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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179998
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/10 20100101AFI20241219BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L33/10
H01L33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099392
(22)【出願日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、環境省、革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業(高効率・長寿命深紫外LEDの技術開発と細菌・ウイルス不活化および脱炭素効果の実証)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 義樹
(72)【発明者】
【氏名】大矢 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】永田 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上山 智
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】石黒 永孝
(72)【発明者】
【氏名】岩月 梨恵
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA40
5F241CA60
5F241CB14
5F241CB15
(57)【要約】
【課題】軸上強度を向上させることができる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、フリップチップ型で紫外発光の発光素子と、発光素子の少なくとも上面を接して覆い、屈折率が空気よりも高く発光素子よりも低い封止部と、封止部を接して覆い、屈折率が封止部よりも高いレンズと、を有する。発光素子の組成傾斜層の厚さは、活性層からn型層側に向かう光と、活性層からn型層とは反対側に向かったのちp側電極により反射されてn型層側に向かう光とが、干渉によって発光素子の主面に垂直な方向において強め合うように設定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリップチップ型で紫外発光の発光素子と、
前記発光素子の少なくとも上面を接して覆い、屈折率が空気よりも高く前記発光素子よりも低い封止部と、
前記封止部を接して覆い、屈折率が前記封止部よりも高いレンズと、
を有し、
前記発光素子は、
n型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるn型層と、
前記n型層の主面のうち前記封止部側とは反対側の面に位置し、Alを含むIII族窒化物半導体からなり、井戸層と障壁層を有する量子井戸構造である活性層と、
前記活性層の主面のうち前記n型層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記障壁層よりも高い電子ブロック層と、
前記電子ブロック層の主面のうち前記活性層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記活性層から離れるにつれて減少している組成傾斜層と、
前記組成傾斜層の主面のうち前記電子ブロック層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるp型コンタクト層と、
前記p型コンタクト層の主面のうち前記組成傾斜層側とは反対側の面に位置し、前記活性層からの紫外光を反射するp側電極と、
を有し、
前記組成傾斜層の厚さは、前記活性層から前記n型層側に向かう光と、前記活性層から前記n型層とは反対側に向かったのち前記p側電極により反射されて前記n型層側に向かう光とが、干渉によって前記発光素子の主面に垂直な方向において強め合うように設定されている、発光装置。
【請求項2】
前記障壁層のうち最上層である層から前記p型コンタクト層までの総膜厚をd1、前記組成傾斜層の厚さをd2として、d1が、n×d1=m×λ(ここでnは発光波長における前記電子ブロック層から前記p型コンタクト層までの層の平均屈折率、λは発光波長)、mは0.55以上0.9以下、を満たすように厚さd2が設定されている、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記組成傾斜層は、前記電子ブロック層側から順に、第1組成傾斜層、第2組成傾斜層を積層させた構造であり、前記第1組成傾斜層はノンドープまたはp型不純物ドープであり、前記第2組成傾斜層はp型不純物ドープであって前記第1組成傾斜層よりもp型不純物濃度が高い、請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記組成傾斜層の厚さは、前記第1組成傾斜層の厚さによって設定されている、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記組成傾斜層の厚さd2に対する前記第1組成傾斜層の厚さの比は、0.4~0.7である、請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記封止部は、前記発光素子の上面に設けられ、側面には設けられていない、請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記電子ブロック層は、前記活性層側から順に、第1電子ブロック層、第2電子ブロック層を積層させた構造であり、前記第2電子ブロック層のAl組成は、前記第1電子ブロック層のAl組成よりも低く、前記組成傾斜層のAl組成の最大値よりも低い、請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項8】
フリップチップ型で紫外発光の発光素子と、
前記発光素子の少なくとも上面を接して覆い、屈折率が空気よりも高く前記発光素子よりも低い封止部と、
前記封止部を接して覆い、屈折率が前記封止部よりも高いレンズと、
を有し、
前記発光素子は、
n型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるn型層と、
前記n型層の主面のうち前記封止部側とは反対側の面に位置し、Alを含むIII族窒化物半導体からなり、井戸層と障壁層を有する量子井戸構造である活性層と、
前記活性層の主面のうち前記n型層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記障壁層よりも高い電子ブロック層と、
前記電子ブロック層の主面のうち前記活性層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記活性層から離れるにつれて減少している組成傾斜層と、
前記組成傾斜層の主面のうち前記電子ブロック層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるp型コンタクト層と、
