(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179871
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ビフィズス菌増殖促進剤、ならびにこれを含む食品および医薬品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/125 20160101AFI20241219BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/733 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L29/30
A61P43/00 121
A61P1/10
A61K31/702
A61K31/733
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099129
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(71)【出願人】
【識別番号】511045475
【氏名又は名称】株式会社農
(71)【出願人】
【識別番号】313014608
【氏名又は名称】ウェルネオシュガー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】舩坂 好平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 彩子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 匡
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 巧
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 学之
(72)【発明者】
【氏名】原 和志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 修啓
(72)【発明者】
【氏名】山川 早紀
(72)【発明者】
【氏名】平林 克樹
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD31
4B018MD33
4B018MD47
4B018MD87
4B018ME11
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH01
4B041LK11
4B041LK33
4B041LK42
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086EA20
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA73
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】複数のビフィズス菌増殖成分を組み合わせて単独で使用した場合よりも多くの種類のビフィズス菌を早期に増殖促進可能なビフィズス菌増殖促進剤、ならびにこれを含む食品および医薬品を提供する。
【解決手段】本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤は、有効成分として、1-ケストースおよびイヌリンを含むことを特徴とする。本発明に係る食品は、本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤を含むことを特徴とする。本発明に係る医薬品は、本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、1-ケストースおよびイヌリンを含むビフィズス菌増殖促進剤。
【請求項2】
前記有効成分を添加した条件での培養開始後8時間経過時点における、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、および、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222それぞれの増殖量が、前記有効成分を添加しない条件での増殖量と比較して2倍以上になる特性を有すること
を特徴とする請求項1記載のビフィズス菌増殖促進剤。
【請求項3】
前記有効成分を添加した条件での培養開始後8時間経過時点における、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)JCM1192、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum subsp. catenulatum)JCM1194、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)JCM1209、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM1275、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM7046、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)JCM7096、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)JCM10602、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カシワノヘンス(Bifidobacterium catenulatum subsp. Kashiwanohense)JCM15439、および、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM15918それぞれの増殖量が、前記有効成分を添加しない条件と比較して2倍以上になる特性を有すること
