(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179907
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 43/02 20060101AFI20241219BHJP
F16D 41/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16D43/02
F16D41/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099236
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝則
【テーマコード(参考)】
3J068
【Fターム(参考)】
3J068AA07
3J068BA01
3J068BB10
3J068CB03
3J068GA03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、逆入力遮断状態の解除及び逆入力遮断状態への変位を円滑に行える逆遮断クラッチを提供する。
【解決手段】入力部材へのトルクの入力により、その回転運動を直線運動に変換し、その直線運動を、係合部材を静止部材から離間させる方向に移動させる運動に変換する離間移動機構と、係合部材が静止部材から離間している状態で入力部材に入力されたトルクを出力部材に伝達する伝達機構と、出力部材へのトルクの逆入力により、その回転運動を係合部材を静止部材に接近する方向に移動させる運動に変換する接近移動機構とを備える。入力部材にトルクが入力された状態で、伝達機構を介して出力部材に入力部材からのトルクが伝達され、出力部材にトルクが逆入力された状態で、接近移動機構を介して、係合部材が静止部材に押し付けられて、出力部材からのトルクの入力部材への伝達が遮断される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクが入力される入力部材と、トルクが出力される出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に介在されるトルク遮断・伝達手段とを備え、前記トルク遮断・伝達手段が径方向の往復動が可能な係合部材と、この係合部材の外側に配設される静止部材とを有する逆入力遮断クラッチであって、
入力部材へのトルクの入力により、その回転運動を直線運動に変換し、その直線運動を、前記係合部材を前記静止部材から離間させる方向に移動させる運動に変換する離間移動機構と、
前記係合部材が前記静止部材から離間している状態で前記入力部材に入力されたトルクを出力部材に伝達する伝達機構と、
出力部材へのトルクの逆入力により、その回転運動を前記係合部材を前記静止部材に接近する方向に移動させる運動に変換する接近移動機構とを備え、
前記入力部材にトルクが入力された状態で、前記伝達機構を介して前記出力部材に入力部材からのトルクが伝達され、前記出力部材にトルクが逆入力された状態で、前記出力部材が所定角度だけ回動して、接近移動機構を介して、前記係合部材が前記静止部材に押し付けられて、出力部材からのトルクの前記入力部材への伝達が遮断されることを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記離間移動機構は、前記係合部材の径方向の往復動方向に対して所定角度で傾斜する直線凸部と、この直線凸部が嵌合して直線凸部の前記傾斜方向に沿ったスライドを許容する直線凹部とを有し、前記直線凹部を前記係合部材に設けるとともに、前記直線凸部を前記係合部材とは別部材である案内部材に設け、入力部材へのトルクが入力された状態で、前記直線凸部が直線凹部に嵌合してスライドする直線運動をなすことを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記離間移動機構は、前記係合部材の径方向の往復動方向に対して所定角度で傾斜する直線凸部と、直線凸部が係合して前記傾斜方向に沿ったスライドが許容される直線係合部とを有し、前記直線凸部を前記係合部材に設け、前記直線係合部を前記係合部材とは別部材である案内部材に設け、入力部材へのトルクが入力された状態で、前記直線凸部が直線係合部に係合してスライドする直線運動をなすことを特徴とする請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記離間移動機構の直線凸部の傾斜角度を80°~30°としたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記係合部材が回転自在となって、前記係合部材と前記案内部材とを介して前記入力部材と前記出力部材とが一体化することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項6】
外径面が半円弧形状の半円盤体にて構成された一対の係合部材を、半円盤体の弦を構成する内径側の端面が相対向するように配置し、一対の係合部材が出力部材へのトルクの逆入力によって離間し、各係合部材の外径面が前記静止部材の円弧形状とされた内径面に圧接することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項7】
外径面の頂部が切り欠かれてその側面である二つの脚が円弧面とされた台形状の一対の係合部材を、底辺を構成する内径側の端面が相対向するように配置し、一対の係合部材が出力部材へのトルクの逆入力によって離間し、各係合部材の前記円弧面が静止部材の円弧形状とされた内径面に圧接することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項8】
