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特開2024-179920樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179920
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/12 20060101AFI20241219BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241219BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20241219BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/14
B29C45/02
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099257
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】川合 拓実
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD19
4F202AD24
4F202AG28
4F202AH37
4F202AM32
4F202AR01
4F202AR07
4F202AR08
4F202CA12
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CK12
4F202CQ01
4F206AD19
4F206AD24
4F206AG28
4F206AH37
4F206AM32
4F206AR01
4F206AR07
4F206AR08
4F206JA02
4F206JB12
4F206JB17
4F206JF05
4F206JL02
4F206JQ81
4F206JQ90
4F206JT07
4F206JT21
4F206JT32
(57)【要約】
【課題】成形型に対する基板の位置決めを高精度に行うことができる樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂成形システムは、位置決め孔49aを有する成形対象物Saの位置決めを行う位置決め部37aを有し、位置決め部37aが位置決め孔49aに通された状態で成形対象物Saが載置される成形型Cと、位置決め孔49aを位置決め部37aに接触させることにより、成形対象物Saの位置決め部37aに対する位置決めを行う寄せ機構16を有する搬送装置と、を備えている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め孔を有する成形対象物の位置決めを行う位置決め部を有し、前記位置決め部が前記位置決め孔に通された状態で前記成形対象物が載置される成形型と、
前記位置決め孔を前記位置決め部に接触させることにより、前記成形対象物の前記位置決め部に対する位置決めを行う寄せ機構を有する搬送装置と、
を備えた樹脂成形システム。
【請求項2】
前記寄せ機構を制御する制御部をさらに備え、
前記寄せ機構は、前記成形対象物を押す成形対象物押し部と、前記成形対象物押し部を移動させる駆動部と、を有する請求項1に記載の樹脂成形システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記成形対象物押し部を第1移動速度で前記成形対象物に接近させ、前記成形対象物に接触する手前で前記第1移動速度よりも低速の第2移動速度に減速させ、前記第2移動速度で前記成形対象物に接触させて位置決めを行うように前記駆動部を制御する請求項2に記載の樹脂成形システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記成形対象物に接触する手前の位置まで速度制御を行い、前記成形対象物に接触する手前の位置で押付け力制御を行って位置決めを行うように前記駆動部を制御する請求項2に記載の樹脂成形システム。
【請求項5】
前記駆動部は、電動アクチュエータであり、
前記制御部は、前記電動アクチュエータの駆動電流が所定値を上回ると、前記電動アクチュエータへの通電を停止させることにより前記成形対象物押し部の移動を停止させる請求項2から4のいずれか一項に記載の樹脂成形システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記電動アクチュエータの前記駆動電流が前記所定値を上回って前記電動アクチュエータへの通電を停止させた後、再び前記電動アクチュエータに通電する請求項5に記載の樹脂成形システム。
【請求項7】
前記位置決め部は断面が円形状のピンであり、前記位置決め孔のうち少なくとも前記位置決め部に接触する面は平面状である請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂成形システム。
【請求項8】
前記位置決め孔は、前記成形対象物が載置される前記成形型の面に垂直な方向に沿って見たときに矩形状である請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂成形システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の樹脂成形システムを用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記位置決め部が前記位置決め孔に通るように前記成形対象物を前記成形型に載置した後、前記寄せ機構により前記位置決め孔を前記位置決め部に接触させて前記成形対象物の前記位置決め部に対する位置決めを行うと共に樹脂材料を供給する供給工程と、
型締め機構により前記成形型を型締めする型締め工程と、
前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含む樹脂成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等が固定された基板は、一般的に樹脂封止することにより電子部品として用いられる。従来、基板等を樹脂封止するための樹脂成形システムとして成形型を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には上型と下型とを含む成形型を有する樹脂成形システム(特許文献1では半導体装置)が開示されている。特許文献1の樹脂成形システムでは、下型に対して基板を位置決めする構成について記載されている。基板は、その長手方向の中央部に基準点となる円形の開口形状を有する主位置決め孔(特許文献1では孔部)と、長手方向における主位置決め孔の両側に細長く形成された開口形状を有する2つの副位置決め孔とを備えている。下型は、基板の3つの位置決め孔に対応する、円形の平面外形を有する3つの位置決め部(特許文献1ではピン)を有している。そして、3つの位置決め孔に対応する3つの位置決め部が通されることにより、下型に対して基板が位置決めされる。特に、主位置決め孔と対応する位置決め部とにより、基板の位置決めがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-077267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の樹脂成形システムにおいては、下型に基板を載置しやすくするため、主位置決め孔の内径を、対応する位置決め部の外径よりも若干大きくしている。また、基板の短手方向に沿う副位置決め孔の細長く形成された開口の長さは主位置決め孔の内径よりも大きい。そのため、基板を下型に載置した状態、すなわち、位置決め部が主位置決め孔に通された状態であっても、基板は下型に対してあらゆる方向に僅かに移動可能となり、半導体チップの種類によっては、必要な位置決め精度が得られないおそれがある。
