(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179985
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ミシン、調整方法、及びセンサユニット
(51)【国際特許分類】
D05B 69/28 20060101AFI20241219BHJP
D05B 57/36 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
D05B69/28
D05B57/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099371
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】北村 春畝
(72)【発明者】
【氏名】深見 勇気
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA01
3B150CB03
3B150CE27
3B150DG16
3B150GD02
3B150GD14
3B150GD22
3B150GD26
3B150GG04
3B150LA02
3B150LB01
3B150NA02
3B150NB18
3B150NC02
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】針棒に装着された縫針と、釜機構の剣先又は針受けとの位置関係を精度良く調整できるミシン、ミシンにおいて縫針に対する釜機構の位置を調整する調整方法、及びセンサユニットを提供する
【解決手段】ミシンは、針棒と、剣先及び針受けを有する可動体を備える釜機構と、可動体を回転駆動する釜軸と、釜軸の軸方向における可動体の位置を調整可能な位置調整機構と、釜機構、釜軸及び位置調整機構を収容するフレーム7と、上糸に形成されたループを剣先が補足するタイミングにおける縫針31Aの位置である出合い位置に配置された縫針31Aに対して軸方向の一方の側から接触する接触面433を有し、縫針31Aの軸方向の変位量を検出するための第1センサ4Aと、第1センサ4Aを支持し、且つ、フレーム7に固定されるアーム部4Bとを備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動可能であり、縫針を先端に装着可能な針棒と、
前記針棒に装着された前記縫針に挿通する上糸を補足する剣先と、前記縫針に接触してガイドする針受けとを有する可動体を備える釜機構と、
前記上下方向と交差する方向に延びる軸を有し、前記軸を中心とした回転方向に前記可動体を回転駆動する釜軸と、
前記釜軸の軸方向における前記可動体の位置を調整可能な位置調整機構と、
前記釜機構、前記釜軸及び前記位置調整機構を収容するフレームと、
前記上糸に形成されたループを前記剣先が補足するタイミングにおける前記縫針の位置である出合い位置に配置された前記縫針に対して前記軸方向の一方の側から接触する接触面を有し、前記縫針の前記軸方向の変位量を検出するためのセンサと、
前記センサを支持し、且つ、前記フレームに固定されるアーム部と
を備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記センサが検出した前記縫針の変位量に基づいて表示を行う表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記センサは、
前記軸方向と交差する回転軸を中心として回転可能であり、前記接触面を有する検出子と、
前記接触面に前記縫針が接触することにより前記回転軸を中心として回転する前記検出子の回転位置を検出する検出部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記可動体の上方を覆う板を備え、
前記板は、
前記軸方向の一方の側の端部から他方に向けて延び、前記検出子が前記軸方向の一方の側から進入する切り欠きを有する
ことを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項5】
前記剣先及び前記針受けは、
前記縫針に対して前記軸方向の他方の側から接触可能であることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の前記ミシンにおいて、前記縫針に対する前記可動体の位置を調整する調整方法であって、
前記縫針を前記出合い位置に配置させる第1工程と、
前記センサ及び前記アーム部を有するセンサユニットを、前記フレームに固定する第2工程と、
前記第1工程により前記縫針が前記出合い位置に配置され、且つ、前記第2工程により前記センサユニットが前記フレームに固定された後、前記縫針に対し、前記軸方向の他方の側から前記縫針に向けて前記可動体を移動させる第3工程と、
前記第3工程により移動する前記可動体が前記縫針に接触して撓んだ場合、前記センサにより前記縫針の変位量を検出する第4工程と、
前記第4工程により検出した前記縫針の変位量に基づき、前記位置調整機構により前記可動体の前記軸方向の位置を調整する場合の基準位置を決定する第5工程と
を備えたことを特徴とする調整方法。
【請求項7】
上下方向に移動可能であり、縫針を先端に装着可能な針棒と、前記針棒に装着された前記縫針に挿通する上糸を補足する剣先と、前記縫針に接触してガイドする針受けとを有する可動体を備える釜機構と、前記上下方向と交差する方向に延びる軸を有し、前記軸を中心とした回転方向に前記可動体を回転駆動する釜軸と、前記釜軸の軸方向における前記可動体の位置を調整可能な位置調整機構と、前記釜機構、前記釜軸及び前記位置調整機構を収容するフレームと、を備えたミシンに用いられるセンサユニットであって、
前記縫針に対して前記軸方向の一方の側から接触する接触面を有し、前記縫針の前記軸方向の変位量を検出可能なセンサと、
前記センサを支持し、且つ、前記フレームに固定可能なアーム部と
を備えることを特徴とするセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン、調整方法、及びセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンにおいて縫製動作を適切に行うために、針棒に装着された縫針と釜との位置関係の調整が必要となる。特許文献1は、縫針の代わりに針棒に装着される釜位置調整部材を開示する。釜位置調整部材は、検出軸を有する。釜の剣先に検出軸が接触しない状態で釜位置調整部材に電流は流れず、釜の剣先に検出軸が接触した状態で釜位置調整部材に電流が流れる。釜位置調整部材に接続された検出計は、釜位置調整部材に電流が流れているか否かを検出する。作業者は、釜の剣先が検出軸に接触した状態を検出計により確認することで、釜の位置合わせを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記では、縫針の代わりに釜位置調整部材が針棒に取り付けられて調整が行われる。従って、縫針と検出軸とのそれぞれの形状が相違する場合、縫針と釜との位置関係を精度良く調整できない。このように、上記の方法では、針棒に装着された縫針と釜との位置関係を精度良く調整できない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、針棒に装着された縫針と、釜機構の剣先又は針受けとの位置関係を精度良く調整できるミシン、ミシンにおいて縫針に対する釜機構の位置を調整する調整方法、及びセンサユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るミシンは、上下方向に移動可能であり、縫針を先端に装着可能な針棒と、前記針棒に装着された前記縫針に挿通する上糸を補足する剣先と、前記縫針に接触してガイドする針受けとを有する可動体を備える釜機構と、前記上下方向と交差する方向に延びる軸を有し、前記軸を中心とした回転方向に前記可動体を回転駆動する釜軸と、前記釜軸の軸方向における前記可動体の位置を調整可能な位置調整機構と、前記釜機構、前記釜軸及び前記位置調整機構を収容するフレームと、前記上糸に形成されたループを前記剣先が補足するタイミングにおける前記縫針の位置である出合い位置に配置された前記縫い針に対して前記軸方向の一方の側から接触する接触面を有し、前記縫針の前記軸方向の変位量を検出するためのセンサと、前記センサを支持し、且つ、前記フレームに固定されるアーム部とを備えることを特徴とする。
【0007】
ミシンは、可動体の剣先又は針受けが接触することにより変位する縫針の変位量を検出するセンサを備える。ミシンの作業者は、センサにより検出された変位量に基づき、可動体の剣先又は針受けと縫針との位置関係を確認できる。従って、作業者は、可動体の剣先又は針受けと縫針との位置関係の調整を精度良く行うことができる。
