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特開2024-180026電気化学セルおよび電気化学セルスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180026
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電気化学セルおよび電気化学セルスタック
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/63 20210101AFI20241219BHJP
   C25B 9/73 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 9/07 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 9/00 20210101ALN20241219BHJP
   C25B 1/04 20210101ALN20241219BHJP
   C25B 1/23 20210101ALN20241219BHJP
【FI】
C25B9/63
C25B9/73
C25B9/07
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B1/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099433
(22)【出願日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業「人工光合成技術を用いた電解による地域のCO2資源化検討事業」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勇
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 宗一郎
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AA09
4K021BA02
4K021CA02
4K021DB04
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】リーク電流を低減することができるとともに圧力損失を低減することができる電気化学セルを提供する。
【解決手段】実施の形態による電気化学セルの電極板外枠および流路板外枠は、それぞれ積層方向に連通したアノード入口連通孔およびアノード出口連通孔を有している。流路板外枠は、アノード入口連通孔とアノード流路とを連通するアノード入口流路と、アノード出口連通孔とアノード流路とを連通するアノード出口流路と、を有している。アノード入口流路およびアノード出口流路は、アノード入口流路およびアノード出口流路に同一流体を同一流量で流した場合にアノード入口流路の圧力損失がアノード出口流路の圧力損失よりも大きくなるように形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板本体と、電極板本体の外側に配置された電極板外枠と、を含む電極板と、
前記電極板に積層された流路板であって、流路板本体と、流路板本体の外側に配置された流路板外枠と、を含む流路板と、を備え、
前記電極板本体は、隔膜と、前記隔膜の一方の主面に配置されたアノード電極と、前記隔膜の他方の主面に配置されたカソード電極と、を含み、
前記流路板本体は、前記アノード電極に供給されるアノード流体が流通するアノード流路と、前記カソード電極に供給されるカソード流体が流通するカソード流路と、を含み、
前記電極板外枠および前記流路板外枠は、それぞれ積層方向に連通したアノード入口連通孔およびアノード出口連通孔を有し、
前記流路板外枠は、前記アノード入口連通孔と前記アノード流路とを連通するアノード入口流路と、前記アノード出口連通孔と前記アノード流路とを連通するアノード出口流路と、を有し、
前記アノード入口流路および前記アノード出口流路は、前記アノード入口流路および前記アノード出口流路に同一流体を同一流量で流した場合に前記アノード入口流路の圧力損失が前記アノード出口流路の圧力損失よりも大きくなるように形成されている、
電気化学セル。
【請求項2】
前記アノード入口流路の流路長は、前記アノード出口流路の流路長よりも長い、
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記アノード入口流路は、サーペンタイン型流路であり、
前記アノード出口流路は、平行流型流路である、
請求項1または2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記アノード入口流路の流路断面積は、前記アノード出口流路の流路断面積よりも小さい、
請求項1または2に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記アノード入口流路は、凹状に形成されたアノード入口流路溝を含み、
前記アノード出口流路は、凹状に形成されたアノード出口流路溝を含み、
前記アノード入口流路溝の深さは、前記アノード出口流路溝の深さよりも浅い、
請求項4に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記アノード入口流路は、1つのアノード入口流路凹部で構成され、
前記アノード出口流路は、1つのアノード出口流路凹部で構成され、
前記アノード入口流路凹部の最小流路長が、前記アノード出口流路凹部の最小流路長よりも長い、
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項7】
互いに積層された請求項1または2に記載の複数の電気化学セルを備えた、電気化学セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、電気化学セルおよび電気化学セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルは、電解質膜等の隔膜を挟んで配置されたアノード電極およびカソード電極を含む電極板と、電極板に隣接した流路板と、を備えている。電気化学セルを積層することにより、電極板と流路板が交互に積層された電気化学セルスタックが構成される。流路板は、導電性の物質で構成されているため、複数の電極板が電気的に直列に接続されている。流路板は、アノード流体を流すためのアノード流路と、カソード流体を流すためのカソード流路と、を有しており、アノード流路がアノード電極に対向し、カソード流路がカソード電極に対向している。
【0003】
電気化学反応を発生させる際には、アノード電極およびカソード電極の少なくとも一方に、液体、気体または液体と気体の混合体である流体が供給される。この状態で、アノード電極とカソード電極の間に外部から電位差を付与して電流を流すと、イオン化した物質が隔膜を通過し、電気化学反応を発生させることができる。アノード電極およびカソード電極からは、液体、気体または液体と気体の混合体である流体がそれぞれ排出される。
【0004】
このような電気化学セルは、例えば、水電解または二酸化炭素電解に用いられる。水電解では、アノード電極に水(HO)が供給され、カソード電極から水素(H)が取り出される。二酸化炭素電解では、アノード電極に水(HO)が供給され、カソード電極に二酸化炭素ガス(CO)が供給される。カソード電極から一酸化炭素ガス(CO)が取り出される。アノード流体またはカソード流体には、電気化学反応を促進する目的で、反応に必要な液体に少量のイオン性物質を溶解させた電解質溶液が用いられる場合もある。
【0005】
