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特開2024-179965車両の制御装置、車両の制御方法、及び車両の制御プログラム
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  • 特開-車両の制御装置、車両の制御方法、及び車両の制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179965
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両の制御装置、車両の制御方法、及び車両の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/188 20120101AFI20241219BHJP
   B60W 40/107 20120101ALI20241219BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20241219BHJP
   B60W 10/188 20120101ALI20241219BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60W30/188
B60W40/107
B60W10/00 120
B60W10/188
B60W10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099317
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄介
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】宮田 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】廣村 達哉
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241AA67
3D241AC01
3D241AC26
3D241AE07
3D241AE08
3D241AE31
3D241AE41
3D241BA55
3D241BB07
3D241BC01
3D241DB05B
(57)【要約】
【課題】惰行走行条件が満たされている場合に、惰行走行に適した状態を実現する。
【解決手段】統括ECU60は、アプリケーションからの車両100の要求加速度及び車両100の実際の加速度の差に基づいて内燃機関20の駆動力を制御することを通じて、車両100の加速度のフィードバック制御を行うことと、内燃機関20をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの車両100の予測加速度である第1予測加速度を算出することと、惰行走行条件が満たされており、且つ第1予測加速度が負の値である惰行下限値以上である場合に、加速度のフィードバック制御を行わずに、内燃機関20をフューエルカット状態に制御することと、を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションからの車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、
前記内燃機関をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第1予測加速度を算出することと、
予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上である場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御することと、
を行う
車両の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関をアイドル状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第2予測加速度を算出することと、
前記惰行走行条件が満たされており、且つ前記第2予測加速度が前記下限値以上であるとともに前記第2予測加速度が前記下限値より大きい負の値として予め定められた上限値以下であり、且つ前記第1予測加速度が前記下限値未満である場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をアイドル状態に制御することと、
を行う
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度及び前記第2予測加速度の双方が前記下限値以上且つ前記上限値以下である場合、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御する
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度及び前記第2予測加速度の双方が前記上限値よりも大きい場合、
前記アプリケーションからの前記要求加速度に代えて、前記下限値以上且つ前記上限値以下の値を新たな要求加速度である設定加速度として算出することと、
前記設定加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記駆動力に加えて前記車両に搭載されているブレーキ装置の制動力を制御することを通じて、前記フィードバック制御を行うことと、
を行う
請求項2又は3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
アプリケーションからの車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、
前記内燃機関をアイドル状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第2予測加速度を算出することと、
予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第2予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上であるとともに前記第2予測加速度が前記下限値より大きい負の値として予め定められた上限値以下の場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をアイドル状態に制御することと、
を行う
車両の制御装置。
【請求項6】
コンピュータによる車両の制御方法であって、
前記車両に搭載されている前記コンピュータが、
アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、
前記内燃機関をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第1予測加速度を算出することと、
予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上である場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御することと、
を行う
車両の制御方法。
【請求項7】
コンピュータによる車両の制御方法であって、
前記車両に搭載されている前記コンピュータが、
アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、
前記内燃機関をアイドル状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第2予測加速度を算出することと、
予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第2予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上であるとともに前記第2予測加速度が前記下限値より大きい負の値として予め定められた上限値以下の場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をアイドル状態に制御することと、
