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  • 特開-ダニ用忌避剤およびダニの忌避方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179940
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ダニ用忌避剤およびダニの忌避方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/08 20090101AFI20241219BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20241219BHJP
   A01M 29/12 20110101ALI20241219BHJP
【FI】
A01N65/08
A01P17/00
A01N53/10 210
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099284
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100220836
【弁理士】
【氏名又は名称】堂前 里史
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 茜
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CA02
2B121CA03
2B121CA43
2B121CB02
2B121CC21
2B121CC27
2B121CC31
2B121EA01
2B121FA15
4H011AC06
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB15
4H011BB22
4H011BC01
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC18
4H011DA02
4H011DA07
4H011DA17
4H011DA21
4H011DE06
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、ダニの忌避効果が高く、安全性が高く、しかも、ダニの死骸が発生しにくいダニ用忌避剤、前記ダニ用忌避剤を用いるダニの忌避方法を提供する。
【解決手段】本発明のダニ用忌避剤は、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物を有効成分として含有する。一例において、ダニの忌避方法は、ダニ用忌避剤を空気中に放出することを含む。他の一例において、ダニの忌避方法は、ダニ用忌避剤を繊維製品に適用することを含む。他の一例において、ダニの忌避方法は、ダニ用忌避剤をダニに接触させることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物を有効成分として含有する、ダニ用忌避剤。
【請求項2】
ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物が、キササゲである、請求項1に記載のダニ用忌避剤。
【請求項3】
ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物が、花、枝、果実、種子、葉、茎、根および樹皮からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物である、請求項1に記載のダニ用忌避剤。
【請求項4】
ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物が、メタノール抽出物である、請求項1に記載のダニ用忌避剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のダニ用忌避剤を空気中に放出することを含む、ダニの忌避方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のダニ用忌避剤を繊維製品に適用することを含む、ダニの忌避方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のダニ用忌避剤をダニに接触させることを含む、ダニの忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニ用忌避剤およびダニの忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布団や枕、シーツ等の寝具類等は、家庭で頻繁に洗濯することができないため、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ、ケナガコナダニ等の屋内塵性ダニの温床となり得る。これらのダニの糞や脱皮殻に含まれるタンパク質等は、喘息やアトピー性皮膚炎を引き起こすアレルゲンとなる。
従来、ダニに対する忌避剤として、ピレスロイド系化合物等の合成品が広く使用されてきたが、より安全性が高い成分や忌避効力が高い成分の使用が検討されている(例えば、特許文献1~10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-239714号公報