ところで、アノード流体またはカソード流体(以下、アノード流体等と記す)が主に液体である場合、アノード流体等は導電率を有している。例えば、アノード流体等に純水を用いても不純物が混入するため、アノード流体等の導電率をゼロにすることは困難である。このため、異なる流路板の間でアノード流体等を通って電流が流れ得る。この場合、電気化学反応のために使用すべき電流の一部がリーク電流として消費される。アノード流体等に電解質溶液を用いる場合には、導電率が更に増大し、リーク電流も増大し得る。アノード流体等が主に気体であっても、含有されている物質の一部が凝縮して構造物の壁面等に付着した場合には、同様にリーク電流が発生し得る。
【0006】
アノード電極およびカソード電極の外側には電極板外枠が配置されるとともに、アノード流路およびカソード流路の外側には流路板外枠が配置されている。電極板外枠および流路板外枠には、電気化学セルの外部からアノード流体を供給するための連通孔と、カソード流体を供給するための連通孔が設けられている。連通孔からそれぞれ供給されたアノード流体およびカソード流体は、流路板外枠に形成された流路を通って、アノード流路およびカソード流路にそれぞれ供給される。また、電極板外枠および流路板外枠には、電気化学セルから外部にアノード流体を排出するための連通孔と、カソード流体を排出するための連通孔も設けられている。
【0007】
電極板外枠の少なくとも一部および流路板外枠の少なくとも一部は、電気絶縁性の材料で構成されている。このことにより、電極板外枠および流路板外枠は、アノード流体等から電気的に絶縁されている。このため、アノード流体等を流れるリーク電流を低減することができる。
【0008】
しかしながら、電極板外枠および流路板外枠をアノード流体等から電気的に絶縁したとしても、アノード流体等として液体の水(HO)または電解質溶液を用いる場合には、その液体の導電率に応じて液体内を流れるリーク電流が依然として発生し得る。
【0009】
一方、アノード流体等の圧力損失の問題もある。より具体的には、アノード流体等の流路の周囲には、シール部が設けられており、アノード流体等が外部に流出することを防止している。しかしながら、圧力損失が増大すると、シール部から外部に流出する可能性が考えられる。また、電極板に供給されるアノード流体等の圧力が増大すると、電気化学セルの寿命が短くなるという問題も考えられる。また、セル流体を電極板に供給するためのポンプまたはファンなどの補機の動力が増大するという問題も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6385788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本実施の形態は、このような点に鑑み、リーク電流を低減することができるとともに圧力損失を低減することができる電気化学セルおよび電気化学セルスタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施の形態による電気化学セルは、電極板と、電極板に積層された流路板と、を備えている。電極板は、電極板本体と、電極板本体の外側に配置された電極板外枠と、を含んでいる。流路板は、流路板本体と、流路板本体の外側に配置された流路板外枠と、を含んでいる。電極板本体は、隔膜と、隔膜の一方の主面に配置されたアノード電極と、隔膜の他方の主面に配置されたカソード電極と、を含んでいる。流路板本体は、アノード電極に供給されるアノード流体が流通するアノード流路と、カソード電極に供給されるカソード流体が流通するカソード流路と、を含んでいる。電極板外枠および流路板外枠は、それぞれ積層方向に連通したアノード入口連通孔およびアノード出口連通孔を有している。流路板外枠は、アノード入口連通孔とアノード流路とを連通するアノード入口流路と、アノード出口連通孔とアノード流路とを連通するアノード出口流路と、を有している。アノード入口流路およびアノード出口流路は、アノード入口流路およびアノード出口流路に同一流体を同一流量で流した場合にアノード入口流路の圧力損失がアノード出口流路の圧力損失よりも大きくなるように形成されている。
【0013】
また、実施の形態による電気化学セルスタックは、互いに積層された複数の上述した電気化学セルを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本実施の形態によれば、リーク電流を低減することができるとともに圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1の実施の形態による電気化学セルスタックを示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す電気化学セルスタックを示す断面図である。
図3図3は、図2の電極板を示す平面図である。
図4図4は、図2の流路板を示す斜視図である。
図5図5は、図4の流路板に設けられたアノード流路を示す平面図である。
図6図6は、図5の流路板に設けられたカソード流路を示す平面図である。
図7図7は、アノード入口流路およびアノード出口流路の合計圧力損失および合成抵抗を示すグラフである。
図8図8は、アノード入口流路およびアノード出口流路の合計圧力損失および合成抵抗を示すグラフである。
図9図9は、第2の実施の形態における流路板に設けられたアノード流路を示す平面図である。
図10図10は、図9に示すアノード入口流路およびアノード出口流路を示す断面図である。
図11図11は、図9の流路板に設けられたカソード流路を示す平面図である。
図12図12は、第3の実施の形態における電極板を示す平面図である。
図13図13は、第3の実施の形態における流路板を示す斜視図である。
図14図14は、図13の流路板に設けられたアノード流路を示す平面図である。
図15図15は、図13の流路板に設けられたカソード流路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
まず、図1図8を参照して、第1の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態による電気化学セルスタック1は、互いに積層された複数の電気化学セル2を備えている。電気化学セルスタック1は、複数の電気化学セル2が積層されるように構成されている。
【0019】
図1に示すように、電気化学セルスタック1は、絶縁板3と集電板4と締付板5とを備えている。絶縁板3は、板状の絶縁体である。絶縁板3は、積層された複数の電気化学セル2の積層方向における両側にそれぞれ配置されている。集電板4は、板状の導電体である。集電板4は、それぞれの絶縁板3に埋め込まれていてもよい。集電板4は、外側に向けて延び出た端子4aを有している。この端子4aは、ケーブル等を介して外部の電源と電気的に接続される。これにより、外部の電源から各電気化学セル2に電圧を付与し電流を流すことができる。締付板5は、各電気化学セル2および絶縁板3の積層方向における両側にそれぞれ配置されている。締付板5は、タイロッド6により締め付けられており、各電気化学セル2を積層方向に押圧している。
【0020】
図1に示すように、締付板5は、アノード流体流入孔7a、アノード流体流出孔7b、カソード流体流入孔7cおよびカソード流体流出孔7dを有している。これらの流入孔7a、7cおよび流出孔7b、7dは、締付板5を貫通している。アノード流体流入孔7aは、後述するアノード入口連通孔12、22と連通している。アノード流体流出孔7bは、後述するアノード出口連通孔13、23と連通している。カソード流体流入孔7cは、後述するカソード入口連通孔14、24と連通している。カソード流体流出孔7dは、後述するカソード出口連通孔15、25と連通している。アノード流体流入孔7aには、外部から供給されたアノード流体が流入する。各電気化学セル2による電気化学反応後のアノード流体は、アノード流体流出孔7bから外部に流出する。カソード流体流入孔7cには、外部から供給されたカソード流体が流入する。各電気化学セル2による電気化学反応後のカソード流体は、カソード流体流出孔7dから外部に流出する。
【0021】