【0006】
そこで、成形型に対する基板の位置決めを高精度に行うことができる樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樹脂成形システムの一つの実施形態は、位置決め孔を有する成形対象物の位置決めを行う位置決め部を有し、前記位置決め部が前記位置決め孔に通された状態で前記成形対象物が載置される成形型と、前記位置決め孔を前記位置決め部に接触させることにより、前記成形対象物の前記位置決め部に対する位置決めを行う寄せ機構を有する搬送装置と、を備えている。
【0008】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の一つの実施形態は、上記に記載の樹脂成形システムを用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記位置決め部が前記位置決め孔に通るように前記成形対象物を前記成形型に載置した後、前記寄せ機構により前記位置決め孔を前記位置決め部に接触させて前記成形対象物の前記位置決め部に対する位置決めを行うと共に樹脂材料を供給する供給工程と、型締め機構により前記成形型を型締めする型締め工程と、前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、成形型に対する基板の位置決めを高精度に行うことができる樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】樹脂成形システムを示す平面模式図である。
図2】成形型を表す正面模式図である。
図3】ローダを表す正面模式図である。
図4】成形前基板を下型に載置するときのローダの動きを表す断面図である。
図5】成形前基板を下型に載置するときのローダの動きを表す断面図である。
図6】成形前基板を下型に載置するときのローダの動きを表す断面図である。
図7】成形前基板を下型に対して位置決めするときの寄せ機構の動きを表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0012】
半導体チップ等が固定された基板(成形対象物)は樹脂封止することにより電子部品として用いられる。成形対象物を樹脂封止する技術としては、トランスファ方式等が挙げられる。トランスファ方式の一つとして、成形型の上型に離型フィルムを供給し、下型に成形対象物を載置し、成形型のポットに粉粒体状樹脂を固めた樹脂タブレットを供給して加熱、溶融し、溶融樹脂をキャビティに供給して成形対象物を樹脂成形する方式が挙げられる。
【0013】
樹脂タブレットは、粉粒体状の樹脂を押し固めた固形樹脂で形成され、加熱により溶融して液状の溶融樹脂となる。樹脂タブレットは、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂は、加熱すると粘度が低下し、さらに加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。以下に説明するように、半導体チップ等が固定された成形前基板を樹脂成形して封止する場合には、熱硬化性樹脂を用いることが望ましい。
【0014】
〔全体構成〕
以下、トランスファ方式の樹脂成形システム30を一例として説明する。図1には、本実施形態における樹脂成形システム30の平面模式図が示されている。樹脂成形システム30は、収容モジュール2、成形モジュール3、供給モジュール4、制御部6、ローダ10(搬送装置の一例)、及びアンローダ42を備えている。成形モジュール3は、成形対象物を樹脂封止する部分であり、成形前基板Sa(成形対象物の一例)を保持する成形型Cを有している。成形型Cは上型UMと下型LMとを有する。本実施形態における樹脂成形システム30は、半導体チップが固定された成形前基板Saを樹脂成形する装置である。
【0015】
供給モジュール4は、成形モジュール3に成形前基板Sa及び樹脂タブレットT(樹脂材料の一例)を供給するためのものであり、基板供給機構43と樹脂供給機構45とを含んでいる。基板供給機構43は、成形前基板Saをストックしており、成形前基板Saを搬送に適した状態に配置する。成形前基板Saには、複数個の半導体チップが縦方向及び/又は横方向に整列して、固定されている。樹脂供給機構45は、樹脂タブレットTをストックしており、樹脂タブレットTを搬送に適した状態に配置する。なお、成形前基板Saは、1つの半導体チップが固定されているものでもよい。
【0016】
ローダ10は、供給モジュール4内で待機している。ローダ10は、供給モジュール4内で基板供給機構43から成形前基板Saを受け取り、また、樹脂供給機構45から樹脂タブレットTを受け取って、供給モジュール4から成形モジュール3に亘って背面側(図1において上方側)に配設された不図示のレール上を供給モジュール4から成形モジュール3まで移動する。そして、成形モジュール3の下型LMに成形前基板Saと樹脂タブレットTを受け渡す。その後、ローダ10は、再びレール上を供給モジュール4まで移動する。
【0017】
成形モジュール3は、成形型Cにより、成形前基板Saを樹脂封止して成形済基板Sb(樹脂成形品の一例)を成形する。本実施形態においては、成形モジュール3は1つ設けられているが、2つ以上であってもよい。2つ以上の場合、それぞれの成形モジュール3は独立して装着又は取り外し可能である。
【0018】
収容モジュール2は、基板収容部46を有している。アンローダ42は、収容モジュール2内で待機しており、収容モジュール2から成形モジュール3に亘って背面側(図1において上方側)に配設された不図示のレール上を成形モジュール3まで移動して成形済基板Sbを成形モジュール3から取り出した後、再びレール上を収容モジュール2まで移動して基板収容部46に成形済基板Sbを収容する。成形済基板Sbでは、半導体チップが、溶融樹脂Ta(樹脂材料の一例)が固化した硬化樹脂により封止されている。
【0019】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、及びRAM(Random Access Memory)のような記憶装置を含んでいる。制御部6は、記憶装置に記憶された制御プログラムをプロセッサで実行することにより、樹脂成形システム30の作動を制御する。以下で説明する樹脂成形システム30の作動は、特段の説明のない限り、制御部6の作動指令に基づいて行われる。以下の説明において、制御部6の作動指令については原則的に説明を省略し、必要に応じて制御部6の作動指令について説明する。
【0020】
