(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179995
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】スタビライザ制御装置
(51)【国際特許分類】
B60G 21/055 20060101AFI20241219BHJP
B60G 17/015 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60G21/055
B60G17/015 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099385
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】橋本 航
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 俊彦
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301DA65
3D301EC01
3D301EC05
(57)【要約】
【課題】車両のスタビライザをロック状態またはフリー状態に制御するスタビライザ制御装置において、運転支援制御が実行されたときに適切な車両挙動を実現できる技術を提供する。
【解決手段】スタビライザ制御装置(E-KDSS-ECU18)は、車両のスタビライザをロック状態またはフリー状態に制御する。制御部42は、車両が良路を走行中であり、かつ、当該車両で運転支援制御を実行中である場合、スタビライザをロック状態に制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスタビライザをロック状態またはフリー状態に制御するスタビライザ制御装置であって、
前記車両が良路を走行中であり、かつ、当該車両で運転支援制御を実行中である場合、前記スタビライザをロック状態に制御する制御部を備える、
ことを特徴とするスタビライザ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタビライザ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、悪路走行を行う際の衝突回避支援制御の誤作動を抑制する車両の制御装置を開示する。この技術では、ドライバによって選択されている走行モードを取得し、取得した走行モードがオフロード用走行モードである場合、衝突回避支援制御の実施を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が良路を走行中か、悪路を走行中か、車両が旋回しているか、直進しているかなどに応じて、スタビライザをフリー状態またはロック状態に動的に制御する技術が知られている。フリー状態は、スタビライザが無効な状態である。ロック状態は、スタビライザが有効な状態である。この技術では、スタビライザがフリー状態であるかロック状態であるかに応じて車両運動特性が異なる。そのため、スタビライザの状態によっては、自動ブレーキなどの運転支援制御の実行中に意図通りの車両挙動を実現することが困難な可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、車両のスタビライザをロック状態またはフリー状態に制御するスタビライザ制御装置において、運転支援制御の実行中に適切な車両挙動を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のスタビライザ制御装置は、車両のスタビライザをロック状態またはフリー状態に制御するスタビライザ制御装置であって、前記車両が良路を走行中であり、かつ、当該車両で運転支援制御を実行中である場合、前記スタビライザをロック状態に制御する制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両のスタビライザをロック状態またはフリー状態に制御するスタビライザ制御装置において、運転支援制御の実行中に適切な車両挙動を実現できる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の車両の制御を説明するための図である。
【
図2】第1の実施の形態の車両制御システムの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図2の車両制御システムの処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施の形態の車両制御システムの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の車両100の制御を説明するための図である。車両100は、例えば、オフロード走行に適した車両であってよい。車両100は、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System、以下、ADASと呼ぶ)およびキネティックダイナミックサスペンションシステム(E-KDSS:Electronic Kinetic Dynamic Suspension System、以下、E-KDSSと呼ぶ)を搭載している。ADASは、運転支援機能の一例としてプリクラッシュセーフティシステム(PCS:Pre-Crash Safety System、以下、PCSと呼ぶ)を有する。PCSは、衝突被害軽減機能または衝突防止機能とも呼ばれる。
【0010】
