(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179946
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ロータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099295
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川戸 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】石川 義則
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS06
5H615SS15
5H615SS16
5H615SS19
5H615SS20
5H615SS57
(57)【要約】
【課題】冷却流路の位置精度の低下を抑制しつつ、冷却流路の流路断面積の減少を抑制できるロータコアの製造方法を提供する。
【解決手段】積層ブロック形成工程において、ブロック体Bにおける第3ブロック23に隣接する第2ブロック22を形成する際には、下面11aから第2ブロック22における第3ブロック23との接触面までの間に積層されるロータ鉄心片Waの積層厚さが目標範囲内に収まるように、第2ブロック22を構成するロータ鉄心片Waの積層数を調整し、第3ブロック23を形成する際には、第3ブロック23を構成するロータ鉄心片Waの積層数を予め定められた一定数とする。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔と、冷却媒体が流れる冷却流路とを有し、複数の鉄心片が積層された複数の積層ブロックを積層して形成されるロータコアの製造方法であって、
前記冷却流路は、前記複数の鉄心片の積層方向に延びる第1流路と、前記第1流路及び前記中心孔のそれぞれに開口する第2流路と、を含み、
前記複数の積層ブロックは、前記冷却流路のうち前記第1流路のみを構成する第1流路ブロックと、前記冷却流路のうち前記第2流路を構成する第2流路ブロックと、を含み、
前記複数の鉄心片を積層することで前記積層ブロックを形成する積層ブロック形成工程と、
前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとを含み、前記ロータコアの積層方向における一端面を構成するブロック体であって、前記第1流路ブロックに対して前記一端面とは反対側から前記第2流路ブロックが隣接して積層されるブロック体を形成するブロック体形成工程と、を備え、
前記積層ブロック形成工程において、前記ブロック体における前記第2流路ブロックに隣接する前記第1流路ブロックを形成する際には、前記一端面から当該第1流路ブロックにおける前記第2流路ブロックとの接触面までの間に積層される前記鉄心片の積層厚さが目標範囲内に収まるように、当該第1流路ブロックを構成する前記鉄心片の積層数を調整し、前記第2流路ブロックを形成する際には、当該第2流路ブロックを構成する前記鉄心片の積層数を予め定められた一定数とする、
ロータコアの製造方法。
【請求項2】
前記ブロック体形成工程では、互いに隣接して積層される複数の前記第1流路ブロックに対して前記一端面とは反対側から前記第2流路ブロックが隣接して積層される前記ブロック体を形成し、
前記積層ブロック形成工程において、前記ブロック体のうち前記第2流路ブロックに隣接する前記第1流路ブロックよりも前記一端面側に位置する前記第1流路ブロックを形成する際には、当該第1流路ブロックを構成する前記鉄心片の積層数を予め定められた一定数とする、
請求項1に記載のロータコアの製造方法。
【請求項3】
前記ブロック体形成工程では、前記ロータコアの前記一端面とは反対側の他端面を構成する前記第1流路ブロックを含む前記ブロック体を形成し、
前記積層ブロック形成工程において、前記ブロック体のうち前記他端面を構成する前記第1流路ブロックを形成する際には、前記一端面から前記他端面までの間に積層される前記鉄心片の積層厚さが目標範囲内に収まるように、当該第1流路ブロックを構成する前記鉄心片の積層数を調整する、
請求項1または請求項2に記載のロータコアの製造方法。
【請求項4】
前記ブロック体形成工程では、互いに隣接した積層されるとともに前記他端面を構成する複数の前記第1流路ブロックを含む前記ブロック体を形成し、
前記積層ブロック形成工程において、前記ブロック体のうち前記他端面を構成する前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとの間に位置する前記第1流路ブロックを形成する際には、当該第1流路ブロックを構成する前記鉄心片の積層数を予め定められた一定数とする、
請求項3に記載のロータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機に用いられるロータコアとして、複数の鉄心片が積層された複数の積層ブロックを積層して形成されたものが知られている。
特許文献1に記載のロータコアは、シャフトが挿入される中心孔と、冷却媒体が流れる冷却流路とを有している。冷却流路は、中心孔の外周側においてロータコアの積層方向における両端面に開口する第1流路と、第1流路及び中心孔のそれぞれに開口する第2流路とを有している。冷却媒体は、シャフトの内部から第2流路を通じて冷却流路に流入した後、第1流路を通じてロータコアの外部に排出される。
【0003】
ロータコアを構成する複数の積層ブロックは、冷却流路のうち第1流路のみを構成する積層ブロックと、冷却流路のうち第1流路及び第2流路を構成する積層ブロックとを含む。第2流路は、複数の鉄心片に形成された互いに形状の異なる貫通孔が連通することによって構成されている。
【0004】
特許文献1には、中心孔に開口する第2流路の開口部の位置精度の低下を抑制すべく、ロータコアを構成する鉄心片の積層数を調整する方法が開示されている。同方法では、まず、ロータコアの下面から開口部までの高さを測定する。その後、ロータコアの下面から開口部までの高さを、鉄心片を打ち抜くプレス装置にフィードバックして、当該高さが所定の高さとなるように鉄心片の積層数を調整する。このとき、ロータコアの下面から開口部までの間に積層される鉄心片の積層数が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の方法では、ロータコアの下面から開口部までの間に積層される鉄心片の積層数が調整されるため、第1流路及び第2流路を構成する積層ブロックにおける鉄心片の積層数が調整されることがある。第2流路は、複数の鉄心片に形成された互いに形状の異なる貫通孔が連通することによって構成されているため、鉄心片の積層数が変化することにより、第2流路の流路断面積が減少するおそれがある。その結果、ロータコアの冷却効率が低下するおそれがある。
【0007】
このため、ロータコアにおける冷却流路の位置精度の低下を抑制しつつ、冷却流路の流路断面積の減少を抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのロータコアの製造方法は、中心孔と、冷却媒体が流れる冷却流路とを有し、複数の鉄心片が積層された複数の積層ブロックを積層して形成されるロータコアの製造方法であって、前記冷却流路は、前記複数の鉄心片の積層方向に延びる第1流路と、前記第1流路及び前記中心孔のそれぞれに開口する第2流路と、を含み、前記複数の積層ブロックは、前記冷却流路のうち前記第1流路のみを構成する第1流路ブロックと、前記冷却流路のうち前記第2流路を構成する第2流路ブロックと、を含み、前記複数の鉄心片を積層することで前記積層ブロックを形成する積層ブロック形成工程と、前記第1流路ブロックと前記第2流路ブロックとを含み、前記ロータコアの積層方向における一端面を構成するブロック体であって、前記第1流路ブロックに対して前記一端面とは反対側から前記第2流路ブロックが隣接して積層されるブロック体を形成するブロック体形成工程と、を備え、前記積層ブロック形成工程において、前記ブロック体における前記第2流路ブロックに隣接する前記第1流路ブロックを形成する際には、前記一端面から当該第1流路ブロックにおける前記第2流路ブロックとの接触面までの間に積層される前記鉄心片の積層厚さが目標範囲内に収まるように、当該第1流路ブロックを構成する前記鉄心片の積層数を調整し、前記第2流路ブロックを形成する際には、当該第2流路ブロックを構成する前記鉄心片の積層数を予め定められた一定数とする。
【0009】
同方法によれば、ブロック体のうち第2流路ブロックに隣接する第1流路ブロックの鉄心片の積層数が調整される。つまり、ブロック体のうち第2流路ブロックの最も近くに位置する第1流路ブロックの鉄心片の積層数が調整される。これにより、積層鉄心の一端面からの第2流路ブロックの位置精度が低下しにくくなる。
【0010】
また、上記方法によれば、ブロック体のうち第2流路ブロックの鉄心片の積層数が一定数となる。これにより、第2流路ブロックの鉄心片の積層数の変化に伴って第2流路の流路断面積が減少することを回避できる。
【0011】
以上のことから、冷却流路の位置精度の低下を抑制しつつ、冷却流路の流路断面積の減少を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態における積層鉄心を備える回転電機を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1のロータコア及びステータコアを構成する積層ブロックを示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の第1流路を構成する積層ブロックを示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図2の第1流路及び内側流路を構成する積層ブロックを示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図2の第1流路及び外側流路を構成する積層ブロックを示す平面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態における積層鉄心の製造装置の構成を示す概略図である。