以下、成形モジュール3の樹脂成形システム30について詳述する。
【0021】
成形モジュール3は、図2に示すように、トランスファ機構72が設けられた成形型Cの下型LMと、下型LMに対向して設けられ、溶融樹脂Taが注入される上型キャビティMCaが形成された上型UMと、下型LM及び上型UMを型締めする型締め機構5とを有する。下型LMは、型締め機構5により昇降する可動プラテン35に下型ホルダ34を介して設けられている。上型UMは、上部固定盤(不図示)に上プラテン32を介して設けられている。型締め機構5は、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0022】
本実施形態の成形型Cでは、下型LMのポットブロック71を挟んで両側に1つずつ成形前基板Saを載置して、1回の樹脂成形操作によって2つの成形前基板Saを樹脂成形する構成となっているが、特にこの構成に限定されず、1回の樹脂成形操作によって1つの成形前基板Saを樹脂成形する構成であってもよい。型締め機構5の作動は、制御部6により制御される。成形前基板Saは、ローダ10により上型UMと下型LMとの間に搬送された後、下型LMに載置される。上型キャビティMCaが形成されている上型UMには離型フィルムFが配置されている。離型フィルムFの材料としては、耐熱性、離型性、柔軟性、伸展性等の特性を有する樹脂材料が用いられ、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン/四フッ化エチレン共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、FEP(四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン共重合体)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等が用いられる。
【0023】
樹脂注入機構7は、樹脂タブレットTを収容するポット71aが形成されたポットブロック71と、ポット71a内に設けられたプランジャ72aを有するトランスファ機構72とを備えている。トランスファ機構72は、プランジャ72aと、プランジャ72aを駆動するプランジャ駆動機構72cとを有している。なお、プランジャ72aは、ポット71aに収容された樹脂タブレットTが加熱されて溶融した溶融樹脂Taを圧送するものである。プランジャ駆動機構72cの作動は、制御部6により制御される。
【0024】
プランジャ駆動機構72cは、複数のプランジャ72aを複数のポット71aに対して一括して同じ移動量で昇降移動させるものである。本実施形態のプランジャ駆動機構72cは、プランジャ72aの下側に設けられている。このプランジャ駆動機構72cとしては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0025】
ポットブロック71は、下型LMに成形前基板Saが載置された状態で、成形前基板Saと同じ高さになるように配置されている。つまり、ポットブロック71の端面71bは、下型LMの上面36よりも上型UMの方向に突出している。
【0026】
上型UMには、成形前基板Saに固定された半導体チップ48を収容すると共に溶融樹脂Taが注入される上型キャビティMCaが形成されている。また、上型UMには、ポット71aに対向する部分に凹部であるカル部81が形成されると共に、当該カル部81と上型キャビティMCaを接続するランナ部82が形成されている。上型UMには、上型キャビティMCaに対してポット71aと反対側に、不図示のエアベントが形成されている。
【0027】
型締め機構5により上型UM及び下型LMを型締めすると、カル部81、ランナ部82から形成される樹脂流路が、複数のポット71aと上型キャビティMCaとを連通させる。このとき、上型UMの下面と下型LMの上面36との間に成形前基板Saが挟まれることになる。この状態でプランジャ駆動機構72cによりプランジャ72aを上昇させて、溶融樹脂Taを上型キャビティMCaに注入すると、成形前基板Saの半導体チップ48が樹脂封止される。
【0028】
下型LMにおける上型UMと対向する面には、上型UMに向かって複数(本実施形態では3つ)の位置決めピン37(位置決め部の一例)が配置されている。3つの位置決めピン37は、下型LMの上面36に配置される。より詳細には、3つの位置決めピン37の1つは、上型キャビティMCaに対してポットブロック71に近い側であって下型LMの上面36の中央部に配置されている。他の2つは、ポットブロック71に沿って、下型LMの上面36の中央部に配置された1つの位置決めピン37を挟むように配置されている。3つの位置決めピン37のそれぞれは、例えば、直径が1.5mm、高さが1.5mmの円柱形状(断面が円形状)である。3つの位置決めピン37のそれぞれは、先端がC面取りされたピン形状を有しており、先端が尖っている。
【0029】
以下では、ポットブロック71に近い側の下型LMの上面36の中央部に配置された1つの位置決めピン37を第1位置決めピン37a(位置決め部の一例)という。また、第1位置決めピン37aを挟むように配置された2つの位置決めピン37を第2位置決めピン37bという(図7参照)。そして、1つの第1位置決めピン37aと2つの第2位置決めピン37bとを区別しないときは、単に位置決めピン37という。3つの位置決めピン37は、成形前基板Saの外縁に形成された複数(本実施形態では3つ)の位置決め孔49のそれぞれに通されることにより、下型LMに対する成形前基板Saの位置決めを行う。なお、位置決めピン37は下部の太い部分と上部の細い部分とを含む段付きピンであってもよい。
【0030】
成形前基板Saの3つの位置決め孔49のうち、第1位置決めピン37aを通す1つの位置決め孔49を第1位置決め孔49a(位置決め孔の一例)、第2位置決めピン37bを通す2つの位置決め孔49を第2位置決め孔49bという(図7参照)。そして、1つの第1位置決め孔49aと2つの第2位置決め孔49bとを区別しないときは、単に位置決め孔49という。本実施形態において、成形前基板Saの板面は矩形状である。以下では、成形前基板Saの板面を構成する4辺のうち、3つの位置決め孔49の配列方向に沿う2辺を長辺47a、長辺47aに垂直な2辺を短辺47bという。第1位置決め孔49aは、成形前基板Saの板面に垂直な方向(成形前基板Saを下型LMに載置した状態で下型LMの上面36に垂直な方向)に沿って見たときに正方形状であり、第1位置決め孔49aの各辺(各内面)は成形前基板Saの長辺47aと短辺47bに平行である。第2位置決め孔49bは、長辺47aに平行な2辺と、該2辺の一方の端部同士、他端の端部同士が平行な2辺に対して外側に膨らむ凹曲線(例えば円弧)で結ばれた形状を有している。第2位置決め孔49bの平行な2辺間の距離は、第2位置決めピン37bが隙間なく入る程度(例えば1.5mm強)である。第1位置決め孔49aの向かい合う2辺間の距離は、それよりも大きい(例えば1.8mm)。以下、成形前基板Saの長辺47aと平行な方向を長手方向、短辺47bと平行な方向を短手方向という。なお、成形前基板Saの板面に垂直な方向に沿って見たときの第1位置決め孔49aの形状は、各辺が成形前基板Saの長辺47aと短辺47bに平行であれば、矩形状であってもよい。