図2に示すように、本実施の形態による電気化学セル2は、電極板10と、電極板10に積層された流路板20と、を備えている。電気化学セル2は、電極板10と流路板20とを一組として積層した構造を有している。複数の電気化学セル2が積層されることにより、電気化学セルスタック1が構成されている。
【0022】
図2および図3に示すように、本実施の形態による電極板10は、電極板本体10Aと、電極板外枠10Bと、を含んでいる。
【0023】
電極板本体10Aは、隔膜16と、アノード電極17と、カソード電極18と、を有している。アノード電極17およびカソード電極18は、隔膜16を挟んで配置されている。すなわち、隔膜16の一方の側にアノード電極17が配置され、隔膜16の他方の側にカソード電極18が配置されている。アノード電極17は、隔膜16の一方の主面であって、図2における上面に配置されている。カソード電極18は、隔膜16の他方の主面に配置されている。
【0024】
隔膜16は、固体高分子膜(例えばイオン交換膜)または固体電解質膜(電解質膜)等のイオン濾過膜であってもよい。アノード電極17およびカソード電極18は、カーボンまたは金属を原料としたガス透過性を有する基材に、触媒が付着されて構成されていてもよい。触媒は、ニッケル、イリジウム、金、銀若しくは白金等の金属、酸化ニッケル、二酸化イリジウムまたは酸化コバルト等の金属酸化物を含んでいてもよい。
【0025】
図2に示すように、隔膜16、アノード電極17およびカソード電極18は、それぞれ平板状に形成されていてもよい。隔膜16とアノード電極17は、同じ平面サイズを有していてもよい。しかしながら、隔膜16とアノード電極17は、異なる平面サイズを有していてもよい。例えば、図2に示すように、アノード電極17が隔膜16よりも小さい平面サイズを有していてもよく、この場合、アノード電極17と隔膜16との間に段差が形成されていてもよい。また、隔膜16とカソード電極18は、同じ平面サイズを有していてもよい。しかしながら、隔膜16とカソード電極18は、異なる平面サイズを有していてもよい。例えば、図2に示すように、カソード電極18が隔膜16よりも小さい平面サイズを有していてもよく、この場合、カソード電極18と隔膜16との間に段差が形成されていてもよい。
【0026】
図2および図3に示すように、電極板外枠10Bは、電極板本体10Aに接合されている。電極板外枠10Bは、電極板本体10Aの外周部に接合されていてもよい。また、電極板本体10Aのアノード電極17またはカソード電極18と、隔膜16との間の段差の部分を覆うように電極板外枠10Bが積層方向に重ね合わされて接合されていてもよい。この場合、電極板本体10Aと電極板外枠10Bとの接合部の接合面積を大きくすることができ、接合部でのシール性を向上させることができる。電極板外枠10Bは、複数のシート状の部材が重ね合わされることにより構成されていてもよい。
【0027】
図2および図3に示すように、電極板外枠10Bは、アノード入口連通孔12、アノード出口連通孔13、カソード入口連通孔14およびカソード出口連通孔15を有している。これらの連通孔12、13、14、15は、それぞれ電極板10から離れた位置に設けられている。これらの連通孔12、13、14、15は、厚さ方向(積層方向)においてそれぞれ電極板外枠10Bを貫通している。各連通孔12、13、14、15は、積層方向で見たときに、矩形形状に形成されていてもよい。
【0028】
電極板外枠10Bは、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)若しくはポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂材料、またはフッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)若しくはシリコンゴム等のゴム材料等の電気絶縁性の材料で構成されていてもよい。あるいは、電極板外枠10Bは、導電性の基材の表面に電気絶縁性の材料が被膜されて構成されていてもよい。電極板外枠10Bは、少なくともアノード流体およびカソード流体と接する部分に電気絶縁性の材料が設けられていればよい。
【0029】
図2および図4に示すように、本実施の形態による流路板20は、流路板本体20Aと、流路板外枠20Bと、を含んでいる。
【0030】
流路板本体20Aは、アノード流路26と、カソード流路28と、を有している。アノード流路26は流路板本体20Aの一方の主面に配置され、アノード電極17に対向している。カソード流路28は、流路板本体20Aの他方の主面に配置され、カソード電極18に対向している。
【0031】
アノード流路26は、アノード電極17に供給されるアノード流体が流通するように構成されている。図4および図5に示すように、アノード流路26は、流路板本体20Aの一方の主面に凹状に形成された複数のアノード流路溝27を含んでいてもよい。すなわち、アノード流路26は、内部をアノード流体が流通する複数のアノード流路溝27で構成されていてもよい。アノード流路溝27は、後述するアノード入口流路30と後述するアノード出口流路32とを連通している。アノード流路26は、複数の屈曲部を有するサーペンタイン型流路であってもよい。
【0032】
カソード流路28は、カソード電極18に供給されるカソード流体が流通するように構成されている。図6に示すように、カソード流路28は、流路板本体20Aの他方の主面に凹状に形成された複数のカソード流路溝29を含んでいてもよい。すなわち、カソード流路28は、内部をカソード流体が流通する複数のカソード流路溝29で構成されていてもよい。カソード流路溝29は、後述するカソード入口流路36と後述するカソード出口流路38とを連通している。カソード流路28は、複数の屈曲部を有するサーペンタイン型流路であってもよい。
【0033】
アノード流路26およびカソード流路28は、流路板本体20Aを構成する薄板を一方の主面からプレス加工することにより形成されてもよい。すなわち、プレス加工により流路板本体20Aの両方の主面が凹凸状に形成されている。このことにより、流路板本体20Aの一方の主面に複数のアノード流路溝27が形成されるとともに他方の主面に複数のカソード流路溝29が形成されていてもよい。アノード流路26およびカソード流路28をプレス加工により形成することにより、流路板本体20Aの大量生産を容易化し、電気化学セル2の製造コストを低減することができる。
【0034】
図2に示すように、電気化学セル2が積層された状態においては、積層方向に隣り合う2つの電気化学セル2のうちの一方の電気化学セル2の流路板本体20Aの凹凸形状と、他方の電気化学セル2の流路板本体20Aの凹凸形状は、横方向にずれていてもよい。より具体的には、一方の流路板本体20Aに形成された2つのアノード流路溝27の間の板凸部27aと、他方の流路板本体20Aに形成された2つのカソード流路溝29の間の板凸部29aは、電極板本体10Aを介して対向していてもよい。例えば、プレス加工により形成された2つの流路板本体20Aを、平面内で互いに180°回転させてずらした位置で積層することにより、板凸部27aと板凸部29aとを対向させてもよい。しかしながら、板凸部27aと板凸部29aは、互いに対向していなくてもよく、任意である。
【0035】
流路板本体20Aは、カーボン、カーボンと樹脂の混合物、または金属等の導電性の材料で構成されていてもよい。あるいは、流路板本体20Aは、導電性の材料の表面に、導電性のコーティング材が被膜されて構成されていてもよい。コーティング材は、腐食電位を高くするための材料または接触抵抗を低減するための材料等で構成されていてもよい。
【0036】
図4図6に示すように、流路板外枠20Bは、流路板本体20Aに接合されている。流路板外枠20Bは、流路板本体20Aの外周部に接合されていてもよい。流路板外枠20Bは、流路板本体20Aの流路が形成されていない部分に積層方向に重ね合わされて接合されていてもよい。この場合、流路板本体20Aと流路板外枠20Bとの接合部の接合面積を大きくすることができ、接合部でのシール性を向上させることができる。流路板外枠20Bは、複数のシート状の部材が重ね合わされることにより構成されていてもよい。
