(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180011
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】運転者特定システムおよび運転者特定方法
(51)【国際特許分類】
B60R 25/25 20130101AFI20241219BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241219BHJP
G06T 7/00 20170101ALN20241219BHJP
【FI】
B60R25/25
G08G1/00 D
G06T7/00 660A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099410
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川勝 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 龍介
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC27
5H181FF25
5L096BA04
5L096CA02
5L096DA03
(57)【要約】
【課題】他人のなりすまし等による無資格運転を防止することができる運転者特定システムおよび運転者特定方法を提供する。
【解決手段】車両または作業用機械12の運転者を特定するためのシステム10であって、前記車両または作業用機械12の運転席14の周辺に設けられ、前記運転席14にいる人物の顔を撮影する撮影手段16と、前記撮影手段16により撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定する判定手段40と、前記判定手段による判定結果に基づいて、運転者を特定する特定手段とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両または作業用機械の運転者を特定するためのシステムであって、
前記車両または作業用機械の運転席の周辺に設けられ、前記運転席にいる人物の顔を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、運転者を特定する特定手段とを備えることを特徴とする運転者特定システム。
【請求項2】
前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の運転者特定システム。
【請求項3】
前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、前記運転席における人物の有無を検知する検知手段と、警報を発する警報手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するように前記警報手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の運転者特定システム。
【請求項4】
車両または作業用機械の運転者を特定するための方法であって、
前記車両または作業用機械の運転席の周辺から、前記運転席にいる人物の顔を撮影するステップと、
撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定するステップと、
この判定結果に基づいて、運転者を特定するステップとを有することを特徴とする運転者特定方法。
【請求項5】
撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御するステップをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の運転者特定方法。
【請求項6】
前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定するステップと、前記運転席における人物の有無を検知するステップと、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するステップとをさらに有することを特徴とする請求項5に記載の運転者特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フォークリフトなどの運転者を特定するのに好適な運転者特定システムおよび運転者特定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトなどの車両を運転する運転者の運転資格の有無を、運転者が所持するICタグ、ICカード、携帯端末などから判定し、車両の無資格運転を防止する技術が知られている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-189424号公報
【特許文献2】特開2009-134550号公報
【特許文献3】特開2015-124514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来の技術では、運転資格を有しない者が、運転資格を有する他人のICタグ、ICカード、携帯端末を使って他人になりすました場合には、無資格運転を防止することは難しい。
【0005】
