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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179982
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】減衰力制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099366
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 学
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301CA01
3D301DA08
3D301DA38
3D301DB50
3D301EA15
3D301EA21
3D301EA22
3D301EA35
3D301EA43
3D301EA44
3D301EA70
3D301EB13
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC07
3D301EC55
3D301EC59
(57)【要約】
【課題】ショックアブソーバの減衰力を制御する上で車両の構造が複雑化するのを抑制することが可能な減衰力制御装置を得る。
【解決手段】減衰力制御装置は、車両の上下方向の加速度以外の車両の運動に関する第1の物理量を入力して車両の上下方向の運動に関わる第2の物理量を出力する学習済みモデルを利用して、第1の物理量の実測値から第2の物理量を推定し、推定した第2の物理量に基づいて、ショックアブソーバの目標減衰係数を算出する算出部と、算出された目標減衰係数に基づいて、ショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と前記車両の車体との間に介在するショックアブソーバを制御する減衰力制御装置であって、
前記車両の上下方向の加速度以外の前記車両の運動に関する第1の物理量を入力して前記車両の上下方向の運動に関わる第2の物理量を出力する学習済みモデルを利用して、前記第1の物理量の実測値から前記第2の物理量を推定し、推定した前記第2の物理量に基づいて、前記ショックアブソーバの目標減衰係数を算出する算出部と、
算出された前記目標減衰係数に基づいて、前記ショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部と、
を備えた減衰力制御装置。
【請求項2】
前記第1の物理量は、前記車輪の回転に応じた前記車輪に関する速度と、前記車両の前後方向の加速度と、前記車両の横方向の加速度と、前記車両のヨーレートと、前記車輪の舵角と、前記車輪の舵角速度と、前記車輪の回転トルクと、前記目標減衰係数に応じて前記ショックアブソーバに入力される電流の値とのうちの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の減衰力制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、推定した前記第2の物理量と、前記車輪に関する速度とに基づいて、前記ショックアブソーバの目標減衰係数を算出し、
前記車輪に関する速度は、複数の前記車輪のそれぞれの回転速度と、前記複数の前記車輪の対角方向に並ぶ二つの前記車輪の前記回転速度の差分と、前記車両の前後方向に並ぶ二つの前記車輪の前記回転速度の差分とのうちの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の減衰力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、減衰力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられ、サスペンションのショックアブソーバの減衰力を制御し、乗り心地の向上や走行安定性の向上を図ることができる減衰力制御装置がある。この種の減衰力制御装置として、例えば、車両に搭載された上下加速度センサの出力値に基づいて、車両の上下方向の振動における中周波成分と低周波成分との比率を算出し、当該比率に基づいてショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6478063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ショックアブソーバの減衰力の制御のための専用の上下加速度センサを車両に設けるため、車両の構造が複雑化するという問題がある。
【0005】
本発明の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ショックアブソーバの減衰力を制御する上で車両の構造が複雑化するのを抑制することが可能な減衰力制御装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の減衰力制御装置は、車両の車輪と前記車両の車体との間に介在するショックアブソーバを制御する減衰力制御装置であって、前記車両の上下方向の加速度以外の前記車両の運動に関する第1の物理量を入力して前記車両の上下方向の運動に関わる第2の物理量を出力する学習済みモデルを利用して、前記第1の物理量の実測値から前記第2の物理量を推定し、推定した前記第2の物理量に基づいて、前記ショックアブソーバの目標減衰係数を算出する算出部と、算出された前記目標減衰係数に基づいて、前記ショックアブソーバの減衰力を制御する減衰力制御部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、算出部が、学習済みモデルを利用して、車両の上下方向の加速度以外の車両の運動に関する第1の物理量の実測値からショックアブソーバの目標減衰係数を算出するので、ショックアブソーバの減衰力の制御のための専用の上下加速度センサを車両に設ける必要がない。よって、ショックアブソーバの減衰力を制御する上で車両の構造が複雑化するのを抑制することができる。
