IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特開-障子 図1
  • 特開-障子 図2
  • 特開-障子 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179868
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】障子
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/56 20060101AFI20241219BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20241219BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20241219BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E06B3/56
C09J183/04
C09J163/00
E06B3/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099123
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山本 真大
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一
【テーマコード(参考)】
2E016
4J040
【Fターム(参考)】
2E016AA03
2E016AA04
2E016BA06
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC03
2E016DA00
4J040EC001
4J040EK031
4J040JA01
4J040JA13
4J040JB02
4J040MA05
4J040MA08
4J040MA10
4J040MB04
4J040MB12
4J040NA12
4J040PA12
(57)【要約】
【課題】框とガラスパネルとを接着剤により固定する障子において、より高い剛性を有する障子を提供すること。
【解決手段】障子20,30,40は、ガラスパネル21,31,41,23,33,43と、ガラスパネル21,31,41,23,33,43の見付方向の端部に配置され炭素繊維強化プラスチックにより構成される框25,35,45を備え、ガラスパネル21,31,41,23,33,43の見付方向の端部は、接着剤Aにより框25,35,45に接着されて固定され、接着剤Aの伸び率は、-20℃~70℃の温度範囲において、60%以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスパネルと、
前記ガラスパネルの見付方向の端部に配置され炭素繊維強化プラスチックにより構成される框を備え、
前記ガラスパネルの見付方向の端部は、接着剤により、前記框に接着されて固定され、
前記接着剤の伸び率は、-20℃~70℃の温度範囲において、60%以上である、障子。
【請求項2】
前記接着剤の接着強度は、-20℃~70℃の温度範囲において、3MPa以上である、請求項1に記載の障子。
【請求項3】
前記框は、前記ガラスパネルの見付方向の端部において見込方向の外側に見付面に沿って配置される見付面固定部と、前記見付面固定部に連続して形成され前記ガラスパネルの見付方向の端部において見込面に沿って配置される見込面延在部と、を有し、
前記接着剤は、前記ガラスパネルの見付方向の端部の見付面と前記見付面固定部との間に配置される、請求項1又は2に記載の障子。
【請求項4】
前記接着剤の厚さは、0.5mm~3mmである、請求項1又は2に記載の障子。
【請求項5】
前記接着剤は、変性シリコーンを含んで構成される接着剤である、請求項1又は2に記載の障子。
【請求項6】
前記接着剤は、エポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤である、請求項1又は2に記載の障子。
【請求項7】
前記ガラスパネルの一辺の長さは、3m以上であり、
前記ガラスパネルの一辺が配置される前記框の長手方向の長さは、3m以上であり、
前記接着剤は、前記ガラスパネルと前記框とを長手方向に沿って接着して固定する、請求項1又は2に記載の障子。
【請求項8】
前記框の見付面固定部の見付方向の幅は、20mm以下である、請求項1又は2に記載の障子。
【請求項9】
前記框は、上下方向に延びる縦框である、請求項1又は2に記載の障子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、障子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、框体と、框体内に配置されるガラスパネルと、を備える障子が知られている(例えば、特許文献1参照)。ガラスパネルの端部は、接着剤により、框に接着されて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-155919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
框とガラスパネルとを接着剤により固定する場合に、障子の剛性を担保するためには、框の剛性に頼っているものがほとんどであった。障子は、框とガラスパネルとを接着剤により固定する場合に、より高い剛性が求められる。
【0005】
本開示は、框とガラスパネルとを接着剤により固定する障子において、より高い剛性を有する障子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ガラスパネルと、前記ガラスパネルの見付方向の端部に配置され炭素繊維強化プラスチックにより構成される框を備え、前記ガラスパネルの見付方向の端部は、接着剤により、前記框に接着されて固定され、前記接着剤の伸び率は、-20℃~70℃の温度範囲において、60%以上である、障子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るパノラマ窓を室内側から見た正面図である。
図2】パラレル移動障子、スライド移動障子及びFIX障子の左右方向の外側の端部の横断面拡大図である。
