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  • 特開-基材および基材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179899
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】基材および基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20241219BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20241219BHJP
   B29C 48/07 20190101ALI20241219BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B27/12
B29C48/21
B29C48/07
B32B5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099200
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柚原 光希
(72)【発明者】
【氏名】中村 英樹
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100DG01A
4F100EH172
4F100EJ86A
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F207AA50
4F207AB25
4F207AD06
4F207AD16
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR06
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KM15
(57)【要約】
【課題】繊維含有樹脂体を再利用して成形される基材において、天然繊維の焦げによる臭いを抑制する。
【解決手段】繊維含有樹脂体を粉砕した粉砕物20と、熱可塑性樹脂からなる樹脂材30とを準備し、押出成形機50の3つの投入部52のうち中間の層に対応するもの52bに粉砕物20を投入するとともに、残り2つの投入部52a,52cに樹脂材30を投入し、押出成形機50によって、粉砕物20からなる粉砕物層12が樹脂材30からなる2つの樹脂層に挟まれた三層の積層状態で長孔状の吐出口58から吐出する。それにより製造される基材10を、粉砕物層12と、樹脂材30の熱可塑性樹脂からなり粉砕物層12の周囲を覆う被覆層14と、を備える平面状のものとする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と熱可塑性樹脂が結着した繊維含有樹脂体の粉砕物からなる粉砕物層と、熱可塑性樹脂からなり前記粉砕物層の周囲を覆う被覆層と、を備える平面状の基材。
【請求項2】
天然繊維と熱可塑性樹脂とが結着した繊維含有樹脂体を再利用して成形される基材の製造方法であって、
前記繊維含有樹脂体を粉砕した粉砕物と、前記基材の主な材料となる熱可塑性樹脂からなる樹脂材と、を準備する準備工程と、
3つの投入部から投入された材料を溶融し、同時に単一の吐出口から三層の積層状態で押し出して成形する押出成形機を用意し、3つの前記投入部のうち中間の層に対応するものに前記粉砕物を投入するとともに、残り2つの前記投入部に前記樹脂材を投入する投入工程と、
前記押出成形機によって、前記粉砕物からなる粉砕物層が前記樹脂材からなる2つの樹脂層に挟まれた三層の積層状態で長孔状の前記吐出口から吐出する押出工程と、
を含み、
前記粉砕物層と、前記樹脂材の熱可塑性樹脂からなり前記粉砕物層の周囲を覆う被覆層と、を備える平面状の基材を成形する基材の製造方法。
【請求項3】
前記押出工程は、前記樹脂層の厚みが120μm以上となるように吐出する請求項2に記載の基材の製造方法。
【請求項4】
前記押出工程は、前記吐出口から吐出する材料の温度を、前記樹脂材の熱可塑性樹脂の融点以上で、かつ、前記融点から20℃高い温度以内に調整する請求項2または請求項3に記載の基材の製造方法。
【請求項5】
