(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179916
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ノズルの詰り検出方法及び検出装置
(51)【国際特許分類】
B22D 11/124 20060101AFI20241219BHJP
B05B 15/50 20180101ALI20241219BHJP
B22D 11/22 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B22D11/124 G
B05B15/50
B22D11/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099252
(22)【出願日】2023-06-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000142023
【氏名又は名称】株式会社共立合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信宏
(72)【発明者】
【氏名】畠中 健
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】千本 剛
【テーマコード(参考)】
4D073
4E004
【Fターム(参考)】
4D073AA05
4D073AA10
4D073BB01
4D073BB03
4D073CA18
4D073CB02
4D073CC15
4D073DA05
4E004KA17
4E004KA20
4E004MC03
4E004SC07
(57)【要約】
【課題】取り付けが容易で、多数のノズルに適用しても施工性が高く、メンテナンス性に優れたノズル詰り検出装置、並びにこの装置を備えたノズル及びこの装置を用いてノズル詰りを検出又は検知する方法を提供する。
【解決手段】発電モジュール6と、この発電モジュール6で生じた電力で駆動可能であり、かつノズル1及び/又はこのノズル1が取り付けられた配管の詰りを検出可能なセンサ7とを用いてノズル詰り検出装置2を調製する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電モジュールと、この発電モジュールで生じた電力で駆動可能であり、かつノズル及び/又はこのノズルが取り付けられた配管の詰りを検出可能なセンサとを備えたノズル詰り検出装置。
【請求項2】
前記ノズル周辺の雰囲気温度よりも低温な流体を噴射又は噴霧するノズルの詰りを検出するためのノズル詰り検出装置であって、
前記発電モジュールが、一方の面に形成された受熱部と他方の面に形成された放熱部とを有する熱電発電モジュールであり、この熱電発電モジュールの前記放熱部が、噴射又は噴霧前の前記流体の流路側に向けて配置されている請求項1記載のノズル詰り検出装置。
【請求項3】
前記雰囲気温度が、80℃以上である請求項2記載のノズル詰り検出装置。
【請求項4】
前記ノズルが、製鉄プロセスで使用されるノズルである請求項1~3のいずれか一項に記載のノズル詰り検出装置。
【請求項5】
少なくとも前記発電モジュールを内部に収容して保護可能な保護ケースを備えた請求項1~3のいずれか一項に記載のノズル詰り検出装置。
【請求項6】
前記センサで得られた情報又は信号を送信可能な無線通信機を備え、この無線通信機が前記保護ケースに収容され、この保護ケースが少なくとも樹脂で形成された樹脂部を含む請求項5記載のノズル詰り検出装置。
【請求項7】
前記保護ケースの内壁に取り付けられた伝熱部材を備え、この伝熱部材に対向して前記熱電発電モジュールの受熱部が配置されている請求項5記載のノズル詰り検出装置。
【請求項8】
前記保護ケースの内壁で、かつ前記樹脂部の一部の領域に取り付けられたプレート状の伝熱部材を備え、この伝熱部材に所定の間隔をおいて対向して、前記熱電発電モジュールの受熱部が配置されている請求項6記載のノズル詰り検出装置。
【請求項9】
前記流体の流路が、平面状に広がる平面状流路を少なくとも含み、この平面状流路に対向して前記熱電発電モジュールの放熱部が配置されている請求項2又は3記載のノズル詰り検出装置。
【請求項10】
前記流体の流路が、流体をノズル先端に向けて供給するための供給流路と、この供給流路から分岐され、かつ途中で閉じられた閉塞流路とを含み、この閉塞流路が、前記平面状流路を含む請求項9記載のノズル詰り検出装置。
【請求項11】
請求項1又は2記載のノズル詰り検出装置を備えたノズル。
【請求項12】
請求項1又は2記載のノズル詰り検出装置を用いて、ノズル及び/又はこのノズルが取り付けられた配管の詰りを検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一流体ノズル、二流体ノズルなどのノズルの振動又は温度を測定し、ノズルの詰りを検出するノズル詰り検出装置、並びにこの装置を備えたノズル及びこの装置を用いてノズル詰りを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備の二次冷却帯においては、多数のスプレーノズル(又は連続鋳造機用二次冷却ノズル)を使用し、冷却媒体(水又は水と空気との混合流体)を噴霧して、溶鋼を冷却しながら鋳片が製造されている。高品質な鋳片を製造するためには、二次冷却ノズルは幅方向に均一に冷却することが求められる。
【0003】
一方、高温で鋳造される鋳片は数百℃にもなるため、二次冷却ノズルは、輻射熱や噴霧冷却水の蒸気に晒され、非常に過酷な環境で使用される。そのため、冷却水の噴射、乾燥を繰り返す過程で、冷却水中の成分が析出して、ノズル又は配管に異物として付着し易い。また、冷却に使用される水には、工場水などの水質の悪いリサイクル水が使用されることが多く、上流配管からも異物が流れてくる。このような異物は、ノズル詰りを引き起こす原因となる。ノズル詰りが発生すると、ノズル本来の性能を発揮できなくなるため、鋳片が均一に冷却されず、表面割れや内部割れを生じるなど、鋳片の品質低下を招くおそれがある。そのため、従来から、ノズル詰りを検知する方法が多数検討されてきた。
【0004】
例えば、特開平5-309465号公報(特許文献1)には、圧力計をスプレーノズルに内蔵し、スプレーノズルの内部水圧を測定し、実測値と閾値又は理想値とを比較して、ノズル毎に詰りを判定する方法が開示されている。
【0005】
特開2003-170256号公報(特許文献2)には、スプレーノズルの基端側の内部と冷却水の送給基管とに熱電対を設置し、ノズル内の冷却水温度と前記送給基管との温度差を用いて、ノズル詰りを判別する方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1及び2の方法では、圧力計や熱電対などのセンサをノズル内部に取り付けるため、冷却水の噴霧パターンに影響するおそれがあるのみならず、ノズルの構造が複雑となる。また、ノズル内部にセンサの設置スペースを確保する必要があり、適用可能なノズルが制限される。さらに、圧力変動、温度変動を利用する方法では、初期の詰り(小さな詰り)は検出困難である。
【0007】
特開平5-177323号公報(特許文献3)には、ダミーバーに圧力検出センサと振動検出センサとそれぞれの信号処理装置と記憶装置とを備え、ノズルからの冷却媒体噴射圧力及び噴射振動の双方の測定結果から、総合的にノズル詰りを検出する方法が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献3の方法では、二流体(水及び空気)ノズルの詰りを検知可能であるものの、圧力及び振動の2種類以上のセンサを組み合わせる必要があり、検知方法が複雑となる。また、噴射圧力及び噴射振動は、噴射液の流量に依存するものの、二流体ノズルでは、詰り率の低い初期段階では噴射流量にほとんど変化がみられず、詰り率が高くノズルが閉塞に近い段階で噴射流量が急激に変化する性質がある。そのため、特許文献3の方法では、二流体ノズルの詰りを早期に検知するのは困難である。また、センサを内蔵したダミーバーは、冷却媒体が噴射される鋳片に先行して移動するため、鋳片などの冷却対象物(噴霧対象物)に対して冷却媒体を噴霧している噴霧中(稼働中)のノズルを診断できない。また、ダミーバーにセンサを設置するため、ノズル詰りを検知したとしても、複数のノズルのうち、実際に詰りが発生したノズルの特定は困難なため、冷却帯の複数のノズルを点検し、詰りが発生したノズルを特定して交換するか、若しくは前記冷却帯の全てのノズルを交換する必要がある。
【0009】
特開平11-104535号公報(特許文献4)には、インクジェットプリンタのインクなどを吐出するノズル詰りの検知方法として、振動板に振動センサを設け、ノズルから吐出物を振動板に向けて吐出させ、吐出物の衝突による振動に基づいて、ノズル詰りを検知する方法及び検知装置が開示されている。
【0010】
特許文献4では、吐出先の振動板にセンサを設置するため、特許文献3と同様に、印画中(稼働中)にノズル詰りを検知できず、定期的にノズルを検査する必要があるとともに、複数のノズルのうち、実際に詰りが発生したノズルの特定も困難である。
【0011】
特開2013-35027号公報(特許文献5)には、冷却水及び空気の流量を調整する各流調弁の二次側における各圧力及び各流量を測定し、それぞれ予め定めた圧力-流量基準線と対比して各圧力差を求め、冷却水及び空気の各圧力差の組み合わせで二流体スプレーノズルの異常を検知する方法が開示されている。
【0012】
特許文献5では、二流体ノズルの詰りが検知可能であるが、圧力計及び流量計と2種類以上のセンサを各流調弁にそれぞれ設置し、冷却水側及び空気側の各圧力差を算出後、各圧力差の組み合わせでノズルの異常を検知するため、構造及び検知方法が複雑である。また、センサを冷却帯の各ゾーンの流調弁の二次側に設置するため、冷却帯の中から異常が発生しているゾーンの特定は可能であっても、実際に異常が発生したノズルの特定は困難である。
【0013】
特許文献1~5におけるこれらの問題点に対して、特開2019-122985号公報(特許文献6)には、振動センサをノズルに設置してその振動を測定し、測定値と閾値とを比較してノズル詰りを検出する方法及び検出装置について開示されている。
【0014】
なお、特開2020-137403号公報(特許文献7)には、熱電発電モジュールと、このモジュールから発生する電力によって駆動する振動センサと、このセンサの検出データを送信する無線通信機とを備えた熱電発電装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5-309465号公報
【特許文献2】特開2003-170256号公報
【特許文献3】特開平5-177323号公報
【特許文献4】特開平11-104535号公報
【特許文献5】特開2013-35027号公報
【特許文献6】特開2019-122985号公報
【特許文献7】特開2020-137403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献6のように、各ノズルにセンサを設置してノズル詰りを検出する場合、通常、センサと、センサからの信号を受信・記録・モニタするための分析装置[管理用端末又はコンピュータ(PC:パソコン)など]などとを繋ぐケーブルや、センサに電力を供給するための電源ケーブルなどを接続する必要がある。しかし、連続鋳造機の二次冷却ノズルは、多数のノズルが連なった二次冷却帯として使用され、その数は膨大なものとなるため、特許文献6の方法では大量のケーブルを各ノズル(又はセンサ)に接続する必要があり、ケーブル同士の絡み合いなども生じることから、配線すること自体が困難である。
【0017】
また、連続鋳造機に使用される二次冷却ノズルは、輻射熱や噴霧冷却水の蒸気などに晒される非常に過酷な環境で使用されるため、ケーブルが損傷し易い。そのため、各ノズル(又はセンサ)にケーブルを配線できたとしても、稼働中に損傷したケーブルを、連続鋳造機を停止して修理又は交換する必要が生じるだけでなく、膨大な量のケーブルの中から、損傷したケーブルを特定するのも煩雑なため、ノズル詰り検出装置自体のメンテナンスに多大な時間を要し、かえって連続鋳造機を効率よく稼働できない。
【0018】
また、特許文献7に記載の装置は、ポンプを作動させるモータなどの機器の稼働(駆動又は運転)で生じた熱を熱源として電力を発生させ、得られた電力で駆動する振動センサにより、稼働中に発生する機器(モータ)の振動を検出して異常を検知するものであり、自身では一般的に発熱せず、熱源とはならないノズルを対象とするものではなく、また、詰りを検出する装置でもない。
【0019】