を行う
車両の制御方法。
【請求項8】
車両に搭載されているコンピュータを対象としたプログラムであって、
前記コンピュータに、
アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、
前記内燃機関をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第1予測加速度を算出することと、
予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上である場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御することと、
を実行させる
車両の制御プログラム。
【請求項9】
車両に搭載されているコンピュータを対象としたプログラムであって、
前記コンピュータに、
アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、
前記内燃機関をアイドル状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第2予測加速度を算出することと、
予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第2予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上であるとともに前記第2予測加速度が前記下限値より大きい負の値として予め定められた上限値以下の場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をアイドル状態に制御することと、
を実行させる
車両の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の制御装置、車両の制御方法、及び車両の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている車両は、内燃機関と、制御装置と、を備えている。制御装置は、車両の走行中、アクセルペダルとブレーキペダルとの双方が操作されない状態になると、車両を惰行走行させる。このとき、制御装置は、内燃機関に対して僅かに負の駆動力、すなわち僅かな制動力を発生させる。したがって、惰行走行中の車両は、徐々に減速する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-180602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を惰行走行させる特許文献1のような技術において、車両の加速度をフィードバック制御することがある。この場合、車両に対する要求加速度と、車両の実際の加速度との差を解消できるように内燃機関の駆動力が調整される。このとき、要求加速度に対する実際の加速度の差の増減に応じて、内燃機関に要求される駆動力が上下し得る。
【0005】
ところで、内燃機関の運転状態として、当該内燃機関が安定して運転を継続可能な最小限の燃焼状態であるアイドル状態と、気筒への燃料噴射を停止したフューエルカット状態と、がある。アイドル状態では、内燃機関の駆動力は正の値である。一方、フューエルカット状態では、機械的な損失があるため内燃機関の駆動力は負の値である。そして、内燃機関は、アイドル状態の駆動力とフューエルカット状態の駆動力との間の駆動力を出すことができない。
【0006】
例えば、上述した惰行走行の際に、アイドル状態の駆動力とフューエルカット状態の駆動力との間の駆動力が内燃機関に要求されたとする。この状態でフィードバック制御を行うと、内燃機関がアイドル状態からフューエルカット状態への切り替え、及びその逆の切り替えを繰り返し行うことになりかねない。内燃機関がアイドル状態とフューエルカット状態との切り替えを繰り返すと、内燃機関の駆動力ひいては車両の加速度が急変を繰り返す。この結果、乗員の乗り心地が悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、アプリケーションからの車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第1予測加速度を算出することと、予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上である場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御することと、を行う。
【0008】
上記課題を解決するための車両の制御装置は、アプリケーションからの車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、前記内燃機関をアイドル状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第2予測加速度を算出することと、予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第2予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上であるとともに前記第2予測加速度が前記下限値より大きい負の値として予め定められた上限値以下の場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をアイドル状態に制御することと、を行う。
【0009】
上記課題を解決するための車両の制御方法は、コンピュータによる車両の制御方法であって、前記車両に搭載されている前記コンピュータが、アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第1予測加速度を算出することと、予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上である場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御することと、を行う。
【0010】
上記課題を解決するための車両の制御方法は、コンピュータによる車両の制御方法であって、前記車両に搭載されている前記コンピュータが、アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、前記内燃機関をアイドル状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第2予測加速度を算出することと、予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第2予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上であるとともに前記第2予測加速度が前記下限値より大きい負の値として予め定められた上限値以下の場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をアイドル状態に制御することと、を行う。
【0011】
上記課題を解決するための車両の制御プログラムは、車両に搭載されているコンピュータを対象としたプログラムであって、前記コンピュータに、アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第1予測加速度を算出することと、予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第1予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上である場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をフューエルカット状態に制御することと、を実行させる。
