(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179971
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】沈殿池のピット排泥装置
(51)【国際特許分類】
B01D 21/18 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B01D21/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099349
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(74)【代理人】
【識別番号】100139516
【弁理士】
【氏名又は名称】藤浪 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田名部 直勝
(57)【要約】
【課題】排泥ピット内の水路(みずみち)の形成を防止すると共に、汚泥の排泥効率を向上させることが可能な沈殿池のピット排泥装置を提供すること。
【解決手段】沈殿池の池底に設けられた排泥ピット22に設置されるパンチングプレート36と、このパンチングプレート36の下に設けられるループ状の排泥促進管38と、この排泥促進管38に設けられ、ノズル口40が下向きに指向する複数の噴射ノズル42とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池の池底に設けられた排泥ピットに設置される多孔板と、
前記多孔板の下に設けられるループ状の配管と、
前記配管に設けられ、ノズル口が下向きに指向する複数の噴射ノズルと、
を備えることを特徴とする沈殿池のピット排泥装置。
【請求項2】
請求項1記載の沈殿池のピット排泥装置において、
前記排泥ピットは、複数の傾斜面を有する外側傾斜面部と、前記外側傾斜面部の内側に設けられ、前記外側傾斜面部から中央に向かって傾斜する内側傾斜面部とを有することを特徴とする沈殿池のピット排泥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水処理施設に設けられる沈殿池のピット排泥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水処理施設に設けられている沈殿池では、池底に沈殿した汚泥(スラッジ)を排出するために池底の一側や中央部に所定深さの排泥ピットが設けられている。例えば、特許文献1には、沈殿池の池底全面を縦横に区画して格子状の排泥ピットを構成し、各排泥ピットに設けた排泥管の吸込口を各ピットの底部に向けて臨設させ、各排泥管をそれぞれ制御弁を介在させて汚泥集合管に接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排泥ピットに溜まった汚泥内において、排泥管近傍に水路(みずみち)が形成される場合がある。この水路が形成されると、水路から汚泥と共に大量の水が流出するため、排泥池に送る汚泥が希釈されて排泥濃度が低下するという不具合がある。
【0005】
このため、排泥池の容積を大きくしなければならず、汚泥の濃縮にコストがかかることになる。さらに、水路が一旦形成されると、次に排泥する際には、その水路の部分に集泥した汚泥のみが排泥されることとなり、排泥ピットの容積効率が低下する、という不具合がある。
【0006】
また、排泥管等によって噴射水を用いて排泥ピット内の残留汚泥を崩して排泥する場合がある。しかしながら、噴射水を用いた場合であっても、排泥ピット全体に排泥管を設置する必要があり、排泥濃度が低下するという不具合がある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、排泥ピット内の水路の形成を防止すると共に、汚泥の排泥効率を向上させることが可能な沈殿池のピット排泥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、沈殿池の池底に設けられた排泥ピットに設置される多孔板と、前記多孔板の下に設けられるループ状の配管と、前記配管に設けられ、ノズル口が下向きに指向する複数の噴射ノズルと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排泥ピット内に多孔板を配置することで、水路形成の抵抗となる流水抵抗を発生させることができ、水路の発生を防止することができる。また、本発明によれば、多孔板の下に配置されたループ状の配管にノズル口が下向きに指向する複数の噴射ノズルが設けられている。この噴射ノズルのノズル口から噴射される噴射水によって排泥管に向かう旋回流を発生させることができる。この結果、本発明では、多孔板下の排泥ピット内の汚泥の堆積を崩して、多孔板下の堆積汚泥の残量を無くし、排泥ピット内に残留する汚泥の堆積量を軽減することができる。さらに、本発明では、排泥ピット全体からみて噴射ノズルのノズル口から噴射される噴射水の水量も少量であるため排泥濃度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るピット排泥装置が適用された浄水処理施設の平面構造図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るピット排泥装置の一部透過斜視図である。
