(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179905
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】振動解析方法、振動解析装置、振動解析プログラム、及び、該振動解析プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01H17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099212
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守安 信夫
(72)【発明者】
【氏名】平田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】眞田 明
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータの推定に際して、その推定精度を向上させる。
【解決手段】振動解析方法は、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付ける解析パラメータ40を推定するものであり、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元D1と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元D2とを含んだ2次元以上の多次元系列データ31を読み込むステップS2と、解析パラメータ40の目標値を取得するステップS3と、多次元系列データ31を入力とし、解析パラメータ40の推定値を出力とした多次元CNN20を学習するステップS4と、を備え、多次元CNN20は、多次元系列データ31に、第1及び第2の次元D1,D2を含んだ多次元のフィルタ21aを畳み込むように構成された多次元畳込層21を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を読み込む読込部と、所定の処理を実行する演算部と、を備えるコンピュータを用いることで、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析方法であって、
前記読込部が、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込むステップと、
前記演算部が、前記パラメータの目標値を取得するステップと、
前記演算部が、前記目標値に基づいて、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした多次元畳み込みニューラルネットワークを学習するステップと、を備え、
前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ多次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項2】
情報を読み込む読込部と、所定の処理を実行する演算部と、を備えるコンピュータを用いることで、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析方法であって、
前記読込部が、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込むステップと、
前記演算部が、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした学習済みの多次元畳み込みニューラルネットワークによって、前記パラメータを推定するステップと、を備え、
前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ2次元以上のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された振動解析方法において、
前記第2の次元は、前記物品における振動の測定位置を区別するカテゴリを示し、
前記多次元系列データは、前記第2の次元については、前記物品における振動方向が同じデータを、前記測定位置を異ならせつつ並べることで構成される
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項4】
請求項3に記載された振動解析方法において、
前記多次元系列データは、前記第1及び前記第2の次元に加えて、前記第1及び第2の次元とは異なる第3の次元を含んだ3次元系列データであり、
前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1、第2及び第3の次元を含んだ3次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有することを特徴とする振動解析方法。
【請求項5】
請求項4に記載された振動解析方法において、
前記第3の次元は、前記物品における振動方向を区別するカテゴリを示し、
前記多次元系列データは、
前記第2の次元については、前記振動方向が同じデータを、前記測定位置を異ならせつつ並べるとともに、
前記第3の次元については、前記測定位置が同じデータを、前記振動方向を異ならせつつ並べることで構成される
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された振動解析方法において、
前記第2の次元は、前記物品における振動方向を区別するカテゴリを示し、
前記多次元系列データは、前記第2の次元については、前記物品における振動の測定位置が同じデータを、前記振動方向を異ならせつつ並べることで構成される
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された振動解析方法において、
前記物品は、基礎に対して定盤を介して搭載物を支持するとともに、前記基礎から前記搭載物への振動を遮断する除振台であり、
前記パラメータは、物品中の振動の伝達を特徴付けるパラメータであり、
前記パラメータは、前記定盤及び前記搭載物の物理的特性を示し、
前記多次元系列データは、
前記基礎に対する前記除振台の振動のゲインと、
前記基礎に対する前記除振台の振動の位相と、の少なくとも一方を多次元化することで構成される
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項8】
請求項7に記載された振動解析方法において、
前記定盤は、前記基礎に対し、複数の支持位置で支持され、
前記定盤及び前記搭載物の物理的特性には、
前記基礎及び前記定盤の間のばね定数と、
前記基礎及び前記定盤の間の減衰係数と、
前記定盤及び前記搭載物の全体の重心位置と、
前記定盤及び前記搭載物の質量と、
前記支持位置間の距離と、の1つ以上の組み合わせが含まれる
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項9】
請求項7に記載された振動解析方法において、
前記定盤は、前記基礎に対し、複数の支持位置で支持され、
前記多次元ニューラルネットワークは、前記多次元系列データに加えて、前記物理的特性の少なくとも一部を入力として学習を実行する
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項10】
請求項1に記載された振動解析方法において、
前記パラメータの目標値は、所定範囲内で所与とされ、
前記多次元系列データが、所与とされた前記目標値に基づいた、前記物品の振動シミュレーションによって算出され、
所与とされた前記目標値と、前記振動シミュレーションの算出値とによって、多次元畳み込みニューラルネットワークを学習するための訓練データが構成される
ことを特徴とする振動解析方法。
【請求項11】
物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析装置であって、
前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込む読込部と、
前記パラメータの目標値を取得する取得部と、
前記目標値に基づいて、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした多次元畳み込みニューラルネットワークを学習する学習部と、を備え、
前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ多次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する
ことを特徴とする振動解析装置。
【請求項12】
情報を読み込む読込部と、所定の処理を実行する演算部と、を備えるコンピュータを用いることで、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記読込部が、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込むステップと、
前記演算部が、前記パラメータの目標値を取得するステップと、
前記演算部が、前記目標値に基づいて、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした多次元畳み込みニューラルネットワークを学習するステップと、を実行させ、
前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ多次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する
ことを特徴とする振動解析プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載された振動解析プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動解析方法、振動解析装置、振動解析プログラム、及び、該振動解析プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像分析、動画認識のための分析手法として、いわゆる畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を用いた手法が広く知られている。CNNとは、畳込層を有するニューラルネットワークである。この畳込層では、入力データにおけるデータ間の相関を抽出すべく、その入力データにフィルタ(畳み込みカーネル)が畳み込まれるようになっている。
