(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179839
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/30 20060101AFI20241219BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20241219BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20241219BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20241219BHJP
【FI】
B60W10/30 900
B60K6/24 ZHV
B60K6/48
B60W20/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099056
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 優太
(72)【発明者】
【氏名】小橋 尚也
(72)【発明者】
【氏名】縄田 英和
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB46
3D202CC35
3D202CC37
3D202EE00
3D202EE01
3D202EE19
(57)【要約】
【課題】チェーンテンショナに入り込んだ空気を早期に排出することができる新規な技術を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両は、走行用モータと、内燃機関と、内燃機関に設けられたチェーンと、チェーンの張力を調整する油圧式のチェーンテンショナと、内燃機関に連動して動作するとともに、チェーンテンショナへオイルを供給するオイルポンプと、オイルポンプの目標油圧に応じて、オイルポンプの動作を制御する制御装置と、を備えている。制御装置は、EV走行モードの実行中に内燃機関が始動してから第1の所定時間が経過するまでは、目標油圧を上限値に設定し、第1の所定時間が経過してから第2の所定時間が経過するまでは、目標油圧を上限値以下の範囲内で繰り返し上下させ、第2の所定時間が経過した後は、目標油圧を所定の基準目標値に設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両であって、
走行用モータと、
内燃機関と、
前記内燃機関に設けられたチェーンと、
前記チェーンの張力を調整する油圧式のチェーンテンショナと、
前記内燃機関に連動して動作するとともに、前記チェーンテンショナへオイルを供給するオイルポンプと、
前記オイルポンプの目標油圧に応じて、前記オイルポンプの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
EV走行モードの実行中に前記内燃機関が始動してから第1の所定時間が経過するまでは、前記目標油圧を上限値に設定し、
前記第1の所定時間が経過してから第2の所定時間が経過するまでは、前記目標油圧を前記上限値以下の範囲内で繰り返し上下させ、
前記第2の所定時間が経過した後は、前記目標油圧を所定の基準目標値に設定する、
ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、走行用モータと、内燃機関と、内燃機関に設けられたチェーンと、チェーンの張力を調整する油圧式のチェーンテンショナと、内燃機関に連動して動作するとともに、チェーンテンショナへオイルを供給するオイルポンプと、オイルポンプの目標油圧に応じて、オイルポンプの動作を制御する制御装置と、を備えるハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のハイブリッド車両では、EV走行モードの実行中において内燃機関が停止しているために、内燃機関に連動して動作するオイルポンプも停止している。EV走行モードの実行中において、走行用モータの駆動力の影響で内燃機関がわずかに逆回転することがある。この場合に、チェーンテンショナに力が作用することによってチェーンテンショナに充填されていたオイルが排出されて、チェーンテンショナに空気が入り込むことがある。この状態で内燃機関を始動させると、チェーンテンショナに入り込んだ空気の影響で異音が発生してしまう。特許文献1の制御装置は、EV走行モードが実行されていた時間が長いほど、目標油圧を高くすることで、チェーンテンショナに入り込んだ空気を早期に排出している。
【0005】
