(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179848
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両のパワートレイン構造
(51)【国際特許分類】
B60K 6/405 20071001AFI20241219BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241219BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20241219BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20241219BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241219BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20241219BHJP
【FI】
B60K6/405
B60K1/04 Z
B60K6/26 ZHV
B60K6/48
B60L50/16
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099091
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】芝 義博
(72)【発明者】
【氏名】樫原 宏明
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将和
(72)【発明者】
【氏名】山崎 範治
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202EE00
3D202EE02
3D202EE21
3D202EE23
3D235CC01
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC14
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125FF03
(57)【要約】
【課題】レイアウト性を高めることのできる車両のパワートレイン構造を提供する。
【解決手段】水平な第1方向についてエンジン本体の一方側に配設されて、内側にモータを収容するハウジングを設け、電力変換装置に、第2方向に沿って並設された平滑コンデンサと、パワーモジュールとを設けるとともに、電力変換装置の上面に通信用コネクタ190を設ける。ハウジングの上方に、エンジン本体の第1方向の一方側の側面から当該一方側に突出する突出部を配設するとともに、電力変換装置を、その一部がハウジングと突出部の間に位置し、且つ、平面視で通信用コネクタが突出部と重ならない状態で、ハウジングの上方に配設する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室が形成されたエンジン本体を含む走行用の駆動源としてのエンジンと、
走行用の駆動源としてのモータと、
前記モータに給電するバッテリと、
前記バッテリの直流電流を交流電流に変換して前記モータに供給する電力変換装置と、
水平な第1方向について前記エンジン本体の一方側に配設されて、内側に前記モータを収容するハウジングと、
前記電力変換装置と通信する通信装置を備え、
前記電力変換装置は、前記バッテリから入力された直流電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1方向と直交する水平な第2方向について前記平滑コンデンサの一方側に配設されて前記平滑コンデンサにより平滑化された直流電流を交流電流に変換するパワーモジュールと、当該電力変換装置の上面に設けられて前記通信装置と電気的に接続される通信用コネクタとを備え、
前記ハウジングの上方には、前記エンジン本体の前記第1方向の前記一方側の側面から当該一方側に突出する突出部が配設されており、
前記電力変換装置は、その一部が前記ハウジングと前記突出部の間に位置し、且つ、平面視で前記通信用コネクタが前記突出部と重ならない状態で、前記ハウジングの上方に配設されている、ことを特徴とする車両のパワートレイン構造。
【請求項2】
請求項1に記載のパワートレイン構造において、
前記通信装置は、前記パワーモジュールを制御するための信号を送信する装置であり、
前記パワーモジュールは、前記通信用コネクタの下方に配設されている、ことを特徴とする車両のパワートレイン構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両のパワートレイン構造において、
前記電力変換装置は、前記モータと連結されて前記パワーモジュールにより生成された交流電流を前記モータに伝達するACバスバーを備え、
前記ハウジングは、前記ACバスバーが前記第1方向に沿って挿入されるバスバー挿入部を備える、ことを特徴とする車両のパワートレイン構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両のパワートレイン構造において、
前記電力変換装置は、前記平滑コンデンサおよび前記パワーモジュールを収容し、且つ、上面に前記通信用コネクタが設けられた筐体を有し、
前記筐体は、前記第2方向の端部に設けられて前記ACバスバーを保持するバスバー保持部と、当該バスバー保持部よりも前記第1方向の他方側に膨出する膨出部を備える、ことを特徴とする車両のパワートレイン構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両のパワートレイン構造において、
前記電力変換装置は、前記通信用コネクタおよび前記パワーモジュールと電気的に接続されて当該パワーモジュールを制御する制御回路基板を備え、
前記制御回路基板は、平面視で前記パワーモジュールよりも前記第1方向の他方側に延びる状態で、前記パワーモジュールの上方に配設されている、ことを特徴とする車両のパワートレイン構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパワートレイン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用の駆動源としてエンジンとモータとを備えるとともに、モータに給電するバッテリを備えた車両(いわゆるハイブリッド車両)が知られている。このような車両では、モータを駆動するためにバッテリの直流電流を交流電流に変換する必要があることから、エンジン、モータおよびバッテリに加えて上記の変換を行うための電力変換装置が搭載される。
【0003】