【0012】
上記課題を解決するための車両の制御プログラムは、車両に搭載されているコンピュータを対象としたプログラムであって、前記コンピュータに、アプリケーションからの前記車両の要求加速度及び前記車両の実際の加速度の差に基づいて前記車両に搭載されている内燃機関の駆動力を制御することを通じて、前記車両の加速度のフィードバック制御を行うことと、前記内燃機関をアイドル状態に制御したと仮定したときの前記車両の予測加速度である第2予測加速度を算出することと、予め定められた惰行走行条件が満たされており、且つ前記第2予測加速度が予め定められた負の値である下限値以上であるとともに前記第2予測加速度が前記下限値より大きい負の値として予め定められた上限値以下の場合に、前記フィードバック制御を行わずに、前記内燃機関をアイドル状態に制御することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
上記の各技術思想では、惰行走行条件が満たされている場合に、車両の加速度の急変が繰り返されるという事態が発生することを防ぎつつも、徐々に車両が減速していくという惰行走行に適した状態を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、車両の概略構成図である。
図2図2は、設定範囲に対して各予測加速度が取り得るパターンを表した模式図である。
図3図3は、惰行用処理の処理手順を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、車両の制御装置、車両の制御方法、及び車両の制御プログラムの一実施形態を、図面を参照して説明する。
<パワートレイン>
図1に示すように、車両100は、パワートレイン10を備えている。パワートレイン10は、内燃機関20と、伝達機構30と、を備えている。内燃機関20は、車両100の駆動源である。内燃機関20は、複数の気筒22と、吸気通路23と、排気通路27と、スロットルバルブ24と、気筒22毎の燃料噴射弁25と、気筒22毎の点火プラグ26と、クランクシャフト28と、を備えている。気筒22は、内燃機関20の本体20Aに区画された空間である。吸気通路23は、各気筒22内に吸入空気を導入するための通路である。排気通路27は、各気筒22内から排気を排出するための通路である。スロットルバルブ24は、気筒22内に導入する吸入空気量を調整する。燃料噴射弁25は、気筒22内に燃料を供給する。点火プラグ26は、気筒22内の燃料に点火を行う。クランクシャフト28は、気筒22内での燃料の燃焼に応じて回転する。
【0016】
図示は省略するが、内燃機関20は、当該内燃機関20の動作状態の情報を検出するための複数のセンサを備えている。センサの一例は、エアフロメータである。エアフロメータは、吸入空気量を検出する。センサの一例は、クランクポジションセンサである。クランクポジションセンサは、クランクシャフト28の回転位置を検出する。各センサは、自身が検出した情報に応じた信号を後述のECU群200に出力する。
【0017】
伝達機構30は、クランクシャフト28の回転を車輪40に伝達する機構である。伝達機構30は、クランクシャフト28の回転速度を変速して出力する自動変速機31、及び車輪40に連結している車軸41などを含んでいる。車軸41は、伝達機構30の出力軸となっている。
【0018】
<油圧ブレーキ>
車両100は、複数の油圧ブレーキ50を備えている。図1では、複数の油圧ブレーキ50のうちの1つのみを代表で示している。油圧ブレーキ50は、車両100における車輪40毎に設けられている。油圧ブレーキ50は、回転体51と、摩擦材52と、油圧機構53と、を備えている。回転体51は、車輪40と一体回転する。摩擦材52は、油圧に応じて動作することで、回転体51に対して押し付けられる。油圧機構53は、摩擦材52を動作させるための油圧を発生する。油圧ブレーキ50は、ブレーキ装置を構成している。
【0019】
<情報取得機器>
車両100は、複数の情報取得機器を備えている。情報取得機器は、車両100の走行状態を検出する機器を含んでいる。この種の情報取得機器の一例は、車両100の走行速度である車速を検出する車速センサ101である。この種の情報取得機器の一例は、車両100の加速度を検出する加速度センサ102である。なお、本明細書において、車両100の加速度とは、車両100の前後軸に沿う方向の加速度を指す。情報取得機器は、車両100の周辺情報又は位置情報を検出する機器を含んでいる。この種の情報取得機器の一例は、車両100の周囲を撮像するカメラ103である。この種の情報取得機器の一例は、車両100の現在の位置座標に関する情報を全球測位衛星から受信する位置受信器104である。情報取得機器は、運転者からの指示を取得するスイッチを含んでいる。この種の情報取得機器の一例は、後述のアプリケーションAPに対して乗員が目標車速を指示するための指示スイッチ105である。この種の情報取得機器の一例は、乗員が車両100の起動を指示するためのイグニッションスイッチ106である。イグニッションスイッチ106は、スタートスイッチ又はシステム起動スイッチと呼称されることもある。各情報取得機器は、自身が取得した情報に応じた信号を後述のECU群200に出力する。
【0020】
上述した車両100の加速度に関して、当該加速度は正負の値をとる。本明細書では、車両100の加速度の正負を次のように取り扱う。すなわち、車両100の加速度は、車両100が前方に向かって加速する場合を正の値、車両100が後方に向かって加速する場合を負の値とする。
【0021】
<ナビゲーション装置>
車両100は、ナビゲーション装置110を備えている。ナビゲーション装置110は、地図データを予め記憶している。地図データは、複数のノードと、複数のリンクと、を備えている。各ノードは、緯度と経度とで表された位置座標を示している。各リンクは、隣り合うノード間を結ぶ線分として定められている。各リンクは、道路を示している。地図データは、隣り合うノード間についての路面勾配の情報を含んでいる。ナビゲーション装置110は、位置受信器104が受信した車両100の現在の位置座標を取得する。そのことで、ナビゲーション装置110は、地図データ上における車両100の現在位置を常時把握している。ナビゲーション装置110は、必要に応じて、地図データから把握される各種情報を後述のECU群200に出力する。
【0022】
<駆動系ECU>
車両100は、ECU群200を備えている。ECU群200は、複数のECUを備えている。ECUは、「Electronic Control Unit」の略記である。複数のECUは、図示しない内部バスを介して互いに情報を授受可能である。以下、各ECUを個別に説明する。
【0023】
車両100は、駆動系ECU71を備えている。駆動系ECU71は、処理回路を備えたコンピュータである。処理回路は、CPUと、不揮発性のメモリと、揮発性のメモリと、を備えている。不揮発性のメモリは、CPUが実行するべき処理が記述された各種プログラムと、CPUがプログラムを実行する上で必要になる各種データと、を予め記憶している。駆動系ECU71は、後述の統括ECU60からの指示情報に基づいて、内燃機関20を含むパワートレイン10を制御する。駆動系ECU71は、内燃機関20を制御するにあたり、スロットルバルブ24、燃料噴射弁25、及び点火プラグ26といった対象機器を動作させる。それに伴い気筒22内で燃料が燃焼すると、クランクシャフト28が回転する。そして内燃機関20が駆動力を発する。すなわち、駆動系ECU71は、上記対象機器を動作せることを通じて内燃機関20の駆動力を制御する。なお、駆動系ECU71は、例えば自動変速機31といった、伝達機構30の構成要素も制御する。これら内燃機関20及び伝達機構30に対する処理を通じて、駆動系ECU71は、内燃機関20が発する駆動力ひいてパワートレイン10が発する駆動力を制御する。駆動系ECU71は、必要に応じて、内燃機関20をフューエルカット状態又はアイドル状態に制御する。フューエルカット状態は、気筒22への燃料供給を停止した状態、すなわち内燃機関20で燃料の燃焼を停止した状態である。アイドル状態は、内燃機関20で燃料の燃焼を継続しつつ、クランクシャフト28の回転速度をアイドル回転速度に維持した状態である。アイドル回転速度は、クランクシャフト28の回転速度に関して、内燃機関20が安定して運転を継続できる最小限の回転速度である。以下では、内燃機関20が発する駆動力を内燃機関20の駆動力と記す。また、パワートレイン10が発する駆動力をパワートレイン10の駆動力と記す。
