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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179960
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20241219BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20241219BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20241219BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/53 100
A61F13/532 200
A61F13/49 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099311
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠人
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA13
3B200BB05
3B200BB17
3B200CA03
3B200CA08
3B200DA08
3B200DB05
3B200DB19
3B200EA04
3B200EA05
(57)【要約】
【課題】股間における、尿受容空間の維持性の向上及び追従変形性の向上を図る。
【解決手段】上記課題は、吸収体56は、股間部Mにおける幅方向WDの一方側及び他方側に、前後方向LDに延びた一対の細長状のスリット56Lを有するとともに、一方のスリット56Lと他方のスリット56Lとの間として定まるセンター領域56Cと、幅方向WDの両側におけるスリット56Lと吸収体56の側縁との間として定まる一対のサイド領域56Sとを有し、センター領域56C及びサイド領域56Sには、その60%以上の前後方向LDの範囲にわたり、吸収体56の表面及び裏面の少なくとも一方から吸収体56内まで窪むとともに厚み方向に圧縮された底部51を有する溝53が、幅方向WDに連続するパターンで設けられ、センター領域56Cは、サイド領域56Sと比べて、溝53の底部51の厚みが一定で溝53の底部51の面積率が低いことにより解決される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部と、前記股間部より前側及び後側にそれぞれ延びた前側部分及び後側部分とを有しており、
前記股間部を含む前後方向の範囲にわたり設けられた吸収体、及びこの吸収体を包む包装シートを有する吸収要素を備え、
前記吸収体は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積してなるものであり、
前記吸収体は、前記股間部における幅方向の一方側及び他方側にそれぞれ設けられた、前後方向に延びた一対の細長状のスリットを有し、
前記吸収体は、一方の前記スリットと他方の前記スリットとの間として定まるセンター領域と、幅方向の両側における前記スリットと前記吸収体の側縁との間として定まる一対のサイド領域とを有し、
前記センター領域及び前記サイド領域には、その60%以上の前後方向の範囲にわたり、前記吸収体の表面及び裏面の少なくとも一方から前記吸収体内まで窪むとともに厚み方向に圧縮された底部を有する溝が、幅方向に連続するパターンで設けられており、
前記センター領域は、前記サイド領域と比べて、前記溝の底部の厚みが一定で前記溝の底部の面積率が低いか、前記溝の底部の面積率が一定で前記溝の底部の厚みが厚いか、又は前記溝の底部の面積率が低いとともに、前記溝の底部の厚みが厚い、
ことを特徴とする、使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記センター領域及び前記サイド領域は、それぞれ前記溝が格子状に連続した領域であり、
前記センター領域及び前記サイド領域における前記溝の底部の厚み及び前記溝の底部の幅が同一であるとともに、
前記センター領域における前記溝からなる単位枠の最大面積が、前記サイド領域における前記溝からなる単位枠の最大面積の1.5~4倍である、
請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記吸収体は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積してなる一層又は複数の層からなるものであり、
前記吸収体における前記パルプ繊維の目付けが80~450g/mであり、
前記吸収体におけるパルプ繊維:高吸収性ポリマー粒子が、重量比で20:80~80:20であり、
前記吸収体の厚みの最大値は1~20mmであり、
前記底部の厚みは前記吸収体の厚みの最大値の5~40%である、
前記底部の幅は1~3mmであり、
前記センター領域における前記溝からなる単位枠の面積が150~500mmである、
請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記溝は、前後方向に対して平面視で時計回りに40~60°傾斜した第1部分と、前後方向に対して平面視で反時計回りに40~60°傾斜した第2部分とからなる斜め格子状に形成されている、
請求項2又は3記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記サイド領域における前記単位枠の幅方向の寸法が、前記サイド領域の幅方向の最小寸法の0.5倍以下である、
請求項2又は3記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
両方の前記サイド領域における前記溝のパターンは、前記スリットの側縁と前記溝とからなるスリット隣接枠、前記吸収体の側縁と前記溝とからなる側縁隣接枠、並びに同一の寸法及び形状を有する完全な前記単位枠のみからなり、
両方の前記サイド領域における各スリット隣接枠の面積及び各側縁隣接枠の面積が、前記単位枠の面積よりも小さい、
請求項5記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記吸収体の両側縁は前後方向に沿って直線的に延びているとともに、
前記一対のスリットは、前後方向の中間から前側及び後側にそれぞれ向かうにつれて、前記吸収体の側縁に近づくように延びている、
請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股間における、尿受容空間(使い捨ておむつの股間部の表面と肌との隙間)の維持性の向上及び追従変形性の向上を図った使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつでは、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積してなる吸収体を用いることが一般的であり、このような吸収体は製造時及び製造後の形状維持性を高めるために、クレープ紙等からなる包装シートが巻き付けられてなる吸収要素として内蔵されることが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
使い捨ておむつの吸収要素は両脚の間に挟まれた状態で、歩行等の脚の動きにより幅方向両側から様々な方向の力を受けるため、股間幅に追従して変形可能な追従変形性が求められる一方で、好ましい装着形状を維持する形状維持性も求められている。もちろん、使い捨ておむつの吸収要素では、股間部における吸収量の確保等も要求される。
【0004】
例えば、一般的な使い捨ておむつの股間部は、着用時には股間部の幅方向の中間が底をなすとともに、その両側方が起き上がって側壁をなすことにより略U字状の断面形状となる。この結果、使い捨ておむつの股間部の表面と肌との間に尿受容空間が形成され、一度の排尿量が多い場合であっても漏れにくいものとなる。
【0005】
略U字状の断面形状への変形を容易にするために、従来から、股間部における吸収体の幅方向両側に、厚み方向に貫通する一対のスリットを前後方向に沿って形成することが行われている。この場合、吸収体がスリットで折れ曲がりやすくなり、一対のスリットの間のセンター領域が底をなすとともに各スリットより側方のサイド領域が起き上がって側壁をなすことにより、おむつの股間部が略U字状の断面形状となりやすいだけでなく、側壁が吸収体を有することにより剛性が高くなり(つまり尿受容空間が潰れにくくなり)、吸収機能も有するものとなる。ただし、このような機能は、尿の吸収により、高吸収性ポリマー粒子が膨張して吸収体の形状維持性が低下し、スリットが潰れると、失われるか又は極端に低下することとなる。
【0006】