例えば、特許文献1には、エンジン、モータ、バッテリおよび電力変換装置が搭載される車両において、モータを収容するケースの上面と電力変換装置(特許文献1では電力制御装置)の底面とを締結して、上記ケースの上方に電力変換装置を搭載するという構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造では、電力変換装置がモータおよびケースの上方空間の全体を占めている。そのため、モータおよびケースの上方に他の装置を設置する際にそのレイアウトが難しくなるという問題がある。このように、特許文献1の構造では、レイアウト性を高める点で改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、レイアウト性を高めることのできる車両のパワートレイン構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、燃焼室が形成されたエンジン本体を含む走行用の駆動源としてのエンジンと、走行用の駆動源としてのモータと、前記モータに給電するバッテリと、前記バッテリの直流電流を交流電流に変換して前記モータに供給する電力変換装置と、水平な第1方向について前記エンジン本体の一方側に配設されて、内側に前記モータを収容するハウジングと、前記電力変換装置と通信する通信装置を備え、前記電力変換装置は、前記バッテリから入力された直流電流を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1方向と直交する水平な第2方向について前記平滑コンデンサの一方側に配設されて前記平滑コンデンサにより平滑化された直流電流を交流電流に変換するパワーモジュールと、当該電力変換装置の上面に設けられて前記通信装置と電気的に接続される通信用コネクタとを備え、前記ハウジングの上方には、前記エンジン本体の前記第1方向の前記一方側の側面から当該一方側に突出する突出部が配設されており、前記電力変換装置は、その一部が前記ハウジングと前記突出部の間に位置し、且つ、平面視で前記通信用コネクタが前記突出部と重ならない状態で、前記ハウジングの上方に配設されている、ことを特徴とする。
【0008】
この構成では、平滑コンデンサとパワーモジュールとが水平な第2方向について並んでいる。そのため、これら2つの要素が占める空間ひいては電力変換装置の上下方向の寸法および第1方向の寸法を小さく抑えることができる。また、電力変換装置の一部が、ハウジングと、ハウジングの上方においてエンジン本体の第1方向の一方側の側面から当該一方側に突出する突出部の間に配置されている。そのため、ハウジングの上方に、突出部と電力変換装置の双方をコンパクトに配設することができ、レイアウト性を高めることができる。
【0009】
しかも、上記の構成では、電力変換装置の上面に通信用コネクタが設けられるとともに、当該通信用コネクタが上記の突出部と平面視で重ならない位置に配置されている。そのため、車両の前突、後突および側突時にパワートレインの周囲に存在する衝突物等が通信用コネクタに衝突するのを防止しつつ、通信用コネクタへの上方からのアクセスを容易にしてこれに対するハーネス等の接続作業効率を高めることができる。
【0010】
前記構成において、好ましくは、前記通信装置は、前記パワーモジュールを制御するための信号を送信する装置であり、前記パワーモジュールは、前記通信用コネクタの下方に配設されている(請求項2)。
【0011】
この構成によれば、パワーモジュールが通信用コネクタに近い位置に配設されることでこれらを接続するための部材の寸法を小さくできる。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記電力変換装置は、前記モータと連結されて前記パワーモジュールにより生成された交流電流を前記モータに伝達するACバスバーを備え、前記ハウジングは、前記ACバスバーが前記第1方向に沿って挿入されるバスバー挿入部を備える(請求項3)。
【0013】
この構成では、パワートレインの組立時に、電力変換装置を第1方向に沿って移動させることでACバスバーをバスバー挿入部に挿入して電力変換装置とモータとを連結することができる。そのため、ACバスバーをバスバー挿入部に挿入するために電力変換装置の周囲に確保すべき作業スペースの上下方向の寸法を小さく抑えることができる。従って、この構成によれば、ACバスバーのバスバー挿入部への挿入を可能としつつ、突出部とハウジングとの上下方向の隙間寸法を小さく抑えることが可能になり、突出部および電力変換装置の容積を確保できる。
【0014】
前記構成において、好ましくは、前記電力変換装置は、前記平滑コンデンサおよび前記パワーモジュールを収容し、且つ、上面に前記通信用コネクタが設けられた筐体を有し、前記筐体は、前記第2方向の端部に設けられて前記ACバスバーを保持するバスバー保持部と、当該バスバー保持部よりも前記第1方向の他方側に膨出する膨出部を備える(請求項4)。
【0015】
この構成によれば、少なくとも膨出部を突出部の下方に配設することで、電力変換装置をエンジン本体の側方およびハウジングの上方にコンパクトに配設できる。
【0016】
前記構成において、好ましくは、前記電力変換装置は、前記通信用コネクタおよび前記パワーモジュールと電気的に接続されて当該パワーモジュールを制御する制御回路基板を備え、前記制御回路基板は、平面視で前記パワーモジュールよりも前記第1方向の他方側に延びる状態で、前記パワーモジュールの上方に配設されている(請求項5)。
【0017】
この構成によれば、パワーモジュールの近い位置に制御回路基板を配設することでこれらを接続するための部材の寸法を小さくできるとともに、突出部の下方の空間を制御回路基板の設置空間として利用できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の車両のパワートレイン構造によれば、レイアウト性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示したシステム図である。
【
図2】パワートレインユニットの概略斜視図である。
【
図3】パワートレインユニットを前方から見た概略側面図である。
【
図4】パワートレインユニットを後方から見た概略側面図である。
【
図5】パワートレインユニットを左方から見た概略側面図である。
【
図6】パワートレインユニットの概略上面図である。
【
図7】
図5に示す状態からエンジンおよび電力変換装置を取り外した状態の図である。
【
図8】上蓋を取り外した状態の電力変換装置の周辺を示した概略上面図である。
【
図9】電力変換装置の内部構造を示した概略断面図である。
【
図10】ACバスバーおよびバスバー挿入部の周辺構造を説明するための概略斜視図である。
【
図11】ACバスバーを分解して示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る車両のパワートレイン構造が適用された車両Vの概略構成を示したシステム図である。以下では、車両Vの前後方向を単に前後方向という。また、車両Vの車幅方向であって前方を向いた状態での左右方向を左右方向という。なお、各図における前、後、左、右は、上記の方向に対応している。本実施形態では、左右方向が請求項の「第1方向」に相当し、左側が請求項の「第1方向の一方側」に相当する。また前後方向が請求項の「第2方向」に相当し、前側が請求項の「第2方向の一方側」に相当する。
【0021】
車両Vには、パワートレインユニットPTと、電力変換装置100と、高電圧バッテリ200と、低電圧バッテリ300とが搭載されている。
【0022】
車両Vはいわゆるハイブリッド車両であり、車両Vには、走行用の駆動源つまり車両V(車輪W)の駆動源としてそれぞれ機能するエンジンEとモータMとが搭載されている。パワートレインユニットPTは、これらエンジンE(詳細には、後述するエンジン本体1)とモータMとを含む。パワートレインユニットPTは、エンジンEおよびモータMに加えて、クラッチCL、変速機TMおよびデファレンシャルギアDFを備える。