前記投入部に投入する前に、前記粉砕物を乾燥させる乾燥工程を含む請求項2または請求項3に記載の基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維と熱可塑性樹脂とが結着した繊維含有樹脂体を再利用して成形される基材に関し、また、その基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然繊維と熱可塑性樹脂とが結着した繊維含有樹脂体、例えば、賦形された成形体や、その成形体の成形時に残ってしまう端材等を、再利用することが従来から検討されている。下記特許文献1には、天然繊維と熱可塑性樹脂とが決着した繊維含有樹脂体(複合材)の再生処理方法が開示されている。下記特許文献1に記載の方法は、複合材を破砕する破砕工程と、破砕された複合材に繊維濃度調整材を投入し、加熱しながら混練する加熱・混練工程と、混練された複合材を成形する成形工程と、を含んで構成される。なお、下記特許文献1において、繊維濃度調整材としては、熱可塑性樹脂に対して可溶性を有する樹脂であって、例えば熱可塑性樹脂が用いられている。そして、加熱・混練工程において、繊維濃度調整材を投入し, 加熱しながら混練することにより、熱可塑性樹脂及び繊維濃度調整材が溶融され、その中に天然繊維を均等に分散させるとともに、天然繊維間に熱可塑性樹脂及び繊維濃度調整材を十分に含浸させると、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-202988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、天然繊維が均等に分散された状態で、次の成形工程が行われることになる。その成形時には、熱可塑性樹脂を含むことから加熱することが必要であるが、その加熱によって、天然繊維に焦げが発生する場合がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、繊維含有樹脂体を再利用して成形される基材において、天然繊維の焦げによる臭いを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願に開示される基材は、下記の構成とされている。
(1)天然繊維と熱可塑性樹脂が結着した繊維含有樹脂体の粉砕物からなる粉砕物層と、熱可塑性樹脂からなり前記粉砕物層の周囲を覆う被覆層と、を備える平面状の基材。
【0007】
例えば、天然繊維と熱可塑性樹脂が結着した繊維含有樹脂体を再利用する場合、その繊維含有樹脂体を粉砕した粉砕物に含まれる熱可塑性樹脂を融解して再度結着させるために加熱する必要がある。その加熱によって天然繊維に焦げが生じ、その焦げによって臭いが発生する場合がある。本願に開示の基材は、粉砕物からなる粉砕物層が熱可塑性樹脂からなる被覆層で覆われているため、粉砕物層の天然繊維に焦げが生じたとしても、被覆層によって焦げによる臭いを抑制することができる。
【0008】
また、本願に開示の基材において、粉砕物層は、天然繊維を含むものの、繊維含有樹脂体を粉砕したことで、粉砕物に含まれる天然繊維の長さは短くなってしまう。そのため、粉砕物層は、再利用前の繊維含有樹脂体に比較して、剛性が低くなってしまうという問題がある。それに対して、本願に開示の基材は、その粉砕物層の両面に、熱可塑性樹脂からなる被覆層が積層されていること、つまり、基材に作用する曲げモーメントによる圧縮や引っ張りへの影響が小さい中間層に、粉砕物層を配していることで、基材の剛性低下が抑えられたものとなる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本願に開示される基材の製造方法は、下記の構成とされている。
(2)天然繊維と熱可塑性樹脂とが結着した繊維含有樹脂体を再利用して成形される基材の製造方法であって、
前記繊維含有樹脂体を粉砕した粉砕物と、前記基材の主な材料となる熱可塑性樹脂からなる樹脂材と、を準備する準備工程と、
3つの投入部から投入された材料を溶融し、同時に単一の吐出口から三層の積層状態で押し出して成形する押出成形機を用意し、3つの前記投入部のうち中間の層に対応するものに前記粉砕物を投入するとともに、残り2つの前記投入部に前記樹脂材を投入する投入工程と、
前記押出成形機によって、前記粉砕物からなる粉砕物層が前記樹脂材からなる2つの樹脂層に挟まれた三層の積層状態で長孔状の前記吐出口から吐出する押出工程と、
を含み、