【0003】
一例として、画像データに関するCNNを考える。この場合、入力データは、RGBの3自由度を無視すると、x方向及びy方向に多数の画素値が並んだ一の2次元配列とみなすことができる。そうした2次元配列を、画像データよりも小サイズの2次元フィルタによって畳み込むことで、画像データから抽出される特徴に、画素同士の局所的な相関(位置関係に起因した相関)を反映させることができる。
【0004】
近年、CNNを用いた分析手法が、健康診断、振動解析等、他の技術分野にも広まりつつある。
【0005】
例えば特許文献1には、対象者の体表面における3次元方向の振動を示す体動データを取得し、その体動データと機械学習済みのCNNを用いることで、対象者の咳嗽を検出することが開示されている。この特許文献1では、3次元の各方向について、CNNが個別に用意されるようになっている。
【0006】
また、特許文献2には、時系列的に記録した時系列加速度データをCNNに入力し、その出力に基づいて回転機の異常を診断することが開示されている。この特許文献2では、時系列方向に関して畳み込むように構成された、1次元のCNNが用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-018726号公報
【特許文献2】特開2021-140403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者らは、除振台等の物品をモデル化したときのばね定数、減衰係数等、物品中を伝達する振動を特徴付けるパラメータの推定、及び、モータ等の物品における異常の有無を示すフラグ等、物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータの推定に際し、CNNを用いることを検討した。その結果、CNNを用いた従来の手法には、さらなる精度向上の余地があることを明らかにし、本開示を想到するに至った。
【0009】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータの推定に際して、その推定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様は、情報を読み込む読込部と、所定の処理を実行する演算部と、を備えるコンピュータを用いることで、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析方法に係る。この振動解析方法は、前記読込部が、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込むステップと、前記演算部が、前記パラメータの目標値を取得するステップと、前記演算部が、前記目標値に基づいて、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした多次元畳み込みニューラルネットワークを学習するステップと、を備え、前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ多次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する。
【0011】
なお、ここでいう「第1の次元」と「第2の次元」は、それぞれ、系列データを構成する各データの並び方向を示している。仮に、第1の次元を周波数(例えば、振動の周波数)とし、第2の次元を位置(例えば、振動の測定位置)とした場合、多次元データ系列は、少なくとも周波数と位置とを変数に含んだ2次元以上のデータ系列となる。
【0012】
また、前記畳込層は、多次元データ系列と同次元のフィルタによって畳み込みを行ってもよいし、多次元データ系列よりも低次元のフィルタによって畳み込みを行ってもよい。仮に、第1の次元を周波数(例えば、振動の周波数)とし、第2の次元を位置(例えば、振動の測定位置)とし、第3の次元を方向(例えば、振動の測定方向)とした3次元の多次元データ系列を用いた場合、これを2次元のフィルタ(第1及び第2の次元に関するフィルタ)によって畳み込んでもよいし、3次元のフィルタ(第1、第2及び第3の次元に関するフィルタ)によって畳み込んでもよい。
【0013】
前記第1の態様によると、前記多次元畳込層は、少なくとも第1及び第2の次元を同時に畳み込む。これにより、第1の次元については、周波数又は時間に関係したデータ間の局所的な相関を反映させることができる。一方、第2の次元については、第1の次元に係る変数(周波数又は時間に関係した変数)の値が同じ又は近接しているもの同士を畳み込むことになるから、第2の次元における局所的な相関を反映させることができる。これにより、多次元畳み込みニューラルネットワークの学習精度を向上し、ひいては、振動を特徴付けるパラメータの推定に際して、その推定精度を向上させることができる。
【0014】
本開示の第2の態様は、情報を読み込む読込部と、所定の処理を実行する演算部と、を備えるコンピュータを用いることで、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析方法に係る。この振動解析方法は、前記読込部が、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込むステップと、前記演算部が、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした学習済みの多次元畳み込みニューラルネットワークによって、前記パラメータを推定するステップと、を備え、前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ2次元以上のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する。
【0015】
前記第2の態様によると、前記多次元畳込層は、少なくとも第1及び第2の次元を同時に畳み込む。これにより、第1の次元については、周波数又は時間に関係したデータ間の局所的な相関を反映させることができる。一方、第2の次元については、第1の次元に係る変数(周波数又は時間に関係した変数)の値が同じ又は近接しているもの同士を畳み込むことになるから、第2の次元における局所的な相関を反映させることができる。これにより、振動を特徴付けるパラメータの推定に際して、その推定精度を向上させることができる。
【0016】
また、本開示の第3の態様によれば、前記第2の次元は、前記物品における振動の測定位置を区別するカテゴリを示し、前記多次元系列データは、前記第2の次元については、前記物品における振動方向が同じデータを、前記測定位置を異ならせつつ並べることで構成される、としてもよい。
【0017】
多次元系列データを構成する系列データは、同じ物品を伝わる振動又は同じ物品が発する振動に対応した系列データである。したがって、第2の次元を振動の測定位置を区別するカテゴリとした場合、前記多次元系列データは、同じ物品に伝わる振動又は同じ物品が発する振動を、異なる位置で測定したものに相当する。この場合、各測定位置は、物品を通じて連結されていることから、第2の次元に関しても、第1の次元と同様に、局所的な相関が強いものと考えることができる。そのため、第2の次元に関して畳み込むことで、推定精度の向上に有利になる。
【0018】
また、本開示の第4の態様によれば、前記多次元系列データは、前記第1及び前記第2の次元に加えて、前記第1及び第2の次元とは異なる第3の次元を含んだ3次元系列データであり、前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1、第2及び第3の次元を含んだ多次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する、としてもよい。
【0019】
前記第4の態様によると、第1及び第2の次元に加えて、第3の次元についても畳み込むことで、推定精度のさらなる向上に有利になる。
【0020】
また、本開示の第5の態様によれば、前記第3の次元は、前記物品における振動方向を区別するカテゴリを示し、前記多次元系列データは、前記第2の次元については、前記振動方向が同じデータを、前記測定位置を異ならせつつ並べるとともに、前記第3の次元については、前記測定位置が同じデータを、前記振動方向を異ならせつつ並べることで構成される、としてもよい。
【0021】
前記第5の態様によると、前記多次元系列データは、第2の次元については、振動方向が同じデータを、その測定位置を異ならせつつ並べたものとなり、第3の次元については、測定位置が同じデータを、その振動方向を異ならせつつ並べたものとなる。このように構成された多次元系列データを用いることで、第2及び第3の次元に関しても、第1の次元と同様に、局所的な相関が強いデータを畳み込みことができる。そのため、第2の次元と第3の次元に関して畳み込むことで、推定精度の向上に有利になる。
【0022】
また、本開示の第6の態様によれば、前記第2の次元は、前記物品における振動方向を区別するカテゴリを示し、前記多次元系列データは、前記第2の次元については、前記物品における振動の測定位置が同じデータを、前記振動方向を異ならせつつ並べることで構成される、としてもよい。
【0023】
また、本開示の第7の態様によれば、前記物品は、基礎に対して定盤を介して搭載物を支持するとともに、前記基礎から前記搭載物への振動を遮断する除振台であり、前記パラメータは、物品中の振動の伝達を特徴付けるパラメータであり、前記パラメータは、前記定盤及び前記搭載物の物理的特性を示し、前記多次元系列データは、前記基礎に対する前記除振台の振動のゲインと、前記基礎に対する前記除振台の振動の位相と、の少なくとも一方を多次元化することで構成される、としてもよい。
【0024】
前記第7の態様によると、前記構成は、物品として除振台を用いた場合における、推定精度の向上に資する。
【0025】
また、本開示の第8の態様によれば、前記定盤は、前記基礎に対し、複数の支持位置で支持され、前記定盤及び前記搭載物の物理的特性には、前記基礎及び前記定盤の間のばね定数と、前記基礎及び前記定盤の間の減衰係数と、前記定盤及び前記搭載物の全体の重心位置と、前記定盤及び前記搭載物の質量と、前記支持位置間の距離と、の1つ以上の組み合わせが含まれる、としてもよい。