【
図8】
図8は、
図7のロータプレス装置の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図7の板厚測定装置によって板厚が測定されるワークを示す平面図である。
【
図10】
図10は、搬送機構によって搬送される積層ブロックを示す平面図である。
【
図11】
図11(a)は、振分部材によって振り分けられる積層ブロックを示す平面図であり、
図11(b)は、振分部材を通過するダミーブロックを示す平面図である。
【
図12】
図12は、振分部材によって振り分けられる積層ブロック及びダミーブロックを示す側面図である。
【
図13】
図13は、
図7の板厚測定装置が予定部の下流端に対向している状態を示す平面図である。
【
図14】
図14は、
図7の板厚測定装置が予定部の上流端に対向している状態を示す平面図である。
【
図15】
図15は、積層数が調整される積層ブロックを示す断面図である。
【
図16】
図16は、異常判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図16を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、回転電機Mは、ロータ10と、ステータ50とを備えている。ロータ10及びステータ50は、それぞれ円筒状をなしている。ステータ50は、図示しないハウジングに固定されている。ロータ10は、ステータ50の内側において回転可能に構成されている。
【0014】
(ロータ10)
図2に示すように、ロータ10は、ロータコア11と、複数の磁石30と、複数の樹脂材31とを備えている。ロータ10は、例えば、磁石埋込型のロータである。
【0015】
ロータコア11は、略円筒状をなしている。ロータコア11は、電磁鋼板から打ち抜かれた円環状をなす複数のロータ鉄心片Waが積層されることにより構成されている。ロータコア11は、積層鉄心の一例である。
【0016】
以降において、ロータコア11の積層方向を単に積層方向と称する。また、ロータコア11の径方向を単に径方向と称する。また、ロータコア11の周方向を単に周方向と称する。
【0017】
ロータコア11は、シャフトSが挿入される中心孔12と、磁石30が収容される複数の磁石収容孔14と、油などの冷却媒体が流れる複数の冷却流路15とを有している。中心孔12、磁石収容孔14、及び冷却流路15は、積層方向においてロータコア11を貫通している。すなわち、中心孔12、磁石収容孔14、及び冷却流路15は、ロータコア11の積層方向における一端面である下面11aと、他端面である上面11bとに開口している。
【0018】
図1に示すように、中心孔12は、略円形状をなしている。中心孔12の内面には、径方向において互いに対向して突出する2つのキー13が設けられている。2つのキー13がシャフトSに設けられた図示しないキー溝に嵌合することで、周方向におけるロータコア11とシャフトSとの相対移動が規制されている。
【0019】
複数の磁石収容孔14は、中心孔12よりも径方向の外側に位置するとともに、周方向に間隔をおいて設けられている。ロータコア11は、例えば、20個の磁石収容孔14を有している。磁石収容孔14の開口は、平面視において、例えば略長方形状である。周方向において隣り合う2つの磁石収容孔14は、周方向に対して互いに逆向きに傾斜している。
【0020】
複数の冷却流路15は、磁石収容孔14よりも径方向の内側に位置するとともに、周方向において等間隔に設けられている。ロータコア11は、例えば、10個の冷却流路15を有している。
【0021】
図2に示すように、冷却流路15は、積層方向に延びる第1流路16と、径方向に延びる第2流路17とを有している。
第1流路16は、ロータコア11の下面11a及び上面11bに開口している。
【0022】
第2流路17は、第1流路16と中心孔12の内周面のそれぞれに開口している。すなわち、第2流路17は、第1流路16と中心孔12とを連通している。
第2流路17は、内側流路17aと、2つの外側流路17bとを有している。
【0023】
内側流路17aは、ロータコア11の積層方向における中央部に位置するとともに径方向に延びている。内側流路17aは、中心孔12の内周面に開口するとともにシャフトSの外周面に形成された図示しない連通孔に連通している。
【0024】
外側流路17bは、内側流路17aの径方向における外側の端部から分岐するとともに径方向に延びている。外側流路17bは、第1流路16に開口している。したがって、外側流路17bは、第1流路16のうち積層方向において互いに離間した2箇所において開口している。
【0025】
ロータコア11は、複数のロータ鉄心片Waが積層された積層体によって構成されている。積層体は、複数のロータ鉄心片Waが積層された積層ブロック20を少なくとも1つ有している。本実施形態のロータコア11は、6つの積層ブロック20が積層されることにより構成されている。なお、ロータコア11の下面11a及び上面11bには、磁石収容孔14からの磁石30の飛び出しを抑制する金属製のエンドプレートが溶接されていてもよい。
【0026】
図3に示すように、ロータ鉄心片Waは、板厚方向の一方側に膨出して形成された複数のダボ18を有している。複数のダボ18は、ロータ鉄心片Waの周方向に互いに間隔をおいて設けられている。ダボ18は、ロータコア11の上面11bから下面11aに向かって突出している。
【0027】
積層ブロック20において隣接するロータ鉄心片Waは、ダボ18同士がかしめられることにより互いに結合されている。積層ブロック20において積層方向の一端部を構成するロータ鉄心片Waは、積層方向に貫通する複数のかしめ孔19を有している。ダボ18を有するロータ鉄心片Waと、かしめ孔19を有するロータ鉄心片Waとは、ダボ18がかしめ孔19に嵌入することにより互いに結合されている。このようにして、積層ブロック20を構成する複数のロータ鉄心片Waは、互いに結合されることで一体化されている。
【0028】
積層ブロック20においてかしめ孔19を有するロータ鉄心片Waは、当該ロータ鉄心片Waを有する積層ブロック20に隣接する他の積層ブロック20のロータ鉄心片Waとは結合されていない。
【0029】
図1に示すように、ダボ18及びかしめ孔19は、冷却流路15よりも径方向の外側であって、周方向において隣り合う2つの磁石収容孔14の間に設けられている。
図2に示すように、ロータコア11を構成する6つの積層ブロック20は、単一の電磁鋼板から打ち抜かれたロータ鉄心片Waが積層されることにより構成されており、異なる電磁鋼板から打ち抜かれたロータ鉄心片Waは混在していない。これにより、複数の積層ブロック20が積層された際の厚さ、すなわちロータコア11の積層厚さのばらつきが抑えられている。
【0030】
以降において、ロータコア11の下面11aから数えて1番目から6番目までの積層ブロック20をそれぞれを第1ブロック21、第2ブロック22、第3ブロック23、第4ブロック24、第5ブロック25、及び第6ブロック26と称する。
【0031】
第1ブロック21は、ロータコア11の下面11aを構成している。第6ブロック26は、ロータコア11の上面11bを構成している。
第1ブロック21、第2ブロック22、第5ブロック25、及び第6ブロック26の積層厚さは略同一である。第3ブロック23及び第4ブロック24の積層厚さは略同一であり、且つその他の積層ブロック20の積層厚さよりも小さい。
【0032】
第1流路16及び第2流路17は、各ブロック21~26を構成するロータ鉄心片Waに形成された互いに形状の異なる貫通孔15a~15c(
図4~
図6参照)が連通することによって構成されている。
【0033】
図4に示すように、第1ブロック21、第2ブロック22、第5ブロック25、及び第6ブロック26は、貫通孔15aを有するロータ鉄心片Waが積層されることにより構成されている。貫通孔15aは、第1流路16を構成する。第1ブロック21、第2ブロック22、第5ブロック25、及び第6ブロック26は、冷却流路15のうち第1流路16のみを構成している。
【0034】
図2、
図5、及び
図6に示すように、第3ブロック23及び第4ブロック24は、貫通孔15bを有するロータ鉄心片Waと、貫通孔15a及び貫通孔15cを有するロータ鉄心片Waとが積層されることにより構成されている。貫通孔15bは、第1流路16と第2流路17の外側流路17bとを構成する。貫通孔15cは、第2流路17の内側流路17aを構成する。したがって、第3ブロック23及び第4ブロック24は、冷却流路15のうち第1流路16と第2流路17とを構成している。以上のことから、第2流路17は、第3ブロック23及び第4ブロック24のみによって構成されている。
【0035】
以降において、冷却流路15のうち第1流路16のみを構成する積層ブロック20を第1流路ブロック20Aと称することがある。また、冷却流路15のうち第1流路16と第2流路17とを構成する積層ブロック20を第2流路ブロック20Bと称することがある。本実施形態では、第1ブロック21、第2ブロック22、第5ブロック25、及び第6ブロック26が、第1流路ブロック20Aに相当する。また、第3ブロック23及び第4ブロック24が、第2流路ブロック20Bに相当する。
【0036】