また、このような者が、施工現場などでの安全ルールを十分に把握しないまま運転を行うと、事故につながるおそれがある。また、トイレ休憩等のタイミングで、運転者が車両にエンジンキーを差し込んだまま車両を離れた場合、車両本体を盗難されるおそれがある。フォークリフトのような運搬車両の場合には、車両を利用して場内の資機材を盗難されるおそれがある。また、エンジンをアイドリング運転状態にしたまま車両から降りた場合、逸走や無資格者が無断で運転してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、他人のなりすまし等による無資格運転を防止することができる運転者特定システムおよび運転者特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る運転者特定システムは、車両または作業用機械の運転者を特定するためのシステムであって、前記車両または作業用機械の運転席の周辺に設けられ、前記運転席にいる人物の顔を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、運転者を特定する特定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の運転者特定システムは、上述した発明において、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の運転者特定システムは、上述した発明において、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、前記運転席における人物の有無を検知する検知手段と、警報を発する警報手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するように前記警報手段を制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る運転者特定方法は、車両または作業用機械の運転者を特定するための方法であって、前記車両または作業用機械の運転席の周辺から、前記運転席にいる人物の顔を撮影するステップと、撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定するステップと、この判定結果に基づいて、運転者を特定するステップとを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の運転者特定方法は、上述した発明において、撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御するステップをさらに有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の運転者特定方法は、上述した発明において、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定するステップと、前記運転席における人物の有無を検知するステップと、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するステップとをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る運転者特定システムによれば、車両または作業用機械の運転者を特定するためのシステムであって、前記車両または作業用機械の運転席の周辺に設けられ、前記運転席にいる人物の顔を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、運転者を特定する特定手段とを備えるので、顔画像に基づいて運転席にいる人物を特定することができる。このため、他人のなりすまし等による無資格運転を防止することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の運転者特定システムによれば、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御する制御手段をさらに備えるので、無資格者などの未登録者の運転を防止することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の運転者特定システムによれば、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、前記運転席における人物の有無を検知する検知手段と、警報を発する警報手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するように前記警報手段を制御するので、例えば、エンジンを付けたままでの離席をスピーカーなどの警報手段で運転者などに報知することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る運転者特定方法によれば、車両または作業用機械の運転者を特定するための方法であって、前記車両または作業用機械の運転席の周辺から、前記運転席にいる人物の顔を撮影するステップと、撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定するステップと、この判定結果に基づいて、運転者を特定するステップとを有するので、顔画像に基づいて運転席にいる人物を特定することができる。このため、他人のなりすまし等による無資格運転を防止することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の運転者特定方法によれば、撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御するステップをさらに有するので、無資格者などの未登録者の運転を防止することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の運転者特定方法によれば、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定するステップと、前記運転席における人物の有無を検知するステップと、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するステップとをさらに有するので、例えば、エンジンを付けたままでの離席をスピーカーなどの警報手段で運転者などに報知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係る運転者特定システムの実施の形態を示す図であり、(1)は適用されるフォークリフトの概略図、(2)は本実施の形態の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る運転者特定方法の実施の形態を示す概略フロー図である。
