(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179970
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】焼成麺食品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241219BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20241219BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20241219BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 J
A23L7/109 Z
A23L3/36 Z
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099346
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 尚
(72)【発明者】
【氏名】富本 文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓史
【テーマコード(参考)】
4B022
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB01
4B022LQ07
4B036LC01
4B036LH10
4B036LH12
4B036LH14
4B036LH29
4B036LH38
4B036LK01
4B036LP02
4B046LA05
4B046LB10
4B046LC08
4B046LC15
4B046LC17
4B046LE15
4B046LG16
4B046LG33
4B046LG42
4B046LP64
4B046LP69
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】喫食時に麺がほぐれやすい焼成麺食品を製造する新たな技術的手段を提供する。
【解決手段】第1面部および第2面部を備えた焼成装置を用いて焼成麺食品を製造する方法であって、
麺焼成温度未満の第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより上記被焼成麺食品を焼成して焼成麺食品を得る工程
を含み、
第2面部は上記焼成時に第1面部の略鉛直上側に配置される、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面部および第2面部を備えた焼成装置を用いて焼成麺食品を製造する方法であって、
麺焼成温度未満の第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより前記被焼成麺食品を焼成して焼成麺食品を得る工程
を含み、
第2面部は前記焼成時に第1面部の略鉛直上側に配置される、方法。
【請求項2】
前記焼成する工程において、前記被焼成麺食品に対する第2面部の押しつけが2回以上実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加水処理済み麺に油脂を付着させた後にブラウニング剤を付着させることを含む、前記被焼成麺食品を準備する工程
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記被焼成麺食品が、前記略鉛直上側が開放されている容器に収容された状態で第1面部上に配置される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記焼成麺食品が電子レンジにより調理または焼成される冷凍用食品である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
加水処理済み麺を含む被焼成麺食品の焼成装置であって、
麺焼成温度未満に維持された第1面部と、前記第1面部の略鉛直上側に対向配置する第2面部と、前記第2面部を麺焼成温度以上に加熱可能な熱源を備え、
前記第1面部および前記第2面部で前記被焼成麺食品を挟持するように焼成する、
焼成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼成麺食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
あんかけ焼きそば等においては、予め焼成された麺(本開示において「焼成麺食品」ともいう)を使用することが知られている。焼成麺食品は、食べやすさ等の観点から、喫食時に麺がほぐれやすいものが好まれている。
【0003】
特許文献1では、加熱された2つの平板の間に蒸した麺を配置し、麺を両面焼きにする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1で開示されている方法は、焼成麺食品を製造できるものの、喫食時に麺がほぐれにくいことが、本開示者らの検討により明らかとなった。
【0006】
したがって、本開示は、喫食時に麺がほぐれやすい焼成麺食品を製造する新たな技術的手段を提供することを一つの目的とする。
【0007】
本開示者らは、加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に特定の焼成方法を適用したところ、喫食時に麺がほぐれやすい焼成麺食品を製造しうることを見出した。本開示は、かかる知見に基づくものである。
【0008】
本開示の一実施態様によれば、第1面部および第2面部を備えた焼成装置を用いて焼成麺食品を製造する方法であって、
麺焼成温度未満の第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより上記麺原料含有物を焼成して焼成麺食品を得る工程
を含み、
第2面部は上記焼成時に第1面部の略鉛直上側に配置される方法が提供される。
【0009】
本開示によれば、喫食時に麺がほぐれやすい焼成麺食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施態様における焼成麺食品を製造する方法のフロー図の一例を示す。
【
図2】本開示の一実施態様における組み合わせ食品を製造する方法のフロー図の一例を示す。
【
図3】本開示の方法に使用される焼成装置の一例を示す。
【
図4】本開示の一実施態様における焼成麺食品を製造する方法のフロー図の一例を示す。
【発明の具体的説明】
【0011】
本開示は、質の高い食品を製造して、人々の生活の質的改善に貢献し、SDGs観点に資する技術を提供するものである。
【0012】
本開示の一実施態様によれば、第1面部および第2面部を備えた焼成装置を用いる焼成麺食品を製造する方法は、
