(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179874
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 19/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B60B19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099154
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 健一郎
(57)【要約】
【課題】安定した動作を確保することができると共に、組み立て性を良好にすることができるホイールを提供する。
【解決手段】ホイールは、複数のバレル部材と、ホイール体と、を備える。バレル部材は、外皮部と、バレルシャフトと、軸受部と、それぞれ貫通穴が設けられており、貫通穴にバレルシャフトが挿入される一対の受け具と、それぞれねじ溝が設けられ、それぞれ一対の受け具の外側においてバレルシャフトのねじ山に取り付けられる一対のナットと、を含む。ホイール体は、それぞれバレルシャフトを回転可能に支持する一対のプレート部と、一対のプレート部をホイールの回転軸方向に間隔をあけて保持する本体部と、を含む。一対のプレート部にはそれぞれ、外径側に開放され、バレルシャフトを受け入れる溝部が設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバレル部材と、
前記複数のバレル部材が外周側に取り付けられるホイール体と、を備え、
前記バレル部材は、
曲面で構成されており、前記バレル部材の長手方向の両端から中央に向かって直径が徐々に大きくなる外周面を有する外皮部と、
前記長手方向に延び、前記外皮部を前記長手方向に貫通するように配置され、両端部にねじ山が設けられるバレルシャフトと、
前記バレルシャフトに負荷される荷重を受ける軸受部と、
それぞれ貫通穴が設けられており、前記貫通穴に前記バレルシャフトが挿入される一対の受け具と、
それぞれねじ溝が設けられ、それぞれ前記一対の受け具の外側において前記バレルシャフトの前記ねじ山に取り付けられる一対のナットと、を含み、
前記ホイール体は、
それぞれ前記バレルシャフトを回転可能に支持する一対のプレート部と、
前記一対のプレート部をホイールの回転軸方向に間隔をあけて保持する本体部と、を含み、
前記一対のプレート部にはそれぞれ、外径側に開放され、前記バレルシャフトを受け入れる溝部が設けられる、ホイール。
【請求項2】
前記受け具は、
前記長手方向の一方側の端部を含む小径領域と、
前記長手方向の他方側の端部を含み、前記小径領域よりも外径の大きい大径領域と、を含み、
前記プレート部には、外側面から前記長手方向に凹み、前記溝部を含むように嵌合凹部が設けられ、
前記小径領域は、前記嵌合凹部に嵌め込まれる、請求項1に記載のホイール。
【請求項3】
前記溝部を構成する壁面は、前記ホイールの外径側に真っ直ぐに延びる形状である、請求項1または請求項2に記載のホイール。
【請求項4】
前記バレルシャフトは、前記長手方向において、
前記一対にプレート部に挟まれる第1領域と、
前記第1領域の両端側に位置する第2領域と、を含み、
前記第1領域の外径は、前記第2領域の外径よりも大きく、
前記溝部は、前記第2領域において前記バレルシャフトを受け入れる、請求項1または請求項2に記載のホイール。
【請求項5】
前記軸受部は、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受ける、請求項1または請求項2に記載のホイール。
【請求項6】
前記軸受部は、シェル外輪を含むシェル複合形ローラベアリングである、請求項5に記載のホイール。
【請求項7】
前記シェル複合形ローラベアリングは、スラスト方向の荷重を受ける一方の軌道輪を兼ねるリング部材を含む、請求項6に記載のホイール。
【請求項8】
前記シェル複合形ローラベアリングは、前記ラジアル方向の荷重を受ける外輪を構成するシェル外輪を含み、
前記シェル外輪は、前記スラスト方向の荷重を受けるローラの外周側に位置する部分を含む、請求項6に記載のホイール。
【請求項9】
前記シェル外輪の厚さは、0.2mm以上3.2mm以下である、請求項8に記載のホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のバレル部材を備えるホイールが開示されている(例えば特許文献1または特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-26266号公報
