(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179902
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両用バッテリの支持構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241219BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20241219BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/02 Z
B62D21/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099203
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 靖泰
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠斗
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA15
3D203AA31
3D203BA03
3D203BB12
3D203BB28
3D203CA25
3D203CA37
3D203CA40
3D235AA06
3D235BB07
3D235CC14
3D235DD35
3D235EE64
3D235FF06
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】サイドレールの下にバッテリを配置するレイアウトにおいて、側面衝突時におけるバッテリへの損傷を抑制可能とする。
【解決手段】バッテリパック60は、ラダーフレーム10の下方に配置される。バッテリブラケット40は、バッテリパック60の車幅方向外側に固定される。吊り下げブラケット30は、バッテリブラケット40に固定される。吊り下げブラケット30は、水平部31及び傾斜部32を備える。水平部31は、サイドレール12の車幅方向外側から車幅方向に延伸する。傾斜部32は、水平部31の車幅方向外側端から、車幅方向外側かつ下方に延伸する。衝撃吸収部品50は、バッテリブラケット40の車幅方向外側に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延伸するサイドレールを備える、ラダーフレームと、
前記ラダーフレームの下方に配置される、バッテリパックと、
前記バッテリパックの車幅方向外側に固定される、バッテリブラケットと、
前記サイドレールの車幅方向外側から車幅方向に延伸する水平部と、前記水平部の車幅方向外側端から、車幅方向外側かつ下方に延伸する傾斜部を備え、前記バッテリブラケットに固定される、吊り下げブラケットと、
前記バッテリブラケットの車幅方向外側に配置される、衝撃吸収部品と、
を備える、車両用バッテリの支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の、車両用バッテリの支持構造であって、
前記吊り下げブラケットには、前記水平部と前記傾斜部との間に屈曲部が設けられ、
前記屈曲部は、前記バッテリパックの上面以上の高さに設けられる、
車両用バッテリの支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の、車両用バッテリの支持構造であって、
前記衝撃吸収部品の少なくとも一部と、前記バッテリパックの少なくとも一部は、同一高さに配置され、
前記衝撃吸収部品が、前記バッテリブラケット及び前記吊り下げブラケットを介して、前記サイドレールに支持される、
車両用バッテリの支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の、車両用バッテリの支持構造であって、
前記サイドレールには、キャビンを支持するキャブマウントブラケットが設けられ、
前記吊り下げブラケットは、前記キャブマウントブラケットに固定される、
車両用バッテリの支持構造。
【請求項5】
請求項4に記載の、車両用バッテリの支持構造であって、
前記キャビンの下方かつ車幅方向外側には、車両前後方向に延伸するロッカが配置され、
前記吊り下げブラケットの前記傾斜部は、前記ロッカの下方に配置される、