【0008】
前記減衰力制御装置では、例えば、前記第1の物理量は、前記車輪の回転に応じた前記車輪に関する速度と、前記車両の前後方向の加速度と、前記車両の横方向の加速度と、前記車両のヨーレートと、前記車輪の舵角と、前記車輪の舵角速度と、前記車輪の回転トルクと、前記目標減衰係数に応じて前記ショックアブソーバに入力される電流の値とのうちの少なくとも一つを含む。
【0009】
このような構成によれば、車輪に関する速度と、車両の前後方向の加速度と、車両の横方向の加速度と、車両のヨーレートと、車輪の舵角と、車輪の舵角速度と、車輪の回転トルクと、目標減衰係数に応じてショックアブソーバに入力される電流の値とのうちの少なくとも一つから、目標減衰係数を算出することができる。
【0010】
前記減衰力制御装置では、例えば、前記算出部は、推定した前記第2の物理量と、前記車輪に関する速度とに基づいて、前記ショックアブソーバの目標減衰係数を算出し、前記車輪に関する速度は、複数の前記車輪のそれぞれの回転速度と、前記複数の前記車輪の対角方向に並ぶ二つの前記車輪の前記回転速度の差分と、前記車両の前後方向に並ぶ二つの前記車輪の前記回転速度の差分とのうちの少なくとも一つを含む。
【0011】
ここで、例えば、コンクリート板が連続して敷設されコンクリート板間の繋ぎ目が間隔をあけて形成された道路、所謂チョッピー路を車両が走行している場合でも、チョッピー路の凹凸の状態が対角方向に並ぶ二つの車輪の回転速度の差分と、車両の横方向に並ぶ二つの車輪の回転速度の差分とに反映されやすい。よって、上記の構成によれば、車輪に関する速度に、車輪に関する速度に車輪の対角方向に並ぶ二つの車輪の回転速度の差分と、車両の前後方向に並ぶ二つの車輪の回転速度の差分とのうちの少なくとも一つが含まれる場合に、より適切な目標減衰係数を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態にかかる車両の一例の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかる車両における懸架装置の一例の概略構成を示す模式図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかる車両の一例の制御装置の機能ブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態にかかる車両の車輪の変形を説明するための説明図である。
図5図5は、第1の実施形態にかかる制御装置が実行する減衰力制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第1の実施形態にかかる減衰力制御処理におけるあおり振動の度合いを示す指標値(あおり振動指標値)の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態にかかる減衰力制御処理におけるゴツゴツ振動の度合いを示す指標値(ゴツゴツ振動指標値)の算出処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第1の実施形態にかかるあおり振動指標値に対するゴツゴツ振動指標値の比と、補正係数との関係を表すマップの一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態にかかるあおり振動指標値に対するゴツゴツ振動指標値の比と、補正係数との関係を表すマップの別の一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態にかかる車体および車輪の上下方向の相対速度と、目標減衰力と、ショックアブソーバの制御段との関係を表すマップの一例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態にかかる制御装置が実行する減衰力制御処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第3の実施形態にかかる制御装置が実行する減衰力制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態にかかる車両1の一例の概略構成を示す模式図である。本実施形態では、車両1は、例えば、内燃機関(エンジン、図示されず)を駆動源とする自動車(内燃機関自動車)であってもよいし、電動機(モータ、図示されず)を駆動源とする自動車(電気自動車、燃料電池自動車等)であってもよいし、それらの双方を駆動源とする自動車(ハイブリッド自動車)であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置(システム、部品等)を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。また、本実施形態では、一例として、車両1は、四輪車(四輪自動車)であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。なお、図1では、車両前後方向の前方(方向Fr)は、左側である。
【0015】
本実施形態では、一例として、車両1の車両制御システム100は、制御装置10や、操舵装置11、操舵センサ12、検出センサ13、等を備える。また、車両制御システム100は、二つの前輪3Fのそれぞれに対応して、懸架装置4や、回転センサ5、トルクセンサ6等を備えるとともに、二つの後輪3Rのそれぞれに対応して、懸架装置4、回転センサ5、トルクセンサ6等を備えている。