麺焼成温度未満の第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより上記被焼成麺食品を焼成して焼成麺食品を得る工程
を含み、第2面部は上記焼成時に第1面部の略鉛直上側に配置される。
【0013】
また、本開示のより具体的な一実施態様によれば、上記焼成麺食品を製造する方法は、
加水処理済み麺を含む被焼成麺食品を準備する工程、
上記被焼成麺食品を麺焼成温度未満の第1面部上に配置する工程、および
麺焼成温度未満の第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより上記被焼成麺食品を焼成して焼成麺食品を得る工程
を含み、第2面部は上記焼成時に第1面部の略鉛直上側に配置される。
【0014】
本開示の方法は、焼成中、焼成する部分(第2面部側)に被焼成麺食品の自重に起因する圧力がかかりにくいことから、麺や食品添加成分を分散させ、ほぐれやすさを向上させるうえで有利である。また、本開示の方法は、特に被焼成麺食品に食品添加成分を含有させる場合、焼成中、食品添加成分の一部は自重により焼成面(第2面部側)と反対方向に移行しうることから、電子レンジ調理する際に非焼成面側(第1面部側)に移行した食品添加成分を電磁波により焼成・調理し、良好な焼き目を付与する上で有利である。
【0015】
本開示の麺食品を製造する方法は、上述のとおり、第1面部および第2面部を備えた焼成装置を用いて実施することができる。具体的には、上記焼成装置を用いて被焼成麺食品を焼成する際に第1面部と第2面部との間で被焼成麺食品を挟持し、第2面部にて被焼成麺食品を焼成する。本開示の一実施態様によれば、上記焼成装置において、第2面部で被焼成麺食品の焼成を実施し、第1面部側では被焼成麺食品の焼成を実施しないことから、第1面部は麺焼成温度未満に設定され、第2面部は麺焼成温度以上に設定される。本開示の方法に用いられる焼成装置は、上記温度設定を行うことができる限り特に限定されず、公知の焼成装置を応用したものを用いてもよい。
【0016】
第1面部および第2面部を備えた焼成装置において、第1面部および第2面部は、別体として存在してもよく、同一の装置中に存在していてもよい。
【0017】
上記焼成装置の具体的な例としては、温度調整機能を備える上下に配置されたベルト状の装置で、上下の挟み込みコンベアとして循環可能なものや、温度調整機能を備える上下開閉可能は平板(例えば、鉄板)を含む装置が挙げられる。
【0018】
本開示の一実施態様では、上記焼成装置は、上記第1面部が麺焼成温度未満に維持される。そのため、上記焼成装置は、例えば、上記第1面部を加熱可能な熱源を備えていなくてもよいし、上記第1面部を加熱可能な熱源を備えている場合には該熱源がオフになっていてもよい。
【0019】
本開示の一実施態様では、上記焼成装置は、上記第2面部を麺焼成温度以上に加熱可能な熱源を備える。
【0020】
本開示の一実施態様では、上記第1面部と上記第2面部が、いずれもベルト(例えば、スチールベルト)であり、上下の挟み込みコンベアとして循環させる。本開示の一実施態様では、上記第1面部は、上下に配置されたベルト(例えば、スチールベルト)における下側のベルト上に配置ないし連結された部材の内表面であり、上記第2面部は、当該上下に配置されたベルト(例えば、スチールベルト)における上側のベルトの表面であり、上下の挟み込みコンベアとして、被焼成麺食品を輸送しながら、焼成することができる。
【0021】
上記第1面部および第2面部の大きさや厚さ、形状等は、被焼成麺食品の種類、焼成麺食品に関する所望の形状や生産効率等に応じて適宜調整することができる。
【0022】
上記第1面部および第2面部の材質は、被焼成麺食品の焼成温度を所望の範囲に調整しうる限り特段限定されるものではなく、同じであってもよいし、異なっていてもよい。具体的な材質としては、例えば、紙製、木製、金属製、プラスチック製、陶磁器製、これらの2種以上を組み合わせたもの、これらの表面にセラミックやフッ素樹脂等のコーティング加工したもの等が挙げられる。
【0023】
以下、本開示の具体的な一実施態様について、
図1のフロー図を参照して工程毎に説明する。
[加水処理済み麺を含む被焼成麺食品を準備する工程]
本開示の一実施態様によれば、焼成麺食品を製造する方法では、
図1に示されるとおり、加水処理済み麺を含む被焼成麺食品を準備する工程(以下、「工程(1)」ともいう)を実施する(
図1のS1)。
【0024】
工程(1)においては、加水処理済み麺をそのまま被焼成麺食品としてもよいし、加水処理済み麺に食品添加成分を付着して麺と食品添加成分とを含む被焼成麺食品としてもよい。また、予め調製された被焼成麺食品(例えば、市販されている被焼成麺食品)を入手して本開示の方法に使用してもよい。
【0025】
被焼成麺食品が食品添加成分を含む場合、加水処理済み麺に食品添加成分を付着する方法は、特に限定されず、加水処理済み麺と食品添加成分とを公知の混合機で混合してもよく、加水処理済み麺に対して食品添加成分を噴霧してもよいが、麺に均一に食品添加成分を添加する観点から、麺に対して食品添加成分を噴霧することが好ましい。加水処理済み麺に食品添加成分を加える方法の条件(時間、温度、速度、各成分の添加順序等)は、所望の被焼成麺食品および/または焼成麺食品に応じて当業者が適宜調整することができる。
【0026】
本開示に用いられる加水処理済み麺は、水分を加える処理(加水処理)がなされた麺であり、喫食可能な程度に澱粉質がα化し含水率が高まったものであればよい。加水処理としては、茹で、蒸し、浸漬等が挙げられ、これらは加熱下で実施してもよいし、非加熱下で実施してもよい。加水処理の条件(温度、時間等)は、所望の加水処理済み麺、焼成麺食品等に応じて適宜調整することができる。加水処理がなされる麺としては、例えば、生麺、半生麺、乾燥麺等が挙げられる。
【0027】
麺の形状は、麺の形状として採用されうるものであれば特に限定されず、所望の焼成麺食品および/またはこれを含む組み合わせ食品に応じて適宜選択することができる。麺の形状としては、例えば、線状、帯状、扁平状、筒状等が挙げられる。本開示の一実施態様では、麺の形状は、線状である。
【0028】
麺の太さや長さは、特に限定されず、所望の焼成麺食品および/またはこれを含む組み合わせ食品に応じて適宜選択することができる。
【0029】
麺としては、例えば、うどん、中華麺、きしめん、ほうとう、ビーフン、パスタ、ショートパスタ、春雨、ビーフン、スパゲッティ、マカロニ等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。麺は任意の方法(例えば、麺帯を成形して回転式の切刃で細断する方法、麺線の形状に押し出し成型する方法)で製麺してもよい。
【0030】