一対の係合部材を備えるとともに、相対的に離間する方向に押圧する弾性部材を備え、かつ弾性部材は、前記入力部材からトルクが入力されると弾性部材の弾性力に抗して一対の係合部材が接近し、入力部材と出力部材との間のトルク遮断を解除することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項9】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力部材の入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、前記入力部材にトルクが入力された状態で、前記入力側伝達部が、前記離間移動機構を介して前記係合部材を内径側へ移動させる移動力を発生させるとともに、前記出力部材にトルクが逆入力された状態で、前記出力側伝達部が、前記係合部材を外径側へ移動させる移動力を発生させることを特徴とする請求項1から請求項3にいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項10】
前記入力側伝達部の端面は、前記係合部材の出力部材側の端面に達することを特徴とする請求項9に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項11】
前記出力側伝達部は平板形状体で構成され、前記入力側伝達部は、前記出力側伝達部が係合する係合凹部が形成された平板形状体で構成され、入力側伝達部と出力側伝達部とは直交する方向にずれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項12】
前記入力側伝達部は平板形状体で構成され、前記出力側伝達部は、前記入力側伝達部が係合する係合凹部が形成された平板形状体で構成され、入力側伝達部と出力側伝達部とは直交する方向にずれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項13】
入力側伝達部及び出力側伝達部は、それぞれ中央部に係合凹部を有する平板形状体で構成され、入力側伝達部と出力側伝達部とは直交する方向にずれて、係合凹部同士が係合していることを特徴とする請求項1から請求項3にいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項14】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力部材の入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、かつ、入力側伝達部と出力側伝達部とが凹凸嵌合構造にて一体化していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項15】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力部材の入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、前記入力側伝達部を弾性的に押圧して、前記係合部材を内径側へ移動させる、案内部材に付勢力を発生させる弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項16】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力部材の入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、前記出力側伝達部を弾性的に押圧して、係合部材を外径側へ移動させる、案内部材に付勢力を発生させる弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
逆入力遮断クラッチは、
図35に示すように、入力トルクが加えられたときは入力部材1の回転を出力部材2に伝達し、逆入力トルクに対しては入力部材1が回転しないようにするクラッチである。このような逆入力遮断クラッチは、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載の逆入力遮断クラッチは、出力部材2にトルクが逆入力されると、出力部材2が1対の係合部材3、3を径方向外方に移動させることで係合部材3、3の押圧面3a、3aをハウジング5の被押圧面(円筒面からなる内径面)5aに押し付けてトルクが遮断される。また、入力部材1にトルクが入力されると、リンク部材6が1対の係合部材3、3を径方向内方に向けて移動させることで係合部材3、3の押圧面3a、3aをハウジング5の被押圧面5aから遠ざける(離間させる)。入力部材1に入力されたトルクが係合部材3、3を介して出力部材2に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の逆入力遮断クラッチは、入力部材1にトルクが入力された際にリンク部材6から係合部材3、3に作用する荷重の方向が、係合部材3、3が移動すべき方向に対して傾斜している。このため、係合部材3、3を上下方向のみに規制する必要がある。そこで、特許文献1の逆入力遮断クラッチでは、この規制のため、出力部材2と係合部材3、3の当接面間に案内面部7を設けている。
【0006】
しかしながら、この案内面部7の範囲が小さいため、案内面部7が繰り返して摺動することによって、案内面部7が摩耗することになる。このように摩耗が生じれば、出力部材2と係合部材3、3の間にいわゆる「ガタ」が発生することになる。このような「ガタ」が発生すれば、係合部材3、3の押圧面3a、3aをハウジング5の被押圧面5aから離反(離間)できなくなるおそれがあり、これにより、逆入力遮断状態の解除を円滑に行うことができなくなる。
【0007】