【0026】
また、本開示の第9の態様によれば、前記定盤は、前記基礎に対し、複数の支持位置で支持され、前記多次元ニューラルネットワークは、前記多次元系列データに加えて、前記物理的特性の少なくとも一部を入力として学習を実行する、としてもよい。
【0027】
また、本開示の第10の態様によれば、前記パラメータの目標値は、所定範囲内で所与とされ、前記多次元系列データが、所与とされた前記目標値に基づいた、前記物品の振動シミュレーションによって算出される、としてもよい。
【0028】
また、本開示の第11の態様は、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析装置に係る。この振動解析装置は、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込む読込部と、前記パラメータの目標値を取得する取得部と、前記目標値に基づいて、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした多次元畳み込みニューラルネットワークを学習する学習部と、を備え、前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ多次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する。
【0029】
前記第11の態様によると、多次元畳み込みニューラルネットワークの学習精度を向上し、ひいては、振動を特徴付けるパラメータの推定に際して、その推定精度を向上させることができる。
【0030】
また、本開示の第12の態様は、情報を読み込む読込部と、所定の処理を実行する演算部と、を備えるコンピュータを用いることで、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析プログラムに係る。この振動解析プログラムは、前記コンピュータに、前記読込部が、前記振動に対応した系列データであって、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元と、を含んだ2次元以上の多次元系列データを読み込むステップと、前記演算部が、前記パラメータの目標値を取得するステップと、前記演算部が、前記目標値に基づいて、前記多次元系列データを入力とし、前記パラメータの推定値を出力とした多次元畳み込みニューラルネットワークを学習するステップと、を実行させ、前記多次元畳み込みニューラルネットワークは、前記多次元系列データに、前記第1及び第2の次元を含んだ多次元のフィルタを畳み込むように構成された多次元畳込層を有する。
【0031】
前記第12の態様によると、多次元畳み込みニューラルネットワークの学習精度を向上し、ひいては、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータの推定に際して、その推定精度を向上させることができる。
【0032】
また、本開示は、前記振動解析プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体にも係る。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本開示によれば、物品中を伝達する振動又は物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータの推定に際して、その推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、振動解析システムの構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、除振台の構成を例示する斜視図である。
【
図3】
図3は、振動解析装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図4】
図4は、振動解析装置のソフトウェア構成を例示する図である。
【
図5】
図5は、振動解析方法の基本概念を説明するための図である。
【
図6】
図6は、多次元系列データについて説明するための図である。
【
図7】
図7は、2次元CNNについて説明するための図である。
【
図8】
図8は、3次元CNNについて説明するための図である。
【
図9】
図9は、CNNの学習方法の基本手順を例示するフローチャートである。
【
図10】
図10は、学習済みのCNNを用いた解析方法の基本手順を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1及び第2の方法の数値実験結果を示す表である。
【
図12】
図12は、ディープラーニング、1次元CNN、2次元CNN及び3次元CNNによる、鉛直方向のばね定数の数値実験結果(サンプル数=5000)を示すヒストグラムである。
【
図13】
図13は、ディープラーニング、1次元CNN、2次元CNN及び3次元CNNによる、x方向の重心位置の数値実験結果(サンプル数=5000)を示すヒストグラムである。
【
図14】
図14は、振動解析システムの構成の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0036】
<1.システム構成>
図1は、振動解析システムSの構成を例示する図である。
図1に示すように、振動解析システムSは、除振台1と、コンピュータ100と、を備えている。除振台1は、振動の解析対象となる「物品」の例示である。コンピュータ100は、本開示に係る振動解析方法を実行する「振動解析装置」の例示である。
【0037】
以下、振動解析システムSを構成する各要素について、順番に説明する。
【0038】
(1-1.除振台)
図2は、除振台の構成を例示する斜視図である。
図2に示すように、物品としての除振台1は、基礎Fに対して定盤3を介して搭載物10を支持するとともに、基礎Fから搭載物10への振動を遮断するように構成されている。この除振台1は、前記定盤3と、4つの除振装置5と、を備えている。
【0039】
定盤3は、矩形状の厚板として形成されており、その上面には、半導体検査装置、電子顕微鏡および光学式計測装置等、振動を遮断すべき搭載物10が載置されている。この定盤3の四隅に、それぞれ定盤3を下方から支持する4つの除振装置5が配置されている。なお、除振装置5の個数は、図例に限定されない。
【0040】
以下、定盤3の長手方向を「x方向」と呼称し、定盤3の短手方向を「y方向」と呼称し、定盤3の厚み方向を「z方向」と呼称する。x方向とy方向を水平方向とみなし、z方向を鉛直方向とみなしてもよい。
【0041】
xy平面上で時計周りの順に、4つの除振装置5を、それぞれ第1除振装置5A、第2除振装置5B、第3除振装置5C及び第4除振装置5Dと呼称する。そして、第1除振装置5Aによる定盤3の支持位置を第1位置P1とし、第2除振装置5Bによる定盤3の支持位置を第2位置P2とし、第3除振装置5Cによる定盤3の支持位置を第3位置P3とし、第4除振装置5Dによる定盤3の支持位置を第4位置P4とする。なお、ここでいう「支持位置」は、除振台1を上方から見た平面視では、各除振装置5の中央位置に相当する。定盤3は、基礎Fに対し、これらの支持位置P1~P4で支持されている。
【0042】
図2に示すように、本実施形態では、第1位置P1の位置座標は、並進方向の3軸それぞれの座標をゼロとした原点(0,0,0)に相当する。
【0043】
一方、第1位置P1と第2位置P2との距離をlyとすると、
図2に示すように第2位置P2はy軸上に配置されていることから、第2位置P2の位置座標は、(0,ly,0)と表すことができる。
【0044】
また、第1位置P1と第4位置P4との距離をlxとすると、
図2に示すように第4位置P4はx軸上に配置されていることから、第4位置P4の位置座標は、(lx,0,0)と表すことができる。
【0045】
また、第3位置P3は、x方向においては
図2に示すように第4位置P4と同じ位置に配置されている一方、y方向においては同図に示すように第2位置P2と同じ位置に配置されていることから、その位置座標は、(lx,ly,0)と表すことができる。
【0046】
ここで、
図1に戻ると、同図に示すように、4つの除振装置5は、床面等からなる基礎Fに対して定盤3を支持する弾性体51及びダンパ52と、定盤3に制御力又は変位を付与するアクチュエータ53と、の組み合わせとみなしてモデル化することができる。なお、アクチュエータ53は必須ではない。つまり、4つの除振装置5をそれぞれアクティブ除振装置とすることは必須ではない。以下の説明では、アクチュエータ53を必須としないケースについて、詳細に説明する。
【0047】
ここで、弾性体51は、z方向に弾性変形するバネ要素51aと、xy方向に弾性変形するバネ要素(不図示)と、を有するとみなすことができる。同様に、ダンパ52は、z方向に摺動しつつ伸縮する摺動部材52aと、xy方向(より詳細には、対応するバネ要素と同じ方向)に摺動しつつ伸縮する摺動部材(不図示)と、を有している。なお、
図1では、z方向に弾性変形するバネ要素51aと、同じくz方向に伸縮する摺動部材52aのみを示す。
【0048】
また、アクチュエータ53は、x方向、y方向及びz方向の並進3方向に加えて、それら3方向に沿って延びる中心軸まわりの回転3方向Φ、θ、ψの合計6自由度の各方向に各々制御力又は変位を付与するように構成されている。
【0049】
また、除振台1には、基礎Fから各除振台1に伝わる振動を検出する振動センサ54が取り付けられている。振動センサ54は、例えば加速度センサを用いてもよい。振動センサ54は、後述の振幅及び/又は位相を計算可能なパラメータ(具体的には、当該パラメータに対応した信号)を検出するものであればよい。振動センサ54の検出信号は、無線通信、有線通信、又は、有体の記憶媒体(例えば、ディスク媒体及びメモリスティック)によってコンピュータ100に送られるようになっている。
【0050】
(2-1.コンピュータ)
図3は、振動解析装置(具体的には、振動解析装置として機能するコンピュータ100)のハードウェア構成を例示する図であり、
図4は、そのソフトウェア構成を例示する図である。