【0037】
流路板外枠20Bは、アノード入口連通孔22、アノード出口連通孔23、カソード入口連通孔24およびカソード出口連通孔25を有している。これらの連通孔22、23、24、25は、それぞれ流路板本体20Aから離れた位置に設けられている。これらの連通孔22、23、24、25は、厚さ方向(積層方向)においてそれぞれ流路板外枠20Bを貫通している。各連通孔22、23、24、25は、積層方向で見たときに、矩形形状に形成されていてもよい。
【0038】
アノード入口連通孔22と流路板本体20Aとの離間距離は、アノード出口連通孔23と流路板本体20Aとの離間距離(図5における横方向距離)と等しくなっていてもよい。同様に、カソード入口連通孔24と流路板本体20Aとの離間距離は、カソード出口連通孔25と流路板本体20Aとの離間距離(図5における横方向距離)は、等しくなっていてもよい。
【0039】
図2に示すように、電極板10と流路板20とが積層された状態において、連通孔22、23、24、25は、対応する連通孔12、13、14、15と重なっている。すなわち、アノード入口連通孔12とアノード入口連通孔22は、積層方向に連通している。アノード出口連通孔13とアノード出口連通孔23は、積層方向に連通している。カソード入口連通孔14とカソード入口連通孔24は、積層方向に連通している。カソード出口連通孔15とカソード出口連通孔25は、積層方向に連通している。また、アノード入口連通孔12、22はアノード流体流入孔7aと連通し、アノード出口連通孔13、23はアノード流体流出孔7bと連通している。カソード入口連通孔14、24はカソード流体流入孔7cと連通し、カソード流体流出孔7dはカソード出口連通孔15、25と連通している。外部から供給されたアノード流体は、アノード流体流入孔7aを通ってアノード入口連通孔12、22に流入する。アノード流路26を流通した電気化学反応後のアノード流体は、アノード出口連通孔13、23からアノード流体流出孔7bを通って外部に流出する。外部から供給されたカソード流体は、カソード流体流入孔7cを通ってカソード入口連通孔14、24に流入する。カソード流路28を流通した電気化学反応後のカソード流体は、カソード出口連通孔15、25からカソード流体流出孔7dを通って外部に流出する。
【0040】
図4および図5に示すように、流路板外枠20Bは、アノード入口流路30を有している。アノード入口流路30は、流路板外枠20Bのアノード電極17の側の主面に配置されている。アノード入口流路30は、アノード入口連通孔22と流路板本体20Aのアノード流路26とを連通している。アノード入口流路30は、アノード入口連通孔22からアノード流路26にアノード流体を流通させる。
【0041】
アノード入口流路30は、流路板外枠20Bの一方の主面に凹状に形成された複数のアノード入口流路溝31を含んでいてもよい。各アノード入口流路溝31は、アノード入口連通孔22とアノード流路26とを連通していてもよい。本実施の形態によるアノード入口流路30は、複数の屈曲部を有するサーペンタイン型流路であってもよい。各アノード入口流路溝31の流路長は、等しくてもよい。流路長は、流路に沿った長さであって、流体の流れに沿う長さである。各アノード入口流路溝31の深さおよび幅は、後述する各アノード出口流路溝33の深さおよび幅と等しくてもよい。
【0042】
流路板外枠20Bは、アノード入口流路30の出口側端部に配置された入口接続部34を更に有していてもよい。入口接続部34は、アノード入口流路30とアノード流路26との間に配置されており、アノード流体の流れの方向に直交する方向に延びるように形成されている。入口接続部34は、各アノード入口流路溝31に接続されるとともに、各アノード流路溝27に接続されている。アノード入口流路溝31と、アノード流路溝27は、図5に示すように、アノード流体の流れの方向に直交する方向にずれて、整列していなくてもよいが、整列していてもよく、任意である。
【0043】
流路板外枠20Bは、アノード出口流路32を有している。アノード出口流路32は、流路板外枠20Bのアノード電極17の側の主面に配置されている。アノード出口流路32は、流路板本体20Aのアノード流路26とアノード出口連通孔23とを連通している。アノード出口流路32は、アノード流体26からアノード出口連通孔23にアノード流体を流通させる。
【0044】
アノード出口流路32は、流路板外枠20Bの一方の主面に凹状に形成された複数のアノード出口流路溝33を含んでいてもよい。各アノード出口流路溝33は、アノード流路26とアノード出口連通孔23とを連通していてもよい。本実施の形態によるアノード出口流路32は、直線状に延びる平行流型流路であってもよい。各アノード出口流路溝33の流路長は、等しくてもよい。
【0045】
流路板外枠20Bは、アノード出口流路32の入口側端部に配置された出口接続部35を更に有していてもよい。出口接続部35は、アノード出口流路32とアノード流路26との間に配置されており、アノード流体の流れの方向に直交する方向に延びるように形成されている。出口接続部35は、各アノード出口流路溝33に接続されるとともに、各アノード流路溝27に接続されている。アノード出口流路溝33と、アノード流路溝27は、図5に示すように、アノード流体の流れの方向に直交する方向にずれることなく、整列していてもよいが、整列していなくてもよく、任意である。
【0046】
アノード入口流路30およびアノード出口流路32は、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合にアノード入口流路30の圧力損失がアノード出口流路32の圧力損失よりも大きくなるように形成されている。言い換えると、アノード入口流路30およびアノード出口流路32を流れる流体の特性による圧力損失への影響を除外した場合、アノード入口流路30の圧力損失は、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくなっている。
【0047】
本実施の形態においては、アノード入口流路30の流路長は、アノード出口流路32の流路長よりも長くなっている。アノード入口流路30を構成する各アノード入口流路溝31の流路長は、アノード出口流路32を構成する各アノード出口流路溝33の流路長よりも長くなっている。なお、上述した入口接続部34および出口接続部35は、アノード流体の圧力損失および電気抵抗に与える影響は、アノード入口流路30およびアノード出口流路32による影響に比べて無視できる程度に小さいと言える。
【0048】
図6に示すように、流路板外枠20Bは、カソード入口流路36を有している。カソード入口流路36は、流路板外枠20Bのカソード電極18の側の主面に配置されている。カソード入口流路36は、カソード入口連通孔24と流路板本体20Aのカソード流路28とを連通している。カソード入口流路36は、カソード入口連通孔24からカソード流路28にカソード流体を流通させる。
【0049】
カソード入口流路36は、流路板外枠20Bの一方の主面に凹状に形成された複数のカソード入口流路溝37を含んでいてもよい。各カソード入口流路溝37は、カソード入口連通孔24とカソード流路28とを連通していてもよい。本実施の形態によるカソード入口流路36は、直線状に延びる平行流型流路であってもよい。
【0050】
流路板外枠20Bは、カソード出口流路38を有している。カソード出口流路38は、流路板外枠20Bのカソード電極18の側の主面に配置されている。カソード出口流路38は、流路板本体20Aのカソード流路28とカソード出口連通孔25とを連通している。カソード出口流路38は、カソード流路28からカソード出口連通孔25にカソード流体を流通させる。
【0051】
