IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図1
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図2
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図3
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図4
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図5
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図6
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図7
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図8
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図9
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図10
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図11
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図12
  • 特開-熱拡散デバイス及び電子機器 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180019
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】熱拡散デバイス及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20241219BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20241219BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/04 H
F28D15/04 C
F28D15/02 L
H05K7/20 Q
H01L23/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099424
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】沼本 竜宏
(72)【発明者】
【氏名】大櫃 利克
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322DB06
5E322DB08
5E322FA01
5F136CC14
5F136CC35
5F136FA03
5F136GA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱輸送量の大きい熱拡散デバイスを提供する。
【解決手段】熱拡散デバイス1は、厚さ方向Zに対向する第1内面11a、第2内面12a、筐体10、作動媒体40、第1ウィック20及び第2ウィック30と、を備え、第1ウィック20、第2ウィック30は、前記厚さ方向Zに貫通する第1貫通孔、第2貫通孔を含み、第1貫通孔の平均孔径は、第2貫通孔の平均孔径より小さく、前記厚さ方向Zから見た第1ウィック20の平面形状の面積は、第2ウィック30の平面形状の面積より小さく、第1ウィック20は、第2内面側で第2ウィック30に重なっており、第1ウィック20の平面形状の縁端領域20aにおける、第2内面に最も近い第1ウィック20の部分と、第1内面との距離が、縁端領域以外の領域における、第2内面に最も近い第1ウィック20の部分と、第1内面との距離より小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に対向する第1内面及び第2内面を有し、かつ、内部空間が設けられた筐体と、
前記筐体の前記内部空間に封入された作動媒体と、
前記筐体の前記内部空間に配置された第1ウィック及び第2ウィックと、を備え、
前記第1ウィックは、前記厚さ方向に貫通する第1貫通孔を含み、
前記第2ウィックは、前記厚さ方向に貫通する第2貫通孔を含み、
前記第1貫通孔の平均孔径は、前記第2貫通孔の平均孔径より小さく、
前記厚さ方向から見た前記第1ウィックの平面形状の面積は、前記第2ウィックの平面形状の面積より小さく、
前記第1ウィックは、前記第2内面側で前記厚さ方向に前記第2ウィックに重なっており、
前記第1ウィックの前記平面形状の縁端領域における、前記厚さ方向で前記第2内面に最も近い前記第1ウィックの部分と、前記第1内面との距離が、前記縁端領域以外の領域における、前記厚さ方向で前記第2内面に最も近い前記第1ウィックの部分と、前記第1内面との距離より小さい、熱拡散デバイス。
【請求項2】
前記縁端領域における前記第1ウィックの厚さが、前記縁端領域以外の領域における前記第1ウィックの厚さより小さい、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項3】
前記縁端領域における前記第1ウィックと前記第2ウィックとの隙間は、前記縁端領域以外の領域における前記第1ウィックと前記第2ウィックとの隙間に比べて小さい、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項4】
前記第1貫通孔の孔径が前記第2内面に向かって小さくなる、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項5】