【0051】
図3に示すように、コンピュータ100は、コンピュータ100全体の制御を司る中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)103と、一次記憶装置105と、二次記憶装置107と、を備えている。一次記憶装置105は、メインメモリとして機能するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)であって、いわゆる半導体メモリによって構成されている。二次記憶装置107は、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)等によって構成されている。
【0052】
これらの要素のうち、CPU103は、種々のプログラムを実行する。CPU103は、所定の処理を実行する演算部として機能する。CPU103は、後述の機械学習を行う学習部とみなすことができるし、その学習結果に基づいたパラメータ推定を行う推定部とみなすこともできる。一次記憶装置105は、CPU103により実行されるプログラム、及びそのプログラムに関係した入力データ等を一時的に記憶する。一次記憶装置105は、種々の情報を読み込む読込部として機能する。二次記憶装置107は、プログラム及びデータ等を継続的に記憶する。一次記憶装置105は、二次記憶装置107からプログラム及びデータ等を読み込むこともできる。
【0053】
コンピュータ100はまた、表示部111と、操作部113と、通信用のインターフェース115と、を備えている。表示部111は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等によって構成されており、CPU103による演算結果を表示することができる。操作部113は、いわゆるマンマシンインターフェースであって、キーボード及びマウスによって構成されている。また、通信用の入出力バス117を介して、コンピュータ100と外部機器との間でデータを送受することができる。
【0054】
図4に示すように、二次記憶装置107のプログラムメモリには、オペレーティングシステム(Operating System:OS)119、学習準備プログラム121、第1読込プログラム123、機械学習プログラム125、第2読込プログラム127及びパラメータ推定プログラム129等が、必要に応じて格納される。これらのプログラムのうち、少なくとも第1読込プログラム123及び機械学習プログラム125、又は、第2読込プログラム127及びパラメータ推定プログラム129が、本実施形態における振動解析プログラム120を構成する。
【0055】
なお、これらのプログラムは、各プログラムを機能別に分類したものに過ぎない。例えば、第1読込プログラム123を、複数のプログラムの組み合わせとみなしてもよいし、第1読込プログラム123及び第2読込プログラム127を、一のプログラムとみなしてもよい。
【0056】
ここで、振動解析プログラム120とは、本実施形態に係る振動解析方法をコンピュータ100に実行させるように構成されたプログラムであって、同方法を構成する各ステップをコンピュータ100に実行させるものである。振動解析プログラム120は、コンピュータ読取可能な記憶媒体109に予め記憶されている。この記憶媒体109は、ディスク媒体及びメモリスティック等、有体の記憶媒体である。
【0057】
二次記憶装置107のプログラムメモリにおいて、学習準備プログラム121、第1読込プログラム123、機械学習プログラム125、第2読込プログラム127及びパラメータ推定プログラム129は、それぞれ、操作部113から入力される指令に応じて起動される。その際、学習準備プログラム121等は、二次記憶装置107から一次記憶装置105にロードされ、CPU103によって実行されることになる。CPU103が学習準備プログラム121等を実行することで、コンピュータ100が振動解析装置として機能することになる。
【0058】
一方、二次記憶装置107のデータメモリには、振動特性131と、訓練データ133と、学習済み多次元CNN135と、を格納することができる。詳細は後述するが、これらのデータ131,133,135は、必要に応じて二次記憶装置107から一次記憶装置105にロードされて、CPU103による演算に用いられるようになっている。なお、ここでいう振動特性131は、後述のゲイン及び位相からなるデータセットである。振動特性131の各データは、訓練データ133の構築に用いることができる。
【0059】
この他、学習準備プログラム121、第1読込プログラム123、機械学習プログラム125、第2読込プログラム127及びパラメータ推定プログラム129を実行することで生成される種々のデータについては、必要に応じて、二次記憶装置107のデータメモリに格納されたり、メインメモリとしての一次記憶装置105に格納されたりする。
【0060】
以下、振動解析方法の具体的な方法論について詳細に説明する。
【0061】
<2.方法論>
図5は、振動解析方法の基本概念を説明するための図である。また、
図6は、多次元系列データ31について説明するための図である。また、
図7は、2次元CNNについて説明するための図であり、
図8は、3次元CNNについて説明するための図である。
【0062】
(2-1.基本概念)
本開示に係る振動解析方法は、コンピュータ100を用いることで、物品(例えば除振台1)中の振動の伝達を特徴付けるパラメータ(物品を伝達する振動を特徴付けるパラメータ)を推定するためのものである。この振動解析方法は、その畳込層に工夫を凝らした多次元CNN20を用いたものとされている。この多次元CNN20は、少なくとも1層の畳込層21を有するニューラルネットワークであって、後述の多次元系列データ31を入力(説明変数)とし、推定対象となるパラメータを出力(目的変数)としたものである。
【0063】
また、振動解析方法による推定対象となるパラメータは、物品を除振台1とした場合、定盤3及び搭載物10の物理的特性を示すパラメータとしてもよい。以下、このパラメータを「解析パラメータ」と呼称し、これに符号「40」を付す。解析パラメータ40としては、
図1に例示したモデルに関連したものを用いることができる。
【0064】
詳細には、解析パラメータ40には、
図5に示すように、基礎F及び定盤3の間のばね定数Kv,Khと、基礎F及び定盤3の間の減衰係数Cv,Chと、定盤3及び搭載物10の全体の重心位置CGx,CGy,CGzと、定盤3及び搭載物10の質量mと、定盤3の寸法に係るパラメータlx,lyと、の1つ以上の組み合わせが含まれる。なお、これらのパラメータは、前述のように定盤3及び搭載物10の物理的特性を示すパラメータとみなしてもよいし、除振台1及び除振装置5自身の物理的特性を示すパラメータとみなしてもよい。また、
図5に実線及び破線で示したように、定盤3及び搭載物10の質量mと、定盤3の寸法に係るパラメータlx,lyと、については、解析パラメータ40に含めてもよいし、それに代えて、前述の非系列パラメータ32に含めてもよい。
【0065】
ここで、2つのばね定数Kv,Khには、鉛直方向(z方向)のばね定数Kvと、水平方向(xy方向)のばね定数Khと、が含まれる。同様に、2つの減衰係数Cv,Chには、鉛直方向(z方向)の減衰係数Cvと、水平方向(xy方向)の減衰係数Chと、が含まれる。また、3つの重心位置CGx,CGy,CGzには、x方向の重心位置CGxと、y方向の重心位置CGyと、z方向の重心位置CGzと、が含まれる。
【0066】
その他、定盤3の寸法に係るパラメータlx,lyには、前述の第1位置P1と第2位置P2との距離(以下、これを「第1距離」という)lxと、第2位置P2と第3位置P3との距離(以下、これを「第2距離」という)lyと、が含まれる。第1距離lxは、x方向における定盤3の寸法を特徴付けるパラメータである。第2距離lyは、y方向における定盤3の寸法を特徴付けるパラメータである。
【0067】
これら解析パラメータ40のうちの1つ以上が、前記振動解析方法における目的変数に設定される。それらの目的変数に対応した説明変数には、2次元以上の多次元系列データ31が用いられるようになっている。
【0068】
この多次元系列データ31は、除振台1を伝わる振動に対応した系列データであって、第1の次元D1と、第2の次元D2と、を含んだ2次元以上の系列データである(
図6、
図7及び
図8参照)。第1の次元D1と第2の次元D2は、それぞれ、多次元系列データ31を構成する各データの並び方向を示している。第1の次元D1は、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する。第2の次元D2は、該周波数系列及び時系列とは異なるものである。
【0069】
ここで、第2の次元D2は、除振台1における振動の測定位置を区別するカテゴリ、又は、振動方向を区別するカテゴリを示していてもよい。本実施形態では、第1の次元D1に周波数系列を用いるとともに、第2の次元D2に振動の測定位置を区別するカテゴリが用いられている。
【0070】
一方、多次元系列データ31は、物品を除振台1とした場合、基礎Fに対する除振台1の振動に基づいて設定することができる。この場合、多次元系列データ31は、その振動のゲイン(振幅比)と、その振動の位相と、の少なくとも一方を多次元化することで構成される。前者は、ゲイン特性を示しており、後者は位相特性を示している。なお、振幅比としてのゲインに代えて、振幅の絶対値そのものを用いてもよい。
【0071】
特に本実施形態では、振幅に対応する多次元系列データ31と、位相に対応する多次元系列データ31と、がそれぞれ個別に処理されるようになっている。
【0072】
なお、多次元系列データ31は、第1及び第2の次元D1,D2に加えて、第1及び第2の次元D1,D2とは異なる第3の次元D3を含んだ3次元系列データであってもよい。
【0073】
その場合、除振台1における振動の測定位置を区別するカテゴリ、及び除振台1における振動方向を区別するカテゴリの一方を第2の次元D2とし、他方を第3の次元D3とすることができる。本実施形態では、第2の次元D2に振動の測定位置を区別するカテゴリが用いられ、第3の次元D3に振動方向を区別するカテゴリが用いられるようになっている。
【0074】
