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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179908
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099237
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】半坂 昌広
(72)【発明者】
【氏名】内田 真裕
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239CA02
2E239CA03
2E239CA12
2E239CA22
2E239CA32
2E239CA47
2E239CA54
2E239CA58
2E239CA64
(57)【要約】
【課題】火災時に障子が熱反りしても防火性能を高めることができる建具の提供。
【解決手段】建具1は、ドア枠2と、ドア本体3と、吊元加熱発泡材と、戸先加熱発泡材とを有する。吊元加熱発泡材は、上下に分割された吊元枠側の加熱発泡材120と、加熱発泡材120の分割部分に配置された吊元框側の加熱発泡材140とを備える。戸先加熱発泡材は、上下に分割された戸先枠側の加熱発泡材130と、加熱発泡材130の分割部分に配置された戸先框側の加熱発泡材150とを備える。吊元加熱発泡材は、所定温度で発泡する通常発泡加熱発泡材と、所定温度に比べて低温で発泡する低温発泡加熱発泡材とを備え、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材120は低温発泡加熱発泡材である。戸先加熱発泡材は、通常発泡加熱発泡材と低温発泡加熱発泡材とを備え、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材130は、低温発泡加熱発泡材である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠、吊元縦枠、戸先縦枠を備える四方枠と、
面材および前記面材の外周縁を保持する上框、下框、吊元縦框、戸先縦框を備える障子と、
火災時に発泡して前記吊元縦枠および前記吊元縦框間を塞ぐ吊元加熱発泡材と、
火災時に発泡して前記戸先縦枠および前記戸先縦框間を塞ぐ戸先加熱発泡材と、
を有し、
前記吊元加熱発泡材は、
前記吊元縦枠の見込面において、上下方向に分割配置された吊元枠側の加熱発泡材と、
前記吊元縦框の見込面において、上下方向において前記吊元枠側の加熱発泡材が配置されていない分割部分に配置された吊元框側の加熱発泡材と、を備え、
前記戸先加熱発泡材は、
前記戸先縦枠の見込面において、上下方向に分割配置された戸先枠側の加熱発泡材と、
前記戸先縦框の見込面において、上下方向において前記戸先枠側の加熱発泡材が配置されていない分割部分に配置された戸先框側の加熱発泡材と、を備え、
前記吊元加熱発泡材および前記戸先加熱発泡材は、所定温度で発泡する通常発泡加熱発泡材と、前記所定温度に比べて低温で発泡する低温発泡加熱発泡材とをそれぞれ備え、
前記吊元枠側の加熱発泡材において、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材は、前記低温発泡加熱発泡材であり、
前記戸先枠側の加熱発泡材において、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材は、前記低温発泡加熱発泡材である
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記吊元縦枠および前記吊元縦框には、上下方向に離れて配置された複数の丁番が取り付けられ、
前記丁番は、前記吊元縦枠に固定される枠側丁番と、前記吊元縦框に固定される框側丁番とを備え、
前記吊元枠側の加熱発泡材は、前記枠側丁番を挟んで上下方向に分割配置され、最も上側に配置される加熱発泡材は前記通常発泡加熱発泡材であり、前記枠側丁番間に配置される加熱発泡材は前記通常発泡加熱発泡材または前記低温発泡加熱発泡材であり、
前記吊元框側の加熱発泡材は、上下方向において前記枠側丁番の高さ位置に配置され、前記低温発泡加熱発泡材で構成されている
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1に記載の建具において、
前記戸先縦框には、錠ケースが取り付けられ、
前記戸先縦枠には、前記錠ケースに対応する錠受けが取り付けられ、
前記戸先枠側の加熱発泡材は、前記錠受けを挟んで上下方向に分割配置され、前記錠受けの上側および下側に配置される加熱発泡材は前記低温発泡加熱発泡材であり、
前記戸先框側の加熱発泡材は、上下方向において前記錠受けの高さ位置に配置され、前記通常発泡加熱発泡材で構成されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1に記載の建具において、
前記障子は、室内外方向の一方である第1方向に開き、前記室内外方向の他方である第2方向に閉じるように前記四方枠に取り付けられ、
