IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アクチュエータ 図1
  • 特開-アクチュエータ 図2
  • 特開-アクチュエータ 図3
  • 特開-アクチュエータ 図4
  • 特開-アクチュエータ 図5
  • 特開-アクチュエータ 図6
  • 特開-アクチュエータ 図7
  • 特開-アクチュエータ 図8
  • 特開-アクチュエータ 図9
  • 特開-アクチュエータ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179857
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099107
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA16
5D107BB08
5D107CC09
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】アクチュエータの支持体を組み立てるための部品や資材の管理コストを低減させ、溶接に伴う不具合を回避し、アクチュエータの小型化を図る。
【解決手段】アクチュエータ1は、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20を第1方向Zに積層した支持体2と、可動体3と、可動体3を支持体2に対して第2方向Xに駆動する磁気駆動回路4を備える。可動体3と支持体2を接続する接続体9は、可動体3と支持体2とが第1方向Zに対向する箇所に挟まれ、第1方向Zに圧縮される。第1ケース部材10は、直方体状の支持体2の対角位置2a、2bにおいて第2ケース部材20に向けて突出する一対のフック14を備える。フック14の先端に設けられた係止爪140は、コイルホルダ30を貫通し、第2ケース部材20のフック用係止穴24の縁に係止される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および可動体と、前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える接続体と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、
前記磁気駆動回路は、前記支持体に設けられたコイルと、前記可動体に設けられて前記コイルに第1方向で対向する磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、
前記支持体は、コイル配置穴が設けられた樹脂製のコイルホルダと、
前記コイルホルダに前記第1方向の一方側から重なる樹脂製の第1ケース部材と、
前記コイルホルダに前記第1方向の他方側から重なる樹脂製の第2ケース部材と、を備え、
前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、前記ヨークは、前記コイルホルダと前記第1ケース部材との間に配置される第1板部、前記コイルホルダと前記第2ケース部材との間に配置される第2板部、および、前記第1板部と前記第2板部の両端を接続する一対の連結板部を備え、
前記接続体は、前記第1ケース部材と前記第1板部との間、および、前記第2ケース部材と前記第2板部との間の2箇所において前記第1方向に圧縮された状態で挟まれ、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材の一方は、前記コイルに対して前記第1方向と交差する方向で反対側に位置する一対の第1固定位置において前記第1ケース部材と前記第2ケース部材の他方に向けて突出する一対のフックを備え、
前記フックの先端は、前記他方を前記第1方向に貫通するフック用係止穴から前記第1方向の他方側へ突出して前記フック用係止穴の縁に係止されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記コイルホルダは、
前記第1方向の一方側へ突出して前記第1ケース部材に設けられた第1圧入穴に圧入される第1圧入ピンと、
前記第1方向の一方側へ突出して前記第1ケース部材に設けられた第1位置決め穴に挿入される第1位置決めピンと、を備え、
前記第1圧入穴と前記第1位置決め穴は、前記コイルに対して反対側に位置し且つ前記一対の第1固定位置とは異なる一対の第2固定位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記コイルホルダは、
前記第1方向の他方側へ突出して前記第2ケース部材に設けられた第2圧入穴に圧入される第2圧入ピンと、
前記第1方向の他方側へ突出して前記第2ケース部材に設けられた第2位置決め穴に挿入される第2位置決めピンと、を備え、
前記第2圧入穴と前記第2位置決め穴は、前記一対の第2固定位置と前記第1方向で重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記支持体の外形は直方体状であり、
前記一対の第1固定位置および前記一対の第2固定位置は、前記支持体の対角位置であることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1圧入ピンおよび前記第1位置決めピンは、接着剤により前記第1ケース部材に固定され、
前記第2圧入ピンおよび前記第2位置決めピンは、接着剤により前記第2ケース部材に固定されることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1ケース部材は、前記第1方向の他方側へ突出する前記フックを備え、
前記第2ケース部材は、前記第1方向の一方側へ凹むピン収容凹部を備え、前記第2圧入穴および前記第2位置決め穴は、前記ピン収容凹部の底面に開口し、
前記第2圧入ピンおよび前記第2位置決めピンの先端部は、前記ピン収容凹部の内側に突出することを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1ケース部材は、前記第1方向の他方側へ突出する前記フックを備え、
前記第2ケース部材は、前記第1方向の一方側へ凹むフック収容凹部を備え、前記フック用係止穴は、前記フック収容凹部の底面に開口し、
前記フックの先端に設けられた係止爪は、前記フック収容凹部に収容されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持体および可動体と、可動体を支持体に接続する接続体と、可動体を支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路を有するアクチュエータが記載される。特許文献1のアクチュエータは、支持体が直方体形状をしており、支持体の内部に可動体および磁気駆動回路が収容される。可動体は、支持体の長手方向に振動する。