前記粉砕物層と、前記樹脂材の熱可塑性樹脂からなり前記粉砕物層の周囲を覆う被覆層と、を備える平面状の基材を成形する基材の製造方法。
【0010】
本願に開示の基材の製造方法は、いわゆる共押出し成形によって、基材を成形する方法であり、繊維含有樹脂体の粉砕物を溶融したものを、溶融した熱可塑性樹脂で上下に挟んで、平面状(シート状,ボード状)に吐出することで、前述した基材を成形することができる。なお、本願に開示の製造方法は、押出方向に交差する方向の両端部(吐出口の長手方向における両端側から吐出される部分)は、流動性の高い熱可塑性樹脂が充填され易く、粉砕物層を熱可塑性樹脂で覆った構成となる。つまり、押出成形機によって、吐出口から押し出す前に粉砕物を加熱することになるが、熱可塑性樹脂が溶融して分離した粉砕物は、樹脂材が溶融した熱可塑性樹脂によって覆われて被覆層が成形されるため、天然繊維の焦げによる臭いを抑制することができるのである。また、従来から粉砕物をマット化し、そのマットをプレス成形してシート状の基材を成形する方法も存在するが、その製造方法に比較して、本願に開示の基材の製造方法は、マット化する工程が不要となり、サイクルタイムの向上を図ることができる。
【0011】
また、上記構成の基材の製造方法において、以下に示す種々の態様とすることが可能である。なお、本発明は以下の態様に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0012】
(3)前記押出工程は、前記樹脂層の厚みが120μm以上となるように吐出する(2)項に記載の基材の製造方法。
【0013】
この構成の基材の製造方法によれば、被覆層が、天然繊維の焦げによる臭いを抑えるのに十分な厚みを有することになる。また、例えば、基材を賦形する際の成形性を確保することができる。
【0014】
(4)前記押出工程は、前記吐出口から吐出する材料の温度を、前記樹脂材の熱可塑性樹脂の融点以上で、かつ、前記融点から20℃高い温度以内に調整する(2)項または(3)項に記載の基材の製造方法。
【0015】
基材の成形時には、端末まで充填すべく、例えば、融点より30℃以上高い温度として、熱可塑性樹脂の流動性を高める場合が多い。しかしながら、そのような温度とすると、天然繊維に焦げが生じやすく、臭いも発生し易い。この構成の基材の製造方法は、熱可塑性樹脂の融点に比較的近い温度で、押出成形をするようになっている。この製造方法によれば、温度が融点に近いほど、押出時の圧力を高くする必要があるが、温度を高めて流動性を高めた場合に比較して、吐出口近傍において端末までしっかりと充填でき、欠損なく成形できることが確認された。
【0016】
(5)前記投入部に投入する前に、前記粉砕物を乾燥させる乾燥工程を含む(2)項から(4)項のいずれか一項に記載の基材の製造方法。
【0017】
この構成の製造方法は、特に木質系繊維など、水分を吸収し易い天然繊維に好適であり、天然繊維が持つ水分によって、基材がべたつくような事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、繊維含有樹脂体を再利用して成形される基材において、天然繊維の焦げによる臭いを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の基材の断面図
図2】繊維含有樹脂体とその粉砕物を示す図
図3】成形工程を示す平面図
図4】成形工程を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態である基材10は、デッキボード等の自動車(乗物)の内装材に用いられるものであり、それら内装材は、概して板状の本実施形態の基材10から賦形される。本実施形態の基材10は、平面状のものであり、粉砕物層12と、その粉砕物層12の周囲を覆う被覆層14と、からなる。つまり、基材10は、中央部分が、図1に示すように、粉砕物層12の上面および下面の両側が、被覆層14が積層された構成となっている。
【0021】
粉砕物層12は、図2に示す粉砕物20から成形される部分である。粉砕物20は、天然繊維Aと熱可塑性樹脂Bが結着した繊維含有樹脂体22を粉砕したものである。そして、粉砕物層12は、その熱可塑性樹脂Bが一旦融解されて、天然繊維Aが分散した状態で、熱可塑性樹脂Bが再度凝固して成形されている。
【0022】