【特許文献2】特開平1-193204号公報
【特許文献3】特開2017-39677号公報
【特許文献4】特開2020-50636号公報
【特許文献5】特開2020-100579号公報
【特許文献6】特開2021-17430号公報
【特許文献7】特開2021-54740号公報
【特許文献8】特開2021-54741号公報
【特許文献9】特開2021-54742号公報
【特許文献10】特開2021-130638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のダニ用忌避剤の性能には改善の余地がある。特に、コナヒョウダニ等の屋内に生息するダニは、その死骸もアレルギーの原因となり得る。そのため、ダニの忌避効果は高い一方で、ダニの死骸が発生しないように、ダニを死に至らしめないことが重要である。
【0005】
本発明は、ダニの忌避効果が高く、安全性が高く、しかも、ダニの死骸が発生しにくいダニ用忌避剤、前記ダニ用忌避剤を用いるダニの忌避方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく天然成分のダニに対する活性について、鋭意研究を重ねていたところ、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物が優れた性能を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物を有効成分として含有する、ダニ用忌避剤。
[2]ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物が、キササゲである、[1]に記載のダニ用忌避剤。
[3]ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物が、花、枝、果実、種子、葉、茎、根および樹皮からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物である、[1]または[2]に記載のダニ用忌避剤。
[4]ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物が、メタノール抽出物である、[1]~[3]のいずれかに記載のダニ用忌避剤。
[5][1]~[4]のいずれかに記載のダニ用忌避剤を空気中に放出することを含む、ダニの忌避方法。
[6][1]~[4]のいずれかに記載のダニ用忌避剤を繊維製品に適用することを含む、ダニの忌避方法。
[7][1]~[4]のいずれかに記載のダニ用忌避剤をダニに接触させることを含む、ダニの忌避方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダニ用忌避剤は、ダニの忌避効果が高く、安全性が高く、しかも、ダニの死骸が発生しにくい。
本発明のダニの忌避方法によれば、ダニの忌避効果が高く、安全性が高く、しかも、ダニの死骸が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例で使用した試験装置を模式的に示す断面図である。
図2図2は、実施例で使用した試験装置を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B%」は、A%以上B%以下であることを意味する。
【0011】
本発明のダニ用忌避剤は、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物を有効成分として含有する。
ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物としては、例えば、キササゲ、ハナキササゲが挙げられる。なかでも、キササゲが特に好ましい。
【0012】
ダニ用忌避剤の原料としては、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の植物全体を用いてもよく、その一部を用いてもよい。例えば、花、枝、果実、種子、葉、茎、根、樹皮が挙げられる。なかでも忌避効果が高いダニ用忌避剤が得られやすいことから、花、枝の部分が好適に用いられる。
ダニ用忌避剤の原料は、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の植物全体またはその一部をそのまま用いてもよいが、好ましくは、粉砕機、圧砕機等により粉砕、圧砕した後に使用される。
【0013】
抽出方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、圧搾、水蒸気蒸留、常圧蒸留、減圧蒸留、溶媒抽出等の抽出方法を用いることができる。水蒸気蒸留法の一例では、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の葉や生花を砕いてアルコールや温湯に数時間浸した後に水蒸気蒸留を行い、その留出油分を採取することにより抽出物を得ることができる。
【0014】
