IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2024-179928測位システム、車両運転試験装置及び移動体
<>
  • 特開-測位システム、車両運転試験装置及び移動体 図1
  • 特開-測位システム、車両運転試験装置及び移動体 図2
  • 特開-測位システム、車両運転試験装置及び移動体 図3
  • 特開-測位システム、車両運転試験装置及び移動体 図4
  • 特開-測位システム、車両運転試験装置及び移動体 図5
  • 特開-測位システム、車両運転試験装置及び移動体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179928
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】測位システム、車両運転試験装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/11 20100101AFI20241219BHJP
【FI】
G01S19/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099267
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 一海
(72)【発明者】
【氏名】都築 将仁
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕量
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB01
5J062CC07
5J062CC15
5J062EE01
5J062FF01
(57)【要約】
【課題】建屋の内外において衛星信号による高精度な測位が可能となる。
【解決手段】測位システムは、建屋の内部に配置される第1通信装置と、建屋の内外を移動する移動体に搭載され、第1通信装置との間で通信可能な第2通信装置と、第1通信装置と第2通信装置との通信結果を取得し、取得した通信結果に基づいて、衛星から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する疑似信号生成装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の内部に配置される第1通信装置と、
前記建屋の内外を移動する移動体に搭載され、前記第1通信装置との間で通信可能な第2通信装置と、
前記第1通信装置と前記第2通信装置との通信結果を取得し、取得した前記通信結果に基づいて、衛星から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する疑似信号生成装置と
を備える測位システム。
【請求項2】
前記第1通信装置は、複数設けられ、
前記通信結果は、前記第2通信装置と、前記第1通信装置との通信結果であり、
前記疑似信号生成装置は、
前記通信結果に基づいて、前記移動体の絶対位置を算出し、
前記絶対位置が算出された時刻に対応する時刻情報と、前記時刻情報で示される時刻における前記衛星の位置を示す衛星位置情報とを取得し、
前記絶対位置、前記時刻情報及び前記衛星位置情報に基づいて、前記疑似衛星信号を生成する
請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記第1通信装置は、前記第1通信装置について前記第2通信装置との通信可能範囲が重複した重複通信範囲が前記建屋の内部から外部にはみ出すように設定される
請求項1に記載の測位システム。
【請求項4】
前記第1通信装置及び前記第2通信装置は、一方が装置識別情報を含む相対測位信号を送信する送信装置であり、他方が前記相対測位信号を受信する受信装置である
請求項1に記載の測位システム。
【請求項5】
前記建屋には、前記移動体が移動する移動経路が設けられ、
前記第1通信装置は、前記建屋の内部に前記移動体の移動経路に沿って所定の間隔で複数配置される
請求項1に記載の測位システム。
【請求項6】
前記移動体に搭載され、生成された前記疑似衛星信号に基づいて、前記建屋の内部を移動する前記移動体の位置を算出する位置算出装置を更に備える
請求項1に記載の測位システム。
【請求項7】
前記位置算出装置は、前記移動体に搭載される
請求項6に記載の測位システム。
【請求項8】
前記第2通信装置は、前記衛星信号及び前記疑似衛星信号を受信可能であり、受信した前記衛星信号及び前記疑似衛星信号を前記位置算出装置に送信し、
前記位置算出装置は、前記第2通信装置からの前記衛星信号及び前記疑似衛星信号に基づいて前記移動体の位置を算出し、
前記疑似信号生成装置は、生成した前記疑似衛星信号を前記第2通信装置に送信する
請求項6に記載の測位システム。
【請求項9】
移動体である試験車両が移動する移動経路と、
前記試験車両の試験条件を再現する条件再現機構と、