前記第1貫通孔の周縁には、前記第1内面に近接する方向に突出する第1凸部、前記第2内面に近接する方向に突出する第2凸部、又はその両方が設けられている、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項6】
前記第2貫通孔の孔径が前記第2内面に向かって小さくなる、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項7】
前記第2ウィックが金属メッシュで構成されている、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項8】
前記筐体が、前記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、前記厚さ方向から見て、前記第1ウィックが前記蒸発部の少なくとも一部に重なるように配置されている、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項9】
前記筐体が、複数の前記蒸発部を有し、前記第1ウィックが複数備えられている、請求項8に記載の熱拡散デバイス。
【請求項10】
前記第1ウィックと前記第2内面との距離は、前記第2ウィックと前記第1内面との距離よりも大きい、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の熱拡散デバイスを備える、電子機器。
【請求項12】
電子部品を更に備え、
前記電子部品は、前記第1内面側の筐体の外側面に配置されている、請求項11に記載の電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱拡散デバイス及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、素子の高集積化及び高性能化による発熱量が増加している。また、製品の小型化が進むことで、発熱密度が増加するため、放熱対策が重要となっている。この状況はスマートフォン及びタブレット等のモバイル端末の分野において特に顕著である。熱対策部材としては、グラファイトシート等が用いられることが多いが、その熱輸送量は充分ではないため、様々な熱対策部材の使用が検討されている。中でも、非常に効果的に熱を拡散させることが可能である熱拡散デバイスとして、面状のヒートパイプであるベーパーチャンバーの使用の検討が進んでいる。
【0003】
ベーパーチャンバーは、筐体の内部に、作動媒体(作動流体ともいう)と、多孔質体から構成され、毛細管力によって作動媒体を輸送するウィックとが封入された構造を有する。上記作動媒体は、電子部品等の発熱素子からの熱を吸収する蒸発部において発熱素子からの熱を吸収してベーパーチャンバー内で蒸発した後、ベーパーチャンバー内を移動し、冷却されて液相に戻る。液相に戻った作動媒体は、ウィックの毛細管力によって再び発熱素子側の蒸発部に移動し、発熱素子を冷却する。これを繰り返すことにより、ベーパーチャンバーは外部動力を有することなく自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱及び凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。
【0004】
特許文献1には、ウィック構造体が、受熱部から放熱部まで延在した、線状部材を用いた第1ウィック部材を有する第1ウィック部と、上記受熱部に設けられた、線状部材を用いた第2ウィック部材を有する第2ウィック部と、を有し、上記第2ウィック部材の線状部材が、上記第1ウィック部材の線状部材よりも平均直径が小さい、又は、上記第2ウィック部材が、上記第1ウィック部材よりも目開き寸法が小さいベーパーチャンバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/230385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のベーパーチャンバーでは、第1ウィック部材に加えて、受熱部により高い毛細管力を有する第2ウィック部材を配置している。しかしながら、第2ウィック部材と第1ウィック部材の界面が制御されていない場合、第1ウィック部材と第2ウィック部材の隙間で作動媒体のリークが起こり、第2ウィック部材による高い毛細管力を発揮しにくくなる。その結果、最大熱輸送量(Qmax)が期待される程度に発現しないという問題がある。
【0007】
なお、上記の問題は、ベーパーチャンバーに限らず、ベーパーチャンバーと同様の構成によって熱を拡散させることが可能な熱拡散デバイスに共通する問題である。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、熱輸送量の大きい熱拡散デバイスを提供することを目的とする。更に、本発明は、上記熱拡散デバイスを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱拡散デバイスは、厚さ方向に対向する第1内面及び第2内面を有し、かつ、内部空間が設けられた筐体と、上記筐体の上記内部空間に封入された作動媒体と、上記筐体の上記内部空間に配置された第1ウィック及び第2ウィックと、を備え、上記第1ウィックは、上記厚さ方向に貫通する第1貫通孔を含み、上記第2ウィックは、上記厚さ方向に貫通する第2貫通孔を含み、上記第1貫通孔の平均孔径は、上記第2貫通孔の平均孔径より小さく、上記厚さ方向から見た上記第1ウィックの平面形状の面積は、上記第2ウィックの平面形状の面積より小さく、上記第1ウィックは、上記第2内面側で上記厚さ方向に上記第2ウィックに重なっており、上記第1ウィックの上記平面形状の縁端領域における、上記厚さ方向で上記第2内面に最も近い上記第1ウィックの部分と、上記第1内面との距離が、上記縁端領域以外の領域における、上記厚さ方向で上記第2内面に最も近い上記第1ウィックの部分と、上記第1内面との距離より小さい。