前記吊元加熱発泡材および前記戸先加熱発泡材は、前記吊元縦枠および前記戸先縦枠の見込面と、前記吊元縦框および前記戸先縦框の見込面とにおいて、少なくとも見込方向の中央よりも第1方向側の範囲に貼り付けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1に記載の建具において、
前記戸先縦枠の下部に取り付けられる前記戸先枠側の加熱発泡材の見込方向の幅寸法は、前記戸先縦枠の上部に取り付けられる前記戸先枠側の加熱発泡材の見込方向の幅寸法に比べて大きい
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルを枠体で保持した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上枠、下枠、左右の縦枠を有する枠と、上框、下框、吊元框、戸先框およびこれらの各框で保持されるガラスパネルを有する戸と、枠に戸を開閉自在に取り付ける丁番とを備えた勝手口ドアが開示されている。吊元框および戸先框の外周側見込面の室内側寄りの位置には、それぞれ加熱発泡材が長手方向つまり上下方向に沿って設けられている。また、戸先側および吊元側の各縦枠には、戸の室内側面に当接する不燃性タイト材が取り付けられ、不燃性タイト材の外周側の位置には加熱発泡材が長手方向に沿って設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-145618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、火災時にドアの戸が加熱されると、戸先框は、戸先縦枠に係合する錠部分に対して上下端部が熱反りする。例えば、室内火災によって戸の室内面が加熱されると、戸先框の上下端部は室外側に熱反りして戸の表面温度が部分的に低くなり、特に戸の下部においては加熱発泡材が発泡温度に到達するまでに時間がかかり、縦枠と縦框の下部から発火する恐れがある。
また、特許文献1では、戸先框および吊元框に取り付けられる加熱発泡材は、見込方向において、錠ケースや丁番に重なる位置に配置されているが、この重なる位置に配置される加熱発泡材の納まり構造に関しては何ら開示されていない。このため、実際には、錠ケースや丁番と重なる部分には加熱発泡材を配置できず、防火性能が低下する恐れがある。
このような課題は、ドアに限らず、窓枠に障子を丁番で開閉可能に取り付けた開き窓においても発生する。したがって、火災時に障子(戸を含む)が熱反りしても防火性能を高めることができる建具が求められている。
【0005】
本発明の目的は、火災時に障子が熱反りしても防火性能を高めることができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、上枠、下枠、吊元縦枠、戸先縦枠を備える四方枠と、面材および前記面材の外周縁を保持する上框、下框、吊元縦框、戸先縦框を備える障子と、火災時に発泡して前記吊元縦枠および前記吊元縦框間を塞ぐ吊元加熱発泡材と、火災時に発泡して前記戸先縦枠および前記戸先縦框間を塞ぐ戸先加熱発泡材と、を有し、前記吊元加熱発泡材は、前記吊元縦枠の見込面において、上下方向に分割配置された吊元枠側の加熱発泡材と、前記吊元縦框の見込面において、上下方向において前記吊元枠側の加熱発泡材が配置されていない分割部分に配置された吊元框側の加熱発泡材と、を備え、前記戸先加熱発泡材は、前記戸先縦枠の見込面において、上下方向に分割配置された戸先枠側の加熱発泡材と、前記戸先縦框の見込面において、上下方向において前記戸先枠側の加熱発泡材が配置されていない分割部分に配置された戸先框側の加熱発泡材と、を備え、前記吊元加熱発泡材および前記戸先加熱発泡材は、所定温度で発泡する通常発泡加熱発泡材と、前記所定温度に比べて低温で発泡する低温発泡加熱発泡材とをそれぞれ備え、前記吊元枠側の加熱発泡材において、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材は、前記低温発泡加熱発泡材であり、前記戸先枠側の加熱発泡材において、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材は、前記低温発泡加熱発泡材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、火災時に障子が熱反りしても防火性能を高めることができる建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の建具を示す内観姿図である。
図2】前記建具の縦断面図である。
図3】前記建具の横断面図である。
図4】前記建具の吊元縦枠を示す側面図である。
図5】前記建具の戸先縦枠を示す側面図である。
図6】前記建具の吊元縦框を示す側面図である。
図7】前記建具の戸先縦框を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図3に示すように、本実施形態の建具1は、建物の開口に取り付けられた四方枠であるドア枠2と、このドア枠2内に配置された障子であるドア本体3とを備える片開きドアである。
【0010】
ドア枠2は、図1に示すように、上枠21、下枠22、吊元縦枠23、戸先縦枠24を四角枠状に接合して形成された四方枠である。