前記移動経路及び前記条件再現機構の少なくとも一部を覆う建屋と、
請求項1に記載の測位システムと
を備え、
前記測位システムは、前記移動体に搭載され、生成された前記疑似衛星信号に基づいて、前記建屋の内部を移動する前記移動体の位置を算出する
車両運転試験装置。
【請求項10】
本体及び運転装置を有し、建屋の内外に連続する移動経路を移動可能な移動体であって、
前記建屋の内部に配置される第1通信装置との間で通信可能な第2通信装置と、
前記第1通信装置と前記第2通信装置との通信結果を取得し、取得した前記通信結果に基づいて、衛星から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する疑似信号生成装置と、
生成された前記疑似衛星信号に基づいて、前記建屋の内部の前記移動経路を移動する前記移動体の位置を算出する位置算出装置と、
前記位置算出装置で算出された前記位置に基づいて、前記運転装置の動作を制御する制御装置と
を備える移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測位システム、車両運転試験装置及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
建屋の外部で移動体の測位を行う場合、例えばGNSS衛星、GPS衛星からの衛星信号を使用した絶対位置の測位を行うことが可能である。また、建屋の内部で移動体の測位を行う場合、建屋の内部では衛星信号が減衰するため、例えばビーコン信号等の相対測位信号を使用した相対位置の測位が可能である(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4461235号公報
【特許文献2】特許第7257166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車両等の移動体の自動運転を行う場合、移動体の位置を検出するためには衛星信号による測位が必要となる。建屋の内部等のような衛星信号が減衰して十分な強度で受信できない環境においても、衛星信号により移動体の位置を精度よく検出することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、建屋の内外において衛星信号による高精度な測位が可能な測位システム、車両運転試験装置及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る測位システムは、建屋の内部に配置される第1通信装置と、前記建屋の内外を移動する移動体に搭載され、前記第1通信装置との間で通信可能な第2通信装置と、前記第1通信装置と前記第2通信装置との通信結果を取得し、取得した前記通信結果に基づいて、衛星から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する疑似信号生成装置とを備える。
【0007】
本開示に係る車両運転試験装置は、移動体である試験車両が移動する移動経路と、前記試験車両の試験条件を再現する条件再現機構と、前記移動経路及び前記条件再現機構の少なくとも一部を覆う建屋と、上記の測位システムとを備え、前記測位システムは、前記移動体に搭載され、生成された前記疑似衛星信号に基づいて、前記建屋の内部を移動する前記移動体の位置を算出する。
【0008】
本開示に係る移動体は、本体及び運転装置を有し、建屋の内外に連続する移動経路を移動可能な移動体であって、前記建屋の内部に配置される第1通信装置との間で通信可能な第2通信装置と、前記第1通信装置と前記第2通信装置との通信結果を取得し、取得した前記通信結果に基づいて、衛星から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する疑似信号生成装置と、生成された前記疑似衛星信号に基づいて、前記建屋の内部の前記移動経路を移動する前記移動体の位置を算出する位置算出装置と、前記位置算出装置で算出された前記位置に基づいて、前記運転装置の動作を制御する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、建屋の内外において衛星信号による高精度な測位が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る測位システムの一例を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る測位システムの一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、建屋の内部の構成の一例を示す図である。
図4図4は、測位システムの動作の一例を示す図である。
図5図5は、測位システムの動作の一例を示す図である。