E-KDSSは、車両100のスタビライザをフリー状態またはロック状態に電子制御する。E-KDSSは、例えば、車両100が良路のカーブ路を走行中、スタビライザをロック状態に制御する。ロック状態は、スタビライザが有効であり、スタビライザが作動する状態である。ロック状態では、車両100の旋回時などにスタビライザのスタビライザバーがねじれることができる。これにより、コーナリング時などの車体のロールの発生を抑制できる。ロック状態は、スタビライザによる車体のロール抑制機能が有効な状態であるとも言える。
【0011】
また、E-KDSSは、例えば、車両100が良路の直線道路または悪路を走行中、スタビライザをフリー状態に制御する。フリー状態は、スタビライザが無効であり、スタビライザが非作動の状態である。フリー状態では、車輪が上下動してもスタビライザのスタビライザバーが実質的にねじれない。フリー状態は、車体のロール抑制機能が無効な状態であるとも言える。これにより、車輪のストロークを十分確保して乗り心地の良さや路面の追従性を高めることができる。
【0012】
なお、「良路」とは、一般道路、高速道路を含む舗装路など、比較的平坦であり、かつ、路面μが比較的高い路を意味する。「悪路」とは、オフロード、ダート、泥濘路、雪道などの路面μが比較的低い不整地路を意味する。
【0013】
図1は、車両100が良路の直線道路を走行中、PCSが作動し、時間経過とともに先行車110との車間距離が短くなっていく状況を示す。時刻t1にて、車両100のPCSは作動開始し、先行車に接近していることを示す警報を車室内に発する。このとき、スタビライザは、フリー状態に制御されている。
【0014】
車両100のE-KDSSは、PCSが作動中であり、かつ、車両100が良路を走行していることから、スタビライザをフリー状態からロック状態に制御する。時刻t1の後の時刻t2に、スタビライザがロック状態に切り替わり、車両安定性を確保できる。
【0015】
時刻t2の後の時刻t3にて、先行車110との車間距離がしきい値以下になったことで、車両100のPCSは、自動ブレーキを作動させる。自動ブレーキ制御は、スタビライザがロック状態にあるときの車両100に合わせて予め設計されている。そのため、自動ブレーキの作動中にスタビライザがロック状態に制御されていることで、意図通りの制動挙動を実現できる。
【0016】
ここで、比較例を検討する。比較例の車両では、E-KDSSは、PCSが作動中であるか否かとは無関係にスタビライザを制御する。
図1と同じ状況を想定すると、比較例の車両は良路の直線道路を走行中であるため、時刻t1から時刻t3までの間、スタビライザはフリー状態になっている。よって、スタビライザがロック状態にあるときの車両に合わせて自動ブレーキ制御が設計されている場合、フリー状態の車両運動特性はロック状態の特性とは異なるため、意図通りの制動挙動を実現できない可能性がある。
【0017】
この比較例に対して、実施の形態では、運転支援機能の作動開始時のスタビライザの状態に依存せず、既述のように、運転支援機能の作動中に意図通りの適切な車両挙動を実現できる。以下、より詳細に説明する。
【0018】
図2は、第1の実施の形態の車両制御システム1の構成を概略的に示す。車両制御システム1は、車両100に搭載される。車両制御システム1は、ADAS-ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)10、ブレーキECU12、EPS-ECU(Electric Power Steering-ECU)14、パワートレーンECU16、E-KDSS-ECU18、およびアクチュエータ20を備える。
【0019】
ADAS-ECU10は、車両100の周辺車両や障害物などを監視する各種の車載センサ(図示せず)の検出結果にもとづいて、運転支援を実行する。運転支援は、例えば、既述のPCS、アダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control、以下、ACCと呼ぶ)、車線維持支援(LKA:Lane Keeping Assist、以下、LKAと呼ぶ)などを含む。ACCは、車間距離を一定に保ちつつ、定速走行を自動的に行う機能である。LKAは、車両100が走行する車線を維持する機能である。運転支援として、公知の各種のものを採用できる。ADAS-ECU10は、運転者のスイッチ操作に応じて、どの運転支援を実行可能とするか特定してよい。
【0020】
ADAS-ECU10は、運転支援のための要求制御量をブレーキECU12、EPS-ECU14、パワートレーンECU16に供給する。
【0021】
ブレーキECU12は、車両100を減速させるためのブレーキ制御を行う制御部である。ブレーキECU12は、ブレーキ制御として、ブレーキ液圧制御用のアクチュエータを駆動することで自動的にブレーキ液圧を発生させ、ホイールシリンダを加圧して制動力を発生させる。ブレーキECU12は、ADAS-ECU10から供給された要求減速度にもとづいて各車輪の制動力を制御する。
【0022】
EPS-ECU14は、車両100の進行方向を変えるための操舵制御を行う制御部である。EPS-ECU14は、操舵制御として、電動式パワーステアリングのモータ等の制御を行う。EPS-ECU14は、ADAS-ECU10から供給された要求舵角にもとづいてステアリングの舵角を制御する。
【0023】
パワートレーンECU16は、車両100を走行させるための走行駆動力制御を行う制御部である。パワートレーンECU16は、走行駆動力制御として、走行駆動力源が発生する駆動力の制御を行う。走行駆動力源は、エンジンとモータの少なくともいずれかを含む。パワートレーンECU16は、ADAS-ECU10から供給された要求加速度にもとづいて走行駆動力を制御する。
【0024】
E-KDSS-ECU18は、車両100の走行中の道路が良路であるか悪路であるかを判定し、判定結果および車両100の車両挙動に応じて、スタビライザをロック状態またはフリー状態に動的に制御する。E-KDSS-ECU18は、スタビライザ制御装置とも呼べる。E-KDSS-ECU18は、走行中の道路が良路であるか悪路であるかを示す路面情報をADAS-ECU10に送信する。