【0024】
駆動系ECU71は、例えば燃料噴射量といった内燃機関20の制御内容、自動変速機31の変速比といった伝達機構30の制御内容、及び車両100における各種センサからの情報に基づいて、現時点でのパワートレイン10の動作状態を常時把握している。駆動系ECU71は、この動作状態などに基づいて、基本駆動力、フューエルカット駆動力、及びアイドル駆動力を繰り返し算出する。基本駆動力は、現時点におけるパワートレイン10の駆動力である。フューエルカット駆動力は、現時点と同一条件下で内燃機関20をフューエルカット状態に制御したと仮定したときのパワートレイン10の駆動力である。同一条件下とは、内燃機関20の制御内容を除き、パワートレイン10の動作に関する全てのパラメータの値が同じであることを意味する。パワートレイン10の動作に関するパラメータの一例は、自動変速機31の変速比を含めた、伝達機構30のギア比である。パワートレイン10の動作に関するパラメータの一例は、車速である。車速は、伝達機構30の出力軸である車軸41の回転速度と相関がある。アイドル駆動力は、現時点と同一条件下で内燃機関20をアイドル状態に制御したと仮定したときのパワートレイン10の駆動力である。アイドル駆動力は、フューエルカット駆動力よりも大きい。駆動系ECU71は、算出した基本駆動力、フューエルカット駆動力、及びアイドル駆動力を後述の統括ECU60に出力する。
【0025】
なお、パワートレイン10の駆動力は、正負の値をとる。例えば、フューエルカット駆動力は、負の値である。前進走行中の車両100において、正の駆動力は車両100を加速させる一方で、負の駆動力は車両100を減速させる。
【0026】
<ブレーキECU>
車両100は、ブレーキECU72を備えている。ブレーキECU72は、処理回路を備えたコンピュータである。処理回路は、CPUと、不揮発性のメモリと、揮発性のメモリと、を備えている。不揮発性のメモリは、CPUが実行するべき処理が記述された各種のプログラムと、CPUがプログラムを実行する上で必要になる各種データと、を予め記憶している。ブレーキECU72は、後述の統括ECU60からの指示情報に基づいて油圧ブレーキ50を制御する。ブレーキECU72は、油圧ブレーキ50を制御するにあたり、油圧機構53を動作させる。それに伴い摩擦材52が回転体51に押し付けられると、車両100に制動力が発生する。すなわち、ブレーキECU72は、油圧機構53を動作させることを通じて油圧ブレーキ50の制動力を制御する。
【0027】
<指令ECU>
車両100は、指令ECU80を備えている。指令ECU80は、処理回路を備えたコンピュータである。処理回路は、CPUと、不揮発性のメモリと、揮発性のメモリと、を備えている。不揮発性のメモリは、CPUが実行するべき処理が記述された各種プログラムと、CPUがプログラムを実行する上で必要になる各種データと、を予め記憶している。不揮発性のメモリが記憶しているプログラムの例は、車両100の運動を制御するための複数のアプリケーションAPである。図1では、複数のアプリケーションAPのうちの3つを代表で示している。指令ECU80は、自身が記憶しているアプリケーションAPを実行する実行装置として機能する。アプリケーションAPの一例は、目標車速で定速走行したり、先行車に追従したりする機能を実現するACC(Adaptive Cruise Control)アプリケーションA1である。アプリケーションAPの一例は、運転者の操作無しで車両100を自律的に走行させる自動運転機能を実現するAD(Autonomous Driving)アプリケーションA2である。指令ECU80は、情報取得機器からの情報に基づいて、必要なアプリケーションAPを随時実行する。
【0028】
指令ECU80は、ある特定のアプリケーションAPを実行する場合、実行対象のアプリケーションAPの運動要求を示す情報である運動要求情報を出力する。具体的には、指令ECU80は、運動要求情報として要求加速度を出力する。要求加速度は、車両100に対する加速度の要求値である。指令ECU80は、運動要求情報として、要求加速度に加え、惰行要求信号を出力することもある。惰行要求信号は、車両100を惰性で減速させることを要求する信号である。なお、以下では、指令ECU80が主体である内容を、実行対象のアプリケーションAPを主体として記載することがある。例えば、指令ECU80が惰行要求信号を出力することを、アプリケーションAPが惰行要求信号を出力すると記載する。
【0029】
<惰行要求信号>
アプリケーションAPが惰行要求信号を出力する状況について説明する。例えばACCアプリケーションA1又はADアプリケーションA2といったアプリケーションAPは、先行車が存在しない場合などでは、実際の車速が目標車速に一致するように要求加速度を出力する。目標車速は、例えば指示スイッチ105を利用して乗員によって指定されたり、アプリケーションAP自身がカメラ103からの情報などに基づいて設定したりする。ここで、車両100の走行状況によっては、実際の車速が目標車速を上回ることがある。この場合、アプリケーションAPは、実際の車速が目標車速に低下するまで車両100を減速させるべく負の要求加速度を出力する。このような、実際の車速が目標車速を上回るケースにおいて、実際の車速と目標車速との差の絶対値が所定値以下の場合、アプリケーションAPは、要求加速度と共に惰行要求信号を出力する。例えばアプリケーションAPは、実際の車速が目標車速を上回ってから、実際の車速が目標車速に低下するまで、惰行要求信号の出力を継続する。上記の所定値は、例えば、油圧ブレーキ50を利用することなく車両100が惰性で減速したときに、実際の車速と目標車速との乖離を例えば数秒スケールで解消できる値として実験又はシミュレーションで予め定められている。このように、惰行要求信号が出力される条件は、実際の車速が目標車速よりも大きいこと、及び実際の車速と目標車速との差が予め定められた所定値以下であること、の双方を満たすことである。
【0030】
実際の車速が目標車速を上回るケースの一例は、車両100がある一定の目標車速で定速走行をしている場合において目標車速が下げられるケースである。実際の車速が目標車速を上回るケースの一例は、目標車速が連続的に増加されるのに追従して実際の車速が増加しているときに、目標車速の増加が停止されるケースである。この場合、目標車速に対する実際の車速の応答との関連で、一時的に実際の車速が目標車速を上回る。実際の車速が目標車速を上回るケースの一例として、次のようなケースも挙げられる。すなわち、乗員がアクセルペダルを踏み込むことに応じて実際の車速が目標車速を上回った状態で、乗員がアクセルペダルを解放するとともにアプリケーションAPが車両100の走行の制御を乗員から引き継ぐケースである。
【0031】
<統括ECU>
車両100は、統括ECU60を備えている。統括ECU60は、車両100の制御装置を構成している。統括ECU60は、処理回路62を備えたコンピュータである。処理回路62は、CPU62Aと、不揮発性のメモリ62Bと、揮発性のメモリ62Cと、を備えている。不揮発性のメモリ62Cは、CPU62Aが実行するべき処理が記述された各種の制御プログラム62Pと、CPU62Aが制御プログラム62Pを実行する上で必要になる各種データと、を予め記憶している。統括ECU60のCPU62Aが不揮発性のメモリ62Bに記憶されている制御プログラム62Pを実行することにより、統括ECU60は、アプリケーションAPからの運動要求を管理する運動マネージャとして機能する。すなわち、統括ECU60は、車両100の制御方法の制御主体である。以下、運動マネージャとしての統括ECU60の機能を説明する。