図6図6は、測位システムの動作の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る測位システムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る測位システム100の一例を模式的に示す図である。図2は、本実施形態に係る測位システム100の一例を示す機能ブロック図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、測位システム100は、衛星80から送信される衛星信号による測位が可能である。衛星80としては、GNSS衛星、GPS衛星等が挙げられる。衛星信号は、GNSS信号、GPS信号等が挙げられる。
【0014】
測位システム100は、第1通信装置10と、第2通信装置20と、疑似信号生成装置30と、位置算出装置40とを備える。測位システム100は、建屋60の内外を移動する移動体50の位置を測定する。本実施形態において、移動体50は、例えば自動車等の車両であり、車体51と、運転装置52と、通信部53と、制御装置55とを有する。運転装置52は、移動体50を走行させる走行装置、当該走行装置を操作する操作装置等、移動体50の運転に用いられる各種装置及びセンサ等を含む。通信部53は、測位システム100との間で情報の送受信を行う。通信部53は、測位システム100で測位された移動体50の位置に関する情報を受信可能である。制御装置55は、運転装置52の動作を制御する。制御装置55は、通信部53で受信した移動体50の位置に基づいて、運転装置52の動作を制御することができる。
【0015】
本実施形態では、測位システム100が車両運転試験装置200に用いられる場合を例に挙げて説明する。車両運転試験装置200は、移動体50である試験車両の周囲環境と運転状態を再現して、試験車両の車両操作情報を取得する。車両運転試験装置200は、移動体50の走行試験を建屋60の内部で実行する。車両運転試験装置200は、建屋60の内部で移動体50を走行させ、移動体50から取得した情報、移動体50の周囲の情報を処理して、試験条件、試験結果を算出する。車両運転試験装置200は、移動体50が移動する移動経路71と、移動体の試験条件を再現する条件再現機構72と、移動経路71及び条件再現機構72の少なくとも一部を覆う上記の建屋60とを有する。条件再現機構72は、建屋60内の環境を調整し、移動体50の周囲の環境を試験条件の環境とする。条件再現機構72は、雨を再現する降水設備、雪を再現する降雪設備、日中の環境を再現する日照設備、温度及び湿度を調整する気温湿度気圧調整設備、霧を発生させる霧発生設備、風を発生させる送風設備、塵を発生させる発塵設備、雹を再現する降雹設備、電磁ノイズを発生させる電磁ノイズ発生設備、電磁ノイズを軽減する電磁ノイズ軽減設備等の各種設備を含む。
【0016】
第1通信装置10は、建屋60の内部に配置される。図3は、建屋60の内部の構成の一例を示す図である。図3に示すように、第1通信装置10は、建屋60の内部に、移動経路71に沿って所定の間隔で複数配置される。複数の第1通信装置10は、移動経路71に対して幅方向の両側に、当該幅方向に対向する位置に配置される。また、建屋60の内部において、移動経路71の端部71aに対応する位置に、幅方向に対向するように一対の第1通信装置10が配置される。移動経路71が建屋60を横切る場合、端部71aとは反対側の端部においても同様に、幅方向に対向するように一対の第1通信装置10を配置することができる。なお、建屋60の内部において、移動経路71は、屈曲又は湾曲した構成であってもよい。複数の第1通信装置10のうち、一部の第1通信装置10は、第2通信装置20との通信可能範囲SAが建屋60の内部から外部にはみ出すように設定される。本実施形態において、各第1通信装置10は、装置識別情報を含む相対測位信号を送信する送信装置である場合を例に挙げて説明する。この場合、各第1通信装置10は、所定の周期で相対測位信号を送信する。第1通信装置10からの相対測位信号の送信範囲(通信可能範囲)SAが重なるように、第1通信装置10が配置される。また、第1通信装置10は、複数の第1通信装置10の相対測位信号の送信範囲SAが重なった重複送信範囲SBが建屋60の外部に一部はみ出すように配置される。なお、相対測位信号としては、例えばUWB(Ultra Wide Band)を用いた信号、ビーコン信号、モーションキャプチャ信号等が挙げられる。相対測位信号として例えばビーコン信号を用いて三角測量による測位を行う場合、第1通信装置10は少なくとも2つ用いられる。また、建屋60に設置されるカメラによるモーションキャプチャ信号等によりビーコン信号を用いずに測位を行う場合、カメラによる当該モーションキャプチャ信号等を送信するための第1通信装置10は1つ以上であればよい。
【0017】