カソード出口流路38は、流路板外枠20Bの一方の主面に凹状に形成された複数のカソード出口流路溝39を含んでいてもよい。各カソード出口流路溝39は、カソード流路28とカソード出口連通孔25とを連通していてもよい。本実施の形態によるカソード出口流路38は、複数の屈曲部を有するサーペンタイン型流路であってもよい。
【0052】
図2図4および図5に示すように、流路板外枠20Bは、複数の積層シール部材50を有していてもよい。積層シール部材50は、流路板外枠20Bのアノード電極17の側の面に設けられていてもよい。積層シール部材50は、アノード流体が流路の外部に流出することを防止するとともに、カソード流体が流路の外部に流出することを防止する。積層シール部材50は、アノード入口連通孔22、アノード入口流路30、流路板本体20A、アノード出口流路32およびアノード出口連通孔23を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材50は、カソード入口連通孔24を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材50は、カソード出口連通孔25を囲むように設けられていてもよい。積層シール部材50は、ゴム等の弾性体であってもよく、接着剤であってもよい。
【0053】
図6に示すように、流路板外枠20Bは、積層シール部材51を更に有していてもよい。積層シール部材51は、流路板外枠20Bのカソード電極18の側の面に設けられていてもよい。積層シール部材51は、アノード流体が流路の外部に流出することを防止するとともに、カソード流体が流路の外部に流出することを防止する。積層シール部材51は、カソード入口連通孔24、カソード入口流路36、流路板本体20A、カソード出口流路38およびカソード出口連通孔25を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材51は、アノード入口連通孔22を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材51は、アノード出口連通孔23を囲むように設けられていてもよい。積層シール部材51は、ゴム等の弾性体であってもよく、接着剤であってもよい。
【0054】
流路板外枠20Bは、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)若しくはポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂材料、またはフッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)若しくはシリコンゴム等のゴム材料等の電気絶縁性の材料で構成されていてもよい。あるいは、流路板外枠20Bは、導電性の基材の表面に電気絶縁性の材料が被膜されて構成されていてもよい。流路板外枠20Bは、少なくともアノード流体およびカソード流体と接する部分に電気絶縁性の材料が設けられていればよい。
【0055】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。ここでは、本実施形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックの動作について説明する。
【0056】
まず、電気化学セルスタック1にカソード流体およびアノード流体が供給される。電気化学セルスタック1に外部から供給されたカソード流体は、カソード流体流入孔7cを通って各電気化学セル2のカソード入口連通孔14、24に流入する。カソード流体は、カソード入口連通孔24から流路板外枠20Bのカソード入口流路36を流通して、流路板本体20Aのカソード流路28に流入する。カソード流体は、電極板本体10Aのカソード電極18に接触しながら、カソード流路28を流通する。
【0057】
電気化学セルスタック1に外部から供給されたアノード流体は、アノード流体流入孔7aを通って各電気化学セル2のアノード入口連通孔12、22に流入する。アノード流体は、アノード入口連通孔22から電極板外枠10Bのアノード入口流路30を流通して流路板本体20Aのアノード流路26に流入する。アノード流体は、電極板本体10Aのアノード電極17に接触しながら、流路板20のアノード流路26を流通する。
【0058】
カソード電極18に接触したカソード流体とアノード電極17に接触したアノード流体の構成物質の少なくとも一部は電極に付着した触媒と反応してイオン化する。この状態で、電気化学セルスタック1の集電板4の端子4aに所定の電圧を付与すると、電極板本体10Aの隔膜16を挟んでカソード電極18とアノード電極17との間に電位差が生じる。これにより、流体中のイオン化した特定の物質が隔膜16を通過し、カソード流体とアノード流体の物質構成が変化する電気化学反応が発生する。
【0059】
電気化学反応後のカソード流体は、カソード流路28から流路板外枠20Bのカソード出口流路38を流通してカソード出口連通孔25に到達する。カソード流体は、カソード出口連通孔15、25を流通してカソード流体流出孔7dを通って外部に流出する。
【0060】
電気化学反応後のアノード流体は、アノード流路26から流路板外枠20Bのアノード出口流路32を流通してアノード出口連通孔23に到達する。アノード流体は、アノード出口連通孔13、23を流通してアノード流体流出孔7bを通って外部に流出する。
【0061】
このようにして、アノード電極17にアノード流体を供給するとともにカソード電極18にカソード流体を供給しながら、アノード電極17とカソード電極18との間に電位差を付与することにより、電気化学反応が継続して行われる。
【0062】
例えば、アノード電極17に液体の水または電解質溶液が供給される場合には、アノード電極17から排出される液体には、電気化学セル2での電気化学反応により生成された気体が混在し得る。例えば、電気化学セルスタック1で二酸化炭素電解を行う場合、アノード電極17に電解質溶液が供給され、カソード電極18に二酸化炭素(CO)ガスが供給される。二酸化炭素が電気分解されると、カソード電極18から一酸化炭素ガス(CO)が排出される。アノード電極17には、カソード電極18から排出される一酸化炭素ガスとほぼ同じ体積の二酸化炭素ガスが生成されて、アノード電極17から排出される液体に二酸化炭素ガスが混在し得る。混入される二酸化炭素ガスは、液体の体積の20倍程度になる場合もある。このように、アノード電極17から排出されるアノード流体は、液体と気体とを有する二相流となる。
【0063】
上述したように、アノード電極17に、アノード流体としての液体の水または電解質溶液が供給される場合には、上述したように、アノード流体を通るリーク電流が発生し得る。すなわち、電極板外枠10Bおよび流路板外枠20Bが、上述したように絶縁性を有する材料で構成されている場合であっても、電極板本体10Aおよび流路板本体20Aは導電性を有する材料で構成されている。このため、アノード流体を通るリーク電流が発生し得る。リーク電流は、電気化学反応のために電気化学セルスタック1に供給された電流の一部として消費されるため、電気化学反応の効率が低下し得る。
【0064】
これに対して本実施の形態においては、アノード入口流路30の流路長が長くなっている。このことにより、アノード入口流路30を流れるアノード流体の電気抵抗を増大でき、リーク電流を低減することができる。
【0065】
リーク電流低減の観点では、アノード出口流路32の流路長も長くすることが考えられる。しかしながら、アノード出口流路32の流路長を長くした場合、アノード流体の流路抵抗が増大してアノード流体の圧力損失が増大し得る。また、アノード電極17から排出されるアノード流体が二相流である場合、アノード流体の圧力損失が更に増大し得る。
【0066】
このため本実施の形態においては、アノード出口流路32の流路長は、アノード入口流路30の流路長よりも短くなっている。このことにより、アノード出口流路32におけるアノード流体の流路抵抗を低減でき、圧力損失を低減できる。