本開示の被焼成麺食品は、麺の焼成の際に炒め感を付与する観点から、食品添加成分として油脂を含有していることが好ましい。油脂としては、特段限定されるものではないが、例えば、バター、鶏脂、豚脂、牛脂、乳脂、ギー、魚油、鯨油等の動物性油脂;サラダ油、白絞油、コーン油、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、ごま油、こめ油(米ヌカ油)、糠油、椿油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、パーム核油、ヤシ油、綿実油、ひまわり油、アマニ油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル、レタス油等の植物性油脂;これらを混合ないし加工等した食用加工油脂等が挙げられる。油脂は、乳化剤で乳化されたものであってもよい。
【0031】
油脂の量は、特段限定されるものではなく、所望の焼成麺食品等に応じて適宜調整することができる。油脂の量は、例えば、上記焼成麺食品の全量を基準として、約0.1~約20質量%、好ましくは約1~約15質量%、より好ましくは約2~約10質量%であってもよい。
【0032】
また、油脂の量は、例えば、100質量部の加水処理する前の麺(例えば、製麺された生麺)を基準として、約0.3~約30質量部、好ましくは約1~約20質量部、より好ましくは約2~約10質量部であってもよい。また、油脂の量は、例えば、100質量部の上記加水処理済み麺を基準として、約0.2~約20質量部、好ましくは約0.8~約10質量部、より好ましくは約1.5~約8質量部であってもよい。油脂の量は、焼成麺食品や、焼成麺食品を含んでなる組み合わせ食品を喫食したときに油っぽさを感じにくくする観点から、100質量部の加水処理する前の麺(例えば、製麺された生麺)を基準として、約30質量部を超えない、および/または、100質量部の上記加水処理済み麺を基準として、約20質量部を超えないことが好ましい。
【0033】
本開示の一実施態様では、麺に風味を付与する観点から、油脂は香味油を含むことが好ましい。本開示における香味油は、香味を有する油であれば特段限定されるものではない。香味油は、加熱した際に香味を有しうるか、または加熱した際に香味が増強されうるものであることが好ましい。
【0034】
香味油は、動物由来の油脂であってもよいし、植物から抽出等された油脂であってもよいし、香辛料、野菜、畜肉エキス、魚介エキスなどの香味原料をその他の食用油脂に移行ないし付加させた油脂であってもよい。なお、「その他の食用油脂」は、香味をほとんど有さないか、香味を全く有さない食用油脂である。そのため、ごま油等は、「その他の食用油脂」に包含されない。「その他の油脂」としては、例えば、サラダ油、白絞油、コーン油、大豆油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、綿実油、ひまわり油等が挙げられる。
【0035】
香味油としては、これらに限定されるものではないが、例えば、バター、鶏脂、豚脂、牛脂、乳脂、ギー、魚油、鯨油等の動物由来の油脂;ごま油、菜種油等の植物から抽出等された油脂;米、小麦、大麦、唐辛子、ショウガ、ニンニク、マスタード、オニオン、ねぎ、ニラ、セリ、しそ、わさび、レモン、畜肉エキス、魚介エキス等の香味原料をその他の食用油脂に移行ないし付加させた油脂;等が挙げられる。これらの香味油は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
香味油の量は、特段限定されるものではなく、所望の焼成麺食品等に応じて適宜調整することができる。香味油の量は、例えば、上記被焼成麺食品に含まれる油脂の全量を基準として、約5~100質量%、好ましくは約10~約80質量%、より好ましくは約10~約40質量%であってもよい。
【0037】
香味油の量は、例えば、上記焼成麺食品の全量を基準として、約0.05~約15質量%、好ましくは約0.1~約10質量%、より好ましくは約0.3~約5質量%であってもよい。
【0038】
香味油の量は、例えば、100質量部の加水処理する前の麺(例えば、製麺された生麺)を基準として、約0.3~約30質量部、好ましくは約0.6~約20質量部、より好ましくは約1~約5質量部であってもよい。また、香味油の量は、例えば、100質量部の上記加水処理済み麺を基準として、約0.1~約20質量部、好ましくは約0.2~約10質量部、より好ましくは約0.3~約3質量部であってもよい。
【0039】
また、本開示の被焼成麺食品は、麺に焼成感を付与する観点から、食品添加成分としてブラウニング剤を含むことが好ましい。本開示におけるブラウニング剤は、焼成麺食品に焼き色を付与しうる、および/または焼き色の付与を促進しうるものである。ブラウニング剤は、例えば、メイラード反応に関与しうるものであってもよい。ブラウニング剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、還元糖、アミノ化合物、カラメル等が挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ブラウニング剤は、還元糖、アミノ化合物およびカラメルからなる群より選択される少なくとも1種または全部を含むことが好ましい。
【0040】
還元糖としては、例えば、単糖、二糖、オリゴ糖(例えば、平均重合度3~30個のもの)、多糖(平均重合度:31個以上、例えば、31~1000個)、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるものであってよい。単糖の還元糖は、ヘキソース(アルドヘキソース、ケトヘキソース)であってもよいし、アルドースであってもよい。還元糖としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、ラムノース、キシロースなどの単糖の還元糖;ラクトース、ラクツロース、マルトース等の二糖の還元糖;ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖等のオリゴ糖の還元糖;デキストリン等の多糖の還元糖;等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本開示の一実施態様では、還元糖は、単糖の還元糖であり、好ましくはグルコースである。
【0041】
アミノ化合物としては、アミノ基を有する化合物であればよく、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、これらの誘導体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本開示において、タンパク質とは50個超のアミノ酸がペプチド結合によりつながった化合物を指し、ペプチドとは、2個以上50個以下のアミノ酸がペプチド結合によりつながった化合物を指す。アミノ酸としては、ヒスチジン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、リジン、ヒドロキシリジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、ヒドロキシプロリン、グリシン、アラニン、スレオニン、メチオニン、シスチン、システイン、チロキシン、オルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本開示の一実施態様では、アミノ化合物は、アミノ酸である。
