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特開2024-179921細胞増殖活性用医薬組成物、及び当該細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法
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  • 特開-細胞増殖活性用医薬組成物、及び当該細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179921
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】細胞増殖活性用医薬組成物、及び当該細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20241219BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P17/00
A61P43/00 105
A61K131:00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099258
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】西本 壮吾
(72)【発明者】
【氏名】湊 律子
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088BA37
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB21
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、廃棄されるザクロ種子の有効活用及び付加価値化をめざして細胞増殖の作用を有する組成物を提供することにある。
【解決手段】
本発明の細胞増殖活性用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする細胞増殖活性用医薬組成物。
【請求項2】
ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記溶媒は、エタノールであることを特徴とする請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ザクロ種子エキスの含有量は、組成物の全量に対して、1~100μg/mLである請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
増殖活性の対象となる細胞は、表皮及び/又は真皮の細胞であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を有効成分とすることを特徴とする医薬部外品。
【請求項7】
ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有する細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法。
【請求項8】
溶媒が、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖活性用医薬組成物、及び当該細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法に関し、特に、ザクロ種子エキスを含有する細胞増殖活性用医薬組成物、及び当該細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ザクロは果実全体に対して種子がかなりの割合を占める果実であるが、原則として、搾汁後に残る種子は廃棄されている。ザクロ種子を利用した少ない例として、ザクロ種子エキスを用いたサプリメント提案システムであって、提案サプリメント演算手段が、希望事項情報が美容の場合には、提案サプリメントとして、マルチビタミン、マルチミネラル、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンP、ナイアシン、ビオチン、コラーゲン、エラスチン、ポリフェノール、パントテン酸、ヒアルロン酸、アセチルグルコサミン、イノシトール、コエンザイムQ10、αカロチン、βカロチン、大豆サポニン、ロイヤルゼリー、ツイントース、葉酸、バラ花弁エキス、ザクロ種子エキス、ブラックコホッシュエキス、大豆イソフラボン、葛イソフラボンスクワレン、ビール酵母、コロハエキス、カルシウム、マグネシウム、銅、鉄、亜鉛、マンガン、とから成る群の少なくとも1つを出力するサプリメント提案システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-232989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在のところ多くの場合、ザクロ種子は原則として、廃棄物として処理されており、前記特許文献以外は、有効に利用されていないのが現状である。一方で、廃棄物の有効利用が見直されている。かかる状況下、廃棄物たるザクロ種子が種々の疾患に対して効果的であれば、より有益となる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、廃棄されるザクロ種子の有効活用及び付加価値化をめざして細胞増殖の作用を有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ザクロ種子の有効活用について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0007】