を特徴とする請求項1記載のビフィズス菌増殖促進剤。
【請求項4】
前記有効成分に加えて1種類以上のビフィズス菌を含むシンバイオティクスである請求項1~3のいずれか1項に記載のビフィズス菌増殖促進剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のビフィズス菌増殖促進剤を含む食品または医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフィズス菌増殖促進剤、ならびにこれを含む食品および医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
上部消化管で分解、吸収されずに下部消化管に到達し、大腸に共生する有益な細菌の選択的な基質となって、それらの増殖を促進しまたは代謝を活性化し、これにより腸内細菌叢を健康的なバランスに改善しまたは維持して、ヒトの健康に有益な効果を誘導する成分が知られており、食品成分としてはプレバイオティクスとして知られている。具体的には、一例として、所定のオリゴ糖や食物繊維等が知られている。
【0003】
このような成分によって増殖が促進されまたは代謝が活性化される有益な細菌の一つとして、ビフィズス菌が知られている。ビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)に属する細菌で、腸内細菌叢におけるいわゆる善玉菌として、乳酸や酢酸を産生して腸内環境を健康的に改善しまたは維持する機能を有することが知られている。ビフィズス菌は、食品形態等として摂取可能なプロバイオティクスとしても利用されている。そして、ビフィズス菌の増殖促進効果を有する成分(以下、「ビフィズス菌増殖成分」と略記する場合がある)の一つとして、1-ケストースが知られている(特許文献1:特開2005-306781号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1-ケストースに例示されるビフィズス菌増殖成分は複数知られており、それぞれがビフィドバクテリウム属に属する特定の細菌の増殖を促進する作用を有することが知られている。そこで、これらを組み合わせることで双方が不足する部分を補ってより多くの種類のビフィズス菌の増殖促進を実現することが望まれる。しかしながら、複数のビフィズス菌増殖成分を併用した場合のビフィズス菌への影響については十分に解明されておらず、安易に併用することで、例えば作用が拮抗して、増殖促進効果が打ち消されてしまう可能性もある。
【0006】
また、別の課題として、ヒトの食物の経口摂取から残滓の便による排出までの時間は個人差があるものの、例えばこれを24時間と考えた場合、ビフィズス菌増殖成分がビフィズス菌の常在する大腸に到達してから、例えば8時間程度での早期の作用発現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、複数のビフィズス菌増殖成分を組み合わせて単独で使用した場合よりも多くの種類のビフィズス菌を早期に増殖促進可能なビフィズス菌増殖促進剤、ならびにこれを含む食品および医薬品を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤は、有効成分として、1-ケストースおよびイヌリンを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤は、前記有効成分を添加した条件での培養開始後8時間経過時点における、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、および、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222それぞれの増殖量が、前記有効成分を添加しない条件での増殖量と比較して2倍以上になる特性を有するものとすることができる。
【0011】