【0023】
モータMは、出力軸、出力軸の周囲に永久磁石が備えられたロータ、およびロータの外周に配設された複数のコイルからなるステータを備える。ステータの複数のコイルの各々に位相差を有した交流電流が供給されることで、出力軸(ロータ)は回転する。本実施形態では、モータMは、三相交流同期モータであり、U相のコイル、V相のコイル、およびW相のコイルを有しており、各相のコイルに対して位相が互いに異なる電流が供給される。
【0024】
クラッチCLは、エンジンEとモータMとを断接可能に接続している。変速機TMは、モータMに接続されており、モータMから入力された回転を変速して出力する。デファレンシャルギアDFは、変速機TMから出力された回転をドライブシャフトS等を介して車輪Wに伝達する。車両Vは、パラレル式のハイブリッド車両であり、モータMの駆動力のみによる走行、モータMとエンジンEの双方の駆動力による走行、およびエンジンEの駆動力のみによる走行が可能である。具体的に、クラッチCLが切断している場合は、モータMの駆動力のみが車輪Wに付与される。一方、クラッチCLが接続され、且つ、モータMが駆動力を発生していない場合は、エンジンEの駆動力のみが車輪Wに付与される。また、クラッチCLが接続され、且つ、モータMが駆動力を発生している場合は、エンジンEおよびモータMの出力が車輪Wに付与される。また、車両Vは減速回生が可能な車両であり、モータMは車両Vの減速時に車輪Wから伝達される回転力によって発電する。
【0025】
高電圧バッテリ200は、モータMとの間で電力の授受を行うバッテリである。モータMが走行用の駆動源として駆動する場合、高電圧バッテリ200はモータMに給電する。一方、モータMが発電機として駆動する場合、高電圧バッテリ200はモータMによって生成された電力を蓄電する。
【0026】
電力変換装置100は、高電圧バッテリ200の直流電流を交流電流に変換してモータMに供給する。具体的に、電力変換装置100は、直流電流を三相交流電流に変換する。また、電力変換装置100は、モータMが発電機として駆動する場合、モータMにより生成された交流電流を直流電流に変換して高電圧バッテリ200に供給する。
【0027】
低電圧バッテリ300は、車両Vの各部に設けられた電装品に給電するバッテリである。低電圧バッテリ300は高電圧バッテリ200よりも公称電圧の小さいバッテリである。例えば、高電圧バッテリ200が公称電圧が24V以上のリチウムイオンバッテリやニッケル水素バッテリであるのに対して、低電圧バッテリ300は公称電圧が12Vまたは24Vの鉛バッテリ、またはリチウムイオンバッテリである。
【0028】
本実施形態では、パワートレインユニットPT、電力変換装置100および低電圧バッテリ300は、車両Vの前部に区画されたパワートレインルームR1内に収容されている。高電圧バッテリ200は、パワートレインルームR1の後方に区画された車室R2の下部に収容されている。
【0029】
(エンジン)
図2は、パワートレインユニットPTおよびその周辺の概略斜視図である。
図3、
図4および
図5は、パワートレインユニットPTおよびその周辺の概略側面図である。
図3は、パワートレインユニットPT等を前方から見た図、
図4は、パワートレインユニットPT等を後方から見た図、
図5はパワートレインユニットPT等を左方から見た図である。
図6は、パワートレインユニットPTおよびその周辺の概略上面図である。なお、
図5では低電圧バッテリ300の図示は省略している。また、
図6では、低電圧バッテリ300を鎖線で示している。
【0030】
エンジンEは、燃焼室Cが形成されたエンジン本体1を備える。エンジン本体1は、往復動式の内燃機関であり、気筒(不図示)が形成されたシリンダブロック2、シリンダブロック2の上方を覆うシリンダヘッド3、上下方向に往復動可能に気筒に挿入されたピストン(不図示)、およびピストンの往復動に伴って回転するクランクシャフト(不図示)を備える。また、エンジンEは、シリンダブロック2の下面に連結されて、潤滑油を貯留するためのオイルパン9を備える。なお、燃焼室Cは、気筒の内周面と、ピストンの冠面と、シリンダヘッド3の底面とによって区画される空間である。本実施形態では、エンジン本体1は、直列4気筒エンジンであり、クランクシャフトの回転中心軸に沿って並ぶ4つの気筒および4つの燃焼室Cを備える。
【0031】
エンジンEは、エンジン本体1に導入される吸気(空気)が内側を流通する吸気通路5と、エンジン本体1から導出される排気(既燃ガス)が内側を流通する排気通路6とを備える。なお、排気通路6は、
図6においてのみ、その一部を鎖線で示している。
【0032】
上記のように、本実施形態では、エンジン本体1は4つの燃焼室Cを有する。これに対応して、吸気通路5は、各燃焼室Cにそれぞれ吸気を導入する4つの通路を備えたインテークマニホールド5Aを備える。インテークマニホールド5Aはシリンダヘッド3に連結されている。また、インテークマニホールド5Aよりも上流側の吸気通路5には、吸気通路5を開閉するスロットルバルブとこれを駆動するアクチュエータとを含むスロットルバルブユニット5Bが設けられている。
【0033】
エンジンEは、クランクシャフトが左右方向に沿って延びる姿勢であって燃焼室C(気筒)が左右方向に並ぶ姿勢でパワートレインルームR1内に配設されている。つまり、エンジンEは、車両Vに横置きされている。また、エンジンEは、インテークマニホールド5Aがエンジン本体1の前側に位置する姿勢でパワートレインルームR1内に配設されている。
【0034】
エンジン本体1の上部の左側には、エンジンEに設けられた各種の周辺機器が配設されている。本実施形態では、EGRクーラ7A、EGRクーラ接続部7B、EGRバルブユニット7Cおよび燃料ポンプ8が、シリンダヘッド3の左側に配設されている。
【0035】
具体的に、エンジンEは、周辺機器の一つとして、排気通路6と吸気通路5とを連通するEGR通路を含んで排気通路6を流通する排気の一部(EGRガス)を吸気通路5に還流させるEGR装置7を有する。EGR装置7は、EGR通路の途中に設けられてEGRガスを冷却するEGRクーラ7Aを有する。また、EGR装置7は、EGR通路を開閉するEGRバルブとこれを駆動するアクチュエータとを含むEGRバルブユニット7Cを有する。EGRクーラ7Aは、EGRガスの流れ方向に沿って延びる略直方体状を有する。EGRクーラ7Aは、前後方向に延びる姿勢で、且つ、その上流端が後側となりその下流端が前側となる姿勢で、シリンダヘッド3の左側に配設されている。EGRバルブユニット7Cは、EGRクーラ7Aの前端に組付けられており、シリンダヘッド3の前端部付近の左側に配設され、吸気通路5に接続されている。EGR通路の一部はシリンダヘッド3の内側に形成されており、シリンダヘッド3の内側おいてEGR通路と排気通路6とは連通している。シリンダヘッド3の内側に形成されたEGR通路は、シリンダヘッド3の左側面3Aの後部に開口している。EGR装置7は、シリンダヘッド3の左側面3Aに形成されたEGR通路の開口部と、EGRクーラ7Aの上流端とを連結するEGRクーラ接続部7Bを有する。このEGRクーラ接続部7Bは、シリンダヘッド3の後部の左側に配設されている。