従って、本発明の目的は、取り付けが容易で、多数のノズルに適用しても施工性が高く、メンテナンス性に優れたノズル詰り検出装置、並びにこの装置を備えたノズル及びこの装置を用いてノズル詰りを検出又は検知する方法を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、過酷な環境下であっても使用可能で耐久性(又は耐熱性)に優れるとともに、ノズル詰りを精度よく又は効率よく検出可能なノズル詰り検出装置、並びにこの装置を備えたノズル及びこの装置を用いてノズル詰りを検出又は検知する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ノズル詰りを検出するためのセンサを発電モジュールから得られた電力で駆動すると、二次冷却ノズルのように過酷な環境下で大量のノズルを用いる場合であっても、ケーブル(又は配線)同士の絡み合いなどを抑制し易く、施工性(取り付け容易性)やメンテナンス性を向上できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記態様などを包含していてもよい。
【0022】
態様[1]:発電モジュールと、この発電モジュールで生じた電力で駆動可能であり、かつノズル及び/又はこのノズルが取り付けられた配管の詰りを検出可能なセンサとを備えたノズル詰り検出装置。
【0023】
態様[2]:前記ノズル周辺の雰囲気温度よりも低温な流体を噴射又は噴霧するノズルの詰りを検出するためのノズル詰り検出装置であって、
前記発電モジュールが、一方の面に形成された受熱部と他方の面に形成された放熱部とを有する熱電発電モジュールであり、この熱電発電モジュールの前記放熱部が、噴射又は噴霧前の前記流体の流路側に向けて配置されている態様[1]記載のノズル詰り検出装置。
【0024】
態様[3]:前記雰囲気温度が、80℃以上である態様[2]記載のノズル詰り検出装置。
【0025】
態様[4]:前記ノズルが、製鉄プロセスで使用されるノズルである態様[1]~[3]のいずれかに記載のノズル詰り検出装置。
【0026】
態様[5]:少なくとも前記発電モジュールを内部に収容して保護可能な保護ケースを備えた態様[1]~[4]のいずれかに記載のノズル詰り検出装置。
【0027】
態様[6]:前記センサで得られた情報又は信号を送信可能な無線通信機を備え、この無線通信機が前記保護ケースに収容され、この保護ケースが少なくとも樹脂で形成された樹脂部を含む態様[5]記載のノズル詰り検出装置。
【0028】
態様[7]:前記保護ケースの内壁に取り付けられた伝熱部材を備え、この伝熱部材に対向して前記熱電発電モジュールの受熱部が配置されている態様[5]又は[6]記載のノズル詰り検出装置。
【0029】
態様[8]:前記保護ケースの内壁で、かつ前記樹脂部の一部の領域に取り付けられたプレート状の伝熱部材を備え、この伝熱部材に所定の間隔をおいて対向して、前記熱電発電モジュールの受熱部が配置されている態様[6]又は[7]記載のノズル詰り検出装置。
【0030】
態様[9]:前記流体の流路が、平面状に広がる平面状流路を少なくとも含み、この平面状流路に対向して前記熱電発電モジュールの放熱部が配置されている態様[1]~[8]のいずれかに記載のノズル詰り検出装置。
【0031】
態様[10]:前記流体の流路が、流体をノズル先端に向けて供給するための供給流路と、この供給流路から分岐され、かつ途中で閉じられた閉塞流路とを含み、この閉塞流路が、前記平面状流路を含む態様[9]記載のノズル詰り検出装置。
【0032】
態様[11]:態様[1]~[10]のいずれかに記載のノズル詰り検出装置を備えたノズル。
【0033】
態様[12]:態様[1]~[10]のいずれかに記載のノズル詰り検出装置を用いて、ノズル及び/又はこのノズルが取り付けられた配管の詰りを検出する方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明のノズル詰り検出装置では、ノズル詰りを検出するためのセンサを発電モジュールから得られた電力で駆動するため、長いケーブル(電源ケーブルなど)による配線を削減又はなくすことができ、取り付け(又は取り回し)が容易である。そのため、多数のノズルに適用してもケーブル(又は配線)同士の絡み合いなどを抑制でき、有効に施工性(取り付け容易性)を向上できるのみならず、メンテナンス性に優れている。センサで得られた情報又は信号を無線通信機で送信すると、施工性及びメンテナンス性をより一層向上できる。また、保護ケースを備えた検出装置では、耐久性(又は耐熱性)に優れ、過酷な環境下であっても使用できるとともに、所定の保護ケース内部の特定の位置に熱電発電モジュールを配置すると、より一層ノズル詰りを精度よく又は効率よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明のノズル詰り検出装置を備えたノズルの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すノズル検出装置のA-A線概略断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すノズルの取付ベース部の概略平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す取付ベース部の(a)D-D線概略断面図、(b)C-C線概略断面図、(c)B-B線概略断面図、及び(d)概略右側面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す取付ベース部の(a)E-E線概略断面図、及び(b)F-F線概略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明のノズル詰り検出装置を備えたノズルの他の例を示す概略部分分解図である。
【
図9】
図9は、本発明のノズル詰り検出装置を備えた連続鋳造設備の二次冷却帯の一例を示す(a)概略側面図、及び(b)概略底面図である。
【
図10】
図10は、実施例8-1(伝熱部材なし)の解析メッシュ(簡易モデル)である。
【
図11】
図11は、実施例8-1(伝熱部材なし)の温度分布を示すコンター図(等値線図)である。
【
図12】
図12は、実施例8-1(伝熱部材なし)の解析メッシュ(簡易モデル)中央部断面の温度分布を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例8-2(伝熱部材あり、外側)の解析メッシュ(簡易モデル)である。
【
図14】
図14は、実施例8-2(伝熱部材あり、外側)の温度分布を示すコンター図(等値線図)である。
【
図15】
図15は、実施例8-2(伝熱部材あり、外側)の解析メッシュ(簡易モデル)中央部断面の温度分布を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例8-3(伝熱部材あり、内側)の解析メッシュ(簡易モデル)である。
【
図17】
図17は、実施例8-3(伝熱部材あり、内側)の温度分布を示すコンター図(等値線図)である。
【
図18】
図18は、実施例8-3(伝熱部材あり、内側)の解析メッシュ(簡易モデル)中央部断面の温度分布を示すグラフである。
【
図19】
図19は、実施例9-1(平面状流路なし)の解析メッシュ(簡易モデル)である。
【
図20】
図20は、実施例9-1(平面状流路なし)の温度分布を示すコンター図(等値線図)である。
【
図21】
図21は、実施例9-2(平面状流路あり)の解析メッシュ(簡易モデル)である。
【
図22】
図22は、実施例9-2(平面状流路あり)の温度分布を示すコンター図(等値線図)である。
【
図23】
図23は、実施例9-1(平面状流路なし)及び9-2(平面状流路あり)の解析メッシュ(簡易モデル)中央部断面の温度分布の一部を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明のノズル詰り検出装置を備えたノズルの一例を示す概略図であり、
図2は、
図1に示すノズル検出装置のA-A線概略断面図であり、
図3は、
図1に示すノズルの概略分解斜視図であり、この例では、連続鋳造設備の二次冷却ノズル(水と空気との二流体ノズル)に適用した例が示されている。
【0038】
図1~3に示すように、ノズル(二次冷却ノズル又は二流体ノズル)1は、ノズル詰り検出装置2と、この検出装置2に一方の端部(上流端)が接続された円筒状のノズル本体(パイプ部)3と、このノズル本体3の他方の端部(下流端)に取り付けられたノズルチップ4とを備えている。検出装置2は、その土台を構成するブロック状又は太幅で厚板なプレート状のベース部(取付ベース部又は取付ベースプレート)5を備えており、この取付ベース部5の内部には、流体(水及び空気)が通過する流路が形成され、この流路の下流端(流体の出口側)に、ノズル本体3の上流端が接続されている。すなわち、取付ベース部5は、内部に各流体が混合される混合空間(又は混合流
路)が形成され、かつ前記ノズル本体3が貫通した状態で取付可能である。
【0039】
また、取付ベース部5内部の流路の2つの上流端(各流体の入口側)には、継手(空気オリフィスを内蔵したニップル)12を介して給気配管(空気供給配管又は空気ヘッダー、図示せず)が接続され、継手(水オリフィスを内蔵したニップル)13を介して給水配管(水供給配管又は水ヘッダー、図示せず)が接続されており、これらの継手12,13を介して、給気配管及び給水配管から、夾雑物がろ過された空気及び水(工場水など)がそれぞれ供給される。
図4~6に示すように、継手12を経由して供給された空気は、円柱状(断面円形状)の空気供給流路(第1の供給流路)15に、継手13を経由して供給された水は、円柱状(断面円形状)の水供給流路(第2の供給流路)16(16a)にそれぞれ流入する。この空気供給流路(第1の供給流路)15と水供給流路(第2の供給流路)16aとは、それぞれノズル1(又はノズル本体3)の長手方向(ノズル軸方向又は噴射方向)に沿って、互いに略平行に形成されており、このうち、空気供給流路(第1の供給流路)15が、ノズル1(又はノズル本体3)と同一軸線上に形成されている。これに対して、水供給流路(第2の供給流路)16(16a)は、空気供給流路(第1の供給流路)15に隣接して平行に延び、その途中で空気供給流路15側に向かって略直角に屈曲し、この屈曲部から延びる下流側の水供給流路16bが、混合部(混合室又は合流部)17で空気供給流路15と合流する。すなわち、各継手12,13を経由して供給された空気及び水は、混合部(混合室又は合流部)17で合流して混合され、混合流体として下流側(ノズル本体3側)へ向かい、ノズルチップ4のオリフィス(吐出口又は噴霧口)から気液混合流体として噴霧又は噴射される。
【0040】
なお、水供給流路(第2の供給流路)16(16a,16b)は、前記屈曲部において、閉じられた2つの閉塞流路18(18a,18b),19に分岐している。第1の閉塞流路18(18a,18b)は、前記屈曲部から取付ベース部5の厚み方向(水供給流路16a,16bの各軸線に対する垂直方向)に延びる円柱状流路18aと、この円柱状流路18aの端部から半径方向(取付ベース部5の面方向)に放射状又は平面状(平坦状)(高さに対して径が大きな円柱状)に広がる平面状又は平坦状流路(液溜り部又は水溜り部)18bとを備え、封止材又はシール材(ガスケット又はOリング)11を介して、厚み1~5mm程度の金属製(ステンレス鋼など)の流体封止プレート(水漏防止板)10により封止又は閉じられている。一方、第2の閉塞流路19は、前記屈曲部から、水供給流路(第2の供給流路)16bと同一軸線上を逆方向に延びる円柱状(断面円形状)に形成され、継手(プラグ)14で閉じられている。なお、第2の閉塞流路19は、必ずしも備えていなくてもよい。
【0041】
なお、流体封止プレート10は、封止材11を押し付けて封止する形態で4つの締結部材(ネジ部材)22により取付ベース部5に取り付けられているが、取付ベース部5の取付位置には、流体封止プレート10の形状(又は厚み)に対応して切り欠かれた凹部又は段部(係合段部)と、この係合段部よりも小さく、平面状又は平坦状流路18b(又は封止材11)の形状に対応して切り欠かれた凹部又は段部とが、それぞれ順次に(階段状に)形成されており、取付状態において、流体封止プレート10の外側の面[放熱部(放熱面)6bとの接触面]は、取付ベース部5の取付面と略同一平面上に位置する。
【0042】
図3に示すように、ノズル詰り検出装置2のベース部(取付ベース部)5の一方の面[取付面、又は流体封止プレート(水漏防止板)10側の面]には、発電モジュール(熱電発電モジュール)6と、この発電モジュール6から延びるケーブル(電源ケーブル)6cに接続されたセンサ(振動センサ又は加速度検出器)7と、前記ケーブル6cを収容するための配線ケース(配線収容箱又は配線区画壁)20(20a,20b)と、これら全体を内部に収容又は保護(カバー)するための保護ケース8(8a,8b)とが取り付けられている。
【0043】
発電モジュール(熱電発電モジュール)6は、ゼーベック効果を利用して電力を発生可能なモジュールであり、一方の面に形成された受熱部(受熱面)6aと、他方の面(受熱面6aの裏面)に形成された放熱部(放熱面)6bとに温度差(温度勾配)を生じさせることで発電でき、得られた電力はケーブル(電源ケーブル)6cを介してセンサ7に送電又は出力される。特許文献7に記載されているように、熱電発電モジュールは、通常、受熱部(受熱面)側を機器(モータなど)に接触させ、機器が稼働(駆動)する際に生じる熱を熱源とし、温度差を発生させて発電するが、モータなどの機器とは異なって、ノズルの場合では、噴射する流体によるものの、一般的に稼働中でもノズル自体が熱源とはならない。しかし、過酷な環境下で使用される連続鋳造機の二次冷却ノズルでは、ノズル周辺の雰囲気温度が輻射熱などの影響によりノズル内部(又は流体)に比べて高いため、発電モジュール6では、受熱部(受熱面)6aを外側(ノズル周辺側)に向けて配置し、放熱部(放熱面)6bを内側(特に、流体(冷却水及び空気)が通過する流路側)に向けて配置することで、温度差を有効に確保でき、効率よく発電できる。