【特許文献2】特開2021-146849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のバレル部材を備えるホイールについては、メカナムホイールとして移動体に組み込まれた際に、安定して動作することが求められる。また、ホイールには、複数のバレル部材が組み込まれるが、一部のバレル部材を交換したい場合が生じる。このようなときに、バレル部材の容易な着脱を可能にする良好な組み立て性も求められる。
【0005】
そこで、安定した動作を確保することができると共に、組み立て性を良好にすることができるホイールを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったホイールは、複数のバレル部材と、複数のバレル部材が外周側に取り付けられるホイール体と、を備える。バレル部材は、曲面で構成されており、バレル部材の長手方向の両端から中央に向かって直径が徐々に大きくなる外周面を有する外皮部と、長手方向に延び、外皮部を長手方向に貫通するように配置され、両端部にねじ山が設けられるバレルシャフトと、バレルシャフトに負荷される荷重を受ける軸受部と、それぞれ貫通穴が設けられており、貫通穴にバレルシャフトが挿入される一対の受け具と、それぞれねじ溝が設けられ、それぞれ一対の受け具の外側においてバレルシャフトのねじ山に取り付けられる一対のナットと、を含む。ホイール体は、それぞれバレルシャフトを回転可能に支持する一対のプレート部と、一対のプレート部をホイールの回転軸方向に間隔をあけて保持する本体部と、を含む。一対のプレート部にはそれぞれ、外径側に開放され、バレルシャフトを受け入れる溝部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
上記ホイールによれば、安定した動作を確保することができると共に、組み立て性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1におけるホイールを示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、1つのバレル部材を含むホイールに一部を拡大して示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図5において、後述するナットおよび受け具を取り外した状態を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、軸受部の外観を示す概略斜視図である。
【
図10】
図10は、ホイールを組み立てる際のホイールの一部を示す概略斜視図である。
【
図11】
図11は、プレート部に構造体を組み込む状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本開示のホイールは、複数のバレル部材と、複数のバレル部材が外周側に取り付けられるホイール体と、を備える。バレル部材は、曲面で構成されており、バレル部材の長手方向の両端から中央に向かって直径が徐々に大きくなる外周面を有する外皮部と、長手方向に延び、外皮部を長手方向に貫通するように配置され、両端部にねじ山が設けられるバレルシャフトと、バレルシャフトに負荷される荷重を受ける軸受部と、それぞれ貫通穴が設けられており、貫通穴にバレルシャフトが挿入される一対の受け具と、それぞれねじ溝が設けられ、それぞれ一対の受け具の外側においてバレルシャフトのねじ山に取り付けられる一対のナットと、を含む。ホイール体は、それぞれバレルシャフトを回転可能に支持する一対のプレート部と、一対のプレート部をホイールの回転軸方向に間隔をあけて保持する本体部と、を含む。一対のプレート部にはそれぞれ、外径側に開放され、バレルシャフトを受け入れる溝部が設けられる。
【0010】
本開示のホイールによると、外皮部を取り付けたバレルシャフトを、バレルシャフトを受け入れる溝部を利用して、一対のプレート部に支持させることができる。溝部は、ホイールの外径側に開放された形状であるため、ホイールの外径側から容易にバレルシャフトを組み込むことができる。バレルシャフトを組み込んだ後、受け具を装着してナットで締め付けることにより、一対のプレート部に取り付けたバレルシャフトを確実に固定することができる。この場合、ホイールの動作時において、バレル部材には内径方向の負荷が作用し、外径方向には負荷がかからない。したがって、プレート部に溝部が設けられていても、強度的に問題はない。したがって、受け具を挿入したプレート部の破損を回避しながら、受け具およびナットによる保持によって確実にバレルシャフトの外径方向への抜けを抑制することができる。その結果、ホイールの安定した動作を確保しながら、バレルシャフトの脱落を確実に抑制することができる。また、受け具およびナットを取り外して、ホイールの外径側から容易にバレルシャフトを取り外すことができる。すなわち、例えば全てのバレルシャフトの固定を解除して一方のプレート部を本体部から取り外すといった大掛かりな分解を要する作業が生じることはない。したがって、バレル部材の交換も容易に行うことができる。以上より、このようなホイールによると、安定した動作を確保することができると共に、組み立て性を良好にすることができる。