そして、本実施形態に係る多次元CNN20は、多次元系列データ31に、第1及び第2の次元D1,D2を含んだ多次元のフィルタ21aを畳み込むように構成された多次元畳込層21を有するものである(
図5、
図7及び
図8を参照)。
【0075】
ここで、多次元系列データ31の次元数をN(≧2)とし、フィルタ21aの次元数をMとすると、N≧Mの関係が成立する。なお、以下に説明される具体例では、N=2かつM=2のケースと、N=3かつM=3のケースとが主に説明されることになる。
【0076】
前者のケースの場合、
図7に示すように、フィルタ21aは、第1の次元D1と第2の次元D2について畳み込むことになる。畳み込み後のデータは、
図7の符号41に示す通りである。
【0077】
例えば、仮に、多次元系列データ30をI(i,j)とし、2次元のフィルタ21aをK2(o,p)とする。ここで、関数Iの変数は、それぞれ、第1の次元D1及び第2の次元D2についての変数を示す。関数K2の変数は、それぞれ、第1の次元D1及び第2の次元D2についての変数を示す。ここで、簡単のためストライドを無視すると、このケースの場合、下式が成立することになる。
【0078】
【0079】
後者のケースの場合、
図8に示すように、フィルタ21aは、第1の次元D1と、第2の次元D2と、第3の次元D3と、の全次元について畳み込むことになる。畳み込み後のデータは、
図8の符号41に示す通りである。
【0080】
例えば、仮に、多次元系列データ30をI(i,j,k)とし、3次元のフィルタ21aをK3(o,p,q)とする。ここで、関数Iの変数は、それぞれ、第1の次元D1、第2の次元D2及び第3の次元D3についての変数を示す。関数K2の変数も、関数Iの変数と同様に、それぞれ、第1の次元D1、第2の次元D2及び第3の次元D3についての変数を示す。ここで、簡単のためストライドを無視すると、このケースの場合、下式が成立することになる。
【0081】
【0082】
本開示は、上記2つのケースを双方とも含み得る。
【0083】
また、第1の次元D1についてのカーネル幅(第1の次元D1におけるフィルタ21aの幅)は、同次元におけるカテゴリの数未満に設定することが好ましい。例えば、第1の次元D1を周波数とした場合において、仮に200通りの周波数に関するデータが存在するものとすると、周波数系列に関するカーネル幅は、200未満に設定することが好ましい。
【0084】
一方、第2の次元D2についてのカーネル幅は、同次元におけるカテゴリの数以下に設定すればよい。例えば、第2の次元D2を、振動の測定位置を区別するカテゴリとした場合を考える。この場合において、仮に3通りの測定位置に関するデータが存在するものとすると、第2の次元D2に関するカーネル幅は、3以下に設定することが許容される。
【0085】
同様に、第3の次元D3についてのカーネル幅は、同次元におけるカテゴリの数以下に設定すればよい。例えば、第3の次元D3を、振動の測定方向を区別するカテゴリとした場合を考える。この場合において、仮にxyzの3通りの測定方向に関するデータが存在するものとすると、第3の次元D3に関するカーネル幅は、3以下に設定することが許容される。
【0086】
多次元畳込層21の出力は、周知のように、活性化層22及びプーリング層23に入力される。多次元畳込層21、活性化層22及びプーリング層23は、それぞれ、1つ又は複数設けられている(後述の具体例では複数)。各多次元畳込層21におけるチャンネル数、パティングマージン、カーネル幅は、適宜、変更可能である。
【0087】
なお、活性化層22には、ReLU(Rectified Linear Unit)を用いてもよいし、LeakyReLU(Leaky Rectified Linear Unit)を用いてもよい。本実施形態のように振動のゲイン及び位相に基づいた多次元系列データ31を用いる場合、その値が負となり得ることから、0未満で0を出力するように構成されたReLUよりも、負の値を出力するように構成されたLeakyReLUを用いること好ましい。
【0088】
また、プーリング層23には、最大値プーリング(Max Pooling)等、公知のCNNで用いられる層を用いることができる。
【0089】
多次元畳込層21の出力は、活性化層22及びプーリング層23を介して他の多次元畳込層21に入力される。他の多次元畳込層21の出力は、他の活性化層22及び他のプーリング層23を介して、必要に応じてさらに別の多次元畳込層21に入力される。そうした直列的な処理を繰り返した後、末端のプーリング層23の出力が、最終的に全結合層24に入力される。この全結合層24は、1層としてもよいし、複数層としてもよい。全結合層24から最終的に出力される値が、解析対象とされる目的変数となる。
【0090】
なお、前述のように振動のゲイン及び位相に基づいた多次元系列データ31を用いた場合、ゲインに対応する多次元系列データ31と、位相に対応する多次元系列データ31とを、それぞれ異なる多次元畳込層21に入力すればよい。言い換えると、2つの多次元系列データ31の各々を、並列的に処理すればよい。そして、ゲインに対応するプーリング層23からの出力と、位相に対応するプーリング層23からの出力とを、共通の全結合層24に入力すればよい。
【0091】
また、前記N=2のケースにおいて、振動の測定位置を区別するカテゴリ及び振動方向を区別するカテゴリのうちの一方を第2の次元D2とした場合、第2の次元D2に採用されなかった他方のカテゴリについては、そのカテゴリの区分に応じて個別に取り扱われるように、それぞれ異なる多次元畳込層21に入力すればよい。この場合、前記他方のカテゴリの数に応じて、並列的な処理の数が増大することになる。言い換えると、2つの多次元系列データ31の各々に対し、3つの測定位置または3通りの振動方向について並列的な処理を施せばよい。例えば、ゲイン及び位相が2通りであることと、測定位置または振動方向が3通りであることを考慮して、計6通りの出力を共通の全結合層24に入力すればよい。
【0092】
なお、前述した直列的な処理、及び並列的な処理は、いずれも必須ではない。
【0093】
ところで、多次元CNN20を用いた振動解析に際しては、周波数系列又は時系列に沿って並んだ系列データ(多次元系列データ31)に加えて、前述した物理的特性の少なくとも一部を入力として学習を実行することもできる。本実施形態では、そうした物理的特性として、物品の質量・サイズを特徴付けるパラメータ等、周波数又は時間に関してスカラー量(配列で表されないデータ)となるような非系列データ32を入力として用いるようになっている。
【0094】
本実施形態に係る振動解析方法では、そうした非系列データ32は、多次元畳込層21、活性化層22、プーリング層23を介さずに、全結合層24に直に入力するようになっている(
図5を参照)。
【0095】
(2-2.振動解析方法の全体構成)
図9は、CNNの学習方法の基本手順を例示するフローチャートであり、
図10は、学習済みのCNNを用いた解析方法の基本手順を例示するフローチャートである。
【0096】
本実施形態に係る振動解析方法は、
図9に示すようなCNNの学習方法(以下、これを「第1の方法」ともいう)と、
図10に示すようなCNNを用いた解析方法(以下、これを「第2の方法」ともいう)と、に大別することができる。そして、各方法で用いられるCNNは、
図5等を用いて説明したように、双方とも多次元CNN20を用いたものとなっている。
【0097】
ここで、第1の方法は、コンピュータ100に、
図9に示す4つのステップS1~S4を順番に実行させることで実施される。これらのステップS1~S4のうち、学習準備ステップ(ステップS1)は、CPU103が前述の学習準備プログラム121を実行することで実施される。同様に、第1読込ステップ(ステップS2)及び目標取得ステップ(ステップS3)は、CPU103が第1読込プログラム123を実行することで実施される。また、機械学習ステップ(ステップS4)は、CPU103が機械学習プログラム125を実行することで実施される。なお、ステップS1及び学習準備プログラム121は必須ではない。
【0098】
同様に、第2の方法は、コンピュータ100に、
図10に示す3つのステップS101~S103を順番に実行させることで実施される。これらのステップS101~S103のうち、第2読込ステップ(ステップS101)及びCNN取得ステップ(ステップS102)は、CPU103が第2読込プログラム127を実行することで実施される。同様に、パラメータ推定ステップ(ステップS103)は、CPU103がパラメータ推定プログラム129を実行することで実施される。
【0099】
なお、
図9と
図10に各方法を大別することは、例示に過ぎない。例えば、第1の方法終了後、第2の方法を続けて行うように構成してもよいし、第1及び第2の方法の一方のみを実行するように構成してもよい。
【0100】
以下、第1及び第2の方法の構成について、順番に説明する。
【0101】
(2-3.第1の方法)
まずは、第1の方法について詳細に説明する。
【0102】
-学習準備ステップ-
まず、ステップS1では、CPU103が学習準備ステップを実行する。この学習準備ステップにおいてはまず、CPU103が、前述の解析パラメータ40を、それぞれ所定範囲内で所与とする。そして、CPU103は、所与とした解析パラメータ40に基づいて、除振台1の振動シミュレーションを実行し、その結果を、多次元系列データ31を構成する各成分の値とする。解析パラメータ40の値は、例えば乱数によって生成(サンプリング)することができる。なお、この振動シミュレーションには、解析パラメータ40以外のパラメータを用いてもよい。例えば、定盤3及び搭載物10全体の慣性モーメントLxx,Lyy,Lzzを、除振台1の振動シミュレーションに用いてもよい。ここで、慣性モーメントLxx,Lyy,Lzzには、x軸まわりの慣性モーメントLxxと、y軸まわりの慣性モーメントLyyと、z軸まわりの慣性モーメントLzzと、が含まれる。
【0103】
例えば、
図1のように除振台1をモデル化した場合、そのモデルにおけるゲイン及び振幅は、前述した各解析パラメータ40の値を設定することで、周波数fを変数とした関数として記述することができる。
【0104】
そこで、解析パラメータ40の値を所与とすることで、所与とした各値に対応した振動を、周波数fの関数として与えることができ、その振動において周波数fの数値を設定することで、各周波数fに対応した振動のゲインH1(f)及び位相H2(f)を演算することができる。こうして、周波数方向に並んだ1次元の系列データH1(f),H2(f)が生成されることになる。
