IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-転写方法 図1
  • 特開-転写方法 図2
  • 特開-転写方法 図3
  • 特開-転写方法 図4
  • 特開-転写方法 図5
  • 特開-転写方法 図6
  • 特開-転写方法 図7
  • 特開-転写方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179880
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】転写方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/33 20060101AFI20241219BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20241219BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 21/60 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
G09F9/33
H01L33/48
G09F9/00 338
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099167
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 憲治
【テーマコード(参考)】
5C094
5F044
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA43
5C094BA23
5C094GB10
5C094JA01
5F044KK06
5F044LL05
5F044PP19
5F044RR01
5F044RR12
5F142FA32
5G435AA17
5G435BB04
5G435FF11
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大面積パネル基板上の複数のディスプレイパネル領域に対して発光素子を効率よく転写する転写方法を提供する。
【解決手段】複数の発光素子が配列されたドナーから発光素子が搭載されるパネルに発光素子を転写させる転写手段と、ドナーとパネルと転写手段との各々の相対位置を制御する位置制御手段とを用いて発光素子をパネルに転写する。転写手段はドナーよりも小面積の転写領域に転写可能位置は複数存在し、位置制御手段により転写領域にパネルとドナーの各々の所定の位置が相対するよう配置させる配置ステップと、転写可能位置のうち一部を選択して発光素子をパネルに転写させる転写ステップを備え、パネルは発光素子が搭載されない境界部で区分けされた複数の製品パネル部を有し、配置ステップと転写ステップを複数回行い、転写領域が複数の製品パネル部にまたがって配置され、2つ以上の製品パネル部に発光素子を転写させる動作が1回以上行われる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が平面的に配列されているドナーと、前記発光素子が前記ドナーから転写されて搭載されるパネルと、前記ドナーから前記パネルに前記発光素子を転写させる転写手段と、前記ドナーと前記パネルと前記転写手段とのそれぞれの相対位置を制御する位置制御手段と、を用いて前記発光素子を前記パネルに転写する転写方法であって、
前記転写手段は前記ドナーよりも小さい面積の転写領域を有しており、当該転写領域において前記発光素子の転写を行うことが可能な転写可能位置は複数存在しており、
前記位置制御手段により前記転写領域に対して前記パネルおよび前記ドナーのそれぞれの所定の位置が相対するように前記パネルと前記ドナーとを配置させる配置ステップと、
前記転写可能位置のうち一部を選択し、選択した前記転写可能位置において前記発光素子を前記パネルに転写させる転写ステップと
を備え、
前記パネルは、前記発光素子が搭載されない境界部によって区分けされた複数の製品パネル部を有しており、
前記配置ステップと前記転写ステップとを複数回行って前記製品パネル部に前記発光素子を転写させ、
前記転写領域が複数の前記製品パネル部にまたがって相対する位置に配置された際に、前記転写ステップにおいて当該複数の前記製品パネル部のうち少なくとも2つの前記製品パネル部に前記発光素子を転写させる動作が少なくとも1回行われる、転写方法。
【請求項2】