【0011】
上記ホイールにおいて、受け具は、長手方向の一方側の端部を含む小径領域と、長手方向の他方側の端部を含み、小径領域よりも外径の大きい大径領域と、を含んでもよい。プレート部には、外側面から長手方向に凹み、溝部を含むように嵌合凹部が設けられてもよい。小径領域は、嵌合凹部に嵌め込まれてもよい。このようにすることにより、受け具の小径領域を嵌合凹部に嵌め込んで、受け具をプレート部に固定することができる。したがって、バレルシャフトをより安定して支持することができ、より円滑なバレル部材の回転を確保することができる。
【0012】
上記ホイールにおいて、溝部を構成する壁面は、ホイールの外径側に真っ直ぐに延びる形状であってもよい。このようにすることにより、ホイールの外径側から、外皮部等をセットしたバレルシャフトをより円滑に溝部内に組み込むことができる。したがって、より組み立て性の向上を図ることができる。
【0013】
上記ホイールにおいて、バレルシャフトは、長手方向において、一対のプレート部に挟まれる第1領域と、第1領域の両端側に位置する第2領域と、を含んでもよい。第1領域の外径は、第2領域の外径よりも大きくてもよい。溝部は、第2領域においてバレルシャフトを受け入れてもよい。このようにすることにより、バレルシャフトの長手方向において、第1領域を一対のプレート部に引っ掛かかるようにすることが容易になり、バレルシャフトの長手方向の移動を規制しやすくなる。したがって、より安定したホイールの動作を確保することができる。
【0014】
上記ホイールにおいて、軸受部は、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受けてもよい。このようにすることにより、バレルシャフトに負荷されるラジアル荷重およびスラスト荷重を軸受部によって適切に受けることができる。したがって、より安定したホイールの動作を確保することができる。
【0015】
上記ホイールにおいて、軸受部は、シェル外輪を含むシェル複合形ローラベアリングであってもよい。このようにすることにより、ラジアル方向の荷重を受ける軸受およびスラスト方向の荷重を受ける軸受を一体化して、バレルシャフトへの軸受部の取り付けの効率化を図ることができると共に、部品点数の削減を図ることができる。したがって、より生産性の向上を図ることができる。
【0016】
上記ホイールにおいて、シェル複合形ローラベアリングは、スラスト方向の荷重を受ける一方の軌道輪を兼ねるリング部材を含んでもよい。このようにすることにより、スラスト荷重をリング部材により適切に受けることができる。したがって、より安定してホイールの動作を確保することができる。
【0017】
上記ホイールにおいて、シェル複合形ローラベアリングは、ラジアル方向の荷重を受ける外輪を構成するシェル外輪を含んでもよい。シェル外輪は、スラスト方向の荷重を受けるローラの外周側に位置する部分を含んでもよい。このようにすることにより、シェル外輪により、軸受部の外径側に位置するパーツを一体化することができるため、組み立て性の向上を図ることができる。したがって、より生産性の向上を図ることができる。
【0018】
上記ホイールにおいて、シェル外輪の厚さは、0.2mm以上3.2mm以下であってもよい。このようにすることにより、ホイールを構成する部材として求められる剛性を維持しつつ、絞り加工等によって製造されるシェル外輪を効率的に製造することができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0019】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のホイールの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態である実施の形態1について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1におけるホイールを示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示すホイールの概略側面図である。
図3は、
図1に示すホイールの概略正面図である。
図4は、
図1に示すホイールの概略背面図である。
