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  • 特開-摩擦攪拌接合工具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000180
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合工具
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
B23K20/12 344
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098793
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】相原 正美
(72)【発明者】
【氏名】杉山 晴仁
(72)【発明者】
【氏名】宮本 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】樋口 庸介
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正彦
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BG06
4E167BG14
(57)【要約】
【課題】ワーク表面から剥離した表皮材料の混入を防止できる摩擦攪拌接合工具を提供する。
【解決手段】摩擦攪拌接合工具1は、回転軸線Aに沿って延びる棒状の工具本体10と、工具本体10の加工側端面の中心部から突起する攪拌ピン11と、攪拌ピン11より外側の加工側端面に形成されたショルダー部12と、を有し、所定の加工方向Rに回転駆動されて一対のワーク3の接合部分の摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌接合工具であって、ショルダー部12の外周に沿って形成された渦巻状の排出用線条部121を有し、排出用線条部121の渦巻状は、工具本体10が加工方向Rに回転した際に内側から外側に拡がる渦巻状とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線に沿って延びる棒状の工具本体と、前記工具本体の加工側端面の中心部から突起する攪拌ピンと、前記攪拌ピンより外側の前記加工側端面に形成されたショルダー部と、を有し、所定の加工方向に回転駆動されて一対のワークの接合部分の摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌接合工具であって、
前記ショルダー部の外周に沿って形成された渦巻状の排出用線条部を有し、
前記排出用線条部の渦巻状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に内側から外側に拡がる渦巻状とされている摩擦攪拌接合工具。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦攪拌接合工具において、
前記ショルダー部の前記排出用線条部と前記攪拌ピンとの間の領域に形成された渦巻状の攪拌用線条部を有し、
前記攪拌用線条部の渦巻状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に外側から内側に向かう渦巻状とされている摩擦攪拌接合工具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の摩擦攪拌接合工具において、
前記工具本体の側面には螺旋状の外周線条部が形成され、前記ショルダー部に臨む前記外周線条部の端部により前記ワークの表皮を剥離させる切り刃部が形成され、
前記外周線条部の螺旋状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に前記ショルダー部から離れる向きの螺旋状とされている摩擦攪拌接合工具。
【請求項4】
請求項1または請求項2の摩擦攪拌接合工具において、
前記攪拌ピンの側面には螺旋状のピン線条部が形成され、
前記ピン線条部の螺旋状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に前記攪拌ピンの先端に近づく向きの螺旋状とされている摩擦攪拌接合工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摩擦攪拌接合工具に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌接合工具を装着した工作機械を用いた摩擦攪拌接合が行われている。