【0010】
本発明の電子機器は、本発明の熱拡散デバイスを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱輸送量の大きい熱拡散デバイスを提供することができる。更に、本発明によれば、上記熱拡散デバイスを備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の熱拡散デバイスの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す熱拡散デバイスの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。
図3図3は、図2に示す熱拡散デバイスのA-A線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、第1ウィックの縁端領域における第1ウィックと第2ウィックとの隙間が空いている状態を示す断面図である。
図6図6は、図5の縁端領域における第1ウィックと第2ウィックとの隙間が閉じた状態を示す断面図である。
図7図7は、図4の熱拡散デバイスの変形例を示す断面図である。
図8図8は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、図9に示す第1ウィックの一例を模式的に示す平面図である。
図11図11は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
図12図12は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
図13図13は、複数の蒸発部及び複数の第1ウィックを有する熱拡散デバイスの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の熱拡散デバイスについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0015】
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明の熱拡散デバイス」という。
【0016】
以下では、本発明の熱拡散デバイスの一実施形態として、ベーパーチャンバーを例にとって説明する。本発明の熱拡散デバイスは、ヒートパイプ等の熱拡散デバイスにも適用可能である。
【0017】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0018】
本明細書において、要素間の関係性を示す用語(例えば「垂直」、「平行」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。また、本明細書において、「同等」又は「一定」とは、完全に同等又は一定である場合のみを意味する表現ではなく、実質的に同等又は一定である場合、例えば、数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0019】
本発明の熱拡散デバイスは、厚さ方向に対向する第1内面及び第2内面を有し、かつ、内部空間が設けられた筐体と、上記筐体の上記内部空間に封入された作動媒体と、上記筐体の上記内部空間に配置された第1ウィック及び第2ウィックと、を備える。
【0020】
本発明の熱拡散デバイスの第1実施形態であるベーパーチャンバー1について、図1図2及び図3を参照して以下に説明する。
図1は、本発明の熱拡散デバイスの一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す熱拡散デバイスの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。図3は、図2に示す熱拡散デバイスのA-A線に沿った断面図である。
【0021】
図1に示すベーパーチャンバー(熱拡散デバイス)1は、気密状態に密閉された中空の筐体10を備える。筐体10は、図2に示すように、封入した作動媒体40(図3参照)を蒸発させる蒸発部(evaporation portion)EPを有している。図1に示すように、筐体10の外壁面には、発熱素子である熱源(heat source)HSが配置される。熱源HSとしては、電子機器の電子部品、例えば中央処理装置(CPU)等が挙げられる。筐体10の内部空間のうち、熱源HSの近傍であって熱源HSによって加熱される部分が、蒸発部EPに相当する。
【0022】
筐体10は、例えば、図3に示すように、厚さ方向Zに対向する第1内面11a及び第2内面12aを有する。その場合、筐体10は、外縁部が接合された対向する第1シート11及び第2シート12から構成されることが好ましい。
【0023】
ベーパーチャンバー1は、全体として面状であることが好ましい。すなわち、筐体10は、全体として面状であることが好ましい。ここで、「面状」とは、板状及びシート状を包含し、幅方向Xの寸法(以下、幅という)及び長さ方向Yの寸法(以下、長さという)が厚さ方向Zの寸法(以下、厚さ又は高さという)に対して相当に大きい形状、例えば幅及び長さが、厚さの10倍以上、好ましくは100倍以上である形状を意味する。
【0024】