前記p型コンタクト層の主面のうち前記組成傾斜層側とは反対側の面に位置し、前記活性層からの紫外光を反射するp側電極と、
を有した発光装置の製造方法であって、
前記組成傾斜層の厚さを、前記活性層から前記n型層側に向かう光と、前記活性層から前記n型層とは反対側に向かったのち前記p側電極により反射されて前記n型層側に向かう光とが、干渉によって前記発光素子の主面に垂直な方向において強め合うように設定する、発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記障壁層のうち最上層である層から前記p型コンタクト層までの総膜厚をd1、前記組成傾斜層の厚さをd2、d3=d1-d2として、厚さd3を所定値に固定し、厚さd2を変更して、n×d1=m×λ(ここでnは発光波長における前記電子ブロック層から前記p型コンタクト層までの層の平均屈折率、λは発光波長)、mは0.55以上0.9以下、を満たすように厚さd2を設定する、請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記組成傾斜層は、前記電子ブロック層側から順に、第1組成傾斜層、第2組成傾斜層を積層させた構造であり、前記第1組成傾斜層はノンドープまたはp型不純物ドープであり、前記第2組成傾斜層はp型不純物ドープであって前記第1組成傾斜層よりもp型不純物濃度が高く、
前記組成傾斜層の厚さは、前記第2組成傾斜層の厚さを所定値に固定し、前記第1組成傾斜層の厚さを変更して設定する、請求項8または請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体を用いた固体発光素子の紫外線の波長は約210~400nmの範囲の波長帯に対応している。特にUVC(波長100~280nm)は効率的に殺菌、除菌できることが知られており、発光波長がUVCに対応する紫外光を放射するIII族窒化物半導体LEDの需要が高まっている。紫外LEDは、サファイア基板上にAlN層を形成し、AlN層上にAlGaNからなるn型層、発光層、p型層を積層した構成である。
【0003】
特許文献1には、発光素子における半導体層の厚さをn×d=m×λ/2、ここでnは半導体層の屈折率、dは半導体層の厚さ、λは発光波長、mは整数、とすることが記載されている。半導体層の厚さをこのように設定することで、素子内部での光の干渉による弱め合いを防止し、光取り出し効率を向上させることができることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、電子ブロック層とp型コンタクト層の間に組成傾斜層を設けることが記載されている。組成傾斜層は、AlNまたはAlGaNからなり、Al組成が電子ブロック層から離れるにしたがって減少するように構成され、電子ブロック層との界面においてはAl組成が電子ブロック層と同一の層である。組成傾斜層を設けることで2次元ホールガスの発生を抑制し、カレントクラウディングの発生を抑制することが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、実装基板上に実装された紫外LEDをレンズで覆い、紫外LEDとレンズの隙間を液体のフッ化炭素化合物で埋めた発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-119756号公報
【特許文献2】特開2019-16964号公報
【特許文献3】特開2022-108692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1-3は発光素子から取り出される光の角度依存性(配光)に言及されていない。たとえば、発光素子の横方向(発光素子の主面に水平な方向)に取り出された光は、実際の製品において活用しにくい。そのため、素子内部構造で軸上強度(発光素子の主面に垂直な方向の光強度)を高めることが求められていた。また、特許文献1の方法では、半導体層の厚さによって直列抵抗が変化するため、駆動電圧も変化してしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、駆動電圧上昇を抑制しつつ軸上強度を高めることができる発光装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
フリップチップ型で紫外発光の発光素子と、
前記発光素子の少なくとも上面を接して覆い、屈折率が空気よりも高く前記発光素子よりも低い封止部と、
前記封止部を接して覆い、屈折率が前記封止部よりも高いレンズと、
を有し、
前記発光素子は、
n型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるn型層と、
前記n型層の主面のうち前記封止部側とは反対側の面に位置し、Alを含むIII族窒化物半導体からなり、井戸層と障壁層を有する量子井戸構造である活性層と、
前記活性層の主面のうち前記n型層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記障壁層よりも高い電子ブロック層と、
前記電子ブロック層の主面のうち前記活性層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記活性層から離れるにつれて減少している組成傾斜層と、
前記組成傾斜層の主面のうち前記電子ブロック層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるp型コンタクト層と、
前記p型コンタクト層の主面のうち前記組成傾斜層側とは反対側の面に位置し、前記活性層からの紫外光を反射するp側電極と、
を有し、
前記組成傾斜層の厚さは、前記活性層から前記n型層側に向かう光と、前記活性層から前記n型層とは反対側に向かったのち前記p側電極により反射されて前記n型層側に向かう光とが、干渉によって前記発光素子の主面に垂直な方向において強め合うように設定されている、発光装置にある。
【0010】
本発明の他態様は、
フリップチップ型で紫外発光の発光素子と、
前記発光素子の少なくとも上面を接して覆い、屈折率が空気よりも高く前記発光素子よりも低い封止部と、
前記封止部を接して覆い、屈折率が前記封止部よりも高いレンズと、
を有し、
前記発光素子は、
n型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるn型層と、
前記n型層の主面のうち前記封止部側とは反対側の面に位置し、Alを含むIII族窒化物半導体からなり、井戸層と障壁層を有する量子井戸構造である活性層と、
前記活性層の主面のうち前記n型層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記障壁層よりも高い電子ブロック層と、
前記電子ブロック層の主面のうち前記活性層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が前記活性層から離れるにつれて減少している組成傾斜層と、
前記組成傾斜層の主面のうち前記電子ブロック層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるp型コンタクト層と、
前記p型コンタクト層の主面のうち前記組成傾斜層側とは反対側の面に位置し、前記活性層からの紫外光を反射するp側電極と、
を有した発光装置の製造方法であって、
