(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179961
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B60W 40/109 20120101AFI20241219BHJP
B60W 50/02 20120101ALI20241219BHJP
G01P 15/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60W40/109
B60W50/02
G01P15/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099312
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳久
(72)【発明者】
【氏名】木村 陽介
(72)【発明者】
【氏名】田中 智弥
(72)【発明者】
【氏名】江波 康文
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB10Z
3D241DB32Z
(57)【要約】
【課題】車輪速以外のパラメータに基づいて車輪の緩みの有無を判定する。
【解決手段】情報処理装置は、予め定められた規定期間に亘って、車両に搭載された加速度センサが検出する車両の左右加速度の実測値である実左右加速度を取得する(S31)。情報処理装置は、実左右加速度とは別のパラメータに基づいて、規定期間に亘って左右加速度の推定値である推定左右加速度を取得する(S31)。情報処理装置は、規定期間に亘って取得した推定左右加速度及び実左右加速度に基づいて、推定左右加速度に対する実左右加速度の誤差を算出する(S32)。情報処理装置は、算出した誤差が予め定められた規定値以上であることを条件に、車両の車輪の緩みが生じていると判定する(S33)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた規定期間に亘って、車両に搭載された加速度センサが検出する前記車両の左右加速度の実測値である実左右加速度を取得することと、
前記実左右加速度とは別のパラメータに基づいて、前記規定期間に亘って前記左右加速度の推定値である推定左右加速度を取得することと、
前記規定期間に亘って取得した前記推定左右加速度及び前記実左右加速度に基づいて、前記推定左右加速度に対する前記実左右加速度の誤差を算出することと、
算出した前記誤差が予め定められた規定値以上であることを条件に、前記車両の車輪の緩みが生じていると判定することと、
を実行する
情報処理装置。
【請求項2】
前記規定値を第1規定値としたとき、
算出した前記誤差が前記第1規定値未満である場合に、前記車輪の緩みが生じていない第1状態であると判定することと、
算出した前記誤差が前記第1規定値以上であり、且つ、前記第1規定値よりも大きい値として予め定められた第2規定値未満である場合に、前記車輪の緩みが生じている第2状態であると判定することと、
算出した前記誤差が前記第2規定値以上である場合に、前記第2状態よりも前記車輪の緩みの程度が大きい第3状態であると判定することと、
を実行する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記車輪の緩みの程度を判定する度に、当該緩みの程度を記憶することと、
新たに判定した緩みの程度が、記憶された過去の緩みの程度よりも大きい場合には、新たに判定した緩みの程度に、当該判定をしたときの日時の情報を紐づけて記憶することと、
を実行する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記車輪の緩みが生じているか否かの判定結果を含む判定情報を、外部に送信すること、
を実行する
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記誤差を、加速度誤差としたとき、
前記規定期間に亘って前記車両の右前車輪の回転速度を取得することと、
前記規定期間に亘って前記車両の左前車輪の回転速度を取得することと、
前記規定期間に亘って前記車両の右後車輪の回転速度を取得することと、
前記規定期間に亘って前記車両の左後車輪の回転速度を取得することと、
前記規定期間に亘って取得した前記右前車輪の回転速度及び前記左前車輪の回転速度に基づいて、前記右前車輪の回転速度及び前記左前車輪の回転速度の誤差である第1車輪速誤差を算出することと、
前記規定期間に亘って取得した前記右後車輪の回転速度及び前記左後車輪の回転速度に基づいて、前記右後車輪の回転速度及び前記左後車輪の回転速度の誤差である第2車輪速誤差を算出することと、
前記規定期間に亘って取得した前記右前車輪の回転速度及び前記右後車輪の回転速度に基づいて、前記右前車輪の回転速度及び前記右後車輪の回転速度の誤差である第3車輪速誤差を算出することと、
前記規定期間に亘って取得した前記左前車輪の回転速度及び前記左後車輪の回転速度に基づいて、前記左前車輪の回転速度及び前記左後車輪の回転速度の誤差である第4車輪速誤差を算出することと、
算出した前記第1車輪速誤差、前記第2車輪速誤差、前記第3車輪速誤差、前記第4車輪速誤差のうち、上位2つの値を特定することと、
算出した前記加速度誤差が前記規定値以上であることを条件に、前記右前車輪、前記左前車輪、前記右後車輪、及び前記左後車輪のうち、特定した上位2つの値に関わる前記車輪を、前記車輪の緩みが生じている可能性が最も高い前記車輪として特定することと、
を実行する