【0042】
カラメルとしては、例えば、スクロース、ブドウ糖等の食用炭水化物を熱処理して得たものが挙げられる。
【0043】
ブラウニング剤の量は、例えば、100質量部の加水処理する前の麺(例えば、製麺された生麺)を基準として、約0.1~約20質量部、好ましくは約0.2~約10質量部、より好ましくは約0.4~約4質量部であってもよい。また、ブラウニング剤の量は、例えば、100質量部の上記加水処理済み麺を基準として、約0.06~約14質量部、好ましくは約0.1~約8質量部、より好ましくは約0.2~約2質量部であってもよい。
【0044】
本開示の好ましい実施態様では、上記被焼成麺食品は、油脂およびブラウニング剤のいずれも含む。被焼成麺食品が油脂およびブラウニング剤をいずれも含むことは、麺に焼成感を付与する上で特に有利である。
【0045】
上記被焼成麺食品が油脂およびブラウニング剤のいずれも含む場合、上記工程(1)は、加水処理済み麺に油脂を加えた後に、ブラウニング剤をさらに加えること(すなわち、加水処理済み麺に油脂を付着させた後に、ブラウニング剤を付着させること)が好ましい。このような順序で麺に油脂とブラウニング剤を加えることは、ブラウニング剤が油脂にコーティングされることを防止し、焼成した際に焼き色をより良好に付与する上で有利である。
【0046】
上記被焼成麺食品が油脂およびブラウニング剤を含む場合、油脂およびブラウニング剤の比率(油脂/ブラウニング剤)は、例えば、上記被焼成麺食品中に含まれるこれらの質量を基準として、約1:1~約20:1、好ましくは約2:1~約15:1、より好ましくは約3:1~約10:1であってもよい。
【0047】
また、油脂およびブラウニング剤の他、上記被焼成麺食品が含んでいてもよい食品添加成分としては、特に限定されないが、調味料、着色料、乳化剤、酸化防止剤、加工卵製品、アルコール等の溶媒;各種食物繊維;各種防腐剤;各種酵素等が挙げられる。これら成分は、上記被焼成麺食品の製造工程中で任意のタイミングで適宜添加してもよい。
【0048】
調味料としては、例えば、化学調味料;甘味料(砂糖、トレハロース、各種オリゴ糖、各種液糖、人工甘味料を含むが、上記還元糖を除く);塩;酢;醤油;みそ;みりん;酒等のアルコール;果汁(レモン果汁等を含む);胡椒、唐辛子、カレー粉、ガラムマサラ、各種ハーブ等の香辛料または香味料;水溶性香料、油溶性香料等の香料;等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
着色料としては、例えば、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、カロチノイド系色素等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
乳化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル;ポリソルベート等の非イオン性界面活性剤;レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等のリン脂質;大豆サポニン、酵素処理大豆サポニン、茶種子サポニン、ユッカフォーム抽出物等のサポニン;等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
酸化防止剤としては、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
[加水処理済み麺を含む被焼成麺食品を第1面部上に配置する工程]
また、本開示の一実施態様によれば、工程(1)で得られた加水処理済み麺を含む被焼成麺食品を第1面部上に配置する工程(以下、「工程(2)」ともいう)を実施する(
図1のS2)。工程(2)において、上記被焼成麺食品は、後続する第2面部による焼成を実施しうる限り、第1面部上に直接的配置されていてもよく、容器等に収容された状態で第1面部上に間接的に配置されていてもよい。
【0053】
本開示において、上記第1面部は、麺を焼成可能な温度(本開示において「麺焼成温度」ともいう)未満とされる。麺焼成温度未満とは、麺の種類や性質に応じて適宜変更してよいが、例えば、約100℃未満、好ましくは約0~約80℃、より好ましくは約0~約50℃、さらに好ましくは常温(例えば、約5~約35℃)であってもよい。
【0054】
上記第1面部は、所望の時間にわたって上記被焼成麺食品を配置可能であり、後述する第2面部が上記被焼成麺食品と接することが可能な程度に、上記被焼成麺食品を露出可能なものであれば、特段限定されるものではない。したがって、上記第1面部は、上記被焼成麺食品が配置可能であれば、その表面(すなわち、上記被焼成麺食品が接する面)に、凹凸があってもよいし、断続的な隙間があってもよい。
【0055】
上記第1面部は、任意の形状を採用することができ、例えば、略平板状であってもよいし、上記被焼成麺食品の一部または全部が入ることが可能な窪み(例えば、略半楕円形状の窪み、略半円形状の窪み、逆三角形状の窪み等)を有するものであってもよい。また、上記第1面部は、被焼成麺食品を安定に配置しつつほぐれやすさを付与する観点から、地面に対して略水平状であることが好ましい。
【0056】
上記被焼成麺食品の形状は、任意の形状であってよく、例えば、略球形、略楕円球形、略直方体形、略棒状等であってもよい。
【0057】
また、本開示の一実施態様では、被焼成麺食品は、後続する工程において第2面部が被焼成麺食品を押しつけ可能なように、少なくとも一方向が開放された容器に収容された状態で上記第1面部上に配置されてもよい。より具体的には、被焼成麺食品は、焼成時に略鉛直上側(すなわち、第2面部側)が開放されている容器に収容された状態で第1面部上に配置されることが好ましい。かかる容器としては、例えば、皿;カップ;ボール等の半球状の容器;灰皿状の容器等の容器が挙げられる。
【0058】
本開示の上記被焼成麺食品の量は、特に限定されず、焼成麺食品の所望のサイズを勘案して決定してよいが、例えば、一個当たり、約50~約500g、好ましくは約100~約300g、より好ましくは約120~約200gとしてもよい。
【0059】
[第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより被焼成麺食品を焼成して焼成麺食品を得る工程]