また、特許文献1に記載の逆入力遮断クラッチでは、リンク部材等の部品を必要とするとともに、入力部材を構成する部品も多く、装置全体として部品点数が多く、組み立て性が劣ることになり、生産コスト高となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、簡易な構成で、逆入力遮断状態の解除及び逆入力遮断状態への変位を円滑に行える逆入力遮断クラッチを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の逆入力遮断クラッチは、トルクが入力される入力部材と、トルクが出力される出力部材と、前記入力部材と前記出力部材との間に介在されるトルク遮断・伝達手段とを備え、前記トルク遮断・伝達手段が径方向の往復動が可能な係合部材と、この係合部材の外側に配設される静止部材とを有する逆入力遮断クラッチであって、入力部材へのトルクの入力により、その回転運動を直線運動に変換し、その直線運動を、前記係合部材を前記静止部材から離間させる方向に移動させる運動に変換する離間移動機構と、前記係合部材が前記静止部材から離間している状態で前記入力部材に入力されたトルクを出力部材に伝達する伝達機構と、出力部材へのトルクの逆入力により、その回転運動を前記係合部材を前記静止部材に接近する方向に移動させる運動に変換する接近移動機構とを備え、前記入力部材にトルクが入力された状態で、前記伝達機構を介して前記出力部材に入力部材からのトルクが伝達され、前記出力部材にトルクが逆入力された状態で、前記出力部材が所定角度だけ回動して、接近移動機構を介して、前記係合部材が前記静止部材に押し付けられて、出力部材からのトルクの前記入力部材への伝達が遮断されるものである。
【0010】
本発明の逆入力遮断クラッチによれば、入力部材にトルクが入力された状態で、出力部材に入力部材からのトルクが伝達され、出力部材にトルクが逆入力された状態で、出力部材からのトルクの前記入力部材への伝達が遮断されるものである。この場合、入力部材にトルクが入力された状態で、直線運動が発生して、前記係合部材を前記静止部材から離間させる方向に移動させるものであり、繰り返しの動作であっても、摩耗する部位を少なくできて、この離間動作が安定する。また、出力部材へのトルクの逆入力により、所定角度の回動にて前記係合部材を前記静止部材に接近する方向に移動させるものであり、出力部材からのトルクの入力部材への伝達は安定して遮断することができる。
【0011】
また、出力部材からのトルクを遮断する場合に、従来のような、リンク部材を必要とせず、また、各部材を比較的シンプルな形状で構成でき、装置(クラッチ)として部品点数を少なく設定できる。
【0012】
前記離間移動機構は、前記係合部材の径方向の往復動方向に対して所定角度で傾斜する直線凸部と、この直線凸部が嵌合して前記直線凸部の前記傾斜方向に沿ったスライドを許容する直線凹部とを有し、直線凹部を前記係合部材に設けるとともに、前記直線凸部を前記係合部材とは別部材である案内部材に設け、入力部材へのトルクが入力された状態で、前記直線凸部が直線凹部に嵌合してスライドする直線運動をなすように構成できる。
【0013】
このように構成すれば、直線凸部が直線凹部をスライドする直線運動で、係合部材が静止部材から離間することになり、この直線凸部と直線凹部との間で、いわゆる「こぜ」が生じることがなく、耐用性に安定する。ここで、「こぜ」が生じるとは、無理やり棒等を差し込んでこじ開けた場合のように、直線凸部と直線凹部との間に不要な外力が付加されることを意味する。
【0014】
前記離間移動機構は、前記係合部材の径方向の往復動方向に対して所定角度で傾斜する直線凸部と、直線凸部に係合して前記傾斜方向に沿ったスライドが許容される直線係合部とを有し、前記直線凸部を前記係合部材に設け、前記直線係合部を前記係合部材とは別部材である案内部材に設け、入力部材へのトルクが入力された状態で、前記直線凸部が直線係合部に係合してスライドする直線運動をなすように構成できる。
【0015】
このように構成すれば、直線係合部が直線凸部に係合した状態でスライドする直線運動で、係合部材が静止部材から離間することになり、直線係合部と直線凸部との間で、いわゆる「こぜ」が生じることがなく、耐用性に安定する。この場合の「こぜ」が生じるとは、無理やり棒等を差し込んでこじ開けた場合のように、直線係合部と直線凸部との間に不要な外力が付加されることを意味する。
【0016】
前記離間移動機構の直線凸部の傾斜角度を80°~30°とするのが好ましい。θが80°を超えれば、係合部材の外径面が、静止部材の内径面に接触するまでの直線凸部の直線凹部内でのスライド量、又は、直線凸部に対する直線係合部のスライド量が大きくなり、また、θが30°未満では、トルクを安定して伝達可能な状態にするまでに入力部材11に入力するトルクが大きくなる。
【0017】
前記伝達機構は、前記係合部材が回転自在となって、前記係合部材と前記案内部材とを介して前記入力部材と前記出力部材とが一体化するもので構成できる。
【0018】
外径面が半円弧形状の半円盤体にて構成された一対の係合部材を、半円盤体の弦を構成する内径側の端面が相対向するように配置し、一対の係合部材が出力部材へのトルクに逆入力によって離間し、各係合部材の外径面が前記静止部材の円弧形状とされた内径面に圧接するのが好ましい。
【0019】
このように構成すれば、係合部材の外径面と、静止部材の内径面と面接触を構成することができ、しかも、一対の係合部材が180°反対方向に配設されるので、安定した遮断力を発生させることができる。
【0020】
外径面の頂部が切り欠かれてその側面である二つの脚が円弧面とされた台形状の一対の係合部材を、底辺を構成する内径側の端面が相対向するように配置し、一対の係合部材が出力部材へのトルクの逆入力によって離間し、各係合部材の前記円弧面が静止部材の円弧形状とされた内径面に圧接することができる。この場合の係合部材は、外径側の上辺よりも下辺が長く側面である脚部が円弧面とされた台形状に形成されている。
【0021】
このように構成すれば、各係合部材の二つの円弧面は、静止部材の内径面と面接触を構成することができ、しかも、一対の係合部材が180°反対方向に配設されるので、全体として4箇所の円弧面で、静止部材の円弧形状とされた内径面に圧接して前記出力部材からのトルクが前記入力部材へ遮断されるように構成することができる。また、各係合部材の二つの円弧面は、相手側の被圧接面間が小さくなる方向に進入していくことになって、いわゆる「くさび効果」で大きな摩擦力が発生して、トルクの遮断効果が安定する。