前記組成傾斜層の厚さを、前記活性層から前記n型層側に向かう光と、前記活性層から前記n型層とは反対側に向かったのち前記p側電極により反射されて前記n型層側に向かう光とが、干渉によって前記発光素子の主面に垂直な方向において強め合うように設定する、発光装置の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
上記態様では、組成傾斜層の厚さによって紫外光の干渉を制御している。そのため、駆動電圧上昇を抑制しつつ軸上強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1における発光装置の構成を模式的に示した断面図であって、発光素子の主面に垂直な断面を示した図。
図2】発光素子の構成を示した断面図であって、発光素子の主面に垂直な断面を示した図。
図3】(a)は、活性層上に、その活性層側から順にAlN、サファイア、空気、レンズ(石英)が積層された構成のモデルにおいてその内部での光の経路を模式的に示した図、(b)は、活性層上に、その活性層側から順にAlN、サファイア、フッ素オイル、レンズ(石英)が積層された構成のモデルにおいてその内部での光の経路を模式的に示した図。
図4】(a)は、発光素子を単純化したモデルについての光出力の角度依存性を示したグラフ、(b)は、発光素子を単純化したモデルについてのp型層の厚さ依存性を示したグラフ。
図5】発光素子の光出力の計算結果と測定結果を示したグラフ。
図6】発光素子をパッケージ化した発光装置について光出力を測定した結果を示したグラフ。
図7】発光素子をパッケージ化した発光装置について軸上強度の増加率と放射角の幅の測定結果を示したグラフ。
図8】発光素子について上面からの光出力と側面からの光出力を計算した結果を示したグラフ。
図9】(a)は、電圧を印加していない場合における発光素子のバンド図およびキャリア濃度の厚さ方向分布を示した図、(b)は、6Vを印加した場合における発光素子のバンド図およびキャリア濃度の厚さ方向分布を示した図。
図10】サファイアの透過率、吸収率、および反射率を示したグラフ。
図11】AlNテンプレートの透過率、吸収率、および反射率を示したグラフ。
図12】基板からp型コンタクト層までの全体の透過率、吸収率、および反射率を示したグラフ。
図13】ノンドープAlGaNの透過率、吸収率、および反射率を示したグラフ。
図14】SiドープAlGaNの透過率、吸収率、および反射率を示したグラフ。
図15】MgドープAlGaNの透過率、吸収率、および反射率を示したグラフ。
図16】組成傾斜層の透過率、吸収率、および反射率を示したグラフ。
図17】p側電極の反射率を示したグラフ。
図18】実施形態1の変形形態における発光装置の構成を模式的に示した断面図であって、発光素子の主面に垂直な断面を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発光装置は、フリップチップ型で紫外発光の発光素子と、発光素子の少なくとも上面を接して覆い、屈折率が空気よりも高く発光素子よりも低い封止部と、封止部を接して覆い、屈折率が封止部よりも高いレンズと、を有する。
【0014】
そして、発光素子は、n型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるn型層と、n型層の主面のうち封止部側とは反対側の面に位置し、Alを含むIII族窒化物半導体からなり、井戸層と障壁層を有する量子井戸構造である活性層と、活性層の主面のうちn型層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が障壁層よりも高い電子ブロック層と、電子ブロック層の主面のうち活性層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が活性層から離れるにつれて減少している組成傾斜層と、組成傾斜層の主面のうち電子ブロック層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるp型コンタクト層と、p型コンタクト層の主面のうち前記組成傾斜層側とは反対側の面に位置し、前記活性層からの紫外光を反射するp側電極と、を有する。
【0015】
さらに、組成傾斜層の厚さは、活性層からn型層側に向かう光と、活性層からn型層とは反対側に向かったのちp側電極により反射されてn型層側に向かう光とが、干渉によって発光素子の主面に垂直な方向において強め合うように設定されている。
【0016】
上記発光装置において、障壁層のうち最上層である層からp型コンタクト層までの総膜厚をd1、組成傾斜層の厚さをd2として、d1が、n×d1=m×λ(ここでnは発光波長における電子ブロック層からp型コンタクト層までの層の平均屈折率、λは発光波長)、mは0.55以上0.9以下、を満たすように厚さd2が設定されていてもよい。
【0017】
組成傾斜層は、電子ブロック層側から順に、第1組成傾斜層、第2組成傾斜層を積層させた構造であり、第1組成傾斜層はノンドープまたはp型不純物ドープであり、第2組成傾斜層はp型不純物ドープであって第1組成傾斜層よりもp型不純物濃度が高くてもよい。
【0018】
組成傾斜層の厚さは、第1組成傾斜層の厚さによって設定されていてもよい。
【0019】
組成傾斜層の厚さd2に対する第1組成傾斜層の厚さの比は、0.4~0.7であってもよい。
【0020】
封止部は、発光素子の上面に設けられ、側面には設けられていなくてもよい。
【0021】
電子ブロック層は、活性層側から順に、第1電子ブロック層、第2電子ブロック層を積層させた構造であり、第2電子ブロック層のAl組成は、第1電子ブロック層のAl組成よりも低く、組成傾斜層のAl組成の最大値よりも低くてもよい。
【0022】
発光装置の製造方法は、フリップチップ型で紫外発光の発光素子と、発光素子の少なくとも上面を接して覆い、屈折率が空気よりも高く発光素子よりも低い封止部と、封止部を接して覆い、屈折率が封止部よりも高いレンズと、を有した発光装置の製造方法である。そして、発光素子は、n型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるn型層と、n型層の主面のうち封止部側とは反対側の面に位置し、Alを含むIII族窒化物半導体からなり、井戸層と障壁層を有する量子井戸構造である活性層と、活性層の主面のうちn型層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が障壁層よりも高い電子ブロック層と、電子ブロック層の主面のうち活性層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなり、Al組成が活性層から離れるにつれて減少している組成傾斜層と、組成傾斜層の主面のうち電子ブロック層側とは反対側の面に位置し、p型のAlを含むIII族窒化物半導体からなるp型コンタクト層と、p型コンタクト層の主面のうち組成傾斜層側とは反対側の面に位置し、活性層からの紫外光を反射するp側電極と、を有する。そして、組成傾斜層の厚さを、活性層からn型層側に向かう光と、活性層からn型層とは反対側に向かったのちp側電極により反射されてn型層側に向かう光とが、干渉によって発光素子の主面に垂直な方向において強め合うように設定する。
【0023】