請求項1に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車輪が車両の車軸に適切に固定されていないこと、すなわち車輪の緩みを検出する方法を開示している。特許文献1の緩み検出方法では、一定期間に亘って車両の車輪の回転速度を示す車輪速度信号を取得する。また、緩み検出方法では、取得した車輪速度信号を補正した補正信号を算出する。さらに、緩み検出方法では、算出した補正信号にローパスフィルタをかけた信号を算出する。また、緩み検出方法では、補正信号、及び補正信号にローパスフィルタをかけた信号に基づいて、ローパスフィルタをかけた信号に対する補正信号の誤差を算出する。そして、緩み検出方法では、算出した誤差に基づいて、車両の車輪の緩みが生じているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の緩み検出方法では、車輪の回転速度に基づいて車両の車輪の緩みの有無を判定する。その一方で、特許文献1は、車輪の回転速度以外のパラメータに基づいて車輪の緩みを判定することについて何ら着目していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための情報処理装置は、予め定められた規定期間に亘って、車両に搭載された加速度センサが検出する前記車両の左右加速度の実測値である実左右加速度を取得することと、前記実左右加速度とは別のパラメータに基づいて、前記規定期間に亘って前記左右加速度の推定値である推定左右加速度を取得することと、前記規定期間に亘って取得した前記推定左右加速度及び前記実左右加速度に基づいて、前記推定左右加速度に対する前記実左右加速度の誤差を算出することと、算出した前記誤差が予め定められた規定値以上であることを条件に、前記車両の車輪の緩みが生じていると判定することと、を実行する。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、推定左右加速度に対する実左右加速度の誤差に基づいて車輪の緩みの有無を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、情報処理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、運動マネージャの基本構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、収集制御、判定制御、及び配信制御を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<情報処理システムの概略構成>
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図3にしたがって説明する。先ず、情報処理システムISの概略構成について説明する。
【0009】
図1に示すように、情報処理システムISは、複数の車両100を備えている。車両100の一例は、4つの車輪を備える普通自動車である。したがって、車両100は、右前車輪、左前車輪、右後車輪、及び左後車輪の合計4つの車輪を備えている。なお、
図1では、1つの車両100のみを代表して図示している。
【0010】
車両100は、パワートレイン装置71、ステアリング装置72、及びブレーキ装置73を備えている。
パワートレイン装置71は、エンジン、モータジェネレータ、及びトランスミッション等を含んでいる。エンジンは、トランスミッションを介して車両100の駆動輪へと駆動力を付与可能である。また、モータジェネレータは、トランスミッションを介して車両100の駆動輪へと駆動力を付与可能である。
【0011】
ステアリング装置72の一例は、ラック&ピニオン式の電動ステアリング装置である。ステアリング装置72は、図示しないラック及びピニオンを制御することにより、車両100の転舵輪の向きを変更可能である。
【0012】
ブレーキ装置73は、車両100の車輪を機械的に制動する、いわゆる機械式のブレーキ装置である。本実施形態において、ブレーキ装置73の一例は、ディスクブレーキである。
【0013】
図1に示すように、車両100は、セントラルECU10、パワートレインECU20、ステアリングECU30、ブレーキECU40、及び先進運転支援ECU50を備えている。また、車両100は、第1外部バス61、第2外部バス62、第3外部バス63、第4外部バス64、及び第5外部バス65を備えている。なお、「ECU」は、Electronic Control Unitの略称である。
【0014】
セントラルECU10は、車両100の全体を統括して制御する。セントラルECU10は、実行装置11、及び記憶装置12を備えている。実行装置11の一例は、CPUである。記憶装置12は、読み出しのみが可能なROMと、読み出し及び書き込みが可能な揮発性のRAMと、読み出し及び書き込みが可能な不揮発性のストレージとを含んでいる。記憶装置12は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。実行装置11は、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより、各種の処理を実現する。
【0015】
パワートレインECU20は、第1外部バス61を介してセントラルECU10と通信可能である。パワートレインECU20は、パワートレイン装置71に制御信号を出力することにより、パワートレイン装置71を制御する。パワートレインECU20は、実行装置21、及び記憶装置22を備えている。実行装置21の一例は、CPUである。記憶装置22は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶装置22は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置22は、各種のプログラムの一つとして、パワートレインアプリ23Aを予め記憶している。パワートレインアプリ23Aは、パワートレイン装置71を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。実行装置21は、記憶装置22に記憶されたパワートレインアプリ23Aを実行することにより、後述するパワートレイン制御部23としての機能を実現する。
【0016】
ステアリングECU30は、第2外部バス62を介してセントラルECU10と通信可能である。ステアリングECU30は、ステアリング装置72に制御信号を出力することにより、ステアリング装置72を制御する。ステアリングECU30は、実行装置31、及び記憶装置32を備えている。実行装置31の一例は、CPUである。記憶装置32は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶装置32は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置32は、各種のプログラムの一つとして、ステアリングアプリ33Aを予め記憶している。ステアリングアプリ33Aは、ステアリング装置72を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。実行装置31は、記憶装置32に記憶されたステアリングアプリ33Aを実行することにより、後述するステアリング制御部33としての機能を実現する。