【0031】
〔ローダの構成〕
次に、本実施形態におけるローダ10の具体的な構成について、図3図4を参照して説明する。図3から図6においては、成形前基板Saに固定されている半導体チップ48の図示を省略している。また、図3から図6では、ポットブロック71を挟んで下型LMの両側に載置される2つの成形前基板Saの一方に対するローダ10の構成について説明する。本実施形態の成形型Cは、前述の通り、1回の樹脂成形の操作によって2つの成形前基板Saを樹脂成形する成形型Cであるため、図3から図6のベース部材11の省略線で示されている部分に、同様の構成が、ポットブロック71を挟んで下型LMの両側に載置される2つの成形前基板Sa(図2参照)のもう一方に対して備えられる。
【0032】
ローダ10は、図3に示されるように、レール(不図示)に沿って移動可能に設けられたベース部材11と、ベース部材11を昇降移動させるベース部材昇降移動機構(不図示)を備える。ベース部材11は、成形前基板Saを保持する基板保持部13と、下型LMに載置された成形前基板Saを押さえ付ける押さえ部14と、成形前基板Saの位置決めを行う寄せ機構16と、押さえ部14を昇降移動させる押さえ部昇降移動機構(不図示)と、を備えている。また、ベース部材11には、樹脂タブレットTを保持する樹脂保持部(不図示)が設けられている。
【0033】
基板保持部13は、保持爪13a、駆動部13b、レバー13c、リンク13d、及びシャフト13eを有している。
【0034】
本実施形態に係る保持爪13aは、矩形の成形前基板Saの向かい合う長辺47aを引っ掛けることにより成形前基板Saをローダ10に保持するためのものである(図4参照)。保持爪13aは、ポット71a側の端部に複数(本実施形態では4つ)配置されると共に当該ポット71a側の端部とは反対側の端部に複数(本実施形態では4つ)配置されている。保持爪13aは、シャフト13eを中心に揺動することにより開閉可能に構成されている。保持爪13aが閉じた状態では、成形前基板Saの長辺47aを引っ掛けて成形前基板Saをローダ10に保持する。保持爪13aが開くと、成形前基板Saの引っ掛りが外れて、成形前基板Saの保持が解除される。保持が解除された成形前基板Saはローダ10から落下して下型LMの型面の上に載置される(図5参照)。
【0035】
駆動部13bは、例えばエアシリンダであり、レバー13cを上下させることができる。レバー13cは、駆動部13bとリンク13dとを接続している。リンク13dはレバー13cと保持爪13aとを接続しており、レバー13c及び保持爪13aに対して揺動可能に構成されている。シャフト13eは、ポット側端部に配置された複数の保持爪13a、反対側端部に配置された複数の保持爪13aをそれぞれ貫通しており、保持爪13aの揺動支点となる。
【0036】
押さえ部14は、下型LMに載置された成形前基板Saの外縁を下型LMに向けて押すことにより、下型LMに形成された位置決めピン37が位置決め孔49に通された状態で載置された成形前基板Saを、下型LMに向けて押し付けるために配置されている。押さえ部材14bは、2本の連結シャフト14aと連結されており、連結シャフト14aと一体となって昇降(上下方向に移動)する。なお、本実施形態の2本の連結シャフト14aは、いずれもベース部材11を貫通しており、ベース部材11よりも上方で互いに連結されている。成形前基板Saは、基板保持部13の保持爪13aと押さえ部14とに挟み込まれることにより保持されている。
【0037】
押さえ部14は、押さえ部材14bを含んでいる。押さえ部材14bは、成形前基板Saの外縁を下型LMに向けて押すことができるように枠状に形成されている。枠の内側は窪んでおり、成形前基板Saに固定された半導体チップはその窪みに配置されている。
【0038】
不図示の昇降移動機構は、ベース部材11に対する押さえ部14の高さ位置を調整するものである。昇降移動機構はエアシリンダ等により構成されている。昇降移動機構は、連結シャフト14aをベース部材11に対して昇降移動させることにより、ベース部材11に対する押さえ部14の高さ位置を変化させることができる。
【0039】
寄せ機構16は、下型LMに載置された成形前基板Saを押すことにより下型LMに対する成形前基板Saの位置決めを行う機構である。寄せ機構16は、成形前基板Saの短辺47bを押す基板押し部16a(成形対象物押し部の一例)と、基板押し部16aを駆動させる駆動部16bとを含んでいる。寄せ機構16は、制御部6により制御される。
【0040】
駆動部16bは、電動アクチュエータからなり、ベース部材11に配置されている。基板押し部16aは、一対の棒状の部材であり、一方の端部は駆動部16bに取り付けられており、ベース部材11を貫通して延出している。基板押し部16aの他方の端部は、下型LMの上面36よりも下方に位置している。一対の基板押し部16aのそれぞれは、成形前基板Saの1つの短辺47bの両端部(長辺47aの近傍)のそれぞれを押すように配置されており、駆動部16bにより同時に同じ動きをする。基板押し部16aの成形前基板Saの短辺47bと対向している部分は曲面になっている(図7参照)。なお、下型LMには、一対の基板押し部16aの他方の端部との干渉を避けるための一対の溝部38が形成されている。
【0041】
〔樹脂成形品の製造方法〕
次に、図1から図7を用いて、樹脂成形品(成形済基板Sb)の製造方法を説明する。まず、ローダ10の基板保持部13による保持が解除された成形前基板Saを下型LMの位置決めピン37が位置決め孔49に通されるように下型LMに載置した後、寄せ機構16により第1位置決めピン37aを第1位置決め孔49aの接触面49c(面の一例)に接触するまで押して成形前基板Saの位置決めを行うと共に樹脂タブレットTを供給する基板供給工程(供給工程の一例)と、型締め機構5により成形型Cを型締めする型締め工程と、上型キャビティMCaに溶融樹脂Taを供給して成形前基板Saの樹脂成形を行う成形工程と、を含んでいる。なお、第1位置決め孔49aの接触面49cは平面状である。
【0042】
成形工程は、成形前基板Saの成形モジュール3への搬入から成形済基板Sbの成形モジュール3からの搬出までの間において、樹脂成形システム30が成形前基板Saを樹脂成形する工程である。本実施形態における成形工程では、上型キャビティMCaに溶融樹脂Taを供給することにより、成形前基板Saの表面に溶融樹脂Taを供給して成形を行い、成形済基板Sbを製造する。なお、図1及び図3から図6においては、成形前基板Saに固定されている半導体チップ48の図示を省略している。また、図4から図6においては、下型LMのうちポットブロック71に対して片側(図2における右側)のみを図示している。不図示の箇所の構成は、図示されている箇所の構成と同じである。さらに、図4から図6においては、上型UMの図示を省略している。
【0043】