上枠21は、図2に示すように、見込方向に沿って設けられた見込面部211と、見込面部211から下方に延出された戸当り部212とを備える。見込面部211の室外側端部には下面に開口する保持溝が形成され、この保持溝には上枠21とドア本体3との間から雨風が浸入することを一次的に防ぐシール材215が取り付けられている。戸当り部212には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材216が取り付けられている。また、見込面部211の下面には、後述する加熱発泡材101が設けられている。
【0011】
下枠22は、図2に示すように、見込方向に沿って設けられた見込面部221と、見込面部221の室内側端部から連続して形成された見付け片部222とを備える。見付け片部222には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材226が取り付けられている。また、見付け片部222には、後述する加熱発泡材102、103が設けられている。
【0012】
吊元縦枠23は、図3に示すように、見込方向に沿って設けられた見込面部231と、見込面部231から戸先縦枠24側に延出された戸当り部232とを備える。戸当り部232には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材236が取り付けられている。
【0013】
戸先縦枠24は、図3に示すように、見込方向に沿って設けられた見込面部241と、見込面部241から吊元縦枠23側に延出された戸当り部242とを備える。戸当り部242には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材246が取り付けられている。
吊元縦枠23、戸先縦枠24の見込面部231、241には、後述する加熱発泡材120、130が設けられている。
【0014】
[ドア本体]
ドア本体3は、図1に示すように、上框30、下框40、吊元縦框50、戸先縦框60を枠組みして構成される枠体3Aと、枠体3Aの内部に組み込まれる面材である複層ガラス70とを備えて構成されている。枠体3Aは、上框30および下框40の小口を、吊元縦框50、戸先縦框60に当接させて固定している、いわゆる縦勝ちの枠体である。
吊元縦框50は、図1および図3に示すように、丁番80を介してドア枠2の吊元縦枠23に取り付けられる。これにより、ドア本体3はドア枠2に対して開閉自在に取り付けられている。なお、本実施形態の建具1は、外開きのドアであるため、障子であるドア本体3は、室内外方向の一方である第1方向(室外側)に開き、室内外方向の他方である第2方向(室内側)に閉じるように設けられている。
戸先縦框60の上下方向の中間位置には、レバーハンドル91および錠ケース92が取り付けられ、戸先縦枠24には錠ケース92から出没されるラッチボルトやデッドボルトが係合される錠受け93が取り付けられている。
【0015】
[下框]
下框40は、図2に示すように、アルミ押出形材からなる下框本体41と、アルミ押出形材からなる押縁46とを備える。
下框本体41は、室外側見付面部410と、室内側見付面部420と、内周側見込面部430と、外周側見込面部440とを備える。
【0016】
室外側見付面部410の上端側は、室内側見付面部420よりも上方に延出され、その上端部には、室内側に開口する保持溝を形成する保持溝部が形成されている。保持溝部は、断面略L字状に突出された2つの突片を備えて構成されている。保持溝部の下側には、後述する加熱発泡材111が設けられている。
【0017】
内周側見込面部430にはビスホールが形成され、ビスホールの室外側には第1水抜き穴435が形成され、ビスホールの室内側には第2水抜き穴436が形成されている。第1水抜き穴435および第2水抜き穴436は、下框本体41の長手方向に沿って複数箇所に形成されている。
内周側見込面部430には、押縁46が係合される第1係合片437が下框本体41の長手方向全長に渡って形成されている。第1係合片437は、ビスホールの上面から上方に延出され、さらに室内側に延出されて断面L字状に形成されている。
室内側見付面部420の上端には、室外側に突出されて押縁46が係合される第2係合片421が、下框本体41の長手方向全長に渡って形成されている。
【0018】
外周側見込面部440の室外側端部および室内側端部には、第3水抜き穴445および第4水抜き穴446が形成されている。第3水抜き穴445および第4水抜き穴446は、下框本体41の長手方向に延長された長孔とされ、下框本体41の長手方向に沿って複数箇所に形成されている。外周側見込面部440の下面には、後述する加熱発泡材113が設けられている。
【0019】
下框本体41の内周側見込面部430上には、セッティングブロック49が載置されている。本実施形態では、セッティングブロック49は、下框本体41の長手方向の一箇所、具体的には、下框本体41の長手方向中央位置よりも吊元側の位置に配置されている。セッティングブロック49は、第1係合片437を跨いで内周側見込面部430に載置されている。
【0020】
[押縁]
押縁46は、アルミ押出形材で構成され、図2に示すように、係合片部461と、パネル保持片部462とを備えて断面略L字状に形成されている。