吸収体の形状維持性を改善する手法としては、吸収要素を厚み方向に圧縮した底部を有する溝を格子状等のパターンで設けることが知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、圧縮により溝を設けることは剛性の向上につながるため、尿吸収後の形状維持性を考慮して吸収体全体にわたり一様に密なパターンで圧縮による溝を設けると、股間部が略U字状の断面形状に変形した状態で、底に位置する部分が折れ曲がりにくくなり、股間幅に追従して変形しにくくなる(追従変形性の低下)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-000236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、股間における、尿受容空間の維持性の向上及び追従変形性の向上を図ること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した使い捨ておむつは以下のとおりである。
<第1の態様>
股間部と、前記股間部より前側及び後側にそれぞれ延びた前側部分及び後側部分とを有しており、
前記股間部を含む前後方向の範囲にわたり設けられた吸収体、及びこの吸収体を包む包装シートを有する吸収要素を備え、
前記吸収体は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積してなるものであり、
前記吸収体は、前記股間部における幅方向の一方側及び他方側にそれぞれ設けられた、前後方向に延びた一対の細長状のスリットを有し、
前記吸収体は、一方の前記スリットと他方の前記スリットとの間として定まるセンター領域と、幅方向の両側における前記スリットと前記吸収体の側縁との間として定まる一対のサイド領域とを有し、
前記センター領域及び前記サイド領域には、その60%以上の前後方向の範囲にわたり、前記吸収体の表面及び裏面の少なくとも一方から前記吸収体内まで窪むとともに厚み方向に圧縮された底部を有する溝が、幅方向に連続するパターンで設けられており、
前記センター領域は、前記サイド領域と比べて、前記溝の底部の厚みが一定で前記溝の底部の面積率が低いか、前記溝の底部の面積率が一定で前記溝の底部の厚みが厚いか、又は前記溝の底部の面積率が低いとともに、前記溝の底部の厚みが厚い、
ことを特徴とする、使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
本使い捨ておむつは、次の理由で、股間における尿受容空間の維持性及び追従変形性がともに向上するものである。
(ア)吸収体がスリットで折れ曲がりやすくなり、センター領域が底をなすとともに各サイド領域が起き上がって側壁をなすことにより、おむつの股間部が略U字状の断面形状となりやすいだけでなく、側壁の剛性が高くなり(つまり尿受容空間が潰れにくくなり)、吸収機能も有するものとなる。
(イ)センター領域及びサイド領域ともに、吸収要素の表面及び裏面の少なくとも一方から吸収体内まで窪むとともに厚み方向に圧縮された底部を有する溝が所定のパターンで設けられているため、そうでない場合と比べて、吸収体は尿の吸収後も形状が維持されやすい。
(ウ)そして、上記(ア)及び(イ)の利点を有するものでありながら、センター領域は相対的に柔軟性に富み、サイド領域は相対的に形状維持性に富むことにより、おむつの股間部がU字状断面の着用状態になったときに、側壁はより高剛性となり、尿受容空間が潰れにくくなる一方で、底をなす部分は折れ曲がりやすくなり、股間幅に追従して変形しやすくなる。
【0011】
<第2の態様>
前記センター領域及び前記サイド領域は、それぞれ前記溝が格子状に連続した領域であり、
前記センター領域及び前記サイド領域における前記溝の底部の厚み及び前記溝の底部の幅が同一であるとともに、
前記センター領域における前記溝からなる単位枠の最大面積が、前記サイド領域における前記溝からなる単位枠の最大面積の1.5~4倍である、
第1の態様の使い捨ておむつ。
【0012】
(作用効果)
吸収体の表面から吸収体内まで窪むとともに厚み方向に圧縮された底部を有する溝を格子状に連続するパターンで吸収体に設けると、高密度で高剛性となった溝の底部が少なくとも幅方向に連続することにより、溝を有する領域は少なくとも幅方向における形状維持性が特に高いものとなる。また、溝に沿う方向の液拡散性が向上するという利点もある。ここで、吸収体の溝の底部の厚みによって形状維持性は変化するものの、その変化幅は大きいものではない。また、溝の底部の幅を大きくすると、硬質な溝の底部の感触が肌に伝わりやすくなる。よって、本態様のように、溝の底部の厚み及び溝の底部の幅をセンター領域及びサイド領域で同じとしつつ、溝からなる単位枠の面積を異ならしめるのは好ましい。これにより、形状維持性の向上はもちろんのこと、センター領域よりもサイド領域における液拡散性が高くなり、横漏れしにくいものとなる。
【0013】
<第3の態様>
前記吸収体は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積してなる一層又は複数の層からなるものであり、
前記吸収体における前記パルプ繊維の目付けが80~450g/mであり、
前記吸収体におけるパルプ繊維:高吸収性ポリマー粒子が、重量比で20:80~80:20であり、
前記吸収体の厚みの最大値は1~20mmであり、
前記底部の厚みは前記吸収体の厚みの最大値の5~40%である、
前記底部の幅は1~3mmであり、
前記センター領域における前記溝からなる単位枠の面積が150~500mmである、
第2の態様の使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
溝の寸法は適宜定めることができるが、本態様のような吸収体においては、本態様の範囲内で溝を形成することが好ましい。
【0015】
<第4の態様>
前記溝は、前後方向に対して平面視で時計回りに40~60°傾斜した第1部分と、前後方向に対して平面視で反時計回りに40~60°傾斜した第2部分とからなる斜め格子状に形成されている、
第2又は3の態様の使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
溝のパターンは適宜定めることができるが、本態様のような斜め格子状であると好ましい。
【0017】
<第5の態様>
前記サイド領域における前記単位枠の幅方向の寸法が、前記サイド領域の幅方向の最小寸法の0.5倍以下である、
第2~4のいずれか1つの態様の使い捨ておむつ。
【0018】
(作用効果)
本態様のように構成されていると、サイド領域には単位枠が少なくとも1つ存在することになり、格子状パターンの位置が製造誤差で多少ずれたとしても、剛性向上及び拡散性向上の両面で特に好ましいものとなる。
【0019】
<第6の態様>
両方の前記サイド領域における前記溝のパターンは、前記スリットの側縁と前記溝とからなるスリット隣接枠、前記吸収体の側縁と前記溝とからなる側縁隣接枠、並びに同一の寸法及び形状を有する完全な前記単位枠のみからなり、
両方の前記サイド領域における各スリット隣接枠の面積及び各側縁隣接枠の面積が、前記単位枠の面積よりも小さい、
第5の態様の使い捨ておむつ。
【0020】
(作用効果)
本態様のように構成されていると、おむつが略U字状の断面形状となったときに、両側壁の剛性が特に高くなることにより、尿受容空間が潰れにくくなるため好ましい。
【0021】
<第7の態様>
前記吸収体の両側縁は前後方向に沿って直線的に延びているとともに、
前記一対のスリットは、前後方向の中間から前側及び後側にそれぞれ向かうにつれて、前記吸収体の側縁に近づくように延びている、
第1~6のいずれか1つの態様の使い捨ておむつ
【0022】
(作用効果)
スリットの形状が本態様のようになっていると、センター領域が底をなすとともに各サイド領域が起き上がって側壁をなすことにより、おむつの股間部が略U字状の断面形状となった状態で、側壁が太ももの付根の内側にフィットしやすいだけでなく、側壁は前後両側に向かうにつれて高さが低くなり、折れにくくなるため、その近傍では尿受容空間が特に潰れにくいものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、股間における、尿受容空間の維持性の向上及び追従変形性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】パンツタイプ使い捨ておむつの表面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図2】パンツタイプ使い捨ておむつの裏面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
図3図1の3-3断面図である。
図4図1の4-4断面図である。
図5図1の5-5断面図である。
図6】内装体の表面を示す平面図である。
図7】パンツタイプ使い捨ておむつの前斜め下側から見た、斜視図である。
図8】装着状態を示す要部断面図である。
図9】吸収要素の断面図である。
図10】吸収体の平面図である。
図11図10の要部を拡大して示す平面図である。
図12】吸収体の平面図である。