【0036】
また、エンジンEは、燃焼室Cに燃料を供給する燃料供給手段を有するとともに、周辺機器の一つとして、燃料供給手段に燃料を圧送するための燃料ポンプ8を有する。燃料ポンプ8は、シリンダヘッド3の左側で、且つ、EGRクーラ7AおよびEGRクーラ接続部7Bの上方に配設されている。
【0037】
シリンダヘッド3の左側面3Aの左右方向の位置とシリンダブロック2の左側面2Aの左右方向の位置とはほぼ同じである。これより、上記のようにシリンダヘッド3の左側に配設された、EGRクーラ7A、EGRクーラ接続部7B、EGRバルブユニット7Cおよび燃料ポンプ8は、シリンダブロック2の左側面2Aとシリンダヘッド3の左側面3Aとからなるエンジン本体1の左側面1Aの左側に位置している。つまり、これらの機器7A,7B,7C,8は、後述するハウジング20の上方において、エンジン本体1の左側の側面1Aから左側に突出している。以下では、適宜、これらEGRクーラ7A、EGRクーラ接続部7B、EGRバルブユニット7Cおよび燃料ポンプ8を、特定機器70という。この特定機器70は、請求項の「突出部」に相当する。
【0038】
(モータ側のパワートレインユニット)
パワートレインユニットPTのうちエンジンE(エンジン本体1)を除く部分であるモータM側のパワートレインユニットPT_Mは、エンジン本体1の左側に配設されている。
【0039】
具体的に、シリンダブロック2の左側面2Aには内側に空間が区画されたハウジング20が締結されており、このハウジング20の内側に、クラッチCL、モータM、変速機TMおよびデファレンシャルギアDFが収容されている。ハウジング20内において、クラッチCL、モータM、変速機TMは、この順で、右側から並んでいる。ハウジング20内において、デファレンシャルギアDFはモータMおよび変速機TMの後方に配設されている。
【0040】
本実施形態では、ハウジング20は複数の部材で構成されている。具体的に、ハウジング20は、シリンダブロック2の左側面2Aに締結されたフロントカバー21と、フロントカバー21の左側面に締結されたモータハウジング22と、モータハウジング22の左側面に締結されたアクスルハウジング23と、アクスルハウジング23の左側面に締結されたアクスルハウジングカバー24とを有する。
【0041】
モータハウジング22およびアクスルハウジング23は、それぞれ、中心軸が左右方向に延びる略円筒状を有しており、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の各上部の外周面は、左右方向に沿ってみたときに上方に膨出するように湾曲している。アクスルハウジングカバー24は、略円板状の部材であり、アクスルハウジング23の左側の開口を覆うようにこれに締結されている。
【0042】
クラッチCLおよびモータMは、主にフロントカバー21およびモータハウジング22の内側に配設されている。モータMは、その出力軸が左右方向に延びて、左右方向に延びる軸回りに回転可能にフロントカバー21に支持されている。変速機TMは、主にアクスルハウジング23の内側に配設されている。
【0043】
デファレンシャルギアDFは、主にアクスルハウジング23の後部に配設されている。具体的に、モータハウジング22およびアクスルハウジング23は、後方に膨出する部分を有し、両膨出部の内側にデファレンシャルギアDFが収容されている。すなわち、ハウジング20は、デファレンシャルギアDFの収容部として、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の後側の一部からなるデフケース28を有する。
【0044】
フロントカバー21、モータハウジング22およびアクスルハウジング23は、各中心軸がほぼ同じ線に沿うように左右方向に並設されている。モータハウジング22およびアクスルハウジング23の外径はほぼ同じ寸法に設定されており、これら2つのハウジング22,23の外周面は左右方向に概ね連続している。一方、フロントカバー21の上下方向の最大長さは、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上下方向の最大長さよりも大きい寸法に設定されており、上下方向について、フロントカバー21は、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上縁よりも上方の位置まで延びている。また、フロントカバー21は、前後方向について、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の前縁よりも前方の位置まで延びている。つまり、フロントカバー21の前端は、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の前端よりも前側に位置している。また、フロントカバー21は、その前端位置が、エンジン本体1の前端位置よりも前側となるように、エンジン本体1に締結されている。
【0045】
図7は、
図5に示す状態からエンジンEおよび電力変換装置100を取り外した状態の図である。
図7等に示すように、フロントカバー21およびモータハウジング22の前端部には、電力変換装置100の後述するACバスバー115が挿入されるバスバー挿入部25が設けられている。
【0046】
バスバー挿入部25は、フロントカバー21の前端部の上部およびこれと対向するモータハウジング22の上部に設けられている。具体的に、モータハウジング22は、モータMを囲むモータハウジング本体部22Aを有する。フロントカバー21は、モータハウジング本体部22Aと略同じ外径を有してこれが連結されるモータハウジング連結部21Aを有する。バスバー挿入部25の左側部分は、モータハウジング22に設けられており、モータハウジング本体部22Aの外周面のうちその上端部からわずかに前側且つ下側にずれた位置から前方に突出している。バスバー挿入部25の右側部分は、フロントカバー21に設けられており、モータハウジング連結部21Aの外周面のうちその上端部からわずかに前側且つ下側にずれた位置から前方に突出している。バスバー挿入部25は、前後方向に延びる略直方体形状を有する。バスバー挿入部25の左側面には、左方に開口する開口部25Aが形成されている。
【0047】
ここで、上記のように、バスバー挿入部25はモータハウジング本体部22Aおよびモータハウジング連結部21Aから前方に突出する形状を有する。ただし、フロントカバー21のうちモータハウジング連結部21Aよりも右側に位置する部分は、バスバー挿入部25よりも前側の位置まで延びている。これより、バスバー挿入部25の前端は、フロントカバー21の前端よりも後側に位置している。
【0048】
(電力変換装置)
図8は、電力変換装置100の周辺を示した概略上面図である。
図8には、後述する筐体101から後述する上蓋103を取り外した状態の電力変換装置100を示している。
図9は、電力変換装置100の内部構造を示した概略断面図である。
【0049】