【0017】
ブレーキECU40は、第3外部バス63を介してセントラルECU10と通信可能である。ブレーキECU40は、ブレーキ装置73に制御信号を出力することにより、ブレーキ装置73を制御する。ブレーキECU40は、実行装置41、及び記憶装置42を備えている。実行装置41の一例は、CPUである。記憶装置42は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶装置42は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。また、記憶装置42は、各種のプログラムの一つとして、ブレーキアプリ43Aを予め記憶している。ブレーキアプリ43Aは、ブレーキ装置73を制御するためのアプリケーションソフトウェアである。さらに、記憶装置42は、各種のプログラムの一つとして、運動マネージャアプリ45Aを予め記憶している。運動マネージャアプリ45Aは、複数の運動要求を調停するためのアプリケーションソフトウェアである。実行装置41は、記憶装置42に記憶されたブレーキアプリ43Aを実行することにより、後述するブレーキ制御部43としての機能を実現する。また、実行装置41は、記憶装置42に記憶された運動マネージャアプリ45Aを実行することにより、後述する運動マネージャ45としての機能を実現する。
【0018】
先進運転支援ECU50は、第4外部バス64を介してセントラルECU10と通信可能である。先進運転支援ECU50は、各種の運転支援を実行する。先進運転支援ECU50は、実行装置51、及び記憶装置52を備えている。実行装置51の一例は、CPUである。記憶装置52は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶装置52は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。各種のプログラムは、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、及び第3支援アプリ58Aを含んでいる。第1支援アプリ56Aの一例は、車両100への衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキ、いわゆるAEB(Autonomous Emergency Braking)用のアプリケーションソフトウェアである。第2支援アプリ57Aの一例は、車両100が走行している車線の維持を行う車線維持支援、いわゆるLKA(Lane Keeping Assist)用のアプリケーションソフトウェアである。第3支援アプリ58Aの一例は、車両100に先行して走行する先行車両との車間距離を一定に保ちながら走行する追従走行、いわゆるACC(Adaptive Cruise Control)用のアプリケーションソフトウェアである。本実施形態において、第1支援アプリ56A、第2支援アプリ57A、及び第3支援アプリ58Aのそれぞれは、車両100の運転支援機能を実現するアプリケーションソフトウェアである。実行装置51は、記憶装置52に記憶された第1支援アプリ56Aを実行することにより、後述する第1支援部56としての機能を実現する。また、実行装置51は、記憶装置52に記憶された第2支援アプリ57Aを実行することにより、後述する第2支援部57としての機能を実現する。実行装置51は、記憶装置52に記憶された第3支援アプリ58Aを実行することにより、後述する第3支援部58としての機能を実現する。
【0019】
図1に示すように、車両100は、加速度センサ81、車輪速センサ82、及びGNSS受信機83を備えている。また、車両100は、アクセル操作量センサ86、ステアリング角センサ87、及びブレーキ操作量センサ88を備えている。
【0020】
加速度センサ81は、いわゆる三軸センサである。すなわち、加速度センサ81は、前後加速度GX、左右加速度GY、及び上下加速度GZを検出可能である。前後加速度GXは、車両100の前後軸に沿う加速度である。左右加速度GYは、車両100の左右軸に沿う加速度である。上下加速度GZは、車両100の上下軸に沿う加速度である。本実施形態において、左右加速度GYは、加速度センサ81が検出する車両100の左右加速度の実測値、すなわち実左右加速度である。
【0021】
車輪速センサ82は、車両100の車輪の回転速度である車輪速WSを検出する。車輪速センサ82は、車両100の各車輪の近傍に位置している。本実施形態において、車両100は、当該車両100が備える4つの車輪に対応して4つの車輪速センサ82を備えている。なお、
図1では、1つの車輪速センサ82のみを代表して図示している。
【0022】
GNSS受信機83は、図示しないGNSS用の衛星との通信により車両100が位置する地点の座標である位置座標PCを検出する。なお、「GNSS」は、Global Navigation Satellite Systemの略称である。
【0023】
アクセル操作量センサ86は、運転者が操作するアクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCを検出する。ステアリング角センサ87は、運転者が操作するステアリングホイールの角度位置であるステアリング角SAを検出する。ブレーキ操作量センサ88は、運転者が操作するブレーキペダルの操作量であるブレーキ操作量BRAを検出する。
【0024】
パワートレインECU20は、アクセル操作量センサ86からアクセル操作量ACCを示す信号を取得する。ステアリングECU30は、ステアリング角センサ87からステアリング角SAを示す信号を取得する。ブレーキECU40は、加速度センサ81から前後加速度GX、左右加速度GY、及び上下加速度GZを示す信号を取得する。また、ブレーキECU40は、GNSS受信機83から位置座標PCを示す信号を取得する。ブレーキECU40は、4つの車輪速センサ82から4つの車輪速WSを示す信号を取得する。ブレーキECU40は、ブレーキ操作量センサ88からブレーキ操作量BRAを示す信号を取得する。なお、ブレーキECU40は、セントラルECU10を介して、アクセル操作量ACC及びステアリング角SAを含む各種の値を取得可能である。