図2に示すように、磁石30は、積層方向に延びる長尺状をなしている。磁石30の積層方向に直交する断面形状は、略長方形状をなしている。
磁石30の積層方向における長さは、磁石収容孔14の長さと同一であってもよいし、短くてもよい。磁石30は、1つの磁石収容孔14に対して1つずつ収容されていてもよいし、複数個ずつ収容されていてもよい。
【0037】
磁石30は、例えば、永久磁石である。
樹脂材31は、磁石30が収容された磁石収容孔14の内部に充填された樹脂が固化したものである。磁石30は、樹脂材31によってロータコア11に対して固定されている。複数の積層ブロック20は、樹脂材31によって互いに固定されている。樹脂材31は、例えば、磁石30の積層方向における両端面を覆っていてもよい。
【0038】
樹脂材31は、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である。
(ステータ50)
図1に示すように、ステータ50は、ステータコア51と、複数のコイル58とを備えている。
【0039】
ステータコア51は、ロータコア11と同様に、電磁鋼板から打ち抜かれた複数のステータ鉄心片Wbが積層されることにより構成されている。ステータコア51は、積層鉄心の他の例である。
【0040】
ステータコア51は、ヨーク52と、複数のティース53と、複数のスロット54とを有している。ヨーク52は円筒状をなしている。複数のティース53は、ヨーク52から径方向の内側に突出するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。スロット54は、周方向において隣り合うティース53同士の間に1つずつ形成されている。
【0041】
ステータコア51は、ヨーク52から径方向の外側に突出した3つの固定部57を有している。3つの固定部57が、図示しないボルトによって図示しないハウジングに締結されることで、ステータコア51が当該ハウジングに対して固定されている。
【0042】
コイル58は、例えば、U相、V相、及びW相を構成する3つの相巻線により構成されている。各相巻線は、複数のティース53に跨がって巻回されている。
図3に示すように、ステータコア51は、複数のステータ鉄心片Wbが積層された複数の積層ブロック60が積層されることにより形成されている。
【0043】
ステータ鉄心片Wbは、板厚方向の一方側に膨出して形成された複数のダボ55を有している。複数のダボ55は、ステータ鉄心片Wbの周方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0044】
積層ブロック60は、ロータコア11を構成する積層ブロック20と同様にして、ダボ55を有する複数のステータ鉄心片Wbと、かしめ孔56を有するステータ鉄心片Wbとが積層されることにより構成されている。
【0045】
(積層鉄心の製造装置)
次に、
図7~
図12を参照して、積層鉄心の製造装置として、ロータコア11及びステータコア51を製造する製造装置(以下、製造装置100という)について説明する。
【0046】
図7に示すように、製造装置100は、アンコイラ110、溶接装置120、板厚測定装置130、第1給油装置140、塗布ローラ150、ロータプレス装置160、ステータプレス装置170、第2給油装置180、及び制御部190を備えている。また、製造装置100は、搬送機構200、検知部210、振分部材220を備えている(
図10及び
図11参照)。
【0047】
ロータプレス装置160は、電磁鋼板からなるワークWからロータ鉄心片Waを打ち抜いて積層することにより積層ブロック20を形成する。
ステータプレス装置170は、ワークWからステータ鉄心片Wbを打ち抜いて積層することにより積層ブロック60を形成する。ステータプレス装置170は、ロータプレス装置160と同期して動作する。ステータプレス装置170は、ワークWのうちロータ鉄心片Waが打ち抜かれた部分の外周側において、当該打ち抜かれた部分と同心円状にステータ鉄心片Wbを打ち抜くように構成されている。
【0048】
制御部190は、例えば、板厚測定装置130、第1給油装置140、ロータプレス装置160、ステータプレス装置170、及び第2給油装置180の動作を制御する。
制御部190は、所定のSPM(Shots Per Minute)にてロータプレス装置160及びステータプレス装置170の動作を制御する。なお、SPMとは、ロータプレス装置160及びステータプレス装置170における1分間あたりのワークWの打ち抜き回数を指す。
【0049】
(アンコイラ110)
アンコイラ110は、ロール状に巻回されたワークWを回転可能に支持している。アンコイラ110から引き出されたワークWは、図示しない送り装置によって間欠的に搬送されてロータプレス装置160及びステータプレス装置170に供給される。
【0050】
以降において、ワークWの搬送方向を単に搬送方向と称する。
(溶接装置120)
溶接装置120は、搬送方向におけるアンコイラ110の下流側に配置されている。
【0051】
溶接装置120は、アンコイラ110から引き出されたワークWの終端部と、当該ワークWの次にアンコイラ110に支持されるワークWの始端部とを溶接により接合する。溶接装置120は、2つのワークWの少なくとも一方の端部を切断するとともに、当該2つのワークWの端面同士を溶接する。これにより、2つのワークWが一体化された状態で搬送される。
【0052】
(板厚測定装置130)
板厚測定装置130は、搬送方向における溶接装置120の下流側に配置されている。
板厚測定装置130は、例えば、レーザ変位計などの非接触式のセンサである。
【0053】
板厚測定装置130は、ワークWの板厚を常時測定する。このとき、板厚測定装置130は、所定のサンプリング周期にて複数の測定値を取得する。なお、「板厚測定装置130がワークWの板厚を常時測定する」とは、板厚測定装置130が測定値を取得可能な状態を継続させることを指す。
【0054】
図9に示すように、板厚測定装置130は、ワークWの搬送に伴って、ワークWのうちロータ鉄心片Wa及びステータ鉄心片Wbが打ち抜かれる予定の予定部Wpの板厚と、予定部Wp同士の間の部分との両方の板厚を測定する。なお、ワークWのうち予定部Wp同士の間の部分とは、ワークWにおけるスクラップとなる部分であって、所謂送り桟の部分である。
【0055】
板厚測定装置130は、間欠的に搬送されるワークWの移動が停止する度に予定部Wpの搬送方向における下流端が順次対向する位置に配置されている。板厚測定装置130は、搬送方向に延びるとともに予定部Wpの中心を通過する仮想線Vに沿って並ぶ複数の測定点mにおいて予定部Wpの板厚を測定する。
【0056】
予定部Wpは、ワークWのうちロータ鉄心片Waが打ち抜かれる予定の第1予定部Wp1と、ステータ鉄心片Wbが打ち抜かれる予定の第2予定部Wp2とを含む。第1予定部Wp1及び第2予定部Wp2は、ワークWの板厚方向から視た外形形状が略円形状をなしている。第2予定部Wp2は、ワークWのうち第1予定部Wp1の外周側において第1予定部Wp1と同心円状に位置する部分である。このため、板厚測定装置130は、第1予定部Wp1及び第2予定部Wp2の板厚を第1予定部Wp1及び第2予定部Wp2の径方向に並ぶ複数の測定点mにおいて測定する。
【0057】
(第1給油装置140)
図7に示すように、第1給油装置140は、搬送方向における板厚測定装置130の下流側に配置されている。
【0058】
第1給油装置140は、ワークWの上面に加工油を供給する上供給部141と、ワークWの下面に加工油を供給する下供給部142とを有している。
上供給部141は、ワークWの幅方向に間隔をおいて並ぶとともに加工油を吐出する複数の吐出口141aを有している。上供給部141は、制御部190を通じて制御されるオイルポンプ(図示略)の動作を通じて吐出口141aから加工油を吐出する。上供給部141は、例えば、吐出口141aから加工油を間欠的に滴下することにより、ワークWの上面に加工油を供給する。
【0059】
下供給部142は、下供給部142の上面に開口するとともに加工油を吐出する吐出口142aを有している。下供給部142は、制御部190を通じて制御されるオイルポンプ(図示略)の動作を通じて吐出口142aから加工油を吐出する。下供給部142は、吐出口142aから加工油を吐出することにより、下供給部142の上面に加工油が溜められた油溜まりを形成する。下供給部142は、搬送されるワークWの下面が通過する位置に油溜まりを形成することにより、ワークWの下面に加工油を供給する。
【0060】
第1給油装置140は、ロータプレス装置160における単位時間あたりのロータ鉄心片Waの打ち抜き回数の増減に応じて、単位時間あたりの加工油の供給量を増減するように構成されている。第1給油装置140は、例えば、ロータプレス装置160のSPMの増減に応じて、単位時間あたりの加工油の供給量を増減するように構成されている。
【0061】
第1給油装置140は、制御部190からの指令に基づいて加工油の供給量を増減する。制御部190は、所定のSPMにてロータプレス装置160の動作を制御するとき、当該SPMに応じて予め定められた供給量にて加工油を供給するように第1給油装置140の動作を制御する。
【0062】
(塗布ローラ150)
塗布ローラ150は、搬送方向における第1給油装置140の下流側に配置されている。
【0063】
塗布ローラ150は、ワークWの上面に摺動する上ローラ151と、ワークWの下面に摺動する下ローラ152とを有している。上ローラ151と下ローラ152とは、ワークWを挟んで互いに反対側に位置している。上ローラ151及び下ローラ152は、ワークWの幅方向に延びる回転軸を中心に回転可能に構成されている。上ローラ151及び下ローラ152は、ワークWの搬送時にワークWとの間に生じる摩擦力によって回転するものであってもよいし、駆動装置によって回転するものであってもよい。