【0032】
統括ECU60は、アプリケーションAPからの運動要求情報を常時受け付けている。統括ECU60は、アプリケーションAPから運動要求情報を取得した場合、アプリケーションAPからの運動要求を実現できるようにパワートレイン10及び油圧ブレーキ50を制御する。このとき、統括ECU60は、駆動系ECU71に対してパワートレイン10の制御に関する指示情報を出力する。パワートレイン10の制御に関する指示情報は、パワートレイン10に要求する駆動力を含んでいる。この指示情報を受けて、駆動系ECU71は、内燃機関20を含むパワートレイン10を制御する。ここで、上述のとおり、パワートレイン10を制御するための指示情報を出力するのは統括ECU60であることから、内燃機関20ひいてはパワートレイン10の制御主体は統括ECU60である。同様に、統括ECU60は、運動要求を実現するにあたり、ブレーキECU72に対して油圧ブレーキ50の制御に関する指示情報を出力する。油圧ブレーキ50の制御に関する指示情報は、油圧ブレーキ50に要求する制動力を含んでいる。この指示情報を受けて、ブレーキECU72は油圧ブレーキ50を制御する。油圧ブレーキ50を制御するための指示情報を出力するのは統括ECU60であることから、油圧ブレーキ50の制御主体は統括ECU60である。
【0033】
統括ECU60は、アプリケーションAPからの運動要求を実現するにあたり、車両100の加速度のフィードバック制御を行うことがある。統括ECU60は、このフィードバック制御を行うにあたり、アプリケーションAPからの要求加速度と、車両100の実際の加速度である実加速度WQとの差が小さくなるように、内燃機関20ひいてはパワートレイン10の駆動力を調整する。すなわち、統括ECU60は、アプリケーションAPからの要求加速度と、車両100の実加速度WQと、の差に基づいて内燃機関20の駆動力を制御する。そのことを通じて、統括ECU60は、車両100の加速度のフィードバック制御を行う。統括ECU60は、フィードバック制御を行うにあたり、油圧ブレーキ50の制動力を制御することもある。なお、本実施形態において、統括ECU60は、実加速度WQを、加速度センサ102が検出した加速度と、車速センサ101が検出した車速を微分した値と、に基づいて算出する。
【0034】
<惰行用処理の概要>
統括ECU60は、運動マネージャの機能として、惰行用処理を実行可能である。統括ECU60は、予め定められた惰行走行条件が満たされている場合、惰行用処理を行う。本実施形態の惰行走行条件は、統括ECU60がアプリケーションAPから惰行要求信号を取得したことである。
【0035】
統括ECU60は、惰行用処理で利用する情報として、車両100の加速度に関する設定範囲Rの下限値と上限値とを予め記憶している。設定範囲Rは、車両100が惰行走行する際に許容される加速度の範囲である。設定範囲Rの下限値である惰行下限値RDは、負の値として予め定められている。設定範囲Rの上限値である惰行上限値RUも、負の値として予め定められている。例えば、惰行上限値RUは、ゼロよりも僅かに小さい値である。惰行下限値RD及び惰行上限値RUは、車両100が惰行走行するにあたり乗員が程よい減速感を得られるような設定範囲Rの境界値として、実験又はシミュレーションで予め定められている。
【0036】
統括ECU60は、惰行用処理では、第1予測加速度W1と第2予測加速度W2とを算出する。第1予測加速度W1は、当該第1予測加速度W1の算出時点での車両100の走行状態を前提としつつ、内燃機関20をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの車両100の予測加速度である。第2予測加速度W2は、当該第2予測加速度W2の算出時点での車両100の走行状態を前提としつつ、内燃機関20をアイドル状態に制御したと仮定したときの車両100の予測加速度である。第1予測加速度W1は、アプリケーションAPが惰行要求信号の出力を継続している期間全体に亘って繰り返し算出される。第2予測加速度W2も同様である。
【0037】
統括ECU60は、惰行用処理では、設定範囲Rを基準としたときの第1予測加速度W1と第2予測加速度W2との大きさに応じて、内燃機関20の制御態様を異ならせる。図2に示すように、設定範囲Rに対して第1予測加速度W1及び第2予測加速度W2がとり得るパターンとして、次の5つがある。
【0038】
(第1パターン)第1予測加速度W1が惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下であるとともに、第2予測加速度W2が惰行上限値RUよりも大きい。
(第2パターン)第1予測加速度W1が惰行下限値RD未満であるとともに、第2予測加速度W2が惰行下限値RD以上且つ惰行下限値RU以下である。
【0039】
(第3パターン)第1予測加速度W1と第2予測加速度W2との双方が、惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下である。
(第4パターン)第1予測加速度W1と第2予測加速度W2との双方が、惰行上限値RUよりも大きい。
【0040】
(第5パターン)第1予測加速度W1と第2予測加速度W2との双方が、惰行下限値RDよりも小さい。
統括ECU60は、各パターンにおいて内燃機関20を次のように制御する。統括ECU60は、第1パターンの場合、加速度のフィードバック制御を行わずに、内燃機関20をフューエルカット状態に制御する。統括ECU60は、第2パターンの場合、加速度のフィードバック制御を行わずに、内燃機関20をアイドル状態に制御する。統括ECU60は、第3パターンの場合、加速度のフィードバック制御を行わずに、内燃機関20をフューエルカット状態に制御する。統括ECU60は、第4パターンの場合、内燃機関20の駆動力と油圧ブレーキ50の制動力との双方の制御を通じて加速度のフィードバック制御を行う。ただしこの場合、統括ECU60は、アプリケーションAPからの要求加速度に代わる新たな要求加速度として設定加速度WNを算出する。そして、統括ECU60は、設定加速度WNと実加速度WQとの差に基づいてフィードバック制御を行う。統括ECU60は、第5パターンの場合、内燃機関20の駆動力の制御を通じて加速度のフィードバック制御を行う。この場合も、統括ECU60は、第4パターンの場合と同様、設定加速度WNと実加速度WQとの差に基づいてフィードバック制御を行う。
【0041】
<惰行用処理の詳細>
統括ECU60は、惰行走行条件が成立すると、すなわちアプリケーションAPから惰行走行要求を取得すると惰行用処理を開始する。統括ECU60は、アプリケーションAPが惰行要求信号を出力している期間中、すなわちアプリケーションAPから惰行走行要求を取得している期間中、惰行用処理を繰り返し実行する。なお、統括ECU60は、惰行用処理の実行中は、アプリケーションAPからの運動要求を実現すべく通常時に行っている処理をキャンセルする。統括ECU60は、アプリケーションAPが惰行要求信号の出力を終了すると、惰行用処理の実行を止めて通常時の処理を再開する。
【0042】