【0067】
一方、アノード出口流路32におけるアノード流体が二相流である場合、流体中に存在する気泡が電気の流れを阻害するように作用する。このことにより、アノード出口流路32におけるアノード流体の単位長さ当たりの電気抵抗は、アノード入口流路30におけるアノード流体の単位長さ当たりの電気抵抗よりも高まる。このため、アノード出口流路32におけるアノード流体を通るリーク電流を低減できる。
【0068】
なお、カソード入口流路36およびカソード出口流路38のいずれにおいてもカソード流体が気体である場合、カソード流体の電気抵抗は大きく、カソード流体を通るリーク電流は小さい。また、カソード流体が気体である場合、カソード流体の圧力損失は小さい。このため、カソード流体については、アノード流体のようなリーク電流の問題と圧力損失の問題は無視できる程度に小さいと言える。
【0069】
以下に、一例として、アノード流体の合計圧力損失および合成抵抗を求める2つの計算例を説明する。1つ目の計算例は、アノード入口流路30におけるアノード流体の特性とアノード出口流路32におけるアノード流体の特性とが等しい場合の計算例である。2つ目の計算例は、アノード入口流路30におけるアノード流体の特性がアノード出口流路32におけるアノード流体の特性と異なっている場合の計算例である。
【0070】
まず、アノード入口流路30とアノード出口流路32の合成抵抗と合計圧力損失の計算方法について説明する。
【0071】
アノード入口流路30とアノード出口流路32の合成抵抗RTは、アノード入口流路30の電気抵抗をRiとし、アノード出口流路32の電気抵抗をRoとすると、
【数1】
で表される。
【0072】
アノード入口流路30の電気抵抗Riは、アノード入口流路30の単位長さ当たりの電気抵抗をRiuとし、アノード入口流路30の流路長をLiとすると、
【数2】
で表される。
【0073】
アノード出口流路32の電気抵抗Roは、アノード出口流路32の単位長さ当たりの電気抵抗をRouとし、アノード出口流路32の流路長をLoとすると、
【数3】
で表される。
【0074】
式(1)に、式(2)および式(3)を代入すると、式(1)は、
【数4】
で表される。
【0075】
アノード入口流路30における単位長さ当たりの電気抵抗に対するアノード出口流路32における単位長さ当たりの電気抵抗の比率NRは、
【数5】
で表される。
【0076】
式(5)を用いると式(4)は、
【数6】
で表される。
【0077】
アノード入口流路30の流路長とアノード出口流路32の流路長との合計流路長をLTとすると、合計流路長に対するアノード入口流路30の流路長の比率NLは、
【数7】
で表される。合計流路長LTは、
【数8】
である。
【0078】
式(7)を用いると式(6)は、
【数9】
で表される。
【0079】
式(9)を整理すると、
【数10】
が得られる。
【0080】
アノード入口流路30とアノード出口流路32の合計圧力損失PTは、アノード入口流路30の圧力損失をPiとし、アノード出口流路32の圧力損失をPoとすると、
【数11】
で表される。
【0081】
アノード入口流路30の圧力損失Piは、アノード入口流路30の単位長さ当たりの圧力損失をPiuとすると、
【数12】
で表される。
【0082】
アノード出口流路32の圧力損失Poは、アノード出口流路32の単位長さ当たりの圧力損失をPouとすると、
【数13】
で表される。
【0083】
式(11)に、式(12)および式(13)を代入すると、式(11)は、
【数14】
で表される。
【0084】
アノード入口流路30における単位長さ当たりの圧力損失に対するアノード出口流路32における単位長さ当たりの圧力損失の比率をNPは、
【数15】
で表される。
【0085】
式(15)を用いると式(14)は、
【数16】
で表される。
【0086】
上述した式(7)を用いると式(16)は、
【数17】
で表される。
【0087】
式(17)を整理すると、
【数18】
が得られる。
【0088】
図7および図8には、所定の条件で上述の式(10)と式(18)とにより得られた合成抵抗RTと合計圧力損失PTが示されている。
【0089】
図7には、LTを1とし、Riuを1とし、NRを1とした場合にNLを変数とした合成抵抗RTが破線で示されている。また、図7には、LTを1とし、Piuを1とし、NPを1とした場合にNLを変数とした合計圧力損失PTが実線で示されている。すなわち、図7では、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流しているという条件での計算例が示されている。
【0090】
より具体的には、図7では、アノード入口流路30におけるアノード流体の単位長さ当たりの電気抵抗Riuと、アノード出口流路32におけるアノード流体の単位長さ当たりの電気抵抗Rouが等しい場合の合成抵抗RTが示されている。この場合、合計流路長LTに対するアノード入口流路30の流路長Liの比率NLが0.5である場合に合成抵抗RTが最も高くなる。すなわち、アノード入口流路30の流路長Liとアノード出口流路32の流路長Loが等しい場合に合成抵抗RTが最も高くなる。合計圧力損失PTは、NLに依存せずに一定値となる。
【0091】
図8には、LTを1とし、Riuを1とし、NRを2とした場合にNLを変数とした合成抵抗RTが破線で示されている。また、図8には、LTを1とし、Pinを1とし、NPを2とした場合にNLを変数とした合計圧力損失PTが実線で示されている。すなわち、図8では、アノード入口流路30におけるアノード流体の特性と、アノード出口流路32におけるアノード流体の特性が、異なる場合の計算例が示されている。アノード入口流路30におけるアノード流体の単位長さ当たりの電気抵抗Riuが小さいとともに、単位長さ当たりの圧力損失Piuが小さいという条件での計算例が示されている。
【0092】
図8では、アノード出口流路32における単位長さ当たりの電気抵抗Rouが、アノード入口流路30における単位長さ当たりの電気抵抗Riuの2倍になっている場合の合成抵抗RTが示されている。この場合、NLが0.6付近である場合に合成抵抗RTが最も高くなる。すなわち、アノード入口流路30の流路長Liがアノード出口流路32の流路長Loよりも長い場合に合成抵抗RTが最も高くなる。合計圧力損失PTは、NLが大きくなるにつれて、すなわち、アノード入口流路30の流路長Liが長くなるにつれて、合計圧力損失PTが小さくなっている。このため、RouがRiuよりも高いとともにPouがPiuよりも高い場合、LiをLoよりも長くすることにより、合成抵抗RTおよび合計圧力損失PTをそれぞれ小さくできる。例えば、アノード出口流路32におけるアノード流体が液体と気体を含む二相流などである場合には、RouおよびPouが高くなる。このため、LiをLoよりも長くすることにより、効果的にリーク電流を低減できるとともに圧力損失を低減できる。
【0093】
なお、アノード入口流路30の流路長Liが長くなりすぎると、合計圧力損失PTは小さくなるが、合成抵抗RTが小さくなり得る。例えば、電気化学セルスタック1が搭載されるシステムの状況に応じて、流路長の比率NLは適宜設定されてもよい。例えば、そのシステム内のブロワの出力の強さ、または電気化学セルスタックに供給可能な電流の大きさ等に応じて、流路長の比率NLは、任意に設定されてもよい。比率NLの設定は、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合にアノード入口流路30の圧力損失がアノード出口流路32の圧力損失よりも大きくなる範囲内で設定されてもよい。
【0094】