【0003】
特許文献1の支持体は、磁気駆動回路のコイルを保持するホルダと、ホルダに下側から重なる第1ケース部材と、ホルダに上側から重なる第2ケース部材を備える。ホルダ、第1ケース部材、および第2ケース部材を重ねた状態で、対角方向の2箇所の角部をネジで締結することにより、支持体が組み立てられている。ホルダ、第1ケース部材、および第2ケース部材は、重なり合う部分に形成された凹凸を嵌合させることによって互いに位置決めされた状態で連結されている。
【0004】
アクチュエータの支持体として、樹脂製のケース部材をホルダに積層して組み立てる構成とは異なる構成として、金属製の外装ケースによってホルダを外側から覆う構成が提案されている。例えば、樹脂製のホルダに下側から被さる板金製の第1ケース部材と、ホルダに上側から被さる板金製の第2ケース部材を溶接することにより、支持体が組み立てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-092497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂製のケース部材をネジにより締結して支持体を組み立てる構造は、ネジを必要とするため部品点数が多く、組立時の工程数も多い。また、締結箇所にネジ穴を形成するスペースが必要である。従って、アクチュエータの小型化には限界がある。
【0007】
ネジを用いずに、ケース部材をホルダに対して接着剤により固定して組み立てることもできるが、接着剤を使用する場合、接着剤の保管条件、硬化条件や接着箇所の表面汚染などにより接着強度のばらつきが大きい。従って、管理コストが上昇するという問題がある。
【0008】
金属製のケース部材を溶接して支持体を組み立てる構造は、部品の厚さを薄くでき、ネジ穴が不要であるため、アクチュエータの小型化には有利である。しかしながら、溶接を行うための設備が必要であり、溶接の際に金属粒が飛散して支持体の内部に入り込むと可動体の動作不具合の原因になるおそれがある。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、アクチュエータの支持体を組み立てるための部品や資材の管理コストが低く、溶接に伴う製品の不具合を回避でき、アクチュエータの小型化に有利な構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体および可動体と、前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える接続体と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、前記磁気駆動回路は、前記支持体に設けられたコイルと、前記可動体に設けられて前記コイルに第1方向で対向する磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、前記支持体は、コイル配置穴が設けられた樹脂製のコイルホルダと、前記コイルホルダに前記第1方向の一方側から重なる樹脂製の第1ケース部材と、前記コイルホルダに前記第1方向の他方側から重なる樹脂製の第2ケース部材と、を備え、前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、前記ヨークは、前記コイルホルダと前記第1ケース部材との間に配置される第1板部、前記コイルホルダと前記第2ケース部材との間に配置される第2板部、および、前記第1板部と前記第2板部の両端を接続する一対の連結板部を備え、前記接続体は、前記第1ケース部材と前記第1板部との間、および、前記第2ケース部材と前記第2板部との間の2箇所において前記第1方向に圧縮された状態で挟まれ、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材の一方は、前記コイルに対して前記第1方向と交差する方向で反対側に位置する一対の第1固定位置において前記第1ケース部材と前記第2ケース部材の他方に向けて突出する一対のフックを備え、前記フックの先端は、前記他方を前記第1方向に貫通するフック用係止穴から前記第1方向の他方側へ突出して前記フック用係止穴の縁に係止されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、アクチュエータの筐体(支持体)を組み立てる際、第1ケース部材と第2ケース部材の間にコイルホルダを挟み込んで、一方のケース部材に設けたフックの先端を他方のケース部材に設けたフック用係止穴の縁に係止して、スナップフィット構造により結合する。各ケース部材は、ヨークとの間に挟まれた圧縮状態の接続体によって反対側に付勢されるため、フックの先端はフック用係止穴の縁に弾性的に係止される。このようにすると、支持体を構成する部品を結合するためにネジや接着剤を用いる必要がなく、溶接も行わないので、組立用の部品の部品や資材の管理コストが低く、溶接に伴う製品の不具合を回避できる。また、ネジ穴を設けるよりもスペースが少なくて済むため、アクチュエータの小型化に有利である。
【0012】
本発明において、前記コイルホルダは、前記第1方向の一方側へ突出して前記第1ケース部材に設けられた第1圧入穴に圧入される第1圧入ピンと、前記第1方向の一方側へ突出して前記第1ケース部材に設けられた第1位置決め穴に挿入される第1位置決めピンと、を備え、前記第1圧入穴と前記第1位置決め穴は、前記コイルに対して反対側に位置し且つ前記一対の第1固定位置とは異なる一対の第2固定位置に設けられていることが好ましい。このように、フックにより結合されない位置にピンと穴を圧入もしくは嵌合させる構造を設けることにより、コイルホルダに対する第1ケース部材の位置決めを行うことができる。特に、ピンの一方は圧入される構造とし、他方は圧入ではなく対角方向に遊びがある状態で嵌合する構造としているので、精度良く、且つ、容易に位置決めを行うことができる。
【0013】
本発明において、前記コイルホルダは、前記第1方向の他方側へ突出して前記第2ケース部材に設けられた第2圧入穴に圧入される第2圧入ピンと、前記第1方向の他方側へ突出して前記第2ケース部材に設けられた第2位置決め穴に挿入される第2位置決めピンと、を備え、前記第2圧入穴と前記第2位置決め穴は、前記一対の第2固定位置と前記第1方向で重なる位置に設けられていることが好ましい。フックにより結合されない位置にピンと穴を圧入もしくは嵌合させる構造を設けることにより、コイルホルダに対する第2ケース部材の位置決めを行うことができる。特に、ピンの一方は圧入される構造とし、他方は圧入ではなく対角方向に遊びがある状態で嵌合する構造としているので、精度良く、且つ、容易に位置決めを行うことができる。
