(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180048
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
F16H 57/021 20120101AFI20241219BHJP
【FI】
F16H57/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099472
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 智之
(72)【発明者】
【氏名】松尾 高広
(72)【発明者】
【氏名】相川 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】速水 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 颯太
(72)【発明者】
【氏名】保気口 拓真
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA12
3J063AB02
3J063AB12
3J063AC03
3J063AC11
3J063BB50
3J063CA01
3J063CB60
3J063CD01
3J063CD06
3J063CD09
3J063CD42
3J063XA03
3J063XD03
3J063XD15
3J063XD17
3J063XD32
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE14
3J063XE37
(57)【要約】
【課題】作業車において、伝動ギヤにより潤滑油が撹拌されることによる潤滑油の撹拌抵抗を抑え、撹拌抵抗による動力ロスを抑える。
【解決手段】ミッションケース3の内部において、第2伝動軸32が第1伝動軸31に対して下側に配置され、第1伝動軸31に取り付けられた第1伝動ギヤ71と、第2伝動軸32の端部に取り付けられた第2伝動ギヤ72とが咬合している。第2伝動ギヤ72における第2伝動軸32が延出された側とは反対側の部分を覆い、且つ、第2伝動軸32の端部を覆う第1カバー部81が備えられている。第1伝動ギヤ71と第2伝動ギヤ72との咬合部分を除いて、第2伝動ギヤ72の外周部に対して第2伝動ギヤ72の径方向の外方側の部分を覆う第2カバー部82が備えられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と、
走行装置と、
前記動力源の動力を前記走行装置に伝達する第1伝動軸及び第2伝動軸と、
前記第1伝動軸及び前記第2伝動軸を収容し、潤滑油が貯留されたミッションケースとが備えられ、
前記ミッションケースの内部において、前記第2伝動軸が前記第1伝動軸に対して下側に配置され、前記第1伝動軸に取り付けられた第1伝動ギヤと、前記第2伝動軸の端部に取り付けられた第2伝動ギヤとが咬合しており、
前記第2伝動ギヤにおける前記第2伝動軸が延出された側とは反対側の部分を覆い、且つ、前記第2伝動軸の端部を覆う第1カバー部と、
前記第1伝動ギヤと前記第2伝動ギヤとの咬合部分を除いて、前記第2伝動ギヤの外周部に対して前記第2伝動ギヤの径方向の外方側の部分を覆う第2カバー部とが備えられている作業車。
【請求項2】
前記第2伝動軸を回転可能に支持するベアリングが前記第1カバー部に設けられている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記第2伝動ギヤにおける前記第2伝動軸が延出される側の部分を覆い、前記第2伝動軸が通る軸通過部を有する第3カバー部が備えられている請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記第2伝動軸を回転可能に支持するベアリングが前記第3カバー部に設けられている請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記第1伝動軸を回転可能に支持する支持部材が備えられ、
前記第1カバー部と前記第2カバー部と前記第3カバー部とが、前記支持部材に備えられている請求項3に記載の作業車。
【請求項6】
前及び後の前記走行装置が備えられ、
前の前記走行装置は、右及び左の前輪であり、
後の前記走行装置は、右及び左の後輪、又は、右及び左のクローラ走行装置であり、
前記後輪又は前記クローラ走行装置に動力を伝達する後部デフ装置が備えられ、
前記第1伝動軸は、前後方向に沿って配置され、前記後部デフ装置に動力を伝達するデフ駆動軸であり、
前記第2伝動軸は、前後方向に沿って配置され、前記デフ駆動軸の動力を、前記第1伝動ギヤ及び前記第2伝動ギヤから前記前輪に伝達する前輪伝動軸である請求項1に記載の作業車。
【請求項7】
吸入した前記潤滑油を油圧ポンプに供給する吸入部が、前記ミッションケースの内部において、前記第1カバー部に対して前記第2伝動軸が延出された側とは反対側に設けられている請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項8】