或いは、本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤は、前記有効成分を添加した条件での培養開始後8時間経過時点における、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)JCM1192、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum subsp. catenulatum)JCM1194、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)JCM1209、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM1275、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM7046、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)JCM7096、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)JCM10602、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カシワノヘンス(Bifidobacterium catenulatum subsp. Kashiwanohense)JCM15439、および、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM15918それぞれの増殖量が、前記有効成分を添加しない条件と比較して2倍以上になる特性を有するものとすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係るビフィズス菌の増殖促進剤は、前記有効成分に加えて1種類以上のビフィズス菌を含むシンバイオティクスとすることもできる。
【0013】
また、本発明に係る食品は、本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤を含む食品として提供される。本発明に係る医薬品は、本発明に係るビフィズス菌増殖促進剤を含む医薬品として提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定のビフィズス菌増殖成分の組み合わせで、単独で使用した場合よりも多くの種類のビフィズス菌を早期に増殖促進することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本実施形態に係るビフィズス菌増殖促進剤(以下、「本剤」と略記する場合がある)は、特定のビフィズス菌増殖成分の組み合わせによる早期作用発現型の網羅的ビフィズス菌増殖促進剤である。
【0016】
ここでいう「早期作用発現型」とは、本発明の有利な特徴を明らかにするための説明的記載で、本剤によれば、例えば、ビフィズス菌が本剤に係るビフィズス菌増殖成分を利用可能になった時点から8時間経過時点の早期の作用発現が可能で且つ発現した作用が長時間に亘って持続可能であることを表す。ビフィズス菌が本剤に係るビフィズス菌増殖成分を利用可能になった時点は、実際の使用例として本剤がヒトに経口摂取された場合に、本剤に係るビフィズス菌増殖成分がビフィズス菌の常在する大腸に到達した時点に相当する。ヒトの食物の経口摂取から残滓の便による排出までの時間は個人差があるものの、例えばこれを24時間と考えた場合、本剤によれば、ビフィズス菌増殖成分が大腸に到達してから8時間での早期の作用発現がなされて且つ長時間に亘って持続されることで、ビフィズス菌増殖成分によるビフィズス菌の十分な増殖促進が実現可能で、ひいてはそれによるヒトの健康へのより有益な効果が期待できる。
【0017】
ここでいう「網羅的」もまた、本発明の有利な特徴を明らかにするための説明的記載で、本剤によれば、特定のビフィズス菌増殖成分の組み合わせで、単独で使用した場合よりも多くの種類のビフィズス菌を増殖促進できることを表す。
【0018】
こうした早期作用発現型の網羅的増殖を実現する本質的要件として、本剤は、有効成分として、フルクトースが重合したフルクタンである1-ケストースとイヌリンとを含む。
【0019】
1-ケストースは、スクロースのフルクトースに1分子のフルクトースがβ(2,1)グリコシド結合で結合する三糖である。一方、イヌリンは、スクロースのフルクトースから2分子以上のフルクトースがβ(2,1)グリコシド結合で順次繋がって伸長する多糖であって、β(2,1)グリコシド結合の結合鎖には、β(2,6)グリコシド結合で結合するフルクトースからなる分岐鎖を有していてもよい。すなわち、イヌリンは、β(2,1)結合の主鎖からなり、β(2,6)結合を有しない直鎖型と、β(2,1)結合の主鎖にβ(2,6)結合の分岐鎖を有していたり、β(2,1)結合鎖とβ(2,6)結合鎖とが双方伸長したりして、限定されない様々な構造を取り得る分岐型とを有する。つまり、直鎖型イヌリンはβ(2,1)グリコシド結合を有し、分岐型イヌリンはβ(2,1)グリコシド結合およびβ(2,6)グリコシド結合を有する。なお、分岐型イヌリンは学術的には「グラミナン」と呼称されることもある。
【0020】
本剤に係る有効成分である1-ケストースおよびイヌリンは、それぞれ市販品が存在するため、それらが製剤成分に使用されてもよい。市販品としては植物等を原料とする天然由来のものが存在する。例えば、1-ケストースは、タマネギ、ライムギ等に含まれる。また、イヌリンは、チコリ、キクイモ等に直鎖型が比較的多く含まれ、ラッキョウ、アガベ(リュウゼツラン属(Agave)に属する植物)等に分岐型が比較的多く含まれる。天然由来品における、抽出、精製の程度は限定されず、相当量の有効成分を含むものであれば本剤に係る製剤成分に使用できる。また、例えば菊芋粉砕物等のように、有効成分の含有率によっては天然物を乾燥、粉末化したもの等も製剤成分に使用できる。したがって、こうした天然物の名称(原料名)が付されている製品は、それに係る有効成分を含んでいる蓋然性が高い。