図3】評価試験に使用するダンベル状試験片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態の建具としてのパノラマ窓1について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、パノラマ窓1は、枠体10と、枠体10内に配置されるパラレル移動障子20(障子)、スライド移動障子30(障子)及びFIX障子40(障子)と、を備える。
【0009】
なお、本明細書において、「見付方向」とは、建具の枠体10に納められるパラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の面方向を意味し、「見込方向」とは、室内外方向(即ち、奥行き方向)を意味する。また、見付方向において、図1における左右の方向を左右方向Xという。図1における左右方向Xの一方側(左側)をX1側といい、左右方向Xの他方側(右側)をX2側という。また、図2における室内外方向を見込方向Yという。見込方向Yにおける奥側を室外側Y1といい、手前側を室内側Y2という。「見付面」は、パノラマ窓1における室外側Y1及び室内側Y2に面するそれぞれの面を意味し、「見込面」は、パノラマ窓1において見込方向Y(室内外方向)に延びる面を意味する。
【0010】
図1に示すように、枠体10は、上枠11、下枠12及び一対の縦枠13,14が、方形状に枠組みされている。上枠11、下枠12及び一対の縦枠13,14は、例えば、アルミニウムを押し出し成形することによって形成される。枠体10内には、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40が配置される。
【0011】
図2に示すように、FIX障子40は、枠体10内の左右方向XのX2側に固定される。パラレル移動障子20及びスライド移動障子30は、枠体10内のFIX障子40よりも左右方向XのX1側において、駆動部(図示せず)に駆動されることにより、閉位置(図1及び図2参照)と、閉位置(図1及び図2参照)からパラレル移動障子20が室内側Y2に移動して室内側Y2に退避する途中位置(図示せず)と、途中位置からスライド移動障子30が左右方向XのX1側に移動してパノラマ窓1の左右方向Xの中央部を開放する開位置(図示せず)と、に移動可能である。
【0012】
パノラマ窓1が閉位置に位置した場合に、図2に示すように、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40は、枠体10内において、左右方向XのX1側からX2側に向けて、この順に一直線上に並んで配置される。
【0013】
パノラマ窓1が閉位置に位置した場合に、パラレル移動障子20とスライド移動障子30とは、合わせ部51において左右方向Xの外側の端部の縦框25,35(後述)の見込面同士が対向して配置される。スライド移動障子30とFIX障子40とは、合わせ部52において左右方向Xの外側の端部の縦框35,45(後述)の見込面同士が対向して配置される。
【0014】
気密材28,38,48は、図2に示すように、それぞれ、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の合わせ部51,52側の端部に取り付けられる。気密材28,38,48は、略L字状に形成され、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の左右方向Xの端部から外側に突出する。
【0015】
次に、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の構成の詳細について説明する。
【0016】
図2に示すように、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40は、それぞれ、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41(ガラスパネル)、中間ガラス板22,32,42、室内側ガラス板23,33,43(ガラスパネル))と、スペーサ24,34,44と、上框(図示せず)、下框(図示せず)及び一対の縦框25,35,45(框)を有する框体と、気密材28,38,48と、を有する。
【0017】
室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43は、複層ガラスを構成する。室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43は、それぞれ、矩形状に形成される。室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43は、それぞれ、空気層を介して積層された状態で、室外側Y1から室内側Y2に向けてこの順に見込方向Yに並んで配置される。
【0018】
パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の左右方向Xの両端部側、上端部側及び下端部側の周縁において、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42、室内側ガラス板23,33,43)のそれぞれの間には、スペーサ24,34,44が配置される。これにより、室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43は、それぞれ、スペーサ24,34,44介して離間して配置される。なお、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の上端部に配置される上框及び下端部に配置される下框の図示は省略している。
【0019】
スペーサ24,34,44は、それぞれ、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42、室内側ガラス板23,33,43)の左右方向Xの両端部側、上端部側及び下端部側において、各縦辺及び各横辺に沿って延びる長尺に形成される。
【0020】
室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43は、特に限定されず、材質としてはフロート法によって製造されるフロートガラス、強化ガラス等により構成できる。また、合わせガラス、型板ガラス、網入りガラス等であってもよい。本実施形態の複層ガラスのガラスパネルの枚数は3枚であるが、これに限定されず、2枚以上であればよい。また、本実施形態では複層ガラスであるが、これに限定されず、単板ガラスであってもよい。
【0021】