また、本開示の一実施態様によれば、工程(2)の後、麺焼成温度未満の第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより上記被焼成麺食品を焼成して焼成麺食品を得る工程(以下、「工程(3)」ともいう)を実施する(
図1のS3)。
【0060】
本開示の一実施態様では、上述のとおり、上記第2面部は、上記工程(3)における押しつけ(焼成)の際、上記第1面部に対して略鉛直上側に配置(好ましくは、対向配置)される。本開示において、略鉛直上側とは、おおよそ鉛直上方向(すなわち、おおよそ反重力方向)であることを意味し、上記工程(3)において上記第1面部と上記第2面部との間で被焼成麺食品を挟持し、第2面部にて被焼成麺食品を焼成することが可能な限り、水平方向にずれていても(すなわち、上記第1面部と上記第2面部が平行でなくても)よい。上記第1面部と上記第2面部が平行であるとは、上記第1面部の面積と第2面部の面積を拡大しても、上記第1面部と上記第2面部が接触しない場合を意味する。水平方向にずれているとは、例えば、上記第1面部と上記第2面部が平行である場合から、約45°以内、好ましくは約30°以内、より好ましくは約15°以内、さらに好ましくは約5°以内のずれである。本開示の好ましい実施態様では、上記第2面部は、上記工程(3)における押しつけ(焼成)の際、上記第1面部に対して鉛直上側に配置される(すなわち、上記第1面部と上記第2面部が平行である)。第2面部を第1面部に対して略鉛直上側に配置することは、焼成する部分(第2面部と接触する部分)に被焼成麺食品の自重に起因する圧力がかかりにくく、麺のほぐれやすさや、食品添加成分の分散を促進する上で好ましい。上記第2面部は、上記工程(3)の前(例えば、上記工程(2)の際)や上記工程(3)の後において、上記第1面部に対して略鉛直上側に配置されている必要はなく、任意の位置に配置されいてもよい。
【0061】
上記第2面部の温度は、麺焼成温度以上であれば、上記被焼成麺食品の種類(例えば、原料等)、焼成する時間等を考慮の上、適宜調整することができる。麺焼成温度以上とは、例えば、約100~約400℃、好ましくは約150~約300℃、より好ましくは約200~約250℃であってもよい。上記第2面部は、火、電気、赤外線等により直接加熱されてもよいし、加熱されたヒーター等の熱源を介して間接的に加熱されてもよい。本開示の一実施態様では、上記第2面部は、麺焼成温度以上に予め加熱しておくことが好ましい。
【0062】
上記被焼成麺食品を焼成する時間は、上記被焼成麺食品を焼成可能な時間であれば、上記被焼成麺食品の種類(例えば、原料等)、上記第2面部の温度等を考慮の上、適宜調整することができる。例えば、上記第2面部の温度が約200~約250℃の場合には、約0.5~約30分間、好ましくは約1~約15分間、より好ましくは約3~約5分間であってもよい。
【0063】
工程(3)では、例えば、上記被焼成麺食品が上記第2面部に押しつけられるまで、上記第1面部を上記第2面部に接近するよう動かすことで、上記被焼成麺食品を焼成してもよい。また、上記被焼成麺食品が上記第2面部に押しつけられるまで、上記第2面部を上記第1面部に接近するよう動かすことで、上記被焼成麺食品を焼成してもよい。また、上記被焼成麺食品が上記第2面部に押しつけられるまで、上記第2面部および上記第1面部が接近するよう双方を動かすことで、上記被焼成麺食品を焼成してもよい。
【0064】
本開示の一実施態様では、上記工程(3)において、上記第1面部上に配置された上記被焼成麺食品と第2面部が接触することで、上記被焼成麺食品は、焼成されるだけでなく、圧延される。焼成する工程において、被焼成麺食品に対する第2面部の押しつけの回数は、特に限定されず、1回実施されてもよいし、連続的にまたは断続的に2回以上実施されてもよい。押しつけの回数が1回の場合は、被焼成麺食品が単調に1回だけ加圧加熱されるため、単調な食感の焼成麺食品とする場合に有利である。押しつけの回数が複数回の場合は、被焼成麺食品が複数回にわたって加圧加熱されるため、焼成麺食品の食感をきめ細かに調整できる点で有利である。例えば、1回目の押しつけで加熱が不十分なとき、2回目の押しつけを実施してもよい。
【0065】
被焼成麺食品への上記第2面部の押しつけを終える方法は、特段限定されるものではなく、例えば、上記第2面部を焼成麺食品から離れる方向に移動してもよいし、第1面部を下方に移動してもよいし、焼成された被焼成麺食品をスクレーパ等により擦り落としてもよい。
【0066】
上記第2面部の構成は、被焼成麺食品の焼成を実施しうる限り特に限定されず、上記被焼成麺食品を焼成可能な面を備えていればよい。したがって、上記第2面部には、その表面(すなわち、上記被焼成麺食品が接する面)に凹凸があってもよいし、断続的な隙間があってもよい。
【0067】
上記第2面部は、任意の形状を採用することができ、例えば、略平板状の面のように略水平状の面であってもよいし、上記被焼成麺食品の一部または全部が入ることが可能な窪み(例えば、略半楕円形状の窪み、略半円形状の窪み、逆三角形状の窪み等)を有するものであってもよいが、被焼成麺食品を安定に配置しつつほぐれやすさを付与する観点から、地面に対して略水平状であることが好ましい。
【0068】
上記第2面部の大きさや厚さ等は、所望の被焼成麺食品および/または焼成麺食品に応じて適宜調整することができる。
【0069】
上記被焼成麺食品の形状は、任意の形状であってよく、例えば、被焼成麺食品と同様、略球形、略楕円球形、略直方体形、略棒状等であってもよい。
【0070】
本開示の上記焼成麺食品の量は、特に限定されず、例えば、一個当たり、約50~約500g、好ましくは約100~約300g、より好ましくは約120~約200gとしてもよい。
【0071】
また、本開示の方法においては、上記工程(1)~工程(3)の前後において、本開示の方法の作用効果を妨げない限りにおいて、必要に応じて他の工程(例えば、加熱、冷蔵、冷凍、静置、成形等)が含まれていてもよい。
【0072】
[焼成麺食品/組み合わせ食品]
また、本開示の一実施態様によれば、本開示の方法により得られた、焼成麺食品が提供される。焼成麺食品としては、特に限定されないが、例えば、焼きそば、焼きうどん、焼きスパゲッティ、焼きビーフン等が挙げられる。
【0073】
本開示の焼成麺食品は、そのまま焼成麺として喫食してもよいが、所謂あんかけ食品等のように、粘稠性または液状の食品と組み合わせて喫食してもよい。したがって、本開示の一実施態様によれば、本開示の方法により得られた焼成麺食品と、粘稠性または液状の食品と組み合わせた組み合わせ食品が提供される。
【0074】
粘稠性または液状の食品は、焼成麺食品と共に喫食しうる限り特に限定されないが、喫食前に電子レンジ等による加熱調理を行う場合には、加熱調理後に出来たての風味を付与する観点から、香味油を後添加して製造することが好ましい。以下、本開示の組み合わせ食品の製造方法の一実施態様について