障壁層のうち最上層である層からp型コンタクト層までの総膜厚をd1、組成傾斜層の厚さをd2、d3=d1-d2として、厚さd3を所定値に固定し、厚さd2を変更して、n×d1=m×λ(ここでnは発光波長における電子ブロック層からp型コンタクト層までの層の平均屈折率、λは発光波長)、mは0.55以上0.9以下、を満たすように厚さd2を設定してもよい。
【0024】
組成傾斜層は、電子ブロック層側から順に、第1組成傾斜層、第2組成傾斜層を積層させた構造であり、第1組成傾斜層はノンドープまたはp型不純物ドープであり、第2組成傾斜層はp型不純物ドープであって第1組成傾斜層よりもp型不純物濃度が高く、組成傾斜層の厚さは、第2組成傾斜層の厚さを所定値に固定し、第1組成傾斜層の厚さを変更して設定してもよい。
【0025】
(実施形態)
1.発光装置の構成
図1は、実施形態における発光装置の構成を示した断面図であり、軸上方向における断面を示した図である。図1のように、実施形態1における発光装置は、発光素子1と、封止部2と、レンズ3と、実装基板4を有している。
【0026】
発光素子1は、III族窒化物半導体を用いた発光素子である。発光波長はたとえば225~300nmである。発光素子1の詳しい構成は後述する。発光素子1はフリップチップ型であり、一方の面が光取り出し側、それとは反対側の面が電極側である。発光素子1は、実装基板4に実装されている。発光素子1の光取り出し面は、上面が主たる面となっており、上面からの光出力は側面からの光出力に比べて大きい。ここで発光素子1の上面は、発光素子1の下面とは反対側の面であり、下面は発光素子1の実装基板4側となる面、つまり電極形成側の面である。実装基板4は、AlN、SiCなどの放熱性の高いセラミック材料が好ましい。
【0027】
封止部2は、発光素子1の上面とレンズ3の間の隙間を埋めるように設けられ、発光素子1の上面およびレンズ3に接して設けられている。封止部2は、発光素子1の側面は覆っていない。また、封止部2は、発光素子1の上面の全面を覆っていることが好ましい。
【0028】
封止部2の屈折率は、空気の屈折率よりも高く、かつ発光素子1の屈折率よりも低い値に設定されている。ここで屈折率は発光波長における値である。以下、本明細書において特に断らない限り同様である。また、発光素子1の屈折率は、全体の平均屈折率とする。たとえば、封止部2の屈折率は1.2~1.6である。
【0029】
発光素子1の上面とレンズ3の間に隙間があり空気層が形成されている場合、発光素子1と空気の屈折率差が大きく、発光素子1の上面と空気層との界面での全反射の臨界角が小さかった。その結果、発光素子1から取り出すことができる紫外光の放射角が狭く、発光素子1からレンズ3に入射する光の割合が低かった。
【0030】
一方、発光素子1の上面とレンズ3の間に上記屈折率の封止部2を設けると、発光素子1と封止部2の屈折率差が小さくなるので、発光素子1の上面と封止部2の界面での全反射の臨界角が大きくなる。その結果、発光素子1から取り出すことができる紫外光の放射角が広くなり、発光素子1からレンズ3への光の入射効率を高めることができる。
【0031】
封止部2の材料は、発光素子1から放射される紫外光に対して透光性を有した材料であれば任意の材料でよく、液体でも固体でもよい。発光素子1から放射される紫外光に対して劣化しない材料であることが好ましい。たとえば有機ハロゲン化物、UVC透過ガラスシリコーン樹脂などを用いることができる。液体の有機ハロゲン化物としては、シリコーンオイルを用いることができる。固体の有機ハロゲン化物としては、アモルファスフッ素樹脂、FEP、PFAなどのフッ素樹脂を用いることができる。
【0032】
封止部2の材料として、特にフッ化炭素化合物が好ましい。フッ化炭素化合物はCF結合を有するポリマーである。フッ化炭素化合物は常温常圧で液体のもの(フッ素オイル)であってもよいし、固体であってもよい。フッ化炭素化合物における炭素原子数は、フッ化炭素化合物におけるフッ素原子数の1.9倍以下であるとよい。フッ化炭素化合物は、たとえばパーフルオロポリエーテル(PFPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などである。
【0033】
また、封止部2は、フッ素樹脂フィルムであってもよい。また、液体のフッ化炭素化合物をフッ素樹脂フィルムで覆って封止したものであってもよい。フッ素樹脂フィルムの材料は、たとえばFEP、PFA、PCTFEなどである。
【0034】
また、封止部2の材料が液体である場合、フィラーを混合して粘性を調整してもよい。フィラーは、紫外光を吸収しない材料とするか、紫外光を吸収しないように粒径を調整する。フィラーの材料は、たとえばフッ素樹脂パウダーやシリカである。フィラーの屈折率は封止部2の屈折率と同程度が好ましく、たとえば1.2~1.6である。
【0035】
封止部2の厚さおよび屈折率は、発光素子1とレンズ3との間の反射を防止する反射防止膜として機能するような値としてもよい。たとえば、封止部2の屈折率をレンズ3の屈折率よりも高く、発光素子1の屈折率よりも低くし、かつ封止部2の厚さを発光波長の1/4とすればよい。これにより発光素子1からの光取り出し効率がより高まり、軸上強度をより高めることができる。
【0036】
レンズ3は、発光素子1の側面および封止部2を覆うようにして実装基板4上に設けられている。レンズ3と封止部2は接している。また、発光素子1の側面とレンズ3は接していてもよいし、発光素子1の側面とレンズ3の間に空気層が設けられていてもよい。空気層を設けることで、発光素子1の側面での全反射を増やし、発光素子1の上面からの光取り出しを向上させることができる。レンズ3と実装基板4は、図示しない接着剤によって接合されている。
【0037】
レンズ3の表面は球面状または放物面状である。このような形状のレンズ3によって、発光素子1の上面から放射される光は軸上方向に屈折されてレンズ3から放射される。そのため、軸上方向の光強度を高めることができる。
【0038】
レンズ3の材料は、発光素子1から放射される紫外光に対して透光性を有し、かつ紫外光により劣化しない材料であれば任意の材料でよい。たとえば、石英ガラス、ガラス、シリコーン、フッ素樹脂、サファイアといった透光セラミックなどである。また、レンズ3の屈折率は、封止部2の屈折率よりも大きければ任意である。たとえば、レンズ3の屈折率は1.4以上である。
【0039】
実施形態1の発光装置では、発光素子1の上面とレンズ3の間に封止部2を設けているため軸上強度を向上させることができる。特に、発光素子1の上面と封止部2の全反射を考慮して、発光装置の軸上強度が高くなるように発光素子1の構成を工夫している。以下、その発光素子1の構成を詳しく説明する。
【0040】
2.発光素子1の構成
図2は、発光素子1の構成を示した断面図であり、基板主面に垂直な方向での断面を示した図である。実施形態に係る発光素子は、図1に示すように、基板10と、n型層11と、活性層12と、電子ブロック層13と、組成傾斜層14と、p型コンタクト層15と、p側電極16と、n側電極17と、を有している。実施形態における発光素子はフリップチップ型であり、発光波長がUVC帯である。
【0041】
基板10は、c面を主面とするサファイアからなる基板である。サファイアの主面の面方位はa面でもよい。また、m軸方向に0.1~2度のオフ角を有していてもよい。この基板10の裏面(n型層11とは反対側の面)が主たる光取り出し面となる。基板10の裏面には反射防止膜を設け、光取り出し率の向上を図ってもよい。また、基板10表面に凹凸を設けて光取り出し率の向上を図ってもよい。また、基板10として、AlN基板や、サファイア基板上にAlN層が形成されたAlNテンプレート基板を用いてもよい。