なお、天然繊維Aは、特に限定されないが、例えば、植物性繊維、動物性繊維、鉱物性繊維等のうち1種又は2種以上を採用することができる。近年では、自動車の内装材には、植物性繊維が用いられるようになっており、その植物性繊維としては、ケナフ、亜麻、ヘンプ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹及び綿花等の植物が有する繊維のうち、1種又は2種以上を採用することができる。また、熱可塑性樹脂Bとしては、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂)等のうち1種又は2種以上を採用することができる。なお、本実施形態においては、天然繊維Aはケナフであり、熱可塑性樹脂Bは、ポリプロピレンとされている。
【0023】
一方、被覆層14は、熱可塑性樹脂Cから形成される。その熱可塑性樹脂Cは、粉砕物20に含まれる熱可塑性樹脂Bと同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。この熱可塑性樹脂Cも、熱可塑性樹脂Bと同様に、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂)等のうち1種又は2種以上を採用することができる。なお、本実施形態においては、熱可塑性樹脂Cは、ポリプロピレンとされている。
【0024】
次に、本実施形態の基材10の製造方法を説明する。まず、基材10を製造する準備工程として、粉砕物20と、被覆層14を形成する熱可塑性樹脂Cからなる樹脂材30とを用意する工程が行われる。この準備工程は、例えば、繊維含有樹脂体22を粉砕する粉砕工程を含むものとすることができる。粉砕工程は、例えば、図2に示すように、規格外となった基材22a、基材から成形体を成形した際に出た端材22b、および、リサイクルにより回収された車両用内装材22cなどを、粉砕して粉砕物20を得る工程である。なお、繊維含有樹脂体22を粉砕する方法は、特に限定されず、本実施形態においては、粉砕機によってある程度の大きさ(5mm前後)のチップ状に粉砕される。粉砕物20は、粉砕されたことで、含まれる天然繊維Aは、粉砕前よりも短い長さとなる。なお、粉砕工程の後には、乾燥工程が行われ、粉砕物20が乾燥させられる。植物性繊維であるケナフは、水分を吸収し易いため、この乾燥工程を行うことで、基材10のべたつきを抑えることができる。
【0025】
続いて、上記の粉砕物20および樹脂材30を用いて、押出成形によって基材10を成形する成形工程が行われる。成形工程には、図3および図4に示す押出成形機50が用いられる。押出成形機50は、3つの投入部であるホッパ52a,52b,52cと、それら3つのホッパの各々から投入された材料を溶融させつつ押し出すスクリュー54a,54b,54cと、3つのスクリューからの材料を重ね合わせるシリンダ56と、吐出口58を有して平面状に成形する金型であるTダイ(ハンガーダイ)60と、を含んで構成される。
【0026】
シリンダ56は、第1スクリュー54a,第2スクリュー54b,第3スクリュー54cから送られてきた材料を、上側から順に重ね合わせるようにして下流側に送るようなっている。なお、図示は省略するが、シリンダ56の周囲にはヒータが設けられてり、内部を流れる材料の温度を調整することができる。
【0027】
Tダイ60は、幅方向に長い長孔状の吐出口58を有しており、その吐出口58から押し出される材料を、平板状に形成するものである。なお、このTダイ60は、幅方向(押出方向に交差する方向)における中央部と両側の端部との各々において、それぞれ内部を流れる材料の温度を独立して調整することができるようになっている。
【0028】
そして、本実施形態の基材10の製造方法においては、図3に示すように、第1ホッパ52aと第3ホッパ52cに、樹脂材30が投入され、第2ホッパ52bに、粉砕物2が投入される(投入工程)。次いで、押出成形機50が作動させられると(押出工程)、シリンダ56においては、粉砕物20の熱可塑性樹脂Bが溶融されて天然繊維Bが分散した中間層と、熱可塑性樹脂Cが溶融した上層側の樹脂層および下層側の樹脂層が、三層に積層された状態で、Tダイ60に送られる。
【0029】
