(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180038
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241219BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20241219BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L27/00 Z
A23L2/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099456
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
【テーマコード(参考)】
4B018
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE03
4B018MD10
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD23
4B018MD32
4B018MD33
4B018MD36
4B018MD47
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4B018ME14
4B047LB09
4B047LE06
4B047LG08
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4B117LC02
4B117LG05
4B117LG12
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK14
4B117LK16
4B117LK23
4B117LL02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フェルラ酸の呈味が改善された経口組成物を提供すること。
【解決手段】フェルラ酸、難消化性デキストリン、並びに、イソマルトデキストリンを含有することを特徴とする経口組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルラ酸、難消化性デキストリン、並びに、イソマルトデキストリンを含有することを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
組成物中のフェルラ酸の含有量が0.01質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
組成物中の難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンの合計量が30質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の経口組成物。
【請求項4】
粉末飲料であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェルラ酸、難消化性デキストリン、並びに、イソマルトテキストリンを含有する経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェルラ酸(4-ヒドロキシ-3-メトキシ桂皮酸)はポリフェノールの1種であり、他のポリフェノールと同様に強い抗酸化作用を持ち、高血圧改善作用、持久力向上や抗疲労作用、エタノール性肝炎の治癒作用、アルツハイマー病の患者における症状改善作用などが知られており、健康食品素材としてフェルラ酸の需要が高まっている。例えば、特許文献1には、高血圧症などの、主に生活習慣や加齢などが発症及び進行に関与する疾患を予防するための、フェルラ酸を添加した疾患の予防食品が記載されている。
【0003】
一方で、フェルラ酸はポリフェノール特有の苦みや渋みなどの不快味を呈することが知られている。例えば、特許文献2には、機能性素材に、一定の特徴を持つデキストリンを添加することで、機能性素材の不快味がマスキングされることが記載されており、機能性素材の一つとしてフェルラ酸が例示されている。しかしながら、フェルラ酸については例示のみであり、フェルラ酸を含有する食品についての呈味改善を実際に確認しておらず、特許文献2のデキストリンによってフェルラ酸の不快味を本当にマスキングできるかは不明である。また、特許文献2には、フェルラ酸を含有する食品の後味の改善については記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-166834号公報
【特許文献2】特開2015-128420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、フェルラ酸を含有しながらも、呈味に優れた経口組成物を提供するため、種々の検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その結果、本発明者らは、フェルラ酸とともに特定成分を配合することにより、フェルラ酸の呈味が改善された経口組成物の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
<1>フェルラ酸、難消化性デキストリン、並びに、イソマルトデキストリンを含有することを特徴とする経口組成物。
<2>組成物中のフェルラ酸の含有量が0.01質量%以上であることを特徴とする<1>に記載の経口組成物。
<3>組成物中の難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンの合計量が30質量%以上70質量%以下であることを特徴とする<1>に記載の経口組成物。
<4>組成物中の難消化性デキストリンの含有量が5質量%以上25質量%以下であることを特徴とする<1>に記載の経口組成物。
<5>組成物中のイソマルトデキストリンの含有量が25質量%以上45質量%以下であることを特徴とする<1>に記載の経口組成物。