【0042】
基板10の厚さは、たとえば1000μm以下である。好ましくは500μm以下である。基板10側面からの光取り出しを抑制し、軸上強度の向上を図ることができる。
【0043】
なお、基板10はLLO(レーザーリフトオフ)などの方法によって除去されていてもよい。
【0044】
n型層11は、基板10上に位置している。n型層11は、n-AlGaNからなる。Al組成(III族金属全体におけるAlのモル比)は、たとえば60~90%である。n型不純物はSiであり、Si濃度はたとえば1×1018~5×1019cm-3である。n型層11の厚さは、たとえば0.5~5μmである。また、n型層11のC濃度は1×1015~1×1019cm-3である。n型層11は複数の層で構成されていてもよい。たとえば、Al組成の異なるAlGaNを交互に積層させた超格子層としてもよい。また、基板10とn型層11の間にAlNからなる下地層を設けてもよい。また、n型不純物としてSi以外を用いてもよい。
【0045】
また、n型層11のAl組成は、基板10側に向かって増加するように設定されていてもよい。屈折率分布によってn型層11がレンズとして機能し、発光素子1の軸上強度をより高めることができる。
【0046】
活性層12は、n型層11上に位置している。活性層12は、n型層11側から順に障壁層、井戸層、障壁層が積層されたSQW構造である。活性層12はMQW構造でもよい。その場合、繰り返し数はたとえば2~10である。
【0047】
井戸層はAlGaNからなり、そのAl組成は所望の発光波長に応じて設定される。井戸層のSi濃度は、たとえば1×1018cm-3以下であり、ノンドープでもよい。また、井戸層の厚さは、たとえば0.5~5nmである。
【0048】
障壁層は、井戸層よりもAl組成の大きなAlGaNであり、Al組成はたとえば50~100%である。障壁層のSi濃度は、たとえば2×1019cm-3以下であり、ノンドープでもよい。障壁層の厚さは、たとえば3~30nmである。障壁層は、井戸層よりもバンドギャップエネルギーの大きなAlGaInNでもよい。また、障壁層のうち電子ブロック層13と接する層は、厚さ0.5~10nmとすることが好ましい。
【0049】
n型層11と活性層12の間に、ホールブロック層を設けてもよい。p側電極16から注入したホールが活性層12を超えてn型層11側に拡散してしまうのを抑制することができる。ホールブロック層は、活性層12の障壁層よりもAl組成の高いAlGaNまたはAlNである。
【0050】
電子ブロック層13は、活性層12上に位置している。電子ブロック層13は、活性層12側から順に、第1電子ブロック層13A、第2電子ブロック層13Bが積層された2層構造である。電子ブロック層13によって、n側電極17から注入した電子が活性層12を超えて組成傾斜層14側に拡散してしまうのを抑制している。
【0051】
なお、電子ブロック層13は必ずしも2層構造とする必要はなく、第1電子ブロック層13Aのみであってもよい。
【0052】
第1電子ブロック層13Aは、活性層12の障壁層よりもAl組成比の高いAlGaNもしくはAlNからなり、Al組成はたとえば90~100%である。また、第1電子ブロック層13Aにはp型不純物がドープされていてもよいし、ノンドープでもよい。p型不純物はたとえばMgである。Mgドープの場合、Mg濃度は、たとえば3×1020cm-3以下である。また、第1電子ブロック層13Aの厚さは、たとえば1~10nmである。
【0053】
第2電子ブロック層13Bは、第1電子ブロック層13AよりもAl組成が低いAlGaNからなり、Al組成はたとえば80~99%である。第2電子ブロック層13Bを設けることにより、組成傾斜層14とのAl組成の差の調整を行っている。第1電子ブロック層13AのAlNのみでは抵抗が高くなってしまい、第1電子ブロック層13Aを薄くすると電子ブロックの性能が低下してしまう。そこで第2電子ブロック層13Bを設けることで低抵抗化と電子ブロック機能の両立を図っている。また、第2電子ブロック層13Bにはp型不純物がドープされていてもよいし、ノンドープでもよい。Mgドープの場合、Mg濃度は、たとえば3×1020cm-3以下である。また、第2電子ブロック層13Bの厚さは、たとえば1~10nmである。
【0054】
組成傾斜層14は、第2電子ブロック層13B上に位置している。組成傾斜層14は、電子ブロック層13側から順に、第1組成傾斜層14A、第2組成傾斜層14Bが積層された2層構造である。
【0055】
組成傾斜層14は、分極ドーピングと呼ばれる方法によってp型とした層である。すなわち、組成傾斜層14は、Al組成が厚さ方向に変化している層であり、電子ブロック層13から離れるにつれてAl組成が減少するように設定されている。Al組成の高いAlGaNはMgドープではホール濃度を高くすることが難しかったが、分極ドーピングによればホール濃度の向上を図ることができ、活性層12へのホール注入効率を高めることができる。また、分極ドーピングではMgをドープしなくてもよいため、結晶性を向上させることができる。
【0056】
組成傾斜層14のAl組成を上記のように設定すると、組成傾斜層14中には結晶の歪による分極が厚さ方向に連続的に発生する。この分極による固定電荷を打ち消すように組成傾斜層14中にホールが発生する。発生したホールは組成傾斜層14中に分布する。そのため、ホールは組成傾斜層14中の電子ブロック層13側から厚さ方向に広く分布し、全体としてp型となる。このp型の領域においてホール濃度は1×1016~1×1020cm-3であり、電子ブロック層13から離れるにつれてホール濃度は減少する。組成傾斜層14のp型コンタクト層15界面近傍でホールが少なくなるのは、p型ヘテロ接合によりフェルミ準位が一致しようとしてバンドが曲がるためである。
【0057】
第1組成傾斜層14AのAl組成の最大値(電子ブロック層13との界面におけるAl組成)は、電子ブロック層13のAl組成よりも1~20%低い値とすることが好ましい。歪による分極によってホール濃度をより高めることができる。たとえばAl組成の最大値は65~95%である。
【0058】
また、第1組成傾斜層14AのAl組成の最小値(第2組成傾斜層14Bとの界面におけるAl組成)は、第1組成傾斜層14AのAl組成の最大値よりも3~30%低い値とすることが好ましい。歪による分極によってホール濃度をより高めることができる。加えて、発光波長を吸収しないバンドエネルギーを有したAl組成が好ましい。
【0059】
また、Al組成の減少率は、0.1~0.3%/nmとすることが好ましい。このような範囲とすることで、組成傾斜層14のホール濃度をより高めることができる。また、Al組成の減少率は一定、つまり直線的に変化していてもよいし、一定でなくてもよい。
【0060】
第1組成傾斜層14Aはノンドープである。ただしMgをドープしてもよい。p型不純物によるホール濃度のさらなる向上が期待できる。この場合、Mg濃度はたとえば1×1020cm-3以下とする。一方で、第1組成傾斜層14Aの厚さの変化による直列抵抗の変化を抑制するという点では、Mg濃度はなるべく低いことが好ましく、ノンドープが好ましい。
【0061】