【0014】
本発明において、前記支持体の外形は直方体状であり、前記一対の第1固定位置および前記一対の第2固定位置は、前記支持体の対角位置であることが好ましい。このようにすると、直方体の一方の対角位置をフックにより固定し、他方の対角位置にピンによる位置決め構造を設けることができる。これにより、直方体状に組み立てる部品同士を精度良く位置決めできるとともに、強固に結合することができる。
【0015】
本発明において、前記第1圧入ピンおよび前記第1位置決めピンは、接着剤により前記第1ケース部材に固定され、前記第2圧入ピンおよび前記第2位置決めピンは、接着剤により前記第2ケース部材に固定されることが好ましい。このようにすると、支持体を構成する部品同士の固定強度を高めることができる。
【0016】
本発明において、前記第1ケース部材は、前記第1方向の他方側へ突出する前記フックを備え、前記第2ケース部材は、前記第1方向の一方側へ凹むピン収容凹部を備え、前記第2圧入穴および前記第2位置決め穴は、前記ピン収容凹部の底面に開口し、前記第2圧入ピンおよび前記第2位置決めピンの先端部は、前記ピン収容凹部の内側に突出することが好ましい。このようにすると、組立後にピン収容凹部からピンの周囲に接着剤を注入してピンを穴に固定することができる。従って、組立前に接着剤を塗布する必要がないので、組立容易性を高めることができる。
【0017】
本発明において、前記第1ケース部材は、前記第1方向の他方側へ突出する前記フックを備え、前記第2ケース部材は、前記第1方向の一方側へ凹むフック収容凹部を備え、前記フック用係止穴は、前記フック収容凹部の底面に開口し、前記フックの先端に設けられた係止爪は、前記フック収容凹部に収容されることが好ましい。このようにすると、フックの先端がアクチュエータの筐体表面から飛び出さないようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アクチュエータの筐体(支持体)を組み立てる際、支持体を構成する部品を結合するためにネジや接着剤を用いる必要がなく、溶接も行わないので、組立用の部品の部品や資材の管理コストが低く、溶接に伴う製品の不具合を回避できる。また、ネジ穴を設けるよりもスペースが少なくて済むため、アクチュエータの小型化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るアクチュエータの外観斜視図である。
図2図1のアクチュエータの分解斜視図である。
図3図1のアクチュエータのXZ断面図である。
図4】Z2方向から見た支持体の分解斜視図である。
図5】Z1方向から見た支持体の分解斜視図である。
図6】第1圧入ピンおよび第1位置決めピンの位置で切断したアクチュエータのXY断面図である。
図7】Z2方向から見たアクチュエータの平面図である。
図8】アクチュエータの組立工程(第1工程)の説明図である。
図9】アクチュエータの組立工程(第2工程)の説明図である。
図10】アクチュエータの組立工程(第3工程)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明に係るアクチュエータ1の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し
、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。本形態では、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yは、互いに直交する方向である。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明に係るアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1のアクチュエータ1の分解斜視図である。図3は、図1のアクチュエータ1のYZ断面図である。図4は、Z2方向から見た支持体2の分解斜視図である。図5は、Z1方向から見た支持体2の分解斜視図である。
【0022】
図1に示すように、アクチュエータ1は、全体として第2方向Xの寸法が第3方向Yの寸法および第1方向Zの寸法より大きい直方体形状である。図2図3に示すように、アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、磁気駆動回路4と、配線基板5とを備える。磁気駆動回路4は、第1方向Zに対向するコイル6および磁石7を備える。磁気駆動回路4は、可動体3を支持体2に対して第2方向Xに振動させる。コイル6は、支持体2のX2方向の側面に固定される配線基板5に接続される。
【0023】
アクチュエータ1は、支持体2と可動体3とに接続される接続体9を備える。可動体3は、接続体9を介して支持体2に支持される。後述するように、アクチュエータ1は、接続体9としてゲル状部材(粘弾性体)を用いる。
【0024】
アクチュエータ1は、可動体3が第2方向Xに振動することにより、アクチュエータ1や、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する利用者に情報を報知する。アクチュエータ1は、可動体3の第2方向Xの振動によって利用者に触覚を与える触覚デバイスとして使用することができる。アクチュエータ1は、例えば、ゲーム機の操作部材、操作パネル、自動車のハンドルやいす等に組み込んで利用することができる。
【0025】
(支持体)
図1に示すように、支持体2は、第1方向Zの一方側Z1から他方側Z2に順に重ねられた第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20を備える。図3に示すように、第1ケース部材10と第2ケース部材20との間に可動体3および磁気駆動回路4が配置される。本形態では、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20は各々、樹脂製である。
【0026】
図3図4に示すように、第1ケース部材10は、第2方向Xで並ぶ2つの凹部13が形成された第1端板部11と、第1端板部11の外周縁からZ2方向に延びる第1側板部12を備える。図3図5に示すように、第2ケース部材20は、第2方向Xで並ぶ2つの凹部23が形成された第2端板部21と、第2端板部21の外周縁からZ1方向に延びる第2側板部22を備える。
【0027】