図13】吸収体の平面図である。
図14】スリットの例を示す展開状態の吸収体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、上述した使い捨ておむつについて、添付図面に示すパンツタイプ使い捨ておむつの例を参照しつつ詳説する。なお、厚み方向に隣接する各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部分以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。断面図における点模様部分は、この固定又は接合手段としてのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状(規則的又は不規則)等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、ポリオレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する固定又は接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。厚み方向の液の透過性が要求される部分では、厚み方向に隣接する構成部材は間欠的なパターンで固定又は接合される。例えば、ホットメルト接着剤によりこのような間欠的な固定又は接合を行う場合、スパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を好適に用いることができ、一つのノズルによる塗布幅以上の範囲に塗布する場合には、幅方向に間隔を空けて又は空けずにスパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を行うことができる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0026】
また、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等を含む)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
【0027】
図1図7は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつ100は、前胴周り部FTを構成する長方形の前外装体12F及び後胴周り部BTを構成する長方形の後外装体12Bと、前外装体12Fから股間部Mを経て後外装体12Bまで延びるように外装体12F,12Bの幅方向WDの中間に接合された内装体200とを備えている。前外装体12Fの両側部と後外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール12Aが形成されており、これにより、外装体12F,12Bの前縁及び後縁により形成される開口が着用者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向WDの両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなっている。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0028】
本パンツタイプ使い捨ておむつ100は、サイドシール12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。前外装体12F及び後外装体12Bにおける胴周り領域Tに位置する部分、つまり前胴周り部FT及び後胴周り部BTは、ウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに概念的に区別することができる。通常、前胴周り部FT及び後胴周り部BT内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側に延び出た部分がウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15~40mm、ウエスト下方部Uは65~120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつは、全体として略砂時計形状をなしている。
【0029】
(内装体の固定領域)
外装体12F,12Bに対する内装体200の固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤HM3により行うことができる。図示例では、内装体200の裏面がホットメルト接着剤HM3を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。この内装体200の固定領域201は、図示例では前胴周り部FT及び後胴周り部BTと内装体200とが重なる領域に設けられている。内装体の固定領域は、外装体12F,12B及び内装体200が重なる領域の周縁を除いて略全体にわたり設けられていると好ましい。
【0030】
(外装体)
外装体12F,12Bは、図示例のように、少なくとも前胴周り部FT(前身頃Fの胴周り部)を構成する部分である長方形の前外装体12Fと、少なくとも後胴周り部BT(後身頃Bの胴周り部)を構成する部分である長方形の後外装体12Bとからなり、前外装体12F及び後外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものとなっていても(外装二分割タイプ)よいし、図示しないが前身頃Fから股間部Mを経て後身頃Bまで連続していても(外装前後一体タイプ)よい。外装二分割タイプにおける前後方向の離間距離12dは例えば全長Yの40~60%程度とすることができる。図示例では、前外装体12F及び後外装体12Bの下縁は幅方向WDに沿う直線状となっているが、前外装体12F及び後外装体12Bの少なくとも一方の下縁が脚周りに沿うような曲線状となっていてもよい。
【0031】
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前外装体12F及び後外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、内装体200の裏面には、前外装体12Fと内装体200との間から、後外装体12Bと内装体200との間にわたるカバー不織布層13を備えていることが好ましい。カバー不織布層13の内面及び外面は、それぞれ対向面に第2ホットメルト接着剤HM2及び第3ホットメルト接着剤HM3を介して接着することができる。カバー不織布層13に用いる不織布は、例えば外装体12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができる。
【0032】
図1及び図2に示す例では、前外装体12Fよりも後外装体12Bの前後方向寸法が長く、前外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有せず、後外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部14を有しているが、前外装体12F及び後外装体12Bの前後方向LDの寸法が等しく、前外装体12F及び後外装体12Bは中間領域Lと対応する部分を有していなくてもよい。
【0033】
外装体12F,12Bは、図3図5に示されるように、後述する弾性部材15~17の外側及び内側にそれぞれ隣接する外側シート層12S及び内側シート層12Hがホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により接合されて形成されたものである。外側シート層12S及び内側シート層12Hは、図5に示すように、一枚のシート材をウエスト開口側に折目が位置するように折り畳んで形成する他、図示しないが、二枚のシート材を貼り合わせて形成することもできる。
【0034】
外側シート層12S及び内側シート層12Hに用いるシート材としては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましい。不織布を用いる場合、1枚あたりの目付けは8~20g/m程度とするのが好ましい。
【0035】
