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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180021
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】据付位置調整治具
(51)【国際特許分類】
   F16M 7/00 20060101AFI20241219BHJP
   F16B 2/18 20060101ALI20241219BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20241219BHJP
   B23Q 1/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
F16M7/00 A
F16B2/18 D
F16B5/06 X
B23Q1/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099426
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 貴史
(72)【発明者】
【氏名】玉城 大作
【テーマコード(参考)】
3C048
3J001
3J022
【Fターム(参考)】
3C048AA03
3J001FA02
3J001GA01
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JB13
3J001KA12
3J022DA01
3J022DA12
3J022EA02
3J022ED02
3J022FA02
3J022GB14
(57)【要約】
【課題】高圧受電設備のキュービクル等の被固定物を基台に据え付ける際、簡単かつ小さな労力で据付位置を微調整できる据付位置調整治具を提供する。
【解決手段】めねじ孔(18)を有する基台(10)にボルト(21)により固定される被固定物、たとえば高圧受電設備のキュービクル(2)を、所定の据付位置に調整する据付位置調整治具であって、ボルト(21)の頭部(21a)に係合してボルト(21)を回転させるソケットレンチ用のソケット(31)と、ソケット(31)の外周に一体に形成され、ソケット(31)の回転中心線(O1)からの距離が周方向に沿って変化するカム面(32a)を有するカム(32)と、を備え、回転中心線(O1)回りのカム(32)の回転により、カム面(32a)がキュービクル(2)を直接的もしくは間接的に押し動かす。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めねじ孔を有する基台にボルトにより固定される被固定物を、所定の据付位置に調整する据付位置調整治具であって、
前記ボルトの頭部に係合して前記ボルトを回転させるソケットレンチ用のソケットと、
前記ソケットの外周に一体に形成され、前記ソケットの回転中心線からの距離が周方向に沿って変化するカム面を有するカムと、を備え、
前記回転中心線回りの前記カムの回転により、前記カム面が前記被固定物を直接的もしくは間接的に押し動かす、据付位置調整治具。
【請求項2】
前記カム面が摺接する摺接面を有し、前記カムの回転運動を直線運動に変換し、前記被固定物を押し動かす従動スペーサを備えた、請求項1に記載の据付位置調整治具。
【請求項3】
前記従動スペーサは長辺と短辺を有する長方形状に形成され、
前記従動スペーサの前記摺接面は、前記カムの回転運動を前記長辺と直角な方向の直線運動に変換する第1の摺接面と、前記カムの回転運動を前記短辺と直角な方向の直線運動に変換する第2の摺接面と、を有する、請求項2に記載の据付位置調整治具。
【請求項4】
前記ソケットは、前記ソケットレンチ用のハンドルと別体に形成され、前記ハンドルの回転出力部と係合可能な係合部を有する、請求項1~3のいずれか一つに記載の据付位置調整治具。
【請求項5】
前記ソケットは、前記ボルトの六角形状の前記頭部に係合可能な六角凹部を有する、請求項1~3のいずれか一つに記載の据付位置調整治具。
【請求項6】
前記従動スペーサは、肉抜き孔を有する請求項2又は3に記載の据付位置調整治具。
【請求項7】