すなわち、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記溶媒は、エタノールであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスの含有量は、組成物の全量に対して、1~100μg/mLであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、増殖活性の対象となる細胞は、表皮及び/又は真皮の細胞であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の医薬部外品は、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物を有効成分とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法は、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の細胞増殖活性用医薬組成物によれば、従来廃棄物として処理されていたザクロ種子を有効利用することが可能であるという有利な効果を奏する。また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物によれば、皮膚を構成する細胞の増殖や遊走を向上させることが可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施態様における組成物を用いた場合のザクロ種子抽出物によるHaCaT cell における細胞生存率の経時的変化を示す図である。(n=4、平均値±標準誤差、*p < 0.05、**p < 0.01 vs Control)
図2図2は、本発明の一実施態様における組成物を用いた場合のザクロ種子抽出物によるKMST-6 cell における細胞生存率の推移を示す図である。(n=4、平均値±標準誤差、*p < 0.05、**p < 0.01、***p < 0.001 vs Control)
図3図3は、画分調製のフローチャートと収率を示す。F1~F4は、収量の多いPSE-EA-Hを分配して得られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の細胞増殖活性用医薬組成物は、ザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。ザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来のエキスである。本発明に適用するザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来である限り、総てのザクロ種子エキスを対象とする。
【0018】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、増殖活性の対象となる細胞は、表皮及び/又は真皮の細胞であることを特徴とする。すなわち、対象となる細胞としては、特に限定されないが、特に有効に作用するのは、皮膚の細胞、特に表皮又は真皮の細胞である。したがって、本明細書において主として皮膚の細胞について説明する。
【0019】
また、本発明の好ましい実施態様において、表皮を構成するケラチノサイト、又は真皮の線維芽細胞、における細胞増殖活性を促進することを特徴とする。
【0020】
本発明において、表皮のケラチノサイトとしては特に限定されないが、細胞株として確立されているという観点から、例えば、HaCaT等を挙げることができる。
【0021】
また、本発明において、真皮の線維芽細胞としては特に限定されないが、実験用細胞株として確立しているという観点から、例えば、KMST-6、NHDF(Normal Human Dermal Fibroblasts)等を挙げることができる。
【0022】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。例えば、振とう抽出させることができる。振とう抽出において、例えば、約4℃等の低温室にてローテーターにセットして回転させながら抽出することができる。また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記溶媒はエタノールであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスの含有量は、細胞生存率の低下を引き起こさないという観点から、組成物の全量に対して、1~100μg/mL、より好ましくは、1~50μg/mLであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法は、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を溶媒中に浸漬した後、上清を分取する工程と、前記上清を分取することによりザクロ種子エキスを得る工程と、得られたザクロ種子エキスを有効的な量に調整する工程と、を有することを特徴とするザクロ種子エキスを含有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、食品への応用・適用を想定する観点から、エタノールで抽出したザクロ種子エタノールエキスを、さらに、酢酸エチルと水で分配して、前記酢酸エチル層を減圧濃縮して、酢酸エチル画分としてザクロ種子エキスを得ることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、活性成分を同定するという観点から、さらに、前記酢酸エチル画分を、ヘキサンとメタノールで分配して、酢酸エチル-ヘキサン画分及び酢酸エチル-メタノール画分として、ザクロ種子エキスを得ることを特徴とする。
【0027】
なお、酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)、及び酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)とは、以下の通りである。すなわち、エタノールで抽出したザクロ種子エタノール抽出物(PSE)を、分液漏斗を用いて酢酸エチルと水で分配し、酢酸エチル層の溶媒をエバポレーターにより減圧濃縮し、酢酸エチル画分(PSE-EA)として、水層は溶媒を凍結乾燥し、水画分(PSE-W)とした場合、PSE-EA をヘキサンとメタノールで分配後、溶媒をそれぞれエバポレーターで減圧濃縮し、得られた画分を、酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)及び酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)とすることができる。
【0028】
ここで、まず、ザクロ種子エキスの調製方法の一例について説明する。まず、ザクロ種子を準備する。ザクロ種子は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0029】
次に、ザクロ種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、ザクロ種子組成物の分解等が発生することも考えられることより、粉砕時間を数秒とし、十数回繰り返すことができる。