<6>粉末飲料であることを特徴とする<1>~<5>のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フェルラ酸と共に難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンを含有することにより、フェルラ酸のえぐ味、苦味が低減され、後味に優れた経口組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】えぐ味、苦味、後味についての評価結果を示す(比較例1を基準とした相対値、比較例2~4、及び、実施例1~7)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の経口組成物について詳細を説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
<フェルラ酸>
本発明の経口組成物は、フェルラ酸を含有することを特徴とする。フェルラ酸とは、上述の通りポリフェノールの1種であり、ケイ皮酸の誘導体で、リグニンを構成する化合物である。本発明のフェルラ酸は、フェルラ酸の塩や、ジヒドロフェルラ酸、フェルラ酸エステルなどのフェルラ酸誘導体及びその塩を含む。
【0012】
本発明で用いるフェルラ酸は、植物に含まれるものや合成したものを適宜使用することができ、植物の加工品、市販品や、該市販品を化学処理、酵素処理、精製処理等に供することによって得られた処理物等を使用することができる。植物に含まれるフェルラ酸を用いる場合、植物の幹、枝、果実、葉、花、種子、樹皮、樹液、根、茎、芽など、いずれの部位を用いてもよい。フェルラ酸を含む植物としては、例えば、セリ科植物やイネ科植物が挙げられる。また、植物に含まれるフェルラ酸を用いる場合、植物の粉砕末、抽出物及びその乾燥粉末、搾汁物及びその乾燥粉末を使用することができ、これらは従来公知の方法により得ることができる。本発明において、フェルラ酸は、1種のみを用いても良いし2種以上を使用しても良い。
【0013】
本発明の経口組成物におけるフェルラ酸の含有量は特に制限はなく、例えば、固形分中、0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.005質量%以上であり、フェルラ酸の有する効果を享受する観点から、特に好ましくは0.01質量%以上である。また、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が特に好ましい。なお、本明細書における固形分とは、組成物から水分を除いた量であり、例えば、経口組成物が粉末状、顆粒状の形態である場合は、経口組成物そのものにおける含有量である。また、フェルラ酸を複数種類含有する場合、本発明におけるフェルラ酸の含有量はその合計量である。
【0014】
本発明において、経口組成物中のフェルラ酸の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することができる。
【0015】
<難消化性デキストリン>
本発明の経口組成物は、難消化性デキストリンを含有することを特徴とする。難消化性デキストリンとは、水溶性食物繊維の一種であり、例えば、澱粉を原料として、塩酸を添加して加熱処理した後にアミラーゼ処理を行う、若しくは澱粉に塩酸を添加して加熱処理を行う、又はこれらの組合せにより得られる組成物から、必要に応じて塩類やグルコースなどを除去して難消化性成分を適宜精製することによって得ることができる。
【0016】
本発明の経口組成物における難消化性デキストリンの含有量は特に制限はなく、例えば、固形分中、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、フェルラ酸の呈味をより良く改善できる観点から、特に好ましくは5質量%以上である。また、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0017】
本発明の経口組成物におけるフェルラ酸と難消化性デキストリンの含有比は特に制限はなく、例えば、固形分換算でフェルラ酸:難消化性デキストリン=1:10以上が好ましく、より好ましくは1:30以上であり、フェルラ酸の呈味をより良く改善できる観点から、特に好ましくは1:50以上である。また、1:2000以下が好ましく、1:1500以下がより好ましく、1:1000以下が特に好ましい。
【0018】
<イソマルトデキストリン>
本発明の経口組成物は、イソマルトデキストリンを含有することを特徴とする。イソマルトデキストリンとは、水溶性食物繊維の一種であり、例えば、澱粉を原料として、酵素を作用させることによって得ることができる。
【0019】
本発明の経口組成物におけるイソマルトデキストリンの含有量は特に制限はなく、例えば、固形分中、10質量以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、フェルラ酸の呈味をより良く改善できる観点から、特に好ましくは25質量%以上である。また、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
【0020】
本発明の経口組成物におけるフェルラ酸とイソマルトデキストリンの含有比は特に制限はなく、例えば、固形分換算でフェルラ酸:イソマルトデキストリン=1:50以上が好ましく、より好ましくは1:100以上であり、フェルラ酸の呈味をより良く改善できる観点から、特に好ましくは1:200以上である。また、1:3000以下が好ましく、1:2500以下がより好ましく、1:2000以下が特に好ましい。
【0021】
また、本発明の経口組成物における難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンの合計量は、特に制限はなく、例えば、固形分中、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、フェルラ酸の呈味をより良く改善できる観点から、特に好ましくは30質量%以上である。また、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。本発明の経口組成物における難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンの含有量は、例えば酵素-HPLC法により水溶性食物繊維として測定することができる。
【0022】