係合片部461およびパネル保持片部462が連続する角部には、第2係合片421が係合される凹溝部が形成されている。押縁46は、係合片部461の室外側先端が、第1係合片437と内周側見込面部430との間の溝に係合し、凹溝部に第2係合片421が係合することで、下框本体41に取り付けられている。
また、係合片部461には、セッティングブロック49の配置位置に合わせて切欠が形成されている。
【0021】
下框40では、図2に示すように、下框本体41および押縁46によって、パネルである複層ガラス70を保持するパネル保持溝48が構成されている。
【0022】
[上框]
上框30は、図2に示すように、上框本体31と、押縁36とを備えている。上框本体31は、下框本体41と同じ断面形状のアルミ押出形材であり、押縁36は、押縁46と同じ断面形状のアルミ押出形材である。すなわち、上框本体31は、下框本体41と同様に、室外側見付面部310、室内側見付面部320、内周側見込面部330、外周側見込面部340を備えている。ただし、水抜き穴が形成されていない点が下框本体41と相違する。
押縁36は、切欠が形成されていない点が押縁46と相違するが、係合片部361、パネル保持片部362を備える等、その他の構成は押縁46と同一であるため説明を省略する。
このため、上框30においても、下框40と同様に、上框本体31および押縁36によって、パネル保持溝38が構成される。
【0023】
[吊元縦框]
吊元縦框50は、図3に示すように、縦框本体51と、押縁56とを備えている。
縦框本体51は、上框本体31と同様に中空筒状のアルミ押出形材で構成される。すなわち、縦框本体51は、室外側見付面部510、室内側見付面部520、内周側見込面部530、外周側見込面部540を備えている。押縁56は、係合片部561、パネル保持片部562を備える等、押縁46と同様の部品である。吊元縦框50は、丁番80を介して吊元縦枠23に取り付けられている。
【0024】
[丁番]
丁番80は、吊元縦枠23に固定される枠側丁番81と、吊元縦框50に取り付けられる框側丁番82とを備える旗丁番である。
枠側丁番81は、図4に示すように、羽根811と、羽根811から上方に突出する軸812とを備える。見込面部231には裏板235がネジ83で固定され、羽根811は見込面部231を介して裏板235にネジ84で固定されている。
框側丁番82は、図6に示すように、羽根821と、羽根821の端部に設けられて前記軸812が挿入される軸管822とを備える。外周側見込面部540には裏板541がネジ83で固定され、羽根821は外周側見込面部540を介して裏板541にネジ84で固定されている。
【0025】
[戸先縦框]
戸先縦框60は、図3に示すように、縦框本体61と、押縁66とを備えている。
縦框本体61は、縦框本体51と同様に中空筒状のアルミ押出形材で構成される。すなわち、縦框本体61は、室外側見付面部610、室内側見付面部620、内周側見込面部630、外周側見込面部640を備えている。押縁66は、係合片部661、パネル保持片部662を備える等、押縁46と同様の部品である。
戸先縦框60には、錠ケース92が戸先縦框60の外周側見込面部640にネジで固定されている。錠ケース92は、図7にも示すように、レバーハンドル91に連動して出没するラッチボルト921と、サムターンやシリンダーに連動して出没するデッドボルト922とを備える一般的な錠ケースである。
【0026】
縦框本体51、61の内周側見込面部530、630には、図3に示すように、セッティングブロック59、69が両面テープ等で取り付けられている。このため、押縁56、66には、セッティングブロック59、69が配置可能な切欠が形成されている。
縦框本体51、61の外周側見込面部540、640には、後述する加熱発泡材140、150が設けられている。
また、吊元縦框50、戸先縦框60においても、上框30や下框40と同様に、縦框本体51、61および押縁56、66によって、パネル保持溝58、68が構成される。
【0027】
[複層ガラス]
ドア本体3の枠体3Aの開口に取り付けられるパネルである複層ガラス70は、図2および図3に示すように、面材である室外側ガラス71および室内側ガラス72と、室外側ガラス71および室内側ガラス72間に配置されるスペーサー73および封着材74とを備える。
この複層ガラス70の外周縁部は、バックアップ材75およびシーリング材76を介して、各パネル保持溝38、48、58、68内に保持されている。
【0028】
室外側ガラス71は、網入ガラスからなる防火ガラスで構成され、室内側ガラス72は、例えば、Low-Eガラスで構成される。なお、室外側ガラス71を板ガラスで構成し、室内側ガラス72を防火ガラスで構成してもよいし、室外側ガラス71および室内側ガラス72を防火ガラスで構成してもよい。なお、防火ガラスとしては、網入ガラスに限定されず、耐熱強化ガラス等の各種の防火ガラスを用いることができる。
【0029】
スペーサー73は、室外側ガラス71および室内側ガラス72間の間隔を維持するものであり、内部に乾燥剤を充填したアルミ中空材などの公知のものを用いることができる。スペーサー73は、室外側ガラス71および室内側ガラス72の外周面よりも内側に配置されている。複層ガラス70は、室外側ガラス71、室内側ガラス72間においてスペーサー73で区画される中空部に、乾燥空気やアルゴンガスを封入したり、中空部を真空状態にしてユニット化することで、断熱性能を向上している。