【0064】
ワークWのうち第1給油装置140によって供給された加工油が付着した部分が上ローラ151と下ローラ152との間を通過することにより、ワークWの上面及び下面において加工油が引き延ばされる。これにより、ワークWに供給された加工油が、塗布ローラ150によって塗り広げられる。なお、塗布ローラ150には、加工油は供給されない。
【0065】
(ロータプレス装置160)
図8に示すように、ロータプレス装置160は、間欠的に搬送されるワークWに対して、打ち抜きなどの複数の加工を行う順送金型を備えている。
【0066】
ロータプレス装置160は、下型161と、下型161に対して進退可能に構成された上型162とを備えている。下型161には、搬送方向の上流側から順にダイD1~D6が設けられている。上型162には、ダイD1~ダイD6にそれぞれ対応する位置にパンチP1~P6が設けられている。なお、ダイD1~D5及びパンチP1~P5のそれぞれは、同一円上に複数設けられているが、便宜上、
図8では同一断面上にダイD1~D5及びパンチP1~P5を1つずつ図示している。
【0067】
上型162には、ワークWの打ち抜き時にワークWを下型161に押さえつけるストリッパプレート163が設けられている。ストリッパプレート163は、図示しない付勢部材によって下型161に向けて付勢されている。各パンチP1~P6は、ストリッパプレート163を貫通している。
【0068】
ダイD1は、パンチP1が進退するダイ孔D11を有している。パンチP1は、ダイD1と協働してワークWに第1流路16を構成する複数の貫通孔15aを形成する。貫通孔15aが形成された部分が打ち抜かれたロータ鉄心片Waは、第1ブロック21、第2ブロック22、第5ブロック25、及び第6ブロック26を構成する。
【0069】
ダイD2は、パンチP2が進退するダイ孔D21を有している。パンチP2は、ダイD2と協働してワークWに第1流路16及び外側流路17bを構成する複数の貫通孔15bを形成する。貫通孔15bが形成された部分が打ち抜かれたロータ鉄心片Waは、第3ブロック23及び第4ブロック24の一部を構成する。
【0070】
ダイD3は、パンチP3が進退するダイ孔D31を有している。パンチP3は、ダイD3と協働してワークWに内側流路17aを構成する複数の貫通孔15cを形成する。貫通孔15cが形成された部分が打ち抜かれたロータ鉄心片Waは、第3ブロック23及び第4ブロック24の一部を構成する。
【0071】
ダイD4は、パンチP4が進退するダイ孔D41を有している。パンチP4は、ダイD4と協働してワークWにダボ18を形成する。ダイD4とパンチP4とは、ダボ形成部A1を構成している。
【0072】
ダイD5は、パンチP5が進退するダイ孔D51を有している。パンチP5は、ダイD5と協働してワークWからダボ18を選択的に打ち抜くことにより、ワークWに対してかしめ孔19を形成する。ダイD5とパンチP5とは、かしめ孔形成部A2を構成している。
【0073】
ダイD6は、パンチP6が進退するダイ孔D61を有している。パンチP6は、ダイD6と協働してワークWからロータ鉄心片Waを打ち抜いてダイD6の内部において積層する。ダイD6とパンチP6とは、打抜部A3を構成している。
【0074】
ダイD6の内部では、ダボ18同士が結合された状態でロータ鉄心片Waが積層される。ダイD6の内部では、かしめ孔19が形成されたロータ鉄心片Waに対して、ダボ18が形成された複数のロータ鉄心片Waが積層されることにより、複数の積層ブロック20が形成される。積層ブロック20同士は、ダイD6の内部において接触しているものの結合されていない。
【0075】
下型161には、ダイ孔D61に連通する排出口164が設けられている。排出口164の直径は、ダイ孔D61の直径以上であることが好ましい。
ダイD6の内部に位置する積層ブロック20は、ロータ鉄心片Waが順次打ち抜かれることに伴って、徐々に押し下げられて自重によって落下する。これにより、積層ブロック20が排出口164から排出される。したがって、打抜部A3は、ダイD6の内部において積層ブロック20を形成するとともに排出口164を通じて積層ブロック20を下型161の外部に排出する。
【0076】
図示は省略するが、ロータプレス装置160には、ワークWに対して磁石収容孔14を構成する貫通孔及び中心孔12を構成する貫通孔を形成するダイ及びパンチが別途設けられている。
【0077】
上型162の内部には、パンチP1,P2,P3,P5の状態を、ワークWを打ち抜き可能な打ち抜き状態と、ワークWを打ち抜き不可能な非打ち抜き状態とに個別に切り替える複数の切替機構165が設けられている。
【0078】
以降において、パンチP1,P2,P3,P5のそれぞれに対応する切替機構165を切替機構165A、切替機構165B、切替機構165C、及び切替機構165Dと称して区別することがある。
【0079】
切替機構165は、例えば、スライド部材166と、スライド部材166を水平方向に往復動させるアクチュエータ167とを有している。
スライド部材166は、パンチP1,P2,P3,P5の基端部に形成された傾斜面Paに対向する対向面166aを有している。アクチュエータ167は、例えば、エアシリンダである。アクチュエータ167の動作は、制御部190によって制御される。アクチュエータ167は、スライド部材166を前進させた場合、ON信号を制御部190に出力する。アクチュエータ167は、スライド部材166を後進させた場合、OFF信号を制御部190に出力する。
【0080】
次に、パンチP1,P2,P3,P5の状態を切り替える切替機構165の切り替え態様について、パンチP1の状態を切り替える切替機構165Aの切り替え態様を例に説明する。パンチP2,P3,P5における切替機構165の切り替え態様はパンチP1における切り替え態様と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
アクチュエータ167によってスライド部材166が前進すると、スライド部材166の対向面166aがパンチP1の傾斜面Paを押圧することで、パンチP1には下方に向かう力が作用する。このため、パンチP1は、上型162に対して下方に移動する。その後、スライド部材166の下面とパンチP1の基端面とが接触することにより、パンチP1の上型162に対する移動が規制された状態となる。この状態で上型162が降下することにより、ワークWから貫通孔15aが打ち抜かれる。すなわち、スライド部材166が前進することにより、パンチP1の状態が打ち抜き状態となる。
【0082】
一方、アクチュエータ167によってスライド部材166が後進すると、スライド部材166の対向面166aとパンチP1の傾斜面Paとが隙間を有した状態で対向する。この状態で上型162が降下することにより、パンチP1がワークWに押し付けられるため、パンチP1が上記隙間に退避する。これにより、対向面166aと傾斜面Paとが接触する。このため、上型162が降下してもパンチP1による貫通孔15aの打ち抜きが行われなくなる。すなわち、スライド部材166が後進することにより、パンチP1の状態が非打ち抜き状態となる。
【0083】
切替機構165は、制御部190からの指令に基づいて、所定のタイミングでパンチP1の状態を打ち抜き状態と非打ち抜き状態とに切り替える。
(搬送機構200)
図8及び
図10に示すように、排出口164の下方には、積層ブロック20を搬送する搬送機構200が設けられている。搬送機構200は、上下方向において下型161に対向している。
【0084】
搬送機構200は、例えば、ベルトコンベヤである。搬送機構200は、例えば、積層ブロック20をワークWの搬送方向とは異なる方向に搬送する。
図11(a)に示すように、搬送機構200は、第1搬送経路201と第2搬送経路202とを有している。第1搬送経路201は、排出口164の下方から直線状に延びている。第2搬送経路202は、第1搬送経路201から分岐して第1搬送経路201に対して傾斜して延びている。
【0085】
(検知部210)
図10に示すように、搬送機構200の斜め上方には、排出口164を通じた積層ブロック20の排出を検知する検知部210が設けられている。検知部210は、例えば、搬送機構200のうち下型161の下方において下型161と対向する部分に隣接する部分を通過する積層ブロック20を検知する。
【0086】
検知部210は、例えば、光電センサである。検知部210は、積層ブロック20の上面を検知するように構成されている。このため、検知部210は、積層高さが異なる積層ブロック20を検知可能である。
【0087】
検知部210は、搬送機構200によって搬送される積層ブロック20の有無を検知することにより、排出口164を通じた積層ブロック20の排出を検知する。すなわち、検知部210は、排出口164を通じた積層ブロック20の排出を間接的に検知する。検知部210は、積層ブロック20を検知した場合に、制御部190に対して検知信号を出力する。
【0088】
(振分部材220)
図11(a)及び
図11(b)に示すように、搬送機構200の第1搬送経路201には、振分部材220が設けられている。振分部材220は、積層ブロック20と、後述するダミーブロック20dとを互いに異なる搬送経路に振り分ける。
【0089】
振分部材220は、第1搬送経路201の上方に位置している。振分部材220は、例えば、棒状をなしている。振分部材220は、第2搬送経路202の搬送方向に延びる案内面221を有している。
【0090】
図12に示すように、第1搬送経路201から振分部材220までの高さは、積層ブロック20の積層厚さよりも低く、且つダミーブロック20dの積層厚さよりも高く設定されている。
【0091】