【0025】
ブレーキECU40は、予め定められた制御周期毎に、車両100の速度である車速SPを算出する。例えば、ブレーキECU40は、4つの車輪速WSの平均値に予め定められた係数を乗算することにより車速SPを算出する。すなわち、ブレーキECU40は、車速SPを取得可能である。
【0026】
図1に示すように、車両100は、DCM91、及びディスプレイ92を備えている。DCM91は、第5外部バス65を介してセントラルECU10と接続している。DCM91は、通信ネットワークNWを介して車両100の外部の機器と無線通信可能である。なお、「DCM」は、Data Communication Moduleの略称である。ディスプレイ92は、セントラルECU10と接続している。ディスプレイ92は、セントラルECU10から出力される画像データに基づき各種の情報を表示可能である。
【0027】
図1に示すように、情報処理システムISは、サーバ200を備えている。サーバ200は、実行部210、記憶部220、及び通信部230を備えている。通信部230は、通信ネットワークNWを介してサーバ200の外部の機器と通信可能である。記憶部220は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶部220は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。実行部210の一例は、CPUである。実行部210は、記憶部220に記憶された各種のプログラムを実行することにより、各種の処理を実現する。本実施形態において、サーバ200は、情報処理装置の一例である。
【0028】
図1に示すように、情報処理システムISは、複数の個人端末300を備えている。個人端末300の一例は、車両100のユーザが所有する携帯端末、いわゆるスマートフォンである。なお、
図1では、1つの個人端末300のみを代表して図示している。個人端末300は、実行部310、記憶部320、及び通信部330を備えている。通信部330は、通信ネットワークNWを介して個人端末300の外部の機器と通信可能である。記憶部320は、ROM、RAM、及びストレージを含んでいる。記憶部320は、各種のプログラム及び各種のデータを予め記憶している。実行部310の一例は、CPUである。実行部310は、記憶部320に記憶された各種のプログラムを実行することにより、各種の処理を実現する。
【0029】
<運動マネージャに関する基本構成>
次に、
図2を参照して、運動マネージャ45に関する基本的な構成を説明する。
図2に示すように、運動マネージャ45は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58と互いに通信可能である。また、運動マネージャ45は、パワートレイン制御部23、ステアリング制御部33、及びブレーキ制御部43と互いに通信可能である。
【0030】
第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58は、各種の制御を実行するにあたって、運動マネージャ45に対して運動要求を出力する。このとき、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58は、例えば各種の制御が必要になってからその制御が必要でなくなるまで運動要求の出力を継続する。ここで、運動要求は、車両100の前後軸に沿う加速度を制御するための要求前後加速度GXR等を含んでいる。
【0031】
運動マネージャ45は、第1支援部56、第2支援部57、及び第3支援部58からの運動要求として要求前後加速度GXRを受け付ける。また、運動マネージャ45は、受け付けた要求前後加速度GXRを調停する。例えば、運動マネージャ45が複数の支援部から要求前後加速度GXRを受け付けたときには、運動マネージャ45は、受け付けたタイミングが最も早かった要求前後加速度GXRを調停結果として選択する。また、例えば、運動マネージャ45が複数の支援部から要求前後加速度GXRを受け付けたときには、運動マネージャ45は、最も小さい要求前後加速度GXRを調停結果として選択する。このように、運動マネージャ45は、車両100の運転状況に応じて予め定められたルールに従って、運動要求を調停する。
【0032】
運動マネージャ45は、調停結果として選択した要求前後加速度GXRに基づいて、各種のアクチュエータを制御するための動作要求の指示信号を生成する。ここで、各種のアクチュエータは、パワートレイン装置71、ステアリング装置72、及びブレーキ装置73等である。例えばパワートレイン装置71を制御させる場合、運動マネージャ45は、パワートレイン制御部23に対して動作要求の指示信号を出力する。そして、パワートレイン制御部23は、動作要求の指示信号に基づいて、パワートレイン装置71に制御信号を出力する。このように、運動マネージャ45が出力した指示信号は、制御しようとするアクチュエータに対応する制御部に受信され、当該制御部によりアクチュエータが制御される。
【0033】
パワートレイン制御部23、ステアリング制御部33、及びブレーキ制御部43の各々は、運動マネージャ45からの動作要求の指示信号に加えて、車両100の運転者からの動作要求の指示信号を受信可能である。そして、パワートレイン制御部23、ステアリング制御部33、及びブレーキ制御部43は、車両100の運転者からの動作要求の指示信号を受信している場合、その車両100の運転者からの動作要求の指示信号に基づいて、アクチュエータに制御信号を出力する。つまり、車両100の運転者からの動作要求の指示信号を受信している場合、各制御部は、運動マネージャ45からの動作要求の指示信号を無効にする。なお、パワートレイン制御部23は、運転者の操作に基づいてアクチュエータを制御するための動作要求の指示信号として、アクセル操作量センサ86からのアクセル操作量ACCを受信可能である。また、ステアリング制御部33は、運転者の操作に基づいてアクチュエータを制御するための動作要求の指示信号として、ステアリング角センサ87からのステアリング角SAを受信可能である。さらに、ブレーキ制御部43は、運転者の操作に基づいてアクチュエータを制御するための動作要求の指示信号として、ブレーキ操作量センサ88からのブレーキ操作量BRAを受信可能である。