【0016】
図2は、第1の実施形態にかかる車両1における懸架装置4の一例の概略構成を示す模式図である。図2に示されるように、懸架装置4に対して車体2側の車両1の部分は、ばね上部2a(図2)であり、懸架装置4に対して車輪3側の車両1の部分は、ばね下部2b(図2)である。
【0017】
なお、車両1は、図1および図2の他にも車両1としての基本的な構成要素を備えているが、ここでは、車両制御システム100に関わる構成ならびに当該構成に関わる制御についてのみ、説明される。また、二つの前輪3Fと二つの後輪3Rとの総称として、車輪3を用いる。また、車両1の車体2に対する車両1の車輪3の上下方向の相対速度である上下方向相対速度をストローク速度とも称する。当該ストローク速度は、ばね上部2aとばね下部2bとの相対速度でもある。
【0018】
制御装置10は、車両制御システム100の各部からCAN(Controller Area Network)等のネットワークを介して信号やデータ等を受け取るとともに、車両制御システム100の各部の制御や各種の演算を実行する。本実施形態では、制御装置10は、減衰力制御装置の一例である。また、制御装置10は、コンピュータとして構成されており、演算処理部(マイクロコンピュータ、ECU(Electronic Control Unit)等、図示されず)や記憶部10d(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等、図3参照)等を備えている。演算処理部は、不揮発性の記憶部10d(例えばROMや、フラッシュメモリ等)に記憶された(インストールされた)プログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行し、図3に示された各部として機能(動作)することができる。また、記憶部10dには、制御に関わる各種演算で用いられるデータ(テーブル(データ群)や、関数等)、演算結果(演算途中の値も含む)等が記憶されうる。また、記憶部10dには、学習済みモデル121が記憶されている。学習済みモデル121の詳細は、後述する。
【0019】
操舵装置11は、例えば、ハンドルを含み、二つの前輪3Fを操舵(転舵)する。操舵センサ12は、前輪3Fの操舵角度(舵角、切れ角、転舵角)を検出して、検出した操舵角度を示す操舵角度データを出力する。
【0020】
検出センサ13は、車両1(車体2)のヨーレートを検出し、検出したヨーレートを出力するヨーレートセンサ、車両1(車体2)の前後方向の加速度である前後方向加速度を検出し、検出した前後方向加速度を出力する前後方向加速度センサ、および車両1(車体2)の横方向(幅方向)の加速度である横方向加速度を検出し、検出した横方向加速度を出力する横方向加速度センサを含む。
【0021】
回転センサ5は、四つの車輪3のそれぞれの回転に応じて各車輪の回転に関する速度(回転速度、角速度、回転数、回転状態)に応じた信号を出力することができる。制御装置10は、回転センサ5の検出結果から、車両1の速度を算出することができる。なお、車輪3用の回転センサ5とは別に、クランクシャフトや車軸等の回転を検出する回転センサ(図示されず)が設けられてもよく、制御装置10は、この回転センサの検出結果から車両1の速度を取得してもよい。
【0022】
トルクセンサ6は、四つの車輪3のそれぞれに対応して設けられ、各車輪3に入力される回転トルクを検出する。
【0023】
上記の各センサの出力は、車両1が実行する動作(処理)のうち後述する減衰力制御処理以外の他の動作にも利用される。すなわち、各センサは、減衰力制御処理専用のものではない。
【0024】
図2は、第1の実施形態にかかる車両における懸架装置4の一例の概略構成が示された模式図である。図2に示されるように、懸架装置4は、車輪3と車体2との間に介在され、路面からの振動や衝撃が車体に伝達されるのを抑制する。懸架装置4は、コイルばね4aと、ショックアブソーバ4bと、を有する。ショックアブソーバ4bは、減衰力(減衰特性)を電気的に制御(調整)可能である。具体的には、ショックアブソーバ4bは、入力される電流に基づいて動作するアクチュエータ4bbを有する。アクチュエータ4bbは、ショックアブソーバ4bのピストンに設けられるオリフィスの開口度を変更したり、弁体と弁座との間の開口度を変更したりすることができる。これにより、ショックアブソーバ4b内でピストンにより仕切られた2つの油室の間を流通する潤滑油の流通量を制御して、ショックアブソーバ4bの減衰力が調整される。懸架装置4は、四つの車輪3(二つの前輪3Fおよび二つの後輪3R)のそれぞれに設けられており、制御装置10は、四つの車輪3のそれぞれの減衰力を制御することができる。制御装置10は、四つの車輪3を、互いに減衰力が異なる状態に制御することができる。詳細には、各ショックアブソーバ4bの減衰力(=減衰係数×ストローク速度)を制御するためには、減衰係数を制御することとなる。より詳細には、ショックアブソーバ4bのアクチュエータ4bbに流す電流を制御することで減衰係数を制御する。
【0025】
各ショックアブソーバ4bは、複数の制御段を有している。複数の制御段は、ショックアブソーバ4bの減衰係数が最も小さい制御段(ソフト)から減衰係数Ciが最も大きい制御段(ハード)までの複数の段階の制御段である。
【0026】
なお、上述した車両制御システム100の構成はあくまで一例であって、種々に変更して実施することができる。車両制御システム100を構成する個々の装置としては、公知の装置を用いることができる。また、車両制御システム100の各構成は、他の構成と共用することができる。
【0027】