【0008】
第1態様において、前記センサが検出した前記縫針の変位量に基づいて表示を行う表示部を備えてもよい。作業者は、釜機構の剣先又は針受けと縫針との位置関係を、表示部を視認することで確認できる。
【0009】
第1態様において、前記センサは、前記軸方向と交差する回転軸を中心として回転可能であり、前記接触面を有する検出子と、前記接触面に前記縫針が接触することにより前記回転軸を中心として回転する前記検出子の回転位置を検出する検出部とを備えてもよい。センサは、縫針の変位量を直接検出する場合と比べて、縫針の大きさや形状に関わらず、縫針の変位量を精度良く検出できる。
【0010】
第1態様において、前記釜機構の上方を覆う板を備え、前記板は、前記軸方向の一方の側の端部から他方に向けて延び、前記検出子が前記軸方向の一方の側から進入する切り欠きを有してもよい。この場合、センサの検出子が板に接触することを防止できる。
【0011】
第1態様において、前記剣先及び前記針受けは、前記縫針に対して前記軸方向の他方の側から接触可能であってもよい。センサは、縫針に対して軸方向の他方の側から釜機構が接触することに応じて縫針が軸方向の一方の側に撓んだ場合において、撓みの量を変位量として検出できる。
【0012】
本発明の第2態様に係る調整方法は、第1態様に係る前記ミシンにおいて、前記縫針に対する前記可動体の位置を調整する調整方法であって、前記縫針を前記出合い位置に配置させる第1工程と、前記センサ及び前記アーム部を有するセンサユニットを、前記フレームに固定する第2工程と、前記第1工程により前記縫針が前記出合い位置に配置され、且つ、前記第2工程により前記センサユニットが前記フレームに固定された後、前記縫針に対し、前記軸方向の他方の側から前記縫針に向けて前記可動体を移動させる第3工程と、前記第3工程により移動する前記可動体が前記縫針に接触して撓んだ場合、前記センサにより前記縫針の変位量を検出する第4工程と、前記第4工程により検出した前記縫針の変位量に基づき、前記位置調整機構により前記可動体の前記軸方向の位置を調整する場合の基準位置を決定する第5工程とを備えたことを特徴とする。第2態様によれば、第1態様と同様の効果を奏することができる。
【0013】
本発明の第3態様に係るセンサユニットは、上下方向に移動可能であり、縫針を先端に装着可能な針棒と、前記針棒に装着された前記縫針に挿通する上糸を補足する剣先と、前記縫針に接触してガイドする針受けとを有する可動体を備える釜機構と、前記上下方向と交差する方向に延びる軸を有し、前記軸を中心とした回転方向に前記可動体を回転駆動する釜軸と、前記釜軸の軸方向における前記可動体の位置を調整可能な位置調整機構と、前記釜機構、前記釜軸及び前記位置調整機構を収容するフレームと、を備えたミシンに用いられるセンサユニットであって、前記縫針に対して前記軸方向の一方の側から接触する接触面を有し、前記縫針の前記軸方向の変位量を検出可能なセンサと、前記センサを支持し、且つ、前記フレームに固定可能なアーム部とを備えたことを特徴とする。第3態様によれば、第1態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図7】
図6のA-A線を矢印方向から視た断面図である。
【
図9】フレーム7から脱離したセンサユニット4の斜視図である。
【
図10】フレーム7に装着されたセンサユニット4の斜視図である。
【
図11】ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図12】第1調整方法を示すフローチャートである。
【
図15】縫針31Aが出合い位置に配置された状態を示す図である。
【
図18】第2センサ6Bにより被検出体84Fが検出された状態を示す図である。
【
図19】第2調整方法を示すフローチャートである。
【
図20】第2調整方法を示すフローチャートであって、
図19の続きである。
【
図21】ドライバー84の針受け84Cが縫針31Aに接触した状態を示す図である。
【
図22】中釜83の剣先83Cが縫針31Aに接触した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一実施形態に係るミシン1について、図面を参照して説明する。以下説明では、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
【0016】
<ミシン1の概要>
ミシン1は、被縫製物に対する縫製が可能な門型のミシンである。
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部21、一対の脚柱部22、梁部23、頭部24、送り機構25、及び操作部27を有する。
【0017】
ベッド部21は、基部21A及び枠体21Bを有する。基部21Aは略矩形状である。基部21Aの上面は、水平に延びる平らな保持面21Uを形成する。基部21Aの前端部に、保持面21Uに沿って前方に延びる保持板21Pが設けられる。保持面21Uの左端部近傍に開口部210Lが形成され、前後方向に延びる蛇腹21Lが開口部210Lを覆う。保持面21Uの右端部近傍に開口部210Rが形成され、前後方向に延びる蛇腹21Rが開口部210Rを覆う。蛇腹21L、21Rは、それぞれ、保持面21Uの前端部と後端部の間に亘って直線状に延びる。蛇腹21L、21Rは、後述する送り機構25が前後方向に往復移動することに応じ、伸縮する。枠体21Bは格子状の構造体であり、基部21Aを下方から支持する。
【0018】
送り機構25は、連結部25L、25Rを有する。連結部25Lは、ベッド部21の開口部210Lに配置されたレールに連結する。連結部25Rは、ベッド部21の開口部210Rに配置されたレールに連結する。連結部25L、25Rは、保持機構26と連結する。保持機構26は、被縫製物を保持する。保持機構26は、非図示の上枠、下枠261、エアシリンダ262L、262Rを有する。上枠と下枠261は、平面視矩形状の枠であり、間に被縫製物を挟持する。上枠は、エアシリンダ262L、262Rにより上下に移動する。
図1において、上枠はエアシリンダ262L、262Rから取り外されている。送り機構25は、被縫製物を保持した保持機構26を前後方向に移動させる。
【0019】
一対の脚柱部22は、脚柱部22L、22Rを有する。脚柱部22L、22Rは、それぞれ、略四角柱状である。脚柱部22Lは、ベッド部21の基部21Aの左端部且つ前後方向中央よりも前方の位置から、上方に延びる。脚柱部22Lは、左右方向において蛇腹21Lよりも左側に位置する。脚柱部22Rは、ベッド部21の基部21Aの右端部且つ前後方向中央よりも前方の位置から、上方に延びる。脚柱部22Rは、左右方向において蛇腹21Rよりも右側に位置する。脚柱部22L、22Rは、左右方向に離隔する。
【0020】
梁部23は、脚柱部22L、22Rのそれぞれの間に架設する。梁部23は、一対の脚柱部22の間に亘って左右方向に延びる。梁部23は、筐体23Uを有する。筐体23Uは、脚柱部22L、22Rのそれぞれの上端部と後端部の間に亘って延びる。脚柱部22L、22R、筐体23Uで囲まれた空間に、非図示のレールが設けられる。レールは棒状を有し、脚柱部22L、22R間に架設される。レールは、後述する頭部24を左右方向に移動可能に支持する。蛇腹23Fは、脚柱部22L、22R、筐体23Uのそれぞれの前端部、及び、後述の頭部24の左右両端部に亘って設けられる。蛇腹23Fは、頭部24を支持するレールを前方から覆う。蛇腹23Fは、頭部24がレールに沿って左右方向に往復移動することに応じ、伸縮する。
【0021】
操作部27は、梁部23の左端部の前面に固定される。操作部27は、スイッチ群27A、及び表示部27Bを備える。スイッチ群27Aは、作業者の操作に応じて各種指示が入力される。表示部27Bは液晶ディスプレイであり、各種画像を表示できる。
【0022】
頭部24は、梁部23に対して前側に設けられる。頭部24は、針棒31、押え足32、天秤33、糸調子装置34、副糸調子器35、糸案内36、37等を備える。針棒31は上下方向に延び、下端部に縫針31A(
図2参照)を装着可能である。針棒31を駆動する駆動ユニット5(
図3参照、後述)は、頭部24内に設けられる。押え足32は、針棒31の移動に応じて縫針31Aが通過する貫通穴を有し、被縫製物を上方から押える。天秤33は、針棒31の上下方向への移動に応じて動作し、上糸を引き上げる。糸調子装置34は、上糸の張力を調整する。副糸調子器35は、非図示の糸駒から延びる上糸に巻き付き、下方の糸調子装置34に向けて上糸を誘導する。糸案内36、37は、それぞれ、糸調子装置34から延びる上糸に接触し、天秤33に向けて上糸を誘導する。