【0044】
そのため、発電モジュール6は、放熱部(放熱面)6bを流体封止プレート10に接触(面接触)させた状態で、4つの締結部材(ネジ部材)21aで取付ベース部5に取り付けられている。すなわち、発電モジュール6は、対向する両側面にそれぞれモジュール取付部材6dを備え、この取付部材6dの長手方向両端部にそれぞれ形成された取付孔、及びこの取付孔の下部の円筒状のスペーサー(又はカラー)21bに締結部材21aを挿通させて、取付面にネジ止めされている。発電モジュール6をスペーサー(又はカラー)21bを介して取り付けると、取付部材6dの変形を防止して適切に取付できる。また、締結力のバラツキなどによって放熱部(放熱面)6bが流体封止プレート10から浮いた状態(点又は線接触)となるのを抑制でき、面接触した状態で取り付け易く、有効に放熱できる。
【0045】
このように、放熱部(放熱面)6bは、流体封止プレート10を介して平面状流路18bに対向して配置されているため、平面状流路18bを流れる流体(水)によって放熱部(放熱面)6bの熱を効率よく放出(放熱)又は冷却でき、発電モジュール6の発電効率を有効に向上できる。特に、放熱部(放熱面)6bと金属製の流体封止プレート10とが面接触した状態で取り付けると、より一層効率よく放熱又は冷却でき、発電効率を向上できる。発電効率が向上すると、センサ7でのデータを安定して測定でき、測定頻度を向上できるため、ノズル詰りを精度よく又は効率よく検出できる。
【0046】
なお、発電モジュール6とセンサ7とを繋ぐケーブル(電源ケーブルなど)6cの余剰部分は、上部が開放(開口)された直方体状の配線ケース本体20aと、前記開口部に対応して閉じ可能な配線ケース蓋体20bとを備えた配線ケース(配線収容箱又は配線区画壁)20(20a,20b)に収容されており、配線ケース本体20aの周壁には、発電モジュール6からのケーブル6cを配線ケース内側に引き込むための切欠き部と、配線ケース外側に引き出すための切欠き部とが形成され、引き出されたケーブル6cの端部でセンサ7と接続されている。配線ケース本体20aの底部壁の四隅には、それぞれ取付孔(図示せず)が形成され、締結部材(ネジ部材、図示せず)で取付ベース部5の取付面の所定位置(この例では、水供給流路16aに対応する位置近傍)に取り付けられている。このように、配線ケース20(20a,20b)にケーブル6cの余剰部分を収容することで、ノズル詰り検出装置2のメンテナンス性を向上できるとともに、ケーブル6cの損傷も有効に抑制できる。
【0047】
センサ(振動センサとしての加速度検出器)7は、取付ベース部5の取付面の所定位置又は測定位置にセンサ取付プレート(又は中間部材)7aを介して取り付けられ、振動を測定している。この例では、混合部17に対応する位置に取り付けられているが、各流体(空気と水)が混合(気液混合)される混合部17近傍では振動が大きくなるため、ノズル詰りを振動の変化に基づいて検出し易い点で有利である。
【0048】
なお、センサ(振動センサとしての加速度検出器)7には、測定したデータ又はこのデータに対応する信号(情報)を送信するための無線通信機(無線送信機、図示せず)が内蔵されており、発電モジュール6での発電量などに応じて、所定の頻度で測定データ(振動又は加速度データ)又は信号を分析装置(管理用端末又はPCなど)に送信できる。このように無線通信機を備えていると、分析装置とセンサ7とを繋ぐケーブル又は配線を削減又は無くすことができるため、より一層容易に又は効率よく取り付け可能でメンテナンス性も高く、過酷な環境下であっても長期にわたって安定して使用でき、耐久性を有効に向上できる。
【0049】
前記センサ取付プレート7aは、振動を伝達可能な部材(金属材料など)で細幅板状に形成され、長手方向の両端部及び中央部に計3つの貫通孔を備えている。この例では、細幅のプレートを2枚重ねて形成されており、両端部の前記貫通孔は一定の径で貫通するのに対し、中央部の貫通孔は、センサ7側から取付ベース部5側へ向かう途中部(2枚の細幅プレートの接触面)で径が半径方向に広がる形態に(ザグリ加工のように)形成されている。すなわち、2枚の細幅プレートのうち、取付ベース部5側のプレート中央部の貫通孔は、センサ7側のプレート中央部の貫通孔と同軸で、かつ径大に形成されている。この中央部の貫通孔では、センサ7下面の取付ネジ部とナット部材7bとが螺合(締結)し、センサ取付プレート7aを挟持することでセンサ7が固定されており、両端部の貫通孔では、取付プレート7aが取付ベース部5の取付面に締結部材(ネジ部材)23で固定されているが、取付ベース部5側のプレート中央部の貫通孔が、センサ7側のプレート中央部の貫通孔よりも径大に形成されることによって、中央部の貫通孔内部に前記取付ネジ部及びナット部材7bが収まっているため、これらを取付面に干渉させることなく取り付けできる。
【0050】
保護ケース8(8a,8b)は、取付ベース部5の取付面の外周部から垂直方向に延びる四角枠状の保護ケース本体(又は周壁)8aと、この周壁8aの開口部を閉じる保護ケース蓋体(又は上部壁)8bとを備え、取付ベース部5とともに、全体として箱状(直方体状)の形態を有しており、取付ベース部5の取付面に取り付けられた各部材[発電モジュール6、ケーブル6c、センサ7(無線通信機含む)など]を内部に収容して保護できる。そのため、連続鋳造設備の二次冷却帯などのように過酷な環境下(例えば、ノズル周辺温度が高温で、水蒸気にも晒される環境下など)であっても、長期間にわたって安定して検出装置を機能させることができ、ノズル(又は設備)を効率よく稼働できるのみならず、耐熱性[耐熱温度、又は動作可能な最大温度(最大動作温度)]や耐湿性(又は耐湿熱性)がさほど高くない部材又は部品(発電モジュール、ケーブル、センサ、無線通信機など)を用いても、耐久性に優れた検出装置を製造でき、材料(又は部材)選択の幅が広がり生産性も有効に向上できる。
【0051】
また、保護ケース本体(又は周壁)8aは、取付ベース部5と同様に、金属材料(ステンレス鋼など)で形成されているのに対し、蓋体(又は上部壁)8bは、樹脂材料[PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂などの耐熱性樹脂又は(スーパー)エンジニアリングプラスチックなど]で形成されている。蓋体8bを樹脂材料(例えば、厚さ1~10mm程度)で形成することで、無線通信機を保護ケース内部に収容してしまっても、通信(又は電波)の遮断又は遮へいを抑制でき、分析装置(管理用PCなど)との良好な通信品質を安定して確保できる。
【0052】
保護ケース8(8a,8b)は、内部に収容した部材を熱や水(又は水蒸気)などから有効に保護できるものの、収容された発電モジュール6では、ノズル周辺の高い雰囲気温度を受熱部(受熱面)6aで熱源として利用し難くなり、例えば、連続鋳造設備の稼働状態(稼働中の環境温度など)によってはセンサの駆動(詰り検出)に必要な温度差を確保し難くなるおそれがある。しかも、受熱部(受熱面)6aに対向する蓋体(又は上部壁)8bは、一般に熱伝導率の低い樹脂材料で形成されているため、このような傾向も顕著となる。そのため、保護ケース8(8a,8b)内部に発電モジュール6を収容しても、受熱部(受熱面)6aでノズル周辺の雰囲気温度を熱源として有効に利用するために、蓋体(又は上部壁)8bの内壁には、金属材料(アルミニウム又はその合金など)で形成された板状の伝熱部材(伝熱促進プレート)9が受熱部(受熱面)6aに対向して取り付けられている。この伝熱部材9は、受熱部(受熱面)6aと所定の間隔(例えば5~20mm程度)をおいて配置されているものの、ノズル周辺の雰囲気温度を受熱部(受熱面)6aに有効に伝えることができるようである。なお、伝熱部材9は、蓋体8bの内壁面ではなく、外壁面に取り付けられていてもよいが、内壁面に設置する方が、ノズル周辺の雰囲気温度を受熱部(受熱面)6aに有効に伝えることができるようである。
【0053】
なお、保護ケース本体(又は周壁)8aと、蓋体(又は上部壁)8bとは、8本の長尺な締結部材(ネジ部材)24により取付ベース部5の取付面外周部に取り付けられており、蓋体8bの各角部(四隅)、及び隣り合う角部間の中央部近傍には、締結部材24を挿通するための貫通孔がそれぞれ形成され、この蓋体8bの貫通孔(又は取付位置)に対応して、周壁8aの内壁[各内壁面の端部(四隅)及び各内壁面の中央部近傍]は、それぞれ内側に膨出して肉厚に形成され、締結部材24を挿通するための貫通孔を備えている。また、伝熱部材(伝熱促進プレート)9の四隅にはネジ孔がそれぞれ形成され、このネジ穴に対応する蓋体(上部壁)8b内側(内壁側)の取付位置[受熱部(受熱面)6aと対向する位置]には貫通孔がそれぞれ形成されており、4本の締結部材(ネジ部材)25が伝熱部材9のネジ穴に螺合又は締結することで蓋体8b内側に取り付けられている。
【0054】
この例では、ノズル(二次冷却ノズル又は二流体ノズル)1は、連続鋳造設備の二次冷却帯として利用され、この二次冷却帯には互いに隣接して複数の二次冷却ノズル(二流体ノズル)1が配設されており、例えば、複数の二流体ノズル1は、ノズル番号A、B、C、D、Eの5つのノズルで構成され、少なくとも1つの前記二次冷却帯(冷却ゾーン)を形成している。各ノズルの各センサ7で得られたデータ又は信号は、前記無線通信機を経由して前記データ又は信号を受信可能な分析装置(解析装置又はコンピュータ)(図示せず)に送信でき、この分析装置は報知装置(図示せず)に接続されている。
【0055】
ノズル番号(A~E)の各ノズル1に設置した各センサ(振動センサ)7からの一次振動データ(振動波形、波形情報など)は、各ノズル番号(又はノズルアドレス)などに関連付けて又は紐付けされて分析装置(解析装置)に与えられる。なお、上記ノズル番号(又はノズルアドレス)は、入力手段を利用して分析装置(解析装置)に入力することができる。
【0056】
すなわち、各センサ(振動センサ)7で測定又は観測され、各ノズル番号に紐付けられた一次振動データは、A/Dコンバータ(A/D変換回路)により、アナログ信号からデジタル信号へと変換され、このデジタル振動データからノイズが除去される。ノイズが除去されたデジタル振動データ又は信号は、前記無線通信機を経由して分析装置に送信される。分析装置では、受信したデータ又は信号が記憶手段(記憶回路、メモリ回路)に時系列的に格納され、制御手段(制御回路)に与えられる。制御手段は、デジタル振動データから測定値を算出するために、デジタル振動データを演算手段(演算回路)へ与える。演算手段(演算回路)では、FFT(fast Fourier transform)アナライザを用い、所定の入力レンジ[例えば、1Vrms(V root mean square)]において、所定の周波数範囲(例えば0~100kHz、好ましくは10mHz~10kHz)、所定のサンプリング点数(例えば256~16384点、好ましくは512~8192点、さらに好ましくは1024~4096点)でFFT分析が行われ、所定時間の平均値が算出される。この平均値(平均値データ)は、測定値として、前記記憶手段に時系列的に格納されるとともに、比較手段(比較回路)[判定手段(判定回路)]に与えられる。なお、FFT分析は、必ずしも必要ではなく、実効値(RMS)などの所定のデータを測定値として、前記記憶手段に時系列的に格納するとともに、比較手段(比較回路)[判定手段(判定回路)]に与えてもよい。
【0057】
この比較手段(比較回路)[判定手段(判定回路)]では、測定値としての平均値(平均値データ)と、閾値(基準値)とが比較され、測定値が閾値に到達したとき、比較手段(比較回路)はノズル詰り検出信号を生成し、ノズル詰りが発生していると判定される。例えば、ノズル番号Aのノズル1に対する測定値(平均値データ)が閾値に到達したとき、比較手段(比較回路)は、ノズル番号Aのノズル1にノズル詰りが生じたことを示すノズル詰り検出信号Aを生成し、ノズル番号Aのノズル1の詰りが検出される。
【0058】
さらに、ノズル詰り検出信号は制御手段(制御回路)に与えられ、制御手段は、ノズル詰り検出信号(例えば、ノズル詰り検出信号A)に応答して、所定のノズル1に詰りが生じたことを報知するため、報知信号を前記報知装置に与え、報知装置により、ノズル詰り及びノズル詰りが発生しているノズルが報知(例えば、ノズルAにノズル詰りが発生しているという情報が報知)される。
【0059】