第2組成傾斜層14Bは、第1組成傾斜層14AよりもMg濃度の高い層であり、それ以外は第1組成傾斜層14Aと同様にAl組成が設定されている。つまり、Al組成が厚さ方向に変化しており、電子ブロック層13から離れるにつれてAl組成が減少するように設定された層である。第2組成傾斜層14BにMgをドープすることでp型コンタクト層15と良好に接続可能としている。
【0062】
第2組成傾斜層14BのAl組成の最大値(第1組成傾斜層14Aとの界面におけるAl組成)は、第1組成傾斜層14AのAl組成の最小値との差が0~5%であり、第1組成傾斜層14AのAl組成の最小値と同じであることが好ましい。つまり、第1組成傾斜層14Aから第2組成傾斜層14BにかけてAl組成が連続していることが好ましい。
【0063】
また、第2組成傾斜層14BのAl組成の最小値(p型コンタクト層15との界面におけるAl組成)は、第2組成傾斜層14BのAl組成の最大値よりも3~30%低い値であることが好ましい。
【0064】
また、第2組成傾斜層14BのAl組成の減少率は、第1組成傾斜層14AのAl組成の減少率と同様の範囲である。第2組成傾斜層14BのAl組成の減少率は、第1組成傾斜層14AのAl組成の減少率と同じであってもよい。
【0065】
第2組成傾斜層14BのMg濃度は、第1組成傾斜層14AのMg濃度よりも高ければ任意であるが、3×1020cm-3以下であることが好ましい。直列抵抗を抑制するためである。
【0066】
なお、実施形態1では組成傾斜層14のAl組成は連続的に減少させているが、階段状に減少させてもよい。ただし、Al組成が一定となる領域はなるべく少ないことが好ましい。
【0067】
組成傾斜層14の厚さは、活性層12からn型層11側に放射される紫外光と、活性層12から電子ブロック層13側に放射され、p側電極16によって反射されたのちn型層11側に向かう紫外光とが、光の干渉によって軸上方向において強め合うような厚さに設定されている。その詳細については後述する。
【0068】
また、組成傾斜層14における第1組成傾斜層14Aの厚さの割合は、0.4~0.7であることが好ましい。この範囲とすることにより、分極ドーピングによるホール濃度の向上を十分に図りつつ、組成傾斜層14とp型コンタクト層15とのコンタクトも良好とすることができる。より好ましくは0.4~0.6である。
【0069】
なお、組成傾斜層14は必ずしも第1組成傾斜層14Aと第2組成傾斜層14Bの2層構造とする必要はなく、第1組成傾斜層14Aのみとしてもよい。また、Al組成の変化率やMg濃度などが異なる3層以上の構造としてもよい。
【0070】
電子ブロック層13、組成傾斜層14、p型コンタクト層15の総膜厚に対する組成傾斜層14の厚さの割合は、50%以上90%以下が好ましい。この範囲であれば、p型層としての機能を十分に高めることができる。
【0071】
p型コンタクト層15は、組成傾斜層14上に位置している。p型コンタクト層15は、p-GaNからなる。組成傾斜層14の最小Al組成よりもAl組成の低いp-AlGaNであってもよく、Al組成はたとえば50%以下である。また、p型コンタクト層15はAl組成やMg濃度の異なる複数の層で構成されていてもよい。ただしコンタクト抵抗の低減のため、p側電極16と接する最上層はp-GaNが好ましい。GaNは活性層12から放射される紫外光を吸収してしまうが、十分に薄くすることである程度紫外光を透過させることができる。そのため、外部量子効率の大きな低下を避けることができる。p型コンタクト層15のMg濃度は、たとえば1×1020~1×1022cm-3である。p型コンタクト層15の厚さは、たとえば1~50nmである。
【0072】
p型コンタクト層15表面の一部領域には、n型層11に達する深さの溝が設けられている。この溝は、n型層11を露出させてn側電極17を設けるためのものである。
【0073】
p側電極16は、p型コンタクト層15上に設けられている。p側電極16は、活性層12から放射される紫外光を基板10側に反射させて光取り出し効率を高める反射電極である。p側電極16の材料は、Ru、Rh、Ni/Au、Ni/Al、ITO/Alなどである。ここでA/Bはp型コンタクト層15側から順に、A、Bの積層であることを意味する。また、p側電極16はITO、IZOなどの透明電極とDBR(誘電体多層膜)の組み合わせでもよい。透明電極を用いる場合、反射面は半導体結晶と電極の界面ではなく、透明電極と反射電極の界面となる。たとえばITO/Alの場合、ITOの膜厚も光干渉効果の膜厚として考慮する必要がある。しかしながら、現状、UVC光に対して完全に透明な電極はないので、半導体結晶上に直接反射電極を形成することが最も好ましい。
【0074】
n側電極17は、溝の底面に露出するn型層11上に設けられている。n側電極17の材料は、Ti/Al、V/Alなどである。ここでA/Bはn型層11側から順に、A、Bの積層であることを意味する。
【0075】
次に、発光素子1における各層の厚さについて説明する。まず、次のように厚さd1~d3を設定する。障壁層のうち最上層である層からp型コンタクト層15までの総膜厚をd1とし、組成傾斜層14の厚さをd2とし、d1からd2を除いた厚さ(活性層12の最上層の障壁層、電子ブロック層13およびp型コンタクト層15の厚さの合計)をd3(=d1-d2)とする。
【0076】
このとき、d1は、n×d1=m×λを満たすように設定されている。式において、nは障壁層のうち最上層である層からp型コンタクト層15までの半導体層の平均屈折率、λは発光波長、mは0.5~0.9である。
【0077】
この式は、活性層12からn型層11側に放射される紫外光と、活性層12から電子ブロック層13側に放射され、p側電極16によって反射されたのちn型層11側に向かう紫外光とが、光の干渉によって強め合う条件式である。また、この式では、発光素子1の上面と封止部2との界面での全反射を考慮し、活性層12からの放射角が臨界角未満である紫外光が強め合うようにmの範囲を設定している。したがって、この式を満たすように厚さd1を設定すれば、発光装置の軸上強度の向上を図ることができる。
【0078】
ここで、活性層12の障壁層の厚さは、キャリアの閉じ込めという機能から必要な値が決まってくる。また、電子ブロック層13の厚さは、電子をブロックするという機能から必要な値が決まってくる。また、p型コンタクト層15の厚さは、p側電極16と良好なコンタクトを取りつつ、紫外光の吸収はなるべく抑える必要があり、その結果として厚さが所定値に決まってくる。また、電子ブロック層13やp型コンタクト層15の厚さを変えると直列抵抗も変化してしまい、発光素子1の駆動電圧も変動してしまう。
【0079】
通常、MgドープAlGaNのMg活性化率は非常に低い。そのため、Al組成一定の膜の場合、膜の抵抗が非常に高いため膜厚に対する直列抵抗の影響が大きい。一方、組成傾斜層14は、分極ドーピングによりp型化するという仕組み上、膜自体が非常に低抵抗になっている。そのため、厚さを変えても直列抵抗による駆動電圧の上昇への影響が小さい。
【0080】
そこで実施形態1では、厚さd1のうち組成傾斜層14の厚さd2のみをパラメータとし、それ以外の厚さd3を固定値として、n×d2=m×λ-n×d3を満たすようにd2を設定している。このように組成傾斜層14の厚さd2で紫外光の干渉を制御することで、発光素子1の駆動電圧上昇を抑制しつつ、発光装置の軸上強度を向上させることができる。
【0081】