ベーパーチャンバー1の大きさ、すなわち、筐体10の大きさは、特に限定されない。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、用途に応じて適宜設定することができる。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、各々、例えば、5mm以上500mm以下、20mm以上300mm以下又は50mm以上200mm以下である。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
筐体10が第1シート11及び第2シート12から構成される場合、第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、ベーパーチャンバー等の熱拡散デバイスとして用いるのに適した特性、例えば熱伝導性、強度、柔軟性、可撓性等を有するものであれば、特に限定されない。第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、好ましくは金属であり、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、又はそれらを主成分とする合金等であり、特に好ましくは銅である。第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、好ましくは同じである。
【0026】
筐体10が第1シート11及び第2シート12から構成される場合、第1シート11及び第2シート12は、これらの外縁部において互いに接合される。係る接合の方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー溶接、抵抗溶接、拡散接合、ロウ接、TIG溶接(タングステン-不活性ガス溶接)、超音波接合又は樹脂封止を用いることができ、好ましくはレーザー溶接、抵抗溶接又はロウ接を用いることができる。
【0027】
第1シート11及び第2シート12の厚さは、特に限定されないが、各々、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは30μm以上100μm以下、更に好ましくは40μm以上60μm以下である。第1シート11及び第2シート12の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1シート11及び第2シート12の各シートの厚さは、全体にわたって同じであってもよく、一部が薄くてもよい。
【0028】
第1シート11及び第2シート12の形状は、特に限定されない。例えば、第1シート11及び第2シート12は、各々、外縁部が外縁部以外の部分よりも厚い形状であってもよい。
【0029】
ベーパーチャンバー1全体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは50μm以上500μm以下である。
【0030】
厚さ方向Zから見た筐体10の平面形状は特に限定されず、例えば、三角形又は矩形等の多角形、円形、楕円形、これらを組み合わせた形状等が挙げられる。また、筐体10の平面形状は、L字型、C字型(コの字型)、階段型等であってもよい。また、筐体10は貫通口を有してもよい。筐体10の平面形状は、ベーパーチャンバー等の熱拡散デバイスの用途、熱拡散デバイスの組み入れ箇所の形状、近傍に存在する他の部品に応じた形状であってもよい。
【0031】
図3に示すように、ベーパーチャンバー1においては、筐体10の内部空間に作動媒体40が封入されている。
【0032】
作動媒体40は、筐体10内の環境下において気-液の相変化を生じ得るものであれば特に限定されず、例えば、水、アルコール類、代替フロン等を用いることができる。例えば、作動媒体は水性化合物であり、好ましくは水である。
【0033】
筐体10の内部空間には、第1ウィック20及び第2ウィック30が配置されている。第1ウィック20及び第2ウィック30は、毛細管力により作動媒体40を移動させることができる毛細管構造を有する。第1ウィック20及び第2ウィック30は、シート状である。
【0034】
第1ウィック20の平面形状は、例えば、図2に示すように、四角形である。第1ウィック20の平面形状は四角形に限定されず、例えば、三角形、多角形、円形等であってもよい。
【0035】
第2ウィック30の大きさ及び形状は特に限定されないが、例えば、筐体10の内部空間において連続して第2ウィック30が配置されていることが好ましい。
【0036】
厚さ方向から見た第1ウィック20の平面形状の面積は、第2ウィック30の平面形状の面積より小さい。例えば、第1ウィック20の平面形状の面積は、第2ウィック30の平面形状の面積の50面積%以下であり、30面積%以下であってもよい。例えば、第1ウィック20の平面形状の面積は、第2ウィック30の平面形状の面積の5面積%以上である。厚さ方向から見て、第1ウィック20は、蒸発部EPの中央部に配置されている。厚さ方向から見て、第1ウィック20は、蒸発部EPの少なくとも一部に重なるように配置されていることが好ましい。
【0037】
図3に示すように、第1ウィック20は、第2内面12a側で厚さ方向に第2ウィック30に重なっている。
【0038】
第1ウィック20と第2内面12aとの距離は、第2ウィック30と第1内面11aとの距離よりも大きいことが好ましい。気体の作動媒体40が第1ウィック20と第2内面12aとの間の空間を移動するため、第1ウィック20と第2内面12aとの距離が大きいと、気体の作動媒体40の移動効率がよい。
【0039】