外装体12F,12Bには、着用者の胴周りに対するフィット性を高めるために、外側シート層12S及び内側シート層12H間に弾性部材15~17が所定の伸長率で取り付けられ、弾性部材15~17とともに幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域が形成されている。伸縮領域は、弾性部材15~17とともに収縮し、皺又は襞が形成された自然長の状態と、弾性部材15~17とともに皺なく伸び切る所定の伸長率まで幅方向に伸長した伸長状態との間で伸縮が可能である。弾性部材15~17としては、糸ゴム等の細長状の弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15~17としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。外装体12F,12Bにおける外側シート層12S及び内側シート層12Hの貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性部材15~17の固定には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。外装体12F,12B全面を強固に固定すると柔軟性を損ねるため、細長状弾性部材15~17の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により細長状弾性部材15~17の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布して両シート層12S,12H間に挟むことにより、当該細長状弾性部材15~17の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、両シート層12S,12Hへの細長状弾性部材15~17の固定と、両シート層12S,12H間の固定とを行う構造となっている。
【0036】
図示例の弾性部材15~17についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、複数のウエスト弾性部材17が前後方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で取り付けられ、幅方向WDの全体にわたり連続するウエスト伸縮領域が形成されている。取り付けられている。また、ウエスト弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向WDの両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性部材17としては、太さ300~940dtex、特に470~780dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm、特に0.1~1.0mm程度)の糸ゴムを、2~12mmの間隔、特に3~7mmの間隔で、2~15本程度、特に4~10本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150~300%、特に200~280%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDのすべてに同じ太さの弾性部材を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えば部分的に太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0037】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状の弾性部材からなるウエスト下方弾性部材15が複数本、前後方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で取り付けられ、内装体200と重なる幅方向中央部を除いた幅方向WDの両側にウエスト下方伸縮領域が形成されている。ウエスト下方弾性部材15としては、太さ300~940dtex、特に470~780dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm、特に0.1~1.0mm程度)の糸ゴムを、1~15mm、特に3~8mmの間隔で5~30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200~350%、特に240~300%程度であるのが好ましい。また、ウエスト下方部Uは、その前後方向LDのすべてに同じ太さの弾性部材を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、部分的に太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0038】
また、後外装体12Bの臀部カバー部14における外側シート層12S及び内側シート層12H間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いた幅方向WDの両側に、細長状弾性部材からなる臀部カバー弾性部材16が一本又は複数本、上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で取り付けられ、内装体200と重なる幅方向中央部を除いた幅方向WDの両側に臀部カバー伸縮領域が形成されている。臀部カバー弾性部材16としては、太さ300~940dtex、特に470~780dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm、特に0.1~1.0mm程度)の糸ゴムを、5~40mm、特に5~20mmの間隔で2~10本程度、それぞれ伸長率150~300%、特に180~260%で固定するのが好ましい。
【0039】
前胴周り部FT及び後胴周り部BTのうち、吸収体56と重なる部分及びこれとサイドシール12Aとの間の部分からなる第1領域は、吸収体56と重なる部分における少なくとも幅方向WDの中間部に設けられた非伸縮領域12Xと、非伸縮領域12Xとサイドシール12Aの各々との間に設けられた伸縮領域とを有する間欠伸縮帯A1であり、この間欠伸縮帯A1とウエスト開口WOとの間に位置する第2領域は、一方のサイドシール12Aから他方のサイドシール12Aまで伸縮領域が幅方向WDに連続する連続伸縮帯A2であると好ましい。
【0040】
図示例の間欠伸縮帯A1は、第1領域を含む限り、第1領域の範囲を越えて(吸収体56よりも)ウエスト開口WO側まで延びていてもよい。図示例では、後胴周り部BTでは第1領域のみが間欠伸縮帯A1となり、第1領域とウエスト開口WOとの間は連続伸縮帯A2となっており、前胴周り部FTでは内装体200の固定領域201と重なる部分及びこれとサイドシール12Aとの間の部分からなる領域(第1領域よりもウエスト開口WO側まで続く領域)が間欠伸縮帯A1となっているが、これに限定されるものではない。よって、これらは反対になっていてもよいし、前胴周り部FT及び後胴周り部BTの両方で内装体200の固定領域201と重なる部分及びこれとサイドシール12Aとの間の部分からなる領域が間欠伸縮帯A1となっていてもよいし、前胴周り部FT及び後胴周り部BTの両方で第1領域のみが間欠伸縮帯A1となっていてもよい。また、図示例の間欠伸縮帯A1は、ウエスト下方弾性部材15を有するウエスト下方伸縮領域のみを含む前後方向LDの範囲に形成されているが、ウエスト弾性部材17を有するウエスト伸縮領域の一部を含むようにウエスト開口WO側に範囲を拡大してもよい。
【0041】
図示例の連続伸縮帯A2は、前胴周り部FTではウエスト弾性部材17を有するウエスト伸縮領域のみにより形成され、後胴周り部BTではウエスト弾性部材17を有するウエスト伸縮領域の全部とウエスト下方弾性部材15を含むウエスト下方伸縮領域の一部とにより形成されているが、これらに限定されるものではない。よって、これらは反対になっていてもよいし、前胴周り部FT及び後胴周り部BTの両方の連続伸縮帯A2がウエスト弾性部材17を有するウエスト伸縮領域のみにより形成されていても、ウエスト弾性部材17を有するウエスト伸縮領域の全部とウエスト下方弾性部材15を有するウエスト下方伸縮領域の一部とにより形成されていてもよい。
【0042】
図示のように、吸収体56と重なる部分及びこれとサイドシール12Aとの間の部分からなる第1領域が連続伸縮帯A2ではなく間欠伸縮帯A1となっていると、吸収体56が幅方向WDに必要以上に収縮することがなく、フィット性が低下したり、モコモコと見た目が悪かったり、吸収性が低下したりすることがない。このような間欠伸縮帯A1には、幅方向WDの両側にのみ弾性部材15,16が存在する場合の他、吸収体56を横切ってその幅方向WD一方側から他方側まで弾性部材15,16が存在しているが、吸収体56と重なる部分の幅方中間部又は全部は弾性部材15,16が細かく切断される等により収縮力が殆ど作用せずに(実質的には、弾性部材15,16を設けないことに等しい)に非伸縮領域12Xとなっているとともに、その幅方向WDの両側は伸縮領域(収縮力作用部分)となっている場合も含まれる。非伸縮領域12Xは内装体200の両側縁の間に位置していることが好ましく、吸収体56の両側縁の間に位置しているとより好ましい。非伸縮領域12Xの幅方向WDの寸法は適宜定めることができるが、吸収体56の最大幅の0.6~1.2倍であると好ましく、0.8~1.0倍であるとより好ましい。また、非伸縮領域12Xの幅方向WDの寸法は、連続伸縮帯A2の幅方向WDの寸法の0.5~1.0倍であると好ましく、0.6倍~0.8倍であるとより好ましい。
【0043】
(内装体)