図2に示すように、縦框25,35,45は、それぞれ、室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43の左右方向Xの外側の両端部に取り付けられる。縦框25,35,45は、それぞれ、スペーサ24,34,44よりも左右方向Xの外側において、室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43の左右方向Xの両端部に配置される。
【0022】
図1に示すように、一対の縦框25,35,45は、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の左右方向の両端部において、それぞれ、幅を有して、縦方向(上下方向)に延びる。縦框25,35,45の上下方向の長さは、例えば、3m以上である。
【0023】
図2に示すように、縦框25,35,45は、左右方向X(横方向)に沿って切断した断面において、左右方向Xの内側に向けて開放する断面視コ字状に形成される。縦框25,35,45は、室外側ガラス板21,31,41の室外側Y1の外側の見付面に沿って配置される室外側見付面固定部251,351,451(一方側見付面固定部、見付面固定部)と、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の左右方向Xの外側の見込面に沿って配置される見込面延在部252,352,452と、室内側ガラス板23,33,43の室内側Y2の外側の見付面に沿って配置される室内側見付面固定部253,353,453(他方側見付面固定部、見付面固定部)と、が連続して断面視コ字状に形成される。
【0024】
室外側見付面固定部251,351,451は、室外側Y1において、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)のうち、室外側ガラス板21,31,41の見付方向の端部において見込方向の室外側Y1の外側に見付面に沿って配置される。
【0025】
室外側Y1の室外側見付面固定部251,351,451は、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の左右方向の両端部それぞれにおいて、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)の室外側Y1の外側において見付面に沿って配置され、左右方向Xに所定長さ延びる。
【0026】
室外側見付面固定部251,351,451は、接着剤Aにより、室外側ガラス板21,31,41の室外側Y1(外側)の見付面に固定される。接着剤Aは、室外側見付面固定部251,351,451の室内側Y2の見付面と室外側ガラス板21,31,41の室外側Y1の見付面との間に配置される。なお、接着剤Aは、室外側ガラス板21,31,41の室外側Y1(外側)の見付面の見付方向全域に配置されていなくてもよく、室外側ガラス板21,31,41を見付面の固定部に固定可能であればよい。また、接着剤Aは、縦框25,35,45の長手方向全域に配置されていなくてもよく、室外側ガラス板21,31,41を縦框25,35,45に固定可能であれば、一部間隔を空けて配置されていてもよい。接着剤Aの詳細については後述する。
【0027】
接着剤Aを縦框25,35,45の室外側見付面固定部251,351,451で覆うことができるため、接着剤Aを紫外線から保護し、接着剤Aの劣化を低減できる。
【0028】
見込面延在部252,352,452は、室外側見付面固定部251,351,451の左右方向Xの外側の端部に連続して形成される。見込面延在部252,352,452は、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)の左右方向の外側において見込面に沿って配置され、室外側見付面固定部251,351,451の左右方向Xの外側の端部から、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)それぞれの見込方向Yの長さの分、見込方向Yに延びる。
【0029】
室内側Y2の室内側見付面固定部253,353,453は、見込面延在部252,352,452の室内側Y2の端部に連続して形成される。室内側見付面固定部253,353,453は、室内側Y2において、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)のうち、室内側ガラス板23,33,43の見付方向の端部において見込方向の室内側Y2の外側に見付面に沿って配置される。
【0030】
室内側Y2の室内側見付面固定部253,353,453は、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の左右方向の両端部それぞれにおいて、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)の室内側Y2の外側において見付面に沿って配置され、見込面延在部252,352,452の室内側Y2の端部から、左右方向Xの内側に向けて、左右方向Xに所定長さ延びる。
【0031】
室内側見付面固定部253,353,453は、接着剤Aにより、室内側ガラス板23,33,43の室内側Y2(外側)の見付面に固定される。接着剤Aは、室内側見付面固定部253,353,453の室外側Y1の見付面と室内側ガラス板23,33,43の室内側Y2の見付面との間に配置される。なお、接着剤Aは、室内側ガラス板23,33,43の室内側Y2(外側)の見付面の見付方向全域に配置されていなくてもよく、室内側ガラス板23,33,43を見付面の固定部に固定可能であればよい。また、接着剤Aは、縦框25,35,45の長手方向全域に配置されていなくてもよく、室内側ガラス板23,33,43を縦框25,35,45に固定可能であれば、一部間隔を空けて配置されていてもよい。接着剤Aの詳細については後述する。
【0032】
接着剤Aを縦框25,35,45の室内側見付面固定部253,353,453で覆うことができるため、接着剤Aを紫外線から保護し、接着剤Aの劣化を低減できる。
【0033】
図2に示すように、縦框25,35,45において、見込面延在部252,352,452の左右方向Xの厚みT2は、室外側Y1の見付面に配置された室外側見付面固定部251,351,451の見込方向Yの厚みT1よりも大きく、かつ、室内側Y2の見付面に配置された室内側見付面固定部253,353,453の見込方向Yの厚みT3よりも大きく形成される。