また、本発明の経口組成物におけるフェルラ酸と難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンの合計量の含有比は特に制限はなく、例えば、固形分換算でフェルラ酸:(難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンの合計量)=1:100以上が好ましく、より好ましくは1:200以上であり、フェルラ酸の呈味をより良く改善できる観点から、特に好ましくは1:300以上である。また、1:5000以下が好ましく、1:4000以下がより好ましく、1:3000以下が特に好ましい。
【0023】
<その他成分>
本発明の経口組成物には、上記成分以外に、必要に応じてその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリン以外の食物繊維、タンパク質、各種ビタミン類やミネラル類、藻類、酵母等の微生物等を配合することができる。更に、必要に応じて、通常食品分野で用いられる、甘味料、酸味料、栄養補助剤、安定剤、結合剤、光沢剤、増粘剤、着色料、希釈剤、乳化剤、食品添加物、調味料等を挙げることができる。これらその他の成分の含有量は、本発明の組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0024】
<経口組成物>
本発明の経口組成物は、経口的な使用に適した形態であれば特に限定されないが、摂取のしやすさの観点から、液状、シロップ状、ペースト状、ゲル状、ゼリー状、クリーム状、エマルション状、スプレー状、ムース状、ローション状等の流動状であってもよい。固体状としては、粉末状、顆粒状、粒状、タブレット状、チュアブル状、カプセル状、ソフトカプセル状、などが挙げられるが、本発明においては、フェルラ酸の呈味改善を維持しつつ必要量を摂取しやすい粉末状、顆粒状の形態が好ましい。
【0025】
また、本発明の経口組成物は粉末飲料として使用されることが好ましい。粉末飲料とは、粉末状又は顆粒状の組成物を容器に入れ、水等の液体と混合して摂取される組成物のことを意味する。
【0026】
本発明の経口組成物の1日の使用量は特に限定されず、例えば、固形分換算で、好ましくは0.001~30g、より好ましくは0.01~20g、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、特に好ましくは0.1~15gとすることができる。
【0027】
本発明の経口組成物の1回の使用量は特に限定されず、例えば、固形分換算で、好ましくは0.0001~20g、より好ましくは0.001~15g、本願発明の経口組成物の効果を発揮する観点から、特に好ましくは0.01~10gとすることができる。
【0028】
本発明の経口組成物の包装形態は特に限定されず、剤形などに応じて適宜選択できるが、例えば、PTPなどのブリスターパック;ストリップ包装;ヒートシール;アルミパウチ;プラスチックや合成樹脂などを用いるフィルム包装;バイアルなどのガラス容器;アンプルなどのプラスチック容器などが挙げられる。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
<試験例 フェルラ酸含有飲料の官能試験>
(試料の調製)
下記表1に記載の成分を混合し、粉末飲料を調製した。試験に使用したフェルラ酸、難消化性デキストリン、イソマルトデキストリン、米粉はいずれも市販品を使用した。なお、フェルラ酸の呈味改善作用を有さない賦形剤としてデキストリンを使用した。また、各成分の配合量は特に断りがなければ質量%である。
【0031】
(試験方法)
表1に記載の被験物質(1検体あたり3g)をプラスチック製のコップに移し、50mLの水を注いで溶け残りがなくなるまでよくかき混ぜた。得られた飲料について、青汁などの粉末飲料摂取経験を有する5名の検査員がそれぞれ摂取し、えぐ味、苦味、及び後味を評価した。評価は、各項目について比較例1を基準として、-2点(悪い)から2点(良い)の5段階で相対的に評価した。具体的な点数は表2の通り設定した。
結果を表1及び
図1に示す。
【0032】
【0033】
【0034】
表1及び
図1より、フェルラ酸に難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンのいずれかのみを配合した比較例2,3はえぐ味、後味の評価が悪いものであった。フェルラ酸の呈味を改善することが知られている難消化性デキストリン及び米粉を配合した比較例4は、比較例1と比べてえぐ味、苦味、後味は改善されるものの、その効果は低いものであった。一方、フェルラ酸に難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンの両方を配合した実施例1~7は比較例2~3のみでなく、比較例4と比べてもえぐ味のなさ、苦味のなさ、後味の良さに優れており、摂取しやすい飲料であることがわかった。このように、本発明の経口組成物である実施例1~7は、比較例1~4と比べ、えぐ味、苦味がなく、すっきりした後味であり、呈味に優れるものであった。
【0035】
<製造例1~7>
下記表3に記載の組成に従い、流動層造粒機を用いて造粒し、顆粒状の粉末飲料を製造した。下記製造例にて得られた経口組成物は、1日1回、1回あたり5gを水又は湯(80~100mL)に溶かして摂取することができる。表3に記載の組成物は、フェルラ酸、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンを配合することから、フェルラ酸を含有しながらも、呈味に優れた経口組成物であるため、えぐ味、苦味といった味が低減され、後味が良い飲料として摂取することができる。
【0036】
【0037】
<製造例8~14>
下記表4に記載の組成に従い、流動層造粒機を用いて造粒し、顆粒状の粉末飲料を製造した。下記製造例にて得られた経口組成物は、1日1回~2回、1回あたり3gを水又は湯(80~100mL)に溶かして摂取することができる。表4に記載の組成物は、フェルラ酸、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンを配合することから、フェルラ酸を含有しながらも、呈味に優れた経口組成物であるため、えぐ味、苦味といった味が低減され、後味が良い飲料として摂取することができる。
【0038】
本発明の経口組成物は、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンを含有することにより、フェルラ酸の呈味が改善された経口組成物を提供することができることから、産業上の利用の可能性が高いものである。