電力変換装置100は、フィルタ112、平滑コンデンサ113、パワーモジュール114、制御回路基板116、およびこれらを内側に収容する筐体101を備える。また、電力変換装置100は、複数のバスバーを備える。バスバーは、金属の板材で形成された部品である。電力変換装置100は、高電圧バッテリ200に連結されるバスバーであるDCバスバー111と、モータMに連結されるACバスバー115とを備える。また、電力変換装置100は、ACバスバー115を流れる電流を検出するための電流センサ119を有する。
【0050】
DCバスバー111は、高電圧バッテリ200から直流電流を受け付ける。また、モータMが発電機として駆動する場合は、DCバスバー111は、高電圧バッテリ200に向けて直流電流を送り出す。フィルタ112は、EMC対策部品であり、ノイズの除去等を行う。フィルタ112は、DCバスバー111と電気的に接続されている。ここで、電気的に接続とは、電磁誘導や容量結合を介した接続を含む。本実施形態においては、フィルタ112に、DCバスバー111を挿通させる筒状を有してDCバスバーと直接接触はせずに電磁誘導的に接続されたフェライトコアが用いられている。なお、フィルタ112には、コイルやフェライトビーズ、EMC対策用のトランス、Xコンデンサ、Yコンデンサが用いられてもよい。平滑コンデンサ113は、直流電流を平滑化するコンデンサである。平滑コンデンサ113は、フィルタ112と電気的に接続されている。パワーモジュール114は、直流電流を交流電流に変換するための主たる部品である。パワーモジュール114は、半導体素子によって構成されている。具体的に、パワーモジュール114は、U・V・Wの各層にそれぞれ対応する部分を含み、各部分は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Filed Effect Transistor)等のパワー半導体を含む複数のICを組み合わせて構成されている。パワーモジュール114は、平滑コンデンサ113に電気的に接続されている。
【0051】
ACバスバー115は、パワーモジュール114と電気的に接続されている。ACバスバー115は、パワーモジュール114により生成された交流電流をモータMに伝達する。また、モータMが発電機として駆動する場合は、ACバスバー115は、モータMから交流電流を受け付けてパワーモジュール114に伝達する。ACバスバー115は、パワーモジュール114のU層に対応する部分に接続されたU層ACバスバー120と、パワーモジュール114のV層に対応する部分に接続されたV層ACバスバー130と、パワーモジュール114のW層に対応する部分に接続されたW層ACバスバー140とを備える。
【0052】
高電圧バッテリ200から出力された直流電流は、DCバスバー111を介してフィルタ112に入力されてノイズの除去等が行われる。ノイズ除去後の直流電流は、平滑コンデンサ113に入力されて、平滑コンデンサ113にて平滑化される。そして、平滑化された直流電流は、パワーモジュール114にて三層の交流電流に変換され、ACバスバー115介してモータMに供給される。また、モータMが発電機として駆動する場合は、モータMで生成された交流電流が、ACバスバー115を介してパワーモジュール114に入力されて、パワーモジュール114において直流電流に変換される。そして、生成された直流電流は、平滑コンデンサ113およびフィルタ112を通過した後、DCバスバー111を介して高電圧バッテリ200に充電される。
【0053】
制御回路基板116は、パワーモジュール114を制御する。具体的に、制御回路基板116は、パワーモジュール114の各ICを制御して直流電流と交流電流の変換量などを変更する。車両Vには、モータMおよびエンジンEを含む車両Vの各部を統括的に制御するコントローラであるPCM400が搭載されている。制御回路基板116は、PCM400およびパワーモジュール114と電気的に接続されており、PCM400からの指令信号に基づいてパワーモジュール114の各ICに対して制御信号を送信する。つまり、PCM400は、制御回路基板116ひいては電力変換装置100と通信して、制御回路基板116に対してパワーモジュール114を制御するための信号を送信する。また、PCM400は、制御回路基板116を介して後述する電流センサ119からの信号も受け付ける。なお、PCM400は、演算を行うプロセッサ(CPU)と、ROM及びRAM等のメモリーと、各種の入出力バスと、を含むマイクロコンピュータを要部とする装置である。PCM400は、本発明の「通信装置」に相当する。
【0054】
筐体101ひいては電力変換装置100は、エンジン本体1の左側、且つ、ハウジング20の上方に配設されている。筐体101は、ハウジング20に支持部材29を介して支持されている。本実施形態では、筐体101ひいては電力変換装置100の上方、且つ、エンジン本体1の左側に低電圧バッテリ300が配設されている。具体的に、低電圧バッテリ300は、その右側部分が、平面視で(上方から見たときに)筐体101の後側且つ左側部分と重複する位置に配設されている。また、低電圧バッテリ300は、左右方向に沿って見たときに、そのほぼ全体がエンジン本体1と重複する位置に配設されている。なお、低電圧バッテリ300は、これを下方から支持するバッテリ支持部材301および車両Vの車体に固定されたバッテリブラケット302を介して上記の位置に保持されている。
【0055】
筐体101は、所定の方向に延びる箱状部材である。筐体101は、平面視での外形が前後方向に延びる略長方形状となる姿勢でエンジン本体1の左側に配設されている。筐体101は、その上部を構成する第1収容部104と、第1収容部104の前端部から下方に突出する第2収容部105とを有する。第1収容部104は、前後方向に延びる略直方体の第1空間C1を区画しており、第2収容部105は、第1空間C1の前端部と連通して上下方向に延びる略直方体の第2空間C2を区画している。
【0056】
筐体101は、上方に開口する金属製の筐体本体102と、筐体本体102の上面の開口部分に固定される上蓋103とを有する。上記の第1収容部104は、筐体本体102の上部と上蓋103とによって構成されており、第2収容部105は、筐体本体102によって構成されている。
【0057】
筐体101は、ハウジング20のうちモータハウジング22およびアクスルハウジング23の上方に配設されている。筐体101は、第2収容部105の位置が、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の外周面の上端部の位置から前側にずれた状態で、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上方に配設されている。つまり、上記のように、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上部の外周面は、上方に膨出するように湾曲しており、第2収容部105は、湾曲しているこれらモータハウジング22およびアクスルハウジング23の上部の外周面の頂部から前側にずれた位置に配設されている。
【0058】