【0030】
封着材74は、スペーサー73の外周側において、室外側ガラス71および室内側ガラス72の各外周端部間に形成される空間に充填されている。封着材74は、各ガラス71、72を強固に接着固定でき、中空部の水密性、気密性を確保できる材質であればよく、シリコン系シーリング材などを利用できる。なお、スペーサー73は各ガラス71、72に接着剤で接着されており、この接着剤により1次シールが構成され、封着材74により2次シールが構成される。
なお、枠体3A内に配置されるパネルとしては、室外側ガラス71、室内側ガラス72の2枚のガラスを備えるものに限定されず、室外側ガラス71、室内側ガラス72に加えて、各ガラス71、72間に配置される1枚以上の中間ガラスを備えるものでもよい。
【0031】
[加熱発泡材]
ドア枠2の上枠21、下枠22には、加熱発泡材が両面テープ等によって貼られている。具体的には、図2に示すように、上枠21の見込面部211の下面には、加熱発泡材101が上枠21の全長に渡って貼られている。下枠22の見付け片部222の室外面には、加熱発泡材102、103が貼られている。加熱発泡材102は、下枠22の戸先側端部から所定寸法範囲(例えば100mm)において、シール材226よりも下側に貼られている。加熱発泡材103は、下枠22の略全長に渡ってシール材226よりも上側に貼られている。
加熱発泡材101は通常発泡加熱発泡材であり、加熱発泡材102、103は低温発泡加熱発泡材である。通常発泡加熱発泡材は、発泡温度が所定温度(200℃程度)の加熱発泡材であり、例えばエポキシ系加熱発泡材などである。低温発泡加熱発泡材は、発泡温度が所定温度よりも低温(150℃程度)である加熱発泡材であり、例えば、低温膨張タイプのエポキシ系加熱発泡材などである。
【0032】
ドア本体3の下框40には、加熱発泡材111、113が両面テープ等で貼られている。下框40の室外側見付面部410において、パネル保持溝48の室外側側面には、加熱発泡材111が下框40の全長に渡って貼られている。下框40の外周側見込面部440の下面には、加熱発泡材113が貼られている。
加熱発泡材111は通常発泡加熱発泡材であり、加熱発泡材113は低温発泡加熱発泡材である。
【0033】
[吊元枠側の加熱発泡材]
吊元縦枠23の見込面部231には、図4に示すように、吊元枠側の加熱発泡材120が貼られている。吊元枠側の加熱発泡材120は、枠側丁番81を挟んで上下方向に分割されて設けられている。本実施形態では、吊元縦枠23には上下2箇所に枠側丁番81が固定されているため、吊元枠側の加熱発泡材120は、上側の枠側丁番81よりも上方に配置された加熱発泡材121と、上下の2つの枠側丁番81間に配置された加熱発泡材122と、下側の枠側丁番81よりも下方に配置された加熱発泡材123とで構成されている。
吊元縦枠23の見込面部231の上端部には、上枠21の小口との間に配置される上枠シーラー237が配置され、見込面部231の下端部には、下枠22の小口との間に配置される下枠シーラー238が配置される。このため、加熱発泡材121は、上枠シーラー237と上側の枠側丁番81との間に配置され、加熱発泡材123は、下側の枠側丁番81と下枠シーラー238との間に配置されている。また、加熱発泡材121、122の下端は、ネジ83のネジ穴を塞がないように、ネジ83の高さ位置よりも上方、具体的には裏板235の上端縁とほぼ同じ高さ位置に設定されている。さらに、加熱発泡材121~123は、見込面部231において、見込方向の中央位置よりも室外側つまりドア本体3の開き方向(第1方向)側に配置されている。
加熱発泡材121、122は通常発泡加熱発泡材であり、加熱発泡材123は低温発泡加熱発泡材である。吊元縦枠23の高さ方向の上部や中部は、火災時に比較的温度が上昇しやすいため、加熱発泡材121、122に通常発泡加熱発泡材を用いても発泡が遅れることはない。また、吊元縦枠23の下部は火災時に温度が上昇し難いが、加熱発泡材123は低温発泡加熱発泡材であるため、発泡タイミングが遅れることを防止できる。
これらの加熱発泡材121~123は、見込面部231に両面テープによって貼り付けられ、さらに脱落防止用の皿タッピングネジ125によっても固定されている。
【0034】
[戸先枠側の加熱発泡材]
戸先縦枠24の見込面部241には、図5に示すように、戸先枠側の加熱発泡材130が貼られている。戸先枠側の加熱発泡材130は、錠受け93を挟んで上下方向に分割され、錠受け93よりも上方に配置された加熱発泡材131と、錠受け93よりも下方に配置された加熱発泡材132と、錠受け93よりも下方において加熱発泡材132と隣接して配置された加熱発泡材133とで構成されている。
戸先縦枠24の見込面部241の上端部には、上枠21の小口との間に配置される上枠シーラー247が配置され、見込面部241の下端部には、下枠22の小口との間に配置される下枠シーラー248が配置される。このため、加熱発泡材131は、上枠シーラー247と錠受け93との間に配置され、加熱発泡材132は、錠受け93と下枠シーラー248との間に配置されている。さらに、加熱発泡材131、132は、見込面部241において、見込方向の中央位置よりも室外側つまりドア本体3の開き方向(第1方向)側に配置されている。