【0025】
ADAS-ECU10は、支援判定部30および支援実行部32を備える。E-KDSS-ECU18は、路面状態判定部40および制御部42を備える。ADAS-ECU10、E-KDSS-ECU18のそれぞれの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0026】
支援判定部30は、各種の車載センサの検出結果にもとづいて、運転支援の開始条件が満たされたか否かを判定し、運転支援の開始条件が満たされた場合、判定結果を支援実行部32に供給する。
【0027】
支援実行部32は、E-KDSS-ECU18から供給された路面情報と、支援判定部30から供給された判定結果とにもとづいて、運転支援制御(以下、適宜、ADAS制御とも呼ぶ)を実行する。具体的には、支援実行部32は、車両100が良路を走行中であり、かつ、支援判定部30で運転支援の開始条件が満たされたと判定された場合、運転支援を実行する。支援実行部32は、運転支援の開始条件が満たされない場合、または、車両100が悪路を走行中である場合、運転支援を実行しない。悪路走行中に運転支援を実行しないので、運転支援の誤動作を抑制できる。
【0028】
既述のように、運転支援制御は、車両100のスタビライザがロック状態のときの車両100に合わせて予め設計されている。支援実行部32は、車載センサの検出結果にもとづいて、運転支援制御を実行するための要求減速度、要求舵角、および要求加速度を導出する。支援実行部32は、要求減速度をブレーキECU12に供給し、要求舵角をEPS-ECU14に供給し、要求加速度をパワートレーンECU16に供給する。運転支援制御の実行には、公知の技術を利用すればよいので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0029】
支援実行部32は、運転支援制御を実行中、ADAS制御中フラグをオンに設定する。支援実行部32は、運転支援制御を実行していない間、ADAS制御中フラグをオフに設定する。支援実行部32は、ADAS制御中フラグをE-KDSS-ECU18に送信する。
【0030】
路面状態判定部40は、車両100が走行している道路の路面状態を判定する。路面状態は、良路または悪路である。例えば、路面状態判定部40は、車輪速センサ(図示せず)で検出された車両100の各車輪の車輪速度の変動が悪路走行における所定の変動を示す場合、車両100が悪路を走行していると判定する。路面状態判定部40は、各車輪の車輪速度の変動が悪路走行における変動を示さない場合、車両100が良路を走行していると判定する。路面状態の判定には、公知の各種技術を利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。路面状態判定部40は、判定結果を制御部42とADAS-ECU10に供給する。
【0031】
制御部42は、路面状態判定部40から供給された路面状態の判定結果、ADAS-ECU10から供給されたADAS制御中フラグ、および車両挙動にもとづいて、スタビライザをロック状態またはフリー状態に制御する。制御部42は、アクチュエータ20を制御し、それによりスタビライザの状態を制御する。例えば、アクチュエータ20の動作に応じて油圧シリンダがスタビライザの状態を制御する。スタビライザの状態の制御には、公知の技術を利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0032】
制御部42は、車両100が良路を走行中であり、かつ、運転支援制御が実行されていない場合、車両挙動が所定のロック条件を満たせば、スタビライザをロック状態に制御する。例えば、車両100がカーブ路を走行している場合、車両挙動がロック条件を満たす。
【0033】
制御部42は、車両100が良路を走行中であり、かつ、運転支援制御が実行されていない場合、車両挙動がロック条件を満たさなければ、スタビライザをフリー状態に制御する。例えば、車両100が直線道路を走行している場合、車両挙動がロック条件を満たさない。
【0034】
制御部42は、車両100が悪路を走行中である場合、ロック条件が満たされているか否かによらず、スタビライザをフリー状態に制御する。
【0035】
ロック条件は、例えば、車両100が旋回していることを含む。制御部42は、図示しない横加速度センサにより検出された横加速度が横加速度しきい値を超えた場合、車両100が旋回している、即ち車両挙動がロック条件を満たすと判定する。制御部42は、図示しないステアリング操作角センサにより検出されたステアリングホイールの操作角の変化速度、つまり、ステアリング操作速度が操作速度しきい値を超えた場合、車両100が旋回している、即ち車両挙動がロック条件を満たすと判定してもよい。横加速度しきい値、操作速度しきい値は、実験またはシミュレーションにより適宜定めることができる。車両挙動がロック条件を満たすか否かの判定には、公知の技術を利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0036】
制御部42は、車両100が良路を走行中であり、かつ、ADAS-ECU10が運転支援制御を実行中である場合、ロック条件が満たされているか否かによらず、スタビライザをロック状態に制御する。つまり、運転支援制御中、スタビライザはロック状態に固定される。これにより、運転支援制御開始時のスタビライザの状態に依存せず、運転支援制御の実行中に意図通りの適切な車両挙動を実現できる。つまり、運転支援制御による意図通りの適切な車両軌跡や制動挙動などを実現でき、運転支援制御を最適化できる。
【0037】
次に、以上の構成による車両制御システム1の全体的な動作を説明する。
図3は、