【
図3】
図3は、登録者が搭乗した場合の概略フロー図である。
【
図4】
図4は、未登録者が搭乗した場合の概略フロー図である。
【
図5】
図5は、着座スイッチによる警報動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る運転者特定システムおよび運転者特定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る運転者特定システム10は、フォークリフト12の運転席14の前側周辺に設けられた顔認証用カメラ16および制御装置18と、運転席14の座面に設けられた着座センサ20と、フォークリフト12の後部に設けられた警報機22とを備える。
【0022】
フォークリフト12は、本発明の車両または作業用機械に相当するものである。このフォークリフト12は、イグニッションスイッチ24と、駆動源であるエンジン26と、エンジン26を起動させるセルモータ28と、セルモータ28に電力を供給するバッテリ30と、エンジン26の稼働状態を検知する状態センサ32と、フォークリフト12の動作を制御する車両コントローラ34とを備える。
【0023】
イグニッションスイッチ24は、運転席14の前側周辺に設けられたキーシリンダ36と、キーシリンダ36の鍵穴に差し込んで各切換位置へ回動可能なエンジンキー38により構成される。キーシリンダ36は、周方向に間隔をあけて順に配置されたOFF(オフ)、ACC(アクセサリ電源)、ON(オン)の各切換位置を有している。エンジンキー38は、OFF位置に対して挿入され、OFF位置以外ではキーシリンダ36から抜けないようになっている。各切換位置の変更は、キーシリンダ36に挿入したエンジンキー38を、運転者が回動操作することによって行われる。イグニッションスイッチ24は、車両コントローラ34に接続しており、イグニッションスイッチ24の操作位置は車両コントローラ34によって検出される。
【0024】
車両コントローラ34は、イグニッションスイッチ24の操作位置に基づいて、エンジン26の始動および停止、アクセサリ電源のオンおよびオフなどを制御する。エンジン26を始動する場合は、エンジンキー38をOFF位置から、ACC位置、ON位置へと順次切り替える。ON位置では、バッテリ30によりセルモータ28が駆動して、エンジン26が始動する。また、エンジン26を停止する場合は、エンジンキー38をON位置から、ACC位置、OFF位置へと順次切り替える。エンジン26停止中にエンジンキー38をOFF位置からACC位置またはON位置に切り替えると、フォークリフト12に搭載された顔認証用カメラ16、着座センサ20、警報機22、制御装置18を含む車載電子機器にバッテリ30から電力が供給され、各機器が起動可能な状態になる。なお、顔認証用カメラ16、着座センサ20、警報機22、制御装置18については、常時またはエンジンキー38の挿入時にバッテリ30から電力供給を受けるように構成してもよい。また、それぞれ専用のバッテリを備えるようにして、各バッテリから電力供給を受けるようにしてもよい。
【0025】
顔認証用カメラ16は、運転席14にいる人物の顔を撮影する撮影手段であり、例えば、デジタルカメラで構成することができる。人が運転席14に座るとともに、エンジンキー38をOFF位置からACC位置に回すと、顔認証用カメラ16によりその人の顔が検出され、撮影が行われるようになっている。撮影された顔画像は、制御装置18に出力される。なお、顔認証用カメラ16は、エンジンキー38をキーシリンダ36に挿入した時や、OFF位置からACC位置に回した際に起動してもよいし、常時電源が入った状態でもよい。
【0026】
着座センサ20は、運転席14における人物の有無を検知する検知手段であり、例えば、人が座席に着座したことを検出可能な圧力センサで構成することができる。人が運転席14に座るとともに、エンジンキー38をOFF位置からACC位置に回すと、着座センサ20により人の着座が検知されるようになっている。また、エンジンキー38がON位置にある場合や、ON位置からACC位置に戻した場合にも、着座センサ20により人の着座が検知される。着座センサ20による検知信号は、制御装置18に出力される。なお、着座センサ20は、エンジンキー38をキーシリンダ36に挿入した時や、ACC位置またはON位置にある場合に起動してもよいし、常時電源が入った状態でもよい。
【0027】
警報機22は、警報を発する警報手段である。警報機22は、例えば、アラームや音声にて警報を出力するスピーカーなどで構成することができる。なお、本発明の警報手段はこれに限るものではなく、フォークリフト12の外部に向けて光などの警報情報を発信するものであってもよい。なお、警報機22は、エンジンキー38をキーシリンダ36に挿入した時や、ACC位置またはON位置にある場合に起動してもよいし、常時電源が入った状態でもよい。
【0028】
制御装置18は、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータであり、顔認証部40と、記憶部42と、制御部44とを有する。制御装置18には、顔認証用カメラ16、着座センサ20、警報機22、車両コントローラ34が接続している。なお、制御装置18は、エンジンキー38をキーシリンダ36に挿入した時や、ACC位置またはON位置にある場合に起動してもよいし、常時電源が入った状態でもよい。