摩擦攪拌接合工具は、棒状の工具本体の先端面に攪拌ピンを有し、工具本体の先端面の攪拌ピンより外側の領域はショルダー部とされる。
摩擦攪拌接合工具は、工作機械の主軸に装着され、回転しつつ攪拌ピンを一対のワークの接合部分に圧入され、接合部分に沿って移動される。接合部分においては、攪拌ピンとの間の摩擦熱で一対のワークの材料が軟化して攪拌され、ショルダー部で軟化した材料を押さえつつ、接合部分に沿って一対のワークが互いに接合されてゆく。
【0003】
特許文献1,2の摩擦攪拌接合工具では、攪拌ピンにねじ状の条線が形成されるとともに、ワークの表面部を可塑化するために、工具本体のショルダー部にも螺旋状の攪拌用突条体が形成されている。攪拌用突条体は、加工時の回転に伴って内側に至る螺旋状とされ、加工時に可塑化した材料を内向きつまり攪拌ピンに向けて誘導する効果を有する。
一方、ワーク表面には酸化皮膜などの表皮があり、加工時に剥離された表皮材料が接合部分のワーク材料に混入すると製品の品質低下につながる。そこで、特許文献2の摩擦攪拌接合工具では、工具本体の外周で表皮材料を剥離させている。一方、特許文献1の摩擦攪拌接合工具では、攪拌用突条体の外周の剥離用突条体で表皮材料を剥離し、接合部分への混入を防止している。
【0004】
特許文献3の摩擦攪拌接合工具では、工具本体の外周側面の先端面に沿った部分にバリ取りカッターを形成し、接合したワーク表面に生じるバリつまりワーク材料から突起した部分を削除している。
特許文献4,5の摩擦攪拌接合工具では、接合すべきワークの表面に凹凸がある場合、あるいはワークに予め仮付け用余盛りを行う場合に、これらの凹凸を削除するためのカッターを設けており、このカッターによりバリ取りも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-225778号公報
【特許文献2】特開2010-201441号公報
【特許文献3】特開2000-334578号公報
【特許文献4】特開2001-259866号公報
【特許文献5】特開2003-164976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1,2の摩擦攪拌接合工具によれば、摩擦攪拌接合時にワーク表面の表皮を剥離することができる。また、特許文献3~5の摩擦攪拌接合工具によっても、同様の剥離効果が期待できる。
しかし、ワーク表面から剥離された表皮材料は、微小な破片となってショルダー部とワークとの間に紛れ込み、軟化したワーク材料に混入し、接合されたワークの品質を低下させる可能性がある。とくに、特許文献1,2の摩擦攪拌接合工具では、ショルダー部の攪拌用突条体により、軟化材料とともに混入した皮膜の破片が攪拌ピンに向けて内向きに誘導され、ワーク材料の品質低下を助長してしまう可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、ワーク表面から剥離した表皮材料の混入を防止できる摩擦攪拌接合工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の摩擦攪拌接合工具は、回転軸線に沿って延びる棒状の工具本体と、前記工具本体の加工側端面の中心部から突起する攪拌ピンと、前記攪拌ピンより外側の前記加工側端面に形成されたショルダー部と、を有し、所定の加工方向に回転駆動されて一対のワークの接合部分の摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌接合工具であって、前記ショルダー部の外周に沿って形成された渦巻状の排出用線条部を有し、前記排出用線条部の渦巻状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に内側から外側に拡がる渦巻状とされている。
【0009】
このような本発明では、工具本体を工作機械の主軸に支持し、回転させつつ攪拌ピンをワークの接合部分に没入させて摩擦熱でワーク材料を軟化させることで、ワークの摩擦攪拌接合を行うことができる。
ここで、ワークの接合部分に没入された攪拌ピンの周囲のワーク材料は、攪拌ピンとの摩擦熱で軟化した状態であり、攪拌ピンの周囲のショルダー部によりワーク表面から溢れ出さないように押さえられる。
本発明では、ショルダー部の外周に沿って渦巻状の排出用線条部が形成され、排出用線条部は工具本体が加工方向に回転した際に内側から外側に拡がる渦巻状とされているので、排出用線条部に接する軟化したワーク材料は工具本体の外側へ排出される。