前記境界部に前記転写可能位置が相対するように配置された際に、前記転写ステップにおいて前記境界部に相対した当該転写可能位置を前記転写手段において前記発光素子の転写を行うことが可能ではないとの設定としている、請求項1に記載の転写方法。
【請求項3】
前記転写領域は、前記製品パネル部よりも面積が小さい、請求項1または2に記載の転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の液晶ディスプレイに代わるものとしてLEDを使用したディスプレイの開発が進められており、製品化が進みつつある。このようなLEDを使用したディスプレイ(LEDディスプレイ)は、FHD(Full High Definition)パネルであって、赤色LED、緑色LED、青色LEDが1920×1080個、4Kパネルでは3840×2160個、それぞれ格子状の配列にて配線基板に高密度に実装されている。
【0003】
このように配線基板へ高密度に実装される各色LEDとしては、たとえば約50μm×50μmといった微小寸法を有する、いわゆるマイクロLEDが用いられる。このようなマイクロLEDは特許文献1に示すようにサファイアなどの成長基板上に窒化ガリウムの結晶をエピタキシャル成長させる工程などを経て得られ、基板上で上記寸法のチップ状にダイシングされる。このように形成されたLEDチップは、1回もしくは複数回の転写工程を経て成長基板からディスプレイである配線基板へ転写される。その後、熱圧着などの実装工程を経て、配線基板にLEDチップが固定される。
【0004】
LEDチップをディスプレイパネルである配線基板に転写する方法はいくつかあるが、例えば特許文献2,3に開示されているレーザーアブレーション技術を用いた方法が知られている。
【0005】
特許文献2にはレーザーアブレーション技術を用いた素子(LEDチップ)の転写方法が開示されている。また、1つの成長基板上に形成された複数のLEDチップの発光波長には個体差があるが、特許文献3には、LEDディスプレイを製造した際に発光波長の個体差によって色むらが見る人によって感じられないようにする転写方法が開示されている。また、特許文献3に開示された発明は、特許文献2に開示された発明を利用しつつLEDディスプレイに色むらが生じないようにするという新たな課題を解決すべく、1つの成長基板(ウェハ)上のそれぞれのLEDチップの発光特性をすべて計測し、すべてのLEDチップの発光特性を考慮してディスプレイパネルに転写している。このため、測定、転写のための計算及び転写に非常に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-170993号公報
【特許文献2】特開2006-41500号公報
【特許文献3】特開2022-135521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献では、LEDチップが形成されている成長基板(ウェハ)よりも面積が相当広いディスプレイパネル(例えば、テレビ・ディスプレイ)にLEDチップを転写していっている。一方、腕時計や携帯電話、タブレット端末のディスプレイのように、ウェハよりディスプレイパネルの方が面積が小さかったり、ディスプレイパネルの方が面積が少しだけ大きかったりする場合がある。このようなディスプレイパネルを複数枚順次作成していく場合、特許文献3に開示された方法のように、個々のパネルへのLEDチップ転写のための計算(シミュレーション)を順次行っていくと、後の方のパネルになるほどウェハ上の転写可能なLEDチップの数が減るために、発光特性を考慮した転写を行うことができるようにするための転写のシミュレーション回数が大幅に増えてしまうとともに、実際の転写においても転写回数が大幅に増えてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大面積のパネル基板上に設けられた複数のディスプレイパネルの領域に対して発光素子を効率よく転写する転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の転写方法は、複数の発光素子が平面的に配列されているドナーと、前記発光素子が前記ドナーから転写されて搭載されるパネルと、前記ドナーから前記パネルに前記発光素子を転写させる転写手段と、前記ドナーと前記パネルと前記転写手段とのそれぞれの相対位置を制御する位置制御手段と、を用いて前記発光素子を前記パネルに転写する転写方法であって、前記転写手段は前記ドナーよりも小さい面積の転写領域を有しており、当該転写領域において前記発光素子の転写を行うことが可能な転写可能位置は複数存在しており、前記位置