加熱発泡材133は、加熱発泡材132の室内側に隣接して配置されている。加熱発泡材133の下端は、加熱発泡材132の下端と同じ高さ位置とされ、上端は加熱発泡材132の上端よりも低い高さ位置とされている。すなわち、加熱発泡材133は、戸先縦枠24の下端側から所定の高さ位置までの範囲に配置されている。
加熱発泡材131~133は、低温発泡加熱発泡材である。このため、戸先縦枠24において、火災時に温度が上昇し難い下部に配置された加熱発泡材132、133の発泡タイミングが遅れることを防止できる。
これらの加熱発泡材131~133は、見込面部241に両面テープによって貼り付けられ、さらに脱落防止用の皿タッピングネジ135によっても固定されている。
【0035】
[吊元框側の加熱発泡材]
吊元縦框50には、図6に示すように、外周側見込面部540の外周面つまり吊元縦枠23に対向する面に、吊元框側の加熱発泡材140が貼り付けられている。吊元框側の加熱発泡材140は、枠側丁番81の高さ位置に合わせて、つまり框側丁番82の下側に設けられている。本実施形態では、吊元縦框50には上下2箇所に框側丁番82が固定されているため、吊元框側の加熱発泡材140は、上側の枠側丁番81の高さ位置に合わせて上側の框側丁番82の下側に配置された加熱発泡材141と、下側の枠側丁番81の高さ位置に合わせて下側の框側丁番82の下側に配置された加熱発泡材142とで構成されている。さらに、加熱発泡材141、142は、外周側見込面部540において、見込方向の中央位置よりも室外側つまりドア本体3の開き方向(第1方向)側に配置されている。
加熱発泡材141、142は、低温発泡加熱発泡材である。このため、吊元縦框50において、火災時に温度が上昇しにくい下部に配置された加熱発泡材142の発泡タイミングが遅れることを防止できる。
これらの加熱発泡材141、142は、吊元縦枠23に貼られる加熱発泡材121~123に比べて小さな幅寸法とされ、両面テープによって外周側見込面部540に貼り付けられ、さらに外周側見込面部540にネジ146で固定された外れ止め金具145によって固定されている。
【0036】
[戸先框側の加熱発泡材]
戸先縦框60には、図7に示すように、外周側見込面部640の外周面つまり戸先縦枠24に対向する面に、戸先框側の加熱発泡材150が貼り付けられている。戸先框側の加熱発泡材150は、錠受け93の高さ位置に合わせて、つまり錠ケース92の室外側端縁に沿って設けられている。さらに、加熱発泡材150は、外周側見込面部640において、見込方向の中央位置よりも室外側つまりドア本体3の開き方向(第1方向)側に配置されている。
加熱発泡材150は、通常発泡加熱発泡材である。加熱発泡材150は、戸先縦框60の上下方向の中部に配置され、下部に比べて温度が上昇しやすいため、加熱発泡材150の発泡タイミングが遅れることを防止できる。
この加熱発泡材150は、戸先縦枠24に貼られる加熱発泡材131、132に比べて小さな幅寸法とされ、両面テープによって外周側見込面部640に貼り付けられ、さらに外周側見込面部640にネジ156で固定された外れ止め金具155によって固定されている。
【0037】
以上に説明したように、吊元枠側の加熱発泡材120(加熱発泡材121、122、123)と、吊元框側の加熱発泡材140(加熱発泡材141、142)とで、火災時に発泡して吊元縦枠23および吊元縦框50間を塞ぐ吊元加熱発泡材が構成されている。このため、吊元加熱発泡材は、通常発泡加熱発泡材で構成された加熱発泡材121、122と、低温発泡加熱発泡材で構成された加熱発泡材123、141、142とを備える。
また、戸先枠側の加熱発泡材130(加熱発泡材131、132、133)と、戸先框側の加熱発泡材150とで、火災時に発泡して戸先縦枠24および戸先縦框60間を塞ぐ戸先加熱発泡材が構成されている。このため、戸先加熱発泡材は、通常発泡加熱発泡材で構成された加熱発泡材150と、低温発泡加熱発泡材で構成された加熱発泡材121、122、123とを備える。
【0038】
[実施形態の効果]
本実施形態の建具1によれば、火災時にドア本体3が熱反りし、吊元縦框50、戸先縦框60の上部や下部の表面温度があまり上昇しなくても、吊元縦枠23、戸先縦枠24の上部や下部に設けた加熱発泡材120、130が発泡するため、吊元縦枠23、戸先縦枠24と吊元縦框50、戸先縦框60との間を確実に塞ぐことができる。
吊元枠側の加熱発泡材120および戸先枠側の加熱発泡材130において、それぞれ最も下側に配置される加熱発泡材123、132、133を、低温発泡加熱発泡材で構成しているので、火災時に吊元縦枠23、戸先縦枠24の下端側の温度が上昇し難い場合でも、加熱発泡材123、132、133が発泡するタイミングが遅れることや、発泡しないことを防止でき、吊元縦枠23、戸先縦枠24と吊元縦框50、戸先縦框60間の隙間を確実に塞ぐことができる。
吊元縦枠23および戸先縦枠24の見込面部231、241に、上下方向に分割配置された加熱発泡材120、130を配置し、この分割部分に対応して吊元縦框50および戸先縦框60の見込面に加熱発泡材140、150を配置したので、吊元縦枠23および吊元縦框50間と、戸先縦枠24および戸先縦框60間とに上下方向に連続して加熱発泡材120、130、140、150を配置できる。このため、火災時には吊元縦枠23、戸先縦枠24および吊元縦框50、戸先縦框60間を発泡した加熱発泡材120、130、140、150で確実に塞ぐことができ、防火性能を向上できる。