このような検出方法及び検出装置では、各ノズル1にセンサ(振動センサ)7を設置又は取り付けるという簡単な構造で、稼働中の(すなわち、連続鋳造設備の二次冷却帯で、噴霧対象である鋳片に対して噴霧している)ノズル1の詰りを検出できるとともに、ケーブル又は配線を削減又は無くすこともできるため、容易に又は効率よく取り付け可能でメンテナンス性も高く、過酷な環境下であっても長期にわたって安定して使用でき、耐久性を有効に向上できる。また、各ノズル1にセンサ(振動センサ)7を取り付けることにより、複数のノズルの中から実際にノズル詰りが発生しているノズルを特定して報知することができる。そのため、ノズル詰りが特定されたノズルだけを交換すればよく、冷却帯のノズルの詰り状況を容易に管理できる。さらに、ノズル詰りは、流路径の小さなノズルチップ4で主に発生し易いものの、より上流側の流路又は配管[例えば、ノズル本体(パイプ部)3、水供給流路16、水供給配管など]で詰りが生じることもある。このようにノズルチップ4より上流側で詰りが発生した場合であっても、有効に詰りを検出できるため、上流側の配管も含めた設備全体の詰り状況を管理することもできる。
【0060】
(ノズル)
本発明において、ノズルの種類は、特に制限されず、単一の流体、例えば、液体(例えば、水)だけを吐出するノズル(スプレーノズルなど)、気体だけを吐出するノズルなどの一流体ノズルであってもよく、気体と液体(例えば、空気と水)とを噴霧又は吐出可能な二流体ノズルであってもよい。より一層精度よく検出できる点から、二流体ノズルが好ましい。
【0061】
噴霧(噴射)又は吐出する液体は、用途及びノズルの種類に応じて種々の液体が利用でき、例えば、水(例えば、工場水、上水、マイクロバブル水)、インク(インキ)、有機溶媒、油などであってもよい。液体は、通常、水であってもよい。なお、ノズル詰りを防止又は初期のノズル詰りを除去(解消)するため、マイクロバブル水などを定期的にノズルに供給又はノズル内で生成させてもよく、前記制御手段(制御回路)を利用して、ノズル詰り検出信号に応答して、マイクロバブル水などをノズルに注入又は供給してもよい。
【0062】
噴霧又は吐出する気体は、用途に応じて種々の気体が利用でき、例えば、空気、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどが挙げられる。これらの気体は混合しても使用できる。気体は、通常、空気であってもよい。二流体ノズルでは、通常、空気と水とを組み合わせて噴霧又は噴射してもよい。
【0063】
ノズルは、その内部を流れる流体の温度と、使用環境下におけるノズル周辺(ノズル外部)の雰囲気温度(環境温度又は使用温度)との間に温度差があるノズルが好ましく、ノズル周辺の雰囲気温度よりも高温な流体を噴霧するノズルであってもよく、特に、本発明の効果をより向上できる点から、ノズル周辺の雰囲気温度よりも低温な流体を噴霧(噴射)又は吐出するノズルであるのが好ましい。このようなノズルであると、モータなどの機器とは異なりノズル自身が発熱しなくても、熱電発電モジュールで効率よく発電でき、得られた電力で稼働中のノズル詰りを検出できる。
【0064】
流体とノズル周辺(ノズル外部)の雰囲気温度(環境温度又は使用温度)との温度差は、例えば10~300℃(例えば30~250℃)、好ましくは50~200℃(例えば80~170℃)、さらに好ましくは100~150℃(例えば120~135℃)程度であってもよい。気体と液体とを噴霧する二流体ノズルの場合、前記温度差は、少なくとも一方の流体との温度差(例えば、液体との温度差)であってもよい。温度差が低すぎると、効率よく発電できないおそれがあり、温度差が高すぎると、検出装置を長期にわたって安定に使用できないおそれがある。
【0065】
流体の具体的な温度としては、例えば-20℃~100℃(例えば-10℃~70℃)、好ましくは0~50℃(例えば5~40℃)、さらに好ましくは10~30℃(例えば15~25℃)程度であってもよい。ノズル周辺(ノズル外部)の具体的な雰囲気温度(環境温度又は使用温度)としては、例えば20℃以上(例えば50℃~300℃)、好ましくは80℃以上(例えば100~200℃)、さらに好ましくは120℃以上(例えば130~170℃)程度であってもよい。このような環境下で使用されるノズルとしては、例えば、製鉄プロセス又は製鉄用設備[例えば、連続鋳造、熱間圧延(熱延)(例えば、厚板圧延など)など]などの高温環境下で使用されるノズルなどが挙げられる。
【0066】
ノズル(特に、二流体ノズル)において、流体として気体を用いる場合の圧力は特に制限されず、通常、0.01~1MPa(例えば、0.02~0.8MPa)、好ましくは0.03~0.7MPa程度であってもよい。ノズル(特に、二流体ノズル)において、流体として液体を用いる場合、通常、加圧液体(又は高圧液)として供給され、圧力は特に制限されず、例えば0.01~2MPa、好ましくは0.02~1.5MPa、さらに好ましくは0.03~1MPa程度であってもよい。二流体ノズルである場合、気体と液体との流量比(体積割合)は、温度25℃において、例えば、気体/液体(気液体積比)=2~700、好ましくは3~500、さらに好ましくは4~300程度であってもよい。ミスト粒子の粒子径は、気体及び液体の流量などにより変動するが、平均粒子径(平均液滴径)は、例えば10~500μm、好ましくは15~400μm(例えば20~300μm)、さらに好ましくは50~250μm(例えば60~200μm)程度であってもよい。
【0067】
なお、ノズル(二流体ノズルなど)の構造は特に制限されず、通常、ノズル本体(円筒状のパイプ部など)、ノズルチップを少なくとも備えている。ノズルは、夾雑物の流入を防止するためのフィルター部(スリット状フィルター部など)を上流部に備えていてもよく、流体の流動を制御するため、スタビライザー又は羽根を備えていてもよいが、通常、フィルターやスタビライザーは備えていなくてもよい。また、ノズル(二流体ノズルなど)の流路の形態[例えば、円筒状内壁、前方方向又は下流方向に向かって狭まった形態の流路内壁(テーパー状内壁など)、断面多角形状(例えば断面四角形状など)の内壁などで形成される流路など]、オリフィス又は吐出孔の形態(円形状、楕円形状吐出孔、先端部に形成された平坦部、断面V字状溝又はU字状溝で開口する吐出孔など)なども特に制限されない。ノズルの材質も特に制限されず、樹脂(又はプラスチック)であってもよく、鉄又はその合金(ステンレス鋼など)、銅又はその合金[真鍮(黄銅)など]、アルミニウム又はその合金、超硬合金などの金属材料などであってもよい。これらの材質は単独でまたは2種以上組み合わせてもよく、耐熱性、耐久性、成形性などの点で鉄又はその合金などの金属材料(耐食性又は防錆性の点で、特に、ステンレス鋼など)が好ましい。また、ノズルは、ノズル上流側(供給配管との連結部又はノズル基部)が固定された固定端であってもよく、ノズル下流側(ノズルチップ)が自由端であってもよい。
【0068】
(取付ベース部)
ノズル詰り検出装置を構成する発電モジュール及びセンサは、ノズル(例えば、ノズル本体など)などに直接的又は間接的に取り付けてもよいが、検出装置は、必要に応じて、発電モジュール及びセンサを取り付け又は配置(設置)するための土台(基盤)となるベース部(取付ベース部)を備えていてもよく、このベース部をノズル(例えば、ノズル本体など)に取り付けてもよい。
【0069】
取付ベース部の形状は、少なくとも発電モジュール及びセンサを取り付け可能であれば特に制限されず、例えば、ブロック状、プレート状(板状)、断面L字型のアングル状、多角枠状(四角枠状など)、円筒状などが挙げられ、成形性の観点から、ブロック状又はプレート状(太幅で厚板なプレート状など)が好ましい。取付ベース部の材質は特に制限されず、樹脂(又はプラスチック)、鉄又はその合金(ステンレス鋼など)、銅又はその合金[真鍮(黄銅)など]、アルミニウム又はその合金、超硬合金などの金属材料などが挙げられる。これらの材質は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもでき、耐熱性、耐久性、成形性などの点で鉄又はその合金(耐食性又は防錆性の点で、特に、ステンレス鋼)などの金属材料が好ましい。
【0070】
取付ベース部の取り付け形態も特に制限されず、例えば、取付ベース部をボルトなどの締結部材(ネジ部材)でネジ止めしたり、接合手段(溶接、接着剤など)で接合したり、挟着手段で挟着して固定してもよいが、取付ベース部の内部に、流体の流路を形成し、この流路の端部(流路入口又は出口)を配管やノズル(ノズル本体)などに接続又は連結して取り付け又は設置するのが好ましい。取付ベース部の内部に、ノズルから噴霧又は吐出(噴射)する流体の流路は必ずしも形成されていなくてもよいが、この取付ベース部内部の流路に対向して(取付面において、流路に対応する位置の少なくとも一部に)熱電発電モジュールを取り付け又は配置(設置)すると、ノズル周辺の雰囲気温度(環境温度)が高温であっても、流路を流れる流体を利用して、受熱部(受熱面)及び放熱部(放熱面)間の温度差(温度勾配)を確保し易く、容易に又は効率よく発電でき、得られた電力で駆動するセンサの測定頻度や無線通信機による発信(送信)頻度を有効に向上できる点で好ましい。また、このような取付ベース部を用いると、発電モジュールやセンサ、ケーブルなどを互いに隣接して配置又は設置し易くなるとともに、これらを保護ケースでまとめて保護又は断熱し易くなる。
【0071】
前記流路の形態は特に制限されず、例えば、円筒状内壁、前方方向又は下流方向に向かって狭まった形態の流路内壁(テーパー状内壁など)、断面多角形状(例えば断面四角形状など)の内壁などで形成される流路であってもよい。前記流路は、少なくとも平面状又は平坦状に延びる又は広がる領域(平面部又は平坦部)を有する平面状又は平坦状流路を含むのが好ましい。この平面状流路の平面部に対向して熱電発電モジュールの放熱面又は受熱面(特に、放熱面)が配置されていると、広い面積で温度差をより一層有効に又は効率よく確保できる。なお、平面状流路を流れる流体は気体であってもよいが、液体であると、より一層有効に又は効率よく温度差を確保し易く、発電効率を向上できる。平面状流路の形状は、少なくとも一つの対向可能な平面部又は平坦部を有していれば特に制限されず、例えば、多角柱状(四角柱状など)、多角錐台状(上流側から下流方向へ行くにつれて外方向に広がる多角錐台状など)、円柱状(高さに対して径の大きな円柱状など)、円錐台状(上流側から下流方向へ行くにつれて外方向に広がる円錐台状など)、太鼓状、かまぼこ状などの形態の流路などであってもよい。
【0072】
なお、前記流路を有する取付ベース部は、内部に流体を流入するための供給口(流体入口)を少なくとも1つ備えており、必ずしも必要ではないが、通常、前記流入した流体を取付ベース部から排出するために、少なくとも1つの排出口(流体出口)を備えていてもよい。すなわち、前記流路は、上流側(入口側又は供給側)から下流側[出口側又はノズル先端(ノズルチップ)側]に向けて流体を流す又は供給するための供給流路(流体供給流路)を含むのが好ましい。前記流路は、少なくとも1つの供給流路(流体供給流路)を含んでいてもよく、例えば、供給流路(流体供給流路)のみで構成されていてもよく、必要に応じて、取付ベース部内部で分岐又は合流していてもよく、1又は複数の他の流路を組み合わせて含んでいてもよい。他の流路としては、例えば、流れ方向(流体が流入する方向)の先が閉じた閉塞流路(閉じた流路)、環状(又は循環可能)に接続する環状流路(循環流路)などが挙げられる。
【0073】
前記平面状流路は、閉塞流路に形成された態様(例えば、
図1~6の例のように、供給流路から分岐した閉塞流路18(18a,18b)に形成された態様など)に限定されず、例えば、放熱面を効率よく冷却できる点などから、供給流路(流体供給流路)や環状(又は循環可能)の途中部などに形成されていてもよく、耐久性又は安定性の観点から、閉塞流路に形成されるのが好ましい。前記平面状流路が閉塞流路に形成されると、流体の漏れ(水漏れなど)を抑制し易く、発電モジュールの少なくとも一部を熱により変形及び/又は破損し得る樹脂で形成しても有効に保護できる。閉塞流路の閉じ方(閉塞手段又は封止手段)は特に制限されず、取付ベース部の内壁、継手(プラグ)などで流路が閉じられていてもよく、流体封止プレート及び封止材(シール材)で流体を封止してもよい。閉塞流路に平面状流路を形成する場合、平面状流路の平面部に沿って流体封止プレートで封止すると、前記平面部に熱電発電モジュールの放熱面又は受熱面(特に、放熱面)を対向して配置し易く、成形性及び取り付け易さの点で有利である。そのため、流体封止プレートは、流体に対する耐食性又は防錆性の他、熱伝導性にも優れた金属材料(ステンレス鋼、アルミニウム合金など)で形成するのが好ましい。なお、流体封止プレートの外側の面(流体の封止面と反対側の面)は、取付状態において、熱電発電モジュールの放熱部(放熱面)又は受熱部(受熱面)と接触(面接触)可能であればよく、
図1~6の例のように取付ベース部の取付面と必ずしも略同一平面状に位置していなくてもよい。
【0074】
なお、取付ベース部内部の流路を流れる流体は、気体及び/又は液体のいずれであってもよい。二流体ノズルに適用する場合、取付ベース部は、気体及び液体(例えば、空気及び水)から選択される少なくとも一方が流れる流路を備えていればよく、好ましくは少なくとも液体が流れる流路、さらに好ましくは液体が流れる流路及び気体が流れる流路の双方を備えていてもよい。双方の流路を備える場合、気体の流路と液体の流路とが交わる混合部(気液混合部、混合室又は合流部)が、取付ベース部の内部に形成されているのが好ましい。2つの流体が合流する混合部では、通常、大きな振動が生じるため、この混合部の振動を検出するために、取付ベース部の混合部近傍の所定位置(又は取付ベース部の取付面のうち、混合部に対応する位置)に振動センサを取り付けると、振動の変化(変動)を検出し易く、ノズル詰りをより一層精度よく検出できる。