筐体101は、第1収容部104の底面が、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上端部のわずかに上方の位置を通って前後方向に延びるように配設されている。これより、第1収容部104の底面と、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上端部との上下方向の離間距離は小さく抑えられている。また、これらの離間距離は、第2収容部105の上下方向の長さよりも十分に小さい寸法に抑えられている。これより、第2収容部105は、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の外周面の前方に位置しており、上下方向について、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上端部からわずかに上方の位置から当該上端部よりも下方の位置まで延びている。
【0059】
前後方向について、筐体101は、その前後方向の中央と、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の上端部の位置とが略同じとなるように配設されている。また、筐体101は、モータハウジング22およびアクスルハウジング23の前端よりも前側の位置から後方に延びている。ただし、筐体101は、フロントカバー21の前端よりも後方に配設されており、筐体101の前端位置はフロントカバー21の前端つまりハウジング20の前端位置よりも後側となっている。
【0060】
上下方向について、筐体101は、特定機器70よりも下側の位置に配設されている。つまり、特定機器70は、上下方向について、モータハウジング22およびアクスルハウジング23から上方に離間した位置に配設されており、筐体101は、上下方向についてモータハウジング22およびアクスルハウジング23と特定機器70との間に配設されている。
【0061】
また、筐体101は、平面視で、その一部が特定機器70と重複する位置に配設されている。具体的に、筐体101は、前後方向の中央において左右方向に突出する形状を有する。つまり、筐体101は、上方から見た形状に基づいて筐体101を区分けした場合に、前端部を構成する前側収容部104Aと、後端部を構成する後側収容部104Bと、前側収容部104Aと後側収容部104Bの間に位置する中央収容部104Cとを有する。中央収容部104Cは、前側収容部104Aおよび後側収容部104Bよりも左右方向の寸法が大きく、前側収容部104Aおよび後側収容部104Bに対して左右方向の外側に膨出する形状を有する。モータハウジング22およびアクスルハウジング23と、特定機器70との間には、筐体101のうちこの中央収容部104Cの右側端部が配設されており、この中央収容部104Cの右側端部と特定機器70とが平面視で重複している。なお、上記の第2収容部105は、前側収容部104Aの下部と中央収容部104Cの前側部分の下部とで構成されている。上記の中央収容部104Cは、請求項の「膨出部」に相当する。
【0062】
筐体101の上面には、上方に突出する3つの通信用コネクタ190が設けられている。3つの通信用コネクタ190は、左右方向に並設されている。通信用コネクタ190は、PCM400から延びるワイヤハーネス401が連結される部分であり、ワイヤハーネス401を介してPCM400と電気的に接続される。筐体101の内側において通信用コネクタ190と制御回路基板116とは電気的に接続されており、通信用コネクタ190に上記のワイヤハーネス401が連結されることで、制御回路基板116は、通信用コネクタ190およびワイヤハーネス401を介してPCM400と電気的に接続される。
【0063】
また、筐体101には、パワーモジュール114等を冷却するための冷却構造が設けられている。具体的に、筐体101の下部には冷却水を流通させるための冷却通路108が形成されている。また、筐体101の下部には、冷却通路108と連通してこれに冷却水を導入・導出するための冷却水出入口部108A,108Bが設けられている。
【0064】
DCバスバー111は、板状を有しており、略水平に延びる姿勢で第1収容部104の後端に配設されている。筐体本体102の後端部には、筐体101の内外を連通する貫通孔109が形成されている。この貫通孔109を通じて高電圧バッテリ200に電気的に接続されたバスバー(不図示)とDCバスバー111とが連結されることで、DCバスバー111ひいては電力変換装置100と高電圧バッテリ200とは電気的に接続される。
【0065】
フィルタ112は、略直方体の外形を有する。フィルタ112は、左右方向に延びる姿勢でDCバスバー111の前方に配設されている。フィルタ112とDCバスバー111とは、これらの間に配設された第1連結用バスバー105Aによって互いに接続されている。
【0066】
平滑コンデンサ113は、略直方体の外形を有する。平滑コンデンサ113は、平面視で略正方形状を有する。つまり、平滑コンデンサ113は、略正方形状の上面および底面を有する。平滑コンデンサ113は、その上面(および底面)の2つの辺が前後方向について互いに略平行となる姿勢でフィルタ112の前方に配設されている。フィルタ112と平滑コンデンサ113とは、これらの間に配設された第2連結用バスバー105Bによって互いに接続されている。
【0067】
パワーモジュール114は、全体として略直方体の外形を有する。パワーモジュールは、全体として左右方向に延びる姿勢でフィルタ112の前方に配設されている。平滑コンデンサ113とパワーモジュール114とは、これらの間に配設された第3連結用バスバー105Cによって互いに接続されている。パワーモジュール114は、そのU層に対応する部分と、V層に対応する部分と、W層に対応する部分とが、左右方向に並ぶ姿勢でフィルタ112の前方に配設されている。
【0068】
DCバスバー111、フィルタ112および平滑コンデンサ113は、第1収容部104の内側に収容されている。上記のように、DCバスバー111、フィルタ112および平滑コンデンサ113は、第1収容部104の内側において後方から前方に向かってこの順で並んでいる。また、筐体101を、上記の前側収容部104A、後側収容部104Bおよび中央収容部104Cで区分けした場合には、DCバスバー111とフィルタ112とは、前側収容部104Aの内側に収容されており、平滑コンデンサ113とパワーモジュール114は、中央収容部104Cの内側に収容されている。
【0069】
制御回路基板116は、略板状の部材であって略長方形の外形を有する。制御回路基板116は、略水平に且つ左右方向に延びる姿勢で第1収容部104の内側に収容されている。また、筐体101を、上記の前側収容部104A、中央収容部104Cおよび後側収容部104Bで区分けした場合には、制御回路基板116は、中央収容部104Cの内側に収容されている。
【0070】
制御回路基板116は、パワーモジュール114の上方に配設されている。制御回路基板116は、パワーモジュール114の略全体を上方から覆い、且つ、平面視でパワーモジュール114から右側に突出するように配設されている。具体的に、制御回路基板116の長手方向(左右方向)の長さは、パワーモジュール114の上面(および底面)の各辺の長さよりも長い寸法に設定されている。制御回路基板116は、前後方向について、制御回路基板116の前縁とパワーモジュール114の前縁とがほぼ同じ位置となり、制御回路基板116の後縁とパワーモジュール114の後縁とがほぼ同じ位置となるように、且つ、左右方向について、制御回路基板116の左縁とパワーモジュール114の左縁とがほぼ同じ位置となる一方、制御回路基板116の右縁がパワーモジュール114の右縁よりも右側に位置するように配設されている。