【0022】
一対の係合部材を備えるとともに、相対的に離間する方向に押圧する弾性部材を備え、かつ弾性部材は、前記入力部材からトルクが入力されると弾性部材の弾性力に抗して一対の係合部材が接近し、入力部材と出力部材との間のトルク遮断を解除するようにするのが好ましい。
【0023】
このような弾性部材を備えることにより、自由状態において、係合部材の外径面である押圧面が静止部材の内径面である被押圧面から係合部材が自重等により、離間するのを防止できる。すなわち、この弾性部材が無ければ、出力部材からの入力部材へのトルク伝達が可能となっており、この状態において、出力部材にトルクが逆入力されれば、係合部材が径方向外方へ移動して、係合部材の外径面である押圧面が静止部材の内径面である被押圧面を押圧する状態になるまでの出力部材に入力されたトルクが入力部材に伝達されることになって、トルクの遮断機能の応答性が悪くなる。
【0024】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、前記入力部材にトルクが入力された状態で、前記入力側伝達部が、前記離間移動機構を介して前記係合部材を内径側へ移動させる移動力を発生させるとともに、前記出力部材にトルクが逆入力された状態で、前記出力側伝達部が、前記係合部材を外径側へ移動させる移動力を発生させるように構成できる。
【0025】
このように構成することによって、逆入力遮断クラッチとしての機能を有効に発揮できる。この場合、入力側伝達部の端面は、前記係合部材の出力部材側の端面に達するように構成するのが好ましく、このように構成することにより、クラッチの軸方向寸法を短く設定することができる。
【0026】
前記出力側伝達部は平板形状体で構成され、前記入力側伝達部は、前記出力側伝達部が係合する係合凹部が形成された平板形状体で構成され、入力側伝達部と出力側伝達部とは直交する方向にずれているものであってもよく、また、前記入力側伝達部は平板形状体で構成され、前記出力側伝達部は、前記入力側伝達部が係合する係合凹部が形成された平板形状体で構成され、入力側伝達部と出力側伝達部とは直交する方向にずれているものであってもよい。
【0027】
このようなものでは、クラッチ全体の軸方向長さを短く設定できる。また、クラッチ全体軸方向の長さを短く設定する場合、入力側伝達部及び出力側伝達部は、それぞれ中央部に係合凹部を有する平板形状体で構成され、入力側伝達部と出力側伝達部とは直交する方向にずれて、係合凹部同士が係合しているものであってもよい。
【0028】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力部材の入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、かつ、入力側伝達部と出力側伝達部とが凹凸嵌合構造にて連結しているものであってもよい。
【0029】
このように、構成すれば、入力部材に入力されたトルクを安定して出力部材に出力することができ、また、出力部材に逆入力されるトルクを安定して遮断して入力部材に入力させない。
【0030】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力部材の入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、前記入力側伝達部を弾性的に押圧して、前記係合部材を内径側へ移動させる、案内部材に付勢力を発生させる弾性部材を設けたものであってもよい。
【0031】
このように構成することによって、入力部材のガタつき及び入力部材側からの異音の発生を防止でき、伝達部のフレッティング摩耗を防止できる。しかも、係合部材を静止部材から安定して離間することができる。
【0032】
入力部材は入力側伝達部を有するとともに、出力部材は前記入力部材の入力側伝達部に係合する出力側伝達部を有し、前記出力側伝達部を弾性的に押圧して、係合部材を外径側へ移動させる、案内部材に付勢力を発生させる弾性部材を設けたものであってもよい。
【0033】
このように構成することによって、出力部材のガタつき及び出力部材側からの異音の発生を防止でき、伝達部のフレッティング摩耗を防止できる。しかも、係合部材の静止部材から自重での離間を防止できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、繰り返しの動作であっても、摩耗する部位を少なくできて、長期にわたって、逆入力遮断状態の解除を円滑にでき、しかも、クラッチ全体としての部品点数が少なく簡単な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に係る逆入力遮断クラッチの分解簡略斜視図である。
【
図2】
図1に示す逆入力遮断クラッチの出力側から見た簡略図である。
【
図3】
図1に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図6】出力部材にトルクが逆入力された状態の簡略図である。
【
図7】入力部材にトルクが入力された状態の簡略図である。
【
図8】逆入力遮断クラッチの第1の変形例を示す簡略斜視図である。
【
図9】
図8に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図10】逆入力遮断クラッチの第2の変形例を示す簡略斜視図である。
【
図11】
図10に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図14】逆入力遮断クラッチの第3の変形例を示す簡略斜視図である。
【
図15】
図14に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図18】逆入力遮断クラッチの第4の変形例を示す簡略斜視図である。
【
図19】
図18に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図22】逆入力遮断クラッチの第5の変形例を示す簡略斜視図である。