ベーパーチャンバー1は、図2及び図3に示す第1ウィック20の平面形状の縁端領域20aにおける、厚さ方向で第2内面12aに最も近い第1ウィック20の部分と、第1内面11aとの距離が、縁端領域20a以外の領域における、厚さ方向で第2内面12aに最も近い第1ウィック20の部分と、第1内面11aとの距離より小さい。縁端領域20aの面積の割合は特に限定されないが、例えば、第1ウィック20の平面形状の面積の5面積%以上、30面積%以下とすることができる。
【0040】
ベーパーチャンバー1のより詳細な内部構造について、図2及び図3に加えて、図4図5及び図6も参照して、以下に説明する。
図4は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の一例を模式的に示す断面図である。
第1ウィック20Aは、エッチング多孔板で構成されている。エッチング多孔板は、平板形状の金属板にエッチング加工が施されることより、孔(第1貫通孔21)が複数形成されている。エッチング多孔板は、エッチングにより形成されたものに限定されず、同じ形状を有していれば、他の方法で製造されたものでもよい。第2ウィック30Aにおいても同様である。
第2ウィック30Aは、エッチング多孔板32と、エッチング多孔板32を支持する支柱33と、が一体化した一体型ウィックである。
【0041】
第1ウィック20Aは、厚さ方向に貫通する第1貫通孔21を含む。第1ウィック20Aは、例えば、第1貫通孔21の孔径が一定である。第1貫通孔21の孔径は、第1内面11aに向かって小さくなっていてもよいし、第2内面12aに向かって小さくなっていてもよい。
【0042】
第2ウィック30Aは、厚さ方向に貫通する第2貫通孔31を含む。第2ウィック30Aでは、例えば、第2貫通孔31の孔径が第2内面12aに向かって小さくなっている。第2貫通孔31の孔径は、一定であってもよいし、第1内面11aに向かって小さくなっていてもよい。
【0043】
第1貫通孔21の平均孔径φ1は、第2貫通孔31の平均孔径φ2より小さい。第1貫通孔21の平均孔径φ1は、特に限定されないが、例えば、5μm以上100μm以下である。第2貫通孔31の平均孔径φ2は、特に限定されないが、例えば、10μm以上150μm以下である。
【0044】
平均孔径は、以下の方法で算出する。
孔径が一定である場合、ウィックのXZ断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影し、得られた各画像から任意の10個の貫通孔の孔径を算出し、平均値を平均孔径とする。
孔径が第1内面に向かって小さくなっているか、第2内面に向かって小さくなってる場合、ウィックのXZ断面をSEMで撮影し、得られた各画像から任意の10個の貫通孔について、それぞれ最大孔径と最小孔径を算出する。10個の貫通孔の最大孔径と最小孔径を加算し、20で除した値を平均孔径とする。
【0045】
支柱33の形状は、エッチング多孔板32を支持できる形状であれば特に限定されないが、支柱33の高さ方向に垂直な断面の形状としては、例えば、矩形等の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。支柱33は、図4に示すように、例えば、エッチング多孔板32から筐体10の第1内面11aに向かって幅が狭くなるテーパー形状である。これにより、第1内面11a側では支柱33同士の間の作動媒体の流路を広くすることができる。支柱33の幅は、一定であってよいし、第2内面12aに向かって幅が狭くなるテーパー形状であってもよい。
【0046】
支柱33の配置は特に限定されないが、例えば、図2に示すように、第2ウィック30Aの平面形状の全体にわたって均等に、例えば支柱33間の距離が一定となるように支柱33が配置されることが好ましい。
【0047】
第1ウィック20Aは、縁端領域20aにおける厚さc1が、縁端領域20a以外の領域における厚さc2より小さい。c1がc2より小さいことにより、第1ウィック20Aの縁端領域20aにおける、厚さ方向で第2内面12aに最も近い第1ウィック20Aの部分と、第1内面11aとの距離eが、第1ウィック20Aの縁端領域20a以外の領域における、厚さ方向で第2内面12aに最も近い第1ウィック20Aの部分における厚さc2と、厚さ方向で第2内面12aに最も近い第2ウィック30Aの部分と第1内面11aとの距離dとの和より小さくなっている(c2+d>e)。
【0048】
図4では、第1ウィック20A及び第2ウィック30Aは模式的に一定の寸法で記載されているが、エッチング多孔板等から構成されるウィックは、通常、図5に示すように、完全に平らではない(加工前の第1ウィック20A´)。図5は、第1ウィックの縁端領域における第1ウィックと第2ウィックとの隙間が空いている状態を示す断面図である。通常、エッチング多孔板を単に重ねるだけであると、エッチング多孔板同士の間に隙間ができている。
【0049】
これに対して、縁端領域20aにおいて、第1ウィック20Aと第2ウィック30Aとを密着させることにより、図6に示すように、縁端領域20aにおける第1ウィック20Aと第2ウィック30Aとの隙間が、縁端領域20a以外の領域における第1ウィック20Aと第2ウィック30Aとの隙間に比べて小さくなる。図6は、図5の縁端領域における第1ウィックと第2ウィックとの隙間が閉じた状態を示す断面図である。
【0050】
第1ウィック及び第2ウィックを構成する材料は、特に限定されないが、好ましくは金属であり、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、又はそれらを主成分とする合金等であり、特に好ましくは銅である。第1ウィックを構成する材料は、第2ウィックを構成する材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1ウィックを構成する材料は、筐体を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。第2ウィックを構成する材料は、筐体を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