制御装置10は、具体的には、一例として、ハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により、図3に示されるような、取得部10aや、算出部10b、減衰力制御部10c等として機能(動作)することができる。すなわち、プログラムには、一例としては、図3に示される記憶部10dを除く各ブロックに対応したモジュールが含まれうる。
【0028】
取得部10aは、車両1の上下方向の加速度以外の車両1の運動に関する第1の物理量を取得する。例えば、第1の物理量は、車輪3の回転に応じた車輪3に関する速度と、車両1の前後方向の加速度と、車両1の横方向の加速度と、車両1のヨーレートと、車輪3の舵角と、車輪3の舵角速度と、車輪3の回転トルクと、目標減衰係数に応じてショックアブソーバ4bに入力される電流の値とのうちの少なくとも一つを含む。また、車輪3に関する速度は、複数の車輪3のそれぞれの回転速度と、複数の車輪3の対角方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分と、車両1の前後方向に並ぶ二つの車輪3の前記回転速度の差分とのうちの少なくとも一つを含む。
【0029】
具体的には、取得部10aは、各車輪3のそれぞれの回転速度を回転センサ5から受信(取得)する。また、取得部10aは、複数の車輪3のそれぞれの回転速度から、複数の車輪3の対角方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分と、車両1の前後方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分とを算出すなわち取得する。対角方向に並ぶ二つの車輪3の組は、例えば、右側の車輪3Fおよび左側の後輪3Rの組みと、左側の前輪3Rおよび右側の後輪3Rの組みとである。また、車両1の前後方向に並ぶ二つの車輪3の組は、例えば、右側の車輪3Fおよび右側の後輪3Rの組みと、左側の前輪3Rおよび左側の後輪3Rの組みとである。また、取得部10aは、車両1の前後方向の加速度を検出センサ13から受信(取得)する。また、取得部10aは、車両1の横方向の加速度を検出センサ13から取得する。また、取得部10aは、車両1のヨーレートを検出センサ13から受信(取得)する。また、取得部10aは、車輪3の舵角および車輪3の舵角速度を操舵センサ12から受信(取得)する。また、取得部10aは、車輪3の回転トルクをトルクセンサ6から取得する。また、取得部10aは、目標減衰係数に応じてショックアブソーバ4bに入力される電流の値を電流検出センサ(不図示)から受信(取得)する。
【0030】
算出部10bは、一例として、取得部10aによって取得された所定のデータ(以後、入力データとも称する)が入力される。算出部10bは、車両1の上下方向の加速度以外の車両1の運動に関する第1の物理量を入力して車両1の上下方向の運動に関わる第2の物理量を出力する学習済みモデル121を利用して、第1の物理量の実測値(入力データ)から第2の物理量(出力値)を推定する(求める)。算出部10bは、推定した第2の物理量に基づいて、ショックアブソーバ4bの目標減衰係数(減衰係数)を算出する。第2の物理量は、例えば、車体2と車両1との上下方向の相対速度である上下相対速度(すなわちストローク速度)である。
【0031】
学習済みモデル121は、例えば、ニューラルネットワークによって構成されている。学習済みモデル121は、車両1の上下方向の加速度以外の車両1の運動に関する第1の物理量を入力して車両1の上下方向の運動に関わる第2の物理量を出力(推定)するようにうに予め学習を行った構成である。例えば、学習済みモデル121のニューラルネットワークは、LSTM(Long short‐term memory)によって構成される。学習済みモデル121の学習時において、入力データは、第1の物理量である。教師データとしての出力データは、例えば、ストローク速度センサ(不図示)で計測された車体2と車両1との車輪3の上下方向の相対速度すなわちストローク速度の実測値(真値)である。
【0032】
減衰力制御部10cは、算出された目標減衰係数に基づいて、ショックアブソーバ4bの減衰力を制御する。具体的には、減衰力制御部10cは、算出された目標減衰係数に基づいて、ショックアブソーバ4bに入力する電流値を決定し、該電流値をショックアブソーバ4bに入力する。
【0033】
ここで、図4は、第1の実施形態にかかる車両1の車輪3の変形を説明するための説明図である。図4の(a)は、車両1が高低差のある路面上を走行する様子が示されている。図4の(b)は、上記路面の形状に応じて車両1の車輪3が変形する様子が示されていいる。図4に示されるように、路面の形状に応じて車輪3が変形することにより、車輪3の半径rが変形する。一例として、図4には、車輪3の半径rが、半径raから半径rbを経て半径rbに変形する様子が示されている。このように車輪3の半径が変形することで、車輪3の回転速度が変化する。本実施形態では、制御装置10は、一例として、車輪3の回転速度を用いて、ショックアブソーバ4bの減衰力を制御する。
【0034】
次に、制御装置10が実行する減衰力制御処理の一例を説明する。図6は、第1の実施形態にかかる減衰力制御処理におけるあおり振動の度合いを示す指標値(あおり振動指標値)の算出処理の一例を示すフローチャートである。図7は、第1の実施形態にかかる減衰力制御処理におけるゴツゴツ振動の度合いを示す指標値(ゴツゴツ振動指標値)の算出処理の一例を示すフローチャートである。図8は、第1の実施形態にかかるあおり振動指標値に対するゴツゴツ振動指標値の比と、補正係数との関係を表すマップの一例を示す図である。図9は、第1の実施形態にかかるあおり振動指標値に対するゴツゴツ振動指標値の比と、補正係数との関係を表すマップの別の一例を示す図である。図10は、第1の実施形態にかかる車体および車輪の上下方向の相対速度と、目標減衰力と、ショックアブソーバの制御段との関係を表すマップの一例を示す図である。