【0021】
また、市販品としては下記のような酵素等を使用して製造したもの等も存在し、それらが製剤成分に使用されてもよい。例えば、1-ケストースは、スクロース加水分解活性とフルクトース転移活性とを有する所定のβ-フルクトフラノシダーゼを使用した製造方法が知られている(特開昭58-201980号公報等)。具体的に、スクロースを基質として、所定のβ-フルクトフラノシダーゼを37℃~50℃で20時間程度反応させて酵素反応液を得る。この酵素反応液は1-ケストースを相当量含んでいることから、この糖液が製剤成分に使用されてもよい。
【0022】
或いは、当該酵素反応液を、特開2000-232878号公報に開示されているようなクロマト分離法に供することにより得られる、1-ケストース精製液が製剤成分に使用されてもよい。或いは、当該精製液を濃縮し、特公平6-70075号公報に開示されているような結晶化法で結晶化することにより得られる、1-ケストース結晶や、高純度(例えば、98質量%以上)1-ケストース含有物が製剤成分に使用されてもよい。なお、ここでいう「純度」は、糖の総質量100質量%中の1-ケストースの質量%を意味する。或いは、市販のフルクトオリゴ糖から、上記の各方法により、1-ケストースを精製したものや、さらに結晶化したもの等が製剤成分に使用されてもよい。
【0023】
また、例えば、イヌリンは、スクロースを基質として、イヌリン合成酵素を反応させることによる製造方法が知られている(国際公開第2003/027304号等)。また、例えば、特表2022-549314号公報等にも、所定の酵素を用いてイヌリンを製造する方法が記載されている。
【0024】
1-ケストースとして、例えば、伊藤忠製糖(株)製の「iKesクリスタル」(登録商標)等を使用できる。また、イヌリンとして、例えば、帝人(株)製の「イヌリア」(登録商標)、粉末の「イヌリアCLR」や「イヌリアTEX!」、シロップの「イヌリアLF92」等を使用できる。或いは、同じくイヌリンとして、例えば、(株)テルヴィス製の「有機アガベイヌリンIM」等も使用できる。
【0025】
1-ケストースおよびイヌリンは、通常知られている分析法のうち、分析試料の状況に適した方法により分析することが可能であり、当業者により分析試料の状況に応じて通常選択される方法を使用できる。一例として、分析試料を水に溶解し、或いは液体試料は必要に応じて水で希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して糖組成を分析することができる。また、クロマトグラムのピーク面積の割合を質量の割合として、これらの含有量も算出できる。その他、GC-MS、FT-IR、市販のフルクタン測定キット等を利用して分析することもできる。
【0026】
本発明の目的を達するビフィズス菌増殖促進効果は、培養開始後の所定の時点((例えば、8時間経過時点、24時間経過時点等)におけるビフィズス菌の増殖量を、有効成分の有無の条件で比較して、有効成分を添加した条件での増殖量が有効成分を添加しない条件での増殖量の2倍以上であった場合、その時点においてビフィズス菌の増殖促進効果が発揮されたと評価する。後述の実施例によれば、有効成分として1-ケストースのみを添加した条件では、培養開始後24時間経過時点においては、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、および、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222いずれの増殖も促進されたが、同条件であっても培養開始後8時間経過時点においては、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222の増殖は促進されなかった。これに対して、有効成分として1-ケストースおよびイヌリンを添加した条件では、培養開始後8時間経過時点の早期に、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、および、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222いずれの増殖も促進することができた(表4)。
【0027】