図1以下に示す図において、矢印Zで示す方向をホイールの回転軸方向、矢印Xおよび矢印Yで示す方向を径方向とする。矢印Xで示す方向および矢印Yで示す方向は、直交している。
【0021】
図1~
図4を参照して、本開示のホイール10aは、メカナムホイールとも称され、例えば、移動体の車輪として利用される。複数のメカナムホイールを組み合わせてそれぞれの回転数や回転方向等を制御することにより、ハンドルを用いなくとも全方向に移動体を移動させることができる。移動体には、例えば前後左右に4つのホイール10aが取り付けられる。ホイール10aの大きさ、例えば
図2におけるX方向の長さは、150mmである。
【0022】
ホイール10aは、複数、本実施形態においては、10個のバレル部材20aと、複数のバレル部材20aが外周側に取り付けられるホイール体11aと、を含む。ホイール体11aは、一対のプレート部12a,13aと、本体部14aと、を含む。プレート部12a,13aはそれぞれ円板状であって、径方向の中央に貫通穴が設けられている。プレート部12aは、後述するバレル部材20aのバレルシャフト23aを支持する支持部15aが設けられている。同様に、プレート部13aには、バレルシャフトを支持する支持部16aが設けられている。一対のプレート部12a,13aは、それぞれバレルシャフトを回転可能に支持する。本体部14aは円筒状であって、複数の取り付け穴が設けられている。本体部14aは、一対のプレート部12a、13aをホイール10aの回転軸方向(Z方向)に間隔をあけて保持する。本体部14aは、図示しないモータ等の駆動源に連結される。ホイール10aは、モータ等から伝達された動力を基に、制御された回転数や回転方向で回転する。
【0023】
図5は、1つのバレル部材20aを含むホイール10aに一部を拡大して示す概略断面図である。
図5は、バレル部材20aの回転中心軸に沿って切断した場合の断面図に相当する。
図6は、
図5において、後述する受け具26a,27aおよびナット28a,29aを取り外した状態を示す概略断面図である。
図7は、
図6中のVIIで示す領域の拡大図である。
図7は、
図6において、後述する軸受部を拡大した概略断面図である。
図5、
図6および
図7において、バレル部材20aの長手方向を、矢印Lで示す方向によって図示する。L方向は、Z方向に対して45度傾斜している。
【0024】
図5、
図6および
図7を併せて参照して、バレル部材20aは、外皮部21aと、芯部22aと、バレルシャフト23aと、一対の軸受部24a,25aと、一対の受け具26a,27aと、一対のナット28a,29aと、を含む。外皮部21aは、曲面で構成されている外周面31aを有する。外周面31aは、バレル部材20aの長手方向の両端から中央に向かって直径が徐々に大きくなる。すなわち、バレル部材20aの直径については、バレル部材20aの外皮部21aの長さ方向の中央における直径D1が最も大きく、バレル部材20aの外皮部21aの長さ方向の両端における直径D2が最も小さい(特に
図6参照)。
図5および
図6に示す断面において、外皮部21aの外周面31aは、長手方向の中央に向かう程、曲率半径が大きくなっている。外皮部21aは、樽状の部材である。外皮部21aには、長手方向に貫通する穴32aが設けられている。穴32a内に芯部22aが配置される。芯部22aを覆うように外皮部21aが取り付けられている。外皮部21aの長手方向の長さは、芯部22aの長手方向の長さよりも長い。
【0025】
外皮部21aは、弾性を有する。外皮部21aの材質としては、ゴムや樹脂が選択される。本実施形態においては、外皮部21aの材質は、ウレタンゴムである。外皮部21aの材質として樹脂を採用する場合、例えば、POM(Poly oxymethylene)樹脂やPA(Poly amide)樹脂、PEEK(Poly Ether EtherKetone)樹脂が用いられる。また、芯部22aは、剛性を有する部材から構成されている。芯部22aの材質としては、例えばアルミニウムをベースとした金属や鋼が用いられ、具体的にはA5052やA6063が採用される。
【0026】
バレルシャフト23aは、丸棒状であって、長手方向に延びる中実円筒状である。バレルシャフト23aは、外皮部21aを長手方向に貫通するように配置される。具体的には、バレルシャフト23aは、芯部22aの中央に設けられた長手方向に貫通する穴33a内に配置される。バレルシャフト23aの外周面34aは、穴33aの内壁面と接触する。バレルシャフト23aの両端は、外皮部21aおよび芯部22aのそれぞれの両端面から突き出る。バレルシャフト23aの両端部には、ねじ山35a,36aが設けられる。ねじ山35a,36aが設けられる領域は、芯部22aの両端面からそれぞれ露出している。
【0027】