振分部材220は、例えば、積層ブロック20に接触する一方、ダミーブロック20dとは接触しない。より詳しくは、振分部材220は、第1搬送経路201を移動する積層ブロック20を第2搬送経路202に案内する一方、第1搬送経路201を移動するダミーブロック20dの通過を許容する。第1搬送経路201を移動する積層ブロック20は、案内面221に接触することにより、案内面221に沿って第1搬送経路201から第2搬送経路202に移動する。
【0092】
(ステータプレス装置170)
図7に示すように、ステータプレス装置170は、間欠的に搬送されるワークWに対して、打ち抜きなどの複数の加工を行う順送金型を備えている。
【0093】
ステータプレス装置170は、ロータプレス装置160と同様の構成を有している。すなわち、ステータプレス装置170は、下型171と、上型172と、ストリッパプレート173とを備えている。また、図示は省略するが、ステータプレス装置170は、複数のダイ、複数のパンチ、及び複数の切替機構を備えている。
【0094】
ステータプレス装置170は、切替機構によってパンチの状態を切り替えることにより、ダボ55を有するステータ鉄心片Wbを所定数打ち抜く度に、かしめ孔56を有するステータ鉄心片Wbを打ち抜く。これにより、ステータプレス装置170は、複数の積層ブロック60を順次形成する。
【0095】
ステータプレス装置170により形成された積層ブロック60は、ロータプレス装置160と同様に、搬送機構(図示略)によって搬送される。
(第2給油装置180)
第2給油装置180は、ステータプレス装置170に取り付けられている。
【0096】
第2給油装置180は、ストリッパプレート173の下面に開口する吐出口180aを有している。第2給油装置180は、吐出口180aから加工油を吐出することにより、加工油をワークWの上面に供給する。より詳しくは、第2給油装置180が吐出した加工油は、ストリッパプレート173の下面において濡れ広がる。このため、ステータプレス装置170における上型172と下型171との型締めに伴って、加工油がワークWの上面に付着する。
【0097】
第2給油装置180は、ステータプレス装置170における単位時間あたりのステータ鉄心片Wbの打ち抜き回数の増減に応じて、単位時間あたりの加工油の供給量を増減するように構成されている。第2給油装置180は、例えば、ステータプレス装置170のSPMの増減に応じて、単位時間あたりの加工油の供給量を増減するように構成されている。
【0098】
第2給油装置180は、制御部190からの指令に基づいて加工油の供給量を増減する。制御部190は、所定のSPMにてステータプレス装置170の動作を制御するとき、当該SPMに応じて予め定められた供給量にて加工油を供給するように第2給油装置180の動作を制御する。
【0099】
(制御部190)
制御部190は、板厚測定装置130により測定された予定部Wpの各々の板厚を記憶する。制御部190は、予定部Wpの各々の板厚を順次積算することにより、積層ブロック20の積層厚さを算出する。制御部190は、複数の積層ブロック20の積層厚さを積算することにより、ロータコア11の積層厚さを算出する。
【0100】
制御部190は、積層ブロック20の積層厚さを目標厚さの範囲内に収めるべく、かしめ孔19を有するロータ鉄心片Waを選択的に打ち抜くことで複数の積層ブロック20を形成するようにロータプレス装置160の動作を制御する。同様に、制御部190は、積層ブロック60の積層厚さを目標厚さの範囲内に収めるべく、かしめ孔56を有するステータ鉄心片Wbを選択的に打ち抜くことで複数の積層ブロック60を形成するようにステータプレス装置170の動作を制御する。
【0101】
制御部190は、ロータコア11の積層厚さがロータコア11の目標厚さの範囲内に収まるように、積層ブロック20におけるロータ鉄心片Waの積層数を調整する。同様に、制御部190は、ステータコア51の積層厚さがステータコア51の目標厚さの範囲内に収まるように、積層ブロック60におけるステータ鉄心片Wbの積層数を調整する。
【0102】
制御部190は、検知部210の検知結果に基づいて、かしめ孔形成部A2の異常を判定する。制御部190は、検知部210が予め定められた検知時間内に積層ブロック20の排出を検知しない場合に、かしめ孔形成部A2の異常を判定する。かしめ孔形成部A2の異常とは、例えば、パンチP5が破損した状態を指す。かしめ孔形成部A2が異常であると、切替機構165Dのスライド部材166が前進しているにも関わらず、ワークWからダボ18が打ち抜かれずにかしめ孔19が形成されなくなる。
【0103】
かしめ孔形成部A2の異常によってダボ18が打ち抜かれない場合、ダイD6の内部において積層ブロック20同士が結合された状態となる。この場合、積層ブロック20が排出口164から排出されなくなるため、搬送機構200によって積層ブロック20が搬送されなくなる。その結果、検知部210は、検知時間内に積層ブロック20を検知しなくなる。
【0104】
制御部190は、かしめ孔形成部A2の異常を判定した場合に、ロータプレス装置160及びステータプレス装置170の動作を停止させる。
(積層鉄心の製造方法)
次に、積層鉄心の製造方法として、ロータコア11の製造方法及びステータコア51の製造方法について説明する。ステータコア51の製造方法には、ロータコア11の製造方法を準用することができる。このため、以降では、ロータコア11の製造方法を中心に説明し、ステータコア51の製造方法については、詳細な説明を省略する。
【0105】
ロータコア11の製造方法は、ロータプレス装置160によってワークWを加工する前処理工程として、板厚測定工程、平均板厚算出工程、積層厚さ算出工程、加工油供給工程、及び塗布工程を備える。ロータコア11の製造方法は、ロータプレス装置160によってワークWを加工する工程として、加工工程、ダボ形成工程、かしめ孔形成工程、積層工程、加工判定工程、及びダミーブロック形成工程を備える。ロータコア11の製造方法は、積層ブロック20を処理する工程として、排出工程、搬送工程、検知工程、異常判定工程、及び振り分け工程を備える。ロータコア11の製造方法は、積層ブロック20を積層することによりブロック体Bを形成するブロック体形成工程を備える。
【0106】
(板厚測定工程)
図13に示すように、板厚測定工程では、板厚測定装置130が、一点鎖線にて示す仮想線Vに沿って並ぶ複数の測定点mにおいて予定部Wpの板厚を測定する。
【0107】
板厚測定装置130は、図示しない送り装置によって間欠的に搬送されるワークWの板厚を常時測定することにより、予定部Wpの板厚を搬送方向に並ぶ複数の測定点mにおいて測定する。板厚測定装置130は、ワークWのうち第1予定部Wp1及び第2予定部Wp2を含む部分の板厚を複数の測定点mにおいて測定する。板厚測定装置130は、第1予定部Wp1の板厚を複数の測定点mにおいて測定するとともに、第2予定部Wp2の板厚を複数の測定点mにおいて測定する。
【0108】
板厚測定装置130は、間欠的に搬送されるワークWの移動が停止する度に、第2予定部Wp2の搬送方向における下流端(以下、単に第2予定部Wp2の下流端という)に順次対向する。
【0109】
図14に示すように、板厚測定装置130は、ワークWの移動中に、第2予定部Wp2の搬送方向における上流端(以下、単に第2予定部Wp2の上流端という)に対向する。換言すると、ワークWの移動中に、第2予定部Wp2の上流端が板厚測定装置130の測定領域を通過する。このため、板厚測定装置130がワークWの移動中に測定する測定値は、ワークWのうち第2予定部Wp2の下流端から上流端までの間の部分の板厚を含む。板厚測定装置130は、ワークWが移動する度に、ワークWのうち第2予定部Wp2の下流端から次の第2予定部Wp2の下流端までの間の部分の板厚を測定する。
【0110】
(平均板厚算出工程)
平均板厚算出工程では、制御部190が、予定部Wpにおいて板厚測定装置130により測定された測定値の平均値をロータ鉄心片Wa及びステータ鉄心片Wbのそれぞれの平均板厚として算出する。
【0111】
制御部190は、ワークWが移動する度に、取得時間が経過するまでの間に板厚測定装置130が取得した測定値の平均値を平均板厚として算出する。取得時間は、ワークWの移動が開始してから予定部Wpの搬送方向における上流端が板厚測定装置130の測定領域を通過するまでに要する時間である。したがって、取得時間は、ワークWが移動している間の時間よりも短い。取得時間には、予定部Wpの搬送方向における長さである第2予定部Wp2の直径をワークWの移動速度で除した値が設定される。板厚測定装置130は、ワークWの移動の停止時及びワークWの移動の開始時に予定部Wpの下流端に対向している。このため、板厚測定装置130が取得時間の間に取得する測定値は、予定部Wpの下流端から上流端までの間の部分の板厚となる。
【0112】
制御部190は、各予定部Wpにおける測定値の平均値を、当該予定部Wpを打ち抜いて形成されるロータ鉄心片Wa及びステータ鉄心片Wbの両方の平均板厚として算出する。したがって、1つの予定部Wpから打ち抜かれたロータ鉄心片Wa及びステータ鉄心片Wbの平均板厚は同一の値となる。
【0113】
(積層厚さ算出工程)
積層厚さ算出工程では、制御部190が、積層ブロック20を構成する複数のロータ鉄心片Waの平均板厚を積算することにより、積層ブロック20の積層厚さを算出する。
【0114】
制御部190は、平均板厚が算出される度に平均板厚を積算する。このため、制御部190は、積層ブロック20を構成する全てのロータ鉄心片Waが打ち抜かれる前に当該積層ブロック20の積層厚さを算出する。
【0115】
制御部190は、ロータコア11を構成する複数の積層ブロック20のそれぞれの積層厚さを積算することにより、当該積層厚さの総和であるロータコア11の積層厚さを算出する。同様にして、制御部190は、ステータコア51の積層厚さを算出する。なお、制御部190は、後述するブロック体Bの積層厚さを算出することもできる。