従って、ワークの表面から剥離した表皮材料の破片がショルダー部とワーク材料との間に混入しても、これを排出用線条部により外側へ排出することができる。とくに、排出用線条部はショルダー部の外周に沿って形成されるため、表皮材料の破片のショルダー部への侵入自体を抑止できる。
【0010】
本発明の摩擦攪拌接合工具において、前記ショルダー部の前記排出用線条部と前記攪拌ピンとの間の領域に形成された渦巻状の攪拌用線条部を有し、前記攪拌用線条部の渦巻状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に外側から内側に向かう渦巻状とされていることが好ましい。
【0011】
このような本発明では、ショルダー部において外周に沿った外側領域に排出用線条部が形成され、攪拌ピンに近い内側領域に攪拌用線条部が形成される。攪拌用線条部は、工具本体が加工方向に回転した際に外側から内側に向かう渦巻状とされているので、攪拌用線条部に接する軟化したワーク材料は攪拌ピンがある内側へと導入される。
従って、外側の排出用線条部によってワーク材料に混入した表皮材料が外側へ排出されるとともに、内側の攪拌用線条部によって表皮材料の混入がないワーク材料が攪拌ピンに向けて誘導され、適切な摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0012】
本発明の摩擦攪拌接合工具において、前記工具本体の側面には螺旋状の外周線条部が形成され、前記ショルダー部に臨む前記外周線条部の端部により前記ワークの表皮を剥離させる切り刃部が形成され、前記外周線条部の螺旋状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に前記ショルダー部から離れる向きの螺旋状とされていることが好ましい。
【0013】
このようは本発明では、ショルダー部の外周縁に切り刃部が形成され、ワーク表面の表皮を剥離して除去することができる。剥離された表皮材料の破片は、前述のように排出用線条部によりワーク材料への混入を防止される。また、切り刃部は外周線条部の端部で形成され、外周線条部は、工具本体が加工方向に回転した際にショルダー部から離れる向きの螺旋状とされているため、切り刃部で生じた表皮材料の破片をショルダー部から遠ざけ、ショルダー部に接するワーク材料に混入することを防止できる。
【0014】
本発明の摩擦攪拌接合工具において、前記攪拌ピンの側面には螺旋状のピン線条部が形成され、前記ピン線条部の螺旋状は、前記工具本体が前記加工方向に回転した際に前記攪拌ピンの先端に近づく向きの螺旋状とされていることが好ましい。
【0015】
このような本発明では、攪拌ピンとの摩擦でワーク材料が軟化されて摩擦攪拌接合が行われる。この際、攪拌ピンの側面にはピン線条部が形成され、ピン線条部の螺旋状は、工具本体が加工方向に回転した際に攪拌ピンの先端に近づく向きの螺旋状とされているため、攪拌ピンの周囲にある軟化したワーク材料は順次攪拌ピンの先端側つまりワーク表面から離れた側へと誘導され、ワーク表面からの溢れ出しを抑制しつつ、効率的な摩擦攪拌接合を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワーク表面から剥離した表皮材料の混入を防止できる摩擦攪拌接合工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の摩擦攪拌接合工具の一実施形態を示す側面図。
図2】前記実施形態の摩擦攪拌接合工具を示す底面図。
図3】前記実施形態の摩擦攪拌接合での作用を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、摩擦攪拌接合工具1は、工作機械の主軸2に装着され、所定の加工方向Rに回転駆動されて一対のワーク3の接合部分に沿って移動されることにより、ワーク3の摩擦攪拌接合を行うものである。
摩擦攪拌接合工具1は、回転軸線Aに沿って延びる棒状の工具本体10と、工具本体10の加工側端面の中心部から突起する攪拌ピン11と、攪拌ピン11より外側の加工側端面に形成されたショルダー部12と、を有する。
【0019】
図2において、ショルダー部12には、外周に沿った外側領域に排出用線条部121が形成され、攪拌ピン11に近い内側領域に攪拌用線条部122が形成される。
排出用線条部121と攪拌用線条部122との境界123は、回転軸線Aを中心とした円形である。ショルダー部12の外周縁124は、後述する切り刃部102が形成されるため真円ではなく4つの波形を有する円形となっている。
【0020】