【
図5】
図4の矢印V方向からみた一部透過側面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るピット排泥装置の一部透過斜視図である。
【
図7】
図6の矢印VII方向からみた一部透過側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、本発明の実施形態に係るピット排泥装置が適用された浄水処理施設10は、図示しない沈砂池と、着水井(設備によっては、原水槽とも言う)と、急速混和槽(混和槽)と、フロック形成池12、沈殿池14及びろ過地等を含んで構成されている。沈殿池14は、フロック形成池12の下流側に配置されている。フロック形成池12は、図示しない急速混和池で作られた小さなフロックをフロキュレータ16a、16b、16cでゆっくり撹拌し、沈殿しやすい大きなフロックにする設備である。
【0013】
沈殿池14は、側壁18と、側壁18(沈殿池14)内の底部を分割して複数のエリアを形成する複数の分割壁とを有する。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態では、水の流れ方向と直交する方向に沿って延在する2つの分割壁20、20によって複数のエリアに分割されている。なお、本実施形態では、分割壁20を2つ設置しているが、その設置数は適宜設定すればよい。また、沈殿池14に傾斜板沈降装置を設置した場合には、分割壁20を傾斜板沈降装置の上流側端部の下方に位置させるのが良い。これにより、傾斜板沈降装置の下方を流れ、傾斜板沈降装置に流入しない短絡流を防止でき、沈殿効率を向上させることができる。さらに、本実施形態の沈殿池14には、可動機械部によって汚泥を掻き寄せる掻寄機が配置されておらず、沈降する汚泥の池底の後記する排泥ピット22に堆積させ、自然流下によって汚泥を蓄積するものである。なお、フロック形成池12から沈殿池14に流入した水の流れを整えるため複数の流出孔を有する整流壁21(
図1、
図2参照)を設けている。
【0014】
沈殿池14の底部には、縦横に格子状に配置された複数のピット排泥装置24が設けられている。このピット排泥装置24は、それぞれ同一に構成されているため、その一つを詳細に説明して他の説明を省略する。
【0015】
図4及び
図5に示されるように、ピット排泥装置24は、4つの傾斜面26a~26dによって略逆四角円錐形状を呈する。また、ピット排泥装置24は、4つの傾斜面26a~26dを有する傾斜面部28と、4つの傾斜面26a~26dの上端によって形成される四角状の開口部30と、4つの傾斜面26a~26dの下端を閉塞して底面を形成する底面部32(
図3参照)とを備えて構成されている。
【0016】
傾斜面部28の内側には、底面部32から開口部30に向かって横断面積が増大するように形成された排泥ピット(排泥室)22が設けられている。この排泥ピット22の上部には、平面視して略正方形を呈し、複数の貫通孔34が形成されたパンチングプレート(多孔板)36が装着されている。このパンチングプレート36において、貫通孔34の内径や設置間隔は、沈殿池14における汚泥の性状に応じて適宜選定される。
【0017】
図4及び
図5に示されるように、パンチングプレート36の下面には、平面視してループ状の排泥促進管(配管)38が接合されている。排泥促進管38には、ノズル口40が下向きに指向する複数の噴射ノズル42が設けられている。この複数の噴射ノズル42は、傾斜面部28を構成する4つの傾斜面26a~26dに対応してそれぞれ90度の離間角度に沿って4つ配置されている。
図5に示されるように、各噴射ノズル42のノズル口40は、傾斜面部28を構成する各傾斜面26a(26b~26d)に向かってそれぞれ噴射可能に設けられている。
【0018】
なお、排泥促進管38は、パンチングプレート36の下面に直接接合してもよいし、又は、図示しない取付金具を介してパンチングプレート36の下に取り付けるようにしてもよい。
【0019】
具体的には、