図2のフロー図に従い、工程毎に説明する。
【0075】
本開示の一実施態様によれば、上記組み合わせ食品の製造における焼成麺食品の製造工程は、本開示の焼成麺食品を製造する方法に従い実施される。
図2のS1a~S3aに示されるとおり、上記組み合わせ食品の製造における焼成麺食品の製造工程は、
図1のS1~S3(工程(1)~(3))に対応している。
【0076】
本開示の一実施態様によれば、組み合わせ食品を製造する方法では、
図2に示されるとおり、ベース液媒体を準備する工程(以下、「工程(4)」ともいう)を実施する(
図2のS4a)。
【0077】
上記工程(4)では、上記粘稠性または液状の食品のベースとなるベース液媒体は、公知の手法に従い、穀粉、水、調味料および任意の他の食品添加成分を混合し、加熱することにより準備してもよい。また、予め調製されたベース液媒体を入手してもよい。
【0078】
ベース液媒体に含まれる穀物は、上記焼成麺食品において例示したものと同様のものを使用してよいが、粘稠性または液状の食品にとろみを付与する観点からは、片栗粉等が好ましい。
【0079】
ベース液媒体に含まれる穀粉の量は、例えば、100質量部のベース液媒体を基準として、約0.1~約10質量部、好ましくは約0.3~約5質量部、より好ましくは約0.5~約3質量部であってもよい。
【0080】
ベース液媒体に含まれる水の量は、例えば、100質量部のベース液媒体を基準として、約10~約90質量部、好ましくは約20~約70質量部、より好ましくは約30~約60質量部であってもよい。
【0081】
任意の他の食品添加成分としては、例えば、野菜、果物、肉、魚等の具材のほか、上記焼成麺食品を製造する方法において上述した食品添加成分(これらに限定されるものではないが、例えば、油脂、ブラウニング剤、調味料、着色料、乳化剤、酸化防止剤等)が挙げられる。
【0082】
また、本開示の一実施態様によれば、上記工程(4)の後、ベース液媒体に、香味油を添加する工程(以下、「工程(5)」ともいう)を実施する(
図2のS5a)。
【0083】
香味油は、上記焼成麺食品において例示したものと同様のものを使用してよく、ベース液媒体と公知手法により混合してもよいが、実質的に非加熱下でベース液媒体に滴下、噴霧等の手法により添加することが好ましい。実質的に非加熱下で香味油を添加することは、香味油の化学変化や蒸発を抑制し、上記組み合わせ食品を加熱して喫食する際に、香り立ちを向上させる上で有利である。ここで、「実質的に非加熱下」とは、香味油の化学変化や蒸発が抑制しうる温度範囲を意味し、具体的な温度としては、例えば、約200℃未満、好ましくは約100℃未満、より好ましくは常温(例えば、約5~約35℃)である。
【0084】
香味油の量は、例えば、100質量部のベース液媒体を基準として、約0.05~約5質量部、好ましくは約0.1~約3質量部、より好ましくは約0.3~約1質量部であってもよい。また、上記工程(4)で添加する香味油の量は、上記粘稠性または液状の食品中に含まれる香味油の全量を基準として、約20~100質量%、好ましくは約50~100質量%、より好ましくは約80~100質量%、さらに好ましくは約90~100質量%であってもよい。
【0085】
また、上記粘稠性または液状の食品は、冷凍温度帯(約-40~約0℃)で固形化し、喫食温度(約30~約80℃程度)で流動性を有する食品であることが好ましい。本開示において、上記粘稠性または液状の食品は、例えば、60℃において、約10~約60000mPa・s、好ましくは約50~約20000mPa・s、より好ましくは約200~約10000mPa・s、さらに好ましくは約400~約8000mPa・sの粘度を有していてもよい。
【0086】
上記組み合わせ食品において、上記焼成麺食品と上記粘稠性または液状の食品は、同一の容器等に保存されていてもよいし、それぞれ別個の容器等に保存されていてもよい。
【0087】
また、本開示の方法により製造された焼成麺食品または組み合わせ食品は、そのまま喫食可能なものであってもよいし、さらなる処理(例えば、電子レンジ等による加熱等)をすることで喫食可能とするものであってもよい。本開示の焼成麺食品を喫食前に加熱機器(電子レンジ等)により加熱処理することは、焼成麺食品の第1面部側の未焼成部分に存在する麺および食品添加成分に対して加熱調理を実施し、良好な焼き目を付与する上で好ましい。したがって、本開示の焼成麺食品または組み合わせ食品は、好ましくは加熱調理用食品であり、より好ましくは電子レンジ調理用食品である。
【0088】
また、上記加熱機器による加熱処理は、冷凍食品において好適に適用される。したがって、本開示の好ましい実施態様によれば、焼成麺食品または組み合わせ食品は冷凍用食品とされる。上記組み合わせ食品は、上記粘稠性または液状の食品のいずれか一方または両方が冷凍されたものであってもよい。
【0089】
本開示は、以下のものを包含する。
〔1〕第1面部および第2面部を備えた焼成装置を用いて焼成麺食品を製造する方法であって、
麺焼成温度未満の第1面部上に配置された加水処理済み麺を含む被焼成麺食品に、麺焼成温度以上の第2面部を押しつけることにより上記被焼成麺食品を焼成して焼成麺食品を得る工程
を含み、
第2面部は上記焼成時に第1面部の略鉛直上側に配置される、方法。
〔2〕上記焼成する工程において、上記被焼成麺食品に対する第2面部の押しつけが2回以上実施される、〔1〕に記載の方法。
〔3〕上記加水処理済み麺に油脂を付着させた後にブラウニング剤を付着させることを含む、上記被焼成麺食品を準備する工程
を含む、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕上記被焼成麺食品が、上記略鉛直上側が開放されている容器に収容された状態で第1面部上に配置される、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕上記焼成麺食品が電子レンジにより調理または焼成される冷凍用食品である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕上記被焼成麺食品が食品添加成分をさらに含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕上記食品添加成分の少なくとも一部が、上記焼成時に自重により略鉛直下方向に移行しうる、〔6〕に記載の方法。
〔8〕上記食品添加成分の少なくとも一部が、電子レンジ調理により焼成または調理しうるものである、〔6〕または〔7〕に記載の方法。
〔9〕上記食品添加成分が油脂を含む、〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕上記油脂が香味油を含む、〔9〕に記載の方法。
〔11〕上記油脂の量が、上記加水処理済み麺100質量部を基準として、0.1~20質量%である、〔9〕または〔10〕に記載の方法。