【0105】
また、前述の演算を、振動の測定位置、及び振動方向を変更しながら行うことで、
図5及び
図6に例示したような、各測定位置(位置P1,P2,P3)、各振動方向(x方向、y方向、z方向)におけるゲインH1(f)及び位相H2(f)がそれぞれ算出されることになる。なお、ここでいう3つの「測定位置」は、
図2に示した第1位置P1と、第2位置P2と、第3位置P3に等しい。
【0106】
所与とした解析パラメータ40の値は、当該パラメータの目標値(理論値)に相当するものであり、その目標値に対応して得られた各ゲイン及び位相とともに、第1の方法における訓練データ133の構成に用いられる。
【0107】
また、解析パラメータ40のサンプル数(データ数)をMとすると、M通りの解析パラメータ40には、各周波数、各測定位置及び各振動方向について、M通りのゲインとM通りの位相が紐付いている。
【0108】
サンプル数Mの大きさに応じてデータサイズが膨大なものとなるため、コンピュータ100は、所与とした各解析パラメータ40の値と、その値に対応して得られた各ゲイン及び位相の値と、を二次記憶装置107のデータメモリに記憶させる。訓練データ133の記憶が完了すると、プロセスは、ステップS1からステップS2に進む。
【0109】
なお、ステップS1に関する演算(振動シミュレーション)は、コンピュータ100のCPU103に実行させてもよいし、外部の計算機に実行させてもよい。後者の場合、訓練データの値は、有体の記憶媒体、手入力等を通じてコンピュータ100に取得させてもよい。
【0110】
あるいは、既知の解析パラメータ40を有する除振台1を用いた実験によって、各測定位置、各振動方向におけるゲインH1(f)及び位相H2(f)を取得するように構成してもよい。このように構成した場合、訓練データの値は、外部の計算機に振動シミュレーションを実行させた場合と同様に、有体の記憶媒体、無線又は有線のデータ通信、手入力等を通じてコンピュータ100に取得させてもよい。
【0111】
-第1読込ステップ-
続くステップS2では、コンピュータ100が第1読込ステップを実行する。この第1読込ステップでは、CPU103が、ステップS1での算出結果に基づいて、前述した2次元又は3次元の多次元系列データ31を生成する。そうして生成した多次元系列データ31は、機械学習に先だって、一次記憶装置105が読み込む。
【0112】
詳しくは、CPU103はまず、第1の次元D1を、周波数系列又は時系列に関連したものに設定する。前述のように、ゲイン及び位相の変数に周波数fを用いた場合、第1の次元D1には、周波数f、又は、角周波数ω等、周波数fに関連したパラメータを選択することが好ましい。
【0113】
続いて、CPU103は、周波数系列又は時系列とは異なる第2の次元D2を選択する。第2の次元D2の選択は、自動的に行われるように構成してもよいし、都度、使用者が手動で選択するように構成してもよい。
【0114】
前述の説明と重複するが、解析対象となる物品を除振台1とした場合、第2の次元D2は、解析対象となる振動の測定位置(位置P1,P2,P3)又は振動方向(x方向、y方向、z方向)を区別するカテゴリとしてもよい。
【0115】
本実施形態では、第2の次元D2は、振動の測定位置(位置P1,P2,P3)を区別するカテゴリとされている。この場合、CPU103は、第1の次元D1に対応した系列データの値(ゲイン又は位相の値)に、第2の次元D2に対応した変数を結合し、2次元の多次元系列データ31を生成する。ここで、第2の次元D2に対応した変数とは、第1位置P1、第2位置P2及び第3位置の各々に紐付いた変数とすればよい。
【0116】
また、本実施形態では、振動のゲインH1(f)と位相H2(f)が、前述のように独立した系列データとして取り扱われるようになっている。そのため、CPU103は、ゲインH1(f)同士を結合してなる2次元の多次元系列データ31と、位相H2(f)同士を結合してなる2次元の多次元系列データ31と、を個別に生成することになる。
【0117】
ゲインH1(f)及び位相H2(f)のそれぞれについて生成された2次元の多次元系列データ31は、
図7に示すように、画像解析でいうところのx方向に並んだ各画素値が、複数通りの各周波数におけるゲイン又は位相の値に相当し、y方向に並んだ各画素値が、3通りの各測定位置におけるゲイン又は位相の値に相当することになる。
【0118】
ところで、ステップS1におけるゲインH1(f)及び位相H2(f)の算出は、第2の次元D2の選択候補でもある各振動方向(x方向、y方向、z方向)について行われるようになっている。
【0119】
そのため、2次元の多次元系列データ31の生成に際し、測定位置P1で測定されたx方向のゲインH1(f)、測定位置P2で測定されたx方向のゲインH1(f)、及び、測定位置P3で測定されたx方向のゲインH1(f)のように、振動方向が同じもの同士を結合するか、あるいは、振動方向が異なるもの同士を結合するか、選択の余地がある。ゲインH1(f)のみならず、位相H2(f)の結合についても同様に選択の余地がある。
【0120】
本実施形態では、前記選択肢のうちの前者、すなわち、振動方向が同じゲインH1(f)又は位相H2(f)同士が結合されるように構成されている(
図6を参照)。つまり、2次元の多次元系列データ31の生成に際し、CPU103は、振動方向がx方向であるもの同士を結合した多次元系列データ31と、振動方向がy方向であるもの同士を結合した多次元系列データ31と、振動方向がz方向であるもの同士を結合した多次元系列データ31と、を生成するようになっている。
【0121】
また、CPU103は、第1及び第2の次元D1,D2とは異なる第3の次元D3を選択する。この選択は、自動的に行われるように構成してもよいし、都度、使用者が手動で選択するように構成してもよい。
【0122】
本実施形態では、第3の次元D3は、振動方向(x方向,y方向,z方向)を区別するカテゴリとされている。この場合、CPU103は、2次元の多次元系列データ31に、第3の次元D3に対応した変数を結合し、3次元の多次元系列データ31を生成する。ここで、第3の次元D3に対応した変数とは、x方向、y方向及びz方向の各々に紐付いた変数とすればよい。
【0123】
また、3次元の多次元系列データ31の生成に際しても、CPU103は、ゲイン同士を結合してなる3次元の多次元系列データ31と、位相同士を結合してなる3次元の多次元系列データ31と、を個別に生成することになる。
【0124】
ゲイン及び位相のそれぞれについて生成された3次元の多次元系列データ31は、
図8に示すように、3Dグラフィックデータでいうところのx方向に並んだ各画素値が、複数通りの各周波数におけるゲイン又は位相の値に相当し、y方向に並んだ各画素値が、3通りの各測定位置におけるゲイン又は位相の値に相当し、z方向に並んだ各画素値が、3通りの振動方向におけるゲイン又は位相の値に相当することになる。
【0125】
最終的に、コンピュータ100は、2次元又は3次元の多次元系列データ31を、訓練データ133を構成する一要素として、一次記憶装置105に読み込ませる。この読込が完了すると、プロセスは、ステップS2からステップS3に進む。
【0126】
なお、3次元の多次元系列データ31の生成は、必須ではない。以下の説明は、特段の記載を除いて3次元の多次元系列データ31に関する処理となるが、そうした処理を、2次元の多次元系列データ31に対しても行ってもよい。
【0127】
-目標取得ステップ-
続くステップS3では、コンピュータ100の一次記憶装置105が、解析パラメータ40の目標値を取得する。
【0128】
具体的に、ステップS3ではまず、CPU103が、多次元系列データ31の生成に用いられた複数かつ所与の解析パラメータ40のうち、多次元CNN20の出力、つまり目的変数とするパラメータを選択する。選択可能な解析パラメータ40の数は、特に限定されない。1つ又は複数の解析パラメータ40を選択することができる。
【0129】
この選択は、事前に作成された設定ファイル等に基づいて、CPU103が自動的に行うように構成してもよいし、使用者による手入力等に基づいて、CPU103が、都度、行うように構成してもよい。
【0130】
特に本実施形態では、複数かつ所与の解析パラメータ40のうち、定盤3及び搭載物10の質量m、並びに、第1距離lx及び第2距離ly以外の解析パラメータ40が、ステップS3における選択対象となる。
【0131】
定盤3の質量m、並びに、第1距離lx及び第2距離lyは、前述の非系列データ32として、多次元畳込層21、活性化層22、プーリング層23を介さずに、全結合層24に直に入力される。
【0132】
前述のように、各解析パラメータ40の値は、所定範囲内に複数存在する。各解析パラメータ40のサンプル数をMとすると、M通りの解析パラメータ40には、M通りの多次元系列データ31と、同じくM通りの非系列データ32とが関連付いている。
【0133】
そこで、CPU103は、自動的又は手動で選択された所与の解析パラメータ40と、その値に対応した多次元系列データ31と、を紐付けて、計M個のデータセットからなる訓練データ133を生成し、これを二次記憶装置107に記憶させる。二次記憶装置107に記憶させた訓練データ133は、必要に応じて適宜、一次記憶装置105が読み込むことになる。この読込が完了すると、プロセスは、ステップS3からステップS4に進む。
【0134】
なお、ステップS3に関する処理、つまり訓練データ133の生成に関する処理は、外部の計算機に実行させてもよい。その場合、訓練データ133の値は、有体の記憶媒体、無線又は有線のデータ通信等を通じて、一次記憶装置105が適宜取得することになる。
【0135】
-機械学習ステップ-
続くステップS4では、ステップS3で取得された訓練データ133に基づいて、CPU103が、多次元系列データ31及び非系列データ32を入力とし、解析パラメータ40の推定値を出力とした多次元CNN20を学習する。
【0136】
多次元CNN20の詳細は、前述の通りである。CPU103は、M通りの多次元系列データ31をそれぞれ多次元畳込層21に入力し、M通りの非系列データ32のうち、多次元畳込層21に入力された多次元系列データ31に対応した非系列データ32を全結合層24に入力する。