内装体200の形状は任意であるが、図示例では長方形である。内装体200は、図3図5に示されるように、着用者の肌側となる液透過性トップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。符号60は、平面ギャザーを有するサイドフラップ60を示している。
【0044】
(トップシート)
トップシート30は、有孔又は無孔の不織布や、有孔プラスチックシート等、液透過性素材であれば特に限定無く利用できるが、図3及び図4に示す例のようにトップシート30が液不透過性シート層64の被覆材を兼ねる場合にはトップシート30は不織布が好適である。
【0045】
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で吸収要素50の裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させてもよい。また必要に応じて、トップシート30の全幅を吸収要素50の全幅よりも短くし、トップシート30の両側縁が吸収要素50上に位置する構造としても良い。
【0046】
(中間シート)
図示しないが、トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)を設けることができる。この中間シートは、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シートは省略することもできる。
【0047】
(液不透過性シート)
吸収体56の裏側に設けられる液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムを例示することができる。液不透過性シート11には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。
【0048】
液不透過性シート11は、図3及び図4に示す例のように、サイドフラップ内まで延長して、平面ギャザーの防水性を向上させるように構成したり、図示しないが吸収要素50の裏側に収まる幅としたり、又は吸収要素50の側縁で表側に折り返して、吸収要素50とトップシート30との間まで延ばしたりすることができる。
【0049】
(吸収要素)
吸収要素50は、図3図4図9に示すように、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0050】
(吸収体)
吸収体56は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子を混合・集積したものである。パルプ繊維の目付けは、例えば80~450g/m程度、より好ましくは80~200g/m程度とすることができる。
【0051】
繊維集合体中には高吸収性ポリマー粒子が混合される。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0052】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量(JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」)が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0053】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0054】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0055】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/mとすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/mを超えると、効果が飽和する。
【0056】
吸収体56における繊維及び高吸収性ポリマー粒子の比率は特に限定されず、例えばパルプ繊維:高吸収性ポリマー粒子は重量比で20:80~80:20、より好ましくは40:60~60:40とすることができる。特に、パルプ繊維:高吸収性ポリマー粒子が重量比で40:60~60:40であると、同じ面積かつ同じ吸収量で比較するとより薄い吸収体56とすることができる。吸収体56の厚み56tは特に限定されるものではないが、1~20mm、より好ましくは2~5mmとすることができる。
【0057】
吸収体56は、股間部Mを含む前後方向LDの範囲にわたり設けられる。吸収体56は、前胴周り部FTから後胴周り部BTまで続いていると好ましい。吸収体56のうち、内装体200の固定領域201に位置する部分は、包装シート58、液不透過性シート11、ホットメルト接着剤HM3等を介して外装体12F,12Bに対して固定されていると好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の最大幅(全幅)を示している。
【0058】
吸収体56は図示例のように略長方形形状であると、股間部Mにおける吸収量を確保しやすくなるため好ましいが、股間部Mに括れ部を有していてもよい(つまり、吸収体56は、前後方向LDの中間に位置する最小幅の部分と、この最小幅の部分から股間部Mより前側の最大幅の部分にかけて、及び股間部Mより後側の最大幅の部分にかけてそれぞれ次第に幅が広くなる拡幅部分とを有する)。
【0059】
なお、股間部Mとは、後述のスリットを有する前後方向LDの範囲を意味し、これよりも前側及び後側に前側部分及び後側部分がそれぞれ延びている。
【0060】
(スリット)
吸収体56は、股間部Mにおける幅方向WDの一方側及び他方側に、前後方向LDに延びた一対の細長状のスリット56Lを有している。吸収体56にこのようなスリット56Lを設けることにより、着用時に図8に示すように、スリット56Lに沿う吸収体56の屈曲を促して、おむつの股間部Mを略U字状の断面形状に変形させることができる。すなわち、一方のスリット56Lと他方のスリット56Lとの間として定まるセンター領域56Cが底をなすとともに、幅方向WDの両側におけるスリット56Lと吸収体56の側縁56eとの間として定まる一対のサイド領域56Sがそれぞれ起き上がって側壁をなすことにより、おむつの股間部Mが略U字状の断面形状となる。なお、センター領域56C及び一対のサイド領域56Sは、図14に点模様で示されている。
【0061】
スリット56Lは、前後方向LDに延びる細長状である限り、図14(b)に示すように前後方向LDに沿って直線状に延びていてもよいし、図14(a)等に示すように前後方向LDのスリット56Lの前後方向LDの中間から前側及び後側にそれぞれ向かうにつれて、吸収体56の側縁に近づくように延びていてもよい。また、スリット56Lの前端及び後端の少なくとも一方は、図14(a)(b)に示すように、吸収体56の側縁から離間していてもよいし、図14(c)(d)に示すように、前後いずれか一方又は両方の末端が吸収体56の側縁に達していてもよい。また、スリット56Lの前後端は適宜の形状とすることができ、例えば図14(d)に示す例のように直線状とする他、図14(a)等に示す例のように曲線状に膨らんだ形状(半円弧状等)としたり、図示しないが両端部の角を丸くして中間の部分を直線状としたりすることができる。スリット56Lの幅m1は適宜定めることができ、例えば4~12mmとすることができる。スリット56Lの幅m1はその長さ方向に一定であってもよいし、変化してもよい。スリット56Lの前後方向LDの寸法・配置は適宜定めることができる。例えば、スリット56Lの前後方向LDの寸法m2(股間部Mの前後方向LDの寸法に等しい)は、両スリット56Lの最小間隔CWの200~600%、より好ましくは300~500%とすることができる。
【0062】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等の液透過性素材を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、緻密な層を有する親水性の不織布が好適である。このような不織布としては、一層又は複数層のメルトブローン層と、これを保護する一層又は複数層の不パンボンド層等の保護層とが積層された積層不織布(SMS不織布、SSMMS不織布等を含む)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。包装シート58の目付けは、例えば5~40g/m、好ましくは8~20g/mとすることができる。
【0063】
包装シート58の包装構造は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表面、裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付けたものが好適である。包装シート58は吸収体の前縁及び後縁からはみ出していてもよいし、図示例のように包装シート58の前縁及び後縁が吸収体の前縁及び後縁に略一致しいていてもよい。
【0064】