さらに、吊元加熱発泡材では、加熱発泡材121、122に通常発泡加熱発泡材を用い、戸先加熱発泡材では、加熱発泡材150に通常発泡加熱発泡材を用いているので、すべてを低温発泡加熱発泡材で構成する場合に比べて、コストを低減できる。
【0039】
[変形例]
本発明の建具は、前記実施形態のドアに限定されず、外開き窓や内開き窓等の障子が窓枠に対して室内外方向に開閉される窓でもよいし、すべり出しヒンジ等を用いたすべり出し窓でもよい。また、建具は、複数の窓を組み合わせた段窓、連窓でもよい。
【0040】
丁番80は、吊元縦枠23および吊元縦框50の上下2箇所に設ける場合に限定されず、3箇所以上に設けてもよい。例えば、3箇所に丁番80を設けた場合、吊元縦枠23では、上枠シーラー237および上から1番目の枠側丁番81間と、上から1番目および2番目の枠側丁番81間とには通常発泡加熱発泡材を配置し、上から2番目および3番目の枠側丁番81間と、上から3番目の枠側丁番81および下枠シーラー238間とには低温発泡加熱発泡材を配置してもよい。すなわち、枠側丁番81間に配置される加熱発泡材は、通常発泡加熱発泡材または低温発泡加熱発泡材から適宜選択して設定すればよい。
【0041】
吊元框側の加熱発泡材140は、加熱発泡材141、142とも低温発泡加熱発泡材で構成されるものに限定されない。すなわち、火災時に吊元縦框50の上部は下部に比べて温度が上昇しやすいため、上側の加熱発泡材141は通常発泡加熱発泡材で構成し、下側の加熱発泡材142は低温発泡加熱発泡材で構成してもよい。ただし、前記実施形態のように、上下の加熱発泡材141、142を同じ低温発泡加熱発泡材で構成すれば、吊元框側の加熱発泡材140が1種類となり、容易に管理できる。
【0042】
前記実施形態では、戸先縦枠24の下部に2枚の加熱発泡材132、133を見込方向に並べて貼り付けることで、加熱発泡材の見込寸法を大きくしていたが、加熱発泡材131に比べて幅寸法の大きな1枚の加熱発泡材を貼り付けてもよい。また、戸先縦枠24の上部に配置される加熱発泡材131は通常発泡加熱発泡材で構成してもよい。
前記実施形態では、建具1は外開きのドアであるため、加熱発泡材120、130、140、150は、少なくとも吊元縦枠23、戸先縦枠24、吊元縦框50、戸先縦框60の見込方向の中央よりもドア開き側である室外側に配置していたが、見込方向中央位置などに配置してもよい。また、内開き窓では、縦枠および縦框の見込方向室内側に配置してもよい。
【0043】
[本発明のまとめ]
本発明の建具は、上枠、下枠、吊元縦枠、戸先縦枠を備える四方枠と、面材および前記面材の外周縁を保持する上框、下框、吊元縦框、戸先縦框を備える障子と、火災時に発泡して前記吊元縦枠および前記吊元縦框間を塞ぐ吊元加熱発泡材と、火災時に発泡して前記戸先縦枠および前記戸先縦框間を塞ぐ戸先加熱発泡材と、を有し、前記吊元加熱発泡材は、前記吊元縦枠の見込面において、上下方向に分割配置された吊元枠側の加熱発泡材と、前記吊元縦框の見込面において、上下方向において前記吊元枠側の加熱発泡材が配置されていない分割部分に配置された吊元框側の加熱発泡材と、を備え、前記戸先加熱発泡材は、前記戸先縦枠の見込面において、上下方向に分割配置された戸先枠側の加熱発泡材と、前記戸先縦框の見込面において、上下方向において前記戸先枠側の加熱発泡材が配置されていない分割部分に配置された戸先框側の加熱発泡材と、を備え、前記吊元加熱発泡材および前記戸先加熱発泡材は、所定温度で発泡する通常発泡加熱発泡材と、前記所定温度に比べて低温で発泡する低温発泡加熱発泡材とをそれぞれ備え、前記吊元枠側の加熱発泡材において、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材は、前記低温発泡加熱発泡材であり、前記戸先枠側の加熱発泡材において、少なくとも最も下側に配置される加熱発泡材は、前記低温発泡加熱発泡材であることを特徴とする。
本発明の建具によれば、火災時に障子が熱反りし、吊元縦框、戸先縦框の上部や下部の表面温度があまり上昇しなくても、吊元縦枠、戸先縦枠の上部や下部に設けた加熱発泡材が発泡するため、吊元縦枠、戸先縦枠と吊元縦框、戸先縦框との間を確実に塞ぐことができる。
吊元枠側の加熱発泡材および戸先枠側の加熱発泡材において、それぞれ最も下側に配置される加熱発泡材を、低温発泡加熱発泡材で構成しているので、火災時に縦枠の下端側の温度が上昇しにくい場合でも、加熱発泡材が発泡するタイミングが遅れることや、発泡しないことを防止でき、縦枠と縦框間の隙間を確実に塞ぐことができる。
吊元縦枠および戸先縦枠の見込面に、上下方向に分割配置された加熱発泡材を配置し、この分割部分に対応して吊元縦框および戸先縦框の見込面に加熱発泡材を配置したので、吊元縦枠および吊元縦框間と、戸先縦枠および戸先縦框間とに上下方向に連続して加熱発泡材を配置でき、火災時には各縦枠および縦框間を発泡した加熱発泡材で確実に塞ぐことができ、防火性能を向上できる。
さらに、吊元加熱発泡材および戸先加熱発泡材は、通常発泡加熱発泡材および低温発泡加熱発泡材を備えるため、すべてを低温発泡加熱発泡材で構成する場合に比べてコストを低減できる。
【0044】