【0137】
そして、CPU103は、全結合層24からの出力(推測値)と、M通りの解析パラメータ40のうち、多次元CNN20に入力された多次元系列データ31に対応した解析パラメータ(正解値)との差を算出する。
【0138】
そして、CPU103は、M通りの各データについて前述の差を算出し、各差の2乗和等、それらの差に基づいて算出される関数(いわゆる損失関数)の値を最小化するように、多次元CNN20を構成する各重みパラメータ(CNNの重みパラメータ)を算出した。CPU103が各重みパラメータを算出することで、多次元CNN20の構造を決定することができる。多次元CNN20の構造を特徴付けるハイパーパラメータは、手動での入力、又は自動でのファイル読込等を通じて事前に設定してもよい。
【0139】
なお、一般に、各重みパラメータ及びハイパーパラメータの値は、目的変数の選択に応じて変わる。例えば、目的変数に減衰係数Cvを選択したときと、目的変数にばね定数Kvを選択したときとで、学習によって得られる多次元CNN20は変わることになる。
【0140】
目的変数の選択に応じて、多次元CNN20の学習をやり直すように構成してもよいし、特定の目的変数を選択したときに使用した各ハイパーパラメータの値を、他の目的変数を選択したときにも流用するように構成してもよい。本実施形態では後者の構成が採用されているが、そうした構成には限定されない。
【0141】
最終的に、コンピュータ100は、学習済みの多次元CNN20を、二次記憶装置107に記憶させる。この記憶が完了すると、プロセスは、
図9に係るフローを完了してリターンする。
【0142】
(2-3.第2の方法)
続いて、第2の方法について、
図10を参照して詳細に説明する。
【0143】
-第2読込ステップ-
まず、ステップS101では、コンピュータ100が第2読込ステップを実行する。具体的に、この第2読込ステップでは、一次記憶装置105が、コンピュータ100外部又は二次記憶装置107から、第1の方法と同様に定義された多次元系列データ31を読み込む。
【0144】
多次元系列データ31の生成に関する処理は、
図9の第1読込ステップ(ステップS2)に係る処理と同じである。コンピュータ100は、事前に生成された多次元系列データ31を読み込んでもよいし、測定位置、振動方向等を異ならせたゲイン及び位相等に基づいて多次元系列データ31を自ら生成し、これを一次記憶装置105に読み込ませてもよい。
【0145】
-CNN読込ステップ-
続くステップS102では、コンピュータ100がCNN読込ステップを実行する。具体的に、このCNN読込ステップでは、一次記憶装置105が、二次記憶装置107から学習済み多次元CNN135を読み込む。学習済み多次元CNN135の詳細は、第1の方法で学習される多次元CNN20と同様である。
【0146】
-パラメータ推定ステップ-
続くステップS103では、コンピュータ100がパラメータ推定ステップを実行する。具体的に、このパラメータ推定ステップでは、CPU103が、多次元系列データ31を入力とし、解析パラメータ40の推定値を出力とした学習済み多次元CNN135によって、解析パラメータ40を推定する。
【0147】
コンピュータ100は、パラメータ推定ステップにより得られた各推定値を、例えば表示部111に表示したり、二次記憶装置107に記憶させたりする。そうした処理が完了すると、プロセスは、
図10に係るフローを完了してリターンする。
【0148】
(2-4.第1及び第2の方法の具体例)
図11は、第1及び第2の方法の数値実験結果を示す表である。表の各数値は、下記のように定義される比率(=推定値/目標値)を、同じく下記のように定義される各検証データについて算出したときに、全検証データのうち、前記比率の大きさが100±3%の範囲内に収まる検証データの割合を示している。表の数値が100%に近いということは、推定値と目標値とがより近接する傾向にあること、すなわち、より高精度な学習が行われたことを示している。
【0149】
また、
図12は、ディープラーニング、1次元CNN、2次元CNN及び3次元CNNによる、鉛直方向のばね定数Kvの数値実験結果(サンプル数=5000)を示すヒストグラムである。
【0150】
また、
図13は、ディープラーニング、1次元CNN、2次元CNN及び3次元CNNによる、x方向の重心位置CGxの数値実験結果(サンプル数=5000)を示すヒストグラムである。
【0151】
各数値実験に際し、本願発明者らはホールドアウト法による検証を行った。つまり、前記した多数のサンプル(複数の多次元系列データ31)を、所定の比率で学習データと検証データに分割した。そして、前者の学習データ(複数の多次元系列データ31の一部)に第1の方法を適用し、多次元CNN20を学習した。この具体例では、学習データに対する検証データの比は、85:15に設定した。
【0152】
第1の方法による多次元CNN20の学習後、後者の検証データ(複数の多次元系列データ31の他部)を学習済み多次元CNN135に入力することで、第2の方法を実行した。そして、その多次元系列データ31の各成分に対応した解析パラメータ40の目標値に対する、学習済み多次元CNN135の値(推測値)の比率(=推測値/目標値)の大きさを評価した。この評価は、全て数値実験で行った。
【0153】
その際、目的変数は、
図5に示した解析パラメータ40の一を選択した。実際に選択したパラメータは、
図11に示すように、ばね定数Kv,Kh、減衰係数Cv,Ch、又は、重心位置CGx,CGy,CGzである。その際、定盤3及び搭載物10の質量m、並びに、第1距離lx及び第2距離lyは、前述の非系列データ32として、全結合層24に直に入力した。
【0154】
また、訓練データ133の設定に際しては、解析パラメータ40を所与とした上で、所与とした解析データ40に対応した振動のゲインと位相を振動シミュレーションによって生成して利用した。その際、各解析パラメータ40の具体的な数値は、乱数を用いて分散させた。
【0155】
具体的に、ばね定数Kv,Khは、それぞれ対応する固有振動数が1以上3Hz以下の範囲内に収まるように、減衰係数Cv,Chは、それぞれ対応する共振倍率が10以上40dB以下の範囲内に収まるように、定盤3及び搭載物10の質量mは、100以上200kg以下の範囲内に収まるように、第1距離lxは、2.0以上4.0m以下の範囲内に収まるように、第2距離lyは、1.5以上2.5m以下の範囲内に収まるように分散させた。
【0156】
また、サンプル数Mについては、M=5000と、M=40000の2通りで評価した。周波数方向のライン数は、それぞれ200である。
【0157】
また、活性化層22には、前述のようにLeakyReLUを用いるとともに、プーリング層23には、前述のように最大値プーリングを用いた。
【0158】
本実施形態に対応する実施例は、2D-CNN(2次元CNN)と、3D-CNN3Dに相当する。ここで、第1の次元D1には周波数fが用いられ、第2の次元D2には測定位置P1,P2,P3が用いられ、第3の次元D3には振動方向xyzが用いられている。
【0159】
また、第1の次元D1におけるカーネル幅は5であり、第2の次元D2におけるカーネル幅は3であり、第3の次元D3におけるカーネル幅は3である。また、第1の次元D1におけるパディングマージンは2又は1であり、第2の次元D2におけるパディングマージンは1であり、第3の次元D3におけるパディングマージンは1である。
【0160】
また、
図6に例示したように、多次元系列データ31の生成に際し、第2の次元D2については、除振台1における振動方向が同じデータ同士を、その除振台1における測定位置を異ならせつつ並べ、かつ、第3の次元D3については、除振台1における測定位置が同じデータ同士を、その除振台1における振動方向を異ならせつつ並べるようになっている。
【0161】
また、前記実施例に対する比較例として、通常のディープラーニング(DL)と、1D-CNN(1次元CNN)と、ランダムフォレスト(RF)と、LightGBM(LG)と、による算出結果を例示した。ここでいう「1次元CNN」とは、周波数方向についてのみ畳み込みを行うように構成されたニューラルネットワークである。
【0162】
数値実験結果は、
図11~
図13に示す通りである。特に
図11の太枠Ch内のデータが、本実施形態の実施例に相当し、太枠Ch外のデータが、本実施形態に対する比較例に相当する。
図11に示すように、2次元CNNと3次元CNNは、1次元CNNも含めた他の手法と比較して、前記比率(=推測値/目標値)の大きさが100%に近い。この結果は、前記第1及び第2の方法を用いた場合、より高精度の学習・推定が行われることを示している。
【0163】
また、
図12及び
図13に示すように、DL、1次元CNN、2次元CNN及び3次元CNNの順で、ヒストグラムのピークは、100%周辺でより急峻なものとなる(囲み部Ci中に現れる頻度数が、紙面上の上側から順に、徐々に少なくなる)。このことは、DL、1次元CNN、2次元CNN及び3次元CNNの順番で、より高精度な学習・推定が行われたことを示している。
【0164】
<3.まとめ>
以上説明したように、本実施形態によれば、多次元畳込層21は、
図7及び
図8に例示したように、第1及び第2の次元D1,D2を同時に畳み込む。これにより、第1の次元D1については、周波数又は時間に関係したデータ間の局所的な相関を反映させることができる。一方、第2の次元D2については、第1の次元D1に係る変数(周波数又は時間に関係した変数)の値が同じ又は近接しているもの同士を畳み込むことになるから、第2の次元D2における局所的な相関を反映させることができる。
【0165】
これにより、多次元CNN20の学習精度を向上し、ひいては、物品(除振台1)中の振動の伝達を特徴付ける解析パラメータ40の推定に際して、その推定精度を向上させることができる。
【0166】
また、
図6に例示したように、多次元系列データ31を構成する系列データは、同じ除振台1を伝わる振動に対応した系列データである。したがって、第2の次元D2を振動の測定位置P1,P2,P3を区別するカテゴリとした場合、多次元系列データ31は、同じ除振台1に伝わる振動を、異なる位置で測定したものに相当する。この場合、各測定位置P1,P2,P3は、除振台1を通じて連結されていることから、第2の次元D2に関しても、第1の次元D1と同様に、局所的な相関を有するものと考えることができる。そのため、第2の次元D2に関して畳み込むことで、推定精度の向上に有利になる。