【0116】
(加工油供給工程)
図7に示すように、加工油供給工程では、第1給油装置140及び第2給油装置180が、間欠的に搬送されるワークWに対して加工油を供給する。
【0117】
第1給油装置140は、上供給部141から加工油を間欠的に滴下することにより、ワークWの上面における複数箇所に加工油を供給する。また、第1給油装置140は、下供給部142によって油溜まりを形成することにより、油溜まりを通過するワークWの下面に加工油を供給する。
【0118】
第2給油装置180は、吐出口180aから加工油を吐出することにより、ステータプレス装置170の型締めに伴って、加工油をワークWの上面に供給する。
第1給油装置140は、ロータプレス装置160のSPMの増減に応じて、単位時間あたりの加工油の供給量を増減する。すなわち、ロータプレス装置160のSPMが増加した場合には、第1給油装置140の加工油の供給量が増加し、ロータプレス装置160のSPMが減少した場合には、第1給油装置140の加工油の供給量が減少する。このことは、ステータプレス装置170に対する第2給油装置180の動作においても同様である。
【0119】
第1給油装置140は、後述する積層工程の途中、すなわちロータプレス装置160の動作途中でロータプレス装置160のSPMが増減した場合であっても、当該増減に応じて単位時間あたりの加工油の供給量を増減する。このことは、ステータプレス装置170に対する第2給油装置180の動作においても同様である。
【0120】
第2予定部Wp2への加工及び打ち抜きは、ステータプレス装置170によって、ロータ鉄心片Waが打ち抜かれた状態のワークWに対して行われる。このため、第2予定部Wp2への加工及び打ち抜きを行う場合は、第1予定部Wp1への加工及び打ち抜きを行う場合と比較して、ワークWへの加工油の供給量が少なくて済む。第2給油装置180における単位時間あたりの加工油の供給量は、第1給油装置140における単位時間あたりの加工油の供給量よりも常に少なくなるように設定されている。
【0121】
(塗布工程)
塗布工程では、塗布ローラ150が、第1給油装置140によってワークWに供給された加工油をワークWに塗り広げる。
【0122】
塗布工程では、移動するワークWの上面及び下面に対して、上ローラ151及び下ローラ152がそれぞれ摺動する。これにより、上ローラ151がワークWの上面に加工油を塗り広げるとともに、下ローラ152がワークWの下面に加工油を塗り広げる。
【0123】
(加工工程)
加工工程では、ロータプレス装置160が、予定部Wpに対して複数種類の加工を順次行う。
【0124】
加工工程では、第1予定部Wp1に対して冷却流路15を構成する貫通孔15a~15cが選択的に形成される。加工工程では、第1予定部Wp1に対して貫通孔15a~15cの形成とは異なる加工が行われてもよい。加工工程では、例えば、第1予定部Wp1に対して、中心孔12及び磁石収容孔14を構成する貫通孔が形成されてもよい。
【0125】
図8に示すように、加工工程では、上型162が降下することにより、ストリッパプレート163によってワークWが下型161に対して押し付けられる。その後、上型162が更に降下することにより、パンチP1がダイD1のダイ孔D11の内部に進入する。これにより、パンチP1とダイD1とによって、第1予定部Wp1に対して貫通孔15aが形成される。貫通孔15b及び貫通孔15cは、貫通孔15aと同様にして第1予定部Wp1に形成される。
【0126】
第1予定部Wp1に貫通孔15aを形成する場合、制御部190は、各切替機構165A~165Cの動作を制御することにより、パンチP1の状態を打ち抜き状態とし、パンチP2及びパンチP3の状態を非打ち抜き状態とする。すなわち、貫通孔15aが形成される第1予定部Wp1には、パンチP1による加工が行われる一方、パンチP2及びパンチP3による加工が行われない。
【0127】
第1予定部Wp1に貫通孔15bを形成する場合、制御部190は、各切替機構165A~165Cの動作を制御することにより、パンチP2の状態を打ち抜き状態とし、パンチP1及びパンチP3の状態を非打ち抜き状態とする。すなわち、貫通孔15bが形成される第1予定部Wp1には、パンチP2による加工が行われる一方、パンチP1及びパンチP3による加工が行われない。
【0128】
第1予定部Wp1に貫通孔15cを形成する場合、制御部190は、各切替機構165A~165Cの動作を制御することにより、パンチP3を打ち抜き状態とし、パンチP1及びパンチP2を非打ち抜き状態とする。すなわち、貫通孔15cが形成される第1予定部Wp1には、パンチP3による加工が行われる一方、パンチP1及びパンチP2による加工が行われない。
【0129】
なお、加工工程では、ステータプレス装置170が、ロータプレス装置160と同様にして、第2予定部Wp2に対して複数種類の加工を順次行ってもよい。
(ダボ形成工程)
ダボ形成工程では、ロータプレス装置160のダボ形成部A1が、予定部Wpに対してダボ18を形成する。
【0130】
ダボ形成部A1は、全ての第1予定部Wp1に対してダボ18を形成する。
ダボ形成工程では、上型162が降下することにより、ストリッパプレート163によってワークWが下型161に対して押し付けられる。その後、上型162が更に降下することにより、パンチP4がダイD4のダイ孔D41の内部に第1予定部Wp1を押し込む。これにより、第1予定部Wp1が半抜き加工されることで第1予定部Wp1にダボ18が形成される。
【0131】
ステータプレス装置170は、ロータプレス装置160と同様にして、全ての第2予定部Wp2にダボ55を形成する。
(かしめ孔形成工程)
かしめ孔形成工程では、ロータプレス装置160のかしめ孔形成部A2が、予定部Wpからダボ18を選択的に打ち抜くことによりかしめ孔19を形成する。
【0132】
かしめ孔形成部A2は、特定の第1予定部Wp1に形成されたダボ18を打ち抜くことにより、第1予定部Wp1にかしめ孔19を形成する。
かしめ孔形成工程では、上型162が降下することにより、ストリッパプレート163によってワークWが下型161に対して押し付けられる。その後、上型162が更に降下することにより、パンチP5がダイD5のダイ孔D51の内部に進入する。これにより、第1予定部Wp1に形成されたダボ18が打ち抜かれることで第1予定部Wp1にかしめ孔19が形成される。
【0133】
ステータプレス装置170は、ロータプレス装置160と同様にして、特定の第2予定部Wp2に形成されたダボ55を打ち抜くことにより、第2予定部Wp2にかしめ孔56を形成する。
【0134】
(積層工程)
積層工程は、ロータ打ち抜き工程と、ステータ打ち抜き工程と、積層ブロック形成工程とを含む。ロータ打ち抜き工程は、ワークWからロータ鉄心片Waを打ち抜く工程である。ステータ打ち抜き工程は、ワークWのうちロータ鉄心片Waが打ち抜かれた部分の外周側において、ロータ鉄心片Waが打ち抜かれた部分と同心円状にステータ鉄心片Wbを打ち抜く工程である。積層ブロック形成工程は、複数のロータ鉄心片Waを積層することにより積層ブロック20を形成する工程と、複数のステータ鉄心片Wbを積層することにより積層ブロック60を形成する工程とを含む。
【0135】
積層工程では、ロータプレス装置160の打抜部A3が、ワークWから複数のロータ鉄心片Waを打ち抜いて積層することにより積層ブロック20を形成する。
ロータ打ち抜き工程では、上型162が降下することにより、ストリッパプレート163によってワークWが下型161に対して押し付けられる。その後、上型162が更に降下することにより、パンチP6がダイD6のダイ孔D61の内部に進入する。これにより、パンチP6とダイD6とによって、ワークWからロータ鉄心片Waが打ち抜かれる。
【0136】
積層ブロック形成工程では、ロータプレス装置160が、ワークWから打ち抜かれた複数のロータ鉄心片Waを、ダボ18同士が結合された状態でダイ孔D61の内部に積層する。
【0137】
ロータプレス装置160は、ダボ18が形成された所定枚数のロータ鉄心片Waを打ち抜く度に、かしめ孔19が形成されたロータ鉄心片Waを打ち抜く。これにより、ロータプレス装置160は、ダイ孔D61の内部において所定の積層高さに積層された複数の積層ブロック20を形成する。ロータプレス装置160は、例えば、第1ブロック21~第6ブロック26をこの順で形成する。
【0138】
ステータプレス装置170は、ロータプレス装置160と同様にして、ワークWから複数のステータ鉄心片Wbを打ち抜いて積層することにより積層ブロック60を形成する。
図15に示すように、積層ブロック形成工程では、ロータプレス装置160が、積層厚さ算出工程において得られたロータ鉄心片Waの積層厚さと、当該積層厚さの目標値との差分に基づいて、積層ブロック20の積層数を調整する。
【0139】
ロータプレス装置160は、第2ブロック22よりもロータコア11の下面11a側に位置する第1ブロック21を形成する際には、第1ブロック21を構成するロータ鉄心片Waの積層数を予め定められた一定数とする。第1ブロック21は、「第2流路ブロックに隣接する第1流路ブロックよりも一端面側に位置する第1流路ブロック」の一例である。
【0140】
ロータプレス装置160は、ロータコア11において第3ブロック23に隣接する第2ブロック22を形成する際には、第2ブロック22を構成するロータ鉄心片Waの積層数を調整する。ロータプレス装置160は、第1ブロック21の下面から第2ブロック22における第3ブロック23との接触面までの間に積層されるロータ鉄心片Waの積層厚さが当該積層厚さの目標範囲内に収まるように、第2ブロック22の積層数を調整する。この場合のロータ鉄心片Waの積層厚さは、第1ブロック21の積層厚さと第2ブロック22の積層厚さとの総和である。第2ブロック22は、「第2流路ブロックに隣接する第1流路ブロック」の一例である。