本発明の建具において、前記吊元縦枠および前記吊元縦框には、上下方向に離れて配置された複数の丁番が取り付けられ、前記丁番は、前記吊元縦枠に固定される枠側丁番と、前記吊元縦框に固定される框側丁番とを備え、前記吊元枠側の加熱発泡材は、前記枠側丁番を挟んで上下方向に分割配置され、最も上側に配置される加熱発泡材は前記通常発泡加熱発泡材であり、前記枠側丁番間に配置される加熱発泡材は前記通常発泡加熱発泡材または前記低温発泡加熱発泡材であり、前記吊元框側の加熱発泡材は、上下方向において前記枠側丁番の高さ位置に配置され、前記低温発泡加熱発泡材で構成されていることが好ましい。
本発明の建具によれば、吊元縦枠では、枠側丁番の位置を基準に加熱発泡材を貼り付ければよいため、加熱発泡材を容易にかつ正確に位置決めして配置できる。また、吊元縦枠に配置した加熱発泡材は、火災時に枠側丁番に干渉することなく確実に縦框に向かって発泡するため、縦框との隙間を確実に塞ぐことができる。さらに、吊元枠側の加熱発泡材のうち、最も上側に配置される加熱発泡材を通常発泡加熱発泡材としたので、すべてを低温発泡加熱発泡材で構成する場合に比べてコストを低減できる。また、縦枠の上部は火災時に熱が上昇しやすいため、低温発泡加熱発泡材に比べて発泡温度が高い通常発泡加熱発泡材を用いても、発泡タイミングが遅れることを防止できる。
枠側丁番間の加熱発泡材は、通常発泡加熱発泡材または低温発泡加熱発泡材であるため、火災時の熱の上昇を考慮して適切な加熱発泡材を選択でき、コストを抑制しつつ、確実に発泡させることができる。
枠側丁番の高さ位置に配置される吊元框側の加熱発泡材は、低温発泡加熱発泡材で構成したので、火災時の障子の熱反りなどによって吊元縦框の下部の温度が上昇しにくい場合でも発泡タイミングが遅れることを防止できる。
以上により、火災時には、吊元縦枠および吊元縦框間を、吊元枠側の加熱発泡材および吊元框側の加熱発泡材で確実にかつ早期に塞ぐことができる。また、吊元枠側および吊元框側の加熱発泡材において、コストが高い低温発泡加熱発泡材は必要となる箇所のみに配置しており、その他の部分は低コストの通常発泡加熱発泡材を配置しているので、防火性能を確保でき、かつ、コストも抑えることができる。
【0045】
本発明の建具において、前記戸先縦框には、錠ケースが取り付けられ、前記戸先縦枠には、前記錠ケースに対応する錠受けが取り付けられ、前記戸先枠側の加熱発泡材は、前記錠受けを挟んで上下方向に分割配置され、前記錠受けの上側および下側に配置される加熱発泡材は前記低温発泡加熱発泡材であり、前記戸先框側の加熱発泡材は、上下方向において前記錠受けの高さ位置に配置され、前記通常発泡加熱発泡材で構成されていることが好ましい。
本発明の建具によれば、戸先縦枠では、錠受けの位置を基準に加熱発泡材を貼り付ければよいため、加熱発泡材を容易にかつ正確に位置決めして配置できる。また、戸先縦枠に配置した加熱発泡材は、火災時に錠受けに干渉することなく確実に戸先縦框に向かって発泡するため、戸先縦框との隙間を確実に塞ぐことができる。さらに、戸先枠側の加熱発泡材は、低温発泡加熱発泡材を用いたので、早いタイミングで発泡することができ、熱反りしやすい戸先縦框との間を早期に塞ぐことができる。また、戸先縦框に設けた加熱発泡材は、通常発泡加熱発泡材であるため、コストを抑制できる。
【0046】
本発明の建具において、前記障子は、室内外方向の一方である第1方向に開き、前記室内外方向の他方である第2方向に閉じるように前記四方枠に取り付けられ、前記吊元加熱発泡材および前記戸先加熱発泡材は、前記吊元縦枠および前記戸先縦枠の見込面と、前記吊元縦框および前記戸先縦框の見込面とにおいて、少なくとも見込方向の中央よりも第1方向側の範囲に貼り付けられていることが好ましい。
本発明の建具によれば、障子を開く方向である第1方向側は、火災時に障子の熱反りによって隙間が発生しやすいが、各加熱発泡材を少なくとも見込方向の中央よりも第1方向側の範囲に貼り付けているので、障子が熱反りしても加熱発泡材によって縦枠および縦框間の隙間を塞ぐことができる。
【0047】
本発明の建具において、前記戸先縦枠の下部に取り付けられる前記戸先枠側の加熱発泡材の見込方向の幅寸法は、前記戸先縦枠の上部に取り付けられる前記戸先枠側の加熱発泡材の見込方向の幅寸法に比べて大きいことが好ましい。
本発明の建具によれば、戸先縦枠の下部は、火災時に上部に比べて温度が上昇しにくいが、下部に設けられる加熱発泡材の見込方向の幅寸法を上部に比べて大きくしているので、室内火災時などに下部の加熱発泡材を火炎に近づけることができ、上部の加熱発泡材に比べて発泡タイミングが遅れることを抑制できる。
【符号の説明】
【0048】
1…建具、2…ドア枠、3…ドア本体、21…上枠、22…下枠、23…吊元縦枠、24…戸先縦枠、30…上框、40…下框、50…吊元縦框、60…戸先縦框、70…複層ガラス、80…丁番、81…枠側丁番、82…框側丁番、92…錠ケース、93…錠受け、120…加熱発泡材、121…加熱発泡材、122…加熱発泡材、123…加熱発泡材、130…加熱発泡材、131…加熱発泡材、132…加熱発泡材、133…加熱発泡材、140…加熱発泡材、141…加熱発泡材、142…加熱発泡材、150…加熱発泡材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7