溶媒抽出の一例では、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の葉や生花を砕いた後、溶媒中で数時間加熱し、次いで濾過して得られる濾液を濃縮することにより抽出物を得ることができる。
溶媒抽出に用いられる溶媒としては、極性溶媒が好ましい。例えば、水、エタノール、メタノール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒;クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒;ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、酢酸エチル等のカルボニル系溶媒、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0015】
なかでも、溶媒抽出としてメタノールを使用した、メタノール抽出物が好ましい。
【0016】
ダニ用忌避剤は、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物のみを有効成分として含有してもよく、任意成分をさらに含有してもよい。
【0017】
本発明のダニ用忌避剤は、従来公知の他のダニ防除成分をさらに含有してもよい。これによりさらに優れた忌避効果を発揮させてもよい。
【0018】
他のダニ防除成分としては、例えば、エンペントリン、トランスフルスリン、アレスリン、フェノトリン、プロフルトリン、メトフルトリン、エミネンス、ピレトリンI、ピレトリンII、シネリンI、シネリンII、ジャスモリンI、ジャスモリンII等のピレスロイド系化合物;ジクロルボス、ダイアジノン、フェニトロチオン、マラチオン等の有機リン剤;N,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジ-n-プロピルイソシンコメロネート、p-ジクロロベンゼン、ジ-n-ブチルサクシネート、カラン-3,4-ジオール、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシラート、ミリスチン酸イソプロピル、チオシアノ酢酸イソボルニル、ジフェニル、ジフェニルメタン、ジベンジル、ベンジルフェニルエーテル、ベンジルフェニルエチルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルフェニルケトン、ジベンジルケトン、ベンザルアセトフェノン、β-フェニルエチルベンゾエイト、γ-フェニルプロピルベンゾエイト、フェニル酢酸フェニル、ベンジルフェニルアセテート、β-フェニルエチルフェニルアセテート、フェニルシンナメート、ベンジルシンナメート、β-フェニルエチルシンナメート、β-フェニルプロピルシンナメート、シンナミルシンナメート、ジフェニルカルビノール、フェニルベンジルカルビノール、ジベンジルカルビノール、n-アミルベンゾエート、イソアミルベンゾエート、ヘキシルベンゾエート、ヘプチルベンゾエート、オクチルベンゾエート、ノニルベンゾエート、シス-3-へキセニールベンゾエート、n-アミルサリシレート、iso-アミルサリシレート、ヘキシルサリシレート、シス-3-へキセニールサリシレート、ベンジルプロピオネート、ベンジル-n-ブチレート、ベンゾルーイソ-ブチレート、ベンジル-n-バレレート、ベンジルイソバレレート、ベンジルカプロエート、ベンジルヘプタノエート、ベンジルカプリレート、ペンジルダニレート、オイゲノール、メチルオイゲノール、イソオイゲノール等の化合物;α、β-フェランドレン、α、β―ピネン、α、β―テルピンオール、リモネン、シトロネラール、リナロール、シトラール、メントール等のテルペン化合物;天然ピレトリン、ベチバー油、パチョウリ油、ブラックペッパーオイル、クローブリーフオイル、月桃オイル、バジルオイル等の植物抽出物;メチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、エチルイソチオシアネート、ビニルイソチオシアネート、プロピルイソチオシアネート、イソプロピルイソチオシアネート等のイソチオシアネート化合物;アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン等の芳香族ケトン化合物等が挙げられる。
他のダニ防除成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ダニ用忌避剤は、後述するように、蒸散させる方法、ダニに接触させて作用させる方法等により使用され得る。各種の使用方法に適した有効成分量があるが、例えば、ダニ用忌避剤中に有効成分を合計で0.001~99.99質量%となるように配合することが好ましく、0.01~99.9質量%となるように配合することがより好ましく、特に好ましくは0.05~90質量%である。
【0020】
本発明のダニ用忌避剤の剤型としては、特に限定はなく、液剤、ゲル剤、固形剤等の形態にすることができ、これに応じた任意成分を使用することができる。
【0021】
本発明のダニ用忌避剤の剤型の一つとして、液剤が挙げられる。液剤を調製する場合、溶媒が使用される。溶媒は特に限定されない。従来公知の液状媒体を用いることができるが、身体に対して安全性の高い液状媒体を使用することが好ましい。