図1に示されるように、予め、ローダ10を、樹脂タブレットTの収容空間を断熱した状態で加熱しておき、成形型Cも加熱しておく。そして、基板供給機構43から取り出した成形前基板Saをローダ10に載置する。また、樹脂供給機構45により整列された樹脂タブレットTを、ローダ10の樹脂タブレットTの収容空間に収容する。そして、ローダ10は、成形前基板Sa及び樹脂タブレットTを成形モジュール3まで搬送する。ローダ10は、図2の二点鎖線で示されるように、成形型Cの上型UMと下型LMとの間に配置された状態で、成形前基板Saを下型LMに載置する。成形前基板Saの下型LMへの載置についての詳細は後述する。なお、離型フィルムFは、成形前基板Saが下型LMに載置される前に上型UMの下面に供給されて、上型UMに備えられた離型フィルム吸引機構(不図示)により、上型UMの下面に吸着固定される(図4参照)。なお、図2は、成形前基板Saを下型LMに載置した後の状態を示している。
【0044】
図4に示されるように、制御部6は、成形型Cの上型UMと下型LMとの間にローダ10を配置した状態で、不図示のベース部材昇降移動機構により、ベース部材11を下降させ、連結シャフト14aを含む押さえ部14を下降させる。このとき、ベース部材11の下降と共に、基板保持部13、成形前基板Sa、及び寄せ機構16も下降する。これにより、寄せ機構16の基板押し部16aの端部は、下型LMの溝部38に入り込む。図4は、ベース部材11を下降させた状態である。このとき、押さえ部14は、下型LMの上方にあり、ローダ10に保持された成形前基板Saは下型LMの上面36に接触していない。
【0045】
次に、基板保持部13は、図5に示されるように、駆動部13bにより、レバー13cを下方(下型LMに近づく方向)に移動させる。レバー13cを下方に移動させると、リンク13dのうちレバー13cと接続されている端部が下方に移動する。これにより、リンク13dの他方端部に接続されている保持爪13aがシャフト13eを中心に揺動して開く。保持爪13aが開くと、成形前基板Saの引っ掛りが外れて、成形前基板Saの保持が解除される。保持が解除された成形前基板Saはローダ10から落下して下型LMに載置される。このとき、成形前基板Saに形成されている第1位置決め孔49aに下型LMに配置された第1位置決めピン37aが通されると共に、第2位置決め孔49bに下型LMに配置された第2位置決めピン37bが通される。
【0046】
次に、押さえ部昇降移動機構は、図6に示されるように、連結シャフト14aを含む押さえ部14を下降させ、下型LMに載置した成形前基板Saを下型LMに向けて押さえ付ける。これにより、成形前基板Saの全体を下型LMの上面36に確実に接触させることができる。
【0047】
その後、押さえ部昇降移動機構により押さえ部14を図5に示される状態にまで上昇させる。そして、図7に示されるように、寄せ機構16の駆動部16bを駆動させて、基板押し部16aにより、成形前基板Saの1つの短辺47bを押す。このとき、最初は基板押し部16aの移動速度を第1移動速度に設定し、成形前基板Saの短辺47bに接触する直前で第1移動速度よりも低速の第2移動速度に減速させる。そして、基板押し部16aを第2移動速度で成形前基板Saの短辺47bに接触させて成形前基板Saを押し、成形前基板Saに形成された第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aが接触するまで押す。第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aが接触すると駆動部16bは基板押し部16aをそれ以上押すことができないので、駆動部16bに流れる駆動電流が増加する。制御部6は所定値を上回る駆動電流を検出すると、駆動部16bへの通電を停止する。なお、第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aが接触したときには、2つの第2位置決めピン37bのそれぞれは、第2位置決め孔49bの凹曲面49dには接触していない。
【0048】
上述したように、第2位置決め孔49bの平行な2辺間の距離は、第2位置決めピン37bが隙間なく入る程度(例えば1.5mm強)である。そのため、寄せ機構16により、成形前基板Saを押したときに、成形前基板Saが短手方向に動いたり回転したりすることなく、長手方向に沿って成形前基板Saを移動させることができる。
【0049】
次に、不図示の押さえ部昇降移動機構は、図6に示されるように、連結シャフト14aを含む押さえ部14を再度下降させ、下型LMに載置した成形前基板Saを下型LMに向けて押し付ける。下型LMに備えられた吸引機構(不図示)により、成形前基板Saを下型LMの上面36に吸着固定させる。
【0050】
そして、ローダ10は、押さえ部14で成形前基板Saを下型LMの型面に向けて押し付けた状態で樹脂タブレットTを下型LMのポット71a内に収容する(供給工程)。樹脂タブレットTをポット71a内に収容することにより、下型LMに内蔵されたヒータが樹脂タブレットTを加熱して、溶融樹脂Taとなる。
【0051】
次に、押さえ部昇降移動機構により押さえ部14を図5に示される状態にまで再度上昇させる。その後、ベース部材昇降移動機構により、連結シャフト14aを含む押さえ部14を上昇させる。このとき、ベース部材11の上昇と共に、基板保持部13、及び寄せ機構16も上昇する。これにより、寄せ機構16の基板押し部16aの端部は、下型LMの溝部38から抜け出る。そしてローダ10は、上型UMと下型LMとの間から成形型Cの外部に移動して、供給モジュール4に戻る。
【0052】
次に、制御部6により駆動力が制御された型締め機構5により、上型UMと下型LMとを近接移動させて上型UM及び下型LMを型締めする。このとき、成形前基板Saの半導体チップ48が固定されている側の面の周縁部に、上型UMの下面が接触し、下型LMと上型UMとで成形前基板Saを保持する(型締め工程)。
【0053】
次に、下型LMに収容された樹脂タブレットTが溶融した溶融樹脂Taを、制御部6により駆動力が制御されたトランスファ機構72により、上型キャビティMCaに注入する。これにより成形前基板Saは樹脂成形される(成形工程)。樹脂成形後、下型LMを下方に移動させて成形型Cの型開きを行う。
【0054】
その後、アンローダ42により不要樹脂及び成形済基板Sbが成形型Cから搬出され、不要樹脂を不要樹脂収容部(不図示)に廃棄し、成形済基板Sbを収容モジュール2の基板収容部46に収容する(図1参照)。この樹脂成形システム30によって製造されたパッケージ基板(成形済基板Sb)は、その後、切断装置によってパッケージ基板の不要な部分を取り除くと共に個片化され、個片化された切断品が品質検査を経た上で電子部品として用いられる。
【0055】
このように、本実施形態の樹脂成形システム30においては、ローダ10が寄せ機構16を有している。そのため、成形前基板Saの下型LMに対する位置決めを正確に行うことができる。具体的には、下型LMに載置した成形前基板Saを基板押し部16aで押すことにより、第1位置決めピン37aを第1位置決め孔49aの接触面49cに接触させて位置決めを行う。第1位置決めピン37aは円柱状で第1位置決め孔49aに対向する面が凸曲面であり、第1位置決め孔49aの接触面49cは平面状であるため、第1位置決めピン37aと接触面49cとは一点で接触する。これにより、成形前基板Saの位置決めを高精度に行うことができる。したがって、例えば、図7に示されるように、成形前基板Saの長手方向に沿って等間隔に配置された複数列の半導体チップ48に樹脂封止を行うような場合であっても、成形前基板Saの長手方向の位置決めを高精度に行った上で樹脂封止を行うことができる。