車両用バッテリの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両用バッテリの支持構造が開示される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、モノコック構造の車両において、一対のロッカの間にバッテリが配置される。また特許文献2、3では、ラダーフレーム構造の車両において、一対のサイドレールの間にバッテリが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0134857号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2022/0126664号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0245596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリの搭載スペースを拡げるために、ラダーフレーム構造の車両において、サイドレールの下にバッテリを配置することが考えられる。このようなレイアウトによれば、サイドレールよりも車幅方向外側まで、バッテリを配置することができる。その一方で、車両の側面衝突時には、バッテリを保護する必要がある。
【0005】
そこで本明細書では、車両用バッテリの支持構造が開示される。この支持構造によれば、サイドレールの下にバッテリを配置するレイアウトにおいて、側面衝突時におけるバッテリへの損傷が抑制可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、車両用バッテリの支持構造が開示される。この構造は、ラダーフレーム、バッテリパック、バッテリブラケット、吊り下げブラケット、及び衝撃吸収部品を備える。ラダーフレームは、車両前後方向に延伸するサイドレールを備える。バッテリパックは、ラダーフレームの下方に配置される。バッテリブラケットは、バッテリパックの車幅方向外側に固定される。吊り下げブラケットは、バッテリブラケットに固定される。吊り下げブラケットは、水平部及び傾斜部を備える。水平部は、サイドレールの車幅方向外側から車幅方向に延伸する。傾斜部は、水平部の車幅方向外側端から、車幅方向外側かつ下方に延伸する。衝撃吸収部品は、バッテリブラケットの車幅方向外側に配置される。
【0007】
上記構成によれば、車両の側面衝突時に、衝撃吸収部品が衝突荷重を受ける。さらにこの衝突荷重は、バッテリブラケット及び吊り下げブラケットを介して、ラダーフレームに伝達される。バッテリパックを回避した荷重伝達経路が設けられることで、側面衝突時におけるバッテリパックへの損傷が抑制できる。
【0008】
また上記構成において、吊り下げブラケットには、屈曲部が設けられてよい。屈曲部は、水平部と傾斜部との間に設けられる。また屈曲部は、バッテリパックの上面以上の高さに設けられる。
【0009】
側面衝突が進行すると、屈曲部を起点にして吊り下げブラケットが曲げ変形する。屈曲部がバッテリパックの上面以上の高さに配置されることで、バッテリパックを避けるようにして、吊り下げブラケットが曲げ変形する。
【0010】
また上記構成において、衝撃吸収部品の少なくとも一部と、バッテリパックの少なくとも一部は、同一高さに配置されてよい。この場合、衝撃吸収部品が、バッテリブラケット及び吊り下げブラケットを介して、サイドレールに支持される。
【0011】
上記構成によれば、衝撃吸収部品と車幅方向に並んだバッテリパックへの、衝突荷重の伝達が抑制される。
【0012】
また上記構成において、サイドレールには、キャブマウントブラケットが設けられてよい。キャブマウントブラケットは、キャビンを支持する。吊り下げブラケットは、キャブマウントブラケットに固定される。
【0013】
上記構成によれば、キャビンの骨格部品まで衝突荷重が分散される。
【0014】
また上記構成において、キャビンの下方かつ車幅方向外側には、車両前後方向に延伸するロッカが配置されてよい。この場合、吊り下げブラケットの傾斜部は、ロッカの下方に配置される。
【0015】
車両の側面衝突時には、屈曲部を起点に吊り下げブラケットが曲げ変形する。これに伴い傾斜部が上方に持ち上げられる。傾斜部の上方にはロッカが配置されていることから、傾斜部の過度な上行が抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書で開示される車両用バッテリ支持構造によれば、サイドレールの下にバッテリが配置されるレイアウトにおいて、側面衝突時にバッテリへの損傷が抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る車両用バッテリの支持構造を例示する、全体斜視図である。
【
図2】吊り下げブラケット周辺の構造を例示する拡大斜視図である。
【