【0075】
図1~6の例では、噴霧軸(又は噴射軸)[ノズル若しくはノズル本体の中心軸線、又は混合部下流の混合流体の流路の中心軸線]に対して、気体(空気)の流路の中心軸線が一直線上に重なり、液体(水)の流路の中心軸線が途中で屈曲して混合部で合流しているが、必ずしもこの形態である必要はなく、例えば、気体の流路と液体の流路とが逆転(すなわち、前記噴霧軸に対して、液体の流路の中心軸線が一直線上に重なり、気体の流路の中心軸線が途中で屈曲して混合部で合流)してもよい。また、必ずしも一方の流路を屈曲させて混合部を形成する必要はなく、例えば、前記噴霧軸に沿った(一直線上になく、かつ平行な)双方の流路を屈曲させて混合部で合流させてもよく、前記噴霧軸に対して(平行ではなく)所定の角度で流路を形成し、屈曲することなく混合部で合流させてもよい。
【0076】
取付ベース部内部の流路の接続状態について、
図1~6の例のように、流路の上流側(入口側又は供給側)が流体供給配管に接続され、下流側(出口側)がノズル本体又はノズルチップと接続されていてもよいが、この形態には限定されず、例えば、上流側(入口側)及び下流側(出口側)が双方とも流体供給配管と接続されていてもよく、より具体的には、流体供給配管の途中部(分岐部やストレート部など)に介在又は割り込む形態で取付ベース部(ノズル詰り検出装置)が取り付けられていてもよい。
【0077】
なお、取付ベース部の流路は、ドリルなどの切削工具で内部を穿設して成形してもよく、係合可能な複数の部材(例えば、取付ベース部を厚み方向の所定位置で、面方向に分割した上下2つの係合可能な部材など)の係合面に流路となる凹部又は溝部を成形し、2つの部材を係合又は重ね合わせて流路を形成してもよい。耐久性の観点から、流路を内部に穿設して成形するのが好ましい。
【0078】
(発電モジュール)
発電モジュールは、自己発電可能なモジュールであれば特に制限されず、例えば、熱電発電モジュール、振動発電モジュール(圧電素子)、光発電モジュール(太陽電池などの光電変換素子)、風力発電モジュールなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのうち、熱電発電モジュールが好ましい。
【0079】
熱電発電モジュールは、p型及びn型の半導体(熱電材料)が交互に直列に配列され、ゼーベック効果を利用して電力を発生させるモジュールであってもよく、通常、一方の面に形成された受熱部(受熱面)と他方の面(裏面)に形成された放熱部(放熱面)とを有し、受熱部と放熱部との間の温度差(温度勾配)により発電できるモジュールであってもよい。本発明では、受熱部(受熱面)及び放熱部(放熱面)のうち、一方(特に放熱部)をノズル内側又は流体側(噴射又は噴霧前の流体の流路側)に、他方(特に受熱部)をノズル外側(使用環境側)に向けて配置することで、流体の温度とノズル周辺の雰囲気温度(環境温度又はノズル使用温度)との温度差により、ノズル自体が熱(熱源)を生じない機器であるにもかかわらず、有効に発電できる。
【0080】
発電モジュールは、通常、発電した電力を保存又は蓄電するための蓄電部材(キャパシタ、二次電池など)、発電した電力を送電してセンサや無線通信機などの装置を駆動させるための配線(電源ケーブル)などを備えていてもよい。
【0081】
発電モジュールの取り付け形態は特に制限されず、所定の位置(取付ベース部やノズル又は配管など)に対して、取り付け金具などの治具を介して締結部材(ネジ部材)などで取り付けてもよく、接着剤又はパテなどで接着又は接合してもよい。熱電発電モジュールである場合、受熱部(受熱面)又は放熱部(放熱面)を流路側に向けて配置し易く、有効に温度差を確保できる点から、取付ベース部の取付面に取り付け又は設置するのが好ましい。
【0082】
(センサ)
センサは、発電モジュールで生じた電力で駆動可能であって、かつノズル及び/又はこのノズルが取り付けられた配管の詰りを検出可能であれば特に制限されず、例えば、振動センサ、温度センサ(熱電対など)、圧力センサ、流量センサなどが挙げられる。これらのセンサは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのセンサのうち、振動センサ、温度センサが好ましい。
【0083】
ノズル詰り(ノズルが取り付けられた配管などの詰りも含む)が発生した場合、ノズル(又は配管)の振動は、ノズル詰りの進行度(詰り率)と所定の関係を示し、通常、ノズル詰りが進行するにつれて振動値が低下する(振動強度が小さく又は振動が弱くなる)ため、振動センサでノズル(又は配管)の振動を測定することで、ノズル詰りを検出できる。
【0084】
そのため、振動センサは、ノズル及び/又はノズルが取り付けられた配管の振動を測定可能であればよく、振動伝達可能な中間部材を介して間接的に測定してもよく、中間部材は必ずしも必要でないため、ノズル又は配管に振動センサを直接的に設置又は取り付け、振動を直接的に測定してもよい。振動センサは、例えば、加速度検出器(加速度センサ)であってもよく、加速度検出器としては、圧電型加速度検出器、サーボ型加速度検出器、ひずみゲージ式加速度検出器、半導体式加速度検出器が例示されるが、小型、高感度、広帯域である点から、通常、圧電型加速度検出器が好ましい。
【0085】
ノズルの振動パラメータは、振動加速度、振動速度又は振動変位であってもよく、振動の周波数に応じて選択してもよく、1又は複数の振動パラメータを組み合わせてもよい。好ましい振動パラメータは、少なくとも振動加速度を含んでいてもよい。通常、加速度検出器(例えば、圧電式加速度ピックアップ)を用いてノズルの振動加速度を測定することにより、対象物(短小軽薄又は極度に高温でない対象物)の振動加速度の大小を精度よく検出できるため、気体と液体とを吐出する二流体ノズルの検出も精度よく可能になる。
【0086】
振動センサは、必要により、他のセンサ、例えば、圧力センサ、流量センサ、温度センサなどと適宜組み合わせて使用してもよい。これらのセンサは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよく、通常、他のセンサを併用することなく、振動センサのみが好ましい。振動センサのみを使用することにより、検出方法及び検出装置が簡易化できる。
【0087】
振動センサによる振動周波数域は、特に制限されず、例えば0Hz~20kHz(例えば0.5Hz~15kHz)程度であってもよい。
【0088】
振動センサの設置又は取り付け位置は、ノズルの振動を測定可能な位置であればよく、ノズル又はノズルが取り付けられた配管の適所に設置又は取り付け可能である。二流体ノズルでは、例えば、二流体ノズルの先端部よりも基部側(例えば、ノズル本体の長さの中間部よりも基部側、特に、気液混合部)に設置又は取り付けてもよい。気液混合部では、通常、大きな振動が生じるため、この混合部の振動を検出するために、混合部又はその近傍に振動センサを取り付けると、振動の変化(変動)を検出し易く、ノズル詰りをより一層精度よく検出できる。また、二流体ノズル基部側(特に、気液混合部)に振動センサを設置すると、先端部と比較して設置環境がよく、ノズル本体の共振による振動が振動センサで検出されるのを回避又は防止することができ、二流体ノズルのノズル詰りを精度よく検出が可能になる。また、先端部と比較して設置スペースの確保が容易になる。
【0089】
振動センサの設置方法(固定方法)は、ノズル又は配管の振動を直接又は間接的に測定できれば特に制限されず、中間部材(金属プレートなどのプレート状部材など)を介して取り付けてもよく、例えば、ネジ、マグネット、接着剤、ハンドプローブ(深触針)、絶縁ワッシャなどが例示され、シリコンオイルなどを併用してもよく、接着剤としては、瞬間接着剤、両面テープ(厚め又は薄め)であってもよい。周波数特性への影響の点から、通常、ネジにより直接固定することが好ましい。
【0090】
また、センサとしては、温度センサ(熱電対など)を用いてもよい。ノズル詰り(ノズルが取り付けられた配管などの詰りも含む)が発生した場合、ノズル(又は配管)の温度は、使用環境(ノズル周辺の雰囲気温度又は環境温度や、噴霧する流体の温度など)に応じてノズル詰りの進行度(詰り率)と所定の関係を示し、製鉄プロセスのようにノズル周辺の雰囲気温度が高温である場合、通常、ノズル詰りが進行するにつれてノズル(又は配管)の温度が上昇するため、振動センサでノズル(又は配管)の温度を測定することで、ノズル詰りを検出できる。
【0091】
そのため、温度センサは、ノズル及び/又はノズルが取り付けられた配管の温度を測定可能であればよく、温度伝達可能な中間部材を介して間接的に測定してもよく、中間部材は必ずしも必要でないため、ノズル又は配管に温度センサを直接的に設置又は取り付け、温度を直接的に測定してもよく、必要であれば、ノズル又は配管の内部又は流体の温度を測定してもよい。
【0092】
図7~8は、本発明のノズル詰り検出装置を備えたノズルの他の例を示す概略図であり、具体的には、
図1~6の例の検出装置の振動センサに代えて、温度センサを備えた例である。なお、以下の説明において、
図1~6の例と同一のまたは機能が共通する要素(または部材)には、同じ符号を付す場合がある。
【0093】
図7では、検出装置32の保護ケース蓋体(又は上部壁)8b及び配線ケース蓋体20bを取り外した状態の概略部分分解図が示されている。
図7~8に示すノズル31では、発電モジュール(熱電発電モジュール)6で得られた電力を利用して、温度センサ(熱電対)37でノズル本体(パイプ部)2の表面温度を測定可能である。すなわち、発電モジュール(熱電発電モジュール)6とケーブル38を介して接続された温度センサ(熱電対)37は、保護ケース本体(又は周壁)8aの所定位置に形成された貫通孔から保護ケース8の外側に引き出され、ノズル本体(パイプ部)2の表面[この例では、ノズル(ノズルチップ)先端から、100mmの位置]に端部(接点又は測定部)が接合又は溶接されている。なお、ケーブル38の余剰部分は、配線ケース(配線収容箱又は配線区画壁)20(20a,20b)に収容されている。この例では、熱電発電モジュール6の内部に無線通信機などが内蔵されており、温度センサ(熱電対)37で測定又は観測された一次温度データ(熱起電力)はデジタル信号へと変換され、各ノズル番号(又はノズルアドレス)などに関連付け又は紐付けされて、前記無線通信機を経由して分析装置に送信される。
【0094】
分析装置では、
図1~6の例と同様にして、ノズル詰りが検出される。例えば、分析装置で受信された温度データ又は信号が記憶手段(記憶回路、メモリ回路)に時系列的に格納され、制御手段(制御回路)に与えられる。制御手段は、必要に応じて、デジタル温度データから測定値を算出するために、データを演算手段(演算回路)へ与え、演算手段では、所定時間の平均値や最大値(ピーク値)などが算出される。演算手段で得られたデータは、測定値として、前記記憶手段に時系列的に格納されるとともに、比較手段(比較回路)に与えられて測定値(平均値や最大値データ)と閾値(基準値)とが比較され、閾値に到達したとき、比較手段はノズル詰り検出信号を生成し、ノズル詰りが発生していると判定される。さらに、ノズル詰り検出信号は制御手段に与えられ、制御手段は、ノズル詰り検出信号に応答して、所定のノズル31に詰りが生じたことを報知するため、報知信号を前記報知装置に与え、報知装置により、ノズル詰り及びノズル詰りが発生しているノズルが報知される。
【0095】
この例では、温度センサ(熱電対)37の端部(接点又は測定部)が、ノズル本体(パイプ部)2の表面に接合又は溶接されているが、温度センサの取付位置(測定位置)は、温度変化によりノズル詰りを検出可能な位置であればノズル本体の表面に限定されず、ノズル又はノズルが取り付けられた配管の適所に設置又は取り付け可能である。温度センサ(熱電対)の端部(接点又は測定部)は、例えば、ノズルチップ表面、ノズルが取り付けられた配管の表面、ノズル本体(パイプ部)内部などに接合又は設置してもよいが、ノズルの噴霧パターンに影響を与え難く、取り付け容易で、ノズル詰まりを精度よく検出し易い点から、ノズル本体(パイプ部)表面に接合するのが好ましい。
【0096】
また、温度センサ(熱電対)の端部(接点又は測定部)は、ノズルの基部側(先端部又はノズルチップの反対側)に取り付けてもよいが、ノズルの先端部側(例えば、ノズル本体の長さの中間部よりも先端部側)に設置又は取り付けるのが好ましい。先端部又はその近傍に温度センサを取り付けると、ノズル詰りに基づく温度の変化(変動)を検出し易く、詰りをより一層精度よく検出できる。温度センサ(熱電対)の端部(接点又は測定部)は、例えば、ノズルチップ先端から10~1000mm(例えば30~500mm)、好ましくは50~200mm(例えば70~150mm)程度の位置に接合又は溶接してもよい。
【0097】
温度センサの設置方法(固定方法)は、温度の測定を妨げない方法であれば特に制限されず、例えば、溶接、接着剤(高熱伝導性の接着剤など)などであってもよい。検出精度の観点から、溶接で接合又は固定するのが好ましい。