前記従動スペーサは、肉抜き切り欠きを有する請求項2又は3に記載の据付位置調整治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台上に機器等の被固定物を据え付ける際に、被固定物の据付位置を微調整する据付位置調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば高圧受電設備を設置する場合、設備機器を内蔵する複数のキュービクル(箱体)を共通の基台上に整列させ、ボルトによりキュービクル毎に据え付けている。この据付作業において、隣り合うキュービクルと列盤(面合わせ)作業を行うが、現在、据付位置の微調整は、先の尖った金属棒である「シノ」等を使っている。すなわち、キュービクルのボルト挿通孔にシノを差し込み、てこの原理等を利用してキュービクルを動かし、微調整している。
【0003】
例えば特許文献1には、リニアガイドレールの据付作業において、カムを利用してリニアガイドレールの据付位置を微調整できる治具が開示されている。この治具は、大径円筒部材と偏芯小径円筒部材とを一体物として形成した構造である。前記一体物の治具をボルトの軸部に嵌合し、回転することにより、偏芯小径円筒部材のカム作用でリニアガイドレールを押し動かす構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-158944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の微調整治具では、キュービクル等の被固定物の据付位置調整作業を、キュービクルのボルト挿通孔にシノを差し込んで行う場合、大きな労力が必要になり、作業者の労力の負担が大きい。また、シノに力をかけ過ぎると、キュービクルが大きく動いてしまい、力のかけ加減が難しく、微調整作業に非常に時間がかかった。
【0006】
特許文献1に開示された微調整治具は、カムを利用することにより、作業者の労力の負担軽減を図っている。しかし、前記一体物は、ボルトの軸部の外周に嵌合し、ボルトの周囲を回転する構造である。したがって、最終的にボルトで基台側に固定され、繰り返し利用することができない。また、部品コストがかかり、不経済である。
【0007】
本発明の目的は、高圧受電設備等の被固定物の据付位置調整作業において、作業者の労力の負担を軽減し、しかも、繰り返し使用できて、経済的な据付位置調整治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明にかかる据付位置調整治具は、めねじ孔を有する基台にボルトにより固定される被固定物を、所定の据付位置に調整する据付位置調整治具であって、前記ボルトの頭部に係合して前記ボルトを回転させるソケットレンチ用のソケットと、前記ソケットの外周に一体に形成され、前記ソケットの回転中心線からの距離が周方向に沿って変化するカム面を有するカムと、を備え、前記回転中心線回りの前記カムの回転により、前記カム面が前記被固定物を直接的もしくは間接的に押し動かす構成である。
【0009】
本発明にかかる据付位置調整治具の一態様は、前記構成に加え、前記カム面が摺接する摺接面を有し、前記カムの回転運動を直線運動に変換し、前記被固定物を押し動かす従動スペーサを備える。この構成において、好ましくは、前記従動スペーサは長辺と短辺を有する長方形状に形成され、前記従動スペーサの前記摺接面は、前記カムの回転運動を前記長辺と直角な方向の直線運動に変換する第1の摺接面と、前記カムの回転運動を前記短辺と直角な方向の直線運動に変換する第2の摺接面と、を有する。
【0010】
本発明にかかる据付位置調整治具の一態様は、前記各構成において、前記ソケットが、前記ソケットレンチ用のハンドルと別体に形成され、前記ハンドルの回転出力部と係合可能な係合部を有する。
【0011】
本発明にかかる据付位置調整治具の一態様は、前記ソケットが、前記ボルトの六角形状の前記頭部に係合可能な六角凹部を有する。
【0012】
また、従動スペーサを有する本発明にかかる据付位置調整治具の一態様は、前記従動スペーサが、肉抜き孔または肉抜き切り欠きを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、カムの回転運動を利用して被固定物の位置を直線方向に微調整するので、操作力が簡単に倍力化でき、作業者の労力の負担を軽減できる。また、既存のソケットレンチ用のソケットにカムを一体に形成するので、ボルトの締付作業と、位置調整作業とを同時に行うことができ、据付作業の能率が向上する。しかも、部品コストが節約でき、経済的である。さらに繰り返し使用するこができ、この点でも経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかる据付位置調整治具を用いて位置調整されるキュービクル式高圧受電設備であって、基台に据え付けられた状態で示す斜視図である。