【0056】
特に、本実施形態においては、寄せ機構16の駆動部16bとして電動アクチュエータを用いている。電動アクチュエータは制御性が高いので、基板押し部16aの位置、移動速度及び押付け力を正確に制御することができる。具体的には、上述したように、基板押し部16aの移動速度を成形前基板Saの短辺47bに接触する直前で減速させて、低速度のままで基板押し部16aを成形前基板Saの短辺47bに接触させて成形前基板Saを押し、第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aを接触させる。そのため、高速で第1位置決めピン37aを第1位置決め孔49aの接触面49cに接触させたときに発生する接触面49cの変形が発生することがない。また、基板押し部16aの位置制御を行わなかったときの接触面49cの変形を防止するために、押し量が不足して位置決めの精度が低下する等のおそれがない。
【0057】
〔別実施形態〕
以下、上述した実施形態の別実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
【0058】
<1>上述した実施形態では、電動アクチュエータで速度と位置を制御したが、押付け力を制御してもよい。この場合、制御の開始時より押付け力のみを制御してもよいし、途中まで上記実施形態のように速度及び位置を制御して、第1位置決めピン37aが接触面49cに接触する直前に又はある一定の位置で、押付け力の制御に変更してもよい。具体的には、接触する直前又は一定の位置で、成形前基板Saの変形が生じない大きさの押付け力にするとよい。これにより、成形前基板Saを変形させることなく、第1位置決めピン37aが成形前基板Saに接触するまでの時間を短縮することができ、ひいては樹脂成形に係る時間を短縮することができる。
【0059】
<2>上述した実施形態では、制御部6は駆動部16bに流れる駆動電流が所定値を上回ったことを検出して、駆動部16bへの通電を停止したが、これに限られるものではない。駆動部16bには制御性の高い電動アクチュエータを用いているので、制御部6は、第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aが接触する位置まで基板押し部16aが到達したことを検出したときに、駆動部16bへの通電を停止するように構成してもよい。
【0060】
<3>上述した実施形態では、制御部6は駆動部16bに流れる駆動電流が所定値を上回ったことを検出して、駆動部16bへの通電を停止したが、このとき、第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aが接触していないおそれがある。具体的には、例えば、第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aが接触する前に、少なくとも1つの位置決めピン37が位置決め孔49の内面に引っかかったことに起因して駆動部16bに流れる駆動電流が所定値を上回った場合である。そこで、制御部6は、駆動部16bに流れる駆動電流が最初に所定値を上回ったことを検出して駆動部16bへの通電を停止した後、再度駆動部16bに通電するように構成してもよい。再度駆動部16bに通電した直後は駆動部16bの出力トルクが大きくなるので、基板押し部16aは、引っかかりを乗り越えて、第1位置決め孔49aの接触面49cに第1位置決めピン37aが接触するまで、再度成形前基板Saを押すことができる。
【0061】
<4>上述した実施形態では、成形前基板Saの長辺47aに沿うように位置決め孔49を配置したが、短辺47b方向の位置決めを高精度に行う必要がある場合には、複数の位置決め孔49を短辺47bに沿うように配置して、成形前基板Saを短辺47bに沿う方向に押せるように寄せ機構16を配置してもよい。
【0062】
<5>上述した実施形態では、成形前基板Saの板面は矩形状であったが、これに限られるものではなく、円形等任意の形状を適用することができる。この場合、位置決めの精度が求められる方向に沿って複数の位置決め孔49を配置して、寄せ機構16を設けてもよい。
【0063】
<6>上述した実施形態では、第1位置決め孔49aは、成形前基板Saの板面に垂直な方向に沿って見たときに正方形状若しくは矩形状であったが、これに限られるものではない。第1位置決め孔49aにおいて、第1位置決めピン37aが接触する接触面49cが短辺47bに平行な平面状であれば、他の箇所の形状は曲面状等、任意の形状であってもよい。また、第1位置決めピン37aは、第1位置決め孔49aの接触面49cに接触する箇所が凸曲面であれば、高さ方向に垂直な断面が楕円形状等、任意の形状であってもよい。さらには、第1位置決め孔49aと第1位置決めピン37aとが平面と凸曲面とで接触するのであれば、第1位置決め孔49aが凸曲面状、第1位置決めピン37aが平面状であってもよい。
【0064】
<7>上述した実施形態においては、第2位置決め孔49bの平行な2辺間の距離は、第2位置決めピン37bが隙間なく入る程度(例えば1.5mm強)に設定したが、これに限られるものではない。例えば、第2位置決め孔49bの平行な2辺間の距離を1.5mmにして第2位置決めピン37bとのクリアランスをゼロにしてもよい。同様に、第1位置決め孔49aにおいても、短辺47bに沿う方向の長さを1.5mmにして第1位置決めピン37aとのクリアランスをゼロにしてもよい。
【0065】
<8>上述した実施形態では、位置決めピン37を上型キャビティMCaに対してポットブロック71に近い側に配置したが、これに限られるものではない。位置決めピン37をキャビティに対してポットブロック71から遠い側に配置するように構成してもよい。
【0066】
<9>上述した実施形態においては、押さえ部14で成形前基板Saを下型LMに向けて2回目に押し付けたときに樹脂タブレットTを下型LMのポット71a内に収容したが、これに限られるものではない。押さえ部14で成形前基板Saを最初に下型LMに向けて押し付けたときに樹脂タブレットTを下型LMのポット71a内に収容してもよい。また、押さえ部14で成形前基板Saを下型LMに押し付けて、押さえ部14を成形前基板Saから上昇させたときに、樹脂タブレットTを下型LMのポット71a内に収容してもよい。
【0067】
<10>上述した実施形態では、基板押し部16aの移動速度に関し、最初は移動速度を第1移動速度に設定し、成形前基板Saの短辺47bに接触する直前で第1移動速度よりも低速の第2移動速度に低下させたが、これに限られるものではない。第1位置決め孔49aの接触面49cに接触させたときに接触面49cの変形が発生したり、成形前基板Saの成形時間が冗長になったりしない限り、基板押し部16aの移動速度を一定にしてもよい。また、基板押し部16aの移動速度を3段階以上に変更するように構成してもよい。
【0068】