バレルシャフト23aは、長手方向において、一対にプレート部12a,13aに挟まれる第1領域17aと、第1領域17aの両端側に位置する第2領域18aと、を含む。第2領域18aは、長手方向において間隔をあけて一対設けられる。第1領域17aおよび一対の第2領域18aのそれぞれの境界は、
図5および
図6において破線で図示している。第1領域17aの外径は、第2領域18aの外径よりも大きい。このような構成により、バレルシャフト23aは、いわゆる段付きの構成となる。
【0028】
バレルシャフト23aの外周面34aには、内径側に凹む一対の円周溝37a,38aが設けられる。円周溝37a,38aはそれぞれ、長手方向に間隔をあけて形成されている。円周溝37a,38aはそれぞれ、長手方向において、第1領域17aと第2領域18aとの境界の領域に設けられる。この円周溝37a,38aは、バレルシャフト23aを段付きの構成とする際の加工上の逃がし溝として利用される。円周溝37a,38aは、ねじ山35a,36aよりも長手方向の中央側に設けられる。なお、本実施形態においては、円周溝37a,38aは、長手方向において、外皮部21aの両端面と揃うように設けられる。
【0029】
次に、受け具26aおよびナット28aの構成について説明する。受け具27aの構成は、受け具26aの構成と同様であるため、その説明を省略する。また、ナット29aの構成は、ナット28aの構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0030】
受け具26aは、カラーとも呼ばれる部材であり、アルミニウム製である。なお、受け具26aは、鋼製であってもよい。受け具26aは、長手方向の一方側の端部を含む小径領域41aと、長手方向の他方側の端部を含み、小径領域41aよりも外径の大きい大径領域42aと、を含む。受け具26aは、中空円筒状の部材において、一方の端部側に外径側に延びる鍔部を形成した形状である。受け具26aには、軸方向に貫通する貫通穴43aが設けられている。この貫通穴43aに、バレルシャフト23aが挿入される。受け具26aは、小径領域41aが内側、すなわち、バレルシャフト23aの中央側となるようにバレルシャフト23aに取り付けられる。ねじ山35aが形成されている長手方向の一方端部側に大径領域42aが向くように貫通穴43aにバレルシャフト23aを挿入して、受け具26aをバレルシャフト23aに装着する。受け具27aについても同様に、ねじ山36aが形成されている長手方向の他方端部側に大径領域42aが向くように貫通穴43aにバレルシャフト23aを挿入して、受け具27aをバレルシャフト23aに装着する。
【0031】
ナット28aは、穴46aを構成する内壁面にねじ溝47aが設けられている。ナット28aの頭部の外形形状は、長手方向に見て六角形である。ナット28aは、受け具27aの外側においてナット28aを回転させ、バレルシャフト23aの端部に設けられるねじ山35aにねじ溝47aを締め付けて取り付けられる。ナット29aについても同様に、受け具27aの外側においてナット29aを回転させ、バレルシャフト23aの端部に設けられるねじ山36aにねじ溝47aを締め付けて取り付けられる。
【0032】
ここで、軸受部24aの構成について説明する。軸受部25aの構成は、軸受部24aの構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0033】
図8は、軸受部24aの外観を示す概略斜視図である。
図9は、
図8に示す軸受部24aの分解斜視図である。なお、理解を容易にする観点から、軸受部24aの取り付け時の方向を、
図5~
図7で示す矢印Lを用いて図示している。
図8および
図9を併せて参照して、軸受部24aは、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受ける。軸受部24aは、後述するシェル外輪55aを含むシェル複合形ローラベアリング50aである。
【0034】
シェル複合形ローラベアリング50aは、複数の第1ローラ51aと、複数の第2ローラ52aと、複数の第1ローラ51aを保持する第1保持器53aと、複数の第2ローラ52aを保持する第2保持器54aと、シェル外輪55aと、軌道輪56aと、リング部材57aと、を含む。第1ローラ51aは、ラジアル方向の荷重を受ける。第2ローラ52aは、スラスト方向の荷重を受ける。軌道輪56aおよびリング部材57aは、それぞれ第2ローラ52aの転動面と接触して、スラスト方向の荷重を受ける軌道輪である。
【0035】