組成傾斜層14のうち、第1組成傾斜層14Aの厚さを変化させ、第2組成傾斜層14Bの厚さは固定値として厚さd2を設定することが好ましい。第2組成傾斜層14BはMgドープであり、厚さを変化させたときの直列抵抗の変化が第1組成傾斜層14Aよりも大きいためである。このとき、第2組成傾斜層14Bの厚さは、10~50nmの範囲の固定値とすることが好ましい。
【0082】
発光素子1における発光波長に対する各層の透過率、反射率は、以下を満たすように設定されていることが好ましい。透過率、反射率をこのように設定することで発光素子1内部での光の吸収を抑制することができ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0083】
AlNテンプレートである基板10の透過率は50%以上が好ましい。基板10からp型コンタクト層15までの全体の透過率(基板側から入射)は40%以上が好ましい。活性層12の井戸層単体での透過率は30%以上が好ましい。活性層12の障壁層単体での透過率は50%以上が好ましい。電子ブロック層13単体での透過率は50%以上が好ましい。組成傾斜層14単体での透過率は50%以上が好ましい。また、p側電極16の反射率は、30%以上であることが好ましい。
【0084】
なお、透過率、反射率は材料、厚さ、結晶性などに依存し、結晶性は成長温度、成長圧力、V/III比、成長速度などの成長条件に依存するので、それら各種条件によって透過率、反射率を設定する。また、透過率、反射率は発光波長における値であり、基板10側から垂直入射の場合である。また、各層単体の透過率、反射率は、AlNテンプレートである基板10上に評価対象の層を形成した試料での評価である。
【0085】
以上、発光素子1では、組成傾斜層14の厚さd2で紫外光の干渉を制御しているので、発光素子1の直列抵抗の変化が少ない。その結果、発光素子1の駆動電圧上昇を抑制しつつ、発光装置の軸上強度を向上させることができる。
【0086】
3.実験結果
次に、実施形態1における発光装置に関する各種実験結果について説明する。
【0087】
実験1
実施形態における発光装置において、発光素子1からレンズ3に入射する紫外光について考察した。図3(a)、(b)は、発光装置の簡単なモデルにおいてその内部での光の経路を模式的に示した図である。図3(a)では、活性層上に、その活性層側から順にAlN、サファイア、空気、レンズ(石英)が積層された構成である。また図3(b)では、活性層上に、その活性層側から順にAlN、サファイア、フッ素オイル、レンズ(石英)が積層された構成である。各層の屈折率は、AlNが2.3、サファイアが1.8、空気が1、フッ素オイルが1.4、レンズが1.49である。
【0088】
図3(a)の場合、活性層12からの紫外光がサファイアと空気との界面で全反射しないためには、活性層12からの紫外光の放射角が25°未満である必要がある。
【0089】
一方、図3(b)の場合、活性層12からの紫外光がサファイアとフッ素オイルとの界面で全反射しないためには、活性層12からの紫外光の放射角が37°未満である必要がある。
【0090】
図3の結果から、発光素子1の基板10裏面とレンズ3の間を封止部2で埋めることにより、取り出せる放射角の範囲を広げることができ、基板10裏面からの光の取り出し効率を向上できることが分かった。また、発光装置の軸上強度を高めるためには、活性層12から37°未満の放射角で放射される紫外光が干渉により強め合うことが必要である。
【0091】
実験2
発光素子1を単純化したモデルを用いてその光出力を計算し、放射角37°未満において干渉により光が強め合うための条件を考察した。
【0092】
図4(a)、(b)は、光出力の計算結果を示したグラフである。モデルは、基板上に、その基板側から順にn型層、活性層、p型層、反射電極を積層させた構造であり、異なる光学膜厚における光干渉による光強度の放射角依存性を計算した。光学膜厚は、p型層を50nmから110nmまで10nm間隔で変化させた。発光波長は275nmとした。図4(a)は各光学膜厚における光強度の角度依存性を示したグラフであり、図4(b)はp型層(光学膜厚d1)の厚さ依存性を示したグラフである。
【0093】
図4(a)から、放射角37°未満において干渉により光が強め合うためには、p型層の厚さを60~100nmとする必要があることが分かった。
【0094】
実験3
組成傾斜層14の厚さを種々の値に設定した発光素子1を作製し、その光出力を測定した。また、光出力を計算により求めた。発光素子1の層構成はp側電極16側から基板10側に向かって順に以下の通りである。第1組成傾斜層14Aと第2組成傾斜層14Bの厚さの比は1:1とした。
p側電極16 Ni/Au Niの厚さ10nm Auの厚さ50nm
p型コンタクト層15 MgドープGaN 厚さ10nm
第2組成傾斜層14B MgドープAlGaN Al組成75%から72%
第1組成傾斜層14A ノンドープAlGaN Al組成78%から75%
第2電子ブロック層13B MgドープAlGaN Al組成97% 厚さ8.8nm
第1電子ブロック層13A MgドープAlN 厚さ8nm
活性層12の障壁層 SiドープAlGaN Al組成68% 厚さ2.5nm
活性層12の井戸層 ノンドープAlGaN Al組成46% 厚さ1.7nm
活性層12の障壁層 SiドープAlGaN Al組成68% 厚さ9.4nm
ホールブロック層 ノンドープAlN 厚さ0.5nm
SL層の井戸層 ノンドープAlGaN Al組成46% 厚さ0.5nm
SL層の障壁層 SiドープAlGaN Al組成68% 厚さ50nm
n型層11 SiドープAlGaN Al組成73% 厚さ35nm
n型層11 SiドープAlGaN Al組成73% 厚さ150nm
nコンタクト層 SiドープAlGaN Al組成73% 厚さ1200nm
再成長層 Ga含むAlN Al組成98% 厚さ200nm
AlNテンプレート GaドープAlN 厚さ2900nm
サファイア 厚さ430μm
【0095】
図5は、作製した発光素子1(発光面積:約55000μm)の光出力の計算結果と350mA通電時における測定結果を示したグラフである。図5の横軸のp型層の厚さは、障壁層のうち最上層である層からp型コンタクト層15までの全体の厚さである。図5のように、計算結果では組成傾斜層14の厚さを変えることで周期的に光出力が変化することが分かり、干渉効果が生じることがわかる。また、測定結果からも、組成傾斜層14の厚さを変えることで干渉によって光出力が変化することが確認できた。また、350mA通電時における駆動電圧VFは、p型層厚さの最も薄い49nmで6.15V、最も厚い107nmで6.35Vであり、0.2Vの差であった。p型層の厚膜化によるVF上昇を十分に抑制できている。
【0096】
実験4
図6は、図5に示した発光素子1を実施形態のようにパッケージ化して発光装置とし、その発光装置の光出力を測定した結果を示したグラフである。図6中、Bareが発光素子1単体の場合、PKGが発光装置の場合である。横軸のp型層厚さは図5と同様である。図6のように、発光素子1の光出力が高まることで、パッケージ化した発光装置の光出力も高まることが分かる。
【0097】
実験5
図7は、図5に示した発光素子1を実施形態のようにパッケージ化して発光装置とした場合について、PKG倍率と放射角の幅の測定結果を示したグラフである。PKG倍率は、発光素子1のみとした場合の光出力に対する発光装置の光出力の比である。放射角の幅は、最大強度に対して強度が0.8倍となるときの放射角とする。横軸のp型層厚さは図5と同様である。