【0071】
制御回路基板116は、中央収容部104C内に、その左右方向の全体にわたって延びるように配設されている。これより、中央収容部104Cの右端部の内側には、制御回路基板116の右端部が位置しており、中央収容部104Cの右端部は中央収容部104Cの右端部と同様に、特定機器70と平面視で重複している。
【0072】
図10は、ACバスバー115および上記のバスバー挿入部25の周辺構造を示した概略斜視図である。
図11は、ACバスバー115を分解して示した概略斜視図である。
【0073】
ACバスバー115は、3つのバスバーで構成されている。具体的に、U層ACバスバー120、V層ACバスバー130、W層ACバスバー140は、それぞれ、パワーモジュール114に接続された第1バスバー121,131,141、第1バスバー121,131,141に接続された第2バスバー122,132,142、および第2バスバー122,132,142に接続された第3バスバー123,133,143を有する。
【0074】
第1バスバー121,131,141は、それぞれ、パワーモジュール114に接続されてこれから前方に延びる第1部位121A,131A,141Aと、第1部位121A,131A,141Aの前端から下方に延びる第2部位121B,131B,141Bとを有する。各第1バスバー121,131,141において、第1部位121A,131A,141Aと第2部位121B,131B,141Bとは互いに一体に形成されている。例えば、各第1バスバー121,131,141において、第1部位121A,131A,141Aと第2部位121B,131B,141Bとは、板状の金属部材が折り曲げられることで形成されている。
【0075】
第1部位121A,131A,141Aは、それぞれ板状を有し、略水平に延びる姿勢でパワーモジュール114から前方に延びている。上記のように、パワーモジュール114のU層,V層,およびW層にそれぞれ対応する部分は左右方向に並んでいる。これに対応して、第1バスバー121,131,141の第1部位121A,131A,141Aは、左右方向について互いに平行に並んでいる。本実施形態では、パワーモジュール114のU層に対応する部分およびこれに接続されたU層の第1部位121A、パワーモジュール114のV層に対応する部分およびこれに接続されたV層の第1部位131A、およびパワーモジュール114のW層に対応する部分およびこれに接続されたW層の第1部位141Aは、この順で左側から並んでいる。
【0076】
第2バスバー122,132,142は、それぞれ板状を有する。第2バスバー122,132,142は、上下方向についてパワーモジュール114から下方に離間した位置に、左右方向および略水平に延びる姿勢で配設されている。第2バスバー122,132,142は、前後方向に並んでいる。前後方向について、最も後側の第2バスバーは、その前縁が、対応する第1バスバーの第1部位の前縁よりも後方に位置するように配設されている。本実施形態では、第2バスバー122,132,142は、後側からW層、U層、V層の順で並んでおり、W層ACバスバー140の第2バスバー142の前縁は、W層ACバスバー140の第1部位141Aの前縁よりも後側に位置している。
【0077】
第2バスバー122,132,142は、バスバー連結部材170によって互いに平行な姿勢で保持されている。バスバー連結部材170は、前後方向および左右方向に延びる絶縁性部材である。第2バスバー122,132,142の右側部分は、バスバー連結部材170にそれぞれ差し込まれており、これにより3つの第2バスバー122,132,142はバスバー連結部材170に保持されている。
【0078】
第1バスバー121,131,141の第2部位121B、131B、141Bは、対応する第1部位121A,131A,141Aの前端と、対応する第2バスバー122,132,142の左端部とにわたって上下方向に延びている。ここで、上記のように、W層ACバスバー140の第2バスバー142の前縁は、W層ACバスバー140の第1部位141Aの前縁よりも後側に位置している。これより、W層ACバスバー140の第2部位141Bは、その上下方向の途中部において後方に向かうように折り曲げられている。
【0079】
第2部位121B,131B,141Bの下端部と第2バスバー122,132,142の左端部とは、ボルトおよびナットによって連結される。なお、
図10等では、これらを連結するボルトおよびナットの図示は省略している。
【0080】
第3バスバー123,133,143は、それぞれ板状を有し、略水平に延びる姿勢で第2バスバー122,132,142の右端から右方に延びている。第3バスバー123,133,143は、第2バスバー122,132,142に対応して、後側からW層、U層、V層の順で並んでいる。
【0081】
本実施形態では、第3バスバー123,133,143は、モータ側コネクタ180によって互いに平行な姿勢で保持されている。モータ側コネクタ180は、左右方向に延びる略円筒状を有して上記のバスバー連結部材170を囲む囲み部181、囲み部181の右端に固定されて囲み部181の外周面からこれの径方向の外側に延びる鍔部182、および囲み部181の内側に固定されて左右方向に延びるバスバー保持部183を有する。バスバー保持部183には、前後方向に並ぶ3つの空間が区画されており、各空間内にそれぞれ第3バスバー123,133,143が固定されている。本実施形態では、囲み部181の内側にバスバー連結部材170が挿入されることで、囲み部181およびバスバー連結部材170の内側において、第3バスバー123,133,143と、対応する第2バスバー122,132,142とがそれぞれ電気的に接続される。
【0082】
第1バスバー121,131,141の第1部位121A,122A,132Aは、第1収容部104内に配設されている。一方、第2バスバー122,132,142は、第2収容部105内に配設されており、第1バスバー121,131,141と第2バスバー122,132,142とをつなぐ第1バスバー121,131,141の第2部位121B,131B,141Bは、第1収容部104と第2収容部105とにわたって上下方向に延びている。つまり、第2部位121B,131B,141Bの上側部分は第1収容部104内に配設されており、下側部分は第2収容部105内に配設されている。
【0083】
第3バスバー123,133,143は、筐体101から外方に突出する状態で筐体101に保持されている。
【0084】
具体的に、筐体101の右側面の前端部の下部であって第2収容部105の右側面の下部を構成する部分には、右方に突出するバスバー保持部106が設けられている。バスバー保持部106には、第2収容部105の内側空間(第2空間C2)と連通する左右方向に延びる貫通孔106Aが形成されている。モータ側コネクタ180は、鍔部182がバスバー保持部106の右側に位置し、且つ、囲み部181がバスバー保持部106の貫通孔106Aに挿通された状態で筐体101に保持されている。これより、第3バスバー123,133,143の右側端部、つまり、ACバスバー115のモータM側の端部は、筐体101の右側面の前端部の下部から右側に突出している。