【0023】
梁部23内のレールは、頭部24を左右方向に移動可能に支持する。従って頭部24は、梁部23の前端部に沿って左右方向に移動可能である。
【0024】
図3に示すように、駆動ユニット5は、主軸50、回転ツマミ51、プーリ52、釣合錘53、クランク54、ロッド56、57、及び針棒受け58を有する。
【0025】
主軸50は円柱状を有し、左右方向に延びる。回転ツマミ51は、主軸50の右端部に固定される。回転ツマミ51は、作業者が針棒31を上下方向に移動させたり、後述の可動体80(
図4参照)を回転させたりする場合において、手動で回転操作される。プーリ52は、主軸50のうち回転ツマミ51の左方に固定される。プーリ52の側面にギヤ52Aが形成される。主モータ131(
図11参照)の回転軸とプーリ52との間に、非図示のベルトが架け渡される。プーリ52は、主モータ131の駆動に応じて回転するベルトから回転駆動力を受け、主軸50を回転させる。
【0026】
釣合錘53は、主軸50のうちプーリ52の左方に固定される。釣合錘53は、主軸50の回転時に発生する振動を抑制する。クランク54は、主軸50のうち釣合錘53の左方に固定される。クランク54のうち、主軸50の回転中心を基準とした径方向において主軸50から離隔した位置に、左方に延びる第1支軸(非図示)が固定される。ロッド56の下端部は、第1支軸に回転可能に支持される。ロッド56は、第1支軸に支持された部分から上方に延びる。ロッド56の上端部に天秤33が固定される。天秤33は、ロッド56の上端部から前斜め上方に延びる。
【0027】
天秤33の後方に、天秤受け55が設けられる。天秤受け55は、左右方向に延びる回転軸55A、及び、回転軸55Aから前方に延びるクランク55Bを有する。クランク55Bの前端部は、ロッド56の上端部に連結する。クランク55Bは、ロッド56に対して回転可能である。天秤受け55は、天秤33が上下方向に移動する場合の速度を制御する。
【0028】
主モータ131の駆動に応じて主軸50が回転した場合、ロッド56の上端部は上下方向に移動する。このため、ロッド56の上端部に固定された天秤33も、主軸50の回転に応じて上下方向に移動する。
【0029】
ロッド56の下端部の左面に、第1支軸を中心とした径方向において第1支軸から離隔する方向に延びる連結板56Aが固定される。連結板56Aのうち第1支軸の側と反対側の端部に、左方に延びる第2支軸57Aが固定される。ロッド57の一端部は、第2支軸57Aに回転可能に支持される。ロッド57の他端部は、針棒抱き58を回転可能に支持する。針棒抱き58は、針棒31に固定される。針棒抱き58は、右方に延びる第3支軸(非図示)を有する。第3支軸は、ロッド57の他端部により回転可能に支持される。
【0030】
主モータ131の駆動に応じて主軸50が回転した場合、ロッド57の他端部は上下動する。このとき、ロッド57の他端部に回転可能に支持された針棒抱き58も、上下動する。このため、針棒抱き58が固定された針棒31も、主軸50の回転に応じて上下方向に移動する。
【0031】
針棒31の下端部に、縫針31Aが装着される。縫針31Aの先端部近傍の右側面に、左方に切り欠かれた切り欠き30が形成される。
【0032】
<フレーム7>
図2に示すように、頭部24の下方且つ基部21A(
図1参照)の内部にフレーム7が設けられる。フレーム7は、筐体70A、及び一対の脚部70Bを有する。
【0033】
筐体70Aは、後述する釜ユニット8(
図5等参照)を内部に収容する。筐体70Aは、主部701及び突出部702を有する。主部701は箱状を有する。突出部702は、主部701の左面のうち前端部近傍に設けられ、左方に突出する。突出部702の上側に、針板74が着脱可能に固定される。針板74は、縫針31A(
図3参照)を挿通可能な針穴74Aを有する。針穴74Aは、針棒31の下方に位置する。
図4は、針板74が脱離された状態を示す。
【0034】
図4に示すように、主部701の前後両端部に、一対の脚部70Bが設けられる。一対の脚部70Bは、それぞれ、左右方向に延びる非図示のレールにより支持される。筐体70A内の釜ユニット8(
図5参照)は、一対の脚部70Bがレールに沿って移動することにより、頭部24と同期して左右方向に移動可能である。非図示の搬送機構は、頭部24及びフレーム7を左右方向に移動させる。
【0035】
突出部702の上面の前端部に、支持軸751、752が設けられる。支持軸751、752は、それぞれ円柱状を有し、突出部702の上面から上方に突出する。
【0036】
<釜ユニット8>
図5~
図7を参照し、釜ユニット8について説明する。釜ユニット8は、釜機構8A、釜軸8B、及び位置調整機構8C、8Dを有する。釜ユニット8は、フレーム7の筐体70A内に収容される。
【0037】
図5に示すように、釜軸8Bは、軸体85、釜軸ギヤ86、及び終端アセンブリ87を有する。
【0038】
軸体85は円柱状を有し、左右方向に延びる。軸体85は、フレーム7の筐体70A内で回転可能に支持される。軸体85の中心を通って左右方向に延びる軸を、「軸C」という。軸体85の右端部に、終端アセンブリ87が設けられる。終端アセンブリ87は、軸体85よりも半径が大きい円柱状を有する。終端アセンブリ87は、フレーム7の筐体70Aにより支持される。終端アセンブリ87は、軸体85が回転しても回転しない。一方、終端アセンブリ87は、フレーム7に対して左右方向に移動可能である。終端アセンブリ87がフレーム7に対して左右方向に移動することに応じ、軸体85もフレーム7に対して左右方向に移動する。終端アセンブリ87の前側面に、上下方向に延びる溝87Aが設けられる。溝87Aの底部870は、前後方向と直交する。
【0039】
釜軸ギヤ86は、軸体85のうち終端アセンブリ87の左側に設けられる。主モータ131の回転軸と釜軸ギヤ86との間に、非図示のベルトが架け渡される。釜軸ギヤ86は、主モータ131の駆動に応じて回転するベルトから回転駆動力を受け、軸体85を回転させる。なお、駆動ユニット5の主軸50(
図3参照)も同様に、主モータ131の駆動に応じて回転する。従って、主軸50及び軸体85は、主モータ131の駆動に応じ、連動して回転する。
【0040】
釜機構8Aは、ボビンが垂直にセットされる垂直釜である。釜機構8Aは、大釜体81、大釜82(
図6、
図7参照)、及び可動体80を有する。
【0041】
大釜体81は、第1収容部81A及び第2収容部81Bを有する。第1収容部81Aは円柱状を有し、左右方向に延びる。第1収容部81Aの前側面に、上下方向に延びる溝817が設けられる。溝817の底部817Aは、前後方向と直交する。第2収容部81Bは、第1収容部81Aの左端部に設けられる。第2収容部81Bは円柱状を有し、左右方向に延びる。第2収容部81Bは、径の異なる第1部811及び第2部812を有する。第2部812は、第1部811の左側に配置される。第1部811の外径よりも、第2部812の外径の方が大きい。第1部811及び第2部812の外径は、第1収容部81Aの外径よりも大きい。
【0042】
第1収容部81Aの中心に、左右方向に延びる貫通孔が形成される。釜軸8Bの軸体85の左端部は、第1収容部81Aの貫通孔に右方から挿通する。第2収容部81B内に空間810が形成される。空間810内に、後述する可動体80が収容される。第2収容部81Bのうち第2部812の左端部に、円形の開口813が形成される。空間810の左端部は、開口813により開放される。第2収容部81Bの上端部に、空間810に連通する孔814が形成される。開口813の上端部と孔814の左端部とは繋がっている。第2収容部81Bのうち第1部811の後端部に、空間810に連通する孔815が形成される。孔815は、上下方向に長い長孔であり、孔815の上端部の内側に雌ネジが形成され、孔815の下端部の内側にも別の雌ネジが形成されている。第2収容部81Bのうち第1部811の前端部に、空間810に連通する孔816が形成される。孔816は、断面形状が円形の孔である。
【0043】
図6、
図7に示すように、大釜82は、大釜体81の左端部に設けられる。
図6に示すように、大釜82は、円形の板状を有する。大釜82の外径は、大釜体81の第2収容部81Bのうち第2部812の外径と略同一である。大釜82の中心に、左右方向に貫通する円形の孔821が形成される。孔821の径は、大釜体81の開口813(
図5参照)の径よりも小さい。大釜82は、大釜体81の開口813の一部を左方から覆う。
【0044】
図4に示すように、大釜体81の第2収容部81Bは、フレーム7の筐体70Aのうち突出部702の左面から左方に突出する。第2収容部81Bの上側に、釜糸案内90が固定される。釜糸案内90は板であり、上下方向と直交する。釜糸案内90は、第2収容部81Bの孔814を上方から覆う。釜糸案内90は、針板74(