【0034】
縦框25,35,45は、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の撓みを抑制し、強度を確保する。縦框25,35,45は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber-Reinforced Plastics)により構成される。縦框25,35,45が炭素繊維強化プラスチックにより構成されることで、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40に強度を持たせることができ、かつ断熱性を確保できる。
【0035】
縦框25,35,45を構成する炭素繊維強化プラスチックは、縦框25,35,45の幅方向に交差する方向に延びる繊維を複数本束ねて樹脂により固定することで構成される。炭素繊維強化プラスチックは、縦框25,35,45の幅方向に交差する方向に延びる繊維を複数本束ねた状態で、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂を含浸させて硬化させることで形成される。炭素繊維強化プラスチックに使用される複数本束ねた樹脂に含浸させて硬化させる樹脂として、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等を挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂等を挙げることができる。なお、炭素繊維強化プラスチックを構成する複数本の繊維が延びる方向は、縦框25,35,45の長手方向と一致していなくてもよい。また、炭素繊維強化プラスチックを構成する複数本の繊維は、縦框25,35,45の長手方向の端から端まで繊維が通っていなくてもよい。
【0036】
縦框25,35,45を構成する炭素繊維強化プラスチックは、ガラス板以上の弾性強度を有する。本明細書において、弾性強度とは、ヤング率を指し、ガラス板のヤング率はおおよそ71600MPaである。ヤング率の測定は、JIS K 7161に規定する通則に基づき、JIS K 7164(等方性及び直交異方性繊維強化プラスチック)、及びJIS K 7165(一方向繊維強化プラスチック複合材料)のうちいずれかの規定に準拠して行うことができる。
【0037】
図2に示すように、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40において3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42、室内側ガラス板23,33,43)のそれぞれの間にスペーサ24,34,44が配置された状態で、縦框25,35,45は、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40の左右方向Xの両端部に取り付けられる。
【0038】
本実施形態においては、スペーサ24,34,44は、弾性体である。スペーサ24,34,44に用いられる弾性体としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーや、ブチルに乾燥剤が添加された樹脂、EPDMシリコンのビードに乾燥剤が添加された樹脂などが挙げられる。
【0039】
以上のパラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40は、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)のうちの室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43と、縦框25,35,45と、が接着剤Aにより接着されて固定されることで、一体化したモノコック構造に構成される。
【0040】
ここで、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40が、室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43と、縦框25,35,45と、が接着剤Aにより接着されて固定されることで、一体化したモノコック構造となる構成について更に説明する。
【0041】
図2に示すように、接着剤Aは、3枚のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41、中間ガラス板22,32,42及び室内側ガラス板23,33,43)のうちの室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43の見付方向の端部の見付面と、縦框25,35,45の見付面固定部(室外側見付面固定部251,351,451、室内側見付面固定部253,353,453)と、の間に配置される。室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43の見付方向の端部は、接着剤Aにより、縦框25,35,45に接着されて固定される。
【0042】
室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43(ガラスパネル)の一辺の長さは、3m以上であり、室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43の一辺が配置される縦框25,35,45の長手方向の長さは、3m以上である。接着剤Aは、室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43と縦框25,35,45とを長手方向に沿って接着して固定する。縦框25,35,45の見付面固定部(室外側見付面固定部251,351,451、室内側見付面固定部253,353,453)の見付方向の幅は、20mm以下である。
【0043】
このような、見付方向の幅が20mm以下であって長手方向の長さが3m以上の縦框25,35,45と、一辺の長さが3m以上のガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)と、を接着剤Aにより固定する場合に、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)とを接着剤Aにより強固に一体化させることにより、断面二次モーメントを高くし、縦框25,35,45の剛性に頼らずに、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30、FIX障子40)全体で剛性を担保できる。これにより、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30、FIX障子40)の剛性を向上させることができ、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30、FIX障子40)を、よりスリムなデザインにすることができる。