本明細書では、チェーンテンショナに入り込んだ空気を早期に排出することができる新規な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1の態様では、ハイブリッド車両は、走行用モータと、内燃機関と、前記内燃機関に設けられたチェーンと、前記チェーンの張力を調整する油圧式のチェーンテンショナと、前記内燃機関に連動して動作するとともに、前記チェーンテンショナへオイルを供給するオイルポンプと、前記オイルポンプの目標油圧に応じて、前記オイルポンプの動作を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、EV走行モードの実行中に前記内燃機関が始動してから第1の所定時間が経過するまでは、前記目標油圧を上限値に設定し、前記第1の所定時間が経過してから第2の所定時間が経過するまでは、前記目標油圧を前記上限値以下の範囲内で繰り返し上下させ、前記第2の所定時間が経過した後は、前記目標油圧を所定の基準目標値に設定する。
【0007】
上記の構成によると、第1の所定時間が経過してから第2の所定時間が経過するまでは、目標油圧が上限値以下の範囲内で繰り返し上下するために、オイルポンプからチェーンテンショナに供給されるオイルの油圧も上下する。これにより、チェーンテンショナに入り込んだ空気が排出されやすくなる。従って、チェーンテンショナに入り込んだ空気を早期に排出することができる。この結果、目標油圧を早期に所定の基準目標値に設定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】内燃機関16が始動した後におけるオイルポンプ56の目標油圧のタイムチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例)
(ハイブリッド車両2の構成)
図1に示すように、ハイブリッド車両2は、車体10と、一対の駆動輪12と、一対の従動輪14と、内燃機関16と、走行用モータ18と、バッテリ20と、制御装置22と、を備えている。一対の駆動輪12は、デファレンシャルギア30を介して、出力軸32に接続されている。内燃機関16は、遊星歯車機構34に接続されているクランク軸16Aを備えている。遊星歯車機構34は、出力軸32に接続されている。走行用モータ18は、遊星歯車機構34に接続されているとともに、バッテリ20に電気的に接続されている。走行用モータ18は、バッテリ20から供給される電力によって駆動される。バッテリ20は、再充電可能な二次電池であり、一例ではあるが、複数のリチウムイオンセルを有する。
【0010】
図2に示すように、ハイブリッド車両2は、さらに、チェーン機構40を備えている。チェーン機構40は、クランクスプロケット42と、吸気側カムスプロケット44と、排気側カムスプロケット46と、チェーン48と、固定ガイド50と、揺動ガイド52と、油圧式のチェーンテンショナ54と、オイルポンプ56と、を備えている。クランクスプロケット42は、クランク軸16Aに取付けられている。吸気側カムスプロケット44は、吸気側カム軸(図示省略)に取付けられている。排気側カムスプロケット46は、排気側カム軸(図示省略)に取付けられている。チェーン48は、クランクスプロケット42、吸気側カムスプロケット44、及び、排気側カムスプロケット46に架け渡されている。固定ガイド50は、クランクスプロケット42と排気側カムスプロケット46との間におけるチェーン48をガイドしている。固定ガイド50は、内燃機関16に固定されている。揺動ガイド52は、クランクスプロケット42と吸気側カムスプロケット44との間におけるチェーン48をガイドしている。揺動ガイド52は、内燃機関16に揺動可能に取り付けられている。
【0011】
チェーンテンショナ54は、揺動ガイド52の外表面に接触している。チェーンテンショナ54は、チェーン48の張力を調整するとともに、オイルダンパとしての機能を有している。チェーンテンショナ54にはオイルポンプ56が接続されている。オイルポンプ56は、クランク軸16Aに連結されている。オイルポンプ56は、内燃機関16(詳細にはクランク軸16A)に連動して動作して、チェーンテンショナ54へオイルを供給する。チェーンテンショナ54には、オイルポンプ56から供給されるオイルが充填されている。
【0012】
図1の制御装置22は、CPUと、ROM及びRAM等のメモリと、を備えている。制御装置22は、メモリに記憶されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。制御装置22は、オイルポンプ56の目標油圧を決定し、決定済みの目標油圧に応じて、オイルポンプ56の動作を制御する。制御装置22は、調整バルブ(図示省略)の動作を制御することによって、オイルポンプ56から供給されるオイルの油圧を制御する。制御装置22は、内燃機関16が停止しており、走行用モータ18が駆動しているEV走行モードと、内燃機関16が駆動しているHEV走行モードと、を実行可能である。