次に、シェル外輪55aの構成について簡単に説明する。シェル外輪55aは、第1円筒部61aと、第2円筒部62aと、底部63aと、鍔部64aと、を含む。底部63aには、穴65aが設けられており、この穴65aにバレルシャフト23aが挿入される。第1円筒部61aおよび第2円筒部62aはそれぞれ、中空円筒状である。第2円筒部62aの外径は、第1円筒部61aの外径よりも大きい。第1円筒部61aの内径側にラジアル方向の荷重を受ける複数の第1ローラ51aが配置される。第1ローラ51aは、バレルシャフト23aの外周面34aと第1円筒部61aの内周面を軌道面として転動する。鍔部64aは、第1円筒部61aの軸方向の一方端部から外径側に延びる円板状である。鍔部64aは、第1円筒部61aの軸方向の一方端部と第2円筒部62aの軸方向の他方端部とを接続するように設けられている。第2円筒部62aの内径側にスラスト方向の荷重を受ける複数の第2ローラ52aが配置される。
【0036】
シェル外輪55aの厚さTは、0.2mm以上3.2mm以下である。本実施形態においては、シェル外輪55aの厚さTは、0.5mmである。シェル外輪55aは、一体で構成されている。シェル外輪55aは、例えば、鋼鈑の絞り加工等により製造される。
【0037】
軌道輪56aは、中央に穴66aが設けられた円板状の円板部67aと、穴66aの縁から厚さ方向に延びる鍔部68aと、を含む。軌道輪56aは、穴66a内にバレルシャフト23aを挿入して取り付けられる。リング部材57aは、円板状であって、厚さ方向に貫通する穴69aが径方向の中央に設けられている。リング部材57aは、穴66a内にバレルシャフト23aを挿入し、鍔部64aと接触するようにして、シェル複合形ローラベアリング50a内に配置される。第2ローラ52aは、軌道輪56aの一方の面とリング部材57aの他方の面を軌道面として転動する。
【0038】
また、本実施形態においては、長手方向において、軸受部24aであるシェル複合形ローラベアリング50aの外側の端面、この場合、軌道輪56aのうちの軌道面と反対側の端面58aは、バレルシャフト23aの外周面34aの円周溝37aが設けられた位置と揃えて配置される。軸受部25aについても同様である。なお、製造誤差等に基づく長手方向における隙間を調整する際に、端面58aに接触するようにスプリングワッシャや単なるワッシャを配置することにしてもよい。
【0039】
次に、再びホイール体11aの構成について説明する。一対のプレート部12a,13aにはそれぞれ、バレルシャフト23aを受け入れる溝部71a,72aが設けられる。本実施形態においては、溝部71a,72aはそれぞれ、第2領域18aにおいてバレルシャフト23aを受け入れる。溝部71aは、プレート部12aの外周側に設けられた支持部15aに設けられる。溝部72aは、プレート部13aの外周側に設けられた支持部16aに設けられる。溝部71a,72aはそれぞれ、外径側に開放される形状である。本実施形態においては、溝部71aを構成する壁面73a,74aは、ホイール10aの外径側に真っ直ぐに延びる形状である(特に後述する
図11参照)。溝部71a,72aは、バレルシャフト23aの中心軸、すなわち、バレル部材20aの回転中心軸をホイール10aの回転軸方向(Z方向)に対して、45度傾斜するような位置に設けられる。すなわち、10個のバレル部材20aのそれぞれのバレルシャフト23aの回転中心軸を45度ずつ傾斜させるように、一対のプレート部12a,13aのそれぞれの支持部15a,16aには、それぞれ10個の溝部71a,72aが形成されている。
【0040】
また、プレート部12aには、外側面75aから長手方向に凹み、溝部71aを含むように嵌合凹部76aが設けられる。嵌合凹部76aは、環状に凹んだ形状である。具体的には、嵌合凹部76aは、受け具26aの小径領域41aを受け入れる形状である。受け具26aの小径領域41aは、嵌合凹部76aに嵌め込まれる。プレート部13aには、外側面77aから長手方向に凹み、溝部72aを含むように嵌合凹部78aが設けられる。嵌合凹部78aは、環状に凹んだ形状である。具体的には、嵌合凹部78aは、受け具27aの小径領域41aを受け入れる形状である。受け具27aの小径領域41aは、嵌合凹部78aに嵌め込まれる。各プレート部12a,13aには、10個のバレル部材20aに対応する嵌合凹部76a,78aがそれぞれ10個形成されている。
【0041】
次に、このような構成のホイール10aの組み立て方法について、簡単に説明する。
図10は、ホイール10aを組み立てる際のホイール10aの一部を示す概略斜視図である。
図10を併せて参照して、まず、受け具26a,27aおよびナット28a,29aを取り除いた状態、すなわち、外皮部21a、芯部22a、バレルシャフト23a、軸受部24a,25aを組み合わせた構造体79aを準備する。この構造体79aにおいては、バレルシャフト23aの両端が、長手方向に突出する。
【0042】