【0029】
顔認証部40は、顔認証用カメラ16により撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定する判定手段、および、この判定手段による判定結果に基づいて、運転者を特定する特定手段として機能する。具体的には、顔認証部40は、制御部44からの指令により、顔認証用カメラ16から入力される人の顔画像が記憶部42に記憶されている登録顔画像と一致するか否かを判定し、この判定結果に基づいて、その人が登録者であるか否かの認証を行う。この認証には、例えば、顔画像から顔の特徴を検出し、予め登録されている顔情報と照合する方法や、人工知能技術のディープラーニングによる方法を用いてもよい。顔認証部40は、顔認証用カメラ16から取得した撮影画像や、認証状況および認証結果を表示する表示モニタ40Aを備えてもよい。
【0030】
また、顔認証部40は、上記の認証の結果、登録者であると認証された場合には、運転席にいる者が登録者であるとして運転者を特定する。一方、登録者ではないと認証された場合には、運転席14にいる者が未登録者であるとして運転者を特定する。ここで、登録者とは、例えば、フォークリフト12の運転免許を有する者や、その作業現場での運転資格を有する者(有資格者)である。未登録者とは、例えば、フォークリフト12の運転免許を有しない者や、その作業現場での運転資格を有しない者(無資格者)である。
【0031】
記憶部42は、フォークリフト12の運転資格を有する登録者の顔画像を予め登録顔画像として記憶または登録するものである。
【0032】
制御部44は、本システム10の制御を統括する制御手段である。制御部44には、顔認証部40と、記憶部42とがそれぞれ接続されている。制御部44は、顔認証部40による認証結果に基づいて、エンジンキー38によるフォークリフト12の動作を車両コントローラ34を介して制御する。具体的には、撮影された人が登録者であると認証された場合には、制御部44は、エンジンキー38の回動操作を全て有効とし、フォークリフト12を運転可能な状態に制御する。この場合、例えば、エンジンキー38の回動操作を全て有効とする制御信号を、車両コントローラ34に入力する。エンジンキー38をOFF位置またはACC位置からON位置へ回動操作すれば、セルモータ28によりエンジン26が始動する。
【0033】
一方、撮影された人が登録者ではないと認証された場合には、制御部44は、エンジンキー38をOFF位置またはACC位置からON位置へ回動する操作を無効とし、フォークリフト12を運転不能な状態に制御する。例えば、撮影された人が登録者ではないと認証された場合に、ON位置に対応する車両動作(エンジン駆動)を行わないようにする制御信号を車両コントローラ34に入力する。これにより、エンジンキー38をOFF位置またはACC位置からON位置へ回動操作しても、例えば、バッテリ30からセルモータ28へ電力が供給されないので、エンジン26は始動しない。
【0034】
また、この制御部44は、フォークリフト12が運転可能な状態にあるか否かを判定する状態判定手段としても機能する。具体的には、制御部44は、車両コントローラ34を介して入力されるイグニッションスイッチ24の操作位置や、状態センサ32の検知信号に基づいて、エンジン26の稼働状態を判定する。同時に、着座センサ20から入力される検知信号に基づいて、運転席14における人の有無を判定する。この結果、エンジンキー38がACC位置またはON位置にある場合には、エンジン26が稼働状態でフォークリフト12が運転可能な状態と判定される。そして、フォークリフト12が運転可能な状態と判定され、かつ、運転席14に人がいないと判定された場合には、警報を発するように警報機22を制御する。このようにすれば、エンジン26を付けたままでの離席を、運転者や外部の者に報知することができる。
【0035】
上記構成の動作および作用について説明する。
(登録者が乗った場合)
図2および
図3に示すように、まず、運転席14に人が搭乗し、エンジンキー38をOFF位置からACC位置に回すと(ステップS1)、顔認識用カメラ16で人の顔が撮影され(ステップS2)、顔画像が制御装置18の顔認識部40に入力される。顔認識部40は、入力された顔画像が記憶部42に予め記憶された登録顔画像と一致するか否かを判定する(ステップS3)。この結果、一致すると判定された場合には(ステップS3でYes)、運転席14にいる人は、登録者であると特定されることになる(ステップS4)。これを受けて、制御部44は、エンジンキー38の回動操作を全て有効とし、フォークリフト12を運転可能な状態に制御する(ステップS5)。このため、登録者がエンジンキー38をACC位置からON位置に回すと、セルモータ28が駆動してエンジン26が始動する。これにより、フォークリフト12を運転可能にすることができる。
【0036】
(未登録者が乗った場合)
図2および
図4に示すように、まず、運転席14に人が搭乗し、エンジンキー38をOFF位置からACC位置に回すと(ステップS1)、顔認識用カメラ16で人の顔が撮影され(ステップS2)、顔画像が制御装置18の顔認識部40に入力される。顔認識部40は、入力された顔画像が記憶部42に予め記憶された登録顔画像と一致するか否かを判定する(ステップS3)。この結果、一致しないと判定された場合には(ステップS3でNo)、運転席14にいる人は、未登録者であると特定されることになる(ステップS6)。これを受けて、制御部44は、エンジンキー38をACC位置からON位置へ回転してセルモータ28を駆動する操作を無効とし、フォークリフト12を運転不能な状態に制御する(ステップS7)。このため、未登録者がエンジンキー38をACC位置からON位置に回しても、セルモータ28は駆動せず、エンジン26は始動しない。これにより、フォークリフト12を運転できないようにすることができる。したがって、運転資格を有しない無資格者によるフォークリフト12の運転を防止することができる。