【
図23】
図22に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図26】逆入力遮断クラッチの第6の変形例を示す簡略斜視図である。
【
図27】
図26に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図29】逆入力遮断クラッチの第7の変形例を示し、出力側から見た簡略図である。
【
図30】
図29に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図32】逆入力遮断クラッチの第8の変形例を示し、出力側から見た簡略図である。
【
図33】
図32に示す逆入力遮断クラッチの入力側から見た簡略図である。
【
図35】従来の逆入力遮断クラッチを示し、入力部材に回転トルクが入力された状態の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明の実施の形態を
図1~
図34に基づいて説明する。
図1は本発明に係る逆入力遮断クラッチの簡略斜視図を示し、逆入力遮断クラッチは、トルクが入力される入力部材11と、トルクが出力される出力部材12と、入力部材11と出力部材12との間に介在されるトルク遮断・伝達手段13とを備えるものである。そして、トルク遮断・伝達手段13が径方向の往復動が可能な係合部材15と、この係合部材15の外側に配設される静止部材16とを有する。
【0037】
トルク遮断・伝達手段13は、入力部材11へのトルクの入力により、その回転運動を直線運動に変換し、その直線運動を、係合部材15を静止部材16から離間させる方向に移動させる運動に変換する離間移動機構17(
図3参照)と、係合部材15が静止部材16から離間している状態で入力部材11に入力されたトルクを出力部材12に伝達する伝達機構18(
図4及び
図5参照)と、出力部材12へのトルクの逆入力により、その回転運動を係合部材15を静止部材16に接近する方向に移動させる運動に変換する接近移動機構19(
図2参照)とを備える。
【0038】
図1、
図4、及び
図5に示すように、入力部材11は、外径面が円筒面とされる入力軸部20と、この入力軸部20の出力側端部に設けられる矩形平板状の伝達部21とを有するものであり、出力部材12は、外径面が円筒面とされる出力軸部22と、出力軸部22の入力側端部に設けられる矩形平板状の伝達部23とを有するものである。また、入力部材11および出力部材12には、それぞれ、貫通孔11a、12aが設けられ、貫通孔11a、12aに連結用軸部材24がいわゆるすきま嵌め状に嵌入されている。すなわち、入力部材11と出力部材12が、軸合わせされた状態であり、連結用軸部材24を介して、トルクが伝達されるわけではなく、連結用軸部材24は、入力部材および出力部材の回転中心を支持するものである。
【0039】
また、入力部材11の伝達部21と、出力部材12の伝達部23とは、直交する方向にずれている。この場合、
図2及び
図3に示すように、伝達部21がY軸方向である鉛直方向に沿って延びていれば、伝達部23はX軸方向である水平方向に沿って延びるものである。
【0040】
係合部材15は、外径面15aが半円弧形状の半円盤体にて構成されるものであり、
図2及び
図3に示すように、半円盤体の弦を構成する内径側の端面15b、15bを相対面させて配置されるように一対設けられる。なお、各係合部材15(15A、15B)には、端面15b、15b側の外径部には切り欠き部15c、15cが設けられている。一対の係合部材15、15間には、係合部材15、15を離間する方向に弾性的に押圧する弾性部材25、25が介在されている。このため、自由状態(伝達部23が
図2に示すようにX軸方向に沿って配設されている状態)では、弾性部材25、25で係合部材15A、15Bが相対的に離間する方向に押圧され、各係合部材15A、15Bの外径面15a、15aが静止部材16の内径面30aに接する程度に弾発付勢している。
【0041】
ところで、離間移動機構17は、
図3に示すように、係合部材15(15A、15B)の径方向の往復動方向に対して所定角度θ1で傾斜する直線凸部29と、直線凸部29が嵌合して直線凸部の前記傾斜方向に沿ったスライドを許容する直線凹部26bとを有するものであり、直線凹部部26bを係合部材15(15A、15B)に設けるとともに、直線凸部29を係合部材15(15A、15B)とは別部材である案内部材27に設けている。
【0042】
すなわち、係合部材15(15A、15B)の入力側端面15dには、凹部26が設けられている。凹部26は、内径側の端面に開口する第1部26aと、この第1部26aから外径側にY軸方向と所定傾斜角度θ(
図3参照)で延びる一対の第2部である直線凹部26b、26bとからなる。この場合の傾斜角度θは、例えば、80°~30°程度に設定される。また、凹部26の断面形状は矩形状とされる。なお、直線凹部26b、26bの傾斜角度θは、
図3からわかるように、Y軸に対する角度である。
【0043】
そして、係合部材15A、15Bは、一対の案内部材27、27にて連結される。案内部材27は、出力側端面に切り欠く凹部28を有する台形形状体で構成される。この場合、各案内部材27において、相対面する側面27a、27aが、内径側から外径側に向かって離間するように広がる傾斜面とされる。出力側端面に外径側に開口する切り欠き凹部28が形成されることによって、直線凹部26bに嵌合する断面矩形状の直線凸部29が構成される。また、直線凹部26bに直線凸部29が嵌合することによって、切り欠き凹部28の底面が係合部材15の入力側端面15dに当接するとともに、一対の直線凹部26b、26bが切り欠き残部28aにて連結された状態となって、この切り欠き残部28aが凹部26の第1部26aに嵌合する。このため、直線凸部29の傾斜角度θ1(
図3参照)は、直線凹部26bの傾斜角度θと同一に設定され、例えば、80°~30°程度に設定されている。なお、直線凸部29の傾斜角度θ1も、