図2図4に示すように、第1ケース部材10からは、第2ケース部材20に向かって2本のフック14がZ2方向に延びている。各フック14の先端には係止爪140が設けられている。後述するように、支持体2を組み立てる際には、コイルホルダ30を貫通させたフック14の係止爪140を第2ケース部材20に係止することにより、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20を結合する。
【0028】
図4図5に示すように、コイルホルダ30は、XY面に平行な板状の部材である。コイルホルダ30には、第1コイル配置穴31および第2コイル配置穴32が第2方向Xに並んで設けられている。第1コイル配置穴31および第2コイル配置穴32は、コイルホルダ30の第2方向Xの中央に設けられたコイル保持部33を第1方向Zに貫通する。コイルホルダ30には、第1コイル配置穴31のX1方向に矩形の開口部301が形成され
、第2コイル配置穴32のX2方向に矩形の開口部302が形成される。開口部301、302は、コイル保持部33の第2方向Xの両側を第1方向Zに貫通する。コイル保持部33のX1方向およびX2方向の端面からは、それぞれ、2箇所のプレート係止突起303が突出する。
【0029】
図4図5に示すように、支持体2は、コイルホルダ30およびコイル6にZ1方向から重ねられた金属製のプレート40を備える。後述するように、支持体2は、コイルホルダ30、プレート40、およびコイル6を組み立てたコイル組8を備える(図2図8参照)。プレート40は、コイル保持部33に重なる平板状のプレート本体41と、プレート本体41のX1方向およびX2方向の端縁からZ2方向に屈曲した一対の固定部42を備える。一対の固定部42には、それぞれ、プレート係止突起303が嵌まる2箇所の係止穴420が設けられている。
【0030】
(磁気駆動回路4)
磁気駆動回路4は、コイル6として、第1コイル61および第2コイル62を備える。図2に示すように、第1コイル61は、第1コイル配置穴31に配置される。第2コイル62は、第2コイル配置穴32に配置される。図4図5に示すように、コイル6は、第3方向Yに延在する2本の有効辺601を備える長円形状の空芯コイルである。コイル6の中央には、第3方向Yに延びる中央穴602が設けられている。
【0031】
磁石7は、コイル6の有効辺601と第1方向Zで対向する(図3参照)。図2図3に示すように、磁石7は、第1コイル61および第2コイル62の有効辺601にZ1方向から対向する2個の第1磁石71、72と、第1コイル61および第2コイル62の有効辺601にZ2方向から対向する2個の第2磁石73、74を備える。第1磁石71、72および第2磁石73、74は、第3方向Yで分極着磁される。本形態では、第1コイル61と第2コイル62は、同一のコイルである。また、第1磁石71、72、および第2磁石73、74は、全て同一の磁石である。
【0032】
なお、本形態では、コイル6に対して第1方向Zの両側に磁石7を配置しているが、磁気駆動回路4は、コイル6に対してZ方向にのみ、もしくはコイル6に対してZ2方向にのみ磁石7を配置した構成を採用してもよい。また、本形態では、コイル6と磁石7を第1方向Zで対向させた磁気駆動回路を2組備えているが、本発明は、磁気駆動回路を1組、あるいは3組以上備えたアクチュエータに適用できる。
【0033】
(可動体)
可動体3は、磁石7を保持するヨーク80を備える。図2図3に示すように、ヨーク80は、コイル保持部33に対してZ1方向から対向する第1板部81と、コイル保持部33に対してZ2方向から対向する第2板部82と、コイル保持部33の第2方向Xの両側において第1方向Zに延びて第1板部81と第2板部82とを接続する一対の連結板部83、84を備える。第1板部81のZ2方向の表面には、第1磁石71、72が第2方向Xに並んで固定される。第2板部82のZ1方向の表面には、第2磁石73、74が第2方向Xに並んで固定される。第1磁石71、72および第2磁石73、74は、接着等の方法でヨーク80に固定される。
【0034】
本形態では、ヨーク80は、第1板部81および第1板部81の第3方向Yの両端からZ2方向に屈曲した一対の連結板部83、84を備える第1ヨーク85と、第2板部82からなる第2ヨーク86の2部品を接合して製造される。図3に示すように、連結板部83は、第1コイル61に対してX1方向でコイルホルダ30の開口部301を通ってZ2方向に延びる。連結板部84は、第2コイル62に対してZ2方向でコイルホルダ30の開口部302を通ってZ2方向に延びる。一対の連結板部83、84のZ2方向の端部は
、溶接により第2板部82の第3方向Yの両端部に連結される。
【0035】
(接続体)
図3に示すように、接続体9は、支持体2と可動体3とが第1方向Zで対向する個所に配置される。可動体3は、接続体9によって第2方向Xに移動可能に支持される。本形態では、接続体9は、第1ヨーク85と第1ケース部材10とが第1方向Zで対向する個所に配置される第1接続体91、および、第2ヨーク86と第2ケース部材20とが第1方向Zで対向する個所に配置される第2接続体92を備える。
【0036】
第1接続体91は、第1ヨーク85の第1板部81と第1ケース部材10の凹部13の底面との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置される。本形態では、2個の第1接続体91が第2方向Xで並列して配置される。また、第2接続体92は、第2ヨーク86の第2板部82と第2ケース部材20の凹部23の底面との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置される。本形態では、2個の第2接続体92が第2方向Xで並列して配置される。
【0037】
接続体9は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。本形態では、接続体9は粘弾性体である。例えば、接続体9(粘弾性体)は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。また、粘弾性を備えた接続体9として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0038】
接続体9は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、接続体9は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。また、接続体9は、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。
【0039】