そして、Tダイ60からは、図1および図4に示すように、粉砕物20からなる粉砕物層12が、熱可塑性樹脂Cからなる被覆層14によって挟まれた断面形状で押し出され、平板状の基材10が成形されるのである。なお、幅方向における両端の各々は、流動性の高い熱可塑性樹脂のみが広がって、天然繊維Aがほとんど含まれない状態となる。つまり、基材10は、粉砕物層12が、熱可塑性樹脂からなる被覆層14によって覆われた構成となるのである。
【0030】
本実施形態の基材10の製造方法において、天然繊維Aが第2スクリュー54b,シリンダ56,Tダイ60において加熱されることになり、焦げが生じる虞があるが、本実施形態の製造方法によって製造される基材10は、粉砕物層12が被覆層14によって覆われた構成となるため、天然繊維Aの焦げによる臭いを抑制することができる。なお、本実施形態の基材10は、2mm程度の厚みである粉砕物層12に対して、被覆層14の厚みは、120μm以上とすることができる。被覆層14の厚みが、120μm以上であれば、天然繊維の焦げによる臭いを効果的に抑えることができる。
【0031】
また、粉砕物層12は、天然繊維Aを含むものの、繊維含有樹脂体22を粉砕したことで、粉砕物20に含まれる天然繊維の長さは短くなってしまう。そのため、粉砕物層12は、再利用前の繊維含有樹脂体22に比較して、剛性が低くなってしまうという問題がある。それに対して、本実施形態の基材10は、その粉砕物層12の両面に被覆層14が積層されていること、換言すれば、基材10に作用する曲げモーメントによる圧縮や引っ張りへの影響が小さい中間層に粉砕物層12を配していることで、基材10の剛性低下が抑えられたものとなっている。
【0032】
本実施形態において熱可塑性樹脂B,Cがポリプロピレンであり、押出成形機50では、そのポリプロピレンを溶融するために、融点である約165℃より高い温度に加熱する。従来からポリプロピレンを用いて射出成形等によって成形体を成形する場合、ポリプロピレンの流動性を高めるために、200℃程度まで加熱する場合が多い。それに対して、本実施形態の基材10の製造方法においては、170℃~180℃までしか加熱しないようになっている。つまり、天然繊維Aへの加熱温度を低下させることができるため、天然繊維Aが焦げないようにすること、あるいは、焦げを抑えることができ、天然繊維の焦げによる臭いを、より効果的に抑えることができる。さらに言えば、押出成形機50における加熱温度を低くするほど、押し出す圧力を高める必要があるが、加熱温度を170℃~180℃とした方が、加熱温度を200℃まで高めて熱可塑性樹脂の流動性を高めた場合に比較して、Tダイ60内で端部まで充填され、製造される基材10の幅方向における端末に欠損等が生じ難いことが確認された。以上のことから、吐出口58から吐出する材料の温度を、熱可塑性樹脂の融点以上で、かつ、その融点から20℃高い温度以内に調整することが望ましいと考えられる。
【0033】
さらに、従来から粉砕物20をマット化し、そのマットをプレス成形して平面状の基材を成形する方法が存在するが、その製造方法に比較して、本実施形態の基材10の製造方法は、マット化する工程が不要となり、サイクルタイムの向上を図ることができる。
【0034】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0035】
上記実施形態の基材10は、粉砕物層12が単一の層から形成されていたが、例えば、粉砕物の大きさが異なるものを用いて積層形成されていてもよい。
【0036】
上記実施形態の基材10は、被覆層12の厚みが120μm以上とされていたが、被覆層の厚みを120μmより小さくすることも可能である。例えば、被覆層の厚みを100μm程度とすることで、天然繊維の焦げによる臭いを抑えつつ、表面に天然繊維の繊維感を出した構成の基材とすることができる。
【0037】
上記実施形態において、粉砕物20に用いる繊維含有樹脂体22は、自動車用の規格外の基材、端材、内装材のリサイクル品とされていたが、それらに限定されず、他の乗物用の内装材や、家具・住宅建材などの繊維含有樹脂体を採用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…基材、12…粉砕物層、14…被覆層、20…粉砕物、22…繊維含有樹脂体、A…天然繊維、B…熱可塑性樹脂、C…熱可塑性樹脂、30…樹脂材、50…押出成形機、52…ホッパ〔投入部〕
図1
図2
図3
図4