図3に示すように、Y軸に対する傾斜角度である。
【0044】
ところで、直線凹部26bの傾斜角度θ及び直線凸部29の傾斜角度θ1は、80°~30°°程度に設定されるが、θ1が80°を超えれば、係合部材15(15A、15B)の外径面15aが、静止部材16の内径面30aに接触するまでの直線凸部29の直線凹部26b内でのスライド量が大きくなり、また、θ1が30°未満では、トルクを安定して伝達可能な状態にするまで入力部材11に入力するトルクが大きくなる。
【0045】
また、
図4及び
図5に示すように、入力部材11と出力部材12とを連結するとともに、
図2及び
図3に示すように、係合部材15A、15Bを一対の案内部材27、27にて連結した状態では、入力部材11の伝達部21が、
図3に示すように、一対の案内部材27、27間に遊嵌状に介在され、出力部材12の伝達部23が、
図2に示すように、一対の係合部材15A、15B間に遊嵌状に介在される。ここで、伝達部21が一対の案内部材27、27間に遊嵌状に介在されるとは、
図3に示すように、伝達部21が、鉛直方向であるY軸方向に沿って配設された状態で、伝達部21の側面と案内部材27、27の対向面間との間にそれぞれ僅かな隙間が形成され、伝達部23が一対の係合部材15A、15B間に遊嵌状に介在されるとは、
図2に示すように、伝達部23が、水平方向であるX軸方向に沿って配設された状態で、伝達部23の側面と係合部材15A、15Bの対向面との間にそれぞれ僅かな隙間が形成されていることである。
【0046】
静止部材16は、係合部材15A、15Bが嵌合する孔部30を有する枠体にて構成され、この孔部30の内径面30aの曲率半径を、係合部材15A、15Bの外径面の曲率半径と同一寸法に設定したり、又は、内径面30aの内径面の曲率半径よりもわずかに小さく設定したり、大きく設定したりすることができる。ここで、同一寸法は、同一及び寸法公差内に収まる範囲を含むものである。この場合、係合部材15A、15Bの外径面15a、15aと、孔部30の内径面30aとのいずれか少なくとも一方に、他の部材よりも摩擦係数の大きい表面性状となるような表面処理を行っても、摩擦材を配設してもよい。
【0047】
ところで、
図4に示すように、孔部30の内径面30aの幅寸法(軸方向長さ)Wと係合部材15A、15Bの外径面の幅寸法(軸方向長さ)W1はほぼ同一に設定される。ここで、ほぼ同一とは同一及び寸法公差内に収まる範囲を含むものである。
【0048】
次に、このように設定された逆入力遮断クラッチの動作を説明する。
図6に示すように出力部材12に、矢印方向のトルク(回転トルク)が逆入力されれば、出力部材12の伝達部23は矢印方向に回動することになって、係合部材15A、15Bが離間する方向に径方向外方に移動するように押圧する。このため、係合部材15A、15Bの外径面15aが、静止部材16の孔部30の内径面30aを押圧して圧接して、この出力部材12から入力部材11へのトルクの伝達が遮断される。なお、出力部材12に
図6に示す矢印と逆方向のトルクが逆入力された場合も伝達部23が係合部材15A、15Bが離間する方向に径方向外方に移動するように押圧し、出力部材12から入力部材11へのトルクの伝達が遮断される。
【0049】
また、
図7に示すように、入力部材11に矢印方向のトルク(回転トルク)が入力された場合、入力部材11の伝達部21にて、各案内部材27、27は相対的にX軸方向に沿って離間するように矢印P方向にスライドする。このスライドによって、直線凸部29が直線凹部26bに嵌合しているので、直線凸部29が直線凹部26bにガイドされてこの直線凹部26bに沿って矢印P1方向にスライドする。この直線凸部29の矢印P1方向のスライドによって、(直線凹部26bが所定角度に傾斜しているので)各係合部材15、15がY軸方向に沿って相対的に接近する。
【0050】
このように、各係合部材15A、15BがY軸方向に沿って相対的に接近すれば、
図7に示すように、孔部30の内径面30aから係合部材15A、15Bの外径面15aが離間する。これによって、係合部材15A、15Bが回転自在となって、入力部材11と係合部材15A、15Bと案内部材27、27と出力部材12とが一体化して、入力部材11へ入力されたトルクが伝達される。すなわち、伝達機構18は、係合部材15A、15Bが回転自在となって、係合部材15A、15Bと案内部材27、27とを介して、入力部材11と出力部材12とを一体化するもので、係合部材15A、15Bと案内部材27、27と構成できる。なお、
図7に示す矢印と反対方向のトルクが入力部材12に入力されても、各係合部材15A、15BがY軸方向に沿って相対的に接近することになる。
【0051】
従って、本逆入力遮断クラッチは、入力部材11へのトルクの入力により、その回転運動を直線運動に変換し、その直線運動を、前記係合部材15A、15Bを静止部材16から離間させる方向に移動させる運動に変換する離間移動機構17と、係合部材15A、15Bが静止部材16から離間している状態で入力部材11に入力されたトルクを出力部材12に伝達する伝達機構18と、出力部材12へのトルクの逆入力により、その回転運動を係合部材15A、15Bを静止部材16に接近する方向に移動させる運動に変換する接近移動機構19とを備え、入力部材11にトルクが入力された状態で、伝達機構18を介して出力部材12に入力部材11からのトルクが伝達され、出力部材12にトルクが逆入力された状態で、接近移動機構19を介して、係合部材15A、15Bが静止部材16に押し付けられて、出力部材12からのトルクの入力部材11への伝達が遮断されるものである。
【0052】