(サイドフラップ)
内装体200は、図1図4図7及び図8に示すように、サイドフラップ60を有していると好ましい。サイドフラップ60は、吸収体56の側縁から幅方向WDの両側に延び出た一対の部分であり、それぞれ前身頃Fの胴周り伸縮領域(図示例ではウエスト下方弾性部材15を有する領域)と重なる領域から後身頃Bの胴周り伸縮領域(図示例ではウエスト下方弾性部材15を有する領域)と重なる領域まで前後方向LDに延びている。また、サイドフラップ60は、サイドフラップ60の表面からサイドフラップ60の側縁を経てサイドフラップ60の裏面に至るサイド不織布66と、その表面部分61及び裏面部分62の間等に前後方向LDに沿って設けられた細長状のギャザー弾性部材631~633とを有している。表面部分61及び裏面部分62はサイドフラップ60の前後方向LDの全体にわたり延びている。図示例では、表面部分61はサイド不織布66の折り返し部分66rにより形成されているが、これに限定されるものではない。サイドフラップ60における前端部及び後端部は、ギャザー弾性部材631~633とともに前後方向LDに収縮しておらず、かつ表面部分61が裏面部分62に対して固定された固定部67を有するサイド非伸縮領域70となっている。サイドフラップ60における前後のサイド非伸縮領域70の間の部分は、ギャザー弾性部材631~633が固定され、ギャザー弾性部材631~633とともに前後方向LDに収縮しているとともに、ギャザー弾性部材631~633とともに前後方向LDに伸長可能な平面ギャザー領域80となっている。本パンツタイプ使い捨ておむつは、表側に起き上がる立体ギャザーを有しておらず、サイドフラップ60の平面ギャザーのみを有している。図示例の固定部67では、表面部分61は液不透過性シート層64を介して間接的に裏面部分62に固定されているが、液不透過性シート層64等の他の部材が介在しない場合には直接的に固定されることとなる。
【0065】
サイド非伸縮領域70の前後方向LDの寸法は、図示例のようにサイドフラップ60における前端部及び後端部で異なっていてもよいし、同一でもよい。なお、図中の符号60wはサイドフラップ60の幅方向WDの寸法を示している。また、符号w1は固定部67とサイド非伸縮領域70の側縁との幅方向WDの距離(第1の距離)を示し、符号w2は内装体の両側部(サイドフラップ)における外装体12に固定されていない部分の幅方向WDの寸法(第2の距離)を示し、符号w3は固定部67の幅方向WDの寸法を示し、符号w4は、固定部67と吸収体56の側縁との幅方向WDの距離(第3の距離)を示し、符号w5は、固定部67と表面部分61の幅方向WDの中央側の縁との幅方向WDの距離(第4の距離)を示している。
【0066】
ギャザー弾性部材631~633としては糸状のゴム、帯状のゴム等の細長状弾性部材を用いることができる。糸ゴムを用いる場合は、ギャザー弾性部材631~633の太さは400~950dtexであると好ましく、470~780dtexであるとより好ましい。また、ギャザー弾性部材631~633の伸長率は200~320%が好ましく、240~320%がより好ましい。図中の符号631は吸収体56側から数えて1番目に位置する第1ギャザー弾性部材を示し、符号632は2番目に位置する第2ギャザー弾性部材を示し、符号633は3番目以降に位置する第3ギャザー弾性部材を示している。また、符号d1は吸収体56の最大幅の部分の側縁と第1ギャザー弾性部材631との幅方向WDの間隔(第1の間隔)を示し、符号d2は第1ギャザー弾性部材631と第2ギャザー弾性部材632との幅方向WDの間隔(第2の間隔)を示し、符号d3は第2ギャザー弾性部材632と第3ギャザー弾性部材633との幅方向WDの間隔及び隣り合う第3ギャザー弾性部材633の幅方向WDの間隔(第3の間隔)を示している。
【0067】
サイドフラップ60において厚み方向に隣接する層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材631~633の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザー弾性部材631~633の表側及び裏側に隣接する層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材631~633の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材631~633の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してその表側及び裏側に隣接する層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材631~633の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザー弾性部材631~633とその表側及び裏側に隣接する層との固定と、ギャザー弾性部材631~633の表側及び裏側に隣接する層同士の固定とを行う構造となっている。図示例のトップシート30の端部のように、ギャザー弾性部材631~633から離れた不織布やシートの端部が存在する場合には、これを固定するために別途ホットメルト接着剤(図示例における第1ホットメルト接着剤HM1)を塗布することもできる。
【0068】
サイド不織布66としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブローン不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10~30g/m程度とするのが好ましい。図3及び図4に示す例では、不織布不存在部分65より基端側の表面不織布層がトップシート30により形成されていることからも分かるように、表面不織布層及び裏面不織布層の素材を部分的に異ならしめることも可能であり、また表面不織布層及び裏面不織布層の素材を異ならしめることも可能である。
【0069】
(溝)
吸収体56には、図9図11に示すように、吸収体56の表面から吸収体56内まで窪むとともに厚み方向に圧縮された底部51を有する溝53が設けられていると好ましい。溝53の底部51は押圧(直接的な加圧)により圧縮されて厚みが略等しくなった高密度部分である。以下、底部51以外の部分を非圧縮部52という。非圧縮部52は底部51よりも厚くかつ低密度の部分であるが、非圧縮部52であっても底部51の周囲近くでは、底部51の圧縮形成に引っ張られるように吸収体56が変形する結果、底部51に近づくにつれて密度は増加する。非圧縮部52は底部51よりも厚くかつ低密度である限り、底部51を形成する圧縮加工と同時、又はその前若しくはその後に、全体が厚み方向に圧縮されていてもよい。非圧縮部52の形状や配列は底部51の形状や配列に応じて定まる。
【0070】
吸収体56の溝53は、吸収体56のみを非加熱の又は加熱を伴うエンボス加工等を施すことにより形成してもよいが、吸収要素50(つまり包装シート58とともに)や内装体200のように、吸収体56以外の部材を積層した状態でエンボス加工することにより、吸収体56及び他の積層部材を含めて形成してもよい。
【0071】
上述の溝53が、センター領域56C及びサイド領域56Sにおける、60%以上の前後方向LDの範囲にわたり、幅方向WDに連続するパターンで設けられていると、圧縮された底部51が高密度で高剛性となるため、センター領域56C及びサイド領域56Sの形状維持性が向上する。しかし、圧縮された底部51を設けることは剛性の向上につながるため、尿吸収後の形状維持性を考慮してセンター領域56C及びサイド領域56Sにわたり一様に密なパターンで圧縮された底部51を設けると、股間部Mが略U字状の断面形状に変形した状態で、底に位置する部分(センター領域56C)が折れ曲がりにくくなり、股間幅に追従して変形しにくくなる(追従変形性の低下)。よって、センター領域56Cはサイド領域56Sと比べて、溝53の底部51の厚みが一定で溝53の底部51の面積率が低くなっていると好ましい。これに代えて、図示しないが、センター領域56Cはサイド領域56Sと比べて、溝53の底部51の面積率が一定で溝53の底部51の厚みが厚くなっているか、又は溝53の底部51の面積率が低くなっているとともに、溝53の底部51の厚みが厚くなってもよい。このように溝53の底部51の面積率及び底部51の厚みの少なくとも一方を変化させて、股間部Mにおけるセンター領域56Cの剛性をサイド領域56Sよりも低くすると、次の理由で、図8に示すように股間における尿受容空間SPの維持性及び追従変形性がともに向上するものである。
(ア)吸収体56がスリット56Lで折れ曲がりやすくなり、センター領域56Cが底をなすとともに各サイド領域56Sが起き上がって側壁をなすことにより、おむつの股間部Mが略U字状の断面形状となりやすいだけでなく、側壁の剛性が高くなり(つまり尿受容空間SPが潰れにくくなり)、吸収機能も有するものとなる。