【0167】
すなわち、除振台1の定盤3は、いわゆる剛体モード等、種々の振動モードを有している。各方向のばね定数Kv,Kh、減衰係数Cv,Ch、重心位置CGx,CGy,CGz等の違いが、定盤3全体の振動形態に大きく影響することになる。
【0168】
裏を返せば、定盤3全体の振動形態を、振動のゲイン及び位相を通じて各演算に反映させることが、ばね定数Kv,Kh、重心位置CGx,CGy,CGz等の違いをより正確に見極めること、つまり、高精度な推定の実現に資することになる。
【0169】
そして、定盤3全体の振動形態を各演算に反映させるためには、前述のように、まずは測定位置P1,P2,P3を第2の次元D2とし、異なる測定位置P1,P2,P3をまとめ上げるように畳み込むことが極めて有用となる。つまり、異なる測定位置P1,P2,P3を用いることで、各振動モードの特徴、ひいては定盤3全体の振動形態を、より適切に各演算に反映させることができ、そのことで、より高精度な推定の実現に有利になる。
【0170】
また、
図8に例示したように、第1及び第2の次元D1,D2に加えて、第3の次元D3についても畳み込むことが許容される。これにより、推定精度のさらなる向上に有利になる。
【0171】
また、
図6に例示したように、多次元系列データ31は、第2の次元D2については、振動方向が同じデータを、その測定位置を異ならせつつ並べたものとなり、第3の次元D3については、測定位置が同じデータを、その振動方向を異ならせつつ並べたものとなる。このように構成された多次元系列データ31を用いることで、第2及び第3の次元D2,D3に関しても、第1の次元D1と同様に、局所的な相関が強いものと考えることができる。そのため、第2の次元D2と第3の次元D3関して畳み込むことで、推定精度の向上に有利になる。
【0172】
また、本実施形態に係る振動解析方法、振動解析装置としてのコンピュータ100、振動解析プログラム120、及び、該振動解析プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体は、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)のうち、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0173】
<4.第2の実施形態>
前記実施形態では、物品中を伝達する振動を特徴付けるパラメータの推定する構成が例示されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。本開示は、物品自身が発する振動を特徴付けるパラメータを推定する振動解析方法、振動解析装置、振動解析プログラム及び、該振動解析プログラムを記憶する記憶媒体に適用することもできる。
【0174】
以下、第2の実施形態として、そうした別例について説明する。ここで、
図14は、振動解析システムS’の構成の別例を示す図である。また、
図15は、第2の実施形態に係る
図6対応図である。
図14に示すように、振動解析システムS’は、モータ1001と、コンピュータ100と、を備えている。モータ1001は、振動を発する「物品」の例示である。第2の実施形態と区別すべく、除振台1に関する前述の実施形態を「第1の実施形態」と呼称する場合がある。
【0175】
また、「物品」をモータ1001とすることは、必須ではない。内燃機関を「物品」としてもよいし、その他、往復運動又は回転運動を行う機構、振動を発生し得る機構を内蔵した任意の装置を「物品」としてもよい。モータ1001に限定されることなく、いわゆる「振動源」となり得る装置一般を、第2の実施形態における「物品」に用いることができる。
【0176】
以下、振動解析システムS’を構成する各要素について、順番に説明する。
【0177】
モータ1001は、軸受1002と、この軸受1002によって回転可能に支持されたシャフト1003と、シャフト1003の回転によって生じた振動を検出する振動センサ1004と、を備えている。振動センサ1004の検出信号は、コンピュータ100に入力される。コンピュータ100は、入力された信号に基づいて、モータ1001自身が発した振動のゲイン及び位相を解析し、モータ1001の異常検知に関する処理を実行する。
【0178】
コンピュータ100は、第1の実施形態と同様に、本開示に係る振動解析方法を実行する振動解析装置として機能する。つまり、コンピュータ100によって実行される解析方法は、前記実施形態と同様に、周波数系列及び時系列の少なくとも一方に関する第1の次元D1と、該周波数系列及び時系列とは異なる第2の次元D2と、を含んだ2次元以上の多次元系列データ31を読み込むステップS2と、解析パラメータ40の目標値を取得するステップS3と、多次元系列データ31を入力とし、解析パラメータ40の推定値を出力とした多次元CNN20を学習するステップS4と、を備え、多次元CNN20は、多次元系列データ31に、第1及び第2の次元D1,D2を含んだ多次元のフィルタ21aを畳み込むように構成された多次元畳込層21を有する。
【0179】
もっとも、この第2の実施形態と前記第1の実施形態とは、いくつかの点で相違する。まず、第2の実施形態に係る振動解析システムS’の目的は、モータ1001等、振動源となる装置の異常を検知することにある。そのため、多次元CNN20の出力(目的変数)には、ばね定数等ではなく、モータ1001に異常が生じているか否かを示すフラグ(異常検出フラグ)を用いることができる。この異常検出フラグには、例えば、モータ1001が正常である場合は「1」を出力し、モータ1001に異常が生じている場合は「0」を出力するような2値関数を用いることができる。なお、2値関数に限らず、シグモイド関数等の連続関数を用いてもよい。例えばシグモイド関数を用いた場合、当該関数の値が所定の閾値以上か否かを判定し、その判定結果に基づいて異常の有無を判断することができる。
【0180】
また、
図15に示すように、第2の実施形態に係る多次元系列データ31’は、第1の実施形態とは異なり、第2の次元D2’については、モータ1001における振動の測定位置(図例では、振動センサ1004の取付位置)P1’が同じデータを、そのモータ1001における振動方向を異ならせつつ並べることで構成されるようになっている。
【0181】
すなわち、仮にy方向とz方向に着目した場合、特定の測定位置P1’における振動の軌跡を、yz平面上でのリサジュー図形に表すことができる。モータ1001に異常が生じているか否かの違いが、このリサジュー図形の形状に大きく影響することになる。
【0182】
裏を返せば、リサジュー図形の形状を特徴づける情報を、振動のゲイン及び位相を通じて各演算に反映させることが、モータ1001における異常の有無をより正確に見極めること、つまり、高精度な推定の実現に資することになる。
【0183】
そして、リサジュー図形の形状を特徴づける情報を各演算に反映させるためには、前述のように、まずは測定方向x,y,zを第2の次元D2とし、異なる測定方向x,y,zをまとめ上げるように畳み込むことが極めて有用となる。つまり、異なる測定方向x,y,zを用いることで、リサジュー図形の形状を特徴づける情報を、より適切に各演算に反映させることができ、そのことで、より高精度な推定の実現に有利になる。
【0184】
<5.他の実施形態>
前記第1及び第2実施形態では、一のコンピュータ100によって実施される方法及び装置を例示したが、本開示は、その例には限定されない。本開示に係る振動解析方法、振動解析装置及び振動解析プログラム120は、複数のコンピュータ100を用いて実行してもよい。また、本開示におけるコンピュータ100には、スーパーコンピュータ、PCクラスタ等の並列計算機も含まれる。
【0185】
また、前記第1及び第2の実施形態では、2次元又は3次元CNNについて例示したが、本開示は、そうした構成には限定されない。前述のように定義された第1の次元D1及び第2の次元D2を含むものであれば、本開示は、4次元以上のCNNに適用することもできる。
【0186】
また、前記第1の実施形態では、多次元系列データ31は、第2の次元D2については、振動方向が同じデータ同士を、測定位置を異ならせつつ並べるとともに、第3の次元D3については測定位置が同じデータ同士を、振動方向を異ならせつつ並べることで構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、第2の次元D2とするカテゴリが意味するところと、第3の次元D3とするカテゴリが意味するところを入れ替えてもよい。前記第2の実施形態と同様に、第2の次元D2についての畳み込みに際しては、測定位置が同じデータ同士を、測定方向を異ならせつつ並べてもよい。
【0187】
また、前記第1の実施形態に関する具体例では、振動のゲイン及び位相を、シミュレーションによって取得したが、本開示は、そうした構成には限定されない。第1の実施形態の振動センサ54、第2の実施形態の振動センサ1004のように、センサの検出信号によって決定してもよい。また、振動のゲイン及び位相に代えて、振動伝達率等、振動を特徴付ける物理量を複素数で表現してもよい。その場合、複素数で表された物理量を、複素数に対応させた多次元CNN20に入力してもよいし、当該物理量の実部及び虚部を、実部及び虚部のそれぞれに対応させた多次元CNN20に個別に入力してもよい。このように取り扱うことで、前述の如き学習及び推定を行うことができる。
【符号の説明】
【0188】
1 除振台(物品)
1001 モータ(物品)
3 定盤
10 搭載物
20 多次元CNN
21 多次元畳込層
21a フィルタ
31,31’ 多次元系列データ
40 解析パラメータ(パラメータ)
100 コンピュータ(振動解析装置)
103 CPU(演算部,学習部)
105 一次記憶装置(読込部,取得部)
109 記憶媒体
120 振動解析プログラム
131 振動特性
133 訓練データ
135 学習済み多次元CNN
D1 第1の次元
D2 第2の次元
D3 第3の次元
F 基礎
P1 第1位置(測定位置)
P2 第2位置(測定位置)
P3 第3位置(測定位置)