図5において、噴射ノズル42のノズル口40を通る仮想線Lと、内側の傾斜面26dとの交差角度θは、側面視して所定の角度に設定されている。また、各噴射ノズル42のノズル口40は、平面視して、時計回り方向又は反時計回り方向のいずれか一側に傾斜して配置されている。この時計回り方向又は反時計回り方向のいずれか一側に傾斜して配置することで、後記する排泥管44へ向かって旋回する旋回流を発生させることができる。換言すると、後記する排泥管44へ向かって旋回する旋回流が発生するように噴射ノズル42の交差角度θ、噴射方向、設置数等を設定する。
【0020】
パンチングプレート36の下方で底面部32の上面よりも上方には排泥管44が配置されている。この排泥管44は、底面部32に臨み上方から下方に向かって拡開するラッパ状のラッパ形状部46と、ラッパ形状部46の上方に位置し外方に向かって拡開するフランジ部48と、フランジ部48の上方から略直交するように屈曲する屈曲部50と、屈曲部50から傾斜面部28の1つの傾斜面26bを貫通して排泥ピット22の外部まで延出する管体52とを有する。
【0021】
この管体52には、図示しない吸引ポンプ又は高低差の自然流下によって、排泥ピット22内に蓄積された汚泥が図示しない排泥池に送給されるようになっている。
【0022】
本実施形態に係るピット排泥装置24が適用された浄水処理施設10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0023】
本実施形態では、排泥ピット22内にパンチングプレート36を設置し、このパンチングプレート36の下にループ状の排泥促進管38を設けると共に、この排泥促進管38に下向きの4つの噴射ノズル42を配置している。
【0024】
本実施形態では、排泥ピット22内にパンチングプレート36を配置することで、水路形成の抵抗となる流水抵抗を発生させることができ、水路の発生を防止することができる。
【0025】
また、本実施形態では、パンチングプレート36の下に配置された複数の噴射ノズル42のノズル口40から噴射される噴射水によって排泥管44に向かう旋回流を発生させることができる。この結果、本実施形態では、パンチングプレート36下の排泥ピット22内の汚泥の堆積を崩して、パンチングプレート36下の堆積汚泥の残量を無くし、排泥ピット22内に残留する汚泥の堆積量を軽減することができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、複数の噴射ノズル42が傾斜面部28の傾斜面26a~26dの個数に対応して4つ設置されているだけであり、排泥ピット22全体からみてノズル口40から噴射される噴射水の水量も少量であるため排泥濃度の低下を防止することができる。
【0027】
これにより、本実施形態では、排泥ピット22内の水路の形成を防止すると共に、汚泥の排泥効率を向上させることが可能な沈殿池14のピット排泥装置24を得ることができる。
【0028】
次に、本発明の他の実施形態に係るピット排泥装置24aについて説明する。なお、
図1~
図5に示す前記実施形態と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図6は、他の実施形態に係るピット排泥装置の斜視図、
図7は、
図6の矢印VII方向から見た一部透過側面図である。
【0029】
図6及び
図7に示されるように、他の実施形態では、排泥ピット22内に、4つの傾斜面26a~26dを有する外側傾斜面部60と、この外側傾斜面部60の内側に設けられ、外側傾斜面部60の4つ傾斜面26a~26dの上部側から中央に向かって傾斜する4つの傾斜面62a~62dを有する内側傾斜面部64とを備えて構成されている点で前記実施形態と相違している。
【0030】
内側傾斜面部64の中央には、平面視して円形状を呈する円形状開口部66が設けられている。この円形状開口部66には、排泥ピット22の底面部32まで到達する円筒体68が連結されている。また、円筒体68の側部には、外側傾斜面部60の1つの傾斜面26bを貫通して排泥ピット22の外部まで延出する管体70が連結されている。この管体70には、図示しない吸引ポンプ又は高低差の自然流下によって、排泥ピット22内に蓄積された汚泥を図示しない排泥池に送給されるようになっている。
【0031】
他の実施形態では、外側傾斜面部60の内側に、さらに排泥ピット22内の中央に向かって傾斜する内側傾斜面部64を配置することで、排泥ピット22内に蓄積された汚泥の吸引効果をより一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 浄水処理施設
14 沈殿池
22 排泥ピット
24、24a ピット排泥装置
26a~26d 傾斜面
34 貫通孔
36 パンチングプレート(多孔板)
38 排泥促進管
40 ノズル口
42 噴射ノズル
60 外側傾斜面部
62a~62d 傾斜面
64 内側傾斜面部
66 円形状開口部