本発明の逆入力遮断クラッチによれば、入力部材11にトルクが入力された状態で、出力部材12に入力部材11からのトルクが伝達され、出力部材12にトルクが逆入力された状態で、出力部材12からのトルクの入力部材11への伝達が遮断されるものである。この場合、入力部材11にトルクが入力された状態で、直線運動が発生して、係合部材15A、15Bを静止部材16から離間させる方向に移動させるものであり、繰り返しの動作であっても、摩耗する部位を少なくできて、この離間動作が安定する。また、出力部材12へのトルクの逆入力により、伝達部23の所定角度の回動にて係合部材を前記静止部材に接近する方向に移動させるものであり、出力部材15A、15Bからのトルクの入力部材11への伝達は安定して遮断することができる。
【0053】
従って、繰り返しの動作であっても、摩耗する部位を少なくできて、長期にわたって、逆入力遮断状態の解除を円滑にでき、しかも、クラッチ全体としての部品点数が少なく簡単な構成とすることができる。
【0054】
次に
図8の逆入力遮断クラッチの第1の変形例を示し、この逆入力遮断クラッチは、
図1に示す逆入力遮断クラッチにおいて、係合部材15A、15Bの外径面15a、15aの一部を切り欠いたものである。このため、各係合部材15A、15Bは、周方向にずれた位置に2つ円弧面15a1、15a1が形成されている。つまり、この変形例1の係合部材15A、15Bは、上辺よりも下辺が長く側面である脚部が円弧面とされた台形状に形成されている。
【0055】
図8に示す逆入力遮断クラッチは出力側から見た図が、
図1に示す実施形態と同様であるので、
図8に示す変形例の逆入力遮断クラッチにおける出力側から見た図を省略する。したがって、この場合も出力部材12にトルクが逆入力されれば、各係合部材15A、15Bが、Y軸方向に沿って相対的に離間することになって、
図9に示すように、各係合部材15A、15Bの2つの円弧面15a1、15a1が静止部材16の内径面30aに圧接してトルク遮断することができる。
【0056】
この場合、各係合部材15A、15Bの二つの円弧面15a1、15a1は、静止部材16の内径面30aと面接触を構成することができ、しかも、一対の係合部材15A、15Bが180°反対方向に配設されるので、全体として4箇所の円弧面で、静止部材16の円弧形状とされた内径面30aに圧接して出力部材12からのトルクの入力部材11への伝達が遮断されるように構成することができる。また、円弧面15a1、15a1は、相手側の被圧接面間が小さくなる方向に進入していくことになって、いわゆる「くさび効果」で大きな摩擦力が発生して、トルクの遮断効果が安定する。
【0057】
また、入力部材11にトルクが入力されれば、前記
図1に示す実施形態と同様、一対の係合部材15A、15Bが相対的に接近して、トルク遮断状態が解除され、入力部材11に入力されたトルクが出力部材12に伝達される。なお、トルク遮断状態では、各係合部材15A、15Bの切り欠き面が静止部材16の内径面30aと接触しない。
【0058】
図10は、逆入力遮断クラッチの第2の変形例を示す。この場合、係合部材15の入力側端面に、凹部に換えて、係合部材15の径方向の往復動方向と直交する方向に対して所定角度で傾斜する直線凸部31を設けている。このため、
図11に示すように、
図1に示す直線凸部29に対応する部位が、直線凸部31に係合して、傾斜方向に沿ったスライドを許容する直線係合部32を構成する。
【0059】
このため、逆入力遮断クラッチの第2の変形例では、離間移動機構17は、係合部材15(15A、15B)の径方向の往復動方向に対して所定角度で傾斜する直線凸部31と、直線凸部31が係合して傾斜方向に沿ったスライドが許容される直線係合部32とを有するものであり、直線凸部31を係合部材15(15A、15B)に設け、直線係合部32を係合部材15(15A、15B)とは別部材である案内部材27に設けている。この場合も、直線凸部31および直線係合部32の傾斜角度θ2、θ3(
図11参照)の傾斜角度は、例えば、80°~30°程度に設定されている。
【0060】
ところで、
図4に示す逆入力遮断クラッチでは、入力部材11の伝達部21が、係合部材15の厚さ方向の略半分に入り込んだ状態であるので、出力部材12の出力部材12の伝達部23も、この場合、係合部材15の厚さ方向の略半分に入り込んだ状態となっている。
【0061】
これに対して、
図10に示す逆入力遮断クラッチでは、
図12及び
図13に示すように、入力部材11の伝達部21が、その軸方向長さが案内部材27の肉厚と同等とされ、係合部材15の入力側端面に当接した状態となっている。このため、
図10に示す逆入力遮断クラッチでは、出力部材12の軸方向長さ(X軸方向長さ)を大とする。すなわち、出力部材12のX軸方向長さX1を、係合部材15の厚さ方向長さW1と同一としている。
【0062】
図10に示す逆入力遮断クラッチでは、入力部材11にトルクが入力されれば、案内部材27、27側の直線係合部32は、直線凸部31に係合しながら、スライドすることになる。これによって、係合部材15A、15BがY軸方向に沿って相対的に接近する。これによって、トルク遮断状態が解除され、入力部材11に入力されたトルクが出力部材12に伝達される。
【0063】
しかも、この
図10に示す逆入力遮断クラッチでは、係合部材15の凹部に代えて凸部を設けているので、係合部材の強度及び剛性を高めるので、耐久性に優れることになる。
【0064】
次に、
図14は、逆入力遮断クラッチの第3の変形例を示し、この場合、入力部材11の伝達部21の長手方向中間部に切り欠き部34が設けられて、一対の伝達片35、35が形成されている。この場合も
図15に示す状態から出力部材12にトルクが逆入力されれば、各係合部材15A、15Bが、Y軸方向に沿って相対的に離間することになって、各係合部材15A、15Bの外径面15aが静止部材16の内径面30aに圧接してトルクの伝達を遮断することができる。
【0065】
このため、
図16及び
図17に示すように、 入力部材11の切り欠き部34に出力部材の伝達部23が嵌入することになって、このクラッチの全体の軸方向長さを短くでき、コンパト化を図ることができる。
【0066】
次に、