図2参照)の下方に位置する。釜糸案内90は、切り欠き90Aを有する。切り欠き90Aは、釜糸案内90の左端部から右方に延びる。
【0045】
図5に示すように、可動体80は、中釜83及びドライバー84を有する。中釜83及びドライバー84は、大釜体81の空間810に配置される。
【0046】
中釜83は金属製である。中釜83は、基部83A、周縁部83B、剣先83C、及びスタッド830を有する。
【0047】
基部83Aは、扇形の板状を有し、左右方向と直交する。基部83Aのうち扇形の中心を軸Cが通過する。周縁部83Bは、基部83Aの円弧部分に設けられる。周縁部83Bのうち、軸Cを中心とした周方向の一方側の端部を、「中釜端部831」という。周縁部83Bのうち、軸Cを中心とした周方向の他方側の端部を、「中釜端部832」という。中釜端部831は、周縁部83Bのうち、左方から視た状態で反時計回り方向の側の端部に対応する。中釜端部832は、周縁部83Bのうち、左方から視た状態で時計回り方向の側の端部に対応する。
【0048】
剣先83Cは、軸Cを中心とした周方向の他方側に延びる。剣先83Cの先端は尖っている。剣先83Cは、ミシン1による縫製の過程で、縫針31Aに挿通する上糸を補足する。スタッド830は、基部83Aから軸Cに沿って左方に延びる。スタッド830には、下糸が巻回されたボビンを含む非図示のボビンケースが回転可能に支持される。
【0049】
中釜83は、大釜体81の空間810内に配置される。中釜83は、大釜体81に大釜82が固定された状態で、大釜体81及び大釜82により回転可能に支持される。
【0050】
ドライバー84は金属製である。ドライバー84は、固定部84A、基部84B、針受け84C、被係合体84E、及び被検出体84Fを有する。
【0051】
固定部84Aは円筒状を有し、左右方向に延びる。固定部84Aの貫通孔840は、左右方向に延びる。軸Cは、貫通孔840の中心を通過する。固定部84Aには、軸Cを中心とした径方向に延びる突出部841が設けられる。以下、軸Cを中心とした径方向を、「軸径方向」という。固定部84A及び突出部841にスリットが形成される。突出部841に固定ネジ842が螺合される。固定部84A及び突出部841のスリットの間隔は、固定ネジ842により調節可能である。
【0052】
固定部84Aは、釜軸8Bの軸体85が貫通孔840に挿通した状態で固定ネジ842が締められることにより、軸体85に連結され、軸体85の回転力が伝達可能な状態になる。一方、固定部84Aは、固定ネジ842が緩められることにより、軸体85から脱離し、軸体85の回転力の伝達が切断された状態になる。
【0053】
基部84Bは、固定部84Aの側面から軸径方向に沿って外側に延びる。基部84Bの先端部は、左方に曲折する。
【0054】
針受け84Cは、基部84Bの先端部に設けられる。針受け84Cは、軸Cを中心とした周方向に延びる。針受け84Cは、ミシン1による縫製の過程で縫針31Aに接触し、縫針31Aが撓まないようにガイドする。針受け84Cのうち、軸Cを中心とした周方向の一方側の端部を、「針受け端部843」という。周縁部83Bのうち、軸Cを中心とした周方向の他方側の端部を、「針受け端部844」という。針受け端部843は、針受け84Cのうち、左方から視た状態で反時計回り方向の側の端部に対応する。針受け端部844は、針受け84Cのうち、左方から視た状態で時計回り方向の側の端部に対応する。
【0055】
被係合体84Eは、固定部84Aの側面に設けられる。被係合体84Eは、係合延伸部845及び被係合部846を有する。係合延伸部845は、固定部84Aの側面から軸径方向に沿って外側に延びる。係合延伸部845の形状は、四角柱である。被係合部846は、係合延伸部845の先端部に形成された凹部である。被係合部846は、係合延伸部845の先端部の平面から軸Cに向けて延びる。
【0056】
被検出体84Fは、固定部84Aの側面に設けられる。被検出体84Fは、検出延伸部847及び被検出面848を有する。検出延伸部847は、固定部84Aの側面から軸径方向に沿って外側に延びる。検出延伸部847の延びる方向は、被係合体84Eの係合延伸部845の延びる方向と相違する。係合延伸部845と検出延伸部847間のなす角度は、左方から視た状態で約120度である(
図13参照)。検出延伸部847は係合延伸部845に対し、左方から視た状態で時計回り方向の側に配置される。検出延伸部847の形状は、四角柱である。被検出面848は、検出延伸部847の先端に設けられる。被検出面848は、軸径方向と直交する平面を有する。
【0057】
被検出体84Fの検出延伸部847の軸径方向長さは、被係合体84Eの係合延伸部845の軸径方向の長さよりも長い。被検出体84Fの被検出面848は、ドライバー84の被係合体84Eのうち被係合部846よりも、軸径方向において外側に位置する。
【0058】
ドライバー84は、大釜体81の空間810内且つ中釜83の右側に配置される。ドライバー84の針受け84Cのうち針受け端部843は、中釜83の中釜端部832に接触する。ドライバー84の針受け84Cのうち針受け端部844は、中釜83の中釜端部831に接触する。但し、針受け端部843、844の一方が中釜83に接触している時、他方は中釜83から離間する関係にある。
【0059】
固定ネジ842が締められることで釜軸8Bの軸体85に連結したドライバー84は、軸体85が回転することに応じ、軸Cを中心として回転する。このとき、ドライバー84の針受け84Cの針受け端部843、844に中釜端部831、832が接触する中釜83に対し、ドライバー84から回転駆動力が伝達される。これにより中釜83は、ドライバー84の回転に応じて軸Cを中心として回転する。つまり、ドライバー84が軸体85に連結することにより、中釜83及びドライバー84を含む可動体80は軸体85と連結し、可動体80は軸体85の回転に応じて回転する。以下、可動体80が軸体85に連結した状態を、「連結状態」という。
【0060】
一方、ドライバー84は、固定ネジ842が緩められることで釜軸8Bの軸体85から脱離したドライバー84は、軸体85が回転しても回転しない。又、中釜83は、ドライバー84から回転駆動力が伝達されないので、ドライバー84と同様回転しない。つまり、中釜83及びドライバー84を含む可動体80が軸体85と連結した状態は、ドライバー84が軸体85から脱離することにより解除される。以下、可動体80の軸体85に対する連結が解除された状態を、「解除状態」という。
【0061】
位置調整機構8C、8Dは、それぞれ、フレーム7の筐体70Aに固定される。位置調整機構8C、8Dは、同一形状を有する。
【0062】
位置調整機構8Cは、胴部88A及び頭部88Bを有する。胴部88Aは円柱状を有し、前後方向に延びる。胴部88Aは、偏芯シャフトである。胴部88Aの半径は、周方向において均一でなく、周方向の一部分の半径は他の部分の半径よりも大きくなる。胴部88Aの後端部は、釜軸8Bの終端アセンブリ87に設けられた溝87Aに嵌る。胴部88Aの前端部に、周方向に延びる溝が形成される。この溝には、非図示のOリングが嵌合される。頭部88Bは、胴部88Aの前側面に設けられる。頭部88Bには、直線状に延びる溝(すりわり)が形成される。
【0063】
位置調整機構8Cの回転により、フレーム7に対して釜軸8Bは左右方向に移動する。位置調整機構8Cは、釜軸8Bの軸体85に接続するドライバー84の左右方向の位置を調節可能である。
【0064】
位置調整機構8Dは、胴部89A及び頭部89Bを有する。胴部89A及び頭部89Bは、位置調整機構8Cの胴部88A及び頭部88Bに対応する。胴部89Aの後端部は、大釜体81の第1収容部81Aに設けられた溝817に嵌る。
【0065】
位置調整機構8Dの回転により、フレーム7に対して大釜体81は左右方向に移動する。このため、位置調整機構8Dは、大釜体81に回転可能に支持された中釜83の左右方向の位置を調節可能である。
【0066】
従って、位置調整機構8C、8Dは、フレーム7に対する可動体80の中釜83及びドライバー84の左右方向の位置を、独立して調整可能である。
【0067】
<係合体6A>
係合体6Aは、釜ユニット8の大釜体81のうち第2収容部81Bに設けられる。係合体6Aは、基部61、可動部62、操作部63、及び固定部64を有する。
【0068】
基部61は円筒状を有し、軸径方向に沿って後方に延びる。固定部64は、基部61に対して軸系方向の内側に、基部61と一体に設けられる。固定部64の側面に、固定用のネジ溝が形成されている。基部61は、大釜体81のうち第2収容部81Bに形成された孔815の上端部に挿通され、固定部64のネジ溝が孔815の雌ネジに螺合することにより第2収容部81Bに固定される。基部61及び固定部64は、軸径方向に沿って延びる貫通孔を有する。