【0035】
図5は、第1の実施形態にかかる制御装置10が実行する減衰力制御処理の一例を示すフローチャートである。図5に示される減衰力制御処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンであるときに、例えば複数の車輪3に対して所定の順に所定の時間毎に繰返し実行される。なお、以下の説明においては、減衰力の制御を単に制御と称する場合がある。
【0036】
まず、取得部10aが、学習済みモデル121に入力する入力データを取得する(S101)。
【0037】
次に、算出部10bが、入力データを学習済みモデル121に入力して、車体2と車両1との上下方向の相対速度である上下相対速度Vreiを各車輪3ごとに算出する(S102)。具体的には、算出部10bは、各車輪3の回転速度と、車両1の前後方向の加速度と、車両1の横方向の加速度と、車両1のヨーレートと、車輪3の舵角と、車輪3の舵角速度と、車輪3の回転トルクと、目標減衰係数に応じてショックアブソーバ4bに入力される電流の値とを、学習済みモデル121に入力して、上下相対速度Vreiごとに算出する。
【0038】
次に、算出部10bは、算出した上下相対速度Vreiに基づいて、各ショックアブソーバ4bのそれぞれの目標減衰力Ftiを算出する。目標減衰力Ftiは、下記の式(1)に基づいて算出される。式(1)のCsfは、例えば、スカイフック制御の減衰係数である。なお、Csfは、車体2の振動を減衰させて車両1の乗り心地性を向上させる任意の減衰力制御(例えばH∞制御)の減衰係数であってよい。
Fti=Csf×Vrei ・・・(1)
【0039】
次に、算出部10bは、あおり振動(第1の振動)の度合を示す指標値であるあおり振動指標値(I1i)を算出する(S104)。あおり振動は、例えば、車両1の乗員が車体18のフワフワとした振動を感じ得る周波数域の振動である。一例として、あおり振動は、ばね上部2aにおける車体2の共振周波数域である。車体2の共振振動周波数域は、例えば、1~2Hzである。
【0040】
S104の処理について、図6に示されるフローチャートを参照して詳しく説明する。図6に示されるように、算出部10bは、取得部10aによって取得された車輪3の回転に関する速度に対してあおり成分の抽出を行う(S201)。詳細には、車輪3の回転に関する速度は、例えば、各車輪3のそれぞれの回転速度と、複数の車輪3の対角方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分と、車両1の前後方向に並ぶ二つの車輪3の前記回転速度の差分との少なくとも一つ(一例として全部)を含む。より詳細には、車輪3の回転に関する速度は、制御対象のショックアブソーバ4bに対応する車輪3(以後、第1の車輪3とも称する)の回転速度と、第1の車輪3に対して対角方向に並ぶ車輪3と第1の車輪3との回転速度の差分と、第1の車輪3に対して車両1の前後方向に並ぶ車輪3と、第1の車輪3との回転速度の差分と、の少なくとも一つ(一例として全部)を含む。なお、車輪3の回転に関する速度は、上記のうち全部に限られず一部であってもよい。算出部10bは、上記の各回転に関する速度(回転速度、差分)について、それぞれ、あおり成分の抽出を行う。具体的には、算出部10bは、車輪の回転に関する速度を示す信号を、所定(例えば1Hz)のカットオフ周波数を有するハイパスフィルタによって処理し、更に所定(例えば2Hz)のカットオフ周波数を有するローパスフィルタにて処理する。これにより、車輪の回転に関する速度を示す信号から第1の振動の成分として例えば0.5~2Hzの周波数域のあおり成分Gz1iが抽出される。なお、上記第1の振動の成分は、0.5~2Hzに限定されず、他の周波数域であってもよい。また、車輪3の回転に関する速度は、上記に限定されず、例えば、車輪3の横方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分であってもよい。
【0041】
次に、算出部10bは、あおり成分の信号を全波整流することにより、あおり成分を絶対値化する(S202)。これにより、あおり成分の信号の負の値が、絶対値が同一で正の値に転換される。次に、算出部10bは、フィルタによってあおり成分の信号の所定のノイズを除去する(S203)。次に、算出部10bは、現在までの予め設定された時間Tc(正の定数)内に絶対値化されたあおり成分の最大値を、あおり振動指標値(I1i)として算出する(S204)。このようにして、算出部10bは、各回転に関する速度(回転速度、差分)について、それぞれ、あおり振動指標値(I1i)を算出する。
【0042】
図5に戻って、算出部10bは、ゴツゴツ振動(第2の振動)の度合を示す指標値であるゴツゴツ振動指標値(I2i)を算出する。ゴツゴツ振動は、車両1の乗員がゴツゴツとした乗り心地を感じる周波数域の振動である。ゴツゴツ振動は、例えば、ばね上部2aの車体2の共振周波数域と、ばね下部2bの車輪3および車輪キャリア(不図示)等の共振周波数域との間の周波数域(例えば、6~10Hz)の振動である。なお、上記周波数域は、上記に限定されない。例えば、上記周波数域の下限は、ばね下部2bの共振周波数域よりも高ければ、6Hzよりも低い値であってもよい。
【0043】