制御手段により前記転写領域に対して前記パネルおよび前記ドナーのそれぞれの所定の位置が相対するように前記パネルと前記ドナーとを配置させる配置ステップと、前記転写可能位置のうち一部を選択し、選択した前記転写可能位置において前記発光素子を前記パネルに転写させる転写ステップとを備え、前記パネルは、前記発光素子が搭載されない境界部によって区分けされた複数の製品パネル部を有しており、前記配置ステップと前記転写ステップとを複数回行って前記製品パネル部に前記発光素子を転写させ、前記転写領域が複数の前記製品パネル部にまたがって相対する位置に配置された際に、前記転写ステップにおいて当該複数の前記製品パネル部のうち少なくとも2つの前記製品パネル部に前記発光素子を転写させる動作が少なくとも1回行われるものである。
【0010】
前記境界部に前記転写可能位置が相対するように配置された際に、前記転写ステップにおいて前記境界部に相対した当該転写可能位置を前記転写手段において前記発光素子の転写を行うことが可能ではないとの設定としていることが好ましい。
【0011】
前記転写領域は、前記製品パネル部よりも面積が小さくてもよい。
【発明の効果】
【0012】
転写領域が複数の製品パネル部に相対した際の転写ステップにおいて、当該複数の製品パネル部の少なくとも2つに発光素子を転写するので、すべての製品パネル部に発光素子を効率的に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る発光素子の転写装置の模式的な図である。
図2】実施形態に係るドナー、転写手段、転写領域、パネルの相対的な位置関係の一例を示す模式的な図である。
図3】(A)は転写領域に相対しているドナーの領域、(B)は転写領域、(C)は転写領域に相対しているパネルの領域を示す一例である。
図4】実施形態に係る製品パネル部と転写領域の位置関係の一つの例を示す模式的な図である。
図5】実施形態に係る製品パネル部と転写領域の位置関係の別の例を示す模式的な図である。
図6】実施形態に係る製品パネル部と転写領域の位置関係のさらに別の例を示す模式的な図である。
図7】実施形態に係る製品パネル部と転写領域の位置関係の異なる例を示す模式的な図である。
図8】実施形態に係る製品パネル部と転写領域の位置関係のさらに異なる例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための形態について説明を行う前に、本願発明者が本願発明に思い至り創作した経緯を説明する。
【0015】
サファイアなどの成長基板(ウェハ)上に窒化ガリウムの結晶をエピタキシャル成長させる工程などを経て製造されるマイクロLED(発光素子)は、1枚のウェハ上に多数のチップとして存在している。このような成長工程においては、窒化ガリウムの結晶成長を始めどのような加工工程であっても、1つのウェハ上のあらゆる位置において均一に加工がなされるようにすることは非常に困難である。そのため、出来上がったチップの特性は1つ1つ少しずつ異なっていてばらつきがある。このような特性のうち、ディスプレイに関しては発光波長が特に重要になる。
【0016】
上述のようなばらつきは、製造装置内における温度むらや原材料の供給むらに起因する場合が多く、1つの製造装置で多数のウェハを一度に加工する場合には、ウェハを置く位置によってむらが生じてしまう。そのため例えばウェハの中央部分と周辺部分とで、あるいは右側と左側とで、または縞状に特性値の大きさが変化してむらになる。
【0017】
1つのウェハ上の多数のチップに、上記のように特性値、特に発光波長にむらが生じることを回避するのは非常に困難である。従って、例えば、中央部分の発光素子は発光波長が長めであるのに対して、周辺部分の発光素子は発光波長が短めになるといったむらが生じることがままあるが、そのようなむらが存在することを前提としてパネルを製造することになる。
【0018】
一般に1つのウェハには非常に多数のチップ(発光素子)が存在しており、1つのウェハから複数のパネルに発光素子を供給することができる。なお、ここでのパネルとは、発明が解決しようとする課題の欄において説明した大面積のパネル基板のことである。通常はウェハよりもパネルの方が面積が大きいが、ウェハ上のチップ間距離よりもパネル上のチップ間距離の方がかなり大きいため、1つのウェハ上の発光素子数が1つのパネルに搭載される発光素子数よりも多くなる。また、ウェハからパネルに発光素子を転写させる転写装置は、1度に転写することができる領域の面積がウェハ全体の面積に対して小さいため、1つのパネルに必要な発光素子をすべて転写するためには、ウェハ及びパネルを転写領域に対して複数回移動させて転写を行うことが必要である。