図3に示すように、統括ECU60は、惰行用処理を開始すると、先ずステップS100の処理を行う。ステップS100において、統括ECU60は、第1予測加速度W1と第2予測加速度W2とを算出する。統括ECU60は、第1予測加速度W1を算出するにあたり、駆動系ECU71が算出した最新のフューエルカット駆動力を取得する。そして、統括ECU60は、このフューエルカット駆動力に基づいて第1予測加速度W1を算出する。例えば、統括ECU60は、次のようにして第1予測加速度W1を算出する。統括ECU60は、予め記憶している車両100の標準重量によってフューエルカット駆動力を除算する。そのことで、統括ECU60は、フューエルカット駆動力を加速度の次元に変換したフューエルカット変換値を算出する。次に、統括ECU60は、駆動系ECU71が算出した最新の基本駆動力を取得する。そして、統括ECU60は、基本駆動力を標準重量によって除算することで基本変換値を算出する。次に、統括ECU60は、最新の実加速度WQを算出する。上述のとおり、統括ECU60は、加速度センサ102が検出した車両100の加速度と、車速センサ101が検出した車速と、に基づいて実加速度WQを算出する。統括ECU60は、実加速度WQと基本変換値とを算出すると、これら両者の大小関係に応じて、フューエルカット変換値を調整する。そして、統括ECU60は、調整後の値を第1予測加速度W1とする。なお、実加速度WQと基本変換値との違いは、例えば路面勾配に応じた、基本変換値に対する実加速度WQの増減を反映している。第1予測加速度W1には、このような、路面勾配に応じた車両100の走行状況が加味されている。
【0043】
上述のとおり、統括ECU60は、ステップS100では、第1予測加速度W1に加え、第2予測加速度W2も算出する。統括ECU60は、第2予測加速度W2の算出にあたっては、第1予測加速度W1を算出する際にフューエルカット駆動力を利用したのに代えて、アイドル駆動力を利用する。そして、統括ECU60は、第1予測加速度W1を算出するのと同様の手法で、アイドル駆動力に基づいて第2予測加速度W2を算出する。すなわち、統括ECU60は、第2予測加速度W2を算出するにあたり、先ず駆動系ECU71から最新のアイドル駆動力を取得する。そして、統括ECU60は、アイドル駆動力を加速度の次元に変換したり、変換後の値を実加速度WQと基本変換値との大小に応じて調整したりすることで、第2予測加速度W2を算出する。第2予測加速度W2の算出に関する更なる説明は割愛する。統括ECU60は、第1予測加速度W1と第2予測加速度W2とを算出すると、処理をステップS110に進める。なお、第1予測加速度W1に関して、当該第1予測加速度W1の基になっているフューエルカット駆動力の定め方からわかるように、本実施形態の第1予測加速度W1は、実質的には、現時点で内燃機関20をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの車両100の加速度である。同様に、第2予測加速度W2は、現時点で内燃機関20をアイドル状態に制御したと仮定したときの車両100の加速度である。
【0044】
さて、ステップS110において、統括ECU60は、第2予測加速度W2が設定範囲R内であるか否かを判定する。統括ECU60は、第2予測加速度W2が惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下である場合(ステップS110:YES)、処理をステップS120に進める。
【0045】
ステップS120において、統括ECU60は、第1予測加速度W1が設定範囲R内であるか否かを判定する。実質的には、統括ECU60は、第1予測加速度W1が惰行下限値RD以上であるか否かを判定する。統括ECU60は、第1予測加速度W1が惰行下限値RD以上である場合(ステップS120:YES)、処理をステップS130に進める。ステップS120の判定がYESになる状況は、既に説明した第3パターンの状況である。
【0046】
ステップS130において、統括ECU60は、駆動系ECU71に対して第1指示情報を出力する。第1指示情報は、パワートレイン10に要求する駆動力として、フューエルカット駆動力を指示するものである。第1指示情報は、駆動力そのものの指示に加え、内燃機関20をフューエルカット状態に制御する指示を含んでいる。この第1指示情報を受けて、駆動系ECU71は、内燃機関20をフューエルカット状態に制御する。統括ECU60は、例えば1秒といった、予め定められた所定の制御期間に亘って第1指示情報の出力を継続する。統括ECU60は、第1指示情報の出力を制御期間に亘って行うと、ステップS130の処理を終了する。そして、統括ECU60は、ステップS100の処理に戻る。そして、統括ECU60は、惰行用処理を最初から実行する。なお、駆動系ECU71は、ステップS130では、パワートレイン10のうち内燃機関20以外については、当該ステップS130の処理を開始した時点の制御内容を維持する。これに伴い、このステップS130の処理の実行中、伝達機構30のギア比は一定に維持される。逐一の説明は割愛するが、このステップS130と同様、後述のステップS140及びステップS220でも、伝達機構30のギア比は、それぞれの処理の開始時点のものに維持される。また、統括ECU60は、ステップS130では、ブレーキECU72に対してゼロの制動力を指示する指示情報を出力する。
【0047】
ここで、ステップS130との関連において、駆動系ECU71は次のように機能する設定にある。すなわち、駆動系ECU71は、ステップS130の終了に伴って第1指示情報の出力が終了された後、次に指示情報を取得するまでは、パワートレイン10をステップS130の処理の終了時点の制御状態に維持する。この点、後述のステップS140及びステップS220についても同様である。すなわち、駆動系ECU71は、ステップS140及びステップS220の処理の後、次に指示情報を取得するまでは、パワートレイン10をそれぞれの処理の終了時点の制御状態に維持する。同様のことは、ブレーキECU72についてもいえる。
【0048】
さて、ステップS120において、統括ECU60は、第1予測加速度W1が惰行下限値RD未満である場合(ステップS120:NO)、処理をステップS140に進める。ステップS120の判定がYESになる状況は、既に説明した第2パターンの状況である。
【0049】
ステップS140において、統括ECU60は、駆動系ECU71に対して第2指示情報を出力する。第2指示情報は、パワートレイン10に要求する駆動力として、アイドル駆動力を指示するものである。第2指示情報は、駆動力そのものの指示に加え、内燃機関20をアイドル状態に制御する指示を含んでいる。この第2指示情報を受けて、駆動系ECU71は、内燃機関20をアイドル状態に制御する。統括ECU60は、ステップS130と同様、上記制御期間に亘って第2指示情報の出力を継続する。統括ECU60は、第2指示情報の出力を上記制御期間に亘って行うと、ステップS140の処理を終了する。そして、統括ECU60は、ステップS100の処理に戻る。なお、ステップS140における、ブレーキECU72に対する指示情報の取り扱いは、ステップS130の場合と同じである。
【0050】
さて、ステップS110において、統括ECU60は、第2予測加速度W2が惰行下限値RD未満であるか、又は第2予測加速度W2が惰行上限値RUよりも大きい場合(ステップS110:NO)、処理をステップS200に進める。
【0051】
ステップS200において、統括ECU60は、第1予測加速度W1が設定範囲R内であるか否かを判定する。統括ECU60は、第1予測加速度W1が惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下である場合(ステップS200:YES)、処理をステップS130に進める。ステップS130の処理については既に説明したとおりである。なお、ステップS200の判定がYESになる状況は、既に説明した第1パターンの状況である。
【0052】
一方、ステップS200において、統括ECU60は、第1予測加速度W1が惰行下限値RD未満であるか、又は第1予測加速度W1が惰行上限値RUよりも大きい場合(ステップS200:NO)、処理をステップS210に進める。ステップS200の判定がNOになる状況は、既に説明した第4パターン又は第5パターンの状況である。
【0053】
ステップS210において、統括ECU60は、アプリケーションAPからの要求加速度に代えて、新たな要求加速度である設定加速度WNを算出する。具体的には、統括ECU60は、惰行下限値RDと惰行上限値RUとの中央値である惰行中央値を算出する。そして、統括ECU60は、惰行中央値を設定加速度WNに設定する。そして、統括ECU60は、アプリケーションAPから惰行要求信号とともに取得した要求加速度を消去する。そして、統括ECU60は、設定加速度WNを要求加速度として取り扱うように設定変更を行う。この後、統括ECU60は、処理をステップS220に進める。