【0030】
次いで、ザクロ種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。また、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物の製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。溶媒としては、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。好ましくは、酢酸エチル、酢酸エチル-ヘキサン、酢酸エチル-メタノール、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。
【0031】
浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが、10時間~48時間、好ましくは、およそ1日(24時間)攪拌を持続させることができる。
【0032】
その後、上清を分取することによりザクロ種子エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレーターを用いて、20℃~60℃、好ましくは、37℃~40℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、ザクロ種子エキスを長期間保存することができる。
【0033】
ザクロ種子中に含まれる成分は、ザクロ種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、ザクロ種子エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【0034】
また、本発明の医薬部外品は、本発明の組成物を有効成分とすることを特徴とする。本発明に適用可能な医薬部外品については、本発明の細胞増殖活性用医薬組成物を有効成分とする限り、特に限定されない。
【0035】
<有効量>
本発明による組成物は、有効的な量のザクロ種子エキス、及び適当な投与形態の形で調製される。
【0036】
本発明の組成物におけるザクロ種子エキスの投与量は、投与対象患者の病態及びその重篤度、投薬形態、選択した投与経路及び1日当たりの投与回数等により変更することができる。
【0037】
本発明の組成物におけるザクロ種子エキスの投与量は、マウスで実施する時、1000 mg/kg/day投与量に設定することができ、ヒトにおいては感受性の相違等により、更に低い量であることが好ましい。
【0038】
また、投与形態は、経口剤(タブレット、カプセル、被膜タブレット、顆粒、溶液、シロップ)、塗布のための軟膏やクリームなどを挙げることができる。投与対象患者は、皮膚の水分補給及びバリア機能という観点から、女性、男性、大人、子供等を問わず、対象とすることが可能である。
【0039】
投与形態には、従来の他の成分、例えば、安定保存剤、甘味料、着色剤、芳香料などを含むことができる。
【0040】
<急性毒性試験>
ザクロ種子エキスの含有成分については、リノレン酸も含まれる成分であるため毒性は認められないと考えられている。
【0041】
なお、略号については、以下の通りである。
・FBS:Fetal Bovine Serum
・F1:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 1 画分
・F2:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 2 画分
・F3:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 3 画分
・F4:PSE-Ethyl Acetate-Hexane-Fraction 4 画分
・HA:Hyaluronic Acid
・HABP:Hyaluronic Acid Binding Protein
・HAS:Hyaluronic Acid Synthase
・PBS:Phosphate Buffered Saline
・PSE:Punica gtanatum Seed Ethanol extract(ザクロ種子エタノール抽出物)
・PSE-Bu-Me:PSE-Butanol-Methanol 画分
・PSE-EA:PSE-Ethyl Acetate 画分
・PSE-EA-H:PSE-Ethyl Acetate-Hexane 画分
・PSE-EA-Me:PSE-Ethyl Acetate-Methanol 画分
・PSE-W:PSE-Water 画分
・UV:Ultraviolet
【実施例0042】
以下では本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0043】
実施例1
【0044】
<ザクロ種子抽出物の調製>
<試料>
ザクロ種子:株式会社サニープレイスより入手
<機器>
ミルサー:岩谷産業株式会社製
ロータリーエバポレーター:EYELA 東京理化器械株式会社製
凍結乾燥機 FDU-1200:EYELA 東京理化器械株式会社製
<試薬>
100% Ethanol:和光純薬工業株式会社製
酢酸エチル:和光純薬工業株式会社製
ヘキサン:和光純薬工業株式会社製
メタノール:和光純薬工業株式会社製
シリカゲル(Wakasil(登録商標)60, 64-210μm):和光純薬工業株式会社製
MilliQ 水
<器具>
クロマトカラム フィルター付き (30φ×300mm):コスモスビード製
【0045】
まず、溶媒として、エタノールを用いて、ザクロ種子エキスの調製を試みた。ザクロ種子を粉砕し、100%エタノールで振とう抽出した。これらを濃縮乾固して再溶解し、ザクロ種子エタノール抽出物として実験に供した。さらに、エタノールで抽出したザクロ種子エタノール抽出物(以下、PSEともいう。)を、分液漏斗を用いて酢酸エチルと水で分配し、酢酸エチル層の溶媒をエバポレーターにより減圧濃縮し、酢酸エチル画分(PSE-EA)として、水層は溶媒を凍結乾燥し、水画分(PSE-W)とした場合、PSE-EA をヘキサンとメタノールで分配後、溶媒をそれぞれエバポレーターで減圧濃縮し、得られた画分を、酢酸エチル-ヘキサン画分(以下、PSE-EA-Hともいう。)及び酢酸エチル-メタノール画分(以下、PSE-EA-Meともいう。)とした。具体的には、以下の通りである。
【0046】
<PSE(Punica granatum Seed Ethanol extract)の調製方法>