【0044】
ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)と縦框25,35,45とを接着して固定する接着剤Aについて更に詳細に説明する。
【0045】
接着剤Aは、例えば、エポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤である。変性シリコーン接着剤は、高温から低温の温度条件において柔軟性を有する。エポキシ系接着剤は、接着強度が高く、接着時の剛性が高い。エポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤は、エポキシ系接着剤の低温の脆性を補完すると共に剛性と柔軟性を担保できる。
【0046】
接着剤Aの伸び率は、-20℃~70℃の温度範囲において、60%以上である。接着剤Aは、伸び率が60%以上であるため、弾性的な性質を有する。そのため、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)とが接着剤Aにより接着固定された場合に、接着剤Aは、弾性的に伸びて、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張の差に追従できる。これにより、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張の差で発生する熱応力を吸収することで、剥離を防ぐことができる。
【0047】
接着剤Aは、エポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤である。接着剤Aは、高温でも低温でも常温とほぼ同等の接着強度を有することが好ましい。既存の接着剤で常温の強度が高いエポキシ系等は高温時に強度が下がって剥離につながる傾向があるのに対して、接着剤Aは、高温でも低温でも常温とほぼ同等の接着強度を有することで、高温でも接着強度が維持されるため剥離につながりにくい。
【0048】
接着剤Aの伸び率を、常温下、高温下及び低温下(-20℃~70℃の範囲)において、60%以上とすることで、常温下だけでなく、高温下及び低温下でも優れた伸び率を発揮することで、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張差を吸収することができる。
【0049】
接着剤Aは、常温において、塗布し硬化させるだけで、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)と縦框25,35,45とを強固に接着固定させることができる。そのため、既存の構造に応用可能である。
【0050】
接着剤Aにおける縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との引張強度は、-20℃~70℃の温度範囲において、3MPa以上が望ましい。接着剤Aにおける縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との引張強度を3MPa以上とすることで、接着剤Aにおける縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張の差により、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との間に配置されて接着剤Aにより接着固定された場合に、接着剤Aが伸びた場合においても、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)を強固に固定できる。
【0051】
接着剤Aにおける縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との接着強度は、-20℃~70℃の温度範囲において、モノコック構造を実現させるためにも3MPa以上が望ましい。接着剤Aにおける縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との接着強度(引張せん断接着強さ)を3MPa以上とすることで、接着剤Aにおける縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張の差により、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との間に配置されて接着剤Aにより接着固定された場合に、接着剤Aが伸びた場合においても、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)を強固に固定できる。また、接着剤Aの変性シリコーン等の柔軟性分は常時ゴム状態で応力緩和性があり、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)の熱割れを防ぐことができる。
【0052】
接着剤Aを用いる際には、適切な厚み設計を行うことが必要である。これにより、接着剤Aの厚さを設計することで、変形に追従させながら荷重を伝達させる程度の薄さを担保することができる。よって、従来のシーリング技術と違い、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との距離を狭くした構造にすることができる。
【0053】
接着剤Aの厚さは、例えば0.5mm~3mmであることが好ましく、例えば0.5mm~1.5mmであることがより好ましい。接着剤Aの厚さは、ヒートサイクル試験における接着剤Aの剥離を防ぐために、0.5mm以上であることが好ましく、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30、FIX障子40)の耐風圧性能を満たすために、3.0mmであることが好ましい。
【0054】