その後、長手方向に突出したバレルシャフト23aの両端を溝部71a,72a内に挿入する。
図11は、プレート部12aに構造体79aを組み込む状態を示す図である。
図11を併せて参照して、この場合、バレルシャフト23aの中心軸は、Z方向に対して45度傾斜した状態である。そして、溝部71a,72aはそれぞれ外径側に開放されているため、矢印で示すように、外径側から容易にバレルシャフト23aを挿入することができる。次に、長手方向の両側から受け具26a,27aを装着する。具体的には、受け具26aの小径領域41a側から貫通穴43aにバレルシャフト23aの一方端部から差し込み、受け具27aの小径領域41a側から貫通穴43aにバレルシャフト23aの他方端部を差し込む。この時、受け具26a,27aの小径領域41aはそれぞれ、プレート部12a,13aに設けられた嵌合凹部76a,78aに嵌め込まれる。このようにして、受け具26a,27aをバレルシャフト23aに装着する。そして最後に、ナット28a,29aをバレルシャフト23aの両端に取り付ける。ナット28a,29aを回転させて締め込んでいき、バレル部材20aを一対のプレート部12a,13aに固定する。このようにして全て、すなわち、10個のバレル部材20aをプレート部12a,13aに固定し、ホイール10aを組み立てる。
【0043】
なお、バレル部材20aの取り外し時においては、逆の工程で行う。すなわち、ナット28a,29aを逆回転させてバレルシャフト23aの両端からナット28a,29aを取り外す。そうすると、バレル部材20aのプレート部12a,13aへの固定が解除される。次に、受け具26a,27aを長手方向に動かして取り外す。そうすると、溝部71a,72a内にバレルシャフト23aが挿入された状態であるため、外径側へバレルシャフト23aを含む構造体79aを動かして、取り外す。
【0044】
上記ホイール10aによると、外皮部21aを取り付けたバレルシャフト23aを、バレルシャフト23aを受け入れる溝部71a,72aを利用して、一対のプレート部12a,13aに支持させることができる。溝部71a,72aは、ホイール10aの外径側に開放された形状であるため、ホイール10aの外径側から容易にバレルシャフト23aを組み込むことができる。バレルシャフト23aを組み込んだ後、受け具26a,27aを装着してナット28a,29aで締め付けることにより、一対のプレート部12a,13aに取り付けたバレルシャフト23aを確実に固定することができる。この場合、ホイール10aの動作時において、バレル部材20aには内径方向の負荷が作用し、外径方向には負荷がかからない。したがって、プレート部12a,13aに溝部71a,72aが設けられていても、強度的に問題はない。したがって、受け具26a,27aを挿入したプレート部12a,13aの破損を回避しながら、受け具26a,27aおよびナット28a,29aによる保持によって確実にバレルシャフト23aの長手方向における抜けを抑制することができる。その結果、ホイール10aの安定した動作を確保しながら、バレルシャフト23aの脱落を確実に抑制することができる。また、受け具26a,27aおよびナット28a,29aを取り外して、ホイール10aの外径側から容易にバレルシャフト23aを取り外すことができる。すなわち、例えば全てのバレルシャフト23aの固定を解除して一方のプレート部12aを本体部14aから取り外すといった大掛かりな分解を要する作業が生じることはない。したがって、バレル部材20aの交換も容易に行うことができる。以上より、このようなホイール10aによると、安定した動作を確保することができると共に、組み立て性を良好にすることができる。
【0045】
本実施形態においては、受け具26a,27aは、長手方向の一方側の端部を含む小径領域41aと、長手方向の他方側の端部を含み、小径領域41aよりも外径の大きい大径領域42aと、を含む。プレート部12a,13aには、外側面75a,77aから長手方向に凹み、溝部71a,72aを含むように嵌合凹部76a,78aが設けられる。小径領域41aは、嵌合凹部76a,78aに嵌め込まれる。よって、受け具26a,27aの小径領域41aを嵌合凹部76a,78aに嵌め込んで、受け具26a,27aをプレート部12a,13aに固定することができる。したがって、バレルシャフト23aをより安定して支持することができ、より円滑なバレル部材20aの回転を確保することができる。
【0046】
本実施形態においては、溝部71a,72aを構成する壁面73a,74aは、ホイール10aの外径側に真っ直ぐに延びる形状である。よって、ホイール10aの外径側から、外皮部21a等をセットしたバレルシャフト23aをより円滑に溝部71a,72a内に組み込むことができる。したがって、より組み立て性の向上を図ることができる。