【0022】
溶媒としては、例えば、脱イオン水、蒸留水等の水;ヘキサン、パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系化合物;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のアルキルアルコール類;アリルアルコール等のアルケニルアルコール類;ベンジルアルコール等の芳香族環含有アルコール類;オイゲノール等のフェノール類;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系化合物;アセトン等のケトン系化合物;酢酸、オレイン酸等の脂肪酸系化合物;酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル等のエステル系化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系化合物;2-フェノキシエタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のグリコールエーテル系化合物;ジメチルスルホキシド、ごま油、リノール油、サラダ油等の植物油等が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
忌避剤中でのこれらの溶媒の使用量は、忌避剤全体に対して、0.1~99.99質量%となるように配合することが好ましく、1~99.9質量%となるように配合することが特に好ましい。さらに好ましくは、10~99.5質量%である。
【0024】
液剤を調製する場合、必要に応じて界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤としては、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の従来公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
ダニ用忌避剤の他の剤型としては、上述した液剤を適当な担体に含浸、担持させた、固形状またはシート状の固形剤を挙げることができる。担持させる担体としては特に限定されないが、例えば、木、紙、織布、不織布、シリカ、タルク、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、セルロースビーズ、セラミック、ポリプロピレン等の樹脂製ペレット等を挙げることができる。
【0026】
さらなる他の剤型として、上述した液剤をゲル化剤でゲル化させたゲル剤を挙げることができる。ゲル化剤としては、従来公知のものであってよい。例えば、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸ソーダ、セルロース誘導体、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ヒドロキシプロピル化多糖類、ステアリン酸イヌリン、アクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂、オクチル酸アルミニウム等が挙げられる。ゲル化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
以下、本発明のダニ用忌避剤の使用方法のいくつかの例を説明するが、本発明のダニ用忌避剤の使用方法は以下の記載に限定されるものではない。
【0028】
一例において、ダニの忌避方法は、ダニ用忌避剤を空気中に放出することを含む。
環境中に放出させる方法の例としては、液剤、固形剤、ゲル剤等の本発明のダニ用忌避剤中から有効成分を、常温で自然に蒸散させる方法や、強制的に蒸散させる方法が挙げられる。強制的に蒸散させる方法としては、加熱による蒸散、送風による蒸散、燻蒸による蒸散等が挙げられる。また、環境中に放出させる方法として噴霧による方法等を使用しても良い。
【0029】
強制的に蒸散させる方法のうち、加熱による蒸散方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
・実開平2-78077号公報に開示されているような、薬液ボトル内に収納した忌避剤を吸い上げ芯で吸い上げ芯の上部等を加熱ヒーターで加熱することにより蒸散させるようにした加熱蒸散器を用いて行う方法。
・実開平1-116072号公報に開示されているようなマット状の含浸体に忌避剤を含浸し、このマットを加熱ヒーター上に載置することにより蒸散させるようにした加熱蒸散器を用いて行う方法。
【0030】
送風による蒸散は、例えば、特開平11―308955号公報に開示されているような薬剤保持体と送風機を備え、その薬剤保持体に送風機により発生する気流を接触させることで、忌避剤を放出口から環境中に放出するファン式忌避装置等を用いて行うことができる。
【0031】
燻蒸による蒸散は、例えば、実開昭54-148267号公報に開示されているような、上部開口の容器に、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジド化合物等の有機発泡剤と忌避剤を収納した収納室を形成させ、収納室の底部を加熱手段により加熱することで発泡剤が分解して発生する窒素ガス、炭酸ガス等により、忌避剤を蒸散させる燻蒸装置等を用いて行うことができる。