【0141】
ロータプレス装置160は、第3ブロック23及び第4ブロック24を形成する際には、第3ブロック23及び第4ブロック24を構成するロータ鉄心片Waの積層数を一定数とする。第3ブロック23及び第4ブロック24は、「第2流路ブロック」の一例である。
【0142】
ロータプレス装置160は、第6ブロック26と第4ブロック24との間に位置する第5ブロック25を形成する際には、第5ブロック25を構成するロータ鉄心片Waの積層数を一定数とする。第5ブロック25は、「他端面を構成する第1流路ブロックと第2流路ブロックとの間に位置する第1流路ブロック」の一例である。
【0143】
ロータプレス装置160は、ロータコア11の上面11bを構成する第6ブロック26を形成する際には、第6ブロック26を構成するロータ鉄心片Waの積層数を調整する。ロータプレス装置160は、第1ブロック21の下面から第6ブロック26の上面までの間に積層されるロータ鉄心片Waの積層厚さが当該積層厚さの目標範囲内に収まるように、第6ブロック26を構成するロータ鉄心片Waの積層数を調整する。第6ブロック26は、「他端面を構成する第1流路ブロック」の一例である。
【0144】
以上のことから、ロータプレス装置160は、第2ブロック22及び第6ブロック26の積層数を調整する一方、第1ブロック21、第3ブロック23、第4ブロック24、及び第5ブロック25の積層数を一定数とする。
【0145】
積層工程では、ステータプレス装置170が、ロータプレス装置160と同様にして、ステータコア51を構成する複数の積層ブロック60を形成する。ステータコア51の積層ブロック60における積層数の調整は、いずれの積層ブロック60において行われてもよい。
【0146】
(加工判定工程)
加工判定工程では、制御部190が、予定部Wpに対して正規の加工が行われた否かを判定する。加工判定工程は、予定部Wpのうち加工が行われるべき部分に対して加工が行われた否かを判定することと、予定部Wpのうち加工が行われるべきでない部分に対して加工が行われたか否かを判定することとを含む。
【0147】
図8に示すように、制御部190は、切替機構165の動作タイミングに基づいて、第1予定部Wp1に対して正規の加工が行われたか否かを判定する。制御部190は、切替機構165のアクチュエータ167が出力するON信号及びOFF信号が所定のタイミングで出力されたか否かに基づいて、切替機構165が所定のタイミングで動作しているか否かを判定する。
【0148】
次に、加工判定工程の一例として、制御部190が、第1予定部Wp1のうち貫通孔15aが形成されるべき部分に対して貫通孔15aが形成された否かを判定する場合について説明する。
【0149】
制御部190は、第1予定部Wp1に貫通孔15aが形成されるべきタイミングで切替機構165Aのアクチュエータ167からON信号が出力された場合、第1予定部Wp1に貫通孔15aが正しく形成されたと判定する。一方、制御部190は、第1予定部Wp1に貫通孔15aが形成されるべきタイミングで切替機構165Aのアクチュエータ167からOFF信号が出力された場合、第1予定部Wp1に貫通孔15aが正しく形成されていないと判定する。
【0150】
次に、制御部190が、第1予定部Wp1のうち貫通孔15aが形成されるべきでない部分に対して貫通孔15aが形成された否かを判定する場合について説明する。
制御部190は、第1予定部Wp1に貫通孔15aが形成されるべきでないタイミングで切替機構165Aのアクチュエータ167からON信号が出力された場合、第1予定部Wp1に貫通孔15aが誤って形成されたと判定する。一方、制御部190は、第1予定部Wp1に貫通孔15aが形成されるべきでないタイミングで切替機構165Aのアクチュエータ167からOFF信号が出力された場合、第1予定部Wp1に貫通孔15aが形成されていないと判定する。
【0151】
加工判定工程では、ステータプレス装置170が、ロータプレス装置160と同様にして、第2予定部Wp2に対して正規の加工が行われたか否かを判定する。
(ダミーブロック形成工程)
ダミーブロック形成工程では、加工判定工程において予定部Wpに対して正規の加工が行われていないことが判定された場合に、ロータプレス装置160がダミーブロック20d(
図12参照)を形成する。
【0152】
ロータプレス装置160は、加工判定工程において第1予定部Wp1のうち加工が行われるべき部分に対して加工が行われていないことが判定された場合にダミーブロック20dを形成する。また、ロータプレス装置160は、加工判定工程において第1予定部Wp1のうち加工が行われるべきでない部分に対して加工が行われたことが判定された場合にダミーブロック20dを形成する。
【0153】
ダミーブロック20dは、正規の加工が行われていない第1予定部Wp1を打ち抜いて形成されたロータ鉄心片Waを含む複数のロータ鉄心片Waを、積層ブロック20における所定の積層高さとは異なる積層高さに積層することにより形成される。
【0154】
ロータプレス装置160は、第1予定部Wp1にかしめ孔19を形成するタイミングを正規の積層ブロック20を形成する際のタイミングとは異ならせることにより、ダミーブロック20dの積層高さを調整する。ロータプレス装置160は、例えば、ダミーブロック20dの積層高さが積層ブロック20における所定の積層高さよりも小さくなるようにダミーブロック20dを形成する。ダミーブロック20dの積層高さは、例えば、第3ブロック23及び第4ブロック24の積層高さよりも小さい。
【0155】
ダミーブロック形成工程では、加工判定工程において第2予定部Wp2に対して正規の加工が行われていないことが判定された場合に、ステータプレス装置170が、ロータプレス装置160と同様にして、ダミーブロックを形成する。この場合のダミーブロックは、正規の加工が行われていない第2予定部Wp2を打ち抜いて形成されたステータ鉄心片Wbを含む複数のステータ鉄心片Wbを、積層ブロック60における所定の積層高さとは異なる積層高さに積層したものである。
【0156】
(排出工程)
排出工程では、打抜部A3が、排出口164を通じて積層ブロック20及びダミーブロック20dを下型161の外部に排出する。
【0157】
積層ブロック20は、ダイD6の内部において互いに結合されていない状態で積層されている。このため、積層ブロック20は、ワークWからロータ鉄心片Waが順次打ち抜かれることに伴って所定の位置まで降下すると、自重によって排出口164を通じて下型161の外部に排出される。排出口164を通じて排出された積層ブロック20は、搬送機構200の上面に落下する。なお、ダミーブロック20dは、積層ブロック20と同様にして排出される。
【0158】
排出工程では、ステータプレス装置170が、ロータプレス装置160と同様にして、積層ブロック60を外部に排出する。
(搬送工程)
搬送工程では、搬送機構200が、積層ブロック20及びダミーブロック20dを搬送する。搬送工程では、排出口164から排出される積層ブロック20及びダミーブロック20dが、搬送機構200上を互いに間隔をおいて搬送される。
【0159】
搬送工程では、積層ブロック60が、積層ブロック20と同様にして搬送される。
(検知工程)
図10に示すように、検知工程では、検知部210が、排出口164を通じた積層ブロック20の排出を検知する。
【0160】
検知部210は、搬送機構200によって搬送される積層ブロック20の有無を検知することにより、排出口164を通じた積層ブロック20の排出を検知する。したがって、検知工程では、排出口164を通じた積層ブロック20の排出が間接的に検知される。
【0161】
ここで、本実施形態では、第1流路ブロック20Aの積層高さは、第2流路ブロック20Bの積層高さよりも大きい。このため、検知部210が積層ブロック20を検知する検知間隔は、第2流路ブロック20Bが連続して搬送される場合よりも第1流路ブロック20Aが連続して搬送される場合の方が長い。このため、検知部210の検知間隔の最大値は、第1流路ブロック20Aを連続して検知する場合の検知間隔となる。
【0162】
検知工程では、積層ブロック20と同様にして、ステータプレス装置170からの積層ブロック60の排出が検知される。
(異常判定工程)
異常判定工程では、制御部190が、検知工程における検知結果に基づいて、かしめ孔形成部A2の異常を判定する。
【0163】
制御部190は、検知部210が予め定められた検知時間内に積層ブロック20の排出を検知しない場合に、かしめ孔形成部A2の異常を判定する。
検知時間は、例えば、上述した検知部210の検知間隔の最大値よりも大きい時間に設定されている。検知時間は、例えば、3つ以上の積層ブロック20が搬送機構200上における検知部210の検知領域を通過するまでに必要な時間以上に設定されている。
【0164】
かしめ孔形成部A2が異常である場合、ワークWにかしめ孔19が形成されないため、排出口164から積層ブロック20が排出されなくなる。このため、検知部210が積層ブロック20を検知しなくなる。
【0165】
次に、
図16のフローチャートを参照して、異常判定工程における制御部190の異常判定処理について説明する。
まず、制御部190は、タイマーをスタートして計時を開始する(ステップS1)。
【0166】
次に、制御部190は、検知部210が積層ブロック20を検知したか否かを判定する(ステップS2)。検知部210が積層ブロック20を検知した場合(ステップS2:YES)、制御部190は、タイマーをリセットする(ステップS3)。その後、制御部190は、再びステップS1の処理を実行する。検知部210が積層ブロック20を検知しない場合(ステップS2:NO)、制御部190は、検知時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。