【0013】
図3を参照して、本実施例のハイブリッド車両2によって実行される具体的なケースについて説明する。
図3のタイムチャートにおいて、縦軸は目標油圧[kPa]を示す。時刻T0よりも前において、ハイブリッド車両2は、EV走行モードを実行している。
【0014】
時刻T0において、EV走行モードの実行中に内燃機関16が始動する。即ち、ハイブリッド車両2は、EV走行モードを実行している状態からHEV走行モードを実行している状態に切り替わる。この場合、制御装置22は、内燃機関16が始動したと判断し、目標油圧を上限値P1に設定する。上限値P1は、オイルポンプ56が吐出可能な最大油圧である。制御装置22は、内燃機関16が始動してから第1の所定時間(例えば5秒)が経過するまでは、目標油圧を上限値P1に維持する。
【0015】
時刻T1が到来すると、制御装置22は、内燃機関16が始動してから第1の所定時間が経過したと判断し、第1の所定時間が経過してから第2の所定時間(例えば5秒)が経過するまでは、目標油圧を上限値P1以下の範囲内で繰り返し上下させる。具体的には、制御装置22は、目標油圧を上限値P1と所定の基準目標値P2との範囲内で繰り返し上下させる。本実施例では、制御装置22は、まず、目標油圧を、上限値P1から基準目標値P2まで漸減させる。その後、制御装置22は、目標油圧を基準目標値P2から上限値P1まで漸増させる処理と、目標油圧を上限値P1から基準目標値P2まで漸減させる処理と、を繰り返し実行する。
【0016】
時刻T2が到来すると、制御装置22は、第1の所定時間が経過してから第2の所定時間が経過したと判断し、目標油圧を基準目標値P2に設定する。
【0017】
EV走行モードの実行中に内燃機関16が始動した後に、目標油圧を上限値P1以下の範囲内で繰り返し上下させる理由について説明する。ハイブリッド車両2では、オイルポンプ56がクランク軸16Aに連結しているので、EV走行モードの実行中においてオイルポンプ56が停止している。EV走行モードの実行中において、走行用モータ18の駆動力の影響で内燃機関16がわずかに逆回転することがある。この場合に、チェーンテンショナ54に力が作用することによってチェーンテンショナ54に充填されていたオイルが排出されて、チェーンテンショナ54に空気が入り込むことがある。この状態で内燃機関16を始動させると、チェーンテンショナ54に入り込んだ空気の影響で異音が発生してしまう。内燃機関16が始動した後に、目標油圧を上限値P1の範囲内で繰り返し上下させることによって、オイルポンプ56からチェーンテンショナ54に供給されるオイルの油圧も上下に変動する。これにより、チェーンテンショナ54に入り込んだ空気を早期に排出することができる。このような理由から、制御装置22は、目標油圧を上限値P1以下の範囲内で繰り返し上下させている。
【0018】
上述のように、ハイブリッド車両2は、走行用モータ18と、内燃機関16と、内燃機関16に設けられたチェーン48と、チェーン48の張力を調整する油圧式のチェーンテンショナ54と、内燃機関16に連動して動作するとともに、チェーンテンショナ54へオイルを供給するオイルポンプ56と、オイルポンプ56の目標油圧に応じて、オイルポンプ56の動作を制御する制御装置22と、を備えている。制御装置22は、EV走行モードの実行中に内燃機関16が始動してから第1の所定時間が経過するまでは、目標油圧を上限値P1に設定し、第1の所定時間が経過してから第2の所定時間が経過するまでは、目標油圧を上限値P1以下の範囲内で繰り返し上下させ、第2の所定時間が経過した後は、目標油圧を所定の基準目標値P2に設定する。
【0019】
上記の構成によると、第1の所定時間が経過してから第2の所定時間が経過するまでは、目標油圧が上限値P1以下の範囲内で繰り返し上下するために、オイルポンプ56からチェーンテンショナ54に供給されるオイルの油圧も上下する。この場合、チェーンテンショナ54に入り込んだ空気が排出されやすくなる。従って、チェーンテンショナ54に入り込んだ空気を早期に排出することができる。この結果、目標油圧を早期に所定の基準目標値P2に設定することができるようになる。
【符号の説明】
【0020】
2:ハイブリッド車両、10:車体、12:駆動輪、14:転動輪、16:内燃機関、16A:クランク軸、18:走行用モータ、20:バッテリ、22:制御装置、30:デファレンシャルギア、32:出力軸、34:遊星歯車機構、40:チェーン機構、42:クランクスプロケット、44:吸気側カムスプロケット、46:排気側カムスプロケット、48:チェーン、50:固定ガイド、52:揺動ガイド、54:チェーンテンショナ、56:オイルポンプ