【0054】
ステップS220において、統括ECU60は、加速度のフィードバック制御を行う。具体的に、統括ECU60は、以下の一連のフィードバック用処理を繰り返す。統括ECU60は、フィードバック用処理では、先ず、加速度センサ102と車速センサ101との検出情報に基づいて、最新の実加速度WQを算出する。そして、統括ECU60は、この実加速度WQを設定加速度WNから減算することで、加速度差を算出する。そして、統括ECU60は、この加速度差を解消するのに必要なパワートレイン10の駆動力と油圧ブレーキ50の制動力とを算出する。そして統括ECU60は、算出した値を基に、駆動系ECU71とブレーキECU72のそれぞれに対して駆動力及び制動力の指示情報を出力する。以上がフィードバック用処理である。統括ECU60は、このフィードバック用処理を上記制御期間に亘って繰り返す。統括ECU60は、ステップS220の処理を開始してから上記制御期間が経過すると、ステップS220の処理を終了する。そして、統括ECU60は、ステップS100の処理に戻る。
【0055】
なお、ステップS220における、パワートレイン10と油圧ブレーキ50の制御に関してつぎのことがいえる。既に説明した第4パターンのように、第1予測加速度W1と第2予測加速度W2との双方が惰行上限値RUよりも大きい場合、統括ECU60は、基本的には、内燃機関20をフューエルカット状態に制御しつつ、油圧ブレーキ50の制動力を増減させる。一方、既に説明した第5パターンのように、第1予測加速度W1と第2予測加速度W2との双方が惰行下限値RDよりも小さい場合、統括ECU60は、基本的には、油圧ブレーキ50の制動力をゼロにしつつ、内燃機関20ひいてはパワートレイン10の駆動力を増減させる。
【0056】
<実施形態の作用>
アプリケーションAPが惰行要求信号を出力したときの状況が第1パターン又は第3パターンである場合(ステップS120:YES、ステップS200:YES)、統括ECU60は内燃機関20をフューエルカット状態に制御する(ステップS130)。それに伴い、図2に示すように、車両100の実加速度WQは、第1予測加速度W1に近い値になる。例えば、アプリケーションAPが惰行要求信号の出力を継続している期間に亘って第1パターン又は第3パターンの状況が続くと、その期間中、統括ECU60は、内燃機関20をフューエルカット状態に制御し続ける。なお、図2に示す第1パターン及び第3パターンでは、実加速度WQを第1予測加速度W1よりも低い値として示しているが、これは便宜上のものである。この点、他の各パターンについても同様である。
【0057】
アプリケーションAPが惰行要求信号を出力したときの状況が第2パターンである場合(ステップS120:NO)、統括ECU60は内燃機関20をアイドル状態に制御する(ステップS140)。それに伴い、図2に示すように、車両100の実加速度WQは、第2予測加速度W2に近い値になる。例えば、アプリケーションAPが惰行要求信号の出力を継続している期間に亘って第2パターンの状況が続くと、その期間中、統括ECU60は、内燃機関20をアイドル状態に制御し続ける。
【0058】
アプリケーションAPが惰行要求信号を出力したときの状況が第4パターン又は第5パターンである場合(ステップS200:NO)、統括ECU60は設定加速度WNを目標値として加速度のフィードバック制御を行う(ステップS220)。それに伴い、図2に示すように、車両100の実加速度WQは、設定加速度WNに近い値になる。
【0059】
<実施形態の効果>
(1)実施形態の作用に記載したとおり、統括ECU60は、第1パターンのように、内燃機関20をフューエルカット状態に制御することで惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下の負の加速度を満たせる場合には、加速度のフィードバック制御を行わない。フィードバック制御を行わないので、車両100の実加速度WQを要求加速度に一致させるべく、内燃機関20がフューエルカット状態とアイドル状態とを交互に繰り返すことはない。したがって、パワートレイン10の駆動力ひいては車両100の実加速度WQが増減を繰り返すことはない。その一方で、統括ECU60が内燃機関20をフューエルカット状態に制御することで、車両100の実加速度WQは、惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RUの負の加速度となる。したがって、惰行走行条件が満たされている場合において、車両100の加速度の急変が繰り返されるという事態が発生することを防ぎつつも、徐々に車両100が減速していくという惰行走行に適した状態を実現できる。
【0060】
なお、上記実施形態では、惰行走行条件が満たされている期間中に、すなわち、アプリケーションAPが惰行要求信号の出力を継続している期間中に次のことがあり得る。すなわち、上記期間中に、第1予測加速度W1や第2予測加速度W2が大きく変化することにより、車両100の現状のパターンが例えば第2パターンから第3パターンへといった具合に切り替わり得る。この場合、上記期間中に、内燃機関20の運転状態がフューエルカット状態とアイドル状態との間で切り替わり得る。しかし、第1予測加速度W1や第2予測加速度W2が大きく変化するのは、車両100が走行している道路の路面勾配が変化するなど、車両100の走行条件が変化する場合である。ここで、車両100が惰行走行を継続する比較的短い期間において、車両100の走行条件の変化が何度も繰り返れることは稀である。したがって、上記実施形態では、例えば数秒間の間に、内燃機関20の運転状態が繰り返し複数回切り替わるといったことは生じない。むしろ、車両100の走行条件の変化が生じた場合でも、当該変化に応じて内燃機関20の運転状態が切り替わることから、車両100の走行条件に応じた適切な内燃機関20の運転状態で、臨機応変に車両100の惰行走行を実現できる。
【0061】
(2)統括ECU60は、第2パターンのように、内燃機関20をアイドル状態に制御することで惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下の加速度を満たせる場合には、加速度のフィードバック制御を行わない。フィードバック制御を行わないので、上記(1)と同様、フィードバック制御に応じて内燃機関20がフューエルカット状態とアイドル状態とを交互に繰り返すことはない。その一方で、内燃機関20をアイドル状態に制御することで、車両100の実加速度WQは、惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下の負の加速度となる。したがって、上記(1)と同様、惰行走行条件が満たされている場合において、車両100の加速度の急変が繰り返されるという事態が発生することを防ぎつつも、徐々に車両100が減速していくという惰行走行に適した状態を実現できる。
【0062】
(3)統括ECU60は、第3パターンのように、内燃機関20をフューエルカット状態及びアイドル状態のいずれに制御した場合でも惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下の加速度を満たせる場合には、内燃機関20をフューエルカット状態に制御する。このようにしてフューエルカット状態を優先することで燃費が向上する。
【0063】
(4)統括ECU60は、第4パターン又は第5パターンのように、内燃機関20をフューエルカット状態又はアイドル状態のいずれに制御した場合でも惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下の加速度を満たせない場合には、次のことを行う。すなわち、統括ECU60は、必要に応じて油圧ブレーキ50も利用しつつ加速度のフィードバック制御を行う。このとき、統括ECU60は、惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下の設定加速度WNを要求加速度として取り扱う。これに伴い、車両100の実加速度WQを、フィードバック制御を行わない第1パターン、第2パターン、及び第3パターンの場合と同程度にできる。