【0085】
第3バスバー123,133,143の右側端部、つまり、ACバスバー115のモータM側の端部は、バスバー挿入部25に挿入されて、バスバー挿入部25の内側においてモータMと電気的に接続される。具体的に、バスバー挿入部25の内側には、モータMの各相のコイルと電気的に接続された3つのバスバーが配設されている。バスバー挿入部25の内側で、これらモータM側の各相に対応するバスバーと、ACバスバー115の各相に対応するバスバーの端部が締結されることで、ACバスバー115ひいては電力変換装置100とモータMとは電気的に接続される。ここで、上記のように、バスバー挿入部25の開口部25Aは、バスバー挿入部25の左側面において左方に開口している。これより、ACバスバー115のモータM側の端部は、バスバー挿入部25の内側に左方から挿入される。
【0086】
ここで、上記のように、バスバー保持部106は、筐体101の右側面から右方に突出している。ただし、
図3に示すように、バスバー保持部106の右端は、中央収容部104Cの右端よりも左側に位置している。換言すると、左右方向について、中央収容部104Cは、バスバー保持部106よりも右側に膨出する形状を有する。
【0087】
(作用等)
以上のように、上記実施形態では、平滑コンデンサ113およびパワーモジュール114が前後方向に並んでいる。そのため、これらが占める空間の上下方向および左右方向の寸法、ひいては、これらを収容する部分(第1収容部104)の上下方向および左右方向の寸法を小さくできる。
【0088】
特に、上記実施形態では、平滑コンデンサ113と、パワーモジュール114と、さらに、DCバスバー111と、フィルタ112とが、前後方向に並んでいるため、これら4つの要素が占める空間およびこれらを収容する部分(第1収容部104)の上下方向および左右方向の寸法を小さくできる。また、DCバスバー111、フィルタ112、平滑コンデンサ113およびパワーモジュール114が、この順で並んでいる。つまり、電力が受け渡される順と、これらの並び順とが同じとされている。そのため、電力の受け渡しを行う要素どうしの距離を短く抑えて、インダクタンスおよびインピーダンスを小さくできる。具体的に、DCバスバー111とフィルタ112とをつなぐ第1連結用バスバー105A、フィルタ112と平滑コンデンサ113とをつなぐ第2連結用バスバー105B、および平滑コンデンサ113とパワーモジュールとをつなぐ第3連結用バスバー105Cの前後方向の長さを短く抑えて、インダクタンスおよびインピーダンスを小さくできる。
【0089】
また、筐体101の上面101Aに通信用コネクタ190が設けられている。そのため、車両の前突、後突あるいは側突時に衝突物等が前後方向あるいは左右方向に沿って通信用コネクタ190に衝突するのを抑制でき、電力変換装置100とPCM400との通信が断絶するのを防止できる。
【0090】
また、制御回路基板116およびパワーモジュール114が通信用コネクタ190の下方にこれと平面視で重複する状態で配設されている。そのため、通信用コネクタ190と制御回路基板116をつなぐ部材および制御回路基板116とパワーモジュール114とをつなぐ部材を短くできる。
【0091】
また、エンジン本体1の左側面1Aから左側に突出するように設けられた特定機器70と、モータハウジング22およびアクスルハウジング23との間の隙間に、筐体101の中央収容部104Cの一部が配設されている。そのため、特定機器70と中央収容部104Cつまり筐体101ひいては電力変換装置100とを、ハウジング22,23の上方にコンパクトに配置でき、ハウジング22,23周囲のレイアウト性を高めることができる。
【0092】
特に、上記実施形態では、制御回路基板116として、パワーモジュール114よりも長尺な制御回路基板116が用いられて、この制御回路基板116が平面視でパワーモジュールよりも右方に延びる状態で中央収容部104Cに収容されており、上記の隙間が制御回路基板116の配置空間として利用されている。そのため、制御回路基板116として長尺な基板を用いつつ、筐体101の位置をよりエンジン本体1に近づけて、エンジン本体1の周囲の空間を効率よく利用することができる。
【0093】
また、通信用コネクタ190が特定機器70と平面視で重ならない位置に配置されていることで、通信用コネクタ190への上方からのアクセスが容易となっている。そのため、電力変換装置100の組付け時に、PCM400から延びるハーネス等を通信用コネクタ190に容易に接続することができ、組付け時の作業効率を高めることができる。
【0094】
また、ハウジング20に設けられたバスバー挿入部25にACバスバー115が左方から挿入される、つまり、左右方向に沿って挿入されるように構成されている。すなわち、パワートレインユニットPTの組立時に、電力変換装置100を左右方向に沿って移動させることでACバスバー115をバスバー挿入部25に挿入して電力変換装置100とハウジング20ひいてはモータMとを連結できるようになっている。そのため、ACバスバー115をバスバー挿入部25に挿入して電力変換装置100とモータMとを連結するために電力変換装置100の周囲に確保すべき作業スペースの上下方向の寸法を小さく抑えることができる。従って、電力変換装置100と特定機器70の間の上下方向の隙間寸法を小さくすることができ、電力変換装置100と特定機器70の容積を確保できる。
【0095】
(変形例)
上記実施形態では、ハウジング20がエンジン本体1の左側に配設される場合を説明したが、ハウジング20はエンジン本体1の右側に配設されてもよい。また、ハウジング20とエンジン本体1とは前後方向に並ぶように配設されてもよい。なお、ハウジング20とエンジン本体1とが前後方向(車両の前後方向)に並設される場合は、前後方向が請求項の「第1方向」に相当し、左右方向(車幅方向)が請求項の「第2方向」に相当する。
【0096】
上記実施形態では、エンジン本体1の左側面1Aから左側に突出するように設けられる特定機器707が、EGRクーラ7A、EGRクーラ接続部7B、EGRバルブユニット7Cおよび燃料ポンプ8である場合を説明したが、特定機器はこれらに限られない。
【0097】
上記実施形態では、電力変換装置100の上方に低電圧バッテリ300が配設される場合を説明したが、低電圧バッテリ300に代えてエアフィルタが配設されてもよい。
【0098】
上記実施形態では、通信用コネクタ190と電気的に接続されて電力変換装置100と通信を行う装置がPCM400である場合を説明したが、この通信装置はPCM400に限られない。
【符号の説明】
【0099】
1 エンジン本体
7A EGRクーラ(突出部)
7B EGRクーラ接続部(突出部)
7C EGRバルブユニット(突出部)
8 燃料ポンプ(突出部)
20 ハウジング
21 フロントカバー
22 モータハウジング
23 アクスルハウジング
70 特定機器(突出部)
100 電力変換装置
101 筐体
104A 前側収容部
104C 中央収容部(膨出部)
104B 後側収容部
106 バスバー保持部
113 平滑コンデンサ
114 パワーモジュール
116 制御回路基板
115 ACバスバー
400 PCM(通信装置)
M モータ
E エンジン