<11>上述した実施形態では、樹脂注入機構7は、下型LMに載置した成形前基板Saを、上型UMとの間でクランプして樹脂成形する方式で、ポット71aから供給された溶融樹脂Taが成形前基板Saの端部を通過して上型キャビティMCaに供給される方式(サイドゲート方式ということがある)であったが、下型LMに載置した成形前基板Saを、下型LMとポットブロックの張り出し部との間でクランプして樹脂成形する方式で、ポット71aから供給された溶融樹脂Taが成形前基板Saの端部を通らずにキャビティに供給される方式(エッジゲート方式ということがある)であってもよい。また、エッジゲート方式の場合でも、成形型Cを型締めする前に、寄せ機構16により成形前基板Saの下型LMに対する位置決めを行うことができる。さらに、下型LM、上型UMに加えて中間型を備えた成形型Cで、樹脂成形後の型開きの際に中間型で不要樹脂を除去する方式(トップゲート方式ということがある)であってもよい。
【0069】
<12>上述した実施形態では、成形前基板Saの片面にのみ溶融樹脂Taを供給して片面成形を行ったが、上型UMに設けた上型キャビティMCaだけでなく、下型LMに下型キャビティを設けて下型LMにも溶融樹脂Taを注入する両面成形であってもよい。
【0070】
<13>上述した実施形態では、トランスファ方式の樹脂成形システム30に寄せ機構16を適用したが、コンプレッション方式の樹脂成形システム30で下型LMに成形前基板Saを載置する場合にも適用可能である。
【0071】
<14>上述した実施形態では、基板に半導体チップ48を固定して成形前基板Saを構成したが、これに限られるものではない。半導体チップ48以外に、抵抗素子、キャパシタ素子等、任意の種類のチップを基板に固定して成形前基板Saを構成してもよい。
【0072】
<15>上述した実施形態における樹脂成形システム30にて樹脂成形される成形前基板Saに用いられる基板は、たとえば、半導体製基板(シリコンウェハ等)、金属製基板(リードフレーム等)、ガラス製基板、セラミック製基板、樹脂製基板又はプリント配線基板であり、配線が施されていないキャリア等も含むものとする。
【0073】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上述の実施形態において説明した樹脂成形システム30及び樹脂成形品(成形済基板Sb)の製造方法の概要について説明する。
【0074】
(1)樹脂成形システム30の特徴構成は、位置決め孔(第1位置決め孔49a)を有する成形対象物(成形前基板Sa)の位置決めを行う位置決め部(第1位置決めピン37a)を有し、位置決め部(第1位置決めピン37a)が位置決め孔(第1位置決め孔49a)に通された状態で成形対象物(成形前基板Sa)が載置される成形型Cと、位置決め孔(第1位置決め孔49a)を位置決め部(第1位置決めピン37a)に接触させることにより、成形対象物(成形前基板Sa)の位置決め部(第1位置決めピン37a)に対する位置決めを行う寄せ機構16を有する搬送装置(ローダ10)と、を備えた点にある。
【0075】
本特徴構成に係る樹脂成形システム30は、寄せ機構16を有している。そのため、成形型Cに形成された位置決め部(第1位置決めピン37a)が、成形対象物(成形前基板Sa)に形成された位置決め孔(第1位置決め孔49a)に通された状態で、寄せ機構16により成形対象物(成形前基板Sa)を押して位置決め孔(第1位置決め孔49a)を位置決め部(第1位置決めピン37a)に接触させるという簡便な方法で、位置決め部(第1位置決めピン37a)に対する成形対象物(成形前基板Sa)の位置決めを高精度に行うことができる。また、寄せ機構16は、成形対象物(成形前基板Sa)を押さえつけないため、成形対象物(成形前基板Sa)が変形しない。そのため、成形対象物(成形前基板Sa)がキャリアの場合、成形対象物(成形前基板Sa)の再利用が可能である。
【0076】
(2)上記(1)に記載の樹脂成形システム30は、寄せ機構16を制御する制御部6をさらに備え、寄せ機構16は、成形対象物(成形前基板Sa)を押す成形対象物押し部(基板押し部16a)と、成形対象物押し部(基板押し部16a)を移動させる駆動部16bと、を有してもよい。
【0077】
本構成であれば、制御部6で成形対象物押し部(基板押し部16a)と駆動部16bとを制御することにより、成形対象物押し部(基板押し部16a)で成形対象物(成形前基板Sa)を押して、成形対象物(成形前基板Sa)の位置決めを高精度に行うことができる。
【0078】
(3)上記(2)に記載の樹脂成形システム30において、制御部6は、成形対象物押し部(基板押し部16a)を第1移動速度で成形対象物(成形前基板Sa)に接近させ、成形対象物(成形前基板Sa)に接触する手前で第1移動速度よりも低速の第2移動速度に減速させ、第2移動速度で成形対象物(成形前基板Sa)に接触させて位置決めを行うように駆動部16bを制御してもよい。
【0079】
本構成であれば、制御部6は、成形対象物押し部(基板押し部16a)を第1移動速度で成形対象物(成形前基板Sa)に接近させ、成形対象物(成形前基板Sa)に接触する手前で第1移動速度よりも低速の第2移動速度に減速させ、第2移動速度で成形対象物(成形前基板Sa)に接触させて位置決めを行うように制御するので、位置決め孔(第1位置決め孔49a)に位置決め部(第1位置決めピン37a)を接触させたときに位置決め孔(第1位置決め孔49a)が変形するおそれがない。また、低速の第2移動速度だけで成形対象物押し部(基板押し部16a)を移動させる場合と比較して、成形対象物(成形前基板Sa)の成形時間を短くすることができる。
【0080】
(4)上記(2)に記載の樹脂成形システム30において、制御部6は、成形対象物(成形前基板Sa)に接触する手前の位置まで速度制御を行い、成形対象物(成形前基板Sa)に接触する手前の位置で押付け力制御を行って位置決めを行うように駆動部16bを制御してもよい。
【0081】
制御部6は、成形対象物(成形前基板Sa)に接触する手前の位置で押付け力制御を行って、例えば、成形対象物(成形前基板Sa)の変形が生じない大きさの押付け力にする。これにより、成形対象物(成形前基板Sa)を変形させることなく、位置決め部(第1位置決めピン37a)が成形対象物(成形前基板Sa)に接触するまでの時間を短縮することができ、ひいては樹脂成形に係る時間を短縮することができる。
【0082】
(5)上記(2)から(4)のいずれか1つに記載の樹脂成形システム30において、駆動部16bは、電動アクチュエータであり、制御部6は、電動アクチュエータの駆動電流が所定値を上回ると、電動アクチュエータへの通電を停止させることにより成形対象物押し部(基板押し部16a)の移動を停止させてもよい。
【0083】
位置決め孔(第1位置決め孔49a)が位置決め部(第1位置決めピン37a)に接触したときに、成形対象物押し部(基板押し部16a)はそれ以上成形対象物(成形前基板Sa)を押すことができないので、電動アクチュエータの駆動電流は増加する。そこで、本構成であれば、制御部6が、電動アクチュエータの駆動電流が所定値を上回ったときに電動アクチュエータへの通電を停止させることにより、位置決め孔(第1位置決め孔49a)を変形させることなく、成形対象物(成形前基板Sa)の位置決めを高精度に行うことができる。
【0084】
(6)上記(5)に記載の樹脂成形システム30において、制御部6は、電動アクチュエータの駆動電流が所定値を上回って電動アクチュエータへの通電を停止させた後、再び電動アクチュエータに通電してもよい。