【0069】
可動部62は円柱状を有し、基部61及び固定部64の貫通孔に挿通される。可動部62は、基部61及び固定部64に対して軸径方向に移動可能である。可動部62のうち、軸径方向の内側の端部を、「係合部62A」という。可動部62が軸径方向の内側に移動した場合、係合部62Aは、固定部64に対して軸径方向の内側に突出する。可動部62が軸径方向の外側に移動した場合、係合部62Aは固定部64の内部に配置され、固定部64に対して軸径方向の内側に突出しない。
【0070】
操作部63は、可動部62のうち軸径方向の外側に設けられる。操作部63は、基部61に対して軸径方向の外側に配置される。操作部63は、作業者が可動部62を軸径方向に沿って移動させる場合において把持される。
【0071】
可動部62が軸径方向の外側に移動した状態で、係合部62Aは、大釜体81のうち空間810を形成する内面よりも軸径方向の外側に配置される。このとき、係合部62Aは、ドライバー84の回転に応じて被係合体84E及び被検出体84Fが通過する領域よりも、軸径方向において外側に配置される。以下、この状態を「脱離状態」という。
【0072】
一方、可動部62が軸径方向の内側に移動した状態で、係合部62Aは、大釜体81のうち空間810を形成する内面から内側に突出する。このとき、係合部62Aは、ドライバー84の回転に応じて被係合体84E及び被検出体84Fが通過する領域よりも、軸径方向において内側に配置される。以下、この状態を「係合状態」という。
【0073】
<第2センサ6B>
第2センサ6Bは、近接センサである。第2センサ6Bは、大釜体81のうち第2収容部81Bに形成された孔815の下端部に固定される。第2センサ6Bは、基部67、保持部65、及びセンサヘッド66を有する。
【0074】
基部67は円柱状を有し、軸径方向に沿って後斜め下方に延びる。基部67の側面に、固定用のネジ溝が形成されている。このネジ溝は、孔815の雌ネジに螺合する。保持部65は、基部67のうち軸径方向の外側の端部に設けられる。保持部65は六角形状を有する。保持部65は、基部67のネジ溝により第2センサ6Bを大釜体81に固定する場合において、レンチ等が掛けられる。センサヘッド66は、基部61のうち軸径方向の内側の端部に設けられる。センサヘッド66は、高周波磁界を発生させることで、ドライバー84の被検出体84Fが接近したことを検出できる。センサヘッド66は、ドライバー84の回転に応じて被係合体84E及び被検出体84Fが通過する領域よりも、軸径方向において外側に配置される。
【0075】
被検出体84Fの被検出面848と第2センサ6Bとは、何れも、左右方向において中釜83とは異なる位置、より詳細には、中釜83よりも右側に配置される。また、被検出体84Fの被検出面848と第2センサ6Bとの左右方向の位置は同一である。
【0076】
第2センサ6Bは、被検出体84Fの被検出面848がセンサヘッド66に接近したか否かを示す検出結果を出力する。
【0077】
<センサユニット4>
センサユニット4は、フレーム7に着脱可能に装着される。センサユニット4は、針棒31に装着された縫針31Aと、可動体80の剣先83C又は針受け84Cとの左右方向の位置関係を調整する場合において、フレーム7に装着されて使用される。一方、センサユニット4は、ミシン1による縫製動作時に脱離される。
図8に示すように、センサユニット4は、第1センサ4A及びアーム部4Bを有する。
【0078】
アーム部4Bは、後述する第1センサ4Aを支持し、且つ、第1センサ4Aをフレーム7に固定する。アーム部4Bは、曲折した角柱である。アーム部4Bは、延伸部451、452を有する。延伸部451は左右方向に延びる。延伸部452は、延伸部451の左端部から後方に延びる。延伸部451には、孔461、462、463が形成される。孔461~463は、それぞれ、延伸部451を上下方向に貫通する。孔461、462、463は、この順番で右方に並ぶ。
【0079】
第1センサ4Aは、アーム部4Bの延伸部452に支持される。第1センサ4Aは、支持部41、検出体42、及び検出子43を有する。
【0080】
支持部41は、アーム部4Bの延伸部452の右側面にネジ411で固定される。検出体42は、支持部41によりアーム部4Bに支持される。検出体42は、前後方向に対向する検出部42A、42Bを有する。検出部42A、42B間には隙間が形成される。検出部42Aは、検出部42Bと対向する面に発光部を有する。検出部42Bは、検出部42Aと対向する面に受光部を有する。発光部は、受光部に向けて光を出射する。受光部は、発光部から出射された光を受光する。検出体42は更に、検出部42Aの前側面にコネクタ42Cを有する。コネクタ42Cには非図示のケーブルが接続される。
【0081】
検出子43は、細長い板状の基部43Aを有する。基部43Aは、前後方向と直交する。回転軸431は、基部43Aの前面から前方に延びる。回転軸431の先端部は、検出部42Aから前方に延びる支持板421により回転可能に支持される。回転軸432は、基部43Aの後面から後方に向けて延びる。回転軸432の先端部は、検出部42Bから前方に延びる支持板422により回転可能に支持される。回転軸431、432は、前後方向に一直線状に並ぶ。基部43Aは、回転軸431、432を中心として回転可能である。基部43Aは、回転軸431、432が設けられた部分から右端部に向けて、下方に傾斜して延びる。
【0082】
基部43Aの周端部の一部に、接触面433が設けられる。接触面433は、基部43Aと直交する平面状を有し、基部43Aの前方及び後方に跨って延びる。接触面433は、基部43Aの周端部のうち回転軸431、432よりも上方の位置から右斜め下方に延び、基部43Aの前端部で湾曲し左斜め下方に更に延びる。
【0083】
基部43Aの周端部のうち、接触面433よりも上方の位置に、規制部434が設けられる。規制部434は、基部43Aと直交する平面状を有し、基部43Aの前方及び後方に跨って延びる。規制部434は、検出部42A、42Bのそれぞれの上面よりも上側に位置する。規制部434は、前方から視た状態で基部43Aが反時計回り方向に回転するのを、検出部42A、42Bのそれぞれの上面に接触することで規制する。基部43Aは、規制部434によって反時計回り方向への回転が規制された状態から、時計回り方向に回転可能である。
【0084】
基部43Aのうち、検出部42A、42B間に挟まれた部分に、非図示の遮蔽板が設けられる。遮蔽板に複数のスリットが形成される。回転軸431、432を中心として基部43Aが回転した場合、検出部42Aの発光部から出射された光は、スリットを通過したり、遮蔽板により遮蔽されたりする。検出部42Bの受光部は、検出部42Aの発光部から出射された光の受光状態に基づき、基部43Aの回転位置を検出する。検出体42は、検出した回転位置を示す検出結果を、コネクタ42Cに接続されたケーブルを介して出力する。
【0085】
図9に示すように、アーム部4Bは、孔462,463にフレーム7の支持軸751、752がそれぞれ下方から挿通することにより、フレーム7に固定される。孔461には磁石が挿入される。アーム部4Bをフレーム7に固定する場合、磁石は、フレーム7に接続された鉄板753に磁力で吸着する。磁石は、アーム部4Bを固定する場合において孔462,463に支持軸751,752を奥まで差し込むのを、磁気の吸引力で補助する。又、磁石は、センサユニット4の使用時にガタ付きが生じないように、鉄板753に吸着してアーム部4Bを保持する。
図10に示すように、フレーム7に固定された状態のアーム部4Bは、釜ユニット8の可動体80(
図5参照)よりも左方且つ上方にて、第1センサ4Aを支持する。第1センサ4Aの検出子43は、釜糸案内90の切り欠き90Aに左方から進入する。検出子43の接触面433は、切り欠き90Aの内部に配置される。
【0086】
<電気的構成>
図11を参照し、ミシン1の電気的構成を説明する。ミシン1の制御部110は、CPU111、ROM112、RAM113、記憶装置114、入出力インターフェース(I/O)115、駆動回路121~125等を有する。CPU111は、ミシン1の動作を統括制御する。ROM112は、各種処理を実行するためのプログラム等を予め記憶する。RAM113は、各種処理実行中に生じる各種情報を一時的に記憶する。記憶装置114は、不揮発性で、各種設定値を記憶する。
【0087】