〔12〕上記食品添加成分がブラウニング剤を含む、〔6〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕上記ブラウニング剤の量が、上記加水処理済み麺100質量部を基準として、0.06~14質量部である、〔12〕に記載の方法。
〔14〕第1面部および第2面部の少なくとも一方が平板状である、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の方法。
〔15〕上記焼成麺食品が、粘稠性または液状の食品と組み合わせて喫食するための焼成麺食品である、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕加水処理済み麺を含む被焼成麺食品の焼成装置であって、
麺焼成温度未満に維持された第1面部と、上記第1面部の略鉛直上側に対向配置する第2面部と、上記第2面部を麺焼成温度以上に加熱可能な熱源を備え、
上記第1面部および上記第2面部で上記被焼成麺食品を挟持するように焼成する、
焼成装置。
【実施例0090】
以下、実施例を用いて本開示の方法をより詳細に説明する。但し、以下の実施例は、本開示の方法を何ら限定することを意図するものではない。なお、特段の記載がない限り、本明細書中に記載のパーセンテージや比率は、質量による。また、特段の記載がない限り、本明細書中に記載の単位や測定方法は、日本工業規格(JIS)の規定による。
【0091】
[実施例1:焼成麺食品の製造1:第2面部による焼成]
<工程(1)>
公知の方法で製麺した中華生麺 110gを沸騰したお湯で3分間茹で、4℃の冷水に30秒間浸漬した後に水を切ることで、約160gの加水処理済み麺(水分含量が約60%の茹で麺)を得た。
【0092】
<工程(2)>
工程(2)以降では、ベルト状の装置(TWG1200/420、GEA社製)をベースとした焼成装置を使用した。ここで、
図3は焼成装置の模式図である。
図3に示されるとおり、焼成装置1は、下側のベルト2および上側のベルト3を備え、下側のベルト2の被焼成麺食品4側に第1面部5を配置し、上側のベルト3の被焼成麺食品4側に第2面部6を備えている。また、焼成装置1の第2面部6の内部には、被焼成麺食品4を加熱処理するための熱源7が配置されており、図示しないが、上側のベルト3の内部にも熱源7は配置されている。焼成時には、上側のベルト3は上下動し、被焼成麺食品4は第1面部5および第2面部6に挟持されて焼成される。
【0093】
上記で準備した麺(被焼成麺食品)を、上記焼成装置の下側のベルト上(第1面部)に配置した。被焼成麺食品をベルト上に配置する際、当該ベルト内に搭載されている熱源をオフにし、下側のベルト上の温度を常温(約25℃)とした。
【0094】
<工程(3)>
上記焼成装置の上側のベルトの表面(第2面部、
図3も参照されたい)の温度が約220℃となるように、当該ベルト内に搭載された熱源を制御した。上記焼成装置に配置した上記被焼成麺食品に、加熱された上側のベルトの表面を押しつけ、上記被焼成麺食品を焼成した(焼成時間:約3分間)。なお、工程(3)においても、引き続き下側のベルト上の温度を常温(約25℃)とした。
【0095】
実施例1の方法により製造した焼成麺食品は、片面(第2面部が接触した部分)において焼き色が濃いものであった。
【0096】
次に、実施例1の方法により製造した焼成麺食品を、個包装用の容器に入れ、-35℃で冷凍保存した。これを電子レンジで加温し、解凍したものは、焼き色が濃く、麺がほぐれやすいものであった。
【0097】
理論に拘束されるものではないが、実施例1の方法のように、被焼成麺食品を、配置する面(第1面部)では焼成せずに、加熱された第2面部を押しつけるように焼成することで、焼成する部分(すなわち、第2面部と接触する部分)に被焼成麺食品の自重に起因する圧力がかかりにくく、焼成する部分(面)が固着しにくい(すなわち、麺がほぐれやすくなる)と考えられる。
【0098】
[参考例1:焼成麺食品の製造2:第1面部による焼成]
実施例1の工程(3)において、第2面部のみにより焼成を実施することに代えて、上記焼成装置の下側のベルトの表面(第1面部)の温度が約220℃となるように、当該ベルト内に搭載された熱源を制御した。上記焼成装置に配置した上記被焼成麺食品に、常温(約25℃)の上側のベルトの表面を押しつけ、上記被焼成麺食品を焼成した(焼成時間:約3分間)。
【0099】
参考例1の方法により製造した焼成麺食品は、片面(第1面部が接触した部分)において焼き色が濃いものであった。
【0100】
次に、参考例1の方法により製造した焼成麺食品を、個包装用の容器に入れ、-35℃で冷凍保存した。これを電子レンジで加温し、解凍したものは、焼き色が濃いものの、麺がほぐれにくいものであった。
【0101】
理論に拘束されるものではないが、参考例1の方法のように、被焼成麺食品を、配置する面(第1面部)で焼成することで、焼成する部分(面)に被焼成麺食品の自重に起因する圧力がかかりやすく、焼成する部分(面)が固着しやすい(すなわち、麺がほぐれにくくなる)と考えられる。
【0102】
[参考例2:焼成麺食品の製造3:第1面部および第2面部による焼成]
実施例1における工程(3)において、第2面部のみにより焼成を実施することに代えて、上記焼成装置の下側のベルト上(第1面部)および上側のベルトの表面(第2面部)の温度の両方が約220℃となるように、それぞれのベルト内に搭載された熱源を制御した。上記焼成装置に配置した上記被焼成麺食品に、加熱された上側のベルトの表面を押しつけ、上記被焼成麺食品を焼成した(焼成時間:3分間)。
【0103】
参考例2の方法により製造した焼成麺食品は、両面(第1面部が接触した部分および第2面部が接触した部分)において焼き色が濃いものであった。
【0104】
次に、参考例2の方法により製造した焼成麺食品を、個包装用の容器に入れ、-35℃で冷凍保存した。これを電子レンジで加温し、解凍したものは、焼き色が濃いものの、麺がほぐれにくいものであった。
【0105】
[実施例2:焼成麺食品の製造4:第2面部による焼成(香味油、ブラウニング剤添加)]
以下、実施例2の手順を
図4に示すフロー図を参照して説明する。
<工程(1)>
図4のS1bに従い、被焼成麺食品を製造した。
具体的には、公知の方法で製麺した中華生麺 110gを沸騰したお湯で3分間茹で、4℃の冷水に30秒間浸漬した後に水を切ることで、約160gの加水処理済み麺(水分含量が約60%の茹で麺)を得た(
図4のS11b)。
上記で得た茹で麺に下記表1の油脂(組成物) 6.5gを噴霧し(
図4のS12b)、その後、ブラウニング剤を含んでなる下記表2の組成物を噴霧することで(
図4のS13b)、被焼成麺食品を得た。
【0106】
【0107】
【0108】
<工程(2)>