図2】基台から離した状態で示す図1のキュービクル式高圧受電設備の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる据付位置調整治具及びソケットレンチの斜視図である。
図4】キュービクルのボルト締結箇所及び据付位置調整治具の分解斜視図である。
図5】据付位置調整作業中のキュービクルのボルト締結箇所の縦断面図(図4のV‐V線断面図)である。
図6】従動スペーサの配置状態の一例を示す、従動スペーサの平面図である。
図7】従動スペーサを、図6の状態から左右反転した配置状態で示す平面図である。
図8】従動スペーサを、図6の状態から前後に反転した配置状態で示す平面図である。
図9】従動スペーサを、図6の状態から前後及び左右に反転した配置状態で示す平面図である。
図10】従動スペーサを、キュービクルの前下端部の左右端部に、異なる状態で配置した例を示す、キュービクルの前下端部の水平断面図である。
図11】従動スペーサを、キュービクルの前下端部の左右端部に、図10と異なる状態で配置した例を示す、キュービクルの前下端部の水平断面図である。
図12】従動スペーサの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本発明の実施形態]
図1図11に基づいて、本発明にかかる据付位置調整治具の一実施形態並びに位置調整される被固定物であるキュービクル式高圧受電設備を説明する。
【0016】
図1は、基台10に据え付けられたキュービクル式高圧受電設備1の斜視図である。図1において、キュービクル式高圧受電設備1は、変電用あるいは受電用の各種電気機器を内蔵する複数のキュービクル(箱体)2を備えている。各キュービクル2は、正面に開閉可能な正面扉3を備え、背面に開閉可能な一つあるいは複数の裏扉4を備えている。説明の都合上、図1に明記しているように、キュービクル2の正面扉3側をキュービクル式高圧受電設備1及びキュービクル2の「前側」とし、前方から見た左右側をキュービクル式高圧受電設備1及びキュービクル2の「左右側」として説明する。
【0017】
全キュービクル2は、それらの正面扉3が同一垂直面に揃うように左右方向に一列に整列され、共通の基台10の上面に据え付けられている。
【0018】
図2は、基台10とキュービクル式高圧受電設備1とを互いに離した状態で示している。図2において、基台10は、左右方向に延びる前後一対のメインフレーム部材11,12と、前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム部材13,13により、長方形状に形成されている。さらに、前後幅の中間に配置されて左右に延びる中間フレーム部材14と、左右幅の途中に配置されて前後に延びる複数の補強フレーム部材15により、補強されている。前後のメインフレーム部材11,12、サイドフレーム部材13及び中間フレーム部材14は、たとえばU型鋼(溝型鋼)でできている。補強フレーム部材15は、たとえばT型又はH型鋼でできている。基台10の全体の外形は、キュービクル式高圧受電設備1の全体の底形状にほぼ対応する寸法に形成されている。
【0019】
各キュービクル2の底板2aの四隅部分には、キュービクル2を基台10にボルト締結するためのボルト挿通孔8がそれぞれ形成されている。一方、基台10の前後のメインフレーム部材11,12の上面には、据付時の各キュービクル2のボルト挿通孔8に対応する位置に、めねじ孔18が形成されている。
【0020】
図3は据付位置調整治具及びソケットレンチの斜視図である。図3において、ソケットレンチは、ヘッド36を有するハンドル35と、ソケット31とから構成されている。ヘッド36はハンドル35の長さ方向の一端部に設けられるとともに、ラチェット機構を内蔵している。ヘッド36はハンドル35の長さ方向と直交する方向に突出する回転出力部37を有している。回転出力部37は四角柱状に形成されている。ソケット31は筒状に形成されている。ソケット31の長さ方向の一端部には、締結用のボルト21の頭部21aに係合可能な六角凹部31aが形成されている。ソケット31の長さ方向の他端部には、前記回転出力部37に係合可能な角形の係合部(凹部)31bが形成されている。
【0021】
据付位置調整治具は、前述のソケット31と、ソケット31の長さ方向の一端部に一体に形成されたカム32と、カム32の回転運動を直線運動に変換する従動スペーサ33とを備えて構成される。カム32は溶接によりソケット31の外周面に一体に固着されている。
【0022】