図18は、逆入力遮断クラッチの第4の変形例を示し、この場合、出力部材12の伝達部23の長手方向中間部に切り欠き部36が設けられて、一対の伝達片37、37が形成されている。この場合も
図19に示す状態から出力部材12にトルクが逆入力されれば、各係合部材15A、15Bが、Y軸方向に沿って相対的に離間することになって、各係合部材15A、15Bの外径面15aが静止部材16の内径面30aに圧接してトルクの伝達を遮断することができる。
【0067】
このため、
図20及び
図21に示すように、出力部材12の切り欠き部36に、入力部材の伝達部21が嵌入することになって、このクラッチの全体の軸方向長さを短くでき、コンパト化を図ることができる。
【0068】
次に、
図22は、逆入力遮断クラッチの第5の変形例を示し、この場合、入力部材11の伝達部21の長手方向中間部に切り欠き部34が設けられて、一対の伝達片35、35が形成され、出力部材12の伝達部23の長手方向中間部に切り欠き部36が設けられて、一対の伝達片37、37が形成されている。
【0069】
この場合も
図23に示す状態から出力部材12にトルクが逆入力されれば、各係合部材15A、15Bが、Y軸方向に沿って相対的に離間することになって、各係合部材15A、15Bの外径面15aが静止部材16の内径面30aに圧接してトルクの伝達を遮断することができる。
【0070】
このため、
図24及び
図25に示すように、入力部材11の切り欠き部33と出力部材12の切り欠き部36とが嵌合することになって、このクラッチの全体の軸方向長さを短くでき、コンパト化を図ることができる。
【0071】
次に、
図26は、逆入力遮断クラッチの第6の変形例を示し、この場合、入力部材11の伝達部21に連結軸部38が一体に設けられている。この場合も
図27に示す状態から出力部材12にトルクが逆入力されれば、各係合部材15A、15Bが、Y軸方向に沿って相対的に離間することになって、各係合部材15A、15Bの外径面15aが静止部材16の内径面30aに圧接してトルクの伝達を遮断することができる。
【0072】
このため、
図28に示すように、入力部材11の伝達部21の連結軸部38が出力部材12の貫通孔12aに嵌入することにより、入力部材11と出力部材12との軸合わせを図ることができる。このため、入力部材11側の連結軸部38と出力部材12側の貫通孔12aとで、入力側伝達部21と出力側伝達部23とを連結をなす凹凸嵌合構造39(トルク伝達機能を有するものではない)を構成することになる。
【0073】
従って、別部材である連結用軸部材24を必要とせず、部品点数の減少を図ることができ、組み立て性や部品の管理の容易化を図ることができ、コスト低減を図ることができる。また、伝達部21に連結軸部38を突設することにより、入力部材11に連結用軸部材24を嵌入させる貫通孔を設ける必要が無く、加工性に優れる。
【0074】
なお、この第6の変形例では、連結軸部38が入力部材11の伝達部21に設けられていたが、連結軸部38を入力部材11の伝達部21に設けず、出力部材12の伝達部23に設けてもよい。すなわち、出力部材12側に設けられる連結軸部と、入力部材11側の孔部12aとで、入力側伝達部21と出力側伝達部23とを連結する凹凸嵌合構造39(トルク伝達機能を有するものではない)を構成することができる。
【0075】
図29~
図31は、逆入力遮断クラッチの第7の変形例を示し、この場合、前記各実施形態において設けていた弾性部材25、25を省略して、出力部材の伝達部と係合部材間、及び入力部材の伝達部と案内部材27間に、それぞれ、弾性部材40、41を配設している。
【0076】
出力側の弾性部材40及び入力側の弾性部材41としては、それぞれ4個配置しているが、第8の変形例である
図32から
図34に示すように、出力側の弾性部材40及び入力側の弾性部材41としては、それぞれ2個ずつ配設されるものであってもよい。
【0077】
このように、弾性部材を配置することによって、クラッチのガタつきを有効に防止できる。また、入力部材11及び出力部材12のガタつき及び入力部材11及び出力部材12側からの異音の発生を防止でき、伝達部のフレッティング摩耗を防止できる。しかも、係合部材15(15A、15B)の静止部材16から自重での離間を防止できる。なお、出力側の弾性部材40のみであってもよい。
【0078】
ところで、
図8~
図34に示す各変形例においても、入力部材11にトルクが入力された状態で、直線運動が発生して、係合部材15(15A、15B)を静止部材16から離間させる方向に移動させるものであり、繰り返しの動作であっても、摩耗する部位を少なくできて、この離間動作が安定する。また、出力部材12へのトルクの逆入力により、所定角度の回動にて係合部材15(15A、15B)を静止部材16に接近する方向に移動させるものであり、出力部材12からのトルクの入力部材11への伝達を安定して遮断することができる。
【0079】
このため、
図8~
図34に示す各変形例においても、繰り返しの動作であっても、摩耗する部位を少なくできて、長期にわたって、逆入力遮断状態の解除を円滑にでき、しかも、クラッチ全体としての部品点数が少なく簡単な構成とすることができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、弾性部材として、金属やその他素材からなるばね(コイルばね、板ばね、皿ばね等)、ゴム材料、あるいは、樹脂材料を採用できる。係合部材として、各実施形態では、一対備えていたが、一対設けることなく、1個であっても、逆に3個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
11 入力部材
12 出力部材
13 トルク遮断・伝達手段
15、15A 、15B 係合部材
15a 外径面
15a1、15a1 円弧面
16 静止部材
17 離間移動機構
18 伝達機構
19 接近移動機構
21 伝達部
23 伝達部
24 連結用軸部材
26a 第1部
26b 直線凹部
27案内部材
29 直線凸部
30 孔部
30a 内径面
31 直線凸部
32 直線係合部