さらに、有効成分として、1-ケストースおよびイヌリンを添加した条件では、培養開始後8時間経過時点の早期に、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)JCM1192、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum subsp. catenulatum)JCM1194、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)JCM1209、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM1275、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM7046、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)JCM7096、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)JCM10602、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カシワノヘンス(Bifidobacterium catenulatum subsp. Kashiwanohense)JCM15439、および、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM15918いずれの増殖も促進することができた(表3)。
【0028】
本剤に係る1-ケストースとイヌリンとの併用に際しては、各々の用量を、ビフィズス菌増殖成分としてそれぞれの単独での通常用量と同量以上に設定する必要はない。後述の実施例によれば、むしろ各々の用量を、各々単独での通常用量の少なくとも半分量まで減らして、ビフィズス菌の増殖を早期に且つ網羅的に促進できる。
【0029】
本剤は、有効成分として規定される1-ケストースおよびイヌリン以外の成分は限定されず、他の栄養成分(炭水化物、ポリフェノール、ビタミン類、ビタミン様物質、脂質、アミノ酸、タンパク質、ミネラル等)その他の食品成分や、薬効成分、生薬等を含んでいてもよい。本剤は、1-ケストースおよびイヌリンを含むプレバイオティクスとして提供することができる。これを摂取(投与)することで、腸内に常在するビフィズス菌の増殖を早期に且つ網羅的に促進できる。或いは、プレバイオティクスとしての1-ケストースおよびイヌリンに、プロバイオティクスであるビフィズス菌を加えることで、本剤は、1-ケストースおよびイヌリン、ならびに1種類以上のビフィズス菌を含むシンバイオティクスとしても提供することができる。これを摂取(投与)することで、摂取(投与)されたビフィズス菌および腸内に常在するビフィズス菌の増殖を早期に且つ網羅的に促進できる。
【0030】
また、本剤の剤型は限定されず、一例として、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤(サプリメントを含む)、また、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、その他非経口用液体製剤等の剤型に適宜成形することができる。また、適切なドラッグデリバリーシステム(DDS)が適用されてもよい。公知の方法により適宜各剤型に成形、製剤化が可能で、成形、製剤化に際して通常添加される賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、増粘剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤等の添加物等が本剤に含まれていてもよい。また、本剤の投与方法も限定されず、経口投与、舌下投与、咽頭瘻、胃瘻もしくは腸瘻からの投与等を適宜選択することができる。また、1日当たり単回または複数回に分けて投与されてもよい。
【0031】
また、本剤は、それ自体を食品、医薬品等として適用できる。或いは、本剤を、食品組成物、医薬品組成物等としても適用できる。すなわち、本剤を組成物として適用する場合、組成物としての本剤が配合された食品、医薬品等の形態を取ることができる。換言すると、組成物としての本剤を含む食品、医薬品等の形態を取ることができる。ここでいう「医薬品」は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の第2条第1項に規定する医薬品から同項第2号および第3号の末尾のかっこ書を除いたものを意味し、すなわち医薬部外品を含む。ここでいう「食品」は、飲食される物全般を意味し、飲料を含む。
【0032】
本剤を食品または食品組成物として適用する場合、本剤である食品または本剤を含む食品を、特に、ビフィズス菌の増殖促進およびそれに準ずる保健機能を目的として摂取する食品として適用することができる。すなわち、健康増進法に基づく特定保健用食品や、食品表示法に基づく機能性表示食品等として、特定の保健機能を表示・標榜した製品として適用可能性がある。
【0033】
なお、組成物としての本剤を含む製品の形態も限定されない。すなわち、組成物としての本剤を含む食品、医薬品等もまた、本剤同様に、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤(サプリメントを含む)、また、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、その他非経口用液体製剤等の剤型の形態であってもよい。したがって、1-ケストースとイヌリンとを含む製剤は、本剤そのものとしての食品、医薬品等に該当すると共に、組成物としての本剤を含む食品、医薬品等にも該当する場合がある。
【0034】