【0034】
<収集制御>
次に、
図3を参照して、車両100及びサーバ200が実行する収集制御について説明する。この収集制御は、サーバ200が車両100から各種の値を収集するための制御である。収集制御は、複数の車両100と、1つのサーバ200との間で、それぞれ並行して実行される。本実施形態において、車両100の運動マネージャ45は、予め定められた制御周期毎に、収集制御を実行する。
【0035】
図3に示すように、車両100の運動マネージャ45は、収集制御を開始すると、ステップS11の処理を実行する。ステップS11において、運動マネージャ45は、予め定められた前提条件を満たしているか否かを判定する。本実施形態において、運動マネージャ45は、以下の要件(1)~要件(4)を全て満たす場合に、前提条件を満たしていると判定する。
【0036】
要件(1):各種のセンサが正常であり、且つ、各種のECUが正常であること。
要件(2):車速SPの単位時間当たりの変化量が予め定められた基準変化量以下であること。
【0037】
要件(3):ステアリング角SAの単位時間当たりの変化量が予め定められた特定変化量以下であること。
要件(4):車速SPが予め定められた基準速度領域の範囲内であること。
【0038】
ここで、基準速度領域は、実験及びシミュレーション等により、後述する判定制御での判定の精度を担保するための車速SPの領域として予め定められている。なお、基準速度領域の一例は、十数km/h~数十km/h程度である。
【0039】
ステップS11において、前提条件を満たしていないと運動マネージャ45が判定した場合、運動マネージャ45は、今回の収集制御を終了する。一方、ステップS11において、前提条件を満たしていると運動マネージャ45が判定した場合、運動マネージャ45は、処理をステップS12に進める。
【0040】
ステップS12において、運動マネージャ45は、収集データDCを生成する。本実施形態において、運動マネージャ45は、車速SP、ステアリング角SA、左右加速度GY、4つの車輪速WS等を含むデータを、収集データDCとして生成する。ステップS12の後、運動マネージャ45は、処理をステップS13に進める。
【0041】
ステップS13において、車両100の運動マネージャ45は、収集データDCを、サーバ200に送信する。その結果、サーバ200の実行部210は、収集データDCを取得する。このとき、サーバ200の実行部210は、取得した収集データDCを記憶部220に記憶する。なお、収集制御が繰り返し実行されることにより、サーバ200の実行部210は、各車両100から送信された収集データDCを時系列で取得可能である。ステップS13の後、サーバ200の実行部210は、今回の収集制御を終了する。
【0042】
<判定制御>
次に、
図3を参照して、サーバ200が実行する判定制御について説明する。この判定制御は、車両100の車輪の緩みが生じているか否かを判定するための制御である。本実施形態において、サーバ200の実行部210は、上記の収集制御により、同一の車両100から、予め定められた規定期間に亘って収集データDCを連続して取得できたことを条件に、判定制御を実行する。ここで、規定期間の一例は、数秒~十数秒程度である。
【0043】
図3に示すように、サーバ200の実行部210は、判定制御を開始すると、ステップS31の処理を実行する。ステップS31において、実行部210は、規定期間の収集データDCから、規定期間の左右加速度GYを取得する。なお、本実施形態において、車両100が左旋回している場合、左右加速度GYは正の値になる。一方、車両100が右旋回している場合、左右加速度GYは負の値になる。
【0044】
また、実行部210は、規定期間の収集データDCから、規定期間のステアリング角SA及び車速SPを取得する。そして、実行部210は、ステアリング角SA及び車速SPに基づいて、車両100の左右加速度の推定値である推定左右加速度GYEを算出する。例えば、車両100が左旋回しているようなステアリング角SAの場合、推定左右加速度GYEは正の値になる。一方、例えば、車両100が右旋回しているようなステアリング角SAの場合、推定左右加速度GYEは負の値になる。なお、実行部210は、規定期間に亘って推定左右加速度GYEを算出する。本実施形態において、推定左右加速度GYEは、左右加速度GYとは別のパラメータであるステアリング角SA及び車速SPに基づいて取得された車両100の左右加速度の推定値である。
【0045】
さらに、実行部210は、規定期間の収集データDCから、規定期間の4つの車輪速WSを取得する。換言すると、実行部210は、規定期間に亘って、車両100の右前車輪、左前車輪、右後車輪、及び左後車輪の車輪速WSを取得する。ステップS31の後、実行部210は、処理をステップS32に進める。
【0046】
ステップS32において、実行部210は、規定期間に亘って取得した推定左右加速度GYE及び左右加速度GYに基づいて、推定左右加速度GYEに対する左右加速度GYの平均二乗誤差である加速度誤差DGを算出する。上述したとおり、収集データDCは、予め定められた制御周期毎に取得される。そのため、規定期間内の推定左右加速度GYE及び左右加速度GYは、上記制御周期毎の値として複数存在する。以下では、規定期間内の推定左右加速度GYE及び左右加速度GYとしてそれぞれN個のデータが存在するものとする。なお、「N」は2以上の整数である。また、N個のデータのうち古いものから順に、第1時点のデータ、第2時点のデータ、・・・第N時点のデータとする。ステップS32において、実行部210は、第1時点の推定左右加速度GYEと第1時点の左右加速度GYとの差を二乗した値を算出する。また、実行部210は、第2時点の推定左右加速度GYEと第2時点の左右加速度GYとの差を二乗した値を算出する。上と同様に、実行部210は、第3時点~第N時点について、推定左右加速度GYEと左右加速度GYとの差を二乗した値を算出する。そして、実行部210は、上記のように算出したN個の値の平均値を、加速度誤差DGとして算出する。本実施形態において、加速度誤差DGは、推定左右加速度GYEに対する左右加速度GYの誤差の一例である。ステップS32の後、実行部210は、処理をステップS33に進める。