次に、ベーパーチャンバー1の変形例であるベーパーチャンバー1Aについて、図7を参照して以下に説明する。ここでは、ベーパーチャンバー1と異なる箇所についてのみ説明する。
【0052】
図7は、図4の熱拡散デバイスの変形例を示す断面図である。
第2ウィック30Bは、図7に示すように、エッチング多孔板32のみで形成されている。ベーパーチャンバー1Aでは、エッチング多孔板32を支持する支柱33がエッチング多孔板32と一体化されておらず、第2ウィック30Bとは別に、支柱33が第2ウィック30Bと第1内面11aとの間に設けられている。エッチング多孔板は、エッチングにより形成されたものに限定されず、同じ形状を有していれば、他の方法で製造されたものでもよい。
【0053】
ベーパーチャンバー1Aにおいて、支柱33は、エッチング多孔板32の孔を塞がない位置、及び寸法で設けられていることが好ましい。支柱33は、図7に示すように、例えば、高さ方向で幅が変わらず一定である。支柱33は、第1内面11aに向かって幅が狭くなるテーパー形状であってもよいし、第2内面12aに向かって幅が狭くなるテーパー形状であってもよい。
【0054】
支柱33を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス、又はそれらの混合物、積層物等が挙げられる。また、支柱33は、筐体10と一体であってもよく、例えば、筐体10の第1内面11aをエッチング加工すること等により形成されていてもよい。
【0055】
本発明の熱拡散デバイスの第2実施形態であるベーパーチャンバー2について、図8を参照して以下に説明する。ここでは、ベーパーチャンバー1と異なる箇所についてのみ説明する。
【0056】
図8は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
第1ウィック20Aは、エッチング多孔板で構成されている。第1貫通孔21の孔径は、第2内面12aに向かって小さくなっている。第1貫通孔21の孔径は、一定であってもよいし、第1内面11aに向かって小さくなっていてもよい。
【0057】
第2ウィック30Cは、図8に示すように、メッシュで形成されている。
メッシュは、例えば、金属メッシュ、樹脂メッシュ、もしくは表面コートしたそれらのメッシュから構成されるものであってよく、金属メッシュで構成されていることが好ましい。上記メッシュは、銅メッシュ又はステンレス(SUS)メッシュで構成されていることがより好ましい。
【0058】
本発明の熱拡散デバイスの第3実施形態であるベーパーチャンバー3について、図9及び図10を参照して以下に説明する。ここでは、ベーパーチャンバー2と異なる箇所についてのみ説明する。
【0059】
図9は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
第1ウィック20Bは、図9及び図10に示すように、プレス加工による上下方向の打ち抜き孔(第1貫通孔21)を含む金属箔で形成されている。上下方向の打ち抜き孔を含む金属箔は、プレス加工により形成されたものに限定されず、同じ形状を有していれば、他の方法で製造されたものでもよい。
【0060】
図10は、図9に示す第1ウィックの一例を模式的に示す平面図である。なお、図9には、図10に示す第1ウィック20BのB-B線断面が示されている。
図9に示すように、第1貫通孔21の周縁には、厚さ方向Zにおいて筐体10の第1内面11aに近接する方向に突出する第1凸部24及び、厚さ方向Zにおいて筐体10の第2内面12aに近接する方向に突出する第2凸部25が設けられている。B-B線上の第1貫通孔21の周縁には、第2凸部25が設けられている。B-B線上の第1貫通孔21と長さ方向Yで隣り合う第1貫通孔21の周縁には、第1凸部24が設けられている。
【0061】
第1ウィック20Bは、縁端領域20aにおける厚さc1が、縁端領域20a以外の領域における第1ウィック20Bの厚さc2より小さい。厚さc1が厚さc2より小さいことにより、eがc2+dより小さくなっている。
【0062】
本発明の熱拡散デバイスの第4実施形態であるベーパーチャンバー4について、図11を参照して以下に説明する。ここでは、ベーパーチャンバー3と異なる箇所について説明する。
【0063】
図11は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
第2ウィック30Dは、エッチング多孔板32と、エッチング多孔板32を支持する支柱33と、が一体化した一体型ウィックである。エッチング多孔板は、エッチングにより形成されたものに限定されず、同じ形状を有していれば、他の方法で製造されたものでもよい。
第2ウィック30Dは、例えば、エッチング多孔板32の第2貫通孔31の孔径が一定である。第2貫通孔31の孔径は、第1内面11aに向かって小さくなっていてもよいし、第2内面12aに向かって小さくなっていてもよい。
【0064】
本発明の熱拡散デバイスの第5実施形態であるベーパーチャンバー5について、図12を参照して以下に説明する。ここでは、ベーパーチャンバー3と異なる箇所について説明する。
【0065】
図12は、本発明の熱拡散デバイスの内部構造の別の一例を模式的に示す断面図である。
第1ウィック20Bは、ベーパーチャンバー3と同じく、上下方向の打ち抜き孔を含む金属箔で形成されているが、第1ウィック20B全体で厚さがc2で一定である。