第2通信装置20は、第1通信装置10を含む外部との間で通信が可能である。第2通信装置20は、移動体50に搭載される。本実施形態において、第2通信装置20は、第1通信装置10から送信される相対測位信号を受信する受信装置である場合を例に挙げて説明する。第2通信装置20は、相対測位信号を受信した場合、受信した当該相対測位信号を疑似信号生成装置30に送信する。また、第2通信装置20は、衛星80から送信される衛星信号を受信した場合、受信した当該衛星信号を疑似信号生成装置30に送信する。なお、衛星80からの衛星信号は、必ずしも第2通信装置20が受信する必要はない。例えば、衛星80からの衛星信号を受信可能な衛星信号受信装置が別途設けられ、当該衛星信号受信装置から疑似信号生成装置30に衛星信号を送信可能な構成であってもよい。また、第2通信装置20は、後述する疑似衛星信号を受信可能である。第2通信装置20は、受信した衛星信号又は疑似衛星信号を位置算出装置40に送信する。
【0018】
疑似信号生成装置30は、疑似衛星信号を生成するための各種の情報処理を行う。疑似信号生成装置30は、通信部31、処理部32及び記憶部33を有する。通信部31は、外部機器との間で有線又は無線による通信を行う。通信部31は、ネットワークインタフェースカード等のインタフェースを含む。
【0019】
処理部32は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。
【0020】
処理部32は、情報取得部34と、絶対位置算出部35と、疑似信号生成部36と、通信制御部37とを有する。
【0021】
情報取得部34は、各種情報を取得する。情報取得部34は、第1通信装置10と第2通信装置20との通信結果を取得する。また、情報取得部34は第2通信装置20から衛星信号を受信する。なお、衛星信号を受信可能な衛星信号受信装置が別途設けられる場合、情報取得部34は、当該衛星信号受信装置から衛星信号を受信することができる。本実施形態において、情報取得部34は、第1通信装置10から送信される相対測位信号を第2通信装置20で受信した場合、当該第2通信装置20で受信した相対測位信号に含まれる情報を取得する。情報取得部34は、時刻を示す時刻情報と、衛星の位置を示す衛星位置情報とを取得する。情報取得部34は、例えば通信部31を介して、インターネット等のネットワークから時刻情報、衛星位置情報を取得することができる。
【0022】
絶対位置算出部35は、第1通信装置10と第2通信装置20との通信結果に基づいて、移動体50の絶対位置を示す絶対位置情報を算出する。ここで、絶対位置は、移動体50の地球上における位置とすることができる。絶対位置情報としては、例えば緯度、経度及び高度を用いた座標が挙げられる。本実施形態において、絶対位置算出部35は、例えば、第1通信装置10から送信される相対測位信号を第2通信装置20が受信することにより、第2通信装置20の位置を算出し、当該第2通信装置20の位置を移動体50の絶対位置情報とすることができる。なお、絶対位置情報の算出方法については、上記に限定されない。
【0023】
疑似信号生成部36は、情報取得部34で取得した時刻情報及び衛星位置情報と、絶対位置算出部35で算出された絶対位置情報とに基づいて、衛星から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する。また、疑似信号生成部36は、情報取得部34で取得した衛星信号から疑似衛星信号を生成する。疑似衛星信号は、移動体50の位置を示す情報である。
【0024】
通信制御部37は、通信部31における情報の送受信動作を制御する。通信制御部37は、例えば疑似信号生成部36で生成された疑似衛星信号を通信部31から送信させることができる。
【0025】
記憶部33は、測位システム100の動作に関する各種プログラム、データ等の情報を記憶する。記憶部33は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを含む。
【0026】
位置算出装置40は、移動体50に搭載される。位置算出装置40は、疑似信号生成装置30で生成された疑似衛星信号、又は第2通信装置20で受信された衛星信号に基づいて、移動体50の位置を算出する。位置算出装置40は、通信部41、処理部42及び記憶部43を有する。通信部41は、外部機器との間で有線又は無線による通信を行う。通信部41は、ネットワークインタフェースカード等のインタフェースを含む。通信部41は、第2通信装置20からの衛星信号、及び疑似信号生成装置30からの疑似衛星信号を受信する。
【0027】
処理部42は、CPU等のプロセッサと、ROM等のメモリとを含む。処理部42は、通信部41で受信した衛星信号又は疑似衛星信号に基づいて、移動体50の位置を算出する。処理部42は、第1通信装置10と第2通信装置20との通信結果に基づいて、移動体50の位置が建屋60の外部であると判定することができる。この場合、処理部42は、衛星信号が受信された場合、衛星信号に基づいて移動体50の位置を算出することができる。処理部42は、算出した移動体50の位置を、通信部41から外部(例えば、移動体50の通信部53等)に送信させることができる。