【0167】
ステップS4において、検知時間が経過したと判定された場合(ステップS4:YES)、制御部190は、ロータプレス装置160及びステータプレス装置170の動作を停止させる(ステップS5)。ステップS4において、検知時間が経過していないと判定された場合(ステップS4:NO)、制御部190は、ステップS2の処理を実行する。
【0168】
異常判定工程では、予め定められた検知時間内に積層ブロック60の排出が検知されない場合に、制御部190が、ロータプレス装置160と同様にして、ステータプレス装置170におけるかしめ孔56を形成する部分の異常を判定する。
【0169】
(振り分け工程)
図11(a)及び
図11(b)に示すように、振り分け工程では、振分部材220が、搬送機構200によって搬送される積層ブロック20及びダミーブロック20dを互いに異なる搬送経路に振り分ける。
【0170】
図11(a)に示すように、積層ブロック20は、振分部材220に接触することにより、第2搬送経路202に案内される。これにより、積層ブロック20は、振分部材220に接触する前の搬送方向とは異なる方向に搬送される。
【0171】
上述したように、ダミーブロック20dの積層高さは、積層ブロック20の積層高さよりも小さい。このため、
図11(b)に示すように、ダミーブロック20dは、振分部材220に接触することなく、振分部材220の下方を通過する。したがって、ダミーブロック20dは、搬送方向が変更されることなく第1搬送経路201上を搬送される。
【0172】
振り分け工程では、積層ブロック20及びダミーブロック20dと同様にして、ステータプレス装置170により形成されたダミーブロック及び積層ブロック60が互いに異なる搬送経路に振り分けられる。
【0173】
(ブロック体形成工程)
図15に示すように、ブロック体形成工程では、図示しない装置または作業者が、複数の積層ブロック20を積層してブロック体Bを形成する。ブロック体Bは、第1流路ブロック20Aと第2流路ブロック20Bとを含んでいる。
【0174】
ブロック体形成工程では、ロータコア11の下面11aを構成する第1流路ブロック20Aを含み、互いに隣接して積層される2つの第1流路ブロック20Aに対して、下面11aとは反対側から2つの第2流路ブロック20Bが積層される。その後、2つの第2流路ブロック20Bに対して、ロータコア11の上面11bを構成する第1流路ブロック20Aを含み、互いに隣接して積層される2つの第1流路ブロック20Aが積層される。本実施形態では、第1ブロック21~第6ブロック26が、この順で互いに隣接して積層されることによりブロック体Bが形成される。
【0175】
ブロック体形成工程では、ロータプレス装置160の内部において積層ブロック20を積層させてもよいし、積層ブロック20に挿入される治具に積層ブロック20を積層させてもよい。また、ブロック体形成工程では、中心孔12を中心に各積層ブロック20を所定の角度ずつ回転して積層する転積を行ってもよい。
【0176】
ブロック体形成工程において形成されたブロック体Bに対して、加圧処理や熱処理などの所定の処理を行うことにより、ロータコア11が形成される。
ブロック体形成工程では、積層ブロック20と同様にして、複数の積層ブロック60を積層してブロック体が形成される。
【0177】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)積層ブロック形成工程において、ブロック体Bにおける第3ブロック23に隣接する第2ブロック22を形成する際には、第2ブロック22を構成するロータ鉄心片Waの積層数を調整する。第3ブロック23を形成する際には、第3ブロック23を構成するロータ鉄心片Waの積層数を予め定められた一定数とする。
【0178】
こうした方法によれば、ブロック体Bのうち第3ブロック23に隣接する第2ブロック22のロータ鉄心片Waの積層数が調整される。つまり、ブロック体Bのうち第3ブロック23の最も近くに位置する第2ブロック22のロータ鉄心片Waの積層数が調整される。これにより、ロータコア11の下面11aからの第3ブロック23の位置精度が低下しにくくなる。
【0179】
また、上記方法によれば、ブロック体Bのうち第3ブロック23のロータ鉄心片Waの積層数が一定数となる。これにより、第3ブロック23のロータ鉄心片Waの積層数の変化に伴って第2流路17の流路断面積が減少することを回避できる。
【0180】
以上のことから、冷却流路15の位置精度の低下を抑制しつつ、冷却流路15の流路断面積の減少を抑制できる。
(2)積層ブロック形成工程において、ブロック体Bのうち第2ブロック22よりもロータコア11の下面11a側に位置する第1ブロック21を形成する際には、第1ブロック21を構成するロータ鉄心片Waの積層数を予め定められた一定数とする。
【0181】
こうした方法によれば、ブロック体Bを構成する複数の第1流路ブロック20Aのうち第2流路ブロック20Bに隣接する第1流路ブロック20Aである第2ブロック22の積層数が調整されるとともに、第1ブロック21の積層数が調整されない。このため、ブロック体Bを構成する複数の第1流路ブロック20Aのそれぞれに対してロータ鉄心片Waの積層数の調整を行わなくて済む。したがって、ロータコア11の製造が容易となる。
【0182】
(3)ブロック体Bのうちロータコア11の上面11bを構成する第6ブロック26を形成する際には、第6ブロック26を構成するロータ鉄心片Waの積層数を調整する。
こうした方法によれば、ブロック体Bのうちロータコア11の上面11bを構成する第6ブロック26の積層数が調整される。したがって、ロータコア11の積層厚さとロータコア11の目標厚さとの差を小さくできる。
【0183】
(4)ブロック体Bのうち第6ブロック26と第3ブロック23との間に位置する第5ブロック25を形成する際には、第5ブロック25を構成するロータ鉄心片Waの積層数を予め定められた一定数とする。
【0184】
こうした方法によれば、ブロック体Bを構成する複数の第1流路ブロック20Aのうち、第2ブロック22に隣接する第1ブロック21と、ロータコア11の上面11bを構成する第6ブロック26との両方の積層数が調整される。このため、ブロック体Bを構成する複数の第1流路ブロック20Aのそれぞれに対してロータ鉄心片Waの積層数の調整を行わなくて済む。したがって、ロータコア11の製造が容易となる。
【0185】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0186】
・ロータコア11を構成する第2流路ブロック20Bの数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。例えば、ロータコア11の上面11bは、第2流路ブロック20Bによって構成されていてもよい。この場合であっても、第2流路ブロック20Bに隣接する第1流路ブロック20Aの積層数を調整することで、上記(1)に準じた効果を奏することができる。
【0187】
・ブロック形成工程では、第1ブロック21及び第5ブロック25の少なくとも一方の積層数を調整してもよい。
・ブロック形成工程において、ロータコア11の上面11bを構成する第1流路ブロック20Aを形成する際には、当該第1流路ブロック20Aの積層数を予め定められた一定数としてもよい。
【0188】
・ロータコア11の製造方法は、冷却流路15のうち第2流路17のみを構成する第2流路ブロック20Bを含むロータコア11の製造に対しても適用できる。
・ロータコア11を構成する第2流路ブロック20Bに隣接する第1流路ブロック20Aの数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0189】
・ロータコア11を構成する積層体は、単一の積層ブロック20によって構成されていてもよい。この場合、かしめ孔19を有するロータ鉄心片Waはロータコア11の積層方向における一端部にのみ設けられる。
【0190】
・ワークWのうち溶接装置120によって溶接された部分が予定部Wpに含まれる場合は、当該予定部Wpを打ち抜いて形成されるロータ鉄心片Waを含むダミーブロックを形成してもよい。このダミーブロックの積層高さは、積層ブロック20における所定の積層高さとは異なることが好ましい。この場合、振り分け工程において、積層ブロック20及びダミーブロックを互いに異なる搬送経路に振り分けることができる。
【符号の説明】
【0191】
A1…ダボ形成部
A2…かしめ孔形成部
A3…打抜部
B…ブロック体
D1,D2,D3,D4,D5,D6…ダイ
m…測定点
P1,P2,P3,P4,P5,P6…パンチ
V…仮想線
W…ワーク
Wa…ロータ鉄心片
Wb…ステータ鉄心片
Wp…予定部
Wp1…第1予定部
Wp2…第2予定部
11…ロータコア
11a…下面
11b…上面
15a,15b,15c…貫通孔
16…第1流路
17…第2流路
18,55…ダボ
19,56…かしめ孔
20,60…積層ブロック
20A…第1流路ブロック
20B…第2流路ブロック
20d…ダミーブロック
21…第1ブロック
22…第2ブロック
23…第3ブロック
24…第4ブロック
25…第5ブロック
26…第6ブロック
51…ステータコア
100…製造装置
130…板厚測定装置
140…第1給油装置
150…塗布ローラ
160…ロータプレス装置
164…排出口
165,165A,165B,165C,165D…切替機構
170…ステータプレス装置
180…第2給油装置
190…制御部
200…搬送機構
201…第1搬送経路
202…第2搬送経路
210…検知部
220…振分部材