図4】側面衝突初期の様子を例示する断面図である。
【
図5】側面衝突が進行したときの例を示す断面図である。
【
図6】吊り下げブラケットの第一別例を示す拡大斜視図である。
【
図7】吊り下げブラケットの第二別例を示す断面図である。
【
図8】吊り下げブラケットの第三別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本実施形態に係る車両用バッテリの支持構造が、図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、車両用バッテリの支持構造の仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0019】
また
図1-
図8では、各構成の位置や方向を表すために、FR軸、RW軸、及びUP軸からなる直交座標系が用いられる。FR軸は車両前方を正方向とする車両前後方向軸である。RWは車両右側を正方向とする車幅方向軸である。UP軸は上方を正方向とする車両上下方向軸である。
【0020】
<全体構成>
図1には、本実施形態に係る車両用バッテリの支持構造が例示される。
図1に例示された車両は、骨格部品としてラダーフレーム10を備える。ラダーフレーム10にボデーが搭載される。例えば車両はピックアップトラックである。すなわちボデーは、キャビン80及びリアデッキ82を備える。
【0021】
また
図1に例示されるように、車両は大型のバッテリパック60を備える。例えば車両は電動式のピックアップトラックである。すなわち車両は駆動源として回転電機(図示せず)を備える。回転電機の電源として、バッテリパック60が車両に搭載される。
【0022】
後述されるように、本実施形態に係る車両用バッテリの支持構造は、ラダーフレーム10、バッテリパック60、バッテリブラケット40、吊り下げブラケット20,30、及び衝撃吸収部品50を備える。
【0023】
<ラダーフレームとその周辺構造>
図1を参照して、ラダーフレーム10は複数のクロスメンバ11及び一対のサイドレール12,12を備える。一対のサイドレール12,12は車両前後方向に延伸する。一対のサイドレール12,12は、車幅方向に間隔を空けて配置される。
【0024】
図2、
図3を参照して、それぞれのサイドレール12は、例えば断面矩形の閉断面構造を有する。例えばサイドレール12は、サイドレールインナ12A及びサイドレールアウタ12Bを備える。サイドレールインナ12A及びサイドレールアウタ12Bはそれぞれ断面U字形状である。サイドレールインナ12A及びサイドレールアウタ12Bが重ね合わせられることで、閉断面構造が形成される。
【0025】
図1、
図2を参照して、クロスメンバ11は車幅方向に延伸する骨格部品である。それぞれのクロスメンバ11の、車幅方向両端は、一対のサイドレール12,12に固定される。
【0026】
図1、
図2を参照して、サイドレール12には、キャブマウントブラケット14及び吊り下げブラケット20,30が固定される。キャブマウントブラケット14及び吊り下げブラケット20,30は、サイドレール12の車幅方向外側に配置される。
【0027】
キャブマウントブラケット14は、キャビン80を底面から支持する。キャブマウントブラケット14は、例えばサイドレールアウタ12Bに溶接される。キャブマウントブラケット14は例えば中空構造である。
【0028】
キャブマウントブラケット14は、キャブマウントブラケットアッパ14A及びキャブマウントブラケットロア14Bを備える。キャブマウントブラケットアッパ14A及びキャブマウントブラケットロア14Bは、例えば断面L字形状である。キャブマウントブラケットアッパ14A及びキャブマウントブラケットロア14Bが重ね合わせられることで、中空構造のキャブマウントブラケット14が構成される。
【0029】
吊り下げブラケット20,30は、バッテリパック60を吊り下げ支持する。例えば吊り下げブラケット30は、クロスメンバ11の延長線上に設けられる。例えば吊り下げブラケット30は、サイドレールアウタ12Bに溶接される。また吊り下げブラケット20は、キャブマウントブラケット14に溶接される。
【0030】
後述されるように、車両の側面衝突時には、吊り下げブラケット30からサイドレール12に衝突荷重が伝達される。また、吊り下げブラケット20からキャブマウントブラケット14に衝突荷重が伝達する。さらにキャブマウントブラケット14からキャビン80のロッカ90(
図3参照)に衝撃荷重が伝達される。このようにして、吊り下げブラケット20,30から車両の骨格部品に、衝撃荷重が分散される。吊り下げブラケット20,30の詳細な構造は後述される。