可動体3が第2方向Xに振動した際、接続体9は、せん断方向に変形する。従って、接続体9では、可動体3が第2方向Xに振動した際、せん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0040】
(支持体を構成する部品の結合方法)
図1に示すように、支持体2は、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20によって直方体形状の筐体を構成しており、アクチュエータ1の外装ケースとして機能する。第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20は、いずれも第1方向Zから見た場合に4箇所の角部を備える矩形状であり、4箇所の角部を積層した箇所を結合することによって一体に組み立てられている。4箇所の角部のうちで、第2方向Xにおいて反対側且つ第3方向Yにおいて反対側に位置する2箇所の対角位置2a、2bは、第1ケース部材10に設けたフック14により、スナップフィット構造によって結合される。他の2箇所の対角位置2c、2dは、ピンを穴に圧入もしくは嵌合した箇所を接着剤で固定することにより結合される。
【0041】
図4図5に示すように、コイルホルダ30の対角位置2a、2bには、第1ケース部材10のフック14を通すための貫通孔34が設けられている。また、コイルホルダ30の対角位置2cには、Z1方向に突出する第1圧入ピン35と、Z2方向に突出する第2圧入ピン37が設けられており、対角位置2dには、Z1方向に突出する第1位置決めピン36と、Z2方向に突出する第2位置決めピン38が設けられている。
【0042】
図4に示すように、第1ケース部材10には、第1側板部12における4箇所の角部に、それぞれ、内側へ張り出す張り出し部120が設けられている。フック14は、第1ケース部材10の対角位置2a、2bにおいて張り出し部120の先端面から突出する。コイルホルダ30の第1圧入ピン35が圧入される第1圧入穴15は、対角位置2cの張り出し部120の先端面に開口する。コイルホルダ30の第1位置決めピン36が嵌合する第1位置決め穴16は、対角位置2dの張り出し部120の先端面に開口する。
【0043】
図5に示すように、第2ケース部材20には、第2側板部22における4箇所の角部に、それぞれ、内側へ張り出す張り出し部220が設けられている。第1ケース部材10のフック14が係止されるフック用係止孔24は、対角位置2a、2bの張り出し部220を貫通する。コイルホルダ30の第2圧入ピン37が圧入される第2圧入穴27は、対角位置2cの張り出し部220の先端面に開口する。コイルホルダ30の第2位置決めピン38が篏合する第2位置決め穴28は、対角位置2dの張り出し部220の先端面に開口する。
【0044】
図1図4に示すように、フック用係止孔24は、第2ケース部材20の対角位置2a、2bに形成されたZ1方向に凹むフック収容凹部25の底面に開口する。フック14の係止爪140は、フック収容凹部25の内側に収容され、フック用係止孔24の縁に係止される。
【0045】
図1図4図7に示すように、第2圧入穴27および第2位置決め穴28は、第2ケース部材20の対角位置2c、2dに形成されたZ1方向に凹むピン収容凹部26の底面に開口する。第2圧入穴27に圧入された第2圧入ピン37の先端部、および、第2位置決め穴28に嵌合した第2位置決めピン38の先端部は、ピン収容凹部26に収容される。
【0046】
図6は、第1圧入ピン35および第1位置決めピン36の位置で切断したアクチュエータ1のXY断面図である。図6の領域Aの部分拡大図に示すように、第1圧入ピン35は、第1圧入穴15の内周面において等角度間隔で配置される3か所の凸部150によって、第1圧入穴15の中心に位置決めされる。一方、領域Bの部分拡大図に示すように、第1位置決め穴16の内周面には、対角位置2c、2dを結ぶ対角線Pを挟んで対向する2か所に凸部160が設けられており、第1位置決め穴16は、対角線Pに沿う対角方向に長い断面形状をしている。従って、第1位置決めピン36は、対角方向に移動可能な状態で、第1位置決め穴16に嵌合する。
【0047】
図7は、Z2方向から見たアクチュエータ1の平面図である。図7の領域Cの部分拡大図に示すように、第2圧入ピン37は、第2圧入穴27の内周面において等角度間隔で配置される3か所の凸部270によって、第2圧入穴27の中心に位置決めされる。一方、領域Dの部分拡大図に示すように、第2位置決め穴28の内周面には、対角線Pを挟んで対向する2か所に凸部280が設けられており、第2位置決め穴28は、第1位置決め穴16と同様に、対角線Pに沿う対角方向に長い断面形状をしている。従って、第2位置決めピン38は、対角方向に移動可能な状態で、第2位置決め穴28に嵌合する。
【0048】
(アクチュエータの組立方法)
図8図9図10は、アクチュエータ1の組立工程の説明図である。図8は第1工程の説明図である。図9は第2工程の説明図である。図10は第3工程の説明図である。まず、第1工程では、図8の上部に示すように、コイルホルダ30、第1コイル61、第2コイル62、およびプレート40からコイル組8を組み立てる。例えば、コイル保持部33にプレート本体41をZ1方向から積層し、コイル保持部33のX1方向およびX2方向の端面から突出するプレート係止突起303をプレート40の固定部42に設けられた係止穴420に嵌め込む。これにより、プレート40がコイルホルダ30に固定される。続いて、接着剤を入れた第1コイル配置穴31および第2コイル配置穴32にコイル6を配置してコイルホルダ30およびプレート40に固定する。
【0049】
また、第1工程では、図8の下部に示すように、第1ケース部材10、第1接続体91、第1ヨーク85、および第1磁石71、72を組み立てる。例えば、第1ケース部材10に設けられた2箇所の凹部13にそれぞれ第1接続体91を配置する(図2参照)。そして、第1板部81に第1磁石71、72を固定した第1ヨーク85を第1側板部12の内側に落とし込んで第1接続体91の上端面に載せる。これにより、第1接続体91によって第1ケース部材10と第1ヨーク85の第1板部81とが接続される。
【0050】
次に、第2工程では、図9に示すように、第1ヨーク85とコイル組8とを組み立てる。このとき、コイルホルダ30の開口部301、302に第1ヨーク85の連結板部83、84を通し、コイルホルダ30の貫通孔34にフック14を通す。そして、第1ケース部材10第1圧入穴15および第1位置決め穴16に接着剤を垂らしてから、コイルホルダ30の第1圧入ピン35を第1圧入穴15に圧入し、第1位置決めピン36を第1位置決め穴16に嵌合して、圧入箇所および篏合箇所を接着剤により固定する。
【0051】