以上のように構成される障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40)は、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)と縦框25,35,45とが接着剤Aにより接着されて一体化したモノコック構造を有するため、各部材の強度を単に足し合わせた強度よりも高い強度を得ることができる。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。本実施形態の障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40)は、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)と、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)の見付方向の端部に配置され炭素繊維強化プラスチックにより構成される縦框25,35,45を備え、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)の見付方向の端部は、接着剤Aにより、縦框25,35,45に接着されて固定され、接着剤Aの伸び率は、-20℃~70℃の温度範囲において、60%以上である。これにより、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)とが接着剤Aにより接着固定された場合に、接着剤Aは、弾性的に伸びて、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張の差に追従できる。これにより、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張の差で発生する熱応力を吸収することで、剥離を防ぐことができる。これにより、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40)の剛性をより高くすることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、接着剤Aの接着強度(引張せん断接着強さ)は、-20℃~70℃の温度範囲において、3MPa以上である。そのため、接着剤Aにおける縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との線膨張の差により、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)との間に配置されて接着剤Aにより接着固定された場合に、接着剤Aが伸びた場合においても、接着強度(引張せん断接着強さ)が3MPa以上であるため、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)を強固に固定できる。
【0057】
また、本実施形態においては、接着剤Aの見込方向の厚さは、0.5mm~3mmである。これにより、ヒートサイクル試験における接着剤Aの剥離を防ぐと共に耐風圧強度を有する接着強度を確保しつつ、接着剤Aの厚さを薄くすることができる。
【0058】
また、本実施形態においては、接着剤Aは、変性シリコーンを含んで構成される。変性シリコーン接着剤は、高温から低温の温度条件において柔軟性を有する。これにより、接着剤Aの伸び率が高く、柔軟性を担保できる。
【0059】
また、本実施形態においては、接着剤Aは、エポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤である。変性シリコーン接着剤は、高温から低温の温度条件において柔軟性を有する。エポキシ系接着剤は、接着強度が高く、接着時の剛性が高い。そのため、エポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤は、エポキシ系接着剤の低温の脆性を補完すると共に剛性と柔軟性を担保できる。これにより、接着剤Aをエポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤とすることで、接着剤Aを、接着強度が高く接着時の剛性を高くすることができ、かつ、伸び率が高く柔軟性を担保できるという両方を担保した接着剤とすることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)の一辺の長さは、3m以上であり、ガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)の一辺が配置される縦框25,35,45の長手方向の長さは、3m以上である。このように、接着剤Aにより接着固定する部分が3m以上の長い場合であっても、縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)とを接着剤Aにより強固に一体化させることにより、断面二次モーメントを高くし、縦框25,35,45の剛性に頼らずに、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30、FIX障子40)全体で剛性を担保できる。よって、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30、FIX障子40)の剛性を高くすることができる。
【0061】
また、本実施形態においては、縦框25,35,45の見付面固定部(室外側見付面固定部251,351,451、室内側見付面固定部253,353,453)の見付方向の幅は、20mm以下である。このように、見付幅が小さい縦框25,35,45であっても、見付幅が小さい縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)とを接着剤Aにより接着固定することで、高い強度を備えた障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40)とすることができる。よって、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30、FIX障子40)を、剛性を高くすることができると共に、よりスリムなデザインにすることができる。
【0062】