【0031】
<バッテリパック>
図2、
図3を参照して、ラダーフレーム10の下方に、バッテリパック60が配置される。上述のように車両は、駆動源として回転電機を備える。バッテリパック60は、回転電機の電源である。
【0032】
バッテリパック60は、複数個の単電池と、ケーシングを備える。単電池は例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池である。これら複数個の単電池が、ケーシングに収容される。
【0033】
図1を参照して、バッテリパック60は、例えばキャビン80の下方に配置される。バッテリパック60の平面積は、例えばキャビン80の床面積と略等しい。例えばバッテリパック60の前後寸法は、キャビン80の前後寸法と略等しい。またバッテリパック60の車幅寸法は、キャビン80の車幅寸法と略等しい。
【0034】
さらに後述されるように、バッテリパック60に、衝撃吸収部品50が固定される。衝撃吸収部品50は、バッテリパック60の車幅方向両端に配置される。バッテリパック60の車幅寸法が、キャビン80の車幅寸法と略等しいことから、衝撃吸収部品50の少なくとも一部は、キャビン80よりも車幅方向外側に張り出す。後述されるように、衝撃吸収部品50は、キャビン80への乗降時に使われるステップとしての機能も有する。
【0035】
<バッテリ支持構造>
図2、
図3を参照して、吊り下げブラケット20,30、バッテリブラケット40、及び取付ブラケット64を介して、バッテリパック60は、サイドレール12に支持される。バッテリブラケット40は、吊り下げブラケット20,30の下方に配置される。より詳細には、吊り下げブラケット20,30は構成部品としてロアプレート20C,30Cを備える。このロアプレート20C,30Cの下方に、バッテリブラケット40が配置される。
【0036】
図1を参照して、例えば、バッテリブラケット40は、バッテリパック60と前後寸法が略等しい。バッテリブラケット40は、バッテリパック60の車幅方向外側に固定される。なお
図1-
図8では、車両左側の支持構造が示されているが、車両の対称構造に基づき、車両右側も
図1-
図8と同様の構造を備える。
【0037】
図3を参照して、バッテリブラケット40は、UP-RW断面が縦格子形状である。すなわちバッテリブラケット40の内部には、複数のインナプレート41が配置される。インナプレート41は鉛直方向に延伸する。また複数のインナプレート41は、車幅方向に沿って間隔を空けて配置される。このように中空構造を採るバッテリブラケット40は、車両の側面衝突時には車幅方向に潰される。この潰れにより衝撃荷重が吸収される。
【0038】
またバッテリブラケット40には、ボルト孔42,43が上下方向に穿孔される。ボルト孔42は、バッテリブラケット40を吊り下げブラケット30に固定するために設けられる。ボルト孔43は、バッテリパック60をバッテリブラケット40に固定するために設けられる。
【0039】
ボルト孔42にボルト46が挿入される。吊り下げブラケット30のロアプレート30Cには、ボルト孔30C1が穿孔される。ボルト孔30C1と同軸に、ウェルドナット47がロアプレート30Cに配置される。ボルト46はこのウェルドナット47に螺入される。さらにバッテリブラケット40とロアプレート30Cの間にカラー45が配置される。カラー45により、バッテリブラケット40とロアプレート30Cとの離隔距離が規定される。
【0040】
ボルト孔43にはボルト48が挿入される。バッテリパック60の車幅方向外側には取付ブラケット64が配置される。取付ブラケット64は断面Z形状の部品である。取付ブラケット64の下板にバッテリパック60の車幅方向端部が載せられる。また取付ブラケット64の上板にウェルドナット49が配置される。ウェルドナット49にボルト48が螺入されることで、バッテリパック60がバッテリブラケット40に支持される。
【0041】
バッテリパック60の下方には、泥除けのバッテリカバー62が配置される。ボルト48により、バッテリカバー62が、バッテリブラケット40に支持される。
【0042】
バッテリブラケット40の、車幅方向外側端部には、鉤44が設けられる。鉤44は上向き配置される。また衝撃吸収部品50には、鉤53が設けられる。鉤53は下向き配置される。鉤44,53が噛合う。
【0043】
衝撃吸収部品50がステップとして利用されるときに、衝撃吸収部品50が乗員の重量により下方に撓む。この撓みに応じてバッテリブラケット40の鉤44も撓む。例えば鉤44が開くように撓められる。ここで、バッテリブラケット40では、専ら鉤44が撓み、それ以外の本体部分は撓みを免れる。本体部分の撓みが抑制されることで、当該本体部分と、カラー45等の周辺部品との擦れ合いが抑制される。