【0047】
本実施形態においては、バレルシャフト23aは、長手方向において、一対のプレート部12a,13aに挟まれる第1領域17aと、第1領域17aの両端側に位置する第2領域18aと、を含む。第1領域17aの外径は、第2領域18aの外径よりも大きい。溝部71a,72aは、第2領域18aにおいてバレルシャフト23aを受け入れる。よって、バレルシャフト23aの長手方向において、第1領域17aを一対のプレート部12a,13aに引っ掛かかるようにすることが容易になり、バレルシャフト23aの長手方向の移動を規制しやすくなる。したがって、より安定したホイール10aの動作を確保することができる。
【0048】
本実施形態においては、軸受部24a,25aは、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受ける。よって、バレルシャフト23aに負荷されるラジアル荷重およびスラスト荷重を軸受部24a,25aによって適切に受けることができる。したがって、より安定したホイール10aの動作を確保することができる。
【0049】
本実施形態においては、軸受部24a,25aは、シェル外輪を含むシェル複合形ローラベアリング50aである。よって、ラジアル方向の荷重を受ける軸受およびスラスト方向の荷重を受ける軸受を一体化して、バレルシャフト23aへの軸受部24a,25aの取り付けの効率化を図ることができると共に、部品点数の削減を図ることができる。したがって、より生産性の向上を図ることができる。
【0050】
本実施形態においては、シェル複合形ローラベアリング50aは、スラスト方向の荷重を受ける一方の軌道輪を兼ねるリング部材57aを含む。よって、スラスト荷重をリング部材57aにより適切に受けることができる。したがって、より安定してホイール10aの動作を確保することができる。
【0051】
本実施形態においては、シェル複合形ローラベアリング50aは、ラジアル方向の荷重を受ける外輪を構成するシェル外輪55aを含む。シェル外輪55aは、スラスト方向の荷重を受けるローラ(第2ローラ52a)の外周側に位置する部分を含む。よって、シェル外輪55aにより、軸受部24a,25aの外径側に位置するパーツを一体化することができるため、組み立て性の向上を図ることができる。したがって、より生産性の向上を図ることができる。
【0052】
本実施形態においては、シェル外輪55aの厚さTは、0.2mm以上3.2mm以下である。よって、ホイール10aを構成する部材として求められる剛性を維持しつつ、絞り加工等によって製造されるシェル外輪55aを効率的に製造することができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0053】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態において、軸受部は、リング部材を含むこととしたが、これに限らず、軸受部は、リング部材を含まない構成としてもよい。この場合、スラスト方向の荷重を受ける軌道輪の一方として、例えばシェル外輪の鍔部を用いることにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態においては、軸受部は、シェル複合形ローラベアリングであることとしたが、これに限らず、軸受部は、ラジアル方向の荷重を受けるラジアル軸受と、スラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受を組み合わせた構成であってもよい。また、いずれか一方がローラ等の転動体を含まず、滑り軸受の構成であってもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
10a ホイール、11a ホイール体、12a,13a プレート部、14a 本体部、15a,16a 支持部、17a 第1領域、18a 第2領域、20a バレル部材、21a 外皮部、22a 芯部、23a バレルシャフト、24a,25a 軸受部、26a,27a 受け具、28a,29a ナット、31a,34a 外周面、32a,33a,46a,65a,66a,69a 穴、35a,36a ねじ山、37a,38a 円周溝、41a 小径領域、42a 大径領域、43a 貫通穴、47a ねじ溝、50a シェル複合形ローラベアリング、51a 第1ローラ、52a 第2ローラ、53a 第1保持器、54a 第2保持器、55a シェル外輪、56a 軌道輪、57a リング部材、58a 面、61a 第1円筒部、62a 第2円筒部、63a 底部、64a,68a 鍔部、67a 円板部、71a,72a 溝部、73a,74a 壁面、75a,77a 外側面、76a,78a 嵌合凹部、79a 構造体。