さらに、1-ケストース、イヌリン等は、ヒトが日常的に摂取する食物にも含まれており、比較的高い安全性を有する食品成分として利用可能である。特に、1-ケストースは、吸湿性がきわめて低く、溶解性および耐熱性に優れることから、食品加工時の利便性が高く、さらに、砂糖に類似した甘味を示すことから、砂糖の代替品としても使用可能である。このような1-ケストースの特性を活かして、組成物としての本剤を含む食品は、例えば、ケストースおよびイヌリンが配合された、ガム、グミ、キャンディーその他の菓子、また、フレーク状もしくはパフ状のシリアル、また、バー、ゼリー、ドリンクゼリー、嚥下食品、飲料等の各種の食品として好適に適用できる。
【実施例0035】
以下の実施例の説明における「細菌」は、ビフィドバクテリウム属に属する細菌(ビフィズス菌)であることを前提とする。
【0036】
プロバイオティクスとして利用し得るビフィドバクテリウム属に属する11種類の細菌を試料としてゲノムの解析を行い、イヌリン加水分解酵素であるイヌリナーゼをコードする遺伝子の有無を調査した。
【0037】
これにより、イヌリナーゼ遺伝子を持つ細菌として、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM1275、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)JCM7096、およびビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カシワノヘンス(Bifidobacterium catenulatum subsp. Kashiwanohense)JCM15439の4種類を抽出した。これらの細菌群を系統(II)とした。
【0038】
また、イヌリナーゼ遺伝子が発見されなかった残りの7種類の細菌について、ゲノムの解析から、いずれの細菌もスクロース加水分解酵素であるβ-フルクトフラノシダーゼをコードする遺伝子cscAを持つことを明らかにした。当該7種類の細菌は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)JCM1192、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum subsp. catenulatum)JCM1194、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)JCM1209、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM7046、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)JCM10602、およびビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)JCM15918である。これらの細菌群を系統(I)とした。
【0039】
そのうえで、系統(I)に係る細菌群対しては、炭素源として1-ケストース(1-Kestose)(以下、「Kes」と略記する場合がある)を添加した系において培養試験を行った。また、系統(II)に係る細菌群に対しては、炭素源としてイヌリン(Inulin)(直鎖型イヌリン)を添加した系において培養試験を行った。
【0040】
1-ケストースおよびイヌリンは下記のものを使用した(以下、全試験において同じ)。
1-ケストース:iKesクリスタル(登録商標)(純度95質量%)、伊藤忠製糖(株)
イヌリン:製品名は成分名と同一、シグマアルドリッチジャパン合同会社
【0041】
[試験1]
培地は、TPY培地( ハイポリペプトン(日本製薬(株))10g、酵母エキス(日本ベクトン・ディッキンソン(株))5g、Tween80(東京化成工業(株))2g、K2HPO4(富士フイルム和光純薬(株))3g、L-システイン塩酸塩-水和物(富士フイルム和光純薬(株))1g、MgSO4・7H2O(富士フイルム和光純薬(株))2.6g、CaCl2(富士フイルム和光純薬(株))0.3g、FeCl3・6H2O(富士フイルム和光純薬(株))6mg、および1mg/Lに調製したレサズリンナトリウム塩(東京化成工業(株))2mLを、1Lの水に溶解させて調製したTPY培地 )を基礎培地とした。
【0042】
1-ケストースおよびイヌリンを、各々100mg/mLの濃度で調製した。96ディープウェルプレートに、TPY培地を500μL添加し、さらに1-ケストースおよびイヌリンを各々10mg/mLの終濃度になるように添加して、合計1mLの下記の検証培地aおよび検証培地bを調製した。また、TPY培地を500μLに適量の水を加えて合計を1mLにした下記の対照培地を調製した。
対照培地 :TPY培地+水(無添加培地)
検証培地a:TPY培地+1-ケストース+水(Kes添加培地)
検証培地b:TPY培地+イヌリン+水(Inulin添加培地)
【0043】
各細菌については、炭素源としてグルコースを0.5質量%含むTPY培地にて、16時間~24時間前培養した。前培養後、系統(I)に係る細菌については、対照培地および検証培地aに各々植菌し、系統(II)に係る細菌については、対照培地および検証培地bに各々植菌し、培養した。植菌量は、培地1mL当たり2質量%となる20μLを添加した。