【0044】
衝撃吸収部品50は、バッテリブラケット40の車幅方向外側に配置される。例えば衝撃吸収部品50は、バッテリブラケット40よりも高さ寸法が大きくなるように形成される。また、衝撃吸収部品50、バッテリブラケット40及びバッテリパック60の底面が略同一高さとなるように、それぞれの部品が位置決めされる。
【0045】
例えば衝撃吸収部品50は、中空構造である。例えば衝撃吸収部品は、UP-RW断面が十字格子形状である。衝撃吸収部品50の内部には、インナプレート51,52が設けられる。インナプレート51は鉛直方向に延伸する。インナプレート52は水平方向に延伸する。
【0046】
衝撃吸収部品50は、車両の側面衝突時に車幅方向に潰される。この潰れにより衝撃荷重が吸収される。また衝撃吸収部品50は、ステップとしても利用される。鉛直方向の耐荷重性の確保と、側面衝突時の潰れ易さを両立するために、インナプレート51がインナプレート52よりも肉厚に形成されていてもよい。
【0047】
衝撃吸収部品50の車幅方向内側端部には、フランジ54及び鉤53が設けられる。鉤53は上述のように、バッテリブラケット40の鉤44と噛合う。フランジ54は吊り下げブラケット30の鉛直部33と当接する。さらにフランジ54が鉛直部33にボルト留めされる。
【0048】
図2、
図3を参照して、吊り下げブラケット30は、サイドレール12に固定される。例えば吊り下げブラケット30は、サイドレールアウタ12Bに溶接される。また吊り下げブラケット20は、キャブマウントブラケット14を介して、サイドレール12に固定される。例えば吊り下げブラケット20は、キャブマウントブラケット14に固定される。
【0049】
ここで、
図2を参照して、吊り下げブラケット20は吊り下げブラケット30と同様の構造を備える。より詳細には、吊り下げブラケット20は、キャブマウントブラケット14の車幅寸法分、吊り下げブラケット30よりも短い。具体的には、吊り下げブラケット20の水平部21は、吊り下げブラケット30の水平部31よりも短い。しかしながらそれ以外の構造については、吊り下げブラケット20は、吊り下げブラケット30と同様の構造を備える。説明の重複を避けるため、以下では、吊り下げブラケット30の構造が専ら説明される。しかしながら、符号の10の桁の数字を3から2に振り替えることで、以下の説明は吊り下げブラケット20の構造説明に置き換えられる。
【0050】
吊り下げブラケット30は、中空構造を備える。例えば吊り下げブラケット30は、複数部品から構成される。すなわち吊り下げブラケット30は、吊り下げブラケットアッパ30A、吊り下げブラケットロア30B、及びロアプレート30Cを備える。これらの構成部品が、溶接により互いに接合される。
【0051】
吊り下げブラケット30は、水平部31、傾斜部32、及び鉛直部33を備える。水平部31は、サイドレールアウタ12Bから車幅方向外側に延伸する。水平部31の車幅方向外側端に、傾斜部32が接続される。傾斜部32は、車幅方向外側及び下方に延伸する。傾斜部32の下端に鉛直部33が接続される。さらに鉛直部33の下端にロアプレート30Cが接続される。ロアプレート30Cは例えば断面U字形状であって、鉛直部33に被さるようにして、吊り下げブラケットアッパ30A及び吊り下げブラケットロア30Bに固定される。
【0052】
水平部31と傾斜部32の間に屈曲部34が形成される。この屈曲部34は、バッテリパック60の上面以上の高さに配置される。後述される
図5のように、車両が側面衝突したときに、屈曲部34を起点に、吊り下げブラケット30が上方に曲げ変形する。屈曲部34がバッテリパック60の上面以上の高さに設けられることで、変形中の吊り下げブラケット30と、バッテリパック60との干渉が抑制される。
【0053】
図3を参照して、傾斜部32はロッカ90の下方に配置される。ロッカ90は、キャビン80(
図1参照)の下方かつ車幅方向外側に配置される骨格部品である。ロッカ90は、車両前後方向に延伸する。
【0054】
ロッカ90は、ロッカインナ90A及びロッカアウタ90Bを備える。ロッカインナ90A及びロッカアウタ90Bはともに断面ハット形状であって、両者が重ね合わせられることで、閉断面構造が構成される。
【0055】
後述されるように、車両の側面衝突時には、傾斜部32が上方に移動する(上行する)。傾斜部32の上方にロッカ90が配置されていることから、傾斜部32の上方移動は、ロッカ90に止められる。傾斜部32の過度な上行が抑制されることで、吊り下げブラケット30に支持されるバッテリパック60の撓みが抑制される。