【0032】
噴霧による散布は、噴霧器を用い、液剤をスプレーする方法や、適当な噴射剤を用いたエアゾールを使用して行うことができる。スプレー剤とする場合には、上記した液剤と、トリガースプレー、アトマイザー等の噴霧手段とを組み合わせればよい。またエアゾール剤とする場合には、上記した液剤と、LPG、イソペンタン等のエアゾール用担体と、エアゾール缶等のエアゾールの噴霧手段と組み合わせればよい。
【0033】
他の一例において、ダニの忌避方法は、ダニ用忌避剤をダニに接触させることを含む。
ダニ用忌避剤はダニに接触できる形態であれば、液体状態でもよく、固体状態でもよく、気体状態でもよい。この場合、設置された忌避剤に、ダニが接触することによって忌避効果を発揮させることができる。例えば、ふとん、枕、毛布等の寝具や、畳、絨毯、カーペット、ソファ、クッション、ぬいぐるみ、衣類等ダニが生息する場所、対象物に直接塗布することができる。また、ポンプスプレーやエアゾール等のスプレイヤーを使用してダニ用忌避剤を噴霧することもできる。
【0034】
他の一例において、ダニの忌避方法は、ダニ用忌避剤を繊維製品に適用することを含む。
ダニ用忌避剤を、物置、タンス、押入、クローゼット、衣装ケース、衣類収納袋、布団収納袋、居間、寝室等の室内、玄関等の空間に設置、適用することにより、有効成分が上記環境中に放出され、あるいは、ダニに接触することによって、ダニを効果的に忌避させることができる。また本発明のダニ用忌避剤を、ダニが生息している畳、絨毯、カーペット、床、布団、枕、ソファ、衣類等の繊維製品を含む対象物に直接噴霧、散布、塗布等して適用してもよい。
【0035】
(作用機序)
以上説明した本発明のダニ用忌避剤は、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ、ケナガコナダニ等の屋内塵性ダニ、ヒゼンダニ、マダニ、イエダニ、ツメダニ、ミナミツメダニ等のダニ目の害虫に対して忌避効果を発揮し得る。これらの中でも、本発明のダニ用忌避剤は、高い忌避効果を有する一方で、殺ダニ効果は低く、死骸が適用場所に残存しにくい。よって、本発明のダニ用忌避剤はアレルゲンとなるコナヒョウダニ、ヤケヒョウヒダニ、ケナガコナダニ等の屋内塵性ダニに対し好適に用いられる。
【0036】
本発明のダニ用忌避剤は、クモ綱ダニ目の害虫、例えば、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ、ケナガコナダニ等の屋内塵性ダニに対し、長期間にわたって優れた忌避効果を発揮する。加えて、ノウゼンカズラ科キササゲ属の植物の抽出物は、天然物中の成分であるため、極めて安全性の高いものである。したがって、一般家庭においても手軽に本発明のダニ用忌避剤を使用でき、ダニによる被害を効果的に予防し、また、除去し得る。さらに、コナヒョウダニ等の屋内に生息するダニは、死骸でもアレルギーの原因になることから、死骸が残存しないように、忌避効果は高い一方で、死に至らしめないことが重要とされているところ、本発明のダニ用忌避剤は、優れた忌避効果を有する一方で、殺ダニ効果は低いため、優れたアレルゲン除去効果を有する。
本発明のダニ用忌避剤は、ダニ目の害虫に対して優れた忌避効果を有し、人体に対して安全である。そのため本発明のダニ用忌避剤は、一般家庭においても手軽に使用でき、有用性が高い。
【0037】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の効果が奏される範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【実施例0038】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されない。
【0039】
<実施例1>
以下の通り、キササゲの花から非水溶媒抽出物1を得た。まず、100mLのナス型フラスコへ、5gのキササゲの花と50mLのメタノールとを入れた後、85℃で5時間、還流を行った。次に、フラスコの内容物を濾過し、濾液を濃縮した。この濃縮は、常温にてエバポレーターを用いて減圧下で行った。以上のようにして、非水溶媒抽出物1を得た。
その後、非水溶媒抽出物1をジメチルスルホキシドに溶解させ、フィルターろ過を行い、非水溶媒抽出物1の濃度が4質量%であるジメチルスルホキシド溶液1を試験サンプルとした。
【0040】
<実施例2>
以下の通り、キササゲの枝から非水溶媒抽出物2を得た。まず、100mLのナス型フラスコへ、5gのキササゲの枝と50mLのメタノールを入れた後、85℃で5時間、還流を行った。次に、フラスコの内容物を濾過し、濾液を濃縮した。この濃縮は、常温にてエバポレーターを用いて減圧下で行った。以上のようにして、非水溶媒抽出物2を得た。
その後、非水溶媒抽出物2をジメチルスルホキシドに溶解させ、フィルターろ過を行い、非水溶媒抽出物2の濃度が4質量%であるジメチルスルホキシド溶液2を得た。ジメチルスルホキシド溶液2を試験サンプルとした。
【0041】