また、本実施形態においては、縦框25,35,45は、上下方向に延びる縦框である。これにより、横からの風圧を受けやすい縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)とを接着剤Aにより接着固定することで、障子(パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40)は、横からの耐風圧に対する強度を向上させることができる。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない。縦框25,35,45とガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)とを接着固定する接着剤Aについて、評価試験を行った。以下、本開示を実施例1~3、比較例1~3の接着剤に基づいて詳細に説明する。なお、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
まず、実施例1~3、比較例1~3の接着剤について以下の表1に記載して説明する。
【0065】
【表1】
【0066】
使用した接着剤Aの種類としては、実施例1,2,3として、接着剤a1,a2,a3を使用し、比較例1,2,3として、接着剤b1,b2,b3を使用した。
【0067】
実施例1の接着剤a1は、エポキシ及び変性シリコーンからなる二成分系接着剤である。実施例1の接着剤a1は、2液を混ぜて常温で硬化させて使用する接着剤である。実施例1の接着剤a1は、主剤として、エポキシ樹脂を主成分として、すず及びすず化合物を硬化触媒として含んで構成されており、硬化剤として、変性シリコーンを主成分として、三級アミンを、主剤のエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤として含んで構成されている。
【0068】
実施例2の接着剤a2は、変性シリコーン系の接着剤であり、1液の接着剤である。実施例3の接着剤a3は、変性シリコーン系の接着剤であり、1液の接着剤である。
【0069】
比較例1の接着剤b1は、ウレタン系の接着剤であり、2液を混ぜて常温で硬化させる接着剤である。比較例2の接着剤b2は、エポキシ系の接着剤であり、2液を混ぜて常温で硬化させる接着剤である。比較例3の接着剤b3は、アクリル系の接着剤であり、2液を混ぜて常温で硬化させる接着剤である。
【0070】
[試験方法、評価方法]実施例1~3、比較例1~3の接着剤を用いて、「(1)伸び率試験評価」、「(2)接着強度試験評価」、「(3)ダンベル状試験片引張強度試験評価」及び「(4)冷熱繰り返し試験評価」の各試験評価を行った。各試験評価の試験方法と評価方法について説明する。
【0071】
「(1)伸び率試験評価」について、試験方法としては、各接着剤により、図3に示すダンベル状試験片6を、JIS K 6251のダンベル状2号形に基づいて作成し、各温度(-25℃、23℃、70℃)におけるダンベル状試験片6の長手方向の中央部分61の初期の標線間距離L(20mm)が、試験後にどこまで伸びるかを計測した。引張方法は、JIS K 7161-1bに準拠して行い、引張する試験速度は10mm/minとした。そして、評価方法としては、伸び率が60%以上のものをOKとし、伸び率が60%未満のものをNGとした。表1に、実測値及び評価結果を記載した。
【0072】
「(2)接着強度試験評価」について、接着強度として、引張せん断接着強さを測定する。試験方法としては、各接着剤を用いて、JIS K 6850(接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)に基づいた引張せん断試験を行う。接着剤の重ね合せせん断接着強さは,試験片の接着部分と主軸とに平行な引張力を被着材に与え,剛性被着材間における単純重ね合せ部分にせん断方向の負荷を与えることによって測定する。具体的には、JIS K 6850に基づいて、ガラスパネルと炭素繊維強化プラスチックとを接着剤により貼り付けた試験片を作成した。炭素繊維強化プラスチックとして、長手方向に延びる複数本束ねた繊維にエポキシ樹脂を含浸させて硬化させて形成した炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber-Reinforced Plastics)を用いた。接着剤は、ガラスパネルと炭素繊維強化プラスチックとの間において積層させた。
【0073】
そして、作成した試験片を用いて、各温度(-25℃、23℃、70℃)において、ガラスパネルから炭素繊維強化プラスチック72を平行に引っ張る試験を行い、引張せん断力を測定した。そして、評価方法としては、引張せん断力が3Mpa以上のものをOKとし、引張せん断力が3MPa未満のものをNGとした。表1に、実測値及び評価結果を記載した。
【0074】
「(3)ダンベル状試験片引張強度試験評価」について、試験方法としては、図3に示す「(1)伸び率試験評価」で用いたものと同様のダンベル状試験片6を用いて、各温度(-25℃、23℃、70℃)において、ダンベル状試験片6の長手方向の両端において長手方向の外側に引張する試験を行い、引張せん断力を測定した。引張方法は、JIS K 7161-1bに準拠して行い、引張する試験速度は10mm/minとした。そして、評価方法としては、引張せん断力が3Mpa以上のものをOKとし、引張せん断力が3MPa未満のものをNGとした。表1に、実測値及び評価結果を記載した。
【0075】
「(4)冷熱繰り返し試験評価」について、試験方法としては、長さ3000mm以上で幅200mmの長尺の直方体形状のガラスパネルの幅方向の端部において、長さ3000mm以上で幅8mmの長尺の直方体形状の炭素繊維強化プラスチックを、幅8mmの範囲で接着剤により貼り付けた試験片を作成した。試験片を用いて、-20℃と70℃とを繰り返す温度条件にて試験を行った。詳細には、冷熱繰り返し試験として、23℃から70℃に上昇させて、70℃を2時間保持させ、その後、70℃から23℃に低下させ、23℃を経て、-20℃に低下させ、-20℃を2時間保持させ、-20℃から23℃に戻す温度サイクルを1サイクルとして、100サイクル以上繰り返す試験を行った。
【0076】
評価方法としては、冷熱繰り返し試験の後(100サイクル以上繰り返し後)に、接着剤Aの剥がれが無い場合にはOKとし、接着剤Aの剥がれが有る場合にはNGとした。表1に、評価結果を記載した。「(1)伸び率試験評価」、「(2)接着強度試験評価」、「(3)ダンベル状試験片引張強度試験評価」及び「(4)冷熱繰り返し試験評価」の評価結果について表1を参照して考察する。
【0077】