【0047】
ステップS33において、実行部210は、加速度誤差DGに基づいて、車両100の車輪の緩みの程度を判定する。具体的には、実行部210は、以下のように車輪の緩みの程度を判定する。ここで、実行部210は、予め定められた第1規定値A1、第2規定値A2、及び第3規定値A3を用いる。第2規定値A2は、第1規定値A1よりも大きい値である。また、第3規定値A3は、第2規定値A2よりも大きい値である。なお、第1規定値A1、第2規定値A2、第3規定値A3は、実験及びシミュレーション等により、車輪の緩みの程度を判定するための閾値として予め定められている。
【0048】
実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1未満である場合に、車輪の緩みが生じていない第1状態であると判定する。また、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1以上であり、且つ、第2規定値A2未満である場合に、車輪の緩みが生じている第2状態であると判定する。実行部210は、加速度誤差DGが第2規定値A2以上であり、且つ、第3規定値A3未満である場合に、車輪の緩みが生じている第3状態であると判定する。この第3状態は、第2状態よりも車輪の緩みの程度が大きい状態である。また、実行部210は、加速度誤差DGが第3規定値A3以上である場合に、車輪の緩みが生じている第4状態であると判定する。この第4状態は、第3状態よりも車輪の緩みの程度が大きい状態である。このように、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1未満である場合に、車輪の緩みが生じていないと判定する。また、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1以上である場合に、車輪の緩みが生じていると判定する。
【0049】
実行部210は、車輪の緩みの程度を判定する度に、当該緩みの程度を記憶部220に記憶する。さらに、実行部210は、新たに判定した緩みの程度が、記憶部220に記憶された過去の緩みの程度よりも大きい場合には、新たに判定した緩みの程度に、当該判定をしたときの日時の情報を紐づけて記憶部220に記憶する。例えば、記憶部220に記憶された過去の緩みの程度の最大値が第2状態であるとする。この場合、ステップS33において、実行部210は、車輪の緩みの程度が第3状態又は第4状態であると判定した場合には、新たに判定した緩みの程度に、当該判定をしたときの日時の情報を紐づけて記憶部220に記憶する。ステップS33の後、実行部210は、処理をステップS34に進める。
【0050】
ステップS34において、実行部210は、規定期間に亘って取得した車両100の右前車輪の車輪速WS及び左前車輪の車輪速WSに基づいて、右前車輪の車輪速WS及び左前車輪の車輪速WSの平均二乗誤差である第1車輪速誤差DW1を算出する。具体的には、実行部210は、第1時点の右前車輪の車輪速WSと、第1時点の左前車輪の車輪速WSとの差を二乗した値を算出する。また、実行部210は、第2時点の右前車輪の車輪速WSと、第2時点の左前車輪の車輪速WSとの差を二乗した値を算出する。上と同様に、実行部210は、第3時点~第N時点について、右前車輪の車輪速WSと、左前車輪の車輪速WSとの差を二乗した値を算出する。そして、実行部210は、上記のように算出したN個の値の平均値を、第1車輪速誤差DW1として算出する。本実施形態において、第1車輪速誤差DW1は、右前車輪の車輪速WS及び左前車輪の車輪速WSの誤差の一例である。
【0051】
上と同じ要領で、実行部210は、規定期間に亘って取得した車両100の右後車輪の車輪速WS及び左後車輪の車輪速WSに基づいて、右後車輪の車輪速WS及び左後車輪の車輪速WSの平均二乗誤差である第2車輪速誤差DW2を算出する。本実施形態において、第2車輪速誤差DW2は、右後車輪の車輪速WS及び左後車輪の車輪速WSの誤差の一例である。また、実行部210は、規定期間に亘って取得した車両100の右前車輪の車輪速WS及び右後車輪の車輪速WSに基づいて、右前車輪の車輪速WS及び右後車輪の車輪速WSの平均二乗誤差である第3車輪速誤差DW3を算出する。本実施形態において、第3車輪速誤差DW3は、右前車輪の車輪速WS及び右後車輪の車輪速WSの誤差の一例である。さらに、実行部210は、規定期間に亘って取得した車両100の左前車輪の車輪速WS及び左後車輪の車輪速WSに基づいて、左前車輪の車輪速WS及び左後車輪の車輪速WSの平均二乗誤差である第4車輪速誤差DW4を算出する。本実施形態において、第4車輪速誤差DW4は、左前車輪の車輪速WS及び左後車輪の車輪速WSの誤差の一例である。ステップS34の後、実行部210は、処理をステップS35に進める。
【0052】
ステップS35において、実行部210は、第1車輪速誤差DW1、第2車輪速誤差DW2、第3車輪速誤差DW3、及び第4車輪速誤差DW4に基づいて、車両100の車輪の緩みが生じている可能性が最も高い車輪を特定する。具体的には、実行部210は、第1車輪速誤差DW1、第2車輪速誤差DW2、第3車輪速誤差DW3、及び第4車輪速誤差DW4のうち、上位2つの値を特定する。ここでいう上位とは、値が大きいことである。そして、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1以上であることを条件に、車両100の右前車輪、左前車輪、右後車輪、及び左後車輪のうち、上で特定した上位2つの値に関わる車輪を、車輪の緩みが生じている可能性が最も高い車輪として特定する。例えば、上で特定した上位2つの値が、第1車輪速誤差DW1及び第3車輪速誤差DW3であるとする。この場合、第1車輪速誤差DW1及び第3車輪速誤差DW3を算出するにあたっては、いずれも右前車輪の車輪速WSを用いている。したがって、この例においては、実行部210は、上で特定した上位2つの値に関わる車輪である右前車輪を、車輪の緩みが生じている可能性が最も高い車輪として特定する。なお、実行部210は、上で特定した上位2つの値に関わる車輪が存在しない場合、特定不可と判定する。ステップS35の後、実行部210は、今回の判定制御を終了する。