S105の処理について、図7に示されるフローチャートを参照して詳しく説明する。図7に示されるように、算出部10bは、取得部10aによって取得された車輪3の回転に関する速度に対してゴツゴツ成分の抽出を行う(S301)。詳細には、車輪3の回転に関する速度は、あおり成分の抽出の場合と同様に、例えば、各車輪3のそれぞれの回転速度と、複数の車輪3の対角方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分と、車両1の前後方向に並ぶ二つの車輪3の前記回転速度の差分との少なくとも一つ(一例として全部)を含む。より詳細には、車輪3の回転に関する速度は、制御対象のショックアブソーバ4bに対応する車輪3(以後、第1の車輪3とも称する)の回転速度と、第1の車輪3に対して対角方向に並ぶ車輪3と第1の車輪3との回転速度の差分と、第1の車輪3に対して車両1の前後方向に並ぶ車輪3と、第1の車輪3との回転速度の差分と、の少なくとも一つ(一例として全部)を含む。なお、車輪3の回転に関する速度は、上記のうち全部に限られず一部であってもよい。算出部10bは、上記の各回転に関する速度(回転速度、差分)に対して、それぞれ、ゴツゴツ成分の抽出を行う。具体的には、算出部10bは、車輪3の回転に関する速度を示す信号を、所定(一例として6Hz)のカットオフ周波数を有するハイパスフィルタにて処理し、更に所定(一例として10Hz)のカットオフ周波数を有するローパスフィルタにて処理する。これにより、車輪の回転に関する速度を示す信号からから第2の振動の成分として例えば4~10Hzの周波数域のゴツゴツ成分(Gz2i)が抽出される。なお、上記第2の周波数域は上記に限定されず、他の周波数域であってもよい。また、車輪3の回転に関する速度は、上記に限定されず、例えば、車輪3の横方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分であってもよい。
【0044】
次に算出部10bは、ゴツゴツ成分の信号を全波整流することにより、ゴツゴツ成分を絶対値化する(S302)。これにより、ゴツゴツ成分の信号の負の値が、絶対値が同一で正の値に転換される。
【0045】
次に、算出部10bは、絶対値化されたゴツゴツ成分の信号を、高周波ノイズを除去するためのカットオフ周波数(例えば2Hz)を有するローパスフィルタにて処理し、ゴツゴツ成分の周波数よりも高い周波数のノイズを除去する(S303)。
【0046】
次に、算出部10bは、現在までの予め設定された時間Tc内に絶対値化されノイズが除去されたゴツゴツ成分の最大値を、ゴツゴツ振動指標値(I2i)として算出する(S304)。このようにして、算出部10bは、各回転に関する速度(回転速度、差分)について、それぞれ、ゴツゴツ振動指標値(I2i)を算出する。なお、以上のあおり成分およびゴツゴツ成分の最大値の算出については、特開平8-216646号公報を参照することができる。
【0047】
次に、算出部10bは、補正係数(Kri)を算出する(S106)。具体的には、算出部10bは、各回転に関する速度(回転速度、差分)について、それぞれ、あおり振動指標値(I1i)に対するゴツゴツ振動指標値(I2i)の比(I2i/I1i)を算出する。そして、算出部10bは、算出した複数の比(I2i/I1i)のうち値が最も大きい比(I2i/I1i)を、最終的なあおり振動指標値(I1i)に対するゴツゴツ振動指標値(I2i)の比(I2i/I1i)として決定する。次に、算出部10bは、上記決定した比I2i/I1iと、図8または図9に示されるマップとから、補正係数(Kri)を算出する。図9は、補正係数が複数の段階を含む例である。なお、算出部10bは、あおり振動指標値I1iが0である場合には、あおり振動指標値(I1i)を、予め設定された0よりも大きい定数に設定して、比(I2i/I1i)を算出する。予め設定された定数は、例えば、0近傍の正の値である。
【0048】
次に、算出部10bは、補正係数Kriの修正を行う(S107)。具体的には、算出部10bは、補正係数(Kri)にローパスフィルタ処理を施して、補正係数(Kri)の変化率が制限されるよう補正係数(Kri)を修正する。なお、補正係数(Kri)の変化率の制限は、上記に限定されず、他の手段によってよって実現されてもよい。他の手段は、例えば、単位時間当たりの補正係数の変化量の大きさがガード処理されること、補正係数が移動平均処理されること、補正係数が予め設定された保持時間の間一定の値に保持されること等を例示することができる。なお、補正係数Kriの変化率の制限の手段は、後述の他の実施形態における補正係数についても同様である。
【0049】
次に、算出部10bは、各ショックアブソーバ4bの最終目標減衰力(Ffti)を算出する(S108)。具体的には、算出部10bは、修正後の補正係数(Kri)と、下記の式(2)とに基づいて算出される。式(2)中のKriは、修正後の補正係数(Kri)である。
Ffti=Kri×Fti ・・・(2)
【0050】
次に、算出部10bは、各ショックアブソーバ4bの目標減衰係数(Cti)を算出する(S109)。具体的には、算出部10bは、算出された上下相対速度(Vrei)および算出された目標減衰力(Fti)と、図10に示されるマップとから、各ショックアブソーバ4bの目標制御段を決定する。すなわち、各ショックアブソーバ4bの目標減衰係数(Cti)が算出される。
【0051】
次に、減衰力制御部10cが、各ショックアブソーバ4bの制御段がステップ210において演算された目標制御段になるように制御段を制御することにより、減衰力の制御を実行する。換言すると、減衰力制御部10cは、各ショックアブソーバ4bの減衰係数(Ci)を目標減衰係数(Cti)に制御することにより、減衰力Fiを最終目標減衰力Fftiになるよう制御する。
【0052】
以上の説明から解るように、S102において、学習済みモデル121を利用して、各車輪3と車体2との間の上下相対速度Vreiが車輪3ごとに算出される。S103において、上下相対速度Vreiに基づいて、各ショックアブソーバ4bの目標減衰力Ftiが産出される。S104およびS105において、車輪3の回転に関する速度に基づいて、それぞれあおり振動指標値I1iおよびゴツゴツ振動指標値I2iが算出される。なお、あおり振動指標値I1iおよびゴツゴツ振動指標値I2iの算出は上記に限定されない。例えば、学習済みモデル121を、入力データの入力に基づいて、上記の出力データの他に、ばね上部2a(車体2)の上下方向の加速度を出力するように構成し、当該上下方向の加速度から既知の方向であおり振動指標値I1iおよびゴツゴツ振動指標値I2iを抽出してもよい。