乾燥ザクロ種子をミルサーで粉末化し、10 倍量 100% エタノール(和光純薬工業株式会社製)を加え、4℃、24 時間で低温振盪抽出を行った。24 時間後、室温、3,000 rpm で 20 分間遠心分離を行い、上清を回収した。上清を減圧濃縮して得られた濃縮物をザクロ種子エタノール抽出物(PSE : Punica granatum Seed Ethanol extract)とした。
【0047】
<酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)及び酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)の調整方法>
PSE 2.00gを、分液漏斗を用いて酢酸エチル(100ml×3)とMiliQ 水(100 ml)で分配し、酢酸エチル層の溶媒をエバポレーターにより減圧濃縮し、酢酸エチル画分(PSE-EA)とした。水層は溶媒を凍結乾燥し、水画分(PSE-W)とした。さらにPSE-EAをヘキサン(100ml×3)とメタノール(100ml)で分配後、溶媒をそれぞれエバポレーターで減圧濃縮し、酢酸エチル-ヘキサン画分(PSE-EA-H)と酢酸エチル-メタノール画分(PSE-EA-Me)を得た。収量の多いPSE-EA-Hをヘキサン(100ml)、ヘキサンと酢酸エチルの混合物(ヘキサン:酢酸エチル=9:1の場合(ヘキサン90mL、酢酸エチル10mL)、ヘキサン:酢酸エチル=8:2の場合(ヘキサン80mL、酢酸エチル20mL)、ヘキサン:酢酸エチル=6:4の場合(ヘキサン40mL、酢酸エチル60mL))、酢酸エチル(100ml)、メタノール(100ml)の順でカラム(30φ×300mm)に流し、分配した。下記の式より、画分の収率を算出し、画分調製のフローチャートを図3に示した。
【0048】
収率(%)=(画分の質量(g)/ PSEの質量(g))×100
【0049】
調製した抽出物は実験に使用するまで-20℃で冷凍保存した。
【0050】
このように調整したザクロ種子抽出物を用いて、細胞増殖活性を調べた。
【0051】
<略称一覧>
・PSE:Punica granatum Seed Ethanol extract(ザクロ種子エタノール抽出物)
・FBS:Fetal Bovine Serum(Sigma-Aldrich)
・ITES: Insulin(Sigma-Aldrich)、Transferrin(Sigma-Aldrich)、Ethanol amine
(和光純薬工業株式会社)、Sodium Selenite(和光純薬工業株式会)の 4 試薬を、培養液中での終濃度がそれぞれ 5μg/mL、20μg/mL、20μM、25nMとなるよう混合したもの。
【0052】
<研究概要>
創傷治癒や皮膚トラブルの改善、また表皮におけるターンオーバー促進等には、皮膚を構成する細胞の増殖や遊走が重要となる。本実験では、表皮を構成するケラチノサイト、真皮の線維芽細胞の2種の細胞に対し、ザクロ種子エタノール抽出物が与え得る細胞増殖活性の評価を実施した。
【0053】
<実験方法>
―条件―
<ケラチノサイト>
・使用細胞:HaCaT
・播種時の細胞密度:5.0×104 cells/mL
・使用培地:D-MEM(富士フイルム 和光純薬株式会社)
【0054】
<線維芽細胞>
・使用細胞 :KMST-6
・播種時の細胞密度:3.0×104 cells/mL
・使用培地:MEMα(富士フイルム 和光純薬株式会社)
【0055】
<前培養>
各細胞を別々の96well plate(1well当たり200μL)に上記の終濃度で播種した。10%FBS含有培地で約15時間培養し、底面に十分に接着させた。
【0056】
<本培養>
全てのウェルをPBSで1回洗浄し、培養液を1%FBS-ITES含有培地に置換した。この時、PSEを添加した。
【0057】
<細胞生存率の測定>
本培養開始時刻を0hとし、0、8、16、24h経過時点でWST-8法による細胞生存率の測定を行った。全ウェルにPBSで2倍希釈したWST-8キット溶液10μL を添加し、細胞の代謝に関わる補酵素との反応によりホルマザン色素を生成させた。3時間後、450nmの吸光度を測定し、色素を定量した。0、8、16、24hの全ての経過時間について0hのControlに対する割合を算出し、PSEによる細胞増殖活性を評価した。
【0058】
<実験結果>
表皮を構成するヒトケラチノサイトとして使用したHaCaT、真皮を構成する細胞外マトリックスの成分を産生する線維芽細胞として使用したKMST-6の両細胞において、PSE添加による細胞増殖が確認された。
【0059】
HaCaTにおける細胞生存率の経時的変化を図1に示した。図1は、HaCaT cell における細胞生存率の経時的変化を示す。(n=4、平均値±標準誤差、*p < 0.05、**p < 0.01 vs Control)
【0060】
PSE存在下の細胞は、Controlに対し増殖活性が向上した。低濃度1μg/mL PSE 添加細胞については8h時点でControlに対し約1.7倍と短時間での増殖率が特に高く、高濃度50μg/mLPSE添加細胞では24h時点で、Controlに対し約1.3 倍と、低濃度に比べ長時間経過後の増殖率が高かった。
【0061】
KMST-6における細胞生存率の経時的変化を図2に示した。(n=4、平均値±標準誤差、*p < 0.05、**p < 0.01、***p < 0.001 vs Control)
【0062】
HaCaTの場合と同様に、PSE存在下の細胞では増殖活性が向上した。8、16hについては濃度依存的な上昇が見られたが、24h経過時点では10μg/mLPSE添加細胞が最も細胞を多く増殖させていた。
【0063】
また、図3は、画分調製のフローチャートと収率を示す。F1~F4は、収量の多いPSE-EA-Hを分配して得られたものである。なお、PSE-EA-Hをさらに分画し、F1~F4が得られたとは、F1はヘキサンと酢酸エチルの8:2の混合物、F2はヘキサンと酢酸エチルの6:4の混合物、F3は酢酸エチル 100%、F4はメタノール100%でカラムを流した後、得られたものという意味である。これらのザクロ種子エキスにおいても同様の効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によると、医療業界の分野への貢献はもとより、廃棄物の有効利用等、社会的貢献度が高く、広範囲において利用価値が高い。
図1
図2
図3