【0053】
<配信制御>
次に、
図3を参照して、個人端末300及びサーバ200が実行する配信制御について説明する。この配信制御は、サーバ200から個人端末300に判定情報IJを送信するための制御である。なお、判定情報IJの詳細は後述する。配信制御は、複数の個人端末300と、1つのサーバ200との間で、それぞれ並行して実行される。なお、車両100と、その車両100の個人端末300とは、予め紐づけられている。本実施形態において、車両100のユーザが個人端末300を操作することにより配信制御の実行を要求する度に、個人端末300の実行部310は、配信制御を実行する。
【0054】
図3に示すように、個人端末300の実行部310は、配信制御を開始すると、ステップS51の処理を実行する。ステップS51において、個人端末300の実行部310は、判定情報IJの送信を要求するための要求信号を、サーバ200に送信する。そして、サーバ200の実行部210が要求信号を受信した場合、サーバ200の実行部210は、処理をステップS52に進める。
【0055】
ステップS52において、サーバ200の実行部210は、判定情報IJを生成する。具体的には、実行部210は、ステップS33の判定結果、及びステップS35の特定結果を含む情報を、判定情報IJとして生成する。すなわち、判定情報IJは、車両100の車輪の緩みが生じているか否かの判定結果を含んでいる。ステップS52の後、実行部210は、処理をステップS53に進める。
【0056】
ステップS53において、サーバ200の実行部210は、判定情報IJを、個人端末300に送信する。その結果、個人端末300の実行部310は、判定情報IJを取得する。このとき、個人端末300の実行部310は、個人端末300のディスプレイ等を介して判定情報IJを車両100のユーザに報知する。ステップS53の後、個人端末300の実行部310は、今回の配信制御を終了する。
【0057】
<本実施形態の作用>
例えば、車両100において、車輪をハブに固定するためのナットに緩みが生じているとする。このような車両100の車輪の緩みが生じると、車両100が走行する際に当該車両100の挙動が乱れやすい。そのため、ステアリング角SA等に基づいて導き出される車両100の左右加速度の推定値である推定左右加速度GYEと、加速度センサ81が検出する車両100の左右加速度の実測値である左右加速度GYとが乖離する機会が多くなる。その結果、車両100の車輪の緩みが生じることに起因して、推定左右加速度GYEに対する左右加速度GYの平均二乗誤差である加速度誤差DGが大きくなる。
【0058】
<本実施形態の効果>
(1)判定制御のステップS32において、サーバ200の実行部210は、規定期間に亘って取得した推定左右加速度GYE及び左右加速度GYに基づいて、推定左右加速度GYEに対する左右加速度GYの平均二乗誤差である加速度誤差DGを算出する。そして、ステップS33において、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1以上である場合に、車両100の車輪の緩みが生じていると判定する。その結果、加速度誤差DGに基づくことにより車輪の緩みの有無を判定できる。
【0059】
(2)判定制御のステップS33において、サーバ200の実行部210は、加速度誤差DGに基づいて、車両100の車輪の緩みの程度を判定する。具体的には、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1未満である場合に、車輪の緩みが生じていない第1状態であると判定する。また、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1以上であり、且つ、第2規定値A2未満である場合に、車輪の緩みが生じている第2状態であると判定する。さらに、実行部210は、加速度誤差DGが第2規定値A2以上であり、且つ、第3規定値A3未満である場合に、第2状態よりも車輪の緩みの程度が大きい第3状態であると判定する。また、実行部210は、加速度誤差DGが第3規定値A3以上である場合に、第3状態よりも車輪の緩みの程度が大きい第4状態であると判定する。このように、車輪の緩みの程度を、緩みが生じている又は生じていないという2段階ではなく、3段階以上で判定することで、より精密で使いがってのよい判定結果を得られる。
【0060】
(3)判定制御のステップS33において、サーバ200の実行部210は、車輪の緩みの程度を判定する度に、当該緩みの程度を記憶部220に記憶する。さらに、実行部210は、新たに判定した緩みの程度が、記憶部220に記憶された過去の緩みの程度よりも大きい場合には、新たに判定した緩みの程度に、当該判定をしたときの日時の情報を紐づけて記憶部220に記憶する。そのため、車輪の緩みの程度が大きくなったときには、そのときの日時の情報が記憶部220に記憶される。これにより、車輪の緩みの程度が大きくなったときの日時の情報に基づいて、例えば車両100のメンテナンスを行うべき時期を特定でき得る。
【0061】
(4)例えば、車両100の右前車輪、左前車輪、右後車輪、及び左後車輪のうち、右前車輪の緩みが生じているとする。この場合、右前車輪の車輪速WS及び左前車輪の車輪速WSの乖離が生じることで、右前車輪の車輪速WS及び左前車輪の車輪速WSの平均二乗誤差である第1車輪速誤差DW1が大きくなりやすい。同様に、右前車輪の車輪速WS及び右後車輪の車輪速WSの乖離が生じることで、右前車輪の車輪速WS及び右後車輪の車輪速WSの平均二乗誤差である第3車輪速誤差DW3が大きくなりやすい。その結果、第1車輪速誤差DW1及び第3車輪速誤差DW3は、第2車輪速誤差DW2及び第4車輪速誤差DW4に比べて大きくなる。
【0062】