【0064】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0065】
・惰行用処理のステップS100に関して、第1予測加速度W1の算出手法は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、フューエルカット変換値を調整する上で、ナビゲーション装置110が記憶している地図データの路面勾配の情報を利用してもよい。そして、車両100が走行している地点の実際の路面勾配に応じて、フューエルカット変換値を調整して第1予測加速度W1を算出してもよい。内燃機関20をフューエルカット状態に制御したと仮定したときの車両100の予測加速度として適切な値を算出できるのであれば、第1予測加速度W1の算出手法は問わない。この点、第2予測加速度W2についても同様である。すなわち、内燃機関20をアイドル状態に制御したと仮定したときの車両100の予測加速度として適切な値を算出できるのであれば、第2予測加速度W2の算出手法は問わない。
【0066】
・第1予測加速度W1の算出に関して、当該第1予測加速度W1の基になるフューエルカット駆動力を統括ECU60が算出してもよい。この場合、例えばパワートレイン10の各種制御内容といった、フューエルカット駆動力を算出する上で必要な情報を統括ECU60が取得できるようにしておけばよい。アイドル駆動力についても同様である。
【0067】
・ステップS210に関して、設定加速度WNは、上記実施形態の例に限定されない。設定加速度WNは、惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下の値であればよい。設定加速度WNは、路面勾配などを考慮しつつ、乗員が適切な減速感を得られるような値として定めてあればよい。フィードバック制御の実行途中で設定加速度WNを変更してもよい。
【0068】
・ステップS210の処理を廃止してもよい。すなわち、加速度のフィードバック制御の目標値として設定加速度WNを利用することは必須ではない。そして、ステップS220のフィードバック制御では、アプリケーションAPからの要求加速度を目標値としてもよい。例えば、アプリケーションAPからの要求加速度が設定範囲Rから多少外れている程度であれば、この要求加速度をフィードバック制御の目標値にした場合でも、設定範囲Rに近い加速度を実現できる。
【0069】
・加速度のフィードバック制御を行う上で制御するブレーキ装置は、上記実施形態の例に限定されない。すなわち、ブレーキ装置は、油圧ブレーキ50に限らず、車両100に制動力を発生させることができるものであればよい。例えば、車両100は、モータジェネレータを有していてもよい。そして、このモータジェネレータに回生発電させることによる制動力を利用してフィードバック制御を行ってもよい。ブレーキ装置として、自動変速機31を利用してもよい。すなわち、自動変速機31の変速比を変更することで、パワートレイン10の負の駆動力の絶対値を増減させてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、第3パターンの場合(ステップS120:YES)、処理をステップS130に進めて内燃機関20をフューエルカット状態に制御した。しかし、第3パターンの場合に内燃機関20をフューエルカット状態に制御することは必須ではない。すなわち、第3パターンの場合に処理をステップS140に進めて内燃機関20をアイドル状態に制御してもよい。例えば、第3パターンの場合に、燃費よりも車両100の減速度合いを小さくすることを優先したい場合もあり得る。こうした場合には、内燃機関20の運転状態をフューエルカット状態ではなくアイドル状態に制御してよい。内燃機関20の運転状態として適切なものを選択できるように、惰行用処理の内容を変更してよい。
【0071】
・惰行用処理の内容を次のように構成してもよい。すなわち、ステップS100では、第1予測加速度W1と第2予測加速度W2のうち、第1予測加速度W1のみを算出し、第2予測加速度W2の算出を廃止する。この場合、ステップS100の後、処理をステップS200に進める。そして、ステップS200において、第1予測加速度W1が設定範囲R内であれば(ステップS200:YES)、上記実施形態と同様、内燃機関20をフューエルカット状態に制御する(ステップS130)。一方、第1予測加速度W1が設定範囲R外であれば(ステップS200:NO)、処理をステップS210以降に進めて加速度のフィードバック制御を行う。なお、この変更例のように、第2予測加速度W2の算出を廃止する場合、惰行上限値RUを設定することは必須ではない。第1予測加速度W1の基になるフューエルカット駆動力は負の値であることから、第1予測加速度W1も基本的に負の値である。過度な急減速を避けられるように、惰行走行の下限の値さえ定めてあればよい。
【0072】
・上記変更例とは逆に、惰行用処理の内容を次のように構成してもよい。すなわち、ステップS100では、第1予測加速度W1と第2予測加速度W2のうち、第2予測加速度W2のみを算出し、第1予測加速度W1の算出を廃止する。そして、ステップS100の後、処理をステップS110に進める。そして、ステップS110において、第2予測加速度W2が設定範囲R内であれば(ステップS110:YES)、処理をステップS140に進めて内燃機関20をアイドル状態に制御する。一方、第2予測加速度W2が設定範囲R外であれば(ステップS110:NO)、処理をステップS210以降に進めて加速度のフィードバック制御を行う。
【0073】
・惰行走行条件は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、惰行走行条件として、アプリケーションAPからの要求加速度が惰行下限値RD以上且つ惰行上限値RU以下である、という内容を採用してもよい。惰行走行条件は、惰性での減速が求められる状況を規定できるものであればよい。
【0074】
・実加速度WQの算出方法は、上記実施形態の例に限定されない。実加速度WQを適切に算出できるのであれば、実加速度WQの算出方法は問わない。
・上記実施形態に記載した複数のECUのうち、ある特定のECUが別のECUの機能を兼ねてもよい。例えば、統括ECU60が、当該統括ECU60自身の機能に加え、駆動系ECU71とブレーキECU72との機能を兼ねてもよい。上記実施形態と同様の処理を実現できるのであれば、こうした構成を採用してもよい。
【0075】
・上記変更例とは逆に、上記実施形態におけるある1つのECUの機能を複数のECUによって実現してもよい。例えば、上記実施形態における統括ECU60の機能を複数のECUで実現してもよい。この場合、これら複数のECU全体が車両100の制御装置を構成する。
【0076】
・統括ECU60の処理回路62は、以下(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。この点、例えば指令ECU80といった、他のECUの処理回路についても同様である。
【0077】
(a)処理回路62は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
【0078】
(b)処理回路62は、各種処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
【0079】
(c)処理回路62は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【符号の説明】
【0080】
20…内燃機関
50…油圧ブレーキ
60…統括ECU
100…車両
図1
図2
図3