排出用線条部121は、ショルダー部12の境界123と外周縁124との間の領域に突起形成された渦巻状の条線で構成されている。排出用線条部121の渦巻状は、工具本体10が加工方向Rに回転した際に内側から外側に拡がる渦巻状とされている。
攪拌用線条部122は、ショルダー部12の境界123と攪拌ピン11との間の領域に突起形成された渦巻状の条線で構成されている。攪拌用線条部122の渦巻状は、工具本体10が加工方向Rに回転した際に外側から内側に向かう渦巻状とされている。
つまり、排出用線条部121と攪拌用線条部122とでは、各々の渦巻状が互いに逆向きとされている。
【0021】
工具本体10の側面には螺旋状の凹溝からなる外周線条部101が形成されている。外周線条部101のショルダー部12に臨む端部により、切り刃部102が形成されている。外周線条部101の螺旋状は、工具本体10が加工方向Rに回転した際に、ショルダー部12から離れる向きの螺旋状とされている。
攪拌ピン11の側面には螺旋状の突条からなるピン線条部111が形成されている。
ピン線条部111の螺旋状は、工具本体10が加工方向Rに回転した際に攪拌ピン11の先端に近づく向きの螺旋状とされている。
【0022】
このような摩擦攪拌接合工具1を用いて摩擦攪拌接合を行う際、摩擦攪拌接合工具1の各部は以下のように作用する。
摩擦攪拌接合にあたっては、先ず、工作機械の主軸2に工具本体10を固定して摩擦攪拌接合工具1を装着するとともに、工作機械のテーブルに接合すべき一対のワーク3を固定する。次に、主軸2を回転させるとともに、摩擦攪拌接合工具1を移動させて一対のワーク3の接合部分に配置する。そして、摩擦攪拌接合工具1をワーク3に向けて下降させ、攪拌ピン11をワーク3の接合部分に押し当て、摩擦熱でワーク3を軟化させて攪拌ピン11をワーク3に没入させる。
【0023】
図3において、摩擦攪拌接合工具1が所定の加工方向Rで回転した状態で攪拌ピン11がワーク3の接合部分に没入された状態では、攪拌ピン11の周囲に一対のワーク3の材料が軟化した軟化領域30が形成される。軟化領域30では、軟化したワーク3の材料の表面がショルダー部12で押さえられている。
【0024】
ショルダー部12に接する軟化したワーク3の材料のうち、境界123より内側にあるワーク材料32は、攪拌用線条部122により攪拌ピン11へと内向きに誘導される。これは、攪拌用線条部122が、加工方向Rへ回転した際に外側から内側に向かう渦巻状とされていることによる。
攪拌ピン11の周囲に誘導されたワーク材料32は、攪拌ピン11の側面のピン線条部111により下向きに誘導され、ワーク材料33として軟化領域30の表面近傍から底部へと送られる。これは、ピン線条部111が、加工方向Rに回転した際に攪拌ピン11の先端に近づく向きの螺旋状とされていることによる。
【0025】
このようなワーク材料32,33の流れにより、軟化領域30のワーク3の材料の攪拌が促進され、一対のワーク3が軟化領域30で互いに接合された状態となる。
この状態で、工作機械により摩擦攪拌接合工具1を、回転した状態のままワーク3の接合部分に沿って水平移動させることで、一対のワーク3が接合部分において接合されてゆく。
【0026】
摩擦攪拌接合工具1をワーク3の接合部分に沿って水平移動させる際、ワーク3の表面を覆っていた酸化皮膜などの表皮4は、ショルダー部12の外周の切り刃部102により切除される。切除された表皮の破片41は、工具本体10の周囲に飛散する。飛散した破片41の一部は、工具本体10の外周に形成された外周線条部101により、上方へ排出することができる。
【0027】
飛散した破片41の他の一部は、ショルダー部12とワーク3との間に入り込むことがある。
ショルダー部12に接する軟化したワーク3の材料のうち、境界123より外側にあるワーク材料31は、排出用線条部121により外向きに誘導される。これは、攪拌用線条部122が、加工方向Rへ回転した際に内側から外側に向かう渦巻状とされていることによる。
従って、飛散した破片41の他の一部がショルダー部12とワーク3との間に入り込み、ワーク材料31に混入することがあっても、ワーク材料31が軟化領域30の外側へと排出され、ワーク3の接合品質に対する影響が抑制される。
【0028】
このような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態では、工具本体10を工作機械の主軸2に支持し、回転させつつ攪拌ピン11をワーク3の接合部分に没入させて摩擦熱でワーク3の材料を軟化させることで、ワーク3の摩擦攪拌接合を行うことができる。
ここで、ワーク3の接合部分に没入された攪拌ピン11の周囲のワーク3の材料は、攪拌ピン11との摩擦熱で軟化した状態であり、攪拌ピン11の周囲のショルダー部12によりワーク3の表面から溢れ出さないように押さえられる。