【0053】
S106において、あおり振動指標値(I1i)に対するゴツゴツ振動指標値(I2i)の比(I2i/I1i)に基づいて、補正係数(Kri)が算出される。補正係数(Kri)は、比(I2i/I1i)が大きいほど小さくなり、車速が速いほど大きくなるよう算出される。S107において、変化率が制限されるよう補正係数(Kri)が修正される。
【0054】
S108において、修正後の補正係数(Kri)および上下相対速度(Vrei)の積として最終目標減衰力(Ffti)が算出される。S109およびS110において、各ショックアブソーバ4bの減衰力(Fi)が最終目標減衰力(Ffti)になるよう制御される。
【0055】
すなわち、制御装置10が行う処理には以下が含まれる。
(a)制御装置10は、学習済みモデル121を利用して、上下相対速度Vreiを推定(算出)する。
(b)制御装置10は、上下相対速度(Vrei)と減衰係数(Csf)とから目標減衰力(Fti)を算出する。
(c)制御装置10は、各車輪3の回転速度と、対角方向の二つの車輪3の回転速度の差分と、前後方向の二つの車輪3の回転速度の差分とを用いて、ゴツゴツ振動指標値(I2i)とあおり振動指標値(I1i)とを求める。
(d)制御装置10は、求めたゴツゴツ振動指標値(I2i)とあおり振動指標値(I1i)との比率(I2i/I1i)を求める。
(e)制御装置10は、求めたゴツゴツ振動指標値(I2i)とあおり振動指標値(I1i)との比率の最大値を選択する。
(f)制御装置10は、求めた比率の最大値に対して所定の一定時間内のホールド処理を行う。
(g)制御装置10は、ホールド処理を行った値と車体速度の関係から補正係数(Kri)を求める。
(h)制御装置10は、求めた補正係数(Kri)に対して、変化量が閾値以上の場合は変化量ガード処理(補正係数修正)を行い変化量最大値を求める。
(i)制御装置10は、求めた目標減衰力(Fti)と変化量最大値から最終目標減衰力(Ftfi)演算を行う。
(j)制御装置10は、求めた最終目標減衰力(Ftfi)から目標減衰係数(Cti)を演算し、減衰力制御を実行する。
上記処理によれば、制御装置10は、あおり振動指標値(I1i)と比較しゴツゴツ振動指標値(I2i)が大きい路面か否かを判定し、あおり振動指標値(I1i)と比較しゴツゴツ振動指標値(I2i)が大きい路面と判定した場合に、減衰力を下げる制御を行うことができる。
【0056】
以上のように、本実施形態では、制御装置10(減衰力制御装置)は、車両1の車輪3と車両1の車体2との間に介在するショックアブソーバ4bを制御する。制御装置10は、算出部10bと、減衰力制御部10cと、を備える。算出部10bは、車両1の上下方向の加速度以外の車両1の運動に関する第1の物理量を入力して車両1の上下方向の運動に関わる第2の物理量を出力する学習済みモデル121を利用して、第1の物理量の実測値から第2の物理量を推定し、推定した前記第2の物理量に基づいて、ショックアブソーバ4bの目標減衰係数を算出する。減衰力制御部10cは、算出された目標減衰係数に基づいて、ショックアブソーバ4bの減衰力を制御する。
【0057】
上記構成によれば、算出部10bが、学習済みモデル121を利用して、車両1の上下方向の加速度以外の車両1の運動に関する第1の物理量の実測値からショックアブソーバ4bの目標減衰係数を算出するので、ショックアブソーバ4bの減衰力の制御のための専用の上下加速度センサを車両1に設ける必要がない。よって、ショックアブソーバ4bの減衰力を制御する上で車両1の構造が複雑化するのを抑制することができる。
【0058】
また、第1の物理量は、車輪3の回転に応じた前記車輪3に関する速度と、車両1の前後方向の加速度と、車両1の横方向の加速度と、車両1のヨーレートと、車輪3の舵角と、車輪3の舵角速度と、車輪3の回転トルクと、目標減衰係数に応じてショックアブソーバ4bに入力される電流の値とのうちの少なくとも一つを含む。
【0059】
このような構成によれば、車輪3に関する速度と、車両1の前後方向の加速度と、車両1の横方向の加速度と、車両1のヨーレートと、車輪3の舵角と、車輪3の舵角速度と、車輪3の回転トルクと、目標減衰係数に応じてショックアブソーバ4bに入力される電流の値とのうちの少なくとも一つから、目標減衰係数を算出することができる。
【0060】
また、算出部10bは、推定した第2の物理量と、車輪3に関する速度とに基づいて、ショックアブソーバ4bの目標減衰係数を算出する。車輪3に関する速度は、複数の車輪3のそれぞれの回転速度と、複数の車輪3の対角方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分と、車両1の前後方向に並ぶ二つの車輪の回転速度の差分とのうちの少なくとも一つを含む。
【0061】
ここで、例えば、コンクリート板が連続して敷設されコンクリート板間の繋ぎ目が間隔をあけて形成された道路、所謂チョッピー路を車両1が走行している場合でも、チョッピー路の凹凸の状態が対角方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分と、車両1の横方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分とに反映されやすい。よって、上記の構成によれば、車輪3に関する速度に、車輪3に関する速度に車輪3の対角方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分と、車両1の前後方向に並ぶ二つの車輪3の回転速度の差分とのうちの少なくとも一つが含まれる場合に、より適切な目標減衰係数を算出することができる。