<比較例1>
森村商事社製品「ゼラニウムオイル」を用意し、試験サンプルとした。
【0042】
<比較例2>
Cymbopogon citrarus(東インドレモングラス)の葉を水蒸気蒸留した精油を用意し、試験サンプルとした。
【0043】
<忌避試験>
JIS L 1920「繊維製品の防ダニ性能試験方法」に準じて、ダニを飼育し、生息密度を調整等した。図1および図2に示す試験装置を用いて忌避試験を行った。
予め各例の試験サンプルをエタノールで終濃度0.1質量%に希釈した。この各試料を直径40mmの綿布に60mg塗布し、供試片を得た。
図1および図2に示すように、供試片23を直径45mm、高さ17mmの小ガラスシャーレ22に入れ、その中央に誘引用飼料24を0.05g置いた。その後、直径90mm、高さ14mmの大プラスチックシャーレ20に生存コナヒョウヒダニ約10,000匹を含むダニ培地21を均一に広げ、その中央部に小ガラスシャーレ22を置いた。ダニ培地21は、飼育培地用粉末飼料と乾燥酵母を質量比1:1で混合したものである。
その後、湿度調整のため飽和食塩水26を入れたプラスチック製容器25に大プラスチックシャーレ20を収容した。プラスチック製容器25に蓋をして密封し、温度25℃±1℃の室内に設置した。設置から20時間放置した後、供試片23上および誘引用飼料24上の全ダニ数をカウントした。薬剤処理をしていない綿布を用いたものをブランクとし、この試験を3回繰り返した。3回の試験の合計のカウント数を求め、下記の式により忌避率、死亡率をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0044】
忌避率(%)={(A1-A2)/A1}×100
死亡率(%)=(A3/A2)×100
A1:ブランクの綿布上および誘引用飼料24上のダニ数
A2:薬剤処理したときの供試片23上および誘引用飼料24上のダニ数
A3:薬剤処理したときの供試片23上および誘引用飼料24上の死亡ダニ数
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1、2のいずれにおいても、コナヒョウヒダニに対する高い忌避効果が示された。しかも、死亡率は低いため、優れたアレルゲン防止効果が発揮されることが期待された。比較例1では十分な忌避効果が得られなかった。比較例2では、忌避効果は高いが、死亡率も高いため、アレルゲンとなる死骸が適用場所に残存してしまうことが危惧される。
【0047】
<ゲル剤>
0.1%の天然ピレトリンと1%の非水溶媒抽出物1を配合したエタノール溶液を調製した。このエタノール溶液10gとイソパラフィン85gを混合し、さらにオクチル酸アルミニウム5gを加え、60℃に加熱して攪拌した。これを縦35mm×横35mm×高さ75mmの容器に充填し、室温で3時間静置し、ゲル状のダニ忌避剤を得た。
【0048】
<エアゾール剤>
以下に示す配合の組成物を、市販の200mlエアゾール缶に充填することによって、エアゾール剤を調製した。
有効成分:天然ピレトリン 0.4ml
有効成分:非水溶媒抽出物1 1.0ml
溶媒 :エタノール 38.6ml
噴射剤 :LPG 30.0ml
噴射剤 :イソペンタン 30.0ml
【0049】
エアゾール剤のダニ忌避剤をカーペットにまんべんなく噴霧したところ、約1か月間、そのカーペットにはダニがつかなかった。
【0050】
<スプレー剤>
以下に示す配合の組成物を、市販の150ml容トリガー製容器に収納してスプレー剤を調製した。
有効成分:天然ピレトリン 0.1g
有効成分:非水溶媒抽出物2 0.1g
溶剤 :エタノール 10g
香料 0.05g
界面活性剤 0.1g
イオン交換水 88.75g
【0051】
このスプレー剤を衣類にまんべんなく噴霧したところ、約1週間、その衣類にはダニがつかなかった。
【0052】
<燻蒸剤>
非水溶媒抽出物1を10%配合したエタノール溶液10g、アゾジカルボンアミド55gおよびタルク35gを混練し、常法に従って造粒、乾燥して燻蒸剤を調製した。
【0053】
<加熱蒸散剤>
非水溶媒抽出物2を10%配合したエタノール溶液100mgを3cm×3cmのパルプ製マットに含浸させ加熱蒸散剤を得た。この加熱蒸散剤は、加熱ヒーターにより有効成分を蒸散する。
【0054】
<粒状剤>
パルプ製の粒状含浸体(平均粒径5mm)50gに、非水溶媒抽出物1を10%配合したエタノール溶液50mLを含浸させ、風乾後、通気性の不織布の袋に入れて粒状の忌避剤を得た。
【0055】
以上の結果から、ダニの忌避効果が高く、しかも、ダニの死骸が発生しにくいダニ用忌避剤を提供できたことを確認した。キササゲは天然成分であるから、安全性は高いと期待される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のダニ用忌避剤は、ダニの忌避効果が高く、安全性が高く、しかも、ダニの死骸が発生しにくい。
本発明のダニの忌避方法によれば、ダニの忌避効果が高く、安全性が高く、しかも、ダニの死骸が発生しにくい。
【符号の説明】
【0057】
20 大シャーレ
21 ダニ培地
22 小シャーレ
23 供試片
24 誘引用飼料
25 プラスチック製容器
26 飽和食塩水
図1
図2