【0056】
<側面衝突時の挙動>
図4、
図5には、側面衝突時の車両の挙動が例示される。例えば車両が横滑りしてバリア100に衝突する。車両の車幅方向外側に設けられたドア93及び衝撃吸収部品50が潰れ変形する。これにより衝撃荷重が吸収される。
【0057】
また、衝撃吸収部品50はバッテリブラケット40及び吊り下げブラケット20,30を介して、サイドレール12に支持される。したがって、衝撃荷重は衝撃吸収部品50からサイドレール12に伝達される。
図4を参照して、衝撃吸収部品50の少なくとも一部と、バッテリパック60の少なくとも一部は、同じ高さに配置される。しかしながら吊り下げブラケット30を介して、衝撃吸収部品50からバッテリパック60の上方に衝突荷重が逃がされる。すなわちバッテリパック60への衝突荷重の伝達が抑制される。
【0058】
また
図2、
図4を参照して、吊り下げブラケット20が受けた衝突荷重は、キャブマウントブラケット14からロッカ90に伝達する。つまりラダーフレーム構造において、キャビン80の骨格部品にまで衝突荷重が分散される。
【0059】
さらに
図5を参照して、側面衝突が進行すると、バッテリブラケット40が潰れ変形する。これに伴い、吊り下げブラケット30が屈曲部34を起点に曲げ変形される。また
図2を参照して、吊り下げブラケット20も屈曲部24を起点に曲げ変形する。この曲げ変形は、上折れ変形とも呼ばれる。
【0060】
屈曲部34はバッテリパック60の上面以上の高さに配置されている。したがって、上折れ変形中の吊り下げブラケット20,30と、バッテリパック60との干渉が抑制される。
【0061】
ここで、上折れが過度に進行すると、吊り下げブラケット20,30の鉛直部23,33がバッテリパック60に近づく。しかしながら上折れの進行に伴って、傾斜部32はロッカ90に近づく。鉛直部23,33がバッテリパック60と干渉する前に、傾斜部32がロッカ90に干渉するような構成を採ることで、吊り下げブラケット20,30とバッテリパック60との干渉が抑制される。
【0062】
例えば
図3を参照して、傾斜部32とロッカ90との最短距離D1は、鉛直部33とバッテリパック60の最短距離D2より短い。このような配置により、吊り下げブラケット20,30とバッテリパック60との干渉が抑制される。
【0063】
<バッテリ支持構造の別例>
図6には、バッテリ支持構造の別例が示される。この例では、吊り下げブラケット20の車両前後方向長さが、キャブマウントブラケット14の車両前後方向長さと等しい。この例では、バッテリパック60と吊り下げブラケット20との締結点が増えるので、より堅固にバッテリパック60が支持される。さらに側面衝突時には、吊り下げブラケット20からキャブマウントブラケット14への荷重伝達がよりスムーズに行われる。
【0064】
図7、
図8には、吊り下げブラケット30に関する変形例(第二別例及び第三別例)が示される。これらの例では、屈曲部34より下方での折れ変形を抑制するような構造が設けられる。例えば
図7、
図8では、ボルト46の軸長が
図3のボルト46よりも長い。ここで、ボルト46の軸端46Aは、屈曲部34よりも下方となるように位置決めされる。
【0065】
図7を参照して、ボルト46が挿入される2つのカラー45A,45Bが、バッテリの支持構造に設けられる。カラー45Aはバッテリブラケット40内に配置される。カラー45Bはバッテリブラケット40の上面から吊り下げブラケット30の内部まで進入する。例えばカラー45Bとロアプレート30Cは溶接される。
【0066】
図8の例では、バッテリブラケット40からロアプレート30Cに至るまでカラー45Aが配置される。さらに吊り下げブラケット30の内部にカラー45Bが配置される。
【0067】
このように、
図7、
図8では、ボルト46及びカラー45Bが、吊り下げブラケット30の内部まで進入する。またボルト46及びカラー45Bの上端は、屈曲部34よりも下方に位置決めされる。このような構成を備えることで、屈曲部34より下方部分が補強される。例えば鉛直部33が潰れにくくなる。このような補強により、屈曲部34を起点とした曲げ変形が起こり易くなる。
【符号の説明】
【0068】
10 ラダーフレーム、12 サイドレール、14 キャブマウントブラケット、20,30 吊り下げブラケット、21,31 水平部、22,32 傾斜部、23,33 鉛直部、24,34 屈曲部、40 バッテリブラケット、50 衝撃吸収部品、60 バッテリパック、80 キャビン、82 リアデッキ、90 ロッカ。