【0062】
<第2の実施形態>
図11は、第2の実施形態にかかる制御装置が実行する減衰力制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
本実施形態は、学習済みモデル121が出力する車両1の上下方向の運動に関わる第2の物理量が、ばね上部2a(車体2)の速度であるばね上速度である点と、制御装置10が実行する減衰力制御処理とが、第1の実施形態と異なる。
【0064】
本実施形態の減衰力制御処理では、図11に示されるように、図5のS102,103に替えてS402,S403が行われ、他のS401,S404~S410は、図5のS101,S104~110と同様に行われる。
【0065】
S402において、算出部10bは、入力データを学習済みモデル121に入力して、ばね上部2a(車体2)の速度であるばね上速度Vzを各車輪3ごとに算出する。具体的には、算出部10bは、各車輪3の回転速度と、車両1の前後方向の加速度と、車両1の横方向の加速度と、車両1のヨーレートと、車輪3の舵角と、車輪3の舵角速度と、車輪3の回転トルクと、目標減衰係数に応じてショックアブソーバ4bに入力される電流の値とを、学習済みモデル121に入力して、ばね上速度Vzを算出する。
【0066】
S403において、算出部10bは、算出したばね上速度Vzに基づいて、各ショックアブソーバ4bのそれぞれの目標減衰力Ftiを算出する。目標減衰力Ftiは、下記の式(3)に基づいて算出される。
Fti=Csf×Vz ・・・(3)
【0067】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態にかかる制御装置が実行する減衰力制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0068】
本実施形態は、制御装置10が実行する減衰力制御処理が、第1の実施形態と異なる。
【0069】
本実施形態の減衰力制御処理は、図12に示されるフローチャートに従って、例えば前側の二つの車輪3および後側の二つの車輪3について交互に行われる。S501~S505およびS509および510は第1の実施形態のS101~S105およびS109および110と同様である。そして、第1の実施形態におけるS106~S508に替えて、それぞれS506~508が実行される。
【0070】
本実施形態では、前側の二つの車輪3に対応するあおり振動指標値I1FL,I1FRのうちの大きい方の値が、前側の二つ車輪3に対応する位置における車体2のあおり振動指標値I1frとされる。また、後側の二つの車輪3に対応するあおり振動指標値I1RLおよびI1RRのうちの大きい方の値が、後ろ側の二つの車輪3に対応する位置における車体2のあおり振動指標値I1reとされる。同様に、前側の二つの車輪3に対応するゴツゴツ振動指標値I2FLおよびI2FRのうちの大きい方の値が、前側の二つの車輪3に対応する位置における車体18のゴツゴツ振動指標値I2frとされる。後ろ側の二つの車輪3に対応するゴツゴツ振動の指標値I2RLおよびI2RRのうちの大きい方の値が、後ろ側の二つの車輪3に対応する位置における車体18のゴツゴツ振動の指標値I2reとされる。
【0071】
S506において、それぞれあおり振動指標値I1frおよびI1reに対するゴツゴツ振動指標値I2frおよびI2reの比I2fr/I1frおよびI2re/I1reが算出される。更に、比I2fr/I1frおよびI2re/I1reに基づいて、図8または図9に示されるマップが参照されることにより、それぞれ前側の二つの車輪3および後側の二つの車輪3用の補正係数KrfrおよびKrreが算出される。
【0072】
S507おいては、補正係数KrfrおよびKrreがローパスフィルタ処理されることにより、変化率が制限されるよう補正係数KrfrおよびKrreが修正される。
【0073】
S508においては、修正後の補正係数KrfrおよびKrreを使用して、下記の式(4)~(7)に従って各ショックアブソーバ4bの最終目標減衰力Fftiが演算される。
FftFL=Krfr×FtFL ・・・(4)
FftFR=Krfr×FtFR ・・・(5)
FftRL=Krre×FtRL ・・・(6)
FftRR=Krre×FtRR ・・・(7)
【0074】
上記実施形態の各機能をコンピュータ(例えば制御装置10等)に実現させるためのプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0075】
また、当該プログラムをインターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、当該プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0076】
なお、学習済みモデル121が出力する第2の物理量は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば、第2の物理量は、車両1(車体2)のロール角速度や、車両1(車体2)のピッチ角速度、車両1(車体2)のヒーブ速度等であってもよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…車両
2…車体
3…車輪
4b…ショックアブソーバ
10…制御装置(減衰力制御装置)
10a…取得部
10b…算出部
10c…減衰力制御部
121…学習済みモデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12