工程(2)以降では、ベルト状の装置(TWG1200/420、GEA社製)をベースとした焼成装置を使用した(
図3も参照されたい)。上記で準備した被焼成麺食品を上記焼成装置の下側のベルト上(第1面部)に配置した(
図4のS2b)。この際、下側ベルト内に搭載されている熱源をオフにし、下側のベルト上の温度を常温(約25℃)とした。
【0109】
<工程(3)>
上記焼成装置の上側のベルトの表面(第2面部)の温度が約220℃となるように、上側ベルト内に搭載された熱源を制御した。上記焼成装置に配置した上記被焼成麺食品に、加熱された上側のベルトの表面を押しつけ、上記被焼成麺食品を焼成した(焼成時間:3分間)(
図4のS3b)。なお、工程(3)においても、引き続き下側のベルト上の温度を常温(約25℃)とした。
【0110】
実施例2の方法により製造した焼成麺食品は、片面(第2面部が接触した部分)において焼き色が十分濃く、香ばしい風味が強いものであった。また、実施例2の方法により焼成麺食品を製造した場合、下側のベルトの表面(第1面部)および上側のベルトの表面(第2面部)において、焦げ付きが少なかった。
【0111】
次に、実施例2の方法により製造した焼成麺食品を、個包装用の容器に入れ、-35℃で冷凍保存した。これを電子レンジで加温し、解凍したものは、焼き色が非常に濃く、麺がほぐれやすく、香ばしい風味がさらに強いものであった。
【0112】
理論に拘束されるものではないが、被焼成麺食品に油脂やブラウニング剤等が含まれている場合、重力等の影響により油脂やブラウニング剤等の一部が被焼成麺食品を配置する面(第1面部)付近に移行すると考えられる。実施例2の方法のように、被焼成麺食品を、配置する面(第1面部)では焼成せずに、加熱された第2面部を被焼成麺食品に押しつけて焼成することで、第1面部付近に移行した油脂やブラウニング剤等が加熱されることを防止することができ、焦げ付きを抑制することができると考えられる。また、油脂やブラウニング剤等による焦げ付きが抑制されることで、焼成麺食品中に油脂やブラウニング剤等が残存すると考えられる。焼成麺食品を喫食時に電子レンジ等で加温する際、焼成麺食品中に残存した油脂やブラウニング剤等が加熱されることで、焼き色の濃さのさらなる向上や、香ばしい風味のさらなる向上が期待でき、喫食時のできたて感を演出できると考えられる。
重要なのは、被焼成麺食品に油脂およびブラウニング剤を付着させる順序である。
本開示の一実施態様では、被焼成麺食品に油脂を付着させた後に、ブラウニング剤を付着させる。油脂が被焼成麺食品全体へ分散した後、ブラウニング剤を付着させるため、被焼成麺食品内部へ浸透するブラウニング剤が減り、被焼成麺食品の表面をコーティングするブラウニング剤の量が増えると考えられる。焼成麺食品の製造時(例えば、生産工場での製造時)においては、被焼成麺食品の上面(第2面部側)が焼成されるため、被焼成麺食品の下面(第1面部側)に付着したブラウニング剤はほとんど焼成されないと考えられる。この結果、生産工場では焼成に使われなかった被焼成麺食品の下面(第1面部側)に付着したブラウニング剤が、家庭での電子レンジ加熱時に焼成に供され、喫食時のできたて感につながると考えられる。
一方、例えば後述する参考例3のように、この順序が逆の場合(すなわち、被焼成麺食品にブラウニング剤を付着させた後に、油脂を付着させた場合)は、上述の効果が低減する。このように順序が逆の場合には、理論に拘束されるものではないが、油脂に導かれて被焼成麺食品内部へ浸透するブラウニング剤の量が増え、被焼成麺食品の表面に留まるブラウニング剤の量が減ると考えられる。この結果、焼成麺食品の製造時(例えば、生産工場での製造時)においては、焼成に使われなかった被焼成麺食品の下面(第1面部側)のブラウニング剤の量が減るため、家庭での電子レンジ加熱時に焼成に供されるブラウニング剤の量が減り、喫食時のできたて感が低減すると考えられる。
【0113】
[参考例3:焼成麺食品の製造5:第1面部による焼成(香味油、ブラウニング剤添加)]
実施例2の工程(3)において、第2面部により焼成することに代えて、上記焼成装置の下側のベルトの表面(第1面部)の温度が約220℃となるように、当該ベルト内に搭載された熱源を制御した。上記焼成装置に配置した上記被焼成麺食品に、常温(約25℃)の上側のベルトの表面を押しつけ、上記被焼成麺食品を焼成した(焼成時間:3分間)。
【0114】
参考例3の方法により製造した焼成麺食品は、片面(第1面部と接触した部分)において焼き色が十分濃いものであった。しかし、参考例3の方法により焼成麺食品を製造した場合、特に下側のベルトの表面(第1面部)において、焦げ付きが多かった。理論に拘束されるものではないが、参考例3の方法のように、被焼成麺食品を配置する面(第1面部)で焼成した場合、第1面部付近に移行した油脂やブラウニング剤等が加熱され、焦げ付きが多く発生すると考えられる。
【0115】
次に、参考例3の方法により製造した焼成麺食品を、個包装用の容器に入れ、-35℃で冷凍保存した。これを電子レンジで加温し、解凍したものは、焼き色が十分濃いものの、麺がほぐれにくく、香ばしい風味が弱いものであった。
【0116】
[実施例3:組み合わせ食品(あんかけ麺食品)の製造:香味油の非加熱条件下での添加]
【0117】
<焼成麺食品の製造>
実施例2と同様の方法により、焼成麺食品を製造した。製造した焼成麺食品を、容器に入れて-35℃で冷凍保存した。
【0118】
<粘稠性または液状の食品(とろみスープ食品)の製造>
野菜、肉および調味類を混合し、加熱した。野菜および肉を十分に加熱した後に火を止め、水に溶いた片栗粉を混合し、再度加熱した。とろみが出てきたところで加熱を止めることで、液媒体ベース(とろみスープ用ベース)を得た。この液媒体ベースにおける材料等の配合割合は、表3のとおりである。
【0119】
【0120】
上記液媒体ベース 175gを皿状の容器に入れ、さらに非加熱下で香味油 1gを滴下し、粘稠性または液状の食品(とろみスープ食品)を得た。
なお、粘稠性または液状の食品は、-35℃で冷凍保存した。
【0121】
上記焼成麺食品および上記粘稠性または液状の食品を組み合わせることで、実施例3の組み合わせ食品を得た。実施例3の組み合わせ食品を冷凍保存した後、電子レンジで加温し、これらを混ぜ合わせた。
混ぜ合わせた食品(あんかけ麺食品)は、焼き色が非常に濃く、香ばしい風味が非常に強く、麺がほぐれやすいものであった。
【0122】
なお、上記液媒体ベース中の構成成分と香味油とを加熱下で混合して粘稠性または液状の食品を製造したところ、混ぜ合わせた食品(あんかけ麺食品)は、焼き色の濃さが非常に強く、麺がほぐれやすいものの、非加熱下で香味油を添加した場合と比べて香ばしい風味が弱かった。理論に拘束されるものではないが、粘稠性または液状の食品の製造において香味油を加熱下で混合した結果、香味油の一部が蒸発したことで、非加熱下で香味油を添加した場合と比べて香ばしい風味が弱くなったと考えられる。