駆動回路121~125、エンコーダ141~143、スイッチ群27A、第1センサ4A、第2センサ6B、第3センサ9A、第4センサ9Bは、I/O115に接続する。駆動回路121は、主モータ131と接続し、CPU111の制御指令で主モータ131を駆動する。駆動回路122は、非図示の搬送機構のXモータ132と接続し、CPU111の制御指令でXモータ132を駆動する。駆動回路123は、送り機構25のYモータ133と接続し、CPU111の制御指令でYモータ133を駆動する。駆動回路124は、エアシリンダ262L、262Rと接続し、CPU111の制御指令でエアシリンダ262L、262Rを駆動する。駆動回路125は、表示部27Bと接続し、CPU111の制御指令で表示部27Bに各種情報を表示する。第3センサ9Aは、可動体80のドライバー84の左右方向の位置を直接検出する。第4センサ9Bは、中釜83の左右方向の位置を直接検出する。第3センサ9A及び第4センサ9Bにおける位置の検出方式は特に限定されず、光学式、磁気式等の周知のセンサが用いられる。
【0088】
エンコーダ141は、主モータ131の出力軸の回転方向、回転位置、回転速度を検出し、検出結果をI/O115に出力する。エンコーダ141の検出結果は、主モータ131が駆動する主軸50及び釜軸8Bの軸体85の回転方向、回転位置、回転速度を示す。エンコーダ142は、Xモータ132の出力軸の回転位置を検出し、検出結果をI/O115に出力する。エンコーダ142の検出結果は、針棒31と釜ユニット8との移動方向、左右方向の位置、移動速度を示す。エンコーダ143は、Yモータ133の出力軸の回転方向、回転位置、回転速度を検出し、検出結果をI/O115に出力する。エンコーダ143の検出結果は、保持機構26の移動方向、前後方向の位置、移動速度を示す。スイッチ群27Aは、各種指示を検出し、検出結果をI/O115に出力する。第1センサ4A及び第2センサ6Bは、検出結果をI/O115に出力する。第1センサ4Aの検出結果は、検出子43の回転位置を示す。第2センサ6Bの検出結果は、被検出体84Fの被検出面848がセンサヘッド66に接近したか否かを示す。
【0089】
<第1調整方法>
図12~
図18を参照し、第1調整方法について説明する。第1調整方法は、可動体80の回転位置を調整することにより、針棒31に装着された縫針31Aの上下動作と可動体80の回転動作とを同期させるために実施される。又、作業者は、係合体6Aを脱離状態とする(
図13、矢印Y11参照)。
【0090】
図12に示すように、作業者は、孔816に通したレンチT(
図13参照)を用いてドライバー84の固定ネジ842を緩め、解除状態とする(S51)。釜軸8Bに対して可動体80は回転可能な状態となる。
【0091】
図13に示すように、作業者は、ドライバー84の被係合体84Eの係合延伸部845が後方に延びる状態となるまで、軸Cを中心として可動体80を回転させる。係合体6Aと被係合体84Eとのそれぞれの延びる方向は、軸径方向に一直線状に並ぶ。
【0092】
図12に示すように、次に作業者は、係合体6Aの操作部63を操作することにより、係合体6Aを脱離状態から係合状態に切り替える(S53)。
図14に示すように、係合体6Aが係合状態とされた場合(矢印Y12)、係合体6Aの係合部62Aは、被係合体84Eの被係合部846に外方から進入し、係合する。可動体80は、回転不可能な状態となる。
【0093】
以下、係合体6Aの係合部62Aが被係合体84Eの被係合部846に係合した状態における可動体80の回転位置を、「係合回転位置」という。なお、可動体80が係合回転位置に配置された状態で、中釜83の剣先83Cは、上糸に形成されたループを補足することが可能となる。つまり、係合回転位置は、上糸に形成されたループを中釜83の剣先83Cが補足するタイミングにおける可動体80の回転位置に相当する。
【0094】
次に作業者は、駆動ユニット5の回転ツマミ51を操作して主軸50及び釜軸8Bを回転させ、縫針31Aを出合い位置に配置させる(S55)。なお、可動体80は釜軸8Bの軸体85に連結していないので、軸体85が回転しても回転しない。
図15に示すように、縫針31Aが出合い位置に配置された場合(矢印Y13)、縫針31Aの先端部は、釜糸案内90の切り欠き90A(
図4参照)に上方から進入し、大釜体81の空間810内に配置される。
【0095】
図12に示すように、次に作業者は、孔816に通したレンチT(
図13参照)を用いてドライバー84の固定ネジ842を締め、連結状態とする(S57)。釜軸8Bの軸体85に可動体80が連結する(
図16参照)。なお、係合体6Aは係合状態のまま維持されており、被係合体84Eの被係合部846に係合部62Aが係合されている。このため、可動体80の回転が不可能な状態は維持される。
【0096】
次に作業者は、係合体6Aの操作部63を操作することにより、係合体6Aを係合状態から脱離状態に切り替える(S59)。
図17に示すように、係合体6Aが解除状態とされた場合(矢印Y14)、係合部62Aは、被係合体84Eの被係合部846から脱離する。可動体80は回転可能な状態となる。
【0097】
作業者は、駆動ユニット5の回転ツマミ51を操作し、主モータ131、主軸50、及び釜軸8Bを回転させる(S61)。釜軸8Bの回転に応じ、軸体85に連結する可動体80は回転する。
【0098】
CPU111は、第2センサ6Bから出力される検出結果を取得する。CPU111は、取得した検出結果に基づき、被検出体84Fの被検出面848がセンサヘッド66に接近したか否かを示す通知情報を、表示部27Bに表示する。作業者は、被検出体84Fの被検出面848がセンサヘッド66に接近したことを示す通知情報が表示部27Bに表示されるまで(S63:NO)、回転ツマミ51を継続して操作し、可動体80を回転させる。
【0099】
作業者は、被検出体84Fの被検出面848がセンサヘッド66に接近したことを示す通知情報が表示部27Bに表示された場合(S63:YES)回転ツマミ51に対する操作を停止する。主モータ131、主軸50、及び釜軸8Bの回転は停止し、可動体80の回転も停止する。
図18に示すように、この状態で、被検出体84Fの検出延伸部847は、軸Cから第2センサ6Bのセンサヘッド66に向けて延びた状態となっている。以下、第2センサ6Bのセンサヘッド66により被検出体84Fの被検出面848の接近が検出された状態における可動体80の回転位置を、「センサ回転位置」という。係合回転位置とセンサ回転位置とは相違する。
【0100】
CPU111は、可動体80がセンサ回転位置に配置された状態で、主モータ131のエンコーダ141から出力された検出結果を取得する(S65)。CPU111は、取得した検出結果に基づき、主軸50の回転位置を特定する(S65)。CPU111は、特定した回転位置を、針棒基準位置として記憶装置114に記憶する(S67)。
【0101】
なお、CPU111は、縫製時において、可動体80の被検出体84Fが第2センサ6Bにより検出されるタイミング(即ち、可動体80がセンサ回転位置に配置されるタイミング)におけるエンコーダ141の検出結果を取得する。CPU111は、検出結果により特定される主軸50の回転位置と、記憶装置114に記憶した針棒基準位置との差分を算出する。CPU111は、算出した差分が所定閾値よりも大きくなった場合、同期ずれが生じたことを示す通知画像を表示部27Bに表示する。
【0102】
<第2調整方法>
図19~
図22を参照し、第2調整方法について説明する。第1調整方法は、針棒31に装着された縫針31Aと、可動体80の剣先83C又は針受け84Cとの左右方向の位置関係を調整するために実施される。なお作業者は、第2調整方法を開始する前に第1調整方法を実行し、その後、ドライバー84の固定ネジ842を締め、可動体80と釜軸8Bの軸体85とが連結した連結状態とする。又、作業者は、センサユニット4をフレーム7から脱離させる。
【0103】
図19に示すように、作業者は、針棒31を駆動する駆動ユニット5の回転ツマミ51を操作し、縫針31Aを出合い位置に配置させる(S11)。出合い位置とは、上糸に形成されたループを中釜83の剣先83Cが補足するタイミングにおける縫針31Aの位置である。
図10に示すように、出合い位置に配置された縫針31Aの先端部は、釜糸案内90の切り欠き90Aに上方から進入する。中釜83の剣先83C、及びドライバー84の針受け84Cは、出合い位置に配置された縫針31Aよりも右方に配置される。
【0104】
図19に示すように、次に作業者は、ミシン1のフレーム7にセンサユニット4を装着し、固定する(S13)。作業者は、センサユニット4のコネクタ42Cにケーブルを接続する。第1センサ4Aの検出子43は、釜糸案内90の切り欠き90Aに左方から進入する。検出子43の接触面433は、縫針31Aに左方から接触する。検出子43は、縫針31Aが接触することにより、回転軸431、432を中心として、前方から視た状態で時計回り方向に回転する。第1センサ4Aは、検出子43の回転位置を検出体42により検出し、コネクタ42Cを介してケーブルに出力する。