【0085】
例えば、成形対象物押し部(基板押し部16a)で成形対象物(成形前基板Sa)を押している途中で、位置決め部(第1位置決めピン37a)が位置決め孔(第1位置決め孔49a)の内面に引っかかったことに起因して駆動部16bに流れる駆動電流が所定値を上回ることがある。そのような場合には、制御部6は一旦駆動部16bの駆動を停止させるが、本構成であれば、その後、再度駆動部16bに通電することにより、位置決め孔(第1位置決め孔49a)が位置決め部(第1位置決めピン37a)に接触するまで、成形対象物(成形前基板Sa)を押すことができる。
【0086】
(7)上記(1)から(6)のいずれか一つに記載の樹脂成形システム30において、位置決め部(第1位置決めピン37a)は断面が円形状のピンであり、位置決め孔(第1位置決め孔49a)のうち少なくとも位置決め部(第1位置決めピン37a)に接触する面(接触面49c)は平面状であるとよい。
【0087】
本構成であれば、位置決め部(第1位置決めピン37a)と位置決め孔(第1位置決め孔49a)の接触面49cとは一点で接触するので、成形型Cに対して成形対象物(成形前基板Sa)を高精度に位置決めすることができる。
【0088】
(8)上記(1)から(7)のいずれか一つに記載の樹脂成形システム30において、位置決め孔(第1位置決め孔49a)は、成形対象物(成形前基板Sa)が載置される成形型Cの面(上面36)に垂直な方向に沿って見たときに矩形状であってもよい。
【0089】
本構成であれば、樹脂成形システム30に、成形対象物(成形前基板Sa)を高精度に位置合わせして樹脂成形することができる。
【0090】
(9)上記(1)から(8)のいずれか一つに記載の樹脂成形システム30を用いた樹脂成形品(成形済基板Sb)の製造方法の特徴は、位置決め部(第1位置決めピン37a)が位置決め孔(第1位置決め孔49a)に通るように成形対象物(成形前基板Sa)を成形型Cに載置した後、寄せ機構16により位置決め孔(第1位置決め孔49a)を位置決め部(第1位置決めピン37a)に接触させて成形対象物(成形前基板Sa)の位置決め部(第1位置決めピン37a)に対する位置決めを行うと共に樹脂材料(樹脂タブレットT、溶融樹脂Ta)を供給する供給工程と、型締め機構5により成形型Cを型締めする型締め工程と、成形対象物(成形前基板Sa)の樹脂成形を行う成形工程と、を含む点にある。
【0091】
本特徴を有する樹脂成形品(成形済基板Sb)の製造方法においては、位置決め部(第1位置決めピン37a)が位置決め孔(第1位置決め孔49a)に通るように成形対象物(成形前基板Sa)を成形型Cに載置した後、寄せ機構16により位置決め孔(第1位置決め孔49a)を位置決め部(第1位置決めピン37a)に接触させて成形対象物(成形前基板Sa)の位置決め部(第1位置決めピン37a)に対する位置決めを行うと共に樹脂材料(樹脂タブレットT、溶融樹脂Ta)を供給する供給工程と、型締め機構5により成形型Cを型締めする型締め工程と、成形対象物(成形前基板Sa)の樹脂成形を行う成形工程と、を行って樹脂成形品(成形済基板Sb)を製造する。これにより、成形型Cに対する成形対象物(成形前基板Sa)の位置決めを高精度に行った状態で、樹脂成形品(成形済基板Sb)を製造することができるので、成形型Cを用いて樹脂成形品(成形済基板Sb)を精度よく製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、樹脂成形システム及び樹脂成形品の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
5 :型締め機構
6 :制御部
10 :ローダ(搬送装置)
16 :寄せ機構
16a :基板押し部(成形対象物押し部)
16b :駆動部
30 :樹脂成形システム
36 :上面(面)
37a :第1位置決めピン(位置決め部)
49a :第1位置決め孔(位置決め孔)
49c :接触面(面)
C :成形型
Sa :成形前基板(成形対象物)
Sb :成形済基板(樹脂成形品)
T :樹脂タブレット(樹脂材料)
Ta :溶融樹脂(樹脂材料)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決め孔を有する成形対象物の位置決めを行う位置決め部を有し、前記位置決め部が前記位置決め孔に通された状態で前記成形対象物が載置される成形型と、
前記位置決め孔を前記位置決め部に接触させることにより、前記成形対象物の前記位置決め部に対する位置決めを行う寄せ機構を有する搬送装置と、
を備えた樹脂成形システム。
【請求項2】
前記寄せ機構を制御する制御部をさらに備え、
前記寄せ機構は、前記成形対象物を押す成形対象物押し部と、前記成形対象物押し部を移動させる駆動部と、を有する請求項1に記載の樹脂成形システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記成形対象物押し部を第1移動速度で前記成形対象物に接近させ、前記成形対象物に接触する手前で前記第1移動速度よりも低速の第2移動速度に減速させ、前記第2移動速度で前記成形対象物に接触させて位置決めを行うように前記駆動部を制御する請求項2に記載の樹脂成形システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記成形対象物に接触する手前の位置まで速度制御を行い、前記成形対象物に接触する手前の位置で押付け力制御を行って位置決めを行うように前記駆動部を制御する請求項2に記載の樹脂成形システム。
【請求項5】
前記駆動部は、電動アクチュエータであり、
前記制御部は、前記電動アクチュエータの駆動電流が所定値を上回ると、前記電動アクチュエータへの通電を停止させることにより前記成形対象物押し部の移動を停止させる請求項2に記載の樹脂成形システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記電動アクチュエータの前記駆動電流が前記所定値を上回って前記電動アクチュエータへの通電を停止させた後、再び前記電動アクチュエータに通電する請求項5に記載の樹脂成形システム。
【請求項7】
前記位置決め部は断面が円形状のピンであり、前記位置決め孔のうち少なくとも前記位置決め部に接触する面は平面状である請求項1に記載の樹脂成形システム。
【請求項8】
前記位置決め孔は、前記成形対象物が載置される前記成形型の面に垂直な方向に沿って見たときに矩形状である請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂成形システム。
【請求項9】
請求項1に記載の樹脂成形システムを用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記位置決め部が前記位置決め孔に通るように前記成形対象物を前記成形型に載置した後、前記寄せ機構により前記位置決め孔を前記位置決め部に接触させて前記成形対象物の前記位置決め部に対する位置決めを行うと共に樹脂材料を供給する供給工程と、
型締め機構により前記成形型を型締めする型締め工程と、
前記成形対象物の樹脂成形を行う成形工程と、を含む樹脂成形品の製造方法。