【0066】
第2ウィック30Cは、縁端領域20aにおける厚さが、縁端領域20a以外の領域における第2ウィック30Cの厚さより小さい。ベーパーチャンバー5では、縁端領域20aにおける第2ウィック30Cの厚さが小さいことにより、eがc2+dより小さくなっている。
【0067】
本発明の熱拡散デバイスは、第1ウィックの縁端領域における第1ウィック、第2ウィック、又はこれらの両方の厚さを小さくすることにより、作製することができる。第1ウィック、第2ウィック、又はこれらの両方の厚さを小さくする方法は特に限定されないが、例えば、レーザー溶接、超音波溶接等の、材料の追加が不要な溶接、加締め等が挙げられる。
【0068】
本発明の熱拡散デバイスは、縁端領域において第1ウィックと第2ウィックとが密着していることにより、第1ウィックと第2ウィックとの界面で作動媒体のリークが発生しにくく、第2ウィックによる高い毛細管力が発揮されると考えられる。高い毛細管力が発揮されると、その結果、熱拡散デバイスの最大熱輸送量(Qmax)が向上する。
【0069】
[その他の実施形態]
本発明の熱拡散デバイスは、上記実施形態に限定されるものではなく、熱拡散デバイスの構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0070】
第1ウィックと第2ウィックの組み合わせは、上記実施形態に限定されるものではなく、一の実施形態で例示した第1ウィックと、他の実施形態で例示した第2ウィックとを組み合わせることも可能である。
【0071】
本発明の熱拡散デバイスは、第1内面に接する支柱が配置されていてもよいし、第1内面に接する支柱が配置されていなくてもよい。第1内面に接する支柱は、第2ウィックと一体であってもよいし、筐体と一体であってもよいし、筐体及び第2ウィックとは別の部材であってもよい。
【0072】
図3には示されていないが、筐体10の内部空間には、第2内面12a側に接する支柱が配置されていてもよい。筐体10の内部空間に支柱を配置することによって、筐体10は、第1ウィック20及び第2ウィック30の少なくとも一方を支持することが可能である。
【0073】
支柱を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス、又はそれらの混合物、積層物等が挙げられる。また、支柱は、筐体10と一体であってもよく、例えば、筐体10の第2内面12aをエッチング加工すること等により形成されていてもよい。
【0074】
支柱の形状は、筐体10、第1ウィック20及び第2ウィック30を支持できる形状であれば特に限定されないが、支柱の高さ方向に垂直な断面の形状としては、例えば、矩形等の多角形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0075】
支柱は、筐体10の第2内面12aから第1ウィック20及び第2ウィック30に向かって幅が狭くなるテーパー形状を有してもよい。これにより、第1ウィック20及び第2ウィック30側では支柱の間の流路を広くすることができる。
【0076】
筐体10の内部空間に第2内面12a側に接する支柱が配置されている場合、支柱の高さは、例えば25μm以上400μm以下である。
【0077】
第2内面12a側に接する支柱の幅は、筐体10の変形を抑制できる強度を与えるものであれば特に限定されないが、支柱の第1ウィック20及び第2ウィック30側の端部の高さ方向に垂直な断面の円相当径は、例えば100μm以上2000μm以下であり、好ましくは300μm以上1000μm以下である。支柱の円相当径を大きくすることにより、筐体10の変形をより抑制することができる。一方、支柱の円相当径を小さくすることにより、作動媒体40の蒸気が移動するための空間をより広く確保することができる。
【0078】
筐体10の内部空間に複数の支柱が配置されている場合、支柱の形状、高さ等は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
支柱の配置は特に限定されないが、好ましくは所定の領域において均等に、より好ましくは全体にわたって均等に、例えば隣り合う支柱の中心間距離(ピッチ)が一定となるように配置される。支柱を均等に配置することにより、ベーパーチャンバー等の熱拡散デバイスの全体にわたって均一な強度を確保することができる。支柱の中心間距離は、例えば100μm以上10000μm以下である。
【0080】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、筐体は、1個の蒸発部を有してもよく、複数の蒸発部を有してもよい。すなわち、筐体の外壁面には、1個の熱源が配置されてもよく、複数の熱源が配置されてもよい。
【0081】
図13は、複数の蒸発部及び複数の第1ウィックを有する熱拡散デバイスの内部構造の一例を模式的に示す平面図である。図13に示すベーパーチャンバー6では、2個の蒸発部EPと2個の第1ウィック20とが配置されており、それぞれ第1ウィック20と重なる位置に蒸発部EPを有している。
【0082】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、筐体が第1シート及び第2シートから構成される場合、第1シートと第2シートとは、端部が一致するように重なっていてもよいし、端部がずれて重なっていてもよい。