図2の車両制御システム1の処理を示すフローチャートである。
図3の処理は、繰り返し実行される。なお、
図3の処理と並行して、E-KDSS-ECU18が、良路を走行中であり、かつ、ロック条件が満たされる場合、スタビライザをロック状態に制御し、良路を走行中であり、かつ、ロック条件が満たされない場合、または、悪路を走行中である場合、スタビライザをフリー状態に制御する処理も、ADAS制御中フラグがオフの間に限り実行される。
【0038】
E-KDSS-ECU18は、路面情報をADAS-ECU10に送信する(S10)。ADAS-ECU10は、良路でない場合(S12のN)、ADAS制御中フラグをオフに設定し(S18)、ADAS制御中フラグをE-KDSS-ECU18に送信する(S20)。
【0039】
ADAS-ECU10は、良路である場合(S12のY)、ADAS制御中であれば(S14のY)、ADAS制御中フラグをオンに設定し(S16)、S20の処理に移る。ADAS-ECU10は、S14にてADAS制御中でない場合(S14のN)、S18の処理に移る。
【0040】
E-KDSS-ECU18は、ADAS制御中フラグがオンであれば(S22のY)、スタビライザをロックし(S24)、処理を終了する。E-KDSS-ECU18は、ADAS制御中フラグがオンでない場合(S22のN)、現在のスタビライザの状態を保持し(S26)、処理を終了する。
【0041】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、スタビライザの状態に応じた運転支援制御の制御量を演算することが、第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0042】
第2の実施の形態の車両制御システム1の構成は、
図2の構成と概ね同じであるため、図示は省略する。第2の実施の形態では、E-KDSS-ECU18は、走行中の道路が良路であるか悪路であるかを示す路面情報に加え、スタビライザの状態を示す情報もADAS-ECU10に送信する。ADAS-ECU10は、ADAS制御中フラグをE-KDSS-ECU18に送信しない。
【0043】
E-KDSS-ECU18の制御部42は、運転支援制御が実行中であるか否かによらず、スタビライザの状態を制御する。具体的には、制御部42は、車両100が良路を走行中であり、かつ、ロック条件が満たされる場合、スタビライザをロック状態に制御する。制御部42は、車両100が良路を走行中であり、かつ、ロック条件が満たされない場合、スタビライザをフリー状態に制御する。制御部42は、車両100が悪路を走行中である場合、ロック条件が満たされているか否かによらず、スタビライザをフリー状態に制御する。制御部42は、スタビライザがロック状態であるかフリー状態であるかを示す情報をADAS-ECU10に供給する。
【0044】
ADAS-ECU10の支援実行部32は、第1の実施の形態と同様に、車両100が良路を走行中であり、かつ、支援判定部30で運転支援の開始条件が満たされたと判定された場合、運転支援制御を実行する。支援実行部32は、運転支援制御中、E-KDSS-ECU18から供給されたスタビライザの状態に応じた要求減速度、要求舵角、および要求加速度を制御量として導出する。つまり、スタビライザがロック状態である場合と、フリー状態である場合とにおいて、他の条件が同一であっても、制御量は異なる。
【0045】
支援実行部32は、スタビライザがロック状態である場合、ロック状態に対応した制御量を導出する。ロック状態に対応した制御量は、スタビライザがロック状態のときの車両100に合わせて予め設計された運転支援制御を実行するための制御量である。
【0046】
支援実行部32は、スタビライザがフリー状態である場合、フリー状態に対応した制御量を導出する。フリー状態に対応した制御量は、スタビライザがフリー状態のときの車両100に合わせて予め設計された運転支援制御を実行するための制御量である。
【0047】
このように、運転支援制御時のスタビライザの状態に応じて、スタビライザの状態に合った要求減速度、要求舵角、および要求加速度を導出できるので、運転支援制御による意図通りの適切な車両挙動を実現でき、運転支援制御を最適化できる。
【0048】
図4は、第2の実施の形態の車両制御システム1の処理を示すフローチャートである。
図4の処理は、繰り返し実行される。
【0049】
E-KDSS-ECU18は、路面情報とスタビライザの状態をADAS-ECU10に送信する(S30)。ADAS-ECU10は、良路でない場合(S12のN)、ADAS制御中フラグをオフに設定し(S18)、処理を終了する。ADAS-ECU10は、良路である場合(S12のY)、ADAS制御中でなければ(S14のN)、S18の処理に移る。
【0050】
ADAS-ECU10は、S14にてADAS制御中であれば(S14のY)、ADAS制御中フラグをオンに設定し(S16)、スタビライザがロック状態であれば(S32のY)、ロック時に対応した制御量でADAS制御を実行し(S34)、処理を終了する。ADAS-ECU10は、S32にてスタビライザがロック状態でなければ(S32のN)、フリー時に対応した制御量でADAS制御を実行し(S36)、処理を終了する。
【0051】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態はあくまでも例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0052】
1…車両制御システム、10…ADAS-ECU、12…ブレーキECU、14…EPS-ECU、16…パワートレーンECU、18…E-KDSS-ECU(スタビライザ制御装置)、20…アクチュエータ、30…支援判定部、32…支援実行部、40…路面状態判定部、42…制御部、100…車両。