【0028】
上記した疑似信号生成装置30及び位置算出装置40では、処理部32、42においてプロセッサが各種プログラムを読み出してメモリに展開することで、上記各部の機能に対応した情報処理を実行する。各種プログラムとしては、例えば通信部31、41が受信したプログラム、記憶部33、43に記憶されたプログラム、外部の記録媒体に記録されたプログラム等が挙げられる。疑似信号生成装置30及び位置算出装置40は、各種の情報処理を実行する処理装置(コンピュータ)として機能する。なお、疑似信号生成装置30及び位置算出装置40とは異なる他の処理装置が各種プログラムを実行してもよいし、疑似信号生成装置30及び位置算出装置40と他の処理装置とが協働して各種プログラムを実行してもよい。
【0029】
次に、上記のように構成された測位システム100の動作について説明する。図4及び図5は、測位システム100の動作の一例を示す図である。図5では、建屋60の内部が見えるように一部をくり抜いた状態で示している。測位システム100において、建屋60の内部に配置される各第1通信装置10は、所定の周期で相対測位信号を送信する。移動体50に搭載される第2通信装置20は、第1通信装置10から送信される相対測位信号を受信可能な状態とする。また、第2通信装置20は、衛星80から送信される衛星信号を受信可能な状態とする。この状態で、移動体50は、移動経路71を例えば自動運転等により走行する。
【0030】
図4に示すように、移動体50が建屋60の外部を走行する場合、当該移動体50は、第2通信装置20により、衛星80からの衛星信号を受信することができる。第2通信装置20は、受信した衛星信号を位置算出装置40、疑似信号生成装置30に送信する。また、第2通信装置20は、疑似信号生成装置36から受信した疑似衛星信号を位置算出装置40に送信する。この場合、位置算出装置40は、衛星信号に基づいて移動体50の位置情報を算出してもよいし、生成した疑似衛星信号に基づいて移動体50の位置情報を算出してもよい。なお、移動体50が建屋60の外部を走行する場合も疑似衛星信号に基づいて移動体50の位置情報を算出することができる。この場合、移動体50が建屋60の外部から建屋60の内部に入る際に、位置算出装置40の入力する信号の切り替えが必要ないため、動作の安定化を図ることができる。処理部42は、算出した移動体50の位置を、通信部41から外部(例えば、移動体50の通信部53等)に送信させることができる。
【0031】
図5に示すように、移動体50が建屋60の内部を走行する場合、第2通信装置20は、第1通信装置10から送信される相対測位信号を受信することができる。第2通信装置20は、受信した相対測位信号を疑似信号生成装置30に送信する。情報取得部34は、第2通信装置20からの相対測位信号に含まれる情報を取得する。
【0032】
第1通信装置10から送信される相対測位信号を情報取得部34が取得した場合、絶対位置算出部35は、3つの第1通信装置10から送信される相対測位信号に基づき、第2通信装置20の位置を、移動体50の絶対位置情報として算出する。
【0033】
絶対位置情報が算出された場合、情報取得部34は、当該絶対位置が算出された時刻に対応する時刻情報を取得する。また、情報取得部34は、取得した時刻情報で示される時刻における衛星80の位置を示す衛星位置情報を取得する。
【0034】
疑似信号生成部36は、情報取得部34で取得された時刻情報及び衛星位置情報と、絶対位置算出部35で算出された絶対位置情報とに基づいて、疑似衛星信号を生成する。疑似衛星信号は、衛星80から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む信号である。疑似衛星信号は、移動体50の位置情報を特定するための情報を含む。疑似信号生成部36は、生成した疑似衛星信号を第2通信装置20に送信する。なお、相対測位信号が取得されない場合、絶対位置が測定不能である旨を絶対位置情報とし、所定の周期に対応する時刻を時刻情報として、疑似衛星信号を生成することができる。
【0035】
第2通信装置20は、疑似衛星信号を受信した場合、受信した疑似衛星信号を位置算出装置40に送信する。なお、第2通信装置20を経由せず、疑似信号生成部36から位置算出装置40に疑似衛星信号を送信する構成であってもよい。
【0036】
位置算出装置40において、通信部41は、第2通信装置20からの疑似衛星信号を受信する。処理部42は、受信された疑似衛星信号に基づいて、建屋60の内部を移動する移動体50の位置を算出する。処理部42は、算出した移動体50の位置を、通信部41から外部(例えば、移動体50の通信部53等)に送信させることができる。
【0037】