【0098】
温度センサは、例えば、熱電対であってもよい。例えば、K熱電対、B熱電対、R熱電対、T熱電対などが挙げられ、測定温度範囲又は測定温度領域などに応じて適宜選択でき、K熱電対が好ましい。温度センサは、必要により、他のセンサ、例えば、圧力センサ、流量センサ、振動センサなどと適宜組み合わせて使用してもよい。これらのセンサは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよく、通常、他のセンサを併用することなく、温度センサのみが好ましい。温度センサのみを使用することにより、検出方法及び検出装置が簡易化できる。
【0099】
これらのセンサのうち、初期値(詰りが全くない状態)からの変動幅(変動割合)が大きく、ノズル詰りに基づく変化又は変動を精度よく検出し易い点から、振動センサが特に好ましい。
【0100】
(無線通信機)
センサで得られた振動や温度などのデータ(情報)又は信号を、管理用端末(管理用PC)などの分析装置(解析装置)に向けてケーブルなどを配線することなく送信(発信)できる点から、ノズル詰り検出装置は無線通信機(無線発信機)を備えるのが好ましい。無線通信機を備えた検出装置では、検出装置と分析装置とを繋ぐ通信用ケーブルなどのケーブル(配線)を削減又は無くすことができ、検出装置の取り付け容易性、メンテナンス性を大きく向上できる。
【0101】
無線通信機は、発電モジュールからの電力で駆動(稼働)するのが好ましく、発電量に応じて送信(発信)頻度を調整可能であってもよい。
【0102】
無線通信機の取付位置は特に制限されず、前述の例のように、センサ又は発電モジュールに内蔵されていてもよく、独立して取付ベース部などに設置又は取り付けられていてもよい。
【0103】
無線通信機は、データ又は信号を無線方式(Wi-Fi、Bluetoothなど)で分析装置(解析装置)に送信(発信)可能であれば特に制限されず、必要に応じて(例えば、電波環境や接続する検出装置の数など)、無線通信機と分析装置との間に、1又は複数の中継機又は親機などを介在させて無線ネットワーク(通信網)を形成して、無線接続してもよい。
【0104】
(保護ケース)
ノズル詰り検出装置は、必要に応じて、装置を構成する部材又は部品(例えば、発電モジュール、センサ、ケーブル、無線通信機など)の少なくとも一部を内部に収容して保護(カバー)するための保護ケース(保護カバー)を備えていてもよい。保護ケースを備えていると、検出装置の耐久性を向上でき、製鉄プロセスなどの過酷な環境下であっても、長期にわたって有効にノズル詰りを検出できる。また、耐熱性[耐熱温度、又は動作可能な最大温度(最大動作温度)]や耐湿性(又は耐湿熱性)がさほど高くない部材又は部品(発電モジュール、ケーブル、センサ、無線通信機など)を用いても、耐久性に優れた検出装置を製造でき、材料(又は部材)選択の幅が広がり生産性も有効に向上できる。
【0105】
保護ケース(保護カバー)の形状又は形態は、内部を保護可能(例えば、熱や水蒸気などから保護可能)であれば特に制限されず、例えば、箱状(直方体状など)、ドーム状(半球状)、袋状又はパック状などであってもよいが、センサの動作などに影響を与えることなく、取り回しが容易で施工性やメンテナンス性、成形性などにも優れる点から、各部材又は部品が取り付けられた取付ベース部の取付面を保護ケースが覆うように取り付けられた形態(すなわち、取付ベース部及び保護ケースの全体として保護又はカバーする形態)が好ましく、さらに好ましくは、取付ベース部の取付面に取付可能で、かつ少なくとも開口部(開口面)を有する保護ケース本体と、この保護ケース本体の開口部に対応して閉じ可能な保護ケース蓋体とで形成する形態であり、特に、取付ベース部の取付面(底部壁)から立設する保護ケース本体(周壁、側壁又は枠体)と、この保護ケース本体の開口部に対応して閉じ可能な保護ケース蓋体(又は上部壁)とで箱状(直方体状など)に形成されるのが好ましい。
【0106】
保護ケース本体(周壁、側壁又は枠体)の形状は、取付ベース部に取り付けた際に、少なくとも蓋体で閉じるための開口部を有する形状であれば特に制限されず、例えば、多角柱状(四角枠状などの多角枠状など)、円筒状、ドーム状(半球状)、錐台状(多角錐台状、円錐台状など)であってもよく、通常、取付ベース部の取付面(底部壁)の外周部の形状に対応して立設し、上部が開口した枠状(例えば、四角枠状などの多角枠状)であるのが好ましい。蓋体の形状は、ケース本体の開口部を閉じ可能(又は開閉可能)であれば特に制限されず、多角形状(四角形状など)、円形状などの板状(プレート状)などであってもよく、通常、取付ベース部の取付面の外周部に対応した形状(四角形状などの多角形状など)である。
【0107】
保護ケースを形成する材料(材質)は、内部を有効に保護可能(例えば、熱や水蒸気などから保護可能)であれば特に制限されず、例えば、金属材料(ステンレス鋼などの鉄又はその合金、アルミニウム又はその合金など)、樹脂(耐熱性樹脂)[例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミドなど)、ポリイミド系樹脂(ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなど)、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルエーテルケトンなど)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素樹脂などの(スーパー)エンジニアリングプラスチックなど]などが挙げられる。これらの材料は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの材料のうち、ステンレス鋼などの金属材料、PPSなどの耐熱性樹脂材料が好ましい。
【0108】
強度や生産性などの観点では、保護ケースの材質はステンレス鋼などの金属材料が好ましく、保護ケース全体を金属材料で形成してもよいが、検出装置全体を金属材料で保護又はカバーすると、保護ケース内部に無線通信機を収容した場合に通信又は電波がケースで遮断又は遮へいされ、センサで得られた情報又は信号を分析装置に安定して送信(発信)できなくなるおそれがある。そのため、保護ケースの少なくとも一部の領域(壁面)が、樹脂(耐熱性樹脂)を含む樹脂部で形成されているのが好ましい。このように樹脂部を含む保護ケースでは、通信又は電波を遮断又は遮へいすることなく通信でき、高い耐久性と良好な通信品質とを両立できる。
【0109】
無線通信機を収容する保護ケースでは、少なくとも一部の領域が樹脂部を含んでいればよく、全面を樹脂部として保護又はカバーしてもよいが、強度や生産性などの観点では、一部の領域を樹脂部で形成し、残部(樹脂部以外)の領域をステンレス鋼などの金属材料(金属部)で形成するのが好ましい。樹脂部の割合は、保護ケースの領域又は壁面(内壁面)全体に対して、例えば5~100面積%(例えば10~90面積%)、好ましくは20~80面積%(例えば30~70面積%)、さらに好ましくは35~60面積%(例えば40~50面積%)程度であってもよい。樹脂部の割合が少なすぎると、通信品質が低下したり、ケースが大型化するおそれがあり、多すぎると、生産性が低下するおそれがある。
【0110】
保護ケースの樹脂部はいずれの領域(壁面)であってもよく、特に制限されないが、保護ケースの少なくとも1つの壁面(例えば、無線通信機の取付位置に面した壁面など)を樹脂部とするのが好ましく、ケースの強度、生産性(成形性)、小型化などの観点から、本体及びその蓋体を備えた保護ケースの蓋体が樹脂部を含む形態(特に、蓋体が樹脂で形成された形態)が好ましい。蓋体を熱伝導率の高い金属材料で形成すると、内部を熱から保護するためにケースの大型化(周壁を高くするなど)が必要となるおそれがあるが、蓋体が熱伝導率の低い樹脂部を含む(特に、蓋体が樹脂で形成された)形態では、内部を熱から有効に保護でき、小型化し易い。
【0111】
樹脂(PPSなどの耐熱性樹脂)で形成された樹脂部における厚みは、例えば0.1~30mm(例えば1~15mm)、好ましくは3~10mm(例えば5~8mm)程度であってもよい。樹脂部の厚みが薄過ぎると、内部を有効に保護できないおそれがあり、厚過ぎると、通信品質が低下して、安定してノズル詰りを検出できないおそれがある。
【0112】
金属材料(ステンレス鋼など)で形成された金属部を含む場合、その厚みは、例えば0.01~30mm(例えば0.1~15mm)、好ましくは0.5~10mm(例えば1~6mm)程度であってもよい。金属部の厚みが薄過ぎると、内部を有効に保護できないおそれがあり、厚すぎると、成形性又は生産性が低下するおそれがある。本発明では、前述のように樹脂部を有していれば、良好な通信品質を確保できる。
【0113】
保護ケース内部に熱電発電モジュールを収容しても、受熱部(受熱面)又は放熱部(放熱面)[特に、受熱部(受熱面)]で効率よく受熱又は放熱して発電効率を向上するために、保護ケースには伝熱部材が取り付けられていてもよい。
【0114】
伝熱部材は、熱伝導率の高い材料を少なくとも含んでいればよく、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル、鉄、又はこれらの合金(アルミニウム合金、真鍮など)などの金属材料、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などのセラミック材料、ダイヤモンドなどの炭素材料などが挙げられる。伝熱部材は、必要に応じて、樹脂などの熱伝導率の低い材料を含んでいてもよく、熱伝導率の高い材料の割合は、伝熱部材中、例えば10質量%以上(例えば30質量%以上)、好ましくは50質量%以上(例えば70質量%以上)、さらに好ましくは90質量%以上(実質的に100質量%)程度であってもよい。これらの材料は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの材料のうち、アルミニウム、銅又はこれらの合金(アルミニウム合金など)などの金属材料が好ましい。
【0115】
伝熱部材の形状は特に制限されず、例えば、棒状、板状(プレート状)、ブロック状などであってもよく、受熱部(受熱面)又は放熱部(放熱面)に対向又は対応させて配置(設置)又は取り付け易い点で、板状(プレート状)が好ましい。
【0116】
伝熱部材の取付位置は特に制限されないが、例えば、熱電発電モジュールの受熱部(受熱面)又は放熱部(放熱面)近傍の保護ケース壁面、好ましくは、受熱部又は放熱部に対向(又は対応)する保護ケース壁面(外壁面及び/又は内壁面)に伝熱部材を取り付けるのが好ましい。
【0117】
また、伝熱部材は、受熱部又は放熱部に対して接触又は非接触の形態で保護ケースに取り付けられていてもよい。ノズル周辺温度(使用温度又は環境温度)が高温な環境で使用する場合、熱電発電モジュールの放熱部をノズル内側(流路側又は取付ベース部側)、受熱部をノズル外側(使用環境側)に向けて配置し、このノズル外側に向けた受熱部に対向して伝熱部材を配置するのが好ましく、伝熱部材は、受熱部に接触(面接触など)させて配置してもよい。しかし、製鉄プロセスなどのようにノズル周辺温度が高すぎる場合、伝熱部材が受熱部に接触した状態では、受熱部の温度がモジュールの耐熱温度又は動作温度(最大動作温度)を超えて、安定して発電できなくなったり、故障したりするおそれがある。そのため、ノズル周辺温度が特に高い用途では、伝熱部材と受熱部とを非接触状態で対向して配置するのが好ましい。このように非接触状態で配置しても、発電効率を有効に向上できるのみならず、耐熱性[耐熱温度、又は最大動作温度]が低いモジュールであっても使用でき、生産性も向上できる。
【0118】
また、受熱部又は放熱部に対して非接触状態で対向して配置する場合、伝熱部材(例えば、板状に成形された伝熱促進プレートなど)は、保護ケース壁面(例えば、受熱部又は放熱部に対向する壁面)の外壁面及び/又は内壁面に取り付けてもよく、少なくとも内壁面に取り付けるのが好ましい。伝熱部材は、内壁面(内側)に取り付けると、外壁面(外側)に取り付けた場合に比べて、意外にも受熱部及び放熱部間の温度差を効率よく確保できるようである。なお、伝熱部材が取り付けられた保護ケース壁面(外壁面及び/又は内壁面)は、前記樹脂部で形成されていてもよい。本発明では、熱伝導率の低い樹脂部に伝熱部材が取り付けられていても、意外にも有効に温度差を確保できるようである。
【0119】
伝熱部材が、受熱部又は放熱部に対して非接触状態で(所定の間隔をおいて)、対向する保護ケース内壁面に設置されている場合、伝熱部材と受熱部又は放熱部との距離(又は間隙)は、ノズル周辺温度(使用温度又は環境温度)や、熱電発電モジュールの耐熱性[耐熱温度、又は最大動作温度]などに応じて調整してもよく、例えば1~50mm(例えば3~30mm)、好ましくは5~20mm(例えば8~15mm)程度であってもよい。距離(又は間隙)が近すぎると、製鉄プロセスなどのようにノズル周辺温度が高すぎる用途では、モジュールが安定して発電できなくなったり、故障したりするおそれがあり、距離(又は間隙)が遠すぎると、温度差を確保し難く[例えば、ノズルを使用する設備の稼働状態(稼働中の環境温度など)によってはセンサの駆動(詰り検出)に必要な温度差を確保し難く]効率よく発電できなくなったり、保護ケースが大型化するおそれがある。また、伝熱部材が、板状に成形された伝熱促進プレートの場合、その厚みは上記距離(又は間隙)に合わせて調整してもよく、例えば0.1~50mm(例えば0.5~30mm)、好ましくは1~10mm(例えば2~5mm)程度であってもよい。