このように本実施の形態によれば、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合にアノード入口流路30の圧力損失は、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくなっている。このことにより、アノード入口流路30におけるアノード流体の電気抵抗を増大でき、当該アノード電流を通るリーク電流を低減できる。また、アノード出口流路32におけるアノード流体の流路抵抗を低減でき、当該アノード流体の圧力損失を低減できる。このため、アノード出口流路32におけるアノード流体が二相流である場合であっても、リーク電流を低減しつつ、アノード流体の圧力損失の増大を防止できる。この結果、リーク電流を低減することができるとともに圧力損失を低減することができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、アノード入口流路30の流路長が、アノード出口流路32の流路長よりも長くなっている。このことにより、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合に、アノード入口流路30の圧力損失を、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくできる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、アノード入口流路30がサーペンタイン型流路であり、アノード入口流路30が平行流型流路である。このことにより、アノード入口流路30の流路長を、アノード出口流路32の流路長よりも長くすることができる。このため、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合に、アノード入口流路30の圧力損失を、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくできる。また、アノード入口流路30がサーペンタイン型流路であることにより、アノード入口流路30におけるアノード流体の流れを屈曲させることができる。このため、アノード入口流路30におけるアノード流体の圧力損失を増大できる。
【0097】
(第2の実施の形態)
次に、図9図11を参照して、第2の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0098】
図9図11に示す第2の実施の形態においては、アノード入口流路の流路断面積が、アノード出口流路の流路断面積よりも小さい点が主に異なり、他の構成は、図1図8に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図9図11において、図1図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0099】
本実施の形態においては、図9に示すように、アノード入口流路30の流路長は、アノード出口流路32の流路長と等しくてもよい。アノード入口流路30およびアノード出口流路32はそれぞれ、直線状に延びる平行流型流路であってもよい。この場合、アノード入口流路溝31の流路長は、アノード出口流路溝33の流路長と等しくてもよい。
【0100】
本実施の形態においては、アノード入口流路30の流路断面積は、アノード出口流路32の流路断面積よりも小さくなっている。より具体的には、アノード入口流路30を構成する各アノード入口流路溝31の流路断面積が、アノード出口流路32を構成する各アノード出口流路溝33の流路断面積よりも小さくなっている。例えば、図10に示すように、各アノード入口流路溝31の深さd1が、各アノード出口流路溝33の深さd2よりも浅くなっていてもよい。本実施の形態においては、各アノード入口流路溝31の幅w1は、各アノード出口流路溝33の幅w2と等しくてもよい。
【0101】
図11に示すように、カソード入口流路36およびカソード出口流路38はそれぞれ、サーペンタイン型流路であってもよい。
【0102】
なお、本実施の形態においては、アノード入口連通孔12、22およびカソード入口連通孔14、24の配置が、第1の実施の形態における配置と入れ替わっている。この場合、図1に示すアノード流体流入孔7aおよびカソード流体流入孔7cの配置も同様にして入れ替わっている。
【0103】
このように本実施の形態によれば、アノード入口流路30の流路断面積が、アノード出口流路32の流路断面積よりも小さくなっている。このことにより、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合に、アノード入口流路30の圧力損失を、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくできる。このため、アノード入口流路30におけるアノード流体の電気抵抗を増大でき、当該アノード電流を通るリーク電流を低減できる。また、アノード出口流路32におけるアノード流体の流路抵抗を低減でき、当該アノード流体の圧力損失を低減できる。このため、アノード出口流路32におけるアノード流体が二相流である場合であっても、リーク電流を低減しつつ、アノード流体の圧力損失の増大を防止できる。この結果、リーク電流を低減することができるとともに圧力損失を低減することができる。
【0104】
また、本実施の形態によれば、アノード入口流路溝31の深さが、アノード出口流路溝33の深さよりも浅くなっている。このことにより、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合に、アノード入口流路30の圧力損失を、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくできる。
【0105】
なお、上述した本実施の形態においては、各アノード入口流路溝31の深さd1が、各アノード出口流路溝33の深さd2よりも浅くなっている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、図示しないが、各アノード入口流路溝31の幅w1が、各アノード出口流路溝33の幅w2よりも狭くなっていてもよい。このことにより、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合に、アノード入口流路30の圧力損失を、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくできる。この場合、アノード入口流路溝31の深さd1は、アノード出口流路溝33の深さd2と等しくてもよい。
【0106】
(第3の実施の形態)
次に、図12図15を参照して、第3の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0107】
図12図15に示す第3の実施の形態においては、アノード入口流路およびアノード出口流路がそれぞれ凹状に形成されるとともに各アノード流路溝に連通している点が主に異なり、他の構成は、図1図8に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図12図15において、図1図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0108】
図12に示すように、本実施の形態による電極板外枠10Bのアノード入口連通孔12は、積層方向で見たときに、後述するアノード入口連通孔22と同様な形状を有している。より具体的には、アノード入口連通孔12は、積層方向で見たときに、矩形形状の1つの角部が斜めに切り欠かれた形状を有している。アノード出口連通孔13、カソード入口連通孔14およびカソード出口連通孔15も、積層方向で見たときに同様の形状を有している。
【0109】
図13および図14に示すように、本実施の形態によるアノード流路26は、直線状に延びる平行流型流路であってもよい。図15に示すように、本実施の形態によるカソード流路28は、直線状に延びる平行流型流路であってもよい。
【0110】