【0019】
上記のように、1つのウェハから複数のパネルに発光素子を供給することができること、及び1つのウェハ上の多数のチップには発光波長にばらつきがあることから、ウェハのチップを単にランダムにパネルに転写してもウェハや転写領域の移動回数及び転写回数が非常に多くなったり、完成したディスプレイパネルに色むらが発生したりしてしまう。そのため、実際の発光素子を転写する前に、転写のシミュレーションを行って、色むらが発生せず、かつウェハや転写領域の移動回数及び転写回数が増えすぎないようなウェハや転写領域の移動及び転写の組み合わせを求めることが必要になる。
【0020】
また、大面積のパネル基板に複数のディスプレイパネルの領域を設定してLEDチップを転写していき、すべてのディスプレイパネルの領域にLEDチップを転写し終えたらパネル基板を切断して複数のディスプレイパネルを作成するという方法を取る場合、色むらの発生を抑え、確実に個々のディスプレイパネルを作成できるように1つのディスプレイパネルの領域を選んでその領域にすべて発光素子が転写できるようにシミュレーションを行い、シミュレーションに従って実際の転写を行って、それから次のディスプレイパネルの領域を選んで同様の操作を行っていた。
【0021】
このような転写方法を行うと、すべてのディスプレイパネルの領域を転写終了するのにウェハや転写領域の移動回数及び転写回数が非常に多くなって時間がかかっていた。本願発明者はこのような状況に鑑みて様々な検討を行って本願発明に想到するに至った。
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
(実施形態1)
実施形態1は、多数のマイクロLEDのチップが平面的に隣り合って配列されているドナー(ウェハ)から、転写手段によりチップをディスプレイパネルとなるパネル基板に転写する転写方法に関するものであり、パネル基板には複数のディスプレイパネルの領域が設定されている。転写手段はレーザーリフトオフ(レーザーアブレーション技術)を用いているが、他の方法を用いても構わない。
【0024】
図1に示すように、ドナー20は複数の発光素子22が平面的に配列されており、保持手段25により保持されてパネル30に向き合っている。パネル30は、発光素子22aが転写された面とは反対側の面を載置部32により吸着把持されており、載置部32は移動ステージ42の上に載せられている。なお、保持手段25はチップをエピタキシャル成長させるベースとなる成長基板やウェハに貼り付けられた中間基板などである。
【0025】
転写手段10はレーザー光源11、ガルバノミラー12、Fθレンズ14を備えている。レーザー光源11は1本のレーザー光13を出射する装置である。用いるレーザーとしてはYAGレーザー、可視光レーザー、紫外線レーザーなどを挙げることができる。ガルバノミラー12は2枚のミラーを有し、これらのミラーの位置および角度を制御することで、入射してきた光線を任意の方向へ出射する。
【0026】
転写は以下のように行われる。レーザー光源11から発せられたパルス状のレーザー光13がガルバノミラー12及びFθレンズ14を経由して保持手段25に照射される。レーザー光13は保持手段25を透過して、保持手段25と発光素子22との界面に到達し、この界面においてレーザーアブレーションを生じさせる。このレーザーアブレーションによって発光素子22は保持手段25から剥離して下側に付勢されて、パネル30に転写される。なお、パネル30に転写済みの発光素子には符号22aを付す。
【0027】
転写手段においては、レーザー光13はガルバノミラー12によって光路が制御されて、保持手段25の様々な位置に照射されるが、ガルバノミラー12の位置および角度の変更範囲は限定されている。そのため、図2に示すように、転写手段10において、レーザー光13を照射可能な領域である転写領域15はドナー20及びパネル30に比べて小さい面積となっている。
【0028】
また、パネル30上には複数の製品パネル部35が設けられている。隣り合う製品パネル部35の間の領域は発光素子22が搭載されない境界部37であって、製品パネル部35に発光素子22が転写された後で境界部37においてパネル30が切断されて製品パネル部35が製品としてのディスプレイパネルになる。ここで、「発光素子が搭載されない」とは、製品パネル部35に転写された隣り合う発光素子22aの間隔Pから判断して、製品パネル部35の端に転写された発光素子22aから距離Pの位置が境界部37である場合、その位置に発光素子22を搭載することが可能である(搭載されうる)のに搭載されない、ということである。図2では、製品パネル部35が5つの行と9つの列に並んでおり、45の製品パネル部35がパネル30上に存在している。1つの製品パネル部35は転写領域15よりも少し広い領域を占めていて面積が大きい。