続いて、第3工程では、図10に示すように、第1ヨーク85と第2ヨーク86とを接合して可動体3を組み立てる。例えば、第2板部82からなる第2ヨーク86に第2磁石73、74を固定してから、第2ヨーク86のX1方向の端部を連結板部83の先端に溶接により接合するとともに、第2ヨーク86のX2方向の端部を連結板部84の先端に溶接により接合する。
【0052】
ここで、第1ヨーク85と第2ヨーク86とを接合する前に、あるいは、第1ヨーク85と第2ヨーク86とを接合した後に、コイル組8の各コイル6から引き出したコイル線(図示せず)を、コイルホルダ30のZ2方向の表面に設けられた溝に沿って引き回して、コイルホルダ30のX2方向の端部に保持させた配線基板5(図2参照)に接続する。
【0053】
次に、第4工程では、第2ヨーク86のZ2方向の面に第2接続体92を載せてから、第2ケース部材20をZ2方向から被せる。このとき、第2ケース部材20のフック用係止孔24にフック14を通す。そして、第2ケース部材20をZ1方向に押圧しながら、フック14の先端の係止爪140をフック用係止孔24の縁に係止する。このとき、第1接続体91および第2接続体92を圧縮しながら係止するため、ゲル状部材の弾性力により、第1ケース部材10と第2ケース部材20が対角位置2a、2bにおいてスナップフィット構造により結合される(図1参照)。
【0054】
また、第4工程では、対角位置2cにおいて第2圧入ピン37を第2圧入穴27に圧入し、対角位置2dにおいて第2位置決めピン38を第2位置決め穴28に嵌合させる。その後に、2箇所のピン収容凹部26にZ2方向から接着剤を垂らす。これにより、第2圧入ピン37が第2圧入穴27に接着剤により固定され、第2位置決めピン38が第2位置決め穴28に接着剤により固定される。
【0055】
(共振による異音の抑制構造)
本形態では、支持体2の第3方向Yの両側の側面において、第1方向Zに積層される部品同士が第3方向Yに重なる構造を設けて、重なり合う部分を接着剤により接合する。これにより、支持体2の第3方向Yの両側の側面を構成する部品が共振によって振動することを抑制し、振動箇所で部品同士が衝突することによる異音の発生を抑制する。
【0056】
具体的には、コイルホルダ30の第3方向Yの両端にはZ2方向に突出する突出部39が設けられ、コイルホルダ30に固定されたプレート40の第3方向Yの両端には、Z1方向に突出する折り曲げ部43が設けられている。突出部39は、第2ケース部材20の側面に外側から重なるように組み立てられ、第2ケース部材20の側面に固定される。折り曲げ部43は、第1ケース部材10の側面に外側から重なるように組み立てられ、第1ケース部材10の側面に固定される。これにより、コイルホルダ30およびプレート40を介して、第2ケース部材20および第1ケース部材10の側面部分が第3方向Yに振動することが抑制される。
【0057】
より詳細には、図4図5に示すように、プレート40は、プレート本体41のY1方向およびY2方向の端縁の中央からZ1方向に屈曲した一対の折り曲げ部43を備える。プレート本体41と折り曲げ部43とが繋がる角部の中央には、Z1方向に切り欠いた切欠き部44が設けられている。コイル組8を第1ケース部材10に積層する工程(第2工程)では、プレート40の折り曲げ部43を第1ケース部材10のY1方向およびY2方向の側面である第1ケース側面10Yに外側から重ねた状態となるように組み付けて、接着剤により折り曲げ部43を第1ケース側面10Yに固定する。
【0058】
図4図5図6に示すように、第1ケース側面10Yの第2方向Xの中央には、それぞれ、折り曲げ部43が嵌合する凹部17が設けられている。凹部17は、第1側板部12のZ2方向の端部に設けられている。図9に示すように、プレート40の折り曲げ部43を凹部17に嵌め込む際、凹部17の内面から突出する爪部18を切欠き部44に嵌め込む。これにより、折り曲げ部43が第1側板部12に係止される。
【0059】
図4図5に示すように、爪部18には、幅方向(第2方向X)の中央において第1方向Zに延びる接着剤注入溝19が設けられている。図9に示すように、コイル組8を第1ケース部材10に組み付けた後に、切欠き部44からZ2方向に突出した爪部18の先端に開口する接着剤注入溝19に接着剤を垂らすことができる。これにより、接着剤によって折り曲げ部43が凹部17の内面に固定される。
【0060】
コイルホルダ30は、第3方向Yの両側の端縁からそれぞれZ2方向に突出する2箇所の突出部39を備える。Y1方向の端縁に設けられた突出部39は、折り曲げ部43のX1方向に位置する。Y2方向の端縁に設けられた突出部39は、折り曲げ部43のX2方向に位置する。
【0061】
図1図7に示すように、各突出部39は、第2ケース部材20の第3方向Yの側面である第2ケース側面20Yに設けられた嵌合溝29に嵌合する。上記の第4工程において、第2ケース部材20をコイル組8にZ2方向から被せる際、嵌合溝29に突出部39を嵌合させる。これにより、嵌合溝29の底面に突出部39が外側から重なる(図1参照)。嵌合溝29は、第2側板部12のZ2方向の端部まで延びている。従って、Z2方向から接着剤を嵌合溝29に垂らすことができる。これにより、接着剤により突出部39が第2ケース側面20Yに固定される。
【0062】
図5に示すように、プレート40は、折り曲げ部43のX1方向およびX2方向において、プレート本体41のY1方向およびY2方向の端縁からそれぞれZ1方向に屈曲した4箇所の縁部45を備える。コイルホルダ30は、第3方向Yの両側の端縁からそれぞれ
Z1方向に突出する縁部304を4箇所に備える。各縁部304の第2方向Xの位置はプレート40の縁部45と一致する。コイル組8を組み立てると、折り曲げ部43のX1方向およびX2方向において、プレート40の縁部45の外側にコイルホルダ30の縁部304が重なる(図6参照)。
【0063】
図4図8に示すように、第1側板部12のZ2方向の端部は、折り曲げ部43が固定される凹部17のX1方向およびX2方向の2か所がZ1方向に凹んだ形状をしており、この部分にコイルホルダ30の縁部304およびプレート40の縁部45が嵌合する(図1図9参照)。