【0120】
なお、保護ケースは、その内部に、必要に応じて、配線(ケーブル)[例えば、発電モジュールとセンサとを繋ぐケーブルなど]などを収容又は区画するための配線収容箱(配線区画壁)を備えていてもよい。
【0121】
(分析装置)
センサで得られたデータ(一次データなど)は、必要に応じて、所定の処理をおこなってもよい。例えば、振動センサからの一次振動データは、アンプ(増幅器)で増幅してもよく、フィルタ回路(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドフィルタ回路)を利用して所定の振動情報(データ)を抽出又は処理(ノイズ除去処理)してもよい。入力レンジ(電圧レンジ)は、所定の値に設定すればよく、例えば1Vrmsとしてもよい。入力レンジが大きすぎると感度が不足(鈍化)し、小さすぎると、オーバーレンジ(入力オーバー)し、測定が困難となる。一次振動データは、通常、A/Dコンバータ(A/D変換回路)でA/D変換され、アナログ信号からデジタル信号へと変換される。演算手段(演算回路)では、所定時間及び/又は所定のサンプリング数に亘り測定された振動データの平均値(平均値データ)に限らず、サンプル数1のデータを用いてもよい。また、種々の処理関数を用いて、平均値、積算値、積算平均値、絶対値平均値、実効値(RMS)、標準偏差、最大値(PEAK)又は最小値、波高率(クレストファクタ、CF)、オーバーオール値(OA値)を算出し、測定値として用いてもよく、例えば1~10秒間(例えば2~9秒間)、好ましくは3~7秒間(例えば4~6秒間)の平均値又は積算値であってもよい。これらの測定値は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの測定値のうち、実効値(RMS)が好ましい。なお、FFT分析は必ずしも行わなくてもよく、FFT機能を備えていないセンサ又は分析装置を用いてもよい。また、測定値の算出は、連続的に行っても、断続的に行ってもよく、定期的(一定間隔ごと)に行ってもよい。また、測定値は必要な精度に応じ、算出された全ての測定値と閾値とを比較してもよく、無作為又は所定の条件で抽出された一部の測定値と閾値とを比較してもよい。
【0122】
ノズルの詰り率とセンサで得られたデータ(振動、温度など)とは所定の相関関係があり、例えば、ノズルの詰り率が高くなると、ノズルの振動強度は低下し、製鉄プロセスなどの高温環境下で使用するノズルでは、ノズル温度が上昇する関係が認められる。このノズルの詰り率と測定値(測定データ)の関係式(比例式、検量線)は、詰り率が既知である複数のノズルの各詰り率に対応するノズルの測定値(測定データ)に基づいて作成できる。また、実機(実際に稼働している機器)などにおいては、予め詰りのデータを測定することが困難な場合がある。このような場合、詰りのない状態でのデータを初期値とし、初期値から変化が観測された場合に、ノズルの詰り状況(詰り率)を確認する作業を繰り返すことにより、データを蓄積し、ノズルの詰り率と測定値との関係式を構築してもよい。また、関係式に基づいて、所望の詰り率に対応する閾値を設定することができる。さらに、関係式や測定値の経時的な推移(時系列データ)などに基づいて、任意の詰り率のノズルの詰りが発生する時期を予測してもよく、予測に基づいて、ノズルのメンテナンス作業(例えば、ノズルの交換又はノズルの清掃)を実施し、稼働中のノズル詰りを未然に防いでもよい。
【0123】
(閾値)
閾値は、流量、流体圧などの使用条件(使用環境又は用途)などに応じて任意に設定することができ、予めノズルの測定値(振動、温度など)とノズルの詰り率との関係から定めた関係式に基づいて設定してもよい。関係式に基づいて、所望のノズルの詰り率に応じて閾値を設定することもできる。例えば、詰り率10~70%(例えば15~60%)、好ましくは20~50%(例えば25~45%)、より好ましくは30~40%(例えば30%)に対応した閾値を設定してもよく、例えば、閾値を詰り率30%に設定すると、詰り率30%と早期の詰りを検出することもできる。
【0124】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、詰り率は、噴霧流量の減少割合(減少率)から算出でき、例えば、所定条件下における詰りのない初期状態(詰り率0%)の噴霧流量(特に、二流体ノズルでは液体の流量)に対し、詰り進行後に同一条件下で噴霧したときの噴霧流量の減少割合(減少率)であってもよく、下記式により算出してもよい。
【0125】
詰り率[%]=(初期状態の噴霧流量-詰り進行後の噴霧流量)÷初期状態の噴霧流量×100。
【0126】
また、閾値は、1又は複数設定してもよく、段階的に異なる詰り率に対応する複数の閾値を設定し、ノズルの詰り率の段階に基づいて、ノズルのメンテナンス時期を設定してもよい。
【0127】
分析装置(解析装置)は、特に制限されず、複数の各ノズルに関連付けた測定値と閾値とを比較し、測定値が閾値に到達するとき、ノズル詰りが発生していると判定する比較手段(比較回路)[判定手段(判定回路)]を備えていればよい。また、ノズル詰りの検出及びノズル詰りが発生しているノズル番号を報知する報知手段を備えていてもよい。
【0128】
また、データ(情報)を時系列的に記録(記憶)し、蓄積する記憶手段[記憶回路(メモリ回路)]を備えていてもよい。時系列データを用いて、過去のノズル状態(ノズルの詰り率)を確認することもでき、ノズル状態と対応する時期に製造した製品(例えば、鋳片)とを関連付けて(紐づけて)追跡してもよい。また、時系列データを利用(フィードバック)してノズル詰りの時期を予測してもよく、予測した時期に基づいて詰り防止措置(例えば、清掃、洗浄、マイクロバブル水の噴射)を行ってもよい。また、時系列データを利用し、設備条件(例えば、ノズルの形状、大きさ、材質)、噴出物の種類(例えば、リサイクル水、水道水及び空気)などを入力してノズル又は設備の寿命を設備の設計段階で予測してもよい。また、分析装置をインターネットに接続し、IoT(Internet of Things)により、データを現場又は遠隔から確認し、ノズル詰りを検出した場合、設備の停止又は詰り除去動作(例えば、マイクロバブル水の噴射)などを遠隔で指示(操作)してもよい。
【0129】
また、分析装置は、A/Dコンバータ(A/D変換回路)、制御手段(制御回路)、演算手段(演算回路)などの他の手段又は回路を備えていてもよい。
【0130】
なお、上記手段又は回路は、センサや無線通信機などの他の部材又は機器が備えていてもよい。例えば、センサが、A/Dコンバータ(A/D変換回路)、演算手段(演算回路)などを備えていてもよい。
【0131】
(報知装置又は報知手段)
報知装置(報知手段)は、必ずしも必要ではないが、検出されたノズル詰りを有効に利用するため、報知するのが好ましい。報知装置は、特に制限されず、ノズル詰りの検出及びノズル詰りが発生しているノズルを報知する報知手段を備えていればよく、表示装置(例えば、モニター)であっても、音響装置(例えば、アラーム)であってもよい。また、報知装置(報知手段)は分析装置に内蔵されていてもよい。
【0132】
(検出位置)
詰りは、主にノズル[例えば、ノズルチップ、ノズル本体(パイプ部)など]で発生することが多いが、ノズルに流体を供給する配管で詰りが発生することもある。本発明では、配管で生じた詰りも有効に又は精度よく検出できる。そのため、ノズル詰り検出装置は、必ずしもノズルの近傍に設置しなくてもよく、例えば、流体を供給するための供給配管(分岐部など)などに取り付けられていてもよい。
【0133】
また、連続鋳造設備の二次冷却帯のようにノズルが複数ある場合、ノズル詰り検出装置は、前述した例のように、1つのノズルに対して、必ずしも1つの検出装置を備えていなくてもよく、検出装置の数は、ノズル総数に対して多くてもよく、少なくてもよい。
【0134】
例えば、複数のエリア内に、それぞれ複数のノズルが配置され、エリア毎に1又は複数の検出装置を備えていてもよい。具体的には、
図9に示す。
図9(a)は、連続鋳造設備の二次冷却帯の概略側面図であり、鋳片41を搬送するために、両側(両面側)に複数のロール42(片側のみ図示)が配置され、これらの複数のロール42のロールの間から、冷却水を噴霧又は吐出するための複数のノズルを備えた二次冷却帯が配置されている。
図9(b)は、前記二次冷却帯を鋳片41側から見た概略底面図であり、鋳片41の幅方向(ロール42の長さ方向)に1列当たり5又は6本のノズルが並んでおり、各列のノズルが鋳片41の長さ方向(流れ方向)に互い違いに配置されている。各列の5又は6本のノズルには、供給配管43を経由して所定位置(分岐部)で分岐された流体が供給されており、例えば、供給配管43は、鋳片41の長さ方向に延びる供給配管44に接続され、この供給配管44の両端部で供給配管45a,45bに接続(又は分岐)している。また、前記供給配管45aは鋳片41の長さ方向に延びる供給配管46に接続され、この供給配管46がさらに、供給配管47a,47b,47c,47dにそれぞれ接続(又は分岐)している。前記供給配管47aは、鋳片41の幅方向に延びる供給配管48に接続され、この供給配管48がさらに5つに分岐されて、ノズル列49を形成する5本のノズルにそれぞれ接続されている。すなわち、供給配管43から供給された流体は、供給配管44,45a,46,47a,48の順に経由(又は分岐)して、ノズル列49の5本のノズルからそれぞれ噴霧可能である。本発明では、例えば、供給配管47a(ノズル列49に対応して5つに分岐された供給配管48の上流側)に検出装置を設置することで、ノズル列49を形成する5本のノズル又はその配管(供給配管47a下流側の配管など)いずれかに詰りが発生したことを検出してもよい。すなわち、ノズル及びその配管を所定の領域に区画(区分)して、各領域の詰りを検出してもよい。さらに、ノズル列毎に、対応する供給配管近傍(特に、上流側)で検出装置を設置することで、ノズル詰りの発生又は発生箇所を精度よく又は効率よく特定してもよい。
【0135】
なお、ノズル列に対応する供給配管のみならず、必要に応じて、複数のノズル列で形成されたエリア(又はノズル郡)に対応する供給配管の分岐部に検出装置を設置してもよく、例えば、エリア(又はノズル郡)50に対応する供給配管45a(エリア50に対応して4つに分岐された供給配管46の上流側)に検出装置を設置して、エリア50を形成する22本のノズル又はその配管(供給配管45a下流側の配管など)いずれかに詰りが発生したことを検出してもよい。この場合においても、エリア(ノズル郡)毎に、供給配管の分岐部近傍で検出装置を設置することで、ノズル詰りの発生又は発生箇所を精度よく又は効率よく特定してもよい。
【実施例0136】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0137】
[実施例1]ノズル詰り検出の検証
図1~6に示すノズル詰り検出装置を備えたノズルを用いて、下記条件にて、詰りを検知可能か検証した。
【0138】
(試験ノズル及び検出装置の詳細)
試験ノズル:水と空気とを流体とする二流体ノズル
ノズルチップ:フラットスプレータイプ(SUS303)
ノズル本体(パイプ部):ステンレス鋼(SUS304TP)のパイプ
取付ベース部:ステンレス鋼ブロック材(SUS303、150mm×135mm×35mm)に、流路及び取付用ネジ穴を形成したもの
流体封止プレート:ステンレス鋼板(SUS304)、厚み3mm
熱電発電モジュール:(株)KELK製「KELGEN SD/KSGD-SSV3-A00」、放熱面を取付ベース部側(流路側)に向け、流体封止プレートに接触させて設置
振動センサ:(株)KELK製「KELGEN SD/KSGD-SSV3-A00」、周波数レンジ~2.6kHz、サンプリング周波数6kHz、測定時間300msec、無線通信機内蔵、水と空気とが混合(合流)される混合部に対応する位置に、中間部材としてのセンサ取付プレート(SUS303)を介して設置
配線収容箱:ABS樹脂製の箱、厚み約2mm
保護ケース本体(周壁又は側壁):ステンレス鋼(SUS304)の枠体、厚み3mm
保護ケース蓋体(天井壁):PPS樹脂(ポリフェニレンスルフィド樹脂)板、厚み6mm
伝熱部材:アルミニウム合金板(A5052)、61mm×44mm×厚み3mm、熱電発電モジュールの受熱面に対応する保護ケース蓋体内壁面に設置(伝熱部材と熱電発電モジュールの受熱面との間隔(間隙)10mm)
【0139】
(試験方法)
1)ノズル詰り検出装置を取り付けた試験ノズルを、ノズル環境温度を自由に設定可能なノズル詰り評価装置(特開2021-109202号公報の
図1などの記載に準じた装置)に設置し、ノズル周辺の環境温度を熱風発生機(ヒータユニット)で150℃に調整した。
【0140】