【0029】
(配置ステップ)
転写領域15がドナー20及びパネル30に比べて小さい面積であるので、パネル30の全面に発光素子22aを必要な数だけ転写させるためには、転写領域15とドナー20とパネル30との相対的な位置を変更してその都度転写を行う必要がある。本実施形態においては、転写領域が1つの製品パネル部35に比べても面積が小さいので、1つの製品パネル部35に対しても相対的な位置を何度か変更してその都度転写を行う必要がある。転写手段10は大がかりな装置であって固定されているので、保持手段25を把持している把持手段41によりドナー20の位置を制御し、パネル30の位置を移動ステージ42により制御する。把持手段41及び移動ステージ42を備えた位置制御手段によって、パネル30の発光素子22aが転写される面に対して平行にドナー20及びパネル30が移動して、転写領域15とドナー20とパネル30との相対的な位置が変わっていく。ドナー20とパネル30とは、選択された所定の位置(領域)が転写領域15に対して相対するように、位置制御手段によって移動されて配置される。
【0030】
(転写ステップ)
図3に示すように、(A)では転写領域15に相対するドナー20の領域に複数の発光素子22が隙間(小さな間隔)を介して隣接して並んでいるのに対し、(C)では転写領域15に相対するパネル30の領域に、ドナー20における発光素子22同士の隣接間隔よりも大きな間隔(数倍から数十倍)で発光素子22aが転写されることになる。転写領域15も(B)に示すようにパネル30の転写間隔と同じ間隔で転写可能位置16が設定されている。
【0031】
図3では、ドナー20に抜けなく発光素子22が並んでいるため、転写領域15のすべての転写可能位置16を用いてパネル30へ発光素子22を転写することが可能であり、このようにすることで転写効率を良くすることができるが、このやり方を続けると、パネル30上において色むらがはっきりと現れることがある。
【0032】
上記のようなパネル30の発光時の色むらが生じないようにするため、転写手段10による転写可能位置16をすべて使用するのではなく、一部のみ使用するように非転写の割合(すべての転写可能位置の数に対する転写を行わない位置の数の割合)を用いて制御を行っている。このような制御では、図3に示したものとは異なる転写可能位置16の使用状態となる。具体的には、転写領域15における使用可能な転写可能位置16のうち一部を転写に用いない(次回以降の機会に転写する)ようにすることにしているが、転写に用いない割合(非転写割合)が多くなると転写の効率が下がって、ドナー20とパネル30と転写領域15との位置と転写順序の計算の時間及び転写の開始から終了までの転写工程にかかる時間の合計時間が増えてしまう。この合計時間と色むらがどの程度生じるのかという関係性をシミュレーションして確認したところ、転写領域15における使用可能な転写可能位置16のうち転写に用いない転写可能位置をランダムに決めると、非転写割合が同じで転写に用いない転写可能位置を固定したやり方に比べて、計算を含めたトータルの転写時間はやや長くなるが色むらが大きく抑制されるようになった。
【0033】
これは、パネル30のある部分には発光波長が長い発光素子22ばかりが転写され、その隣接部分には発光波長が短い発光素子22ばかりが転写されるという現象が生じることを、転写に用いない転写可能位置をランダムに決めることによって抑制しているためと考えられる。
【0034】
転写に用いない転写可能位置は、転写毎にランダムに決めても良いし、所定の転写回数毎にランダムに決めて変更しても良い。また、転写に用いない転写可能位置が複数存在するときはそのうちの一部をランダムに決めてもよい。
【0035】
上記のような配置の制御、転写可能位置の転写及び非転写の制御は、コンピュータを用いて行う。また、実際の転写を行う前に、転写のシミュレーションをコンピュータを利用して行う。シミュレーションを行った中から、色むらの抑制、転写時間の抑制、ドナーにおける発光素子の残存位置や残存数などを考慮して、配置の順や転写の制御の組み合わせの中から1つ選んで実際の転写を行う。
【0036】
(製品パネル部への発光素子の転写)