図13および図14に示すように、本実施の形態によるアノード入口流路30は、アノード流路26を構成する複数のアノード流路溝27に連通している。より具体的には、アノード入口流路30は、流路板外枠20Bの一方の主面に形成された1つのアノード入口流路凹部40で構成されていてもよい。アノード入口流路凹部40の一方の端部は、アノード入口連通孔22に連通し、他方の端部は、アノード流路26の各アノード流路溝27に連通している。アノード入口流路凹部40の幅は、アノード入口連通孔22からアノード流路26に向かって徐々に広くなっていてもよい。アノード入口連通孔22からのアノード流体は、アノード入口流路凹部40によって各アノード流路溝27に流通する。
【0111】
アノード入口流路凹部40には、複数の流路凸部41が設けられている。流路凸部41は、積層方向で見たときに円形状に形成されていてもよい。流路凸部41の配置は、特に限られることはなく、任意である。
【0112】
図13および図14に示すように、本実施の形態によるアノード出口流路32は、アノード流路26を構成する複数のアノード流路溝27に連通している。より具体的には、アノード出口流路32は、流路板外枠20Bの一方の主面に形成された1つのアノード出口流路凹部42で構成されていてもよい。アノード出口流路凹部42の一方の端部は、アノード出口連通孔23に連通し、他方の端部は、アノード流路26の各アノード流路溝27に連通している。アノード出口流路凹部42の幅は、アノード流路26からアノード出口連通孔23に向かって徐々に狭くなっていてもよい。各アノード流路溝27からのアノード流体は、アノード出口流路凹部42によってアノード出口連通孔23に流通する。
【0113】
アノード入口流路30には、複数の流路凸部43が設けられている。流路凸部43は、積層方向で見たときに円形状に形成されていてもよい。流路凸部43の配置は、特に限られることはなく、任意である。
【0114】
なお、本実施の形態においては、アノード入口流路30とアノード流路26との間には、上述した入口接続部34は配置されておらず、アノード出口流路32とアノード流路26との間には、上述した出口接続部35は配置されていない。
【0115】
本実施の形態においても、アノード入口流路30およびアノード出口流路32は、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合にアノード入口流路30の圧力損失は、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくなるように形成されている。より具体的には、アノード入口流路凹部40の最小流路長が、アノード出口流路凹部42の最小流路長よりも長くなっていてもよい。図14に示す例では、アノード入口流路凹部40の最小流路長は、アノード入口連通孔22からアノード流路26までの離間距離(図14における横方向距離)になっている。同様に、アノード出口流路凹部42の最小流路長は、アノード出口連通孔23からアノード流路26までの離間距離(図14における横方向距離)になっている。
【0116】
図15に示すように、本実施の形態によるカソード入口流路36は、カソード流路28を構成する複数のカソード流路溝29に連通している。より具体的には、カソード入口流路36は、流路板外枠20Bの他方の主面に形成された1つのカソード入口流路凹部44を含んでいてもよい。カソード入口流路凹部44の一方の端部は、カソード入口連通孔24に連通し、他方の端部は、カソード流路28の各カソード流路溝29に連通している。カソード入口流路凹部44の幅は、カソード入口連通孔24からカソード流路28に向かって徐々に広くなっていてもよい。カソード入口連通孔24からのカソード流体は、カソード入口流路凹部44によって各カソード流路溝29に流通する。
【0117】
カソード入口流路凹部44には、複数の流路凸部45が設けられている。流路凸部45は、積層方向で見たときに円形状に形成されていてもよい。流路凸部45の配置は、特に限られることはなく、任意である。
【0118】
図15に示すように、本実施の形態によるカソード出口流路38は、カソード流路28を構成する複数のカソード流路溝29に連通している。より具体的には、カソード出口流路38は、流路板外枠20Bの他方の主面に形成された1つのカソード出口流路凹部46を含んでいてもよい。カソード出口流路凹部46の一方の端部は、カソード出口連通孔25に連通し、他方の端部は、カソード流路28の各カソード流路溝29に連通している。カソード出口流路凹部46の幅は、カソード流路28からカソード出口連通孔25に向かって徐々に狭くなっていてもよい。各カソード流路溝29からのカソード流体は、カソード出口流路凹部46によってカソード出口連通孔25に流通する。
【0119】
カソード出口流路凹部46には、複数の流路凸部47が設けられている。流路凸部47は、積層方向で見たときに円形状に形成されていてもよい。流路凸部47の配置は、特に限られることはなく、任意である。
【0120】
図13図15に示すように、流路板外枠20Bのアノード入口連通孔22は、積層方向で見たときに、矩形形状の1つの角部が斜めに切り欠かれた形状を有している。これは、カソード入口流路凹部44の幅が、カソード入口連通孔24からカソード流路28に向かって徐々に広くなっているため、カソード入口流路凹部44とカソード入口連通孔24との距離を確保するためである。同様に、アノード出口連通孔23も、積層方向で見たときに同様の形状を有している。カソード入口連通孔24およびカソード出口連通孔25も、積層方向で見たときに同様の形状を有している。
【0121】
なお、本実施の形態においては、アノード入口連通孔12、22およびカソード入口連通孔14、24の配置が、第1の実施の形態における配置と入れ替わっている。この場合、図1に示すアノード流体流入孔7aおよびカソード流体流入孔7cの配置も同様にして入れ替わっている。
【0122】
このように本実施の形態によれば、アノード入口流路凹部40の最小流路長が、アノード出口流路凹部42の最小流路長よりも長くなっている。このことにより、アノード入口流路30およびアノード出口流路32に同一流体を同一流量で流した場合に、アノード入口流路30の圧力損失を、アノード出口流路32の圧力損失よりも大きくできる。このため、アノード入口流路30におけるアノード流体の電気抵抗を増大でき、当該アノード電流を通るリーク電流を低減できる。また、アノード出口流路32におけるアノード流体の流路抵抗を低減でき、当該アノード流体の圧力損失を低減できる。このため、アノード出口流路32におけるアノード流体が二相流である場合であっても、リーク電流を低減しつつ、アノード流体の圧力損失の増大を防止できる。この結果、リーク電流を低減することができるとともに圧力損失を低減することができる。
【0123】
以上述べた実施の形態によれば、リーク電流を低減することができるとともに圧力損失を低減することができる。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0125】
1:電気化学セルスタック、2:電気化学セル、10:電極板、10A:電極板本体、10B:電極板外枠、12:アノード入口連通孔、13:アノード出口連通孔、16:隔膜、17:アノード電極、18:カソード電極、20:流路板、20A:流路板本体、20B:流路板外枠、22:アノード入口連通孔、23:アノード出口連通孔、26:アノード流路、30:アノード入口流路、31:アノード入口流路溝、32:アノード出口流路、33:アノード出口流路溝、40:アノード入口流路凹部、42:アノード出口流路凹部
図1
図2
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図5
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図10
図11
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