カム32は、ソケット31の回転中心線O1からの距離が周方向に沿って変化するカム面32aを有している。従動スペーサ33は長方形状の厚板で形成されている。従動スペーサ33の長さ方向のほぼ半分の領域には、摺接面形成用の長方形状の切り欠き40が形成され、残り半分の領域には、肉抜き孔47が形成されている。長方形状の従動スペーサ33の外周面のうち、一つの長辺は第1の押し付け作用面44として利用され、一つの短辺は第2の押し付け作用面45として利用される。切り欠き40の内周面は、カム32のカム面32aが摺接する摺接面となっている。この摺接面は、前記第1の押し付け作用面44と平行な第1の摺接面41と、前記第2の押し付け作用面45と平行な第2の摺接面42を有している。
【0023】
図4は、キュービクル2の底板2aの右前隅部分のボルト締結箇所及び据付位置調整治具の分解斜視図である。図4において、キュービクル2の底板2aの前端部には、底板2aから垂直に立ち上がる前後一対のリブ板6a,6bが形成されている。前側のリブ板6aと後側のリブ板6bは左右方向に延びるとともに、前後方向に一定の間隔をおいて配置されている。前側のリブ板6aと後側のリブ板6bとの前後方向の間隔は、従動スペーサ33の短辺よりも若干大きい。これにより、従動スペーサ33は、前側のリブ板6aと後側のリブ板6bとの間に、左右方向移動自在にはめ込むことができる。さらに、底板2aの右側端部には、底板2aから垂直に立ち上がるとともに前後方向に延びる右側のリブ板16が形成されている。右側のリブ板16の前端は、前側のリブ板6aまで至っている。
【0024】
底板2aの各ボルト挿通孔8の直径は、ボルト21の軸部の直径よりも適当量大きく形成されている。すなわち、ボルト挿通孔8にボルト21を挿通した状態で、前後及び左右を含むいずれの方向にも、キュービクル2の底板2aを適当量移動できるようになっている。適当量とは、据付作業時に据付位置を微調整するのに十分な量であり、本実施形態では数ミリから数十ミリである。
【0025】
ソケットレンチのヘッド36には、内蔵するラチェット機構による回転出力部37への回転伝達方向を切り換える切換レバー36aが設けられている。すなわち、右回転のみを伝達可能な状態と、左回転のみを伝達可能な状態との間で回転伝達方向を切り換えることができる。
【0026】
なお、後で説明する図10に示すように、底板2aの左側端部には、右側のリブ板16と同様に、底板2aから垂直に立上り、前後方向に延びる左側のリブ板17が形成されている。
【0027】
図5は、キュービクル2を仮止めした状態における図4のV‐V線断面図である。図5において、基台10の前側のメインフレーム部材11のめねじ孔18は、たとえばナット18aを前側のメインフッレーム部材11の裏面に固着することにより構成されている。ソケット31の六角凹部31aはボルト21の頭部21aに係合している。従動スペーサ33の第1の押し付け作用面44は、底板2aの後側のリブ板6bに当接あるいは対向している。
【0028】
図6図9は、従動スペーサ33の長辺が左右方向に沿うように、従動スペーサ33を配置した平面図であるが、それぞれ異なる状態(姿勢)で配置されている。まず、図6に示す従動スペーサ33の状態を説明すると、切り欠き40は従動スペーサ33の右半分領域に位置するとともに前向きに開口している。第1の押し付け作用面44は後側に位置している。第2の押し付け作用面45は右側に位置いている。切り欠き40内のカム32のカム面32aは、後側の第1の摺接面41と右側の第2の摺接面42に当接あるいは対向している。カム32を図6の状態から回転中心線O1回りに右回転(矢印R方向)すると、カム面32aが第1の摺接面41を後方に押し、従動スペーサ33を後方に移動させる。反対に、カム32を図6の状態から回転中心線O1回りに左回転(矢印L方向)すると、カム面32aが第2の摺接面42を右方に押し、従動スペーサ33を右方に移動させる。
【0029】
図7に示す従動スペーサ33の状態は、図6の従動スペーサ33を左右反転させた状態である。すなわち、切り欠き40は従動スペーサ33の左半分領域に位置するとともに前向きに開口している。第1の押し付け作用面44は後側に位置している。第2の押し付け作用面45は左側に位置いている。切り欠き40内のカム32のカム面32aは、後側の第1の摺接面41と左側の第2の摺接面42に当接あるいは対向している。カム32を図7の状態から回転中心線O1回りに右回転(矢印R方向)すると、カム面32aが第2の摺接面42を左方に押し、従動スペーサ33を左方に移動させる。カム32を図7の状態から回転中心線O1回りに左回転(矢印L方向)すると、カム面32aが第1の摺接面41を後方に押し、従動スペーサ33を後方に移動させる。