(イ)センター領域56C及びサイド領域56Sともに、吸収要素50の表面及び裏面の少なくとも一方から吸収体56内まで窪むとともに厚み方向に圧縮された底部51を有する溝53が所定のパターンで設けられているため、そうでない場合と比べて、吸収体56は尿の吸収後も形状が維持されやすい。
(ウ)そして、上記(ア)及び(イ)の利点を有するものでありながら、センター領域56Cは相対的に柔軟性に富み、サイド領域56Sは相対的に形状維持性に富むことにより、おむつの股間部MがU字状断面の着用状態になったときに、側壁はより高剛性となり、尿受容空間SPが潰れにくくなる一方で、底をなす部分は折れ曲がりやすくなり、股間幅に追従して変形しやすくなる。
【0072】
上述の溝53は、センター領域56C及びサイド領域56Sのうち60%以上の前後方向LDの範囲にわたり幅方向WDに連続するパターンで設けられる限り、80%以上の前後方向LDの範囲にわたり形成してもよいし、図示例のように前後方向LDの全体にわたり形成してもよいし、センター領域56C及びサイド領域56Sの前端又は後端から60%以上100%未満の前後方向LDの範囲のみに形成してもよいし、センター領域56C及びサイド領域56Sの前端部及び後端部には形成せずに、それらの間の中間部のみに形成してもよい。特に、溝53のパターンは、センター領域56C及びサイド領域56Sの前端よりも前側からセンター領域56C及びサイド領域56Sの後端よりも後側までの前後方向LDの範囲の全体(図示例では吸収体56の前後方向LDの全体)にわたり一様に続いていると、溝53の前後方向LDの位置決めが不要となり、製造が容易であるため好ましい。しかし、センター領域56C及びサイド領域56Sの60%以上の前後方向LDの範囲を含む領域とそれ以外の領域とは互いに異なるパターンの溝53を有することもできる。
【0073】
溝53の底部51の寸法や数等は適宜定めることができるが、底部51の深さ51h(吸収体56の厚み56t-溝の底部の厚み51t)は0.5~5mmであると好ましく、溝53の底部51の面積率(吸収要素50の表面に占める底部51の面積の割合)は20~40%であると好ましい。
【0074】
底部51を有する溝53は、幅方向WDに連続する限り、図10及び図11に示すように格子状に連続するパターンで設けたり、図示しないが、幅方向WDに沿う溝53を前後方向LDに間隔を空けて複数本設けたり(横縞状パターン)、斜め方向に沿う溝53を溝53の連続方向と直交する方向に間隔を空けて複数本設けたり(斜め縞状パターン)、波線状に延びる溝53を前後方向LDに間隔を空けて複数本設けたり、他の幾何学的パターンで設けたり、文字、動物、植物等をモチーフにした連続パターンで設けたりすることができる。よって、非圧縮部52は少なくとも前後方向LDに間欠的に配置される。特に、溝53を格子状に連続するパターンで設けると、吸収体56を構成するパルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子が、厚み方向に圧縮された底部51からなる単位枠54(最小枠)内に拘束されるため、吸収体56のヨレや割れの低減に資するものとなる。
【0075】
溝53の底部51の幅51wは適宜定めることができるが、通常の場合、1~3mm程度であると好ましい。
【0076】
溝53の底部51の厚み51tは適宜定めることができるが、通常の場合、吸収要素50の厚み50tの最大値の5~40%、特に5~30%であると好ましい。
【0077】
溝53を格子状に設ける場合、単位枠54の形状は特に限定されるものではなく、図示例のような略正方形の他、略菱形(正方形を除く)の他、略長方形、略正方形、略三角形等、他の多角形状であってもよい。また、溝の底部51が格子状に設けられる限り、異なる形状の単位枠54を含んでいてもよい。
【0078】
溝53の一つの好ましい格子状パターンは、図10及び図11に示す例のように、前後方向LDに対して平面視で時計回りに40~60°(より好ましくは45~50゜)傾斜した方向に延びる第1部分51aと、前後方向LDに対して平面視で反時計回りに40~60°(より好ましくは45~50゜)傾斜した方向に延びる第2部分51bとからなる斜め格子状のパターンである。この場合、単位枠54の形状は略菱形となる。第1部分51a及び第2部分51bの前後方向LDに対する角度は45度であると特に好ましい。
【0079】
単位枠54の寸法は適宜定めることができるが、大き過ぎると剛性向上効果に乏しくなり、小さ過ぎると硬くなる。よって、通常の場合、単位枠54の幅方向WDの寸法54xは15~20mm程度とすることが好ましい。また、単位枠54の前後方向LDの寸法54yは15~20mm程度とすることが好ましい。
【0080】
溝53の底部51の面積率を変化させる場合、溝53のパターンを略一定としつつ溝53の底部51の幅を変化させるか、溝53の底部51の幅51wを略一定としつつ溝53のパターンを変化させるか、又は溝53のパターン及び溝53の底部51の幅51wの両方を変化させることができる。ただし、溝53の底部51の面積率を増加させるために溝53の底部51の幅51wを大きくすると、硬質な溝53の底部51の感触が肌に伝わりやすくなる。よって、図示例のように、溝53の底部51の幅51wは略一定としつつ溝53のパターン(具体的には単位面積当たりの溝53の本数)を変化させることが好ましい。また、溝53の底部51の厚みを吸収体56の幅方向WDに変化させる場合、それによる吸収体56の形状維持性の変化幅は大きくなく、液拡散性等の吸収性能への影響が大きく、製造容易性も低下する。よって、溝53の底部51の面積率を略一定としつつ溝53の底部51の厚みを変化させることもできるが、それよりも溝53の底部51の厚みを略一定としつつ溝53の底部51の面積率を変化させる方が好ましい。
【0081】
図10図13は溝のパターンのいくつかの好ましい例を示している。これらの例では、溝53の底部51の幅51w及び厚みがそれぞれ略一定であるのに対して、溝53の底部51の面積率がセンター領域56Cよりもサイド領域56Sの方が大きくなるように、溝53のパターンが幅方向WDに変化している。
【0082】
溝53のパターンが格子状である場合、図10及び図11、並びに図12に示すように単位枠54の形状を複数種組み合わせて、単位枠54の面積が幅方向WDの中央から両側縁に向かうにつれて段階的に小さくなるパターンを構成することにより、サイド領域56Sにおける溝53の底部51の面積率をセンター領域56Cのそれよりも高くすることができる。また、図13に示すように、単位枠54の形状は同じ(図示例は菱形(正方形))であるものの大小異なる寸法の単位枠54を組み合わせて、単位枠54の面積が幅方向WDの中央から両側縁に向かうにつれて段階的に小さくなるパターンを構成することにより、サイド領域56Sにおける溝53の底部51の面積率をセンター領域56Cのそれよりも高くすることができる。
【0083】
各単位枠54の面積の大きさは適宜定めることができるが、共通辺を有するように幅方向WDに隣接する一対の単位枠54のうち、大きい方の単位枠54の面積は小さい方の単位枠54の面積の1.1~2.5倍であると好ましい。また、センター領域56Cにおける溝53からなる単位枠54の最大面積が、サイド領域56Sにおける溝53からなる単位枠54の最大面積の1.5~4倍であると好ましい。この場合、センター領域56Cにおける溝53からなる単位枠54の面積は150~500mmであると好ましい。
【0084】
より詳細には、図10及び図11に示す例の溝53のパターンは斜め格子状である。このパターンは、最大の面積を有する菱形の第1の単位枠54aが幅方向WDの中央に隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなし、この第1の単位枠54aの群の側縁に沿って、第1の単位枠54aと一辺が共通するとともに共通辺と交差する短辺の長さが共通辺の長さの2/3である長方形の第2の単位枠54bと、第1の単位枠54aと二辺が共通するとともに共通辺と交差する短辺の長さが共通辺の長さの2/3であるL形の第3の単位枠54cとが隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなし、この第2の単位枠54b及び第3の単位枠54cの群の側縁に沿って、一辺の長さが第1の単位枠54aの一辺の長さの2/3である菱形の第4の単位枠54dが隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなしたものである。この場合の溝53の単位枠54の面積は最大を1とすると最小は4/9となり、後述する2つの例に比べて少ない変化であるが、製造容易性の観点からは、この変化が好ましい。
【0085】