この点、判定制御のステップS35において、サーバ200の実行部210は、第1車輪速誤差DW1、第2車輪速誤差DW2、第3車輪速誤差DW3、及び第4車輪速誤差DW4のうち、上位2つの値を特定する。そして、実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1以上であることを条件に、車両100の右前車輪、左前車輪、右後車輪、及び左後車輪のうち、上で特定した上位2つの値に関わる車輪を、車輪の緩みが生じている可能性が最も高い車輪として特定する。これにより、車輪の緩みが生じている可能性が最も高い車輪を特定できる。
【0063】
(5)配信制御のステップS53において、サーバ200の実行部210は、判定情報IJを、個人端末300に送信する。ここで、判定情報IJは、ステップS33の判定結果、及びステップS35の特定結果を含んでいる。こうしてサーバ200から判定情報IJが送信されれば、例えば車両100のユーザは、個人端末300のディスプレイ等を介して、判定情報IJに含まれる車輪の緩みが生じているか否かの判定結果等を把握できる。
【0064】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0065】
・上記実施形態において、収集制御は変更してもよい。
例えば、収集制御において、車両100の運動マネージャ45は、ステップS31~ステップS35の処理を実行してもよい。具体例として、運動マネージャ45は、ステップS12の後に、ステップS12で生成された収集データDCに基づいて、ステップS31~ステップS35の処理を実行してもよい。なお、この構成において、運動マネージャ45は、ステップS33の判定結果、ステップS35の特定結果等の情報を、車両100の外部に送信してもよい。また、この構成において、ブレーキECU40は、情報処理装置に相当する。
【0066】
・上記実施形態において、判定制御は変更してもよい。
例えば、ステップS31において、推定左右加速度GYEを算出する構成は変更してもよい。具体例として、運動マネージャ45が第1支援部56等から受け付けた運動要求に応じて車両100が旋回する場合には、運動マネージャ45は、運動要求として、舵角、ヨーレート、及び回転半径等の1つ以上の要求値を第1支援部56等から受け付ける。したがって、上記の状況において、実行部210は、舵角、ヨーレート、及び回転半径等の1つ以上の要求値に基づいて、推定左右加速度GYEを算出してもよい。
【0067】
・例えば、ステップS32において、加速度誤差DGを算出する構成は変更してもよい。具体例として、サーバ200の実行部210は、第N時点の推定左右加速度GYEと第N時点の左右加速度GYとの差の絶対値を、加速度誤差DGとして算出してもよい。すなわち、推定左右加速度GYEに対する左右加速度GYの誤差を示す値として加速度誤差DGを算出できれば、加速度誤差DGを算出する構成は変更してもよい。
【0068】
・例えば、ステップS33において、サーバ200の実行部210は、車輪の緩みの程度を判定する度に、常に、新たに判定した緩みの程度に対して、当該判定をしたときの日時の情報を紐づけて記憶部220に記憶してもよい。また、例えば、サーバ200の実行部210は、新たに判定した緩みの程度に、当該判定をしたときの日時の情報を紐づけて記憶部220に記憶しなくてもよい。
【0069】
・例えば、ステップS33において、第2規定値A2及び第3規定値A3を用いた判定を省略してもよい。換言すると、サーバ200の実行部210は、加速度誤差DGが第1規定値A1以上であるか否かの判定をすることで、車両100の車輪の緩みが生じているか否かの判定のみを実行してもよい。
【0070】
・例えば、ステップS34において、第1車輪速誤差DW1を算出する構成は変更してもよい。具体例として、サーバ200の実行部210は、第N時点の右前車輪の車輪速WSと、第N時点の左前車輪の車輪速WSとの差の絶対値を、第1車輪速誤差DW1として算出してもよい。すなわち、右前車輪の車輪速WS及び左前車輪の車輪速WSの誤差を示す値として第1車輪速誤差DW1を算出できれば、第1車輪速誤差DW1を算出する構成は変更してもよい。なお、上と同様に、第2車輪速誤差DW2、第3車輪速誤差DW3、及び第4車輪速誤差DW4を算出する構成は変更してもよい。
【0071】
・例えば、ステップS34において、サーバ200の実行部210が算出する誤差は変更してもよい。具体例として、実行部210は、規定期間に亘って取得した車両100の右前車輪の車輪速WSと、当該右前車輪の車輪速WSにローパスフィルタをかけた値とに基づいて、ローパスフィルタをかけた値に対する元の車輪速WSの平均二乗誤差を算出してもよい。上と同様に、実行部210は、左前車輪の車輪速WS、右後車輪の車輪速WS、及び左後車輪の車輪速WSについて、ローパスフィルタをかけた値に対する元の車輪速WSの平均二乗誤差を算出してもよい。この構成では、ステップS35において、実行部210は、ステップS35で算出した4つの平均二乗誤差のうち、最も大きい値を特定する。そして、実行部210は、上で特定した最も大きい値に関わる車輪を、車輪の緩みが生じている可能性が最も高い車輪として特定すればよい。
【0072】
・例えば、ステップS34及びステップS35の処理を省略してもよい。この場合であっても、ステップS33の処理を実行すれば、車両100の車輪の緩みが生じているか否かを判定できる。
【0073】
・上記実施形態において、配信制御は変更してもよい。
例えば、サーバ200の実行部210は、判定情報IJを、車両100に送信してもよい。このとき、車両100の運動マネージャ45は、ディスプレイ92等を介して判定情報IJを車両100のユーザに報知することが好ましい。
【符号の説明】
【0074】
DC…収集データ GX…前後加速度 GY…左右加速度 GYE…推定左右加速度 GZ…上下加速度 IJ…判定情報 IS…情報処理システム NW…通信ネットワーク 10…セントラルECU 20…パワートレインECU 30…ステアリングECU 40…ブレーキECU 45…運動マネージャ 50…先進運転支援ECU 71…パワートレイン装置 72…ステアリング装置 73…ブレーキ装置 81…加速度センサ 82…車輪速センサ 83…GNSS受信機 86…アクセル操作量センサ 87…ステアリング角センサ 88…ブレーキ操作量センサ 91…DCM 92…ディスプレイ 100…車両 200…サーバ 300…個人端末