【0044】
培養開始後8時間経過時点および24時間経過時点で、各培地の濁度を測定した。各時点での濁度測定値から、培養開始時点での濁度測定値をBlank値としてそれぞれ差し引いて正味の濁度を算出し、各時点での細菌増殖量とした。濁度の測定はプレートリーダー(Sunrise Rainbow、Tecan社)を使用し、吸光度波長660nmにおける濁度を測定した。また、培養開始時点の濁度は、植菌前の各培地の濁度を測定した。
【0045】
算出した細菌増殖量に基づいて細菌の増殖促進効果を評価した。すなわち、培養開始後8時間経過時点および24時間経過時点における、検証培地aまたは検証培地bでの細菌増殖量(正味濁度)を、同時点における対照培地での細菌増殖量(正味濁度)で除算した評価値を、下記の基準で区分して評価した。
【0046】
評価値 = ( 培養開始後8時間経過時点または24時間経過時点における、検証培地aまたは検証培地bでの細菌増殖量(正味濁度) ) / ( 培養開始後8時間経過時点または24時間経過時点における、対照培地での細菌増殖量(正味濁度) )
= 2.0未満 :増殖促進効果なし(-)
= 2.0以上4.0未満:増殖促進効果あり(+)
= 4.0以上6.0未満:増殖促進効果あり(++)
= 6.0以上8.0未満:増殖促進効果あり(+++)
= 8.0以上 :増殖促進効果あり(++++)
【0047】
つまり、対照培地での増殖量と比較して2倍以上の増殖量が確認されたものについて、細菌の増殖促進効果が発揮されたものと評価した。検証培地aの結果を表1に、検証培地bの結果を表2に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
系統(I)に係る細菌群は、cscAを持ち、スクロースのフルクトースを認識してスクロースをグルコースとフルクトースとに加水分解するβ-フルクトフラノシダーゼ(CscA)産生能を持つ群である。β-フルクトフラノシダーゼ(CscA)は、細菌による1-ケストースの資化に関与する酵素である。表1に示すように、系統(I)に係るいずれの細菌も培養開始後24時間経過時点においては1-ケストースによる増殖促進効果が確認された。一方、培養開始後8時間経過時点では、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カテヌラータム(Bifidobacterium catenulatum subsp. catenulatum)JCM1194については増殖促進効果が発揮されなかった。このことから、cscAを持つものであっても、1-ケストース単独の使用では、細菌によっては、培養開始後8時間経過時点の早期には本発明の目的を達する十分な増殖促進効果が発揮されないことが示された。
【0051】
系統(II)に係る細菌群は、イヌリナーゼ遺伝子を持ち、イヌリンのβ(2,1)グリコシド結合を加水分解するイヌリナーゼ産生能を持つ群である。イヌリナーゼは、細菌によるイヌリンの資化に関与する酵素である。表2に示すように、系統(II)に係るいずれの細菌も培養開始後24時間経過時点においてはイヌリンによる増殖促進効果が確認された。一方、培養開始後8時間経過時点では、ドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)JCM7096、およびビフィドバクテリウム・カテヌラータム 亜種 カシワノヘンス(Bifidobacterium catenulatum subsp. Kashiwanohense)JCM15439については増殖促進効果が発揮されなかった。このことから、イヌリナーゼ遺伝子を持つものであっても、イヌリン単独の使用では、細菌によっては、培養開始後8時間経過時点の早期には本発明の目的を達する十分な増殖促進効果が発揮されないことが示された。
【0052】
次に、系統(I)および系統(II)に係る細菌群に対して、炭素源として1-ケストースおよびイヌリンを添加した系において培養試験を行った。
【0053】
[試験2]
試験2は、試験1と同様の方法で行った。すなわち、試験1と同組成のTPY培地を基礎培地とした。炭素源となる糖質については、1-ケストースおよびイヌリンを、各々100mg/mLの濃度で調製した。96ディープウェルプレートに、TPY培地を500μL添加し、さらに1-ケストースとイヌリンとを50:50の用量で混合して終濃度が10mg/mLになるように添加して、合計1mLの下記の検証培地cを調製した。また、TPY培地を500μLに適量の水を加えて合計を1mLにした下記の対照培地を調製した。
対照培地 :TPY培地+水(無添加培地)
検証培地c:TPY培地+1-ケストース+イヌリン+水(Kes+Inulin添加培地)
【0054】
各細菌については、試験1と同じ方法で前培養後、対照培地および検証培地cに各々植菌し、培養した。植菌量は、培地1mL当たり2質量%となる20μLを添加した。
【0055】
試験1と同じ方法で測定、算出した細菌増殖量に基づいて、細菌の増殖促進効果を評価した。すなわち、培養開始後8時間経過時点および24時間経過時点における、検証培地cでの細菌増殖量(正味濁度)を、同時点における対照培地での細菌増殖量(正味濁度)で除算した評価値を、試験1と同基準で区分して評価した。結果を表3に示す。