【0030】
図8に示す従動スペーサ33の状態は、図6の従動スペーサ33を前後反転させた状態である。すなわち、切り欠き40は従動スペーサ33の右半分領域に位置するとともに後向きに開口している。第1の押し付け作用面44は前側に位置している。第2の押し付け作用面45は右側に位置いている。切り欠き40内のカム32のカム面32aは、前側の第1の摺接面41と右側の第2の摺接面42に当接あるいは対向している。カム32を図8の状態から回転中心線O1回りに右回転(矢印R方向)すると、カム面32aが第2の摺接面42を右方に押し、従動スペーサ33を右方に移動させる。カム32を図8の状態から回転中心線O1回りに左回転(矢印L方向)すると、カム面32aが第1の摺接面41を前方に押し、従動スペーサ33を前方に移動させる。
【0031】
図9に示す従動スペーサ33の状態は、図6の従動スペーサ33を前後及び左右反転させた状態である。すなわち、切り欠き40は従動スペーサ33の左半分領域に位置するとともに後向きに開口している。第1の押し付け作用面44は前側に位置している。第2の押し付け作用面45は左側に位置いている。切り欠き40内のカム32のカム面32aは、前側の第1の摺接面41と左側の第2の摺接面42に当接あるいは対向している。カム32を図9の状態から回転中心線O1回りに右回転(矢印R方向)すると、カム面32aが第1の摺接面41を前方に押し、従動スペーサ33を前方に移動させる。カム32を図9の状態から回転中心線O1回りに左回転(矢印L方向)すると、カム面32aが第2の摺接面41を左方に押し、従動スペーサ33を左方に移動させる。
【0032】
[据付位置微調整作業]
キュービクル式高圧受電設備1の据付作業及び据付位置調整作業を説明する。なお、図10及び図11は、据付位置微調整中におけるキュービクル2の前下端部の水平断面図である。
【0033】
図2に示す基台10上へのキュービクル式高圧受電設備1の据付作業において、たとえば、最初に基台10の右端に一つのキュービクル2を載置し、図5に示すようにボルト21で仮止めする。
【0034】
次に、図10に示すように、底板2aの前端部の左右両端部にそれぞれ従動スペーサ33を配置する。この時、前側のリブ板6aと後側のリブ板6bとの間に、各従動スペーサ33をはめ込む。
【0035】
はめ込まれる左右の従動スペーサ33の状態について説明する。図10において、右側に配置された従動スペーサ33は、摺接面形成用の切り欠き40が前開きで従動スペーサ33の右半分領域に位置する状態(図6と同じ状態)で配置されている。これにより、右側の従動スペーサ33の第1の押し付け作用面44が後側のリブ板6bに当接あるいは対向し、右側の従動スペーサ33の第2の押し付け作用面45が右側のリブ板16に当接あるいは対向する。したがって、右側のボルト21の頭部21aに係合したソケット31を右回りあるいは左回りに回転することにより、従動スペーサ33は後方あるいは右方に移動し、底板2aの右端部を後方あるいは右方に移動する。
【0036】
一方、図10の左側に配置された従動スペーサ33は、摺接面形成用の切り欠き40が前開きで従動スペーサ33の左半分領域に位置する状態(図7と同じ状態)で配置されている。これにより、左側の従動スペーサ33の第1の押し付け作用面44が底板2aの後側のリブ板6bに当接あるいは対向し、左側の従動スペーサ33の第2の押し付け作用面45が底板2aの左側のリブ板17に当接あるいは対向する。したがって、左側のボルト21の頭部21aに係合したソケット31を右回りまたは左回りに回転すると、左側の従動スペーサ33は左方あるいは後方に移動し、底板2aの左端部を左方あるいは後方に移動する。
【0037】
このように、図10に示す2つの従動スペーサ33の配置状態では、底板2aの前端部を後方及び左右方に移動することができる。これに対し、2つの従動スペーサ33を、図11に示すように配置すると、底板2aの前端部を前方及び左右方に移動調整できる。
【0038】
すなわち、図11において、右側に配置された従動スペーサ33は、摺接面形成用の切り欠き40が後開きで従動スペーサ33の右半分領域に位置する状態(図8と同じ状態)で配置されている。これにより、右側の従動スペーサ33の第1押し付け作用面44が前側のリブ板6aに当接あるいは対向し、右側の従動スペーサ33の第2の押し付け作用面45が右側のリブ板16に当接あるいは対向する。したがって、右側のボルト21の頭部21aにソケット31を係合して、右回りあるいは左回りに回転すると、従動スペーサ33は右方又は前方に移動し、底板2aの右端部を右方又は前方に移動する。