【0083】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、筐体が第1シート及び第2シートから構成される場合、第1シートを構成する材料と、第2シートを構成する材料とは異なっていてもよい。例えば、強度の高い材料を第1シートに用いることにより、筐体にかかる応力を分散させることができる。また、両者の材料を異なるものとすることにより、一方のシートで一の機能を得、他方のシートで他の機能を得ることができる。上記の機能としては、特に限定されないが、例えば、熱伝導機能、電磁波シールド機能等が挙げられる。
【0084】
本発明の熱拡散デバイスは、放熱を目的として電子機器に搭載され得る。したがって、本発明の熱拡散デバイスを備える電子機器も本発明の1つである。本発明の電子機器は、電子部品を更に備え、上記電子部品は、上記第1内面側の筐体の外側面に配置されていることが好ましい。
【0085】
本発明の電子機器としては、例えばスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、ゲーム機器、ウェアラブルデバイス等が挙げられる。本発明の熱拡散デバイスは上記のとおり、外部動力を必要とせず自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱及び凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。そのため、本発明の熱拡散デバイスを備える電子機器により、電子機器内部の限られたスペースにおいて、放熱を効果的に実現することができる。
【0086】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0087】
<1>
厚さ方向に対向する第1内面及び第2内面を有し、かつ、内部空間が設けられた筐体と、
上記筐体の上記内部空間に封入された作動媒体と、
上記筐体の上記内部空間に配置された第1ウィック及び第2ウィックと、を備え、
上記第1ウィックは、上記厚さ方向に貫通する第1貫通孔を含み、
上記第2ウィックは、上記厚さ方向に貫通する第2貫通孔を含み、
上記第1貫通孔の平均孔径は、上記第2貫通孔の平均孔径より小さく、
上記厚さ方向から見た上記第1ウィックの平面形状の面積は、上記第2ウィックの平面形状の面積より小さく、
上記第1ウィックは、上記第2内面側で上記厚さ方向に上記第2ウィックに重なっており、
上記第1ウィックの上記平面形状の縁端領域における、上記厚さ方向で上記第2内面に最も近い上記第1ウィックの部分と、上記第1内面との距離が、上記縁端領域以外の領域における、上記厚さ方向で上記第2内面に最も近い上記第1ウィックの部分と、上記第1内面との距離より小さい、熱拡散デバイス。
【0088】
<2>
上記縁端領域における上記第1ウィックの厚さが、上記縁端領域以外の領域における上記第1ウィックの厚さより小さい、<1>に記載の熱拡散デバイス。
【0089】
<3>
上記縁端領域における上記第1ウィックと上記第2ウィックとの隙間は、上記縁端領域以外の領域における上記第1ウィックと上記第2ウィックとの隙間に比べて小さい、<1>又は<2>に記載の熱拡散デバイス。
【0090】
<4>
上記第1貫通孔の孔径が上記第2内面に向かって小さくなる、<1>~<3>のいずれか1つに記載の熱拡散デバイス。
【0091】
<5>
上記第1貫通孔の周縁には、上記第1内面に近接する方向に突出する第1凸部、上記第2内面に近接する方向に突出する第2凸部、又はその両方が設けられている、<1>~<4>のいずれか1つに記載の熱拡散デバイス。
【0092】
<6>
上記第2貫通孔の孔径が上記第2内面に向かって小さくなる、<1>~<5>のいずれか1つに記載の熱拡散デバイス。
【0093】
<7>
上記第2ウィックが金属メッシュで構成されている、<1>~<6>のいずれか1つに記載の熱拡散デバイス。
【0094】
<8>
上記筐体が、上記作動媒体を蒸発させる蒸発部を有し、上記厚さ方向から見て、上記第1ウィックが上記蒸発部の少なくとも一部に重なるように配置されている、<1>~<7>のいずれか1つに記載の熱拡散デバイス。
【0095】
<9>
上記筐体が、複数の上記蒸発部を有し、上記第1ウィックが複数備えられている、<8>に記載の熱拡散デバイス。
【0096】
<10>
上記第1ウィックと上記第2内面との距離は、上記第2ウィックと上記第1内面との距離よりも大きい、<1>~<9>のいずれか1つに記載の熱拡散デバイス。
【0097】
<11>
<1>~<10>のいずれか1つに記載の熱拡散デバイスを備える、電子機器。
【0098】
<12>
電子部品を更に備え、
上記電子部品は、上記第1内面側の筐体の外側面に配置されている、<11>に記載の電子機器。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の熱拡散デバイスは、携帯情報端末等の分野において、広範な用途に使用できる。例えば、CPU等の熱源の温度を下げ、電子機器の使用時間を延ばすために使用することができ、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等に使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、2、3、4、5、6 ベーパーチャンバー(熱拡散デバイス)
10 筐体
11 第1シート
11a 第1内面
12 第2シート
12a 第2内面
20、20A、20B 第1ウィック
20A´ 加工前の第1ウィック
20a 縁端領域
21 第1貫通孔
24 第1凸部
25 第2凸部
30、30A、30B、30C、30D 第2ウィック
31 第2貫通孔
32 エッチング多孔板
33 支柱
40 作動媒体
EP 蒸発部
HS 熱源
X 幅方向
Y 長さ方向
Z 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13