1(b)に示すように、スクリュ33を、ノズル31側に移動させることで、ノズル31から第2熱可塑性樹脂R2を、金型20に射出する。スクリュ33は、計量完了位置からVP切り換え位置まで移動する。VP切り換え位置は、第2熱可塑性樹脂R2の目的とする充填量に対して、例えば0.85以上0.95以下の充填量となるように調整される。また、計量完了位置からVP切り換え位置までは、通常、充填速度によって制御される。
【0037】
(3)保圧工程
第1実施態様における保圧工程は、空間に充填された上記第2熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する工程である。また、保持圧力により、スクリュを、VP切り換え位置からノズル側に移動させ、第2熱可塑性樹脂の残りの充填を行う。保圧工程を行うことで、金型から第2熱可塑性樹脂が逆流することを防止しつつ、第2熱可塑性樹脂の残りの充填を行うことで、冷却に伴う第2熱可塑性樹脂の体積減少を補充する。
【0038】
第1実施態様においては、上記第1樹脂部の内部温度が上記第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは、第1保持圧力を印加し、上記内部温度が上記荷重たわみ温度に達した後は、上記第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する。第1樹脂部の内部温度としては、例えば、
図1(b)に示すように、例えば、第1樹脂部15の表面Sから1mm以上5mm以下の内部の位置Pの温度を挙げることができる。このように、保持圧力を制御することにより、軟化した第1樹脂部15が保持圧力によって変形することを抑制できる。その結果、インサート部材10の変形を抑制することができる。
【0039】
第1樹脂部15の内部温度は、Computer Aided Engineering(CAE)により事前に推定することが好ましい。具体的には、保圧工程の開始から、第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでの時間T1を、事前に推定することが好ましい。保圧開始から時間T1が経過するまでは、第1保持圧力を印加し、時間T1が経過した後は、第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する。また、第1樹脂部15の内部に温度計を配置することで、第1樹脂部15の内部温度を測定し、第1樹脂部15の内部温度が第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達するまでは、第1保持圧力を印加し、第1樹脂部15の内部温度が第1熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度に達した後は、第2保持圧力を印加してもよい。
【0040】
第1保持圧力および第2保持圧力の差は、特に限定されないが、例えば0.1MPa以上であり、0.5MPa以上であってもよく、1.0MPa以上であってもよい。また、例えば、第1熱可塑性樹脂および第2熱可塑性樹脂が、それぞれ、ポリオレフィンである場合、第1保持圧力は、1.5MPa以上であり、第2保持圧力は、1.5MPa未満であることが好ましい。
【0041】
(4)成形体
上述した各工程により、成形体が得られる。成形体の用途は、特に限定されないが、蓄電モジュールに用いられる部材であることが好ましい。成形体が、蓄電モジュールに用いられる部材である場合、得られた成形体の内部に、電解液を供給し、封止することで、蓄電モジュールが得られる。蓄電モジュールの具体例としては、二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)、電気二重層キャパシタが挙げられる。また、蓄電デバイスの用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、蓄電モジュールは、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0042】
2.第2実施態様
図1は、本開示における準備工程、充填工程および保圧工程を例示する概略断面図である。まず、
図1(a)に示すように、第1熱可塑性樹脂を含有する第1樹脂部15を表面に有するインサート部材10を準備する(準備工程)。次に、インサート部材10における第1樹脂部15を金型20に挿入して固定する。次に、金型20におけるスプルー21に、射出成形装置30におけるノズル31を配置する。その後、
図1(b)に示すように、射出成形装置30におけるスクリュ33を、ノズル31側に移動させることで、シリンダ32に充填された第2熱可塑性樹脂R2を、第1樹脂部15および金型20の間の空間に充填する(充填工程)。次に、空間に充填された第2熱可塑性樹脂R2に保持圧力を印加する(保圧工程)。
【0043】
第2実施態様においては、
図6(a)に示すように、保圧工程におけるスクリュの進み量に着目する。
図3に示すように、射出された第2熱可塑性樹脂R2の熱が第1樹脂部15に伝導し、第1樹脂部15が軟化すると、スクリュの進み量は増大する。具体的には、
図6(a)に示すように、変化点Cを境にして、スクリュの進み量の傾きは大きくなる。
図6(b)に示すように、スクリュの単位時間あたりの進み量(dL/dt)は、変化点Cを境にして、急激に大きくなる。
図6(c)に示すように、保圧工程において、スクリュの単位時間あたりの進み量(dL/dt)が変化点Cに達するまでは(保圧開始から時間T
2が経過するまでは)、第1保持圧力を印加し、dL/dtが変化点Cに達した後は(保圧開始から時間T
2が経過した後は)、第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する。
【0044】
第2実施態様によれば、スクリュの単位時間あたりの進み量(dL/dt)が変化点に達するまでは、第1保持圧力を印加し、その後は、第1保持圧力より低い第2保持圧力を印加することで、インサート部材の変形を抑制した成形体を得ることができる。
【0045】
(1)準備工程および充填工程
第2実施態様における、準備工程および充填工程については、上述した第1実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0046】
(2)保圧工程
第2実施態様における保圧工程は、上記空間に充填された上記第2熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する工程である。さらに、また、保持圧力により、スクリュを、VP切り換え位置からノズル側に移動させ、第2熱可塑性樹脂の残りの充填を行う。保圧工程を行うことで、金型から第2熱可塑性樹脂が逆流することを防止しつつ、第2熱可塑性樹脂の残りの充填を行うことで、冷却に伴う第2熱可塑性樹脂の体積減少を補充する。
【0047】
第2実施態様においては、上記射出成形装置のスクリュの単位時間あたりの進み量(dL/dt)が変化点に達するまでは、第1保持圧力を印加し、上記dL/dtが上記変化点に達した後は、上記第1保持圧力よりも低い第2保持圧力を印加する。スクリュの進み量は、例えば変位センサにより測定できる。このように、保持圧力を制御することにより、軟化した第1樹脂部15が保持圧力によって変形することを抑制できる。その結果、インサート部材10の変形を抑制することができる。
【0048】
進み量(dL/dt)は、変化点Cによって急激に上昇することから、進み量(dL/dt)の増加が閾値を超えた場合に、第1保持圧力から第2保持圧力に切り替えることが好ましい。また、第1保持圧力および第2保持圧力の差については、上述した第1実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0049】
(3)成形体
上述した各工程により得られる成形体については、上述した第1実施態様に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0050】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
1…集電体
2…正極活物質層
3…負極活物質層
4…セパレータ
5…シール部
10…インサート部材
15…第1樹脂部
16…第2樹脂部
20…金型
30…射出成形装置
100…成形体