【0105】
CPU111は、第1センサ4Aから出力された検出結果を取得する。CPU111は、取得した検出結果が示す検出子43の回転位置を、第1初期基準位置として記憶装置114に記憶する(S15)。
【0106】
作業者は、位置調整機構8Cの頭部88Bをドライバー等で回転させる。これにより、位置調整機構8Cの胴部88Aも回転し、釜軸8Bはフレーム7に対して左方に移動する。このとき、釜軸8Bの軸体85に連結されたドライバー84も左方に移動する(S17)。なお、位置調整機構8Dは回転していないので、中釜83は移動しない。ドライバー84の針受け84Cは、縫針31Aに対して右方から接近する。
【0107】
第1センサ4Aは、定期的に若しくは作業者の位置調整機構8Cへの操作に応じて、検出子43の回転位置を検出体42により検出し、検出結果を出力する。CPU111は、第1センサ4Aから出力された検出結果を取得する。CPU111は、取得した検出結果が示す回転位置と第1初期基準位置との差分に基づき、検出子43の回転角度を算出する。更にCPU111は、算出した回転角度に基づき、縫針31Aの左右方向の変位量を算出する(S19)。CPU111は、算出した変位量を表示部27Bに表示する。
【0108】
ドライバー84の針受け84Cが縫針31Aに接触するまでの間、第1センサ4Aの検出子43は回転しない。このため、第1センサ4Aから出力される検出結果が示す回転位置は、第1初期基準位置のまま維持される。この場合、算出される縫針31Aの変位量は「0」となる。
【0109】
一方、
図21に示すように、ドライバー84の針受け84Cが縫針31Aに接触した場合、縫針31Aは、針受け84Cから左向きの力を受けて撓む。第1センサ4Aの検出子43は、縫針31Aが撓んで変位することにより、回転する。第1センサ4Aの検出体42により検出される回転位置は変化する。CPU111は、第1センサ4Aから出力された検出結果が示す回転位置と第1初期基準位置との差分に基づき、縫針31Aの変位量を算出する(S19)。CPU111は、算出した変位量を表示部27Bに表示する。
【0110】
作業者は、表示部27Bに表示される変位量が0.01mmになったか判定する(S21)。作業者は、表示部27Bに表示される変位量が0.01mm未満の場合(S21:NO)、位置調整機構8Cを操作してドライバー84を左方に移動させる作業を継続する。作業者は、表示部27Bに表示される変位量が0.01mmになった場合(S21:YES)、位置調整機構8Cの操作を停止させる。これにより、ドライバー84の左方への移動も停止する。
【0111】
作業者は、ドライバー84の移動を停止させたことをミシン1に通知するため、スイッチ群27Aを介して入力操作を行う。CPU111は、入力操作を受け付ける。CPU111は、この状態における検出子43の回転位置を、第1ゼロ点位置として決定する(S23)。CPU111は、決定した第1ゼロ点位置を記憶装置114に記憶する(S23)。CPU111は、第1センサ4Aから取得した検出結果が示す回転位置と第1ゼロ点位置との差分に基づき、ドライバー84の第1ゼロ点位置に対する変位量を算出する。CPU111は、算出した変位量を表示部27Bに表示する。更にCPU111は、第3センサ9Aによる検出結果を、ドライバー84の左右方向の位置として表示部27Bに表示する。
【0112】
ミシン1は、第1センサ4Aにより検出される第1ゼロ点位置における第3センサ9Aの検出結果を、ドライバー84の左右方向の基準位置(以下、「第1基準位置」という。)として決定し、記憶装置114に記憶する(S24)。つまり、第1センサ4Aは、第3センサ9Aの基準位置を特定するためのセンサとして用いられる。CPU111は、第3センサ9Aの検出結果と第1基準位置との間の差分を表示部27Bに表示する。
【0113】
作業者は、位置調整機構8Cをドライバー等で回転させ、ドライバー84を左右方向に移動させる。作業者は、ミシン1において推奨されているドライバー84の動作設定値(以下、「第1動作設定値」という。)と、表示部27Bに表示された差分とが一致するまで、ドライバー84を左右方向に移動させる(S25)。作業者は、第1動作設定値と、表示部27Bに表示された差分とが一致した場合、位置調整機構8Cの操作を終了してドライバー84の移動を停止させる。CPU111は、この時点で第3センサ9Aから取得した検出結果が示す回転位置を、針受け基準位置として記憶装置114に記憶する(S25)。以上により、ドライバー84の針受け84Cと縫針31Aとの左右方向の位置関係の調整は終了する。
【0114】
図20に示すように、CPU111は、現時点で第1センサ4Aから取得した検出結果が示す回転位置を、第2初期基準位置として記憶装置114に記憶する(S27)。
【0115】
作業者は、位置調整機構8Dの頭部89Bをドライバー等で回転させる。これにより、位置調整機構8Dの胴部89Aも回転し、中釜83はフレーム7に対して左方に移動する。このとき、中釜83も左方に移動する(S29)。中釜83の剣先83Cは、縫針31Aの切り欠き30(
図3参照)に対して右方から接近する。
【0116】
第1センサ4Aは、検出子43の回転角度を検出体42により継続して検出し、検出結果を出力する。CPU111は、第1センサ4Aから出力された検出結果を取得する。CPU111は、取得した検出結果が示す回転位置と第2初期基準位置との差分に基づき、縫針31Aの左右方向の変位量を算出する(S31)。CPU111は、算出した変位量を表示部27Bに表示する。
【0117】
中釜83の剣先83Cが縫針31Aに接触するまでの間、第1センサ4Aの検出子43は回転しない。このため、第1センサ4Aから出力される検出結果が示す回転位置は、第2初期基準位置のまま維持される。この場合、算出される縫針31Aの変位量は「0」となる。
【0118】
一方、
図22に示すように、中釜83の剣先83Cが縫針31Aに接触した場合、縫針31Aは、剣先83Cから左向きの力を受けて撓む。第1センサ4Aの検出子43は、縫針31Aが撓んで変位することにより、回転する。第1センサ4Aの検出体42により検出される回転位置は変化する。CPU111は、第1センサ4Aから出力された検出結果が示す回転位置と第2初期基準位置との差分に基づき、縫針31Aの変位量を算出する(S31)。CPU111は、算出した変位量を表示部27Bに表示する。
【0119】
作業者は、表示部27Bに表示される変位量が0.01mmになったか判定する(S33)。作業者は、表示部27Bに表示される変位量が0.01mm未満の場合(S33:NO)、位置調整機構8Dを操作して中釜83を左方に移動させる作業を継続する。作業者は、表示部27Bに表示される変位量が0.01mmになった場合(S33:YES)、位置調整機構8Dの操作を停止させる。これにより、中釜83の左方への移動も停止する。
【0120】
作業者は、中釜83の移動を停止させたことをミシン1に通知するため、スイッチ群27Aを介して入力操作を行う。CPU111は、入力操作を受け付ける。CPU111は、この状態における検出子43の回転位置を、第2ゼロ点位置として決定する(S35)。CPU111は、決定した第2ゼロ点位置を記憶装置114に記憶する(S35)。CPU111は、第1センサ4Aから取得した検出結果が示す回転位置と第2ゼロ点位置との差分に基づき、中釜83の第2ゼロ点位置に対する変位量を算出する。CPU111は、算出した変位量を表示部27Bに表示する。更にCPU111は、第4センサ9Bによる検出結果を、中釜83の左右方向の位置として表示部27Bに表示する。
【0121】
ミシン1は、第1センサ4Aにより検出される第2ゼロ点位置における第4センサ9Bの検出結果を、中釜83の左右方向の基準位置(以下、「第2基準位置」という。)として決定し、記憶装置114に記憶する(S36)。つまり、第1センサ4Aは、第4センサ9Bの基準位置を特定するためのセンサとして用いられる。CPU111は、第4センサ9Bの検出結果と第2基準位置との間の差分を表示部27Bに表示する。
【0122】
作業者は、位置調整機構8Dをドライバー等で回転させ、中釜83を左右方向に移動させる。作業者は、ミシン1において推奨されている中釜83の動作設定値(以下、「第2動作設定値」という。)と、表示部27Bに表示された差分とが一致するまで、中釜83を左右方向に移動させる(S37)。作業者は、第2動作設定値と、表示部27Bに表示された差分とが一致した場合、位置調整機構8Dの操作を終了して中釜83の移動を停止させる。CPU111は、この時点で第4センサ9Bから取得した検出結果が示す回転位置を、剣先基準位置として記憶装置114に記憶する(S37)。以上により、中釜83の剣先83Cと縫針31Aとの左右方向の位置関係の調整は終了する。