本実施形態では、ショルダー部12の外周に沿って渦巻状の排出用線条部121が形成され、排出用線条部121は工具本体10が加工方向Rに回転した際に内側から外側に拡がる渦巻状とされているので、排出用線条部121に接する軟化したワーク材料31は工具本体10の外側へ排出される。
従って、ワーク3の表面から剥離した表皮4の材料の破片41がショルダー部12とワーク3の材料との間に混入しても、これを排出用線条部121により外側へ排出することができる。とくに、排出用線条部121はショルダー部12の外周に沿って形成されるため、表皮材料の破片41のショルダー部12への侵入自体を抑止できる。
【0029】
本実施形態では、ショルダー部12において外周に沿った外側領域に排出用線条部121が形成され、攪拌ピン11に近い内側領域に攪拌用線条部122が形成される。攪拌用線条部122は、工具本体10が加工方向Rに回転した際に外側から内側に向かう渦巻状とされているので、攪拌用線条部122に接する軟化したワーク材料32は攪拌ピン11がある内側へと導入される。
従って、外側の排出用線条部121によってワーク材料31に混入した表皮材料が外側へ排出されるとともに、内側の攪拌用線条部122によって表皮材料の混入がないワーク材料32が攪拌ピン11に向けて誘導され、適切な摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0030】
本実施形態では、ショルダー部12の外周縁に切り刃部102が形成され、ワーク3の表面の表皮4を剥離して除去することができる。剥離された表皮材料の破片41は、前述のように排出用線条部121によりワーク材料31への混入を防止される。また、切り刃部102は外周線条部101の端部で形成され、外周線条部101は、工具本体10が加工方向Rに回転した際にショルダー部12から離れる向きの螺旋状とされているため、切り刃部102で生じた表皮材料の破片41をショルダー部12から遠ざけ、ショルダー部12に接するワーク材料31に混入することを防止できる。
【0031】
本実施形態では、攪拌ピン11との摩擦でワーク3の材料が軟化されて摩擦攪拌接合が行われる。この際、攪拌ピン11の側面にはピン線条部111が形成され、ピン線条部111の螺旋状は、工具本体10が加工方向Rに回転した際に攪拌ピン11の先端に近づく向きの螺旋状とされているため、攪拌ピン11の周囲にある軟化したワーク材料33は順次攪拌ピン11の先端側つまりワーク3の表面から離れた側へと誘導され、ワーク3の表面からの溢れ出しを抑制しつつ、効率的な摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0032】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態において、切り刃部102は、外周線条部101の端部で形成されるものに限らず、例えば工具本体10の端部外周に形成された独立した突起列など、他の構成であってもよい。また、ワーク3の表皮4が工具本体10の外周との接触で除去できる程度であれば、切り刃部102は省略してもよい。
【0033】
前記実施形態において、攪拌ピン11の側面に形成したピン線条部111は省略してもよい。
前記実施形態において、ショルダー部12には、外周に沿った外側領域に排出用線条部121が形成され、攪拌ピン11に近い内側領域に攪拌用線条部122が形成されるとしたが、攪拌用線条部122は省略してもよく、その場合ショルダー部12の内側領域は平坦面などとしてもよく、排出用線条部121を内側領域まで拡張してもよい。
前記実施形態において、ピン線条部111、排出用線条部121、攪拌用線条部122としては、攪拌ピン11の側面あるいはショルダー部12の表面に溝を刻んで突条を形成してもよく、同側面あるいは表面に型転写してもよく、任意の加工方法が利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は摩擦攪拌接合工具として利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1…摩擦攪拌接合工具、10…工具本体、101…外周線条部、102…切り刃部、11…攪拌ピン、111…ピン線条部、12…ショルダー部、121…排出用線条部、122…攪拌用線条部、123…境界、124…外周縁、2…主軸、3…ワーク、30…軟化領域、31…ワーク材料、32…ワーク材料、33…ワーク材料、4…表皮、41…破片、A…回転軸線、R…加工方向。
図1
図2
図3