【0037】
本実施の形態によれば、顔画像に基づいて運転席にいる人物を判定することから、有資格者(他人)のなりすましを防止することができる。また、作業現場での安全教育を修了した人だけが、フォークリフトを運転可能とすることができる。また、既存のフォークリフトへ簡単に後付け可能である。このため、フォークリフトの運用管理が安価かつ簡便に行える。さらに、フォークリフトの運転事故、フォークリフトや資機材の盗難防止を図ることができる。
【0038】
(警報機の動作)
次に、警報機の動作について説明する。
図5(1)に示すように、エンジンキー38がACC位置またはON位置にあり、運転席14に人がいる場合には、制御装置18の制御により、警報機22から警報は発せられない。
【0039】
図5(2)に示すように、エンジンキー38がOFF位置にあり、運転席14に人がいない場合には、制御装置18の制御により、警報機22から警報は発せられない。
【0040】
図5(3)に示すように、エンジンキー38がACC位置またはON位置にあり、運転席14に人がいない場合には、制御装置18の制御により、警報機22から警報が発せられる。このようにすれば、エンジン26を付けたままでの離席を、運転者や外部の者に報知することができる。
【0041】
なお、上記の実施の形態においては、フォークリフトに適用する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、一般的な車両や、重機などの作業用機械であってもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明に係る運転者特定システムによれば、車両または作業用機械の運転者を特定するためのシステムであって、前記車両または作業用機械の運転席の周辺に設けられ、前記運転席にいる人物の顔を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、運転者を特定する特定手段とを備えるので、顔画像に基づいて運転席にいる人物を特定することができる。このため、他人のなりすましを防止することができる。
【0043】
また、本発明に係る他の運転者特定システムによれば、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御する制御手段をさらに備えるので、無資格者などの未登録者の運転を防止することができる。
【0044】
また、本発明に係る他の運転者特定システムによれば、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定する状態判定手段と、前記運転席における人物の有無を検知する検知手段と、警報を発する警報手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するように前記警報手段を制御するので、例えば、エンジンを付けたままでの離席をスピーカーなどの警報手段で運転者などに報知することができる。
【0045】
また、本発明に係る運転者特定方法によれば、車両または作業用機械の運転者を特定するための方法であって、前記車両または作業用機械の運転席の周辺から、前記運転席にいる人物の顔を撮影するステップと、撮影された人物の顔画像に基づいて、その人物が予め登録された登録者であるか否かを判定するステップと、この判定結果に基づいて、運転者を特定するステップとを有するので、顔画像に基づいて運転席にいる人物を特定することができる。このため、他人のなりすましを防止することができる。
【0046】
また、本発明に係る他の運転者特定方法によれば、撮影された人物が前記登録者であると判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転可能な状態に制御する一方、前記撮影手段により撮影された人物が前記登録者ではないと判定された場合に、前記車両または作業用機械を運転不能な状態に制御するステップをさらに有するので、無資格者などの未登録者の運転を防止することができる。
【0047】
また、本発明に係る他の運転者特定方法によれば、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあるか否かを判定するステップと、前記運転席における人物の有無を検知するステップと、前記車両または作業用機械が運転可能な状態にあると判定され、かつ、前記運転席における人物の無しが検知された場合に、警報を発するステップとをさらに有するので、例えば、エンジンを付けたままでの離席をスピーカーなどの警報手段で運転者などに報知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明に係る運転者特定システムおよび運転者特定方法は、フォークリフトなどの車両や作業用機械に有用であり、特に、他人のなりすまし等による無資格運転を防止するのに適している。
【符号の説明】
【0049】
10 運転者特定システム
12 フォークリフト(車両または作業用機械)
14 運転席
16 顔認証用カメラ(撮影手段)
18 制御装置(制御手段)
20 着座センサ(検知手段)
22 警報機(警報手段)
24 イグニッションスイッチ
26 エンジン
28 セルモータ
30 バッテリ
32 状態センサ
34 車両コントローラ
36 キーシリンダ
38 エンジンキー
40 顔認証部(判定手段、特定手段)
42 記憶部
44 制御部(制御手段、状態判定手段)