【0039】
一方、図11の左側に配置された従動スペーサ33は、摺接面形成用の切り欠き40が前開きで従動スペーサ33の左半分領域に位置する状態(図9と同じ状態)で配置されている。これにより、左側の従動スペーサ33の第1の押し付け作用面44が前側のリブ板6aに当接し、左側の従動スペーサ33の第2の押し付け作用面45が左側のリブ板17に当接あるいは対向する。したがって、左側のボルト21の頭部21aにソケット31を係合し、右回りまたは左回りに回転すると、左側の従動スペーサ33を前方または左方に移動し、底板2aの左端部を前方又は左方に移動する。
【0040】
図10に示す微調整作業及び図11に示す微調整作業を組み合わせることにより、キュービクル2の底板2aを、前後左右に微調整できる。また、微調整後、従動スペーサ33を取り外すことにより、ソケット31は通常のソケットとして利用でき、ボルト21を締め付けることができる。
【0041】
なお、図10及び図11では、2つの従動スペーサ33を同時にキュービクル2の底板2aの左右両端部に配置するように説明しているが、一つの従動スペーサ33を、前後あるいは左右に反転させて、キュービクル2の底板2aの各箇所の微調整に利用できる。
【0042】
[実施形態の効果]
(1)ソケット31の回転を、カム32を介して従動スペーサ33の直線運動に変換し、キュービクル2を微調整するので、回転操作力を倍力化して微調整に利用でき、作業にかかる労力負担を軽減できる。
【0043】
(2)ソケットレンチ用のソケット31に、一体にカム32を形成するので、部品点数を削減でき、経済的である。しかも、ソケット31の六角凹部31aをボルト21の頭部21aに係合して、ソケット31を回転させるので、カム32を有するソケット31を繰り返し利用でき、この点でも部品コストを削減できる。
【0044】
(3)ソケットレンチ用のソケット31に、一体にカム32を形成するので、一つのソケット31により、ボルト21の締付作業とカム32による微調整作業とを行え、据付作業の能率が向上する。
【0045】
(4)ソケットレンチ用のハンドルと35とソケット31を別体とし、着脱自在に連結しているので、一つのハンドル35で、六角凹部31の大きさが異なる複数のソケット31を利用できる。複数のソケット31にそれぞれカム32を一体に形成しておくことにより、種々の大きさのボルト21を使用するキュービクル2に簡単に対応できる。
【0046】
[その他の実施形態]
(1)図10及び図11では、2つの従動スペーサ33を同時に底板2aの左右両端部に配置するように説明しているが、もちろん、一つの従動スペーサ33を、前後あるいは左右に反転させて、各箇所の微調整に利用することができる。
【0047】
(2)長方形状の従動スペーサ33の形状とは、正方形も含むものである。
【0048】
(3)図12は従動スペーサの33の変形例であり、従動スペーサ33に肉抜き切り欠き49が形成されている。肉抜き切り欠き49は、摺接面形成用の切り欠き40と連通し、かつ、摺接面形成用の切り欠き40と同方向の端縁が開口している。
【0049】
(4)据付位置調整治具として、従動スペーサ33を省略することもできる。たとえば、図4において、カム32を大きく形成して前側のリブ板6aと後側のリブ板6bの間に配置し、カム面32aを直接に前側のリブ板6aと右側のリブ板16に当接あるいは対向させる。これにより、従動スペーサ33が無くとも、従動スペーサ33を前方あるいは右方に移動できる。
【0050】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、前記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 キュービクル式高圧受電設備
2 キュービクル(被固定物の一例)
6a 前側のリブ板
6b 後側のリブ板
8 ボルト挿通孔
10 基台
16 右側のリブ板
17 左側のリブ板
18 めねじ孔
18a ナット
21 ボルト
21a 頭部
31 ソケット
31a 六角凹部
31b 係合部
32 カム
32a カム面
33 従動スペーサ
35 ソケットレンチ用のハンドル
37 ソケットレンチの回転出力部
40 摺接面形成用の切り欠き
41 第1の摺接面
42 第2の摺接面
44 第1の押し付け作用面
45 第2の押し付け作用面
47 肉抜き孔
49 肉抜き切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12