【0123】
<本実施形態の作用、効果>
ミシン1は、第1センサ4Aを含むセンサユニット4をフレーム7に装着可能である。ミシン1は、可動体80の剣先83C又は針受け84Cが縫針31Aに接触することにより縫針31Aが変位した場合、この変位量を第1センサ4Aにより検出できる。ミシン1の作業者は、第1センサ4Aにより検出された縫針31Aの変位量に基づき、可動体80の剣先83C又は針受け84Cと縫針31Aとの左右方向の位置関係を確認できる。従って作業者は、確認した位置関係に基づき、縫針31Aと可動体80との左右方向の位置関係の調整を、精度良く行うことができる。
【0124】
具体的には、例えば作業者は、第1センサ4Aにより検出された縫針31Aの変位量に基づき、ミシン1において推奨されている縫針31Aと剣先83Cとの位置関係となるよう、中釜83の左右方向の位置を位置調整機構8Dにより容易に調整できる。又、例えば作業者は、第1センサ4Aにより検出された縫針31Aの変位量に基づき、ミシン1において推奨されている縫針31Aと針受け84Cとの位置関係となるよう、ドライバー84の左右方向の位置を位置調整機構8Cにより容易に調整できる。
【0125】
ミシン1の表示部27Bには、第1センサ4Aにより検出された縫針31Aの変位量が表示される。なお、縫針31Aの変位量は、可動体80の剣先83C又は針受け84Cと縫針31Aとの左右方向の位置関係に応じて変化する。従って作業者は、剣先83C及び針受け84Cと縫針31Aとの左右方向の位置関係を、表示部27Bを視認することで確認できる。このため作業者は、縫針31Aと可動体80との左右方向の位置関係の調整を、表示部27Bを確認しながら容易に行うことができる。
【0126】
第1センサ4Aは、検出体42と、接触面433を有する検出子43とを有する。第1センサ4Aは、接触面433に縫針31Aが接触することにより検出子43が回転した場合の回転位置を検出する。この場合、第1センサ4Aは、縫針31Aの変位量を位置センサ等により直接検出する場合と比べて、縫針31Aの大きさや形状に関わらず、縫針31Aの変位量を精度良く検出できる。
【0127】
縫針31Aの変位量に基づいて縫針31Aと可動体80との左右方向の位置関係を特定する場合、縫針31Aのうち可動体80の剣先83C又は針受け84Cに接触する部分の近傍で変位量が検出されることが好ましい。これに対し、第1センサ4Aの検出子43は、回転軸431、432から右側に向けて、下方に傾斜して延びる。これにより第1センサ4Aは、縫針31Aのうち可動体80の剣先83C及び針受け84Cに接触する部分の近傍に、検出子43の接触面433を接触させることができる。従って、第1センサ4Aは、縫針31Aの変位量を精度良く検出できるので、縫針31Aと可動体80との左右方向の位置関係をより精度良く検出できる。
【0128】
可動体80の上方を覆う釜糸案内90は、左端部から右方に延びる切り欠き90Aを有する。第1センサ4Aの検出子43は、左方から切り欠き90Aに進入する。この場合、第1センサ4Aの検出子43が釜糸案内90に接触することを防止しつつ、縫針31Aのうち可動体80に接触する部分の近傍に接触面433を接触させることができる。
【0129】
剣先83C及び針受け84Cは、縫針31Aに対して右方から接触可能である。一方、第1センサ4Aの検出子43の接触面433は、縫針31Aに対して左方から接触する。従って、第1センサ4Aは、縫針31Aに対して可動体80が右方から接触することに応じて縫針31Aが左側に撓んだ場合において、撓みの量を変位量として精度よく検出できる。
【0130】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。ミシン1の釜機構8Aは、ボビンが水平にセットされる水平釜であってもよい。中釜83とドライバー84とが別体で無く、一体に連結された全回転釜であってもよい。第1センサ4Aは、ミシン1に着脱不能に設けられてもよい。この場合、第1センサ4Aは、検出子43が縫針31Aに近接する近接位置と、検出子43が縫針31Aから離隔した離隔位置とに移動させることが可能な可動アームにより支持されていてもよい。
【0131】
ミシン1はスピーカを有してもよい。ミシン1は、縫針31Aの変位量が0.01mmとなった場合に、スピーカから通知音を出力することで作業者に通知してもよい(S21、S33)。
【0132】
作業者は、S21、S33の工程で中釜83又はドライバー84を移動させる場合において、縫針31Aの変位量がちょうど0.01mmとなる位置で中釜83又はドライバー84の移動を停止させなくてもよい。例えば、作業者は、中釜83又はドライバー84を移動させている間、表示部27Bに表示される変位量を常に監視してもよい。作業者は、縫針31Aが中釜83又はドライバー84に接触していない状態から、縫針31Aが0.01mm以上撓むまで、中釜83又はドライバー84を移動させ、その間で変位量が0.01mmになった時点でCPU111が自動的に検出子43の回転位置を第1ゼロ点位置又は第2ゼロ点位置とし、記憶装置114に記憶してもよい。
【0133】
第1センサ4Aは、検出子43に縫針31Aが接触しておらず回転していない状態、即ち、規制部434が検出体42の上面に接触した状態を基準とし、この状態からの回転量を変位量として検出体42により検出してもよい。
【0134】
上記実施形態において、センサユニット4の第1センサ4Aは、縫針31Aの変位に応じて回転する検出子43の回転位置を光学的に検出し、検出結果を出力した。第1センサ4Aは、異なる方法で縫針31Aの変位量を検出し、検出結果を出力してもよい。例えば第1センサ4Aは、縫針31Aの変位に応じて回転する検出子43の回転位置を静電容量、磁束、或いは抵抗値の変化として検出することにより、縫針31Aの変位量を検出してもよい。また、縫針31Aの変位に応じて軸方向にスライドする検出子を用いて、検出子のスライド量を光学的、静電容量的、磁束、或いは抵抗値の変化として検出することにより、縫針31Aの変位量を検出してもよい。
【0135】
検出子43は、縫針31Aに接触する接触面433が右斜め下方に延びている形状を一例に挙げたが、検出子43の基部43A自体は上記と異なる形状を有していてもよい。例えば検出子43は、前方から視た状態で扇形を有していてもよい。また、検出子43は、上述の構成を上下逆に配置して、右斜め上方に延びている形状を有していても良い。アーム部4Bは、曲折した角柱に限定されることなく、第1センサ4Aを支持し、且つ、第1センサ4Aをフレーム7に固定可能であれば、異なる形状を有していても良い。例えば、延伸部451を持たず、前後方向に延びる延伸部452において、フレーム7に設けられた支持軸を通す孔やフレーム7に吸着する磁石を挿入する孔を備えるものであっても良い。
【0136】
釜糸案内90は、第2調整方法の実行時、釜機構8Aから取り外されてもよい。この場合、釜糸案内90に切り欠き90Aは設けられなくてもよい。
【0137】
第2調整方法は、S11~S25の工程のみ実行され、S27~S37の工程は実行されなくてもよい。又は、第2調整方法は、S27~S37の工程のみ実行され、S11~S25の工程は実行されなくてもよい。第1ゼロ点位置及び第2ゼロ点位置は、縫針31Aの変位量が0mmである場合における第1センサ4Aの検出子43を算出することにより決定されてもよい。
【0138】
S21、S33で判断の基準値とされた値「0.01mm」は一例であり、他の値でもよい。例えばS21において、変位量は第1動作設定値と比較されてもよい。例えばS33において、変位量は第2動作設定値と比較されてもよい。
【0139】
<その他>
軸体85は、本発明の「軸」の一例である。第1センサ4Aは、本発明の「センサ」の一例である。左右方向は、本発明の「軸方向」の一例である。右側は、本発明の「軸方向の一方の側」の一例である。左側は、本発明の「軸方向の他方の側」の一例である。釜糸案内90は、本発明の「板」の一例である。S11は、本発明の「第1工程」の一例である。S13は、本発明の「第2工程」の一例である。S17、S29は、本発明の「第3工程」の一例である。S19、S31は、本発明の「第4工程」の一例である。S23、S24、S35、S36は、本発明の「第5工程」の一例である。
【符号の説明】
【0140】
1 :ミシン
4A :第1センサ
4B :アーム部
7 :フレーム
8A :釜機構
8B :釜軸
8C、8D :位置調整機構
31 :針棒
31A :縫針
43 :検出子
80 :可動体
83 :中釜
83C :剣先
84 :ドライバー
84C :針受け
85 :軸体
90 :釜糸案内
90A :切り欠き
433 :接触面
C :軸