【0064】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1は、支持体2および可動体3と、可動体3と支持体2とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える接続体9と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路4と、を有する。磁気駆動回路4は、支持体2に設けられたコイル6と、可動体3に設けられてコイル6に第1方向Zで対向する磁石7と、を備え、可動体3を第1方向Zに対して交差する第2方向Xに駆動する。支持体2は、第1コイル配置穴31および第2コイル配置穴32が設けられた樹脂製のコイルホルダ30と、コイルホルダ30にZ1方向から重なる樹脂製の第1ケース部材10と、コイルホルダ30にZ2方向から重なる樹脂製の第2ケース部材20と、を備える。可動体3は、磁石7を保持するヨーク80を備える。ヨーク80は、コイルホルダ30と第1ケース部材10との間に配置される第1板部81、コイルホルダ30と第2ケース部材20との間に配置される第2板部82、および、第1板部81と第2板部82の両端を接続する一対の連結板部83、84を備える。接続体9は、第1ケース部材10と第1板部81との間、および、第2ケース部材20と第2板部82との間の2箇所において第1方向Zに圧縮された状態で挟まれている。第1ケース部材10は、コイル6に対して第2方向Xおよび第3方向Yで反対側に位置する一対の対角位置2a、2bにおいて第2ケース部材20に向けて突出する一対のフック14を備える。フック14の先端に設けられた係止爪140は、第2ケース部材20を第1方向Zに貫通するフック用係止穴24からZ2方向へ突出してフック用係止穴24の縁に係止される。
【0065】
本形態によれば、アクチュエータ1の筐体を構成する支持体2を組み立てる際、第1ケース部材10と第2ケース部材20の間にコイルホルダ30を挟み込んで、第1ケース部材10に設けたフック14の先端を第2ケース部材20に設けたフック用係止穴24の縁に係止してスナップフィット構造により結合する。第1ケース部材10と第2ケース部材20は、ヨーク80との間に挟まれた圧縮状態の接続体9によって第1方向Zで反対側に付勢されるため、フック14の先端はフック用係止穴24の縁に弾性的に係止される。従って、支持体2を構成する部品を結合するためにネジや接着剤を用いる必要がなく、溶接も行う必要がないので、組立用の部品の部品や資材の管理コストが低く、溶接に伴う製品の不具合を回避できる。また、ネジ穴を設けるよりもスペースが少なくて済むため、アクチュエータ1の小型化に有利である。
【0066】
なお、第1ケース部材10と第2ケース部材20とを結合するフックは、第1ケース部材10と第2ケース部材20のどちらに設けられていてもよい。例えば、第2ケース部材20の対角位置2a、2bにZ1方向に突出するフックを設けて、フックの先端に設けられた係止爪を第1ケース部材10に設けられたフック用係止穴の縁に係止する構造としてもよい。
【0067】
本形態では、コイルホルダ30は、Z1方向へ突出して第1ケース部材10に設けられた第1圧入穴15に圧入される第1圧入ピン35と、Z1方向へ突出して第1ケース部材10に設けられた第1位置決め穴16に挿入される第1位置決めピン36と、を備える。
第1圧入穴15と第1位置決め穴16は、コイル6に対して反対側に位置し且つフック14により結合された対角位置2a、2bとは異なる対角位置2c、2dに設けられている。このように、コイルホルダ30と第1ケース部材10との間に、フック14により結合されない対角位置2c、2dにおいてピンと穴を圧入もしくは嵌合させる構造を設けることにより、コイルホルダ30に対する第1ケース部材10の位置決めを行うことができる。特に、ピンの一方は圧入される構造とし、他方は圧入ではなく対角方向に遊びがある状態で嵌合する構造としているので、精度良く、且つ、容易に位置決めを行うことができる。
【0068】
本形態では、コイルホルダ30は、Z2方向へ突出して第2ケース部材20に設けられた第2圧入穴27に圧入される第2圧入ピン37と、Z2方向へ突出して第2ケース部材20に設けられた第2位置決め穴28に挿入される第2位置決めピン38と、を備える。第2圧入穴27と第2位置決め穴28は、一対の対角位置2c、2dと第1方向Zで重なる位置に設けられている。このように、このように、コイルホルダ30と第2ケース部材20との間に、フック14により結合されない対角位置2c、2dにおいてピンと穴を圧入もしくは嵌合させる構造を設けることにより、コイルホルダ30に対する第2ケース部材20の位置決めを行うことができる。特に、ピンの一方は圧入される構造とし、他方は圧入ではなく対角方向に遊びがある状態で嵌合する構造としているので、精度良く、且つ、容易に位置決めを行うことができる。
【0069】
このように、本形態では、コイルホルダ30を介して、第1ケース部材10と第2ケース部材20を精度良く、且つ、容易に位置決めすることができる。また、フック14を用いてスナップフィット構造により結合することによって、コイルホルダ30、第1ケース部材10、および第2ケース部材20を強固に結合することができる。
【0070】
本形態では、支持体2の外形は直方体状であり、フック14により結合される第1固定位置は、支持体2の対角位置2a、2bである。また、位置決め用のピンと穴を設けた第2固定位置は、支持体2の対角位置2c、2dである。このように、直方体の一方の対角位置をフック14により固定し、他方の対角位置にピンによる位置決め構造を設けることにより、直方体状に組み立てる部品同士を精度良く位置決めできるとともに、強固に結合することができる。
【0071】
なお、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20を積層した箇所をフックによりスナップフィット構造で結合する第1固定位置は、支持体2の対角位置2a、2bとは異なる位置であってもよい。すなわち、第1固定位置は、コイル6を挟んで第1方向Zと交差する方向で反対側の2箇所であればよい。また、位置決め用のピンと穴を設ける第2固定位置は、第1固定位置とは異なり、且つ、コイル6を挟んで第1方向Zと交差する方向で反対側の2箇所であればよい。
【0072】
本形態では、第1圧入ピン35および第1位置決めピン36は、接着剤により第1ケース部材10に固定され、第2圧入ピン37および第2位置決めピン38は、接着剤により第2ケース部材20に固定される。このように、位置決め用のピンを接着剤により穴に固定することによって、部品同士の固定強度を高めることができる。
【0073】
本形態では、第1ケース部材10は、Z2方向へ突出するフック14を備える。第2ケース部材20は、Z1方向へ凹むピン収容凹部26を備える。第2圧入穴27および第2位置決め穴28は、ピン収容凹部26の底面に開口し、第2圧入ピン37および第2位置決めピン38の先端部は、ピン収容凹部26の内側に突出する。このようにすると、組立後にピン収容凹部26に接着剤を注入してピンを穴に固定することができる。従って、組立前に接着剤を塗布する必要がないので、組立容易性を高めることができる。