「(1)伸び率試験評価」の評価結果としては、伸び率に関して、実施例1(接着剤a1)、実施例2(接着剤a2)及び実施例3(接着剤a3)は、-20℃、23℃、70℃において、伸び率60%以上であり、評価結果はOKであった。比較例1(接着剤b1)、比較例2(接着剤b2)及び比較例3(接着剤b3)は、-20℃、23℃、70℃において、伸び率60%未満の場合があり、評価結果はNGであった。
【0078】
「(2)接着強度試験評価」の評価結果としては、接着強度に関して、実施例1(接着剤a1)は、-20℃、23℃、70℃において、接着強度3MPa以上であり、評価結果はOKであった。また、実施例2(接着剤a2)及び実施例3(接着剤a3)は、23℃において、接着強度3MPa未満であり、評価結果はNGであった。
【0079】
「(2)接着強度試験評価」の評価結果として、接着強度に関して、比較例1(接着剤b1)、比較例2(接着剤b2)及び比較例3(接着剤b3)は、「(1)伸び率試験評価」の評価結果がNGであったため、参考としての評価結果であるが、比較例1(接着剤b1)は、70℃において、接着強度3MPa未満であり、評価結果はNGであった。比較例2(接着剤b2)は、-20℃での試験を行っていないため、評価結果は保留である。比較例3(接着剤b3)は、-20℃、23℃、70℃において、接着強度3MPa以上であり、評価結果はOKであった。
【0080】
「(3)ダンベル状試験片引張強度試験評価」の評価結果としては、ダンベル状試験片引張強度に関して、実施例1(接着剤a1)は、-20℃、23℃、70℃において、ダンベル状試験片引張強度3MPa以上であり、評価結果はOKであった。また、実施例2(接着剤a2)及び実施例3(接着剤a3)は、23℃、70℃において、ダンベル状試験片引張強度3MPa未満であり、評価結果はNGであった。
【0081】
「(3)ダンベル状試験片引張強度試験評価」の評価結果として、ダンベル状試験片引張強度に関して、比較例1(接着剤b1)、比較例2(接着剤b2)及び比較例3(接着剤b3)は、「(1)伸び率試験評価」の評価結果がNGであるため、参考としての評価結果であるが、比較例1(接着剤b1)及び比較例3(接着剤b3)は、-20℃、23℃、70℃において、ダンベル状試験片引張強度3MPa以上であり、評価結果はOKであった。比較例2(接着剤b2)は、評価試験を行っていない。
【0082】
「(4)冷熱繰り返し試験評価」の評価結果としては、実施例1(接着剤a1)、実施例2(接着剤a2)及び実施例3(接着剤a3)は、冷熱繰り返し試験後において、接着剤の剥がれが発生しなかったたため、評価結果はOKであった。
【0083】
「(4)冷熱繰り返し試験評価」の評価結果として、比較例1(接着剤b1)、比較例2(接着剤b2)及び比較例3(接着剤b3)は、「(1)伸び率試験評価」の評価結果がNGであるため、参考としての評価結果であるが、比較例1(接着剤b1)、比較例2(接着剤b2)及び比較例3(接着剤b3)は、冷熱繰り返し試験後において、接着剤の剥がれが発生したため、評価結果はNGであった。
【0084】
以上の「(1)伸び率試験評価」、「(2)接着強度試験評価」、「(3)ダンベル状試験片引張強度試験評価」、「(4)冷熱繰り返し試験評価」の評価結果において、「(1)伸び率試験評価」では、実施例1(接着剤a1)、実施例2(接着剤a2)及び実施例3(接着剤a3)は、-20℃、23℃、70℃において、伸び率60%以上であり、評価結果がOKであった。実施例1(接着剤a1)、実施例2(接着剤a2)及び実施例3(接着剤a3)は、いずれも、変性シリコーンを含んだ接着剤である。「(1)伸び率試験評価」で評価結果がOKであった実施例1(接着剤a1)、実施例2(接着剤a2)及び実施例3(接着剤a3)のうち、実施例1(接着剤a1)は、「(2)接着強度試験評価」、「(3)ダンベル状試験片引張強度試験評価」及び「(4)冷熱繰り返し試験評価」の評価結果がOKであった。よって、以上の評価結果では、実施例1(接着剤a1)の接着剤が、伸び率が60%以上で、かつ、接着強度が3MPa以上であって、引張強度が3MPa以上であり、高温から低温の温度条件において柔軟性を有すると共に、接着強度が高く接着時の剛性が高い接着剤であることが分かった。実施例1(接着剤a1)の接着剤は、エポキシ及び変性シリコーンを含んで構成される二成分系接着剤である。
【0085】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0086】
前記実施形態においては、パラレル移動障子20、スライド移動障子30及びFIX障子40(障子)の上框及び下框は、図示を省略しているが、上框及び下框に、接着剤Aによりガラスパネル(室外側ガラス板21,31,41及び室内側ガラス板23,33,43)を固定する構成としてもよい。
【0087】
前記実施形態においては、3枚のガラスパネル(複層ガラス)と框(縦框25,35,45)とを接着剤Aにより接着するように構成したが、これに限定されない。1枚ガラスパネルと框とを接着剤Aにより接着するように構成してもよい。
【0088】
前記実施形態においては、障子を、パノラマ窓に用いられる左右方向Xに一直線上に並んで配置される3枚の障子により構成したが、これに限定されない。本実施形態の障子は、框とガラスパネルとを有する障子であればよく、例えば、引き違い窓、片引き窓、出窓、天窓、開き窓テラス、装飾窓(はめ殺し窓(FIX窓)、上げ下げ窓、縦すべり出し窓、ガラスルーバー窓、オーニング窓、横すべり出し窓、内倒し窓、外倒し窓、押出し窓、縦軸回転窓、横軸回転窓、中軸回転窓、コーナーウィンドウ、内開きと内倒しとを可能とするドレーキップ窓)、テラスドアなどに用いられる障子に適用できる。
【0089】
前記実施形態においては、框(縦框25,35,45)を、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber-Reinforced Plastics)により構成したが、これに限定されない。例えば、框を、樹脂材料や金属材料により構成してもよい。
【符号の説明】
【0090】
20 パラレル移動障子(障子)、30 スライド移動障子(障子)、40 FIX障子(障子)、21,31,41 室外側ガラス板(ガラスパネル)、23,33,43 室内側ガラス板(ガラスパネル)、25,35,45 縦框(框)、251,351,451 室外側見付面固定部(一方側見付面固定部、見付面固定部)、252,352,452 見込面延在部、253,353,453 室内側見付面固定部(他方側見付面固定部、見付面固定部)、A 接着剤
図1
図2
図3