図6は、測位システム100の動作の他の例を示す図である。図6では、建屋60の内部が見えるように一部をくり抜いた状態で示している。本実施形態では、第1通信装置10の重複通信範囲SBが建屋60の外部にはみ出すように設定される(図3参照)。このため、図6に示すように、移動体50が建屋60の外部から内部に入る場合、又は移動体50が建屋60の内部から外部に出る際、第2通信装置20において、衛星80からの衛星信号と、第1通信装置10からの相対測位信号との両方の信号を受信可能となる場合がある。この場合、測位システム100では、衛星信号に基づいて移動体50の位置情報を算出してもよいし、相対測位信号に基づいて疑似衛星信号を生成し、生成した疑似衛星信号に基づいて移動体50の位置情報を算出してもよい。
【0038】
測位システム100においては、衛星信号に基づいて移動体50の位置情報を算出する動作と、疑似衛星信号を生成し当該疑似衛星信号に基づいて移動体50の位置情報を算出する動作とを切り替えることができる。この場合、例えば第2通信装置20で相対測位信号を受信したタイミングで、上記動作の切り替えを行うことができる。また、衛星信号と相対測位信号の両方の信号を受信可能となる場合には、当該両方の信号を受信可能な期間の上記動作の切り替えを行うようにしてもよい。
【0039】
なお、第1通信装置10の通信可能範囲の設定によっては、移動体50が建屋60の内部に入る場合又は外部に出る場合に、衛星信号と相対測位信号のいずれの信号も受信できなくなる期間が発生することが想定される。このような場合には、例えば移動体50に加速度センサやジャイロセンサを設けておくことで、当該加速度センサやジャイロセンサを用いて慣性航法により移動体50の位置を測位することができる。
【0040】
以上のように、本開示の第1態様に従えば、建屋60の内部に配置される第1通信装置10と、建屋60の内外を移動する移動体50に搭載され、第1通信装置10との間で通信可能な第2通信装置20と、第1通信装置10と第2通信装置20との通信結果を取得し、取得した通信結果に基づいて、衛星80から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する疑似信号生成装置30とを備える測位システム100が提供される。
【0041】
この構成によれば、建屋60の内部において衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成することにより、建屋60の内部のような衛星信号が減衰して十分な強度で受信できない環境においても、疑似衛星信号を用いることで移動体50の位置を精度よく検出することができる。
【0042】
本開示の第2態様に従えば、第1態様に係る測位システムおいて、第1通信装置10は、複数設けられ、通信結果は、第2通信装置20と、第1通信装置10との通信結果であり、疑似信号生成装置30は、通信結果に基づいて、移動体50の絶対位置を算出し、絶対位置が算出された時刻に対応する時刻情報と、時刻情報で示される時刻における衛星80の位置を示す衛星位置情報とを取得し、絶対位置、時刻情報及び衛星位置情報に基づいて、疑似衛星信号を生成する。
【0043】
この構成によれば、移動体50の絶対位置を精度よく求めることができ、疑似衛星信号を精度よく生成できる。
【0044】
本開示の第3態様に従えば、第1態様又は第2態様に係る測位システムおいて、第1通信装置10は、第1通信装置10について第2通信装置20との通信可能範囲SAが重複した重複通信範囲SBが建屋60の内部から外部にはみ出すように設定される。
【0045】
この構成によれば、移動体50が建屋60の内部から外部、外部から内部に移動する際に、衛星信号及び疑似衛星信号の両方に基づいて測位可能な状況を実現することができる。
【0046】
本開示の第4態様に従えば、第1態様から第3態様のいずれかに係る測位システムおいて、第1通信装置10及び第2通信装置20は、一方が装置識別情報を含む相対測位信号を送信する送信装置であり、他方が相対測位信号を受信する受信装置である。
【0047】
この構成によれば、第1通信装置10と第2通信装置20との間で相対測位信号を用いた測位を行い、当該結果に基づいて疑似衛星信号を生成するため、効率的に疑似衛星信号を生成することができる。
【0048】
本開示の第5態様に従えば、第1態様から第4態様のいずれかに係る測位システムおいて、建屋60には、移動体50が移動する移動経路71が設けられ、第1通信装置10は、建屋60の内部に移動体50の移動経路71に沿って所定の間隔で複数配置される。
【0049】
この構成によれば、移動体50の移動に伴って、精度よく疑似衛星信号を生成することができる。
【0050】
本開示の第6態様に従えば、第1態様から第5態様のいずれかに係る測位システムにおいて、移動体50に搭載され、生成された疑似衛星信号に基づいて、建屋60の内部を移動する移動体50の位置を算出する位置算出装置40を更に備える。
【0051】
この構成によれば、位置算出装置40により、疑似衛星信号に基づいて移動体50の位置を高精度に算出することができる。