【0074】
本形態では、第1ケース部材10は、Z2方向へ突出するフック14を備える。第2ケース部材20は、Z1方向へ凹むフック収容凹部25を備える。フック用係止穴24は、フック収容凹部25の底面に開口し、フック14の先端に設けられた係止爪140は、フック収容凹部25に収容される。このようにすると、フック14の先端がアクチュエータ1の筐体表面から飛び出さないようにすることができる。
【0075】
(他の実施形態)
本発明の実施形態としては、以下の形態を採用することができる。
(1)支持体および可動体と、前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える接続体と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、
前記磁気駆動回路は、前記支持体に設けられたコイルと、前記可動体に設けられて前記コイルに第1方向で対向する磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、
前記支持体は、コイル配置穴が設けられた樹脂製のコイルホルダと、
前記コイルホルダに前記第1方向の一方側から重なる樹脂製の第1ケース部材と、
前記コイルホルダに前記第1方向の他方側から重なる樹脂製の第2ケース部材と、を備え、
前記可動体は、前記磁石を保持するヨークを備え、前記ヨークは、前記コイルホルダと前記第1ケース部材との間に配置される第1板部、前記コイルホルダと前記第2ケース部材との間に配置される第2板部、および、前記第1板部と前記第2板部の両端を接続する一対の連結板部を備え、
前記接続体は、前記第1ケース部材と前記第1板部との間、および、前記第2ケース部材と前記第2板部との間の2箇所において前記第1方向に圧縮された状態で挟まれ、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材の一方は、前記コイルに対して前記第1方向と交差する方向で反対側に位置する一対の第1固定位置において前記第1ケース部材と前記第2ケース部材の他方に向けて突出する一対のフックを備え、
前記フックの先端は、前記他方を前記第1方向に貫通するフック用係止穴から前記第1方向の他方側へ突出して前記フック用係止穴の縁に係止されることを特徴とするアクチュエータ。
【0076】
(2)前記コイルホルダは、
前記第1方向の一方側へ突出して前記第1ケース部材に設けられた第1圧入穴に圧入される第1圧入ピンと、
前記第1方向の一方側へ突出して前記第1ケース部材に設けられた第1位置決め穴に挿入される第1位置決めピンと、を備え、
前記第1圧入穴と前記第1位置決め穴は、前記コイルに対して反対側に位置し且つ前記一対の第1固定位置とは異なる一対の第2固定位置に設けられていることを特徴とする上記(1)のアクチュエータ。
【0077】
(3)前記コイルホルダは、
前記第1方向の他方側へ突出して前記第2ケース部材に設けられた第2圧入穴に圧入される第2圧入ピンと、
前記第1方向の他方側へ突出して前記第2ケース部材に設けられた第2位置決め穴に挿入される第2位置決めピンと、を備え、
前記第2圧入穴と前記第2位置決め穴は、前記一対の第2固定位置と前記第1方向で重なる位置に設けられていることを特徴とする上記(1)または(2)のアクチュエータ。
【0078】
(4)前記支持体の外形は直方体状であり、
前記一対の第1固定位置および前記一対の第2固定位置は、前記支持体の対角位置であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかのアクチュエータ。
【0079】
(5)前記第1圧入ピンおよび前記第1位置決めピンは、接着剤により前記第1ケース部材に固定され、
前記第2圧入ピンおよび前記第2位置決めピンは、接着剤により前記第2ケース部材に固定されることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかのアクチュエータ。
【0080】
(6)前記第1ケース部材は、前記第1方向の他方側へ突出する前記フックを備え、
前記第2ケース部材は、前記第1方向の一方側へ凹むピン収容凹部を備え、前記第2圧入穴および前記第2位置決め穴は、前記ピン収容凹部の底面に開口し、
前記第2圧入ピンおよび前記第2位置決めピンの先端部は、前記ピン収容凹部の内側に突出することを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかのアクチュエータ。
【0081】
(7)前記第1ケース部材は、前記第1方向の他方側へ突出する前記フックを備え、
前記第2ケース部材は、前記第1方向の一方側へ凹むフック収容凹部を備え、前記フック用係止穴は、前記フック収容凹部の底面に開口し、
前記フックの先端に設けられた係止爪は、前記フック収容凹部に収容されることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかのアクチュエータ。
【符号の説明】
【0082】
1…アクチュエータ、2…支持体、2a、2b、2c、2d…対角位置、3…可動体、4…磁気駆動回路、5…配線基板、6…コイル、7…磁石、8…コイル組、9…接続体、10…第1ケース部材、10Y…第1ケース側面、11…第1端板部、12…第1側板部、13…凹部、14…フック、15…第1圧入穴、16…第1位置決め穴、17…凹部、18…爪部、19…接着剤注入溝、20…第2ケース部材、20Y…第2ケース側面、21…第2端板部、22…第2側板部、23…凹部、24…フック用係止孔、25…フック収容凹部、26…ピン収容凹部、27…第2圧入穴、28…第2位置決め穴、29…嵌合溝、30…コイルホルダ、31…第1コイル配置穴、32…第2コイル配置穴、33…コイル保持部、34…貫通孔、35…第1圧入ピン、36…第1位置決めピン、37…第2圧入ピン、38…第2位置決めピン、39…突出部、40…プレート、41…プレート本体、42…固定部、43…折り曲げ部、44…切欠き部、45…縁部、61…第1コイル、62…第2コイル、71、72…第1磁石、73、74…第2磁石、80…ヨーク、81…第1板部、82…第2板部、83、84…連結板部、85…第1ヨーク、86…第2ヨーク、91…第1接続体、92…第2接続体、120…張り出し部、140…係止爪、150…凸部、160…凸部、220…張り出し部、270…凸部、280…凸部、301、302…開口部、303…プレート係止突起、304…縁部、420…係止穴、601…有効辺、602…中央穴、P…対角線、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10