【0098】
図7のように、パッケージ化によって放射角の幅が狭いとき、軸上強度も高くなることが分かる。発光装置の軸上強度が高いとき、PKG倍率も1.3~1.6のように高いことが分かる。したがって、放射角の幅は40~80°が好ましく、そのためには厚さd1は60~100nmとするのがよいことがわかる。
【0099】
実験6
図8(a)は、実験3の発光素子1について、上面からの光出力と側面からの光出力を計算した結果を示したグラフである。また、図8(b)は、発光素子1の模式図において上面(top)横軸と側面(side)をそれぞれ図示したものである。p型層厚さは図5と同様である。図8(a)のように、発光素子1の上面から取り出される紫外光と、側面から取り出される紫外光とでは、干渉効果に違いがあることが分かる。また、p型層の厚さが60~100nmの範囲であれば、全体の光出力は上面からの光出力が支配的であることが分かる。
【0100】
実験7
発光素子1のバンド図およびキャリア濃度を計算した。図9(a)、(b)は、発光素子1のバンド図およびキャリア濃度の厚さ方向分布を示した図である。図9(a)は発光素子1に電圧を印加していない場合であり、図9(b)は6Vを印加した場合である。図9において、細い線はバンド図を示し、中程度の線は電子濃度の分布を示し、太い線はホール濃度の分布を示している。図9のように、組成傾斜層14のうちp型コンタクト層15近傍の領域を除いてホール濃度が1×1016cm-3以上となっており、分極ドーピングによってp型となっていることが確認できた。
【0101】
実験8
発光素子1における各層および全体について透過率、反射率をそれぞれ測定し、吸収率を計算した。図10~17はその結果を示したグラフである。図13図16については、AlNテンプレートである基板10上にこれらの層を形成して評価した。図17についてはサファイア基板上に形成して評価した。また、図10~16ではサファイア側から紫外光を垂直入射させて評価した。サンプルは入射面、透過面、反射面ともに鏡面であるが、わずかな散乱があるものと考えられる。したがって、実際の透過率、反射率は測定値よりも若干高いと推測される。よって、以下の値はおおよその膜の光学特性を示すものである。
【0102】
図10は厚さ430μmのサファイア、図11は厚さ430μmのサファイア上に厚さ3000nmのGaドープAlNを形成したAlNテンプレートである基板についてのグラフである。図10から、発光波長275nmにおいてサファイアの透過率は約70%であった。また、図11から、発光波長275nmにおいてAlNテンプレートの透過率は約67%であった。発光素子1からの光取り出し効率向上の点から、発光波長におけるサファイアの透過率は約60%以上、AlNテンプレートの透過率は約50%以上が好ましいと考えられるが、図10、11の結果からそれを満たすことが確認できた。膜の透過率は高いほどよい。結晶層の透過率はバンドエネルギー以外では結晶欠陥や不純物を減らすことで改善できる。
【0103】
図12は基板10からp型コンタクト層15までの全体についてのグラフである。各層の構成は実験3で示したものである。図12から、発光波長275nmにおいて基板10からp型コンタクト層15までの全体の透過率は50%であった。発光素子1からの光取り出し効率向上の点から、発光波長における基板10からp型コンタクト層15までの全体についての透過率は40%以上が好ましいと考えられるが、図12の結果からそれを満たすことが確認できた。膜厚の厚いAlNテンプレートやSiドープのAlGaN層の結晶品質を向上させることで、さらに高い透過率を期待できる。
【0104】
図13は井戸層のノンドープAlGaN(厚さ68nm、Al組成46%)、図14は障壁層のSiドープAlGaN(厚さ52nm、Al組成68%)、図15は電子ブロック層のMgドープAlGaN(厚さ70nm、Al組成97%)についてのグラフである。
【0105】
図13から、発光波長275nmにおいてノンドープAlGaNの透過率は45%であった。このAlGaN層は井戸層に相当する。実際の発光素子での井戸層の膜厚は1.7nmであることから、発光層から放射された放射光の井戸層における自己吸収は低く、45%よりも高い透過率であると考えられる。以上を鑑みて、厚さ68nm、Al組成46%のAlGaN層の透過率は45%以上が好ましい。
【0106】
図14から、発光波長275nmにおいてSiドープAlGaNの透過率は60%であった。この層は障壁層に相当し、実際の発光素子における膜厚10nmよりも厚い。したがって、発光素子構造における障壁層の透過率は40%よりも高く、透明性が高い。以上を鑑みて、厚さ52nm、Al組成68%のAlGaN層の透過率は60%以上が好ましい。
【0107】
図15から、発光波長275nmにおいてMgドープAlGaNの透過率は60%であった。発光波長よりも高いバンドエネルギーを持つAlGaN層では実際の発光素子の膜厚より厚くても十分な透過率を有する。発光素子1からの光取り出し効率向上の点から、発光波長における電子ブロック層13の透過率は60%以上が好ましいと考えられるが、図15の結果からそれを満たすことが確認できた。
【0108】
図16は組成傾斜層14(厚さ107nm)についてのグラフである。組成傾斜層14はAl組成が78%から75%まで減少するノンドープAlGaNである第1組成傾斜層14Aと、Al組成が75%から73%まで減少するMgドープAlGaNである第2組成傾斜層14Bである。
【0109】
図16から、発光波長275nmにおいて組成傾斜層14の透過率は60%であった。発光素子1からの光取り出し効率向上の点から、発光波長における組成傾斜層14の透過率は50%以上が好ましいと考えられるが、図16の結果からそれを満たすことが確認できた。
【0110】
図17はp側電極16についてのグラフである。p側電極16はNi/Auであり、Niの厚さを10nm、Auの厚さを50nmとした。また、Ni側から垂直入射させて評価した。図17から、発光波長275nmにおいて反射率は30%以上であった。発光素子1からの光取り出し効率向上の点から、発光波長におけるp側電極16の反射率は30%以上が好ましいと考えられるが、図17の結果からそれを満たすことが確認できた。
【0111】
(変形形態)
実施形態では、封止部2は発光素子1の上面のみを覆っているが、図18に示すように、発光素子1の上面に加えて側面を覆うようにしてもよい。発光素子1の側面に封止部2を設けることで、発光素子1の側面からの光取り出し効率を向上させることができる。側面から取り出した紫外光は、たとえば反射材で軸上方向に反射させることで活用を図ることができる。封止部2の材料が液体であって粘性が低い材料である場合、発光素子1の周囲に隔壁を設け、その隔壁で囲まれた領域に封止部2を充填するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1:発光素子
2:封止部
3:レンズ
4:実装基板
10:基板
11:n型層
12:活性層
13:電子ブロック層
13A:第1電子ブロック層
13B:第2電子ブロック層
14:組成傾斜層
14A:第1組成傾斜層
14B:第2組成傾斜層
15:p型コンタクト層
16:p側電極
17:n側電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18