2)流体としての水(冷却水、温度約15~25℃)の噴霧水量が、10L/min、流体としての空気(温度約30~50℃)の流量が、5.0m3/h(nor.)となるように、ノズルから噴霧し、詰りの無い状態(詰り率0%、初期状態)における振動データ[実効値(RMS)]を測定した。
【0141】
3)オリフィス部に異物を詰めることで、ノズルチップにおいて詰りを発生させた。すなわち、異物の詰め方によって噴霧水量を調整し、詰り率が10~90%程度となるように設定して、各詰り率における振動データ[実効値(RMS)]を測定した。
【0142】
4)得られた各データは、無線通信機により、管理用パソコンに送信した。
【0143】
[実施例2]ノズル詰り検出の検証
流体である水(冷却水)の供給配管に流量調整バルブを設置し、バルブの開閉により冷却水供給配管において詰りが発生した状態を再現したこと以外は、実施例1と同様にして、詰りを検知可能か検証した。すなわち、オリフィス部に異物を詰めることなく、前記バルブの開度で噴霧水量を調整し、詰り率が30~90%程度となるように設定して、各詰り率における振動データ[実効値(RMS)]を測定した。
【0144】
[実施例3]ノズル詰り検出の検証
ノズル本体(パイプ部)に流量調整バルブを設置し、バルブの開閉によりパイプ部において詰りが発生した状態を再現したこと以外は、実施例1と同様にして、詰りを検知可能か検証した。すなわち、オリフィス部に異物を詰めることなく、前記バルブの開度で噴霧水量を調整し、詰り率が30~90%程度となるように設定して、各詰り率における振動データ[実効値(RMS)]を測定した。
【0145】
[実施例4]ノズル詰り検出の検証
振動センサに代えて、温度センサ(熱電対)を備えた検出装置(
図7~8に示す装置)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、詰りを検知することが可能か検証した。
【0146】
なお、温度センサ(熱電対)、無線通信機及び熱電発電モジュールとして(株)KELK製「KELGEN SD/KSGD-STK-A01」を用い、温度センサ(熱電対)の先端部(測温部)をノズルチップ先端から100mmの位置でパイプ部表面に溶接して設置し、温度を測定し、得られた温度データは、無線通信機により、管理用パソコンに送信した。
【0147】
[実施例5]ノズル詰り検出の検証
二流体ノズルに代えて、水を流体とする一流体ノズル[フラットスプレーノズル(C3604)]に変更し、取付ベース部の空気供給流路の入口(空気供給配管給と接続する箇所)を遮断したこと以外は、実施例2と同様にして、詰りを検出可能か検証した。
【0148】
[実施例6]ノズル詰り検出の検証
二流体ノズルに代えて、水を流体とする一流体ノズル[フラットスプレーノズル(C3604)]に変更し、取付ベース部の空気供給流路の入口(空気供給配管給と接続する箇所)を遮断したこと以外は、実施例4と同様にして、詰りを検出可能か検証した。
【0149】
実施例1~6で得られた結果を以下の表に示す。また、実施例1~6の検知結果について、詰り率0%での観測値(初期値)に対する各詰り率での観測値の割合(変化割合)の絶対値を下記式により算出し、その最大値を以下の基準で評価した。なお、振動値[加速度のRMS(実効値)]を観測した実施例1~3及び5では、各詰り率におけるX、Y又はZ方向の各変化割合のうち、最大値を採用して以下の基準で評価した。
【0150】
変化割合[%]=(各詰り率での観測値-詰り率0%での観測値)/詰り率0%での観測値×100
【0151】
◎…60%以上
○…40%以上、60%未満
△…10%以上、40%未満
×…10%未満。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
表1~7の結果から明らかなように、いずれの実施例においても、熱電発電モジュールにより発電した電力により、振動又は温度データを測定及び送信でき、ノズルの詰りを検出可能であった。
【0160】
実施例1では、ノズルチップに詰りが発生すると振動値RMSが低下し、詰りを検知することができた。また、ノズルチップだけでなく、実施例2(冷却水供給配管)や実施例3(パイプ)でノズルチップ以外の箇所に詰りが生じ噴霧水量が減った場合でも、同様に振動値(加速度)RMSが低下する傾向が見られ、詰りを検知可能であった。
【0161】
実施例4では、振動センサに代えて温度センサ(熱電対)を用いて検出した例であるが、詰りにより噴霧水量が減ると、流体からの冷却が弱まることでパイプ温度が上昇し、詰りを検知できた。振動センサを用いた実施例2に比べると、変化の割合が小さいため、検出精度(又は感度)としては実施例2より低く、検知結果は△評価であった(詰り率が低い段階では検知し難かった)。
【0162】
実施例5は、二流体ノズルに代えて、一流体ノズルを用いた例であるが、二流体ノズルを用いた実施例2と同様に振動値RMSが低下する傾向が見られ、詰りを検知可能であった。実施例2に比べると、振動値(加速度)RMSが小さいため、検出精度(又は感度)としては実施例2より若干低く、検知結果は○評価であった(詰り率が低い段階では若干検知し難かった)。
【0163】
実施例6では、振動センサに代えて温度センサ(熱電対)を用いて、一流体ノズルの詰りを検出した例であるが、実施例4と同様に、詰りにより噴霧水量が減ると、流体からの冷却が弱まってパイプ温度が上昇し、詰りを検知できた。また、振動センサを用いた実施例5に比べると、変化の割合が小さいため、検出精度(又は感度)としては実施例5より低く、検知結果は△評価であった(詰り率が低い段階では検知し難かった)。
【0164】
[実施例7]保護ケースによる通信への影響
(実施例7-1)保護ケースなし
振動センサ及び無線通信機を備えた熱電発電モジュール[(株)KELK製「KELGEN SD/KSGD-SSV3-A00」]の受熱面をドライヤーで温め、受熱面及び放熱面に15~20℃程度の温度差をつけて、室温下で無線通信機を稼働したときの通信品質を評価とした。
【0165】
なお、通信品質は、上記KELGEN SDに付属の管理ソフトにより、モニタ画面に表示される相対電波強度LQI(Link Quality Indicator)で評価した。LQIは、数値が大きいほど受信電波強度が高いことを示し、50以上が良好な通信の目安となる。
【0166】
(実施例7-2~7-5)保護ケースあり
受熱面及び放熱面に温度差をつけた後、表8記載の所定の材質及び厚みで形成された保護ケース(SUS製又は樹脂製の円筒形の容器)に素早く収容したこと以外は、実施例7-1と同様に試験して、無線通信機の通信品質を評価した。
【0167】
実施例7-1~7-5で得られた結果を下記表に示す。
【0168】
【0169】
表8の結果から明らかなように、保護ケースの材質をステンレス鋼とした実施例7-2~7-4では、通信品質が著しく低下するか、通信不可となり、データ通信用のケーブル配線が必要な場合があることが分かった。一方、樹脂製の保護ケースを用いた実施例7-5では、問題なくデータ通信可能であった。
【0170】
[実施例8]伝熱部材の効果
伝熱部材が、熱電発電モジュールの受熱部及び放熱部の温度差(受熱部中央部分の温度-放熱部中央部分の温度)に与える影響を検証するために、以下のように有限要素法による数値解析(伝熱解析)を行って、温度分布を求めた。
【0171】
(実施例8-1)伝熱部材なし
図10で示される解析メッシュ(簡易モデル)、下記記載の境界条件及び各部材の物性値に基づいて、有限要素法により伝熱解析した。なお、伝熱解析は、保護ケースの環境側表面又は外面[すなわち、解析メッシュ(簡易モデル)上面及び左右面]の温度を150℃に固定した条件、及び環境温度(外部雰囲気温度)150℃又は300℃で所定の熱伝達係数を与えた条件の3つの条件について行い、熱伝達係数は一般的な値である10.0W/m
2・Kに設定した。
【0172】
【0173】
【0174】
解析により得られた温度分布のコンター図(等値線図)を
図11に、解析メッシュ中央部断面の温度分布を示すグラフを
図12に、受熱部-放熱部間(中央部断面)の温度差を表11にそれぞれ示す。
【0175】
(実施例8-2)伝熱部材あり(外側)
図10に代えて、
図13で示される解析メッシュ(簡易モデル)を用いたこと以外は、実施例8-1と同様にして、有限要素法により伝熱解析した。
【0176】
解析により得られた温度分布のコンター図(等値線図)を
図14に、解析メッシュ中央部断面の温度分布を示すグラフを
図15に、受熱部-放熱部間(中央部断面)の温度差を表11にそれぞれ示す。
【0177】
(実施例8-3)伝熱部材あり(内側)
図10に代えて、
図16で示される解析メッシュ(簡易モデル)を用いたこと以外は、実施例8-1と同様にして、有限要素法により伝熱解析した。
【0178】
解析により得られた温度分布のコンター図(等値線図)を
図17に、解析メッシュ中央部断面の温度分布を示すグラフを
図18に、受熱部-放熱部間(中央部断面)の温度差を表11にそれぞれ示す。
【0179】
なお、実施例8-1~8-3では、伝熱部材による影響を確認するため、各解析メッシュにおいて、伝熱部材以外の部分は同じであり、例えば、受熱部から保護ケース蓋体までの距離は、いずれも13mmに統一されている。そのため、伝熱部材を保護ケース蓋体の内壁面に設置した実施例8-3では、受熱部から伝熱部材までの距離(間に介在する空気層の厚み)が10mmとなり、実施例8-1及び8-2における空気層の厚み13mmと異なるが、この差は受熱部-放熱部間の温度差に大きく影響しない(空気層が介在すること自体の影響が大きく、空気層の厚み3mmの差は、伝熱部材による影響を確認する上で問題とならない)。
【0180】
【0181】
表11及び
図10~18の結果から明らかなように、伝熱部材がない場合(実施例8-1)に対して、伝熱部材をケース内側に取り付けた場合(実施例8-3)では、いずれの条件においても必要な温度差を得易かった。また、伝熱部材をケース外側に取り付けた場合(実施例8-2)では、定常状態における温度差が、内側に取り付けた場合(実施例8-3)と同程度となることが予想されたが、意外なことに、伝熱部材がない場合(実施例8-1)と同程度又はそれ以下であり、内側に取り付けた場合(実施例8-3)の方が、設備の稼働条件(稼働中の環境温度など)にかかわらず、有効に(容易に又は効率よく)発電でき、データの取得及び送信の頻度を向上できて好ましいことが分かった。
【0182】
[実施例9]平面状流路(水溜り部又は液溜り部)の効果
平面状流路(水溜り部又は液溜り部)が、熱電発電モジュールの受熱部及び放熱部の温度差(受熱部中央部分の温度-放熱部中央部分の温度)に与える影響を検証するために、以下のように有限要素法による数値解析(伝熱解析)を行って、温度分布を求めた。
【0183】
(実施例9-1)平面状流路なし
図19で示される解析メッシュ(簡易モデル)及び下記記載の境界条件及び実施例8-1(表10)に記載の各部材の物性値に基づいて、有限要素法により伝熱解析した。なお、境界条件として、保護ケースの環境側表面又は外面[すなわち、解析メッシュ(簡易モデル)上面及び左右面]の温度を150℃に固定した条件に設定し、水温は27℃に設定した。
【0184】
解析により得られた温度分布のコンター図(等値線図)を
図20に、解析メッシュ中央部断面の温度分布を示すグラフを
図23に、受熱部-放熱部間(中央部断面)の温度差を表12にそれぞれ示す。なお、
図23のグラフ横軸における基準位置は、解析メッシュ(簡易モデル)の放熱部の下側3mmの位置を意味する。
【0185】
(実施例9-2)平面状流路あり
図19に代えて、
図21で示される解析メッシュ(簡易モデル)を用いたこと以外は、実施例9-1と同様にして、有限要素法により伝熱解析した。
【0186】
解析により得られた温度分布のコンター図(等値線図)を
図22に、解析メッシュ中央部断面の温度分布を示すグラフを
図23に、受熱部-放熱部間(中央部断面)の温度差を表12にそれぞれ示す。
【0187】
【0188】
表12及び
図19~23の結果から明らかなように、平面状流路(水溜り部)がない場合(実施例9-1)に対して、平面状流路(水溜り部)を設けた場合(実施例9-2)では、温度差が約6℃も高く、有効に(容易に又は効率よく)発電でき、データの取得及び送信の頻度を向上できて好ましいことが分かった。
本発明のノズル詰り検出装置は、ケーブル(電源ケーブルなど)による配線を削減又はなくすことができ、取り付け(又は取り回し)が容易であって、多数のノズルに適用してもケーブル(又は配線)同士の絡み合いなどを抑制でき、有効に施工性(取り付け容易性)を向上できるのみならず、メンテナンス性に優れている。また、耐久性(又は耐熱性)に優れ、過酷な環境下であっても使用できるとともに、ノズル詰りを精度よく又は効率よく検出できる。さらに、稼働中、特に鋳片などの噴射対象物に対して噴射中であっても、簡易な構造でノズル詰りを検出することができる。そのため、本発明は、流体を噴霧又は噴射可能な種々のノズルに適用でき、隣接する複数のノズルにより形成されるノズル帯、例えば、連続鋳造設備の二次冷却帯やインクジェットプリンタなどのノズル帯などに適用できる。特に、工業用水などが利用されてノズル詰りが生じやすく、しかもノズル詰りが品質に大きく影響する製鉄プロセスで使用されるノズル(例えば、連続鋳造設備の二次冷却帯のノズルなど)に有利に適用される。