図4は、図2からドナー20と転写手段10とを除いて、転写領域15と右下隅の製品パネル部35aとの相対的な位置関係を見やすく示した図である。転写領域15の横幅と製品パネル部35aの横幅はほぼ同じであり、縦の長さは製品パネル部35aの方が少し大きい。そのため、配置ステップと転写ステップをそれぞれ2回以上行う必要がある。
【0037】
図5では、転写領域15が4つの製品パネル部35a,35b,35c,35dにまたがって相対している位置に配置されている。転写領域15はそれぞれの製品パネル部35a,35b,35c,35dの間に存在している境界部37にも相対している。境界部37にも転写可能位置16が相対するように位置するが、境界部37には発光素子22を転写することはない。転写を制御するコンピュータにおいて、境界部37に関しては発光素子22を転写することが可能ではない転写不可領域と設定しているからである。
【0038】
なお、製品パネル部35における隣接する搭載発光素子22aの間の距離(ピッチ)をPとすると、境界部37の幅(隣り合う製品パネル部35間の距離)はPよりも大きく設定されている。そのため、転写不可領域という設定がなされていなければ、境界部37にも発光素子22が転写されることになる。
【0039】
本実施形態では、右下隅の製品パネル部35aに必要な発光素子22のすべてを転写して完成させることをまず目指している。このように、右下隅の製品パネル部35aへの必要な発光素子22の全搭載をまずは目指していても、図5に示した転写領域15の配置において、4つの製品パネル部35a,35b,35c,35dのそれぞれに発光素子22を転写している。すなわち、転写領域15が製品パネル部35a以外の製品パネル部35に相対している場合には、製品パネル部35aのみに発光素子22を転写するのではなく、同時に、製品パネル部35a以外の製品パネル部35にも発光素子22を転写している。このようにすることにより、1つ1つの製品パネル部35を順に、その製品パネル部35に対してのみ発光素子22を転写して当該製品パネル部35を完成させる(必要なすべての発光素子22を転写させる)よりも、すべての製品パネル部35を色むらが抑制された状態で且つ短時間で作成するという観点から発光素子の転写を効率的に行うことができる。
【0040】
なお、図8においては転写領域15は右下隅の製品パネル部35aにのみ相対しているが、これは図5から図7の転写領域15の配置では製品パネル部35aの上に発光素子22の未転写の領域が生じてしまい、その領域に発光素子22を転写できる転写領域15の配置に図8の配置が該当するからである。
【0041】
また、境界部37の幅が転写領域15の幅よりも大きいと、転写領域15が複数の製品パネル部35にまたがって相対する配置を取ることができないため、上記のような1つの転写領域15の配置において複数の製品パネル部35に発光素子22を転写することができなくなる。従って、縦に伸びる境界部37の幅は転写領域15の横方向の幅よりも小さい、および/または、横方向に伸びる境界部37の幅は転写領域15の縦方向の幅よりも小さいことが好ましい。本実施形態では、縦に伸びる境界部37の幅は転写領域15の横方向の幅よりも小さく、且つ、横方向に伸びる境界部37の幅は転写領域15の縦方向の幅よりも小さい。
【0042】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0043】
図5に示すように、転写領域が3以上の製品パネル部に相対する配置になった場合、それらのすべての製品パネル部に発光素子を転写する必要はなく、少なくとも2つの製品パネル部に発光素子の転写を行えばよい。
【0044】
図5から図7に示す転写領域の配置となった場合に、右下隅の製品パネル部35a以外の製品パネル部には、少なくとも1回の発光素子の転写動作が行われればよい。即ち、図5の状態の配置のときに右下隅の製品パネル部35a以外の製品パネル部に発光素子の転写を行えば、図6,7の状態にの配置になったときに右下隅の製品パネル部35a以外の製品パネル部に発光素子の転写を行わなくてもよい。なお、図5に示す場合は、右下隅の製品パネル部35a以外のいずれかの製品パネル部1つに対して少なくとも1回の発光素子の転写動作が行われればよい。
【符号の説明】
【0045】
10 転写手段
15 転写領域
16 転写可能位置
20 ドナー
22 発光素子
22a 発光素子(パネル上に転写された)
30 パネル
35 製品パネル部
35a 製品パネル部
35b 製品パネル部
35c 製品パネル部
35d 製品パネル部
37 境界部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8