また、図12に示す例における溝53のパターンも斜め格子状である。このパターンは、最大の面積を有する菱形の第1の単位枠54eが幅方向WDの中央に隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなし、この第1の単位枠54eの群の側縁に沿って、一辺の長さが第1の単位枠54eの1/2である菱形の第2の単位枠54fと、2つの長辺の長さが第1の単位枠54eの一辺の長さと同じであるとともに、4つの短辺の長さが第1の単位枠54eの一辺の長さの1/2であるL形の第3の単位枠54gとが隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなし、第3の単位枠54gの群の側縁に沿って、一辺の長さが第1の単位枠54eの一辺の長さの1/2である菱形の第2の単位枠54fが隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなしたものである。この場合の単位枠54e~gの面積は最大を1とすると最小は1/4となる。
【0086】
また、図13に示す例の溝53のパターンも斜め格子状である。このパターンは、最大の面積を有する菱形の第1の単位枠54hが幅方向WDの中央に隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなし、この第1の単位枠54hの群の側縁に沿って、一辺の長さが第1の単位枠54hの1/2である菱形の第2の単位枠54iが隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなし、この第2の単位枠54iの群の側縁に沿って、一辺の長さが第1の単位枠54hの1/3である菱形の第3の単位枠54jが隙間なく並んで前後方向LDに続く群をなしたものである。この場合の単位枠54h~jの面積は最大を1とすると最小は1/9となる。
【0087】
溝53のパターンが格子状である場合、図10に示す例のように、サイド領域56Sにおける単位枠54の幅方向WDの寸法は、サイド領域56Sの幅方向WDの最小寸法の0.5倍以下、好適には0.3~0.5倍であると、サイド領域56Sには単位枠54が少なくとも1つ存在することになり、格子状パターンの位置が製造誤差で多少ずれたとしても、剛性向上及び拡散性向上の両面で特に好ましいものとなる。
【0088】
この場合、図10に示す例のように、両方のサイド領域56Sにおける溝53のパターンは、スリット56Lの側縁と溝53とからなるスリット隣接枠54m、吸収体56の側縁56eと溝53とからなる側縁隣接枠54n、並びに同一の寸法及び形状を有する完全な(欠落の無い)単位枠54のみからなり、各スリット隣接枠54mの面積及び各側縁隣接枠54nの面積が単位枠54の面積よりも小さいと、おむつが略U字状の断面形状となったときに、側壁の剛性が特に高くなることにより、尿受容空間SPが潰れにくくなるため好ましい。
【0089】
もちろん、サイド領域56Sにおいて、図12に示す例や図13に示す例のように、一部又は全部のスリット隣接枠54m(側縁隣接枠54nについても同様)の面積が単位枠54の面積より大きくてもよい。
【0090】
一方、センター領域56Cにおける溝53のパターンは、図示例のように、同一の寸法及び形状を有する完全な(欠落の無い)単位枠54を有することが好ましい。この場合、図示例のように、スリット56Lの側縁と溝53とからなるスリット隣接枠54mを有していてもよい。
【0091】
図示しないが、スリット56Lの側縁の方向・位置と溝53の方向・位置とを合わせることにより、サイド領域56S及びセンター領域56Cの少なくとも一方の溝53のパターンを、完全な(欠落の無い)単位枠54のみからなるパターンとすることもできる。
【0092】
他方、吸収体56の形状及びスリット56Lの形状については前述のとおりであるが、図14(a)に示すように、吸収体56の両側縁は前後方向LDに沿って直線的に延びているとともに、一対のスリット56Lは、前後方向LDの中間から前側及び後側にそれぞれ向かうにつれて、吸収体56の側縁56eに近づくように延びていると、おむつの股間部Mが略U字状の断面形状となった状態で、側壁が太ももの付根の内側にフィットしやすいだけでなく、側壁は前後両側に向かうにつれて高さが低くなり、折れにくくなるため、その近傍では尿受容空間SPが特に潰れにくいものとなる、という利点がある。
【0093】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0094】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0095】
・「表側」とは、着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは、着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0096】
・「表面」とは、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは、着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0097】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0098】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0099】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0100】
・吸収体56、吸収要素50、溝の底部51等の厚い部材の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ、型式H(測定範囲0~10mm、測定面積直径10mmの円形端子、測定力約1.7N、圧力約21.7KPa))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定する。
【0101】
・不織布等の薄いシートの「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm、及び加圧面積:2cmの条件下で自動測定する。
【0102】
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0103】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224-1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0104】
・「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0105】
・「最大伸び」とは、伸縮領域における伸縮方向の伸びの最大値(つまり弾性限界における伸び。展開状態の伸びに等しい)を意味し、展開状態の長さを自然長を100%としたときの百分率で表すものである。
【0106】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0107】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、上記例のパンツタイプ使い捨ておむつの他、テープタイプ使い捨ておむつ、パッドタイプ使い捨ておむつ等、使い捨ておむつ全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0109】
11…液不透過性シート、12A…サイドシール、12B…後外装体、12F…前外装体、12H…内側シート層、12S…外側シート層、12X…非伸縮領域、13…カバー不織布層、14…臀部カバー部、15…ウエスト下方弾性部材、16…臀部カバー弾性部材、17…ウエスト弾性部材、200…内装体、201…固定領域、30…トップシート、50…吸収要素、51…底部、52…非圧縮部、53…溝、54…単位枠、54m…スリット隣接枠、54n…側縁隣接枠、56…吸収体、56C…センター領域、56L…スリット、56S…サイド領域、58…包装シート、60…サイドフラップ、61…表面部分、62…裏面部分、631~633…ギャザー弾性部材、631…第1ギャザー弾性部材、632…第2ギャザー弾性部材、633…第3ギャザー弾性部材、64…液不透過性シート層、65…不織布不存在部分、66…サイド不織布、66r…折り返し部分、67…固定部、70…サイド非伸縮領域、80…平面ギャザー領域、A1…間欠伸縮帯、A2…連続伸縮帯、B…後身頃、BT…後胴周り部、F…前身頃、FT…前胴周り部、HM1…第1ホットメルト接着剤、HM2…第2ホットメルト接着剤、HM3…第3ホットメルト接着剤、L…中間領域、LD…前後方向、M…股間部、SP…尿受容空間、T…胴周り領域、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口、d1…第1の間隔、d2…第2の間隔、d3…第3の間隔、w1…第1の距離、w2…第2の距離、w3…固定部の幅方向の寸法、w4…第3の距離、w5…第4の距離。
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14