【0052】
この構成によれば、疑似信号生成装置30における通信結果の取得に応じて、移動体50が建屋60の外部に存在することを検出することができる。
【0053】
本開示の第7態様に従えば、第6態様に係る測位システムおいて、位置算出装置40は、移動体50に搭載される。
【0054】
この構成によれば、位置算出装置40が移動体50に搭載されるため、位置算出装置40で算出された移動体50の位置情報を当該移動体50において効率的に利用することができる。
【0055】
本開示の第8態様に従えば、第1態様から第7態様のいずれかに係る測位システムにおいて、第2通信装置20は、衛星信号及び疑似衛星信号を受信可能であり、受信した衛星信号及び疑似衛星信号を位置算出装置40に送信し、位置算出装置40は、第2通信装置20からの衛星信号及び疑似衛星信号に基づいて移動体50の位置を算出し、疑似信号生成装置30は、生成した疑似衛星信号を第2通信装置20に送信する。
【0056】
この構成によれば、移動体50が建屋60の内部から外部、外部から内部に移動する場合において、衛星信号及び疑似衛星信号に基づいて移動体50の位置を円滑に測位することができる。
【0057】
本開示の第9態様に従えば、移動体50である試験車両が移動する移動経路71と、試験車両の試験条件を再現する条件再現機構72と、移動経路71及び条件再現機構72の少なくとも一部を覆う建屋60と、第1態様から第8態様のいずれかに従う測位システム100とを備え、測位システム100は、移動体50に搭載され、生成された疑似衛星信号に基づいて、建屋60の内部を移動する移動体50の位置を算出する車両運転試験装置200が提供される。
【0058】
この構成によれば、建屋60の内部でも疑似衛星信号を用いて移動体50の位置を精度よく検出することができるため、移動体50を自動運転させつつ試験を行うことができる。
【0059】
本開示の第10態様に従えば、第1態様に係る測位システムおいて、車体(本体)51及び運転装置52を有し、建屋60の内外に連続する移動経路71を移動可能な移動体50であって、建屋60の内部に配置される第1通信装置10との間で通信可能な第2通信装置20と、第1通信装置10と第2通信装置20との通信結果を取得し、取得した通信結果に基づいて、衛星80から送信される衛星信号と同一種類の情報を含む疑似衛星信号を生成する疑似信号生成装置30と、生成された疑似衛星信号に基づいて、建屋60の内部の移動経路71を移動する移動体50の位置を算出する位置算出装置40と、位置算出装置40で算出された位置に基づいて、運転装置52の動作を制御する制御装置55とを備える移動体50が提供される。
【0060】
この構成によれば、建屋60の内部でも疑似衛星信号を用いて移動体50の位置を精度よく測位することができ、当該測位の結果を用いて運転装置52の動作を制御することができるため、高精度に自動運転が可能な移動体50が提供される。
【0061】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、第1通信装置10が相対測位信号の送信装置であり、第2通信装置20が相対測位信号の受信装置である場合を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。第1通信装置10が相対測位信号の受信装置であり、第2通信装置20が相対測位信号の送信装置であってもよい。この場合、疑似信号生成装置30は、建屋60の内部に配置した構成とすることができる。この構成では、第1通信装置10から相対測位信号を疑似信号生成装置30に送信する。疑似信号生成装置30は、疑似衛星信号を生成して、移動体50に搭載された第2通信装置20に送信する。この構成により、移動体50に搭載する機器を低減することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、建屋60が運転試験装置200を構成する建屋である場合を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。建屋60は、例えばトンネル等の構造物であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 第1通信装置
20 第2通信装置
30 疑似信号生成装置
31,41,53 通信部
32,42 処理部
33,43 記憶部
34 情報取得部
35 絶対位置算出部
36 疑似信号生成部
37 通信制御部
40 位置算出装置
50 移動体
51 車体
52 運転装置
55 制御装置
60 建屋
71 移動経路
71a 端部
72 条件再現機構
80 衛星
100 測位システム
200 車両運転試験装置
SA 送信範囲(通信可能範囲)
SB 重複測定範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6