【0056】
【0057】
表3に示すように、系統(I)および系統(II)に係るいずれの細菌も、培養開始後8時間経過時点および培養開始後24時間経過時点において増殖促進効果が発揮された。すなわち、1-ケストースとイヌリンとの間では作用が拮抗することもなく、併用により、逆に双方の不足する部分が補われて、それぞれ単独の使用では増殖促進することができなかった細菌を含めた全試料に係る細菌を、網羅的に且つ早期に増殖促進することができた。また、その分作用時間が短くなることもなく、培養開始後8時間経過時点の比較的初期の段階から培養開始後24時間経過時点の比較的後期の段階までを通して、長時間に亘って増殖促進効果を持続させることができた。
【0058】
さらに、イヌリナーゼ遺伝子を持つ細菌の例としてビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222、当該遺伝子を持たずcscAを持つ細菌の例としてビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217を試料として、当該試料に対して、炭素源として、1-ケストースおよびアガベイヌリン(Agave)(分岐型イヌリン)を添加した系、ならびに、1-ケストースおよびレバン(Levan)を添加した系において培養試験を行った。
【0059】
[試験3]
アガベイヌリンおよびレバンは下記のものを使用した。
アガベイヌリン:有機アガベイヌリンIM、(株)テルヴィス
レバン:製品名は成分名と同一、シグマアルドリッチジャパン合同会社
【0060】
試験3は、試験1および試験2と同様の方法で行った。すなわち、試験1と同組成のTPY培地を基礎培地とした。炭素源となる糖質については、1-ケストース、アガベイヌリンおよびレバンを、各々100mg/mLの濃度で調製した。96ディープウェルプレートに、TPY培地を500μL添加し、さらに1-ケストースとアガベイヌリンとを50:50の用量で混合して終濃度が10mg/mLになるように添加して、合計1mLの下記の検証培地dを調製した。また、96ディープウェルプレートに、TPY培地を500μL添加し、さらに1-ケストースとレバンとを50:50の用量で混合して終濃度が10mg/mLになるように添加して、合計1mLの下記の検証培地eを調製した。また、TPY培地を500μLに適量の水を加えて合計を1mLにした下記の対照培地を調製した。
対照培地 :TPY培地+水(無添加培地)
検証培地d:TPY培地+1-ケストース+アガベイヌリン+水(Kes+Agave添加培地)
検証培地e:TPY培地+1-ケストース+レバン+水(Kes+Levan添加培地)
【0061】
各細菌については、試験1と同じ方法で前培養後、対照培地、検証培地dおよび検証培地eに各々植菌し、培養した。植菌量は、培地1mL当たり2質量%となる20μLを添加した。
【0062】
試験1と同じ方法で測定、算出した細菌増殖量に基づいて、細菌の増殖促進効果を評価した。すなわち、培養開始後8時間経過時点における、検証培地dまたは検証培地eでの細菌増殖量(正味濁度)を、同時点における対照培地での細菌増殖量(正味濁度)で除算した評価値を、試験1と同基準で区分して評価した。結果を表4に示す。また、表1-3から、検証培地a、b、cに係るデータもあわせて再掲する。
【表4】
【0063】
レバンは、スクロースのフルクトースから2分子以上のフルクトースがβ(2,6)グリコシド結合で順次繋がって伸長する多糖であって、ここで使用したものもβ(2,1)グリコシド結合を有しないかほぼ有しない。これに対して、分岐型イヌリンであるアガベイヌリンは、β(2,1)グリコシド結合およびβ(2,6)グリコシド結合を有する。表4に示すように、1-ケストースとイヌリンとの組み合わせ(検証培地c)、および1-ケストースとアガベイヌリンとの組み合わせ(検証培地d)だけが、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)JCM1217、およびインファンティス(Bifidobacterium infantis)JCM1222の両ビフィズス菌に対して、培養開始後8時間経過時点の早期における増殖促進効果を発揮した。
【0064】
このことから、イヌリンは直鎖型(Inulin)、分岐型(Agave)の別に関わらず1-ケストースとの間でビフィズス菌の増殖促進作用が拮抗することなく、1-ケストースとイヌリンとの併用により、逆に双方の不足する部分が補われて、単独の使用では時期によって増殖促進することができない細菌を含めて、網羅的に且つ早期にビフィズス菌の増殖を促進できることが示された。すなわち、1-ケストースと、直鎖型イヌリンおよび分岐型イヌリンを含む、1-ケストース以外の、β(2,1)グリコシド結合を有するフルクタンとの併用により、単独で使用した場合よりも多くの種類のビフィズス菌を早期に増殖促進できることが示された。一方、β(2,6)グリコシド結合の主鎖からなり、β(2,1)グリコシド結合を有しないレバンでは、1-ケストースとの間で作用が拮抗し、少なくとも培養開始後8時間経過時点の比較的初期の段階においては各々の増殖促進作用が打ち消されてしまって、ビフィズス菌の増殖が促進されなかった。