前記吸入部が、前記第1カバー部の下端部及び前記第2カバー部の下端部よりも低い位置に設けられている請求項7に記載の作業車。
【請求項9】
前記ミッションケースの底部における前記吸入部の下方の部分に、下方に入り込む凹部が設けられ、
前記吸入部が、前記凹部に設けられている請求項8に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車において、動力源の動力を走行用の車輪等の走行装置に伝達する伝動系の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例であるトラクタでは、特許文献1に開示されているように、走行装置に動力を伝達する伝動系がミッションケースの内部に設けられており、潤滑油がミッションケースの内部に貯留されている。
【0003】
特許文献1では、伝動系の一部である第1伝動軸に対して、伝動系の一部である第2伝動軸が下側に設けられ、第1伝動軸に取り付けられた第1伝動ギヤと、第2伝動軸の端部に取り付けられた第2伝動ギヤとが咬合した構成が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
潤滑油が貯留されたミッションケースの内部において、第2伝動軸が第1伝動軸に対して下側に設けられていると、第2伝動軸及び第2伝動ギヤが潤滑油の中に沈んでいることが多い。
第2伝動軸及び第2伝動ギヤが潤滑油の中に沈んだ状態で、第2伝動軸及び第2伝動ギヤが回転駆動されると、第2伝動ギヤにより潤滑油が撹拌されるので、潤滑油の撹拌抵抗が大きくなり、動力ロスが大きくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、作業車において、伝動ギヤにより潤滑油が撹拌されることによる潤滑油の撹拌抵抗を抑え、撹拌抵抗による動力ロスを抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業車は、動力源と、走行装置と、前記動力源の動力を前記走行装置に伝達する第1伝動軸及び第2伝動軸と、前記第1伝動軸及び前記第2伝動軸を収容し、潤滑油が貯留されたミッションケースとが備えられ、前記ミッションケースの内部において、前記第2伝動軸が前記第1伝動軸に対して下側に配置され、前記第1伝動軸に取り付けられた第1伝動ギヤと、前記第2伝動軸の端部に取り付けられた第2伝動ギヤとが咬合しており、前記第2伝動ギヤにおける前記第2伝動軸が延出された側とは反対側の部分を覆い、且つ、前記第2伝動軸の端部を覆う第1カバー部と、前記第1伝動ギヤと前記第2伝動ギヤとの咬合部分を除いて、前記第2伝動ギヤの外周部に対して前記第2伝動ギヤの径方向の外方側の部分を覆う第2カバー部とが備えられている。
【0008】
ミッションケースの内部において、第2伝動軸が第1伝動軸に対して下側に配置され、第1伝動軸に取り付けられた第1伝動ギヤと、第2伝動軸の端部に取り付けられた第2伝動ギヤとが咬合している場合、第2伝動ギヤの一方の横側面及び第2伝動軸の端部が、潤滑油にさらされている。
【0009】
本発明によると、前述の状態において、第2伝動ギヤの一方の横側面、第2伝動ギヤの外周部(第1伝動ギヤと第2伝動ギヤとの咬合部分を除く)、第2伝動軸の端部が、第1カバー部及び第2カバー部により覆われており、第2伝動ギヤにおいて潤滑油にさらされる部分が小さくなる。
これにより、第2伝動ギヤが回転駆動された場合、第2伝動ギヤによる潤滑油の撹拌がミッションケースの内部の各部に伝播することが抑えられて、潤滑油の撹拌抵抗が抑えられる。潤滑油の撹拌抵抗が抑えられることにより、動力ロスが抑えられて、走行装置への動力の伝動効率を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記第2伝動軸を回転可能に支持するベアリングが前記第1カバー部に設けられていると好適である。
【0011】
本発明によると、第2伝動軸を回転可能に支持するベアリングが設けられる場合、ベアリングが第1カバー部に設けられることにより、第1カバー部がベアリングの支持部材に兼用されるので、構造の簡素化を図ることができる。
【0012】
本発明において、前記第2伝動ギヤにおける前記第2伝動軸が延出される側の部分を覆い、前記第2伝動軸が通る軸通過部を有する第3カバー部が備えられていると好適である。
【0013】
本発明によると、第2伝動ギヤの一方の横側面、第2伝動ギヤの外周部(第1伝動ギヤと第2伝動ギヤとの咬合部分を除く)、第2伝動軸の端部が、第1カバー部及び第2カバー部により覆われることに加えて、第2伝動ギヤの他方の横側面が、第3カバー部により覆われる。
これにより、第2伝動ギヤにおいて潤滑油にさらされる部分がさらに小さくなるので、潤滑油の撹拌抵抗を抑えて動力ロスを抑えるという面で有利であり、走行装置への動力の伝動効率の向上の面で有利である。
【0014】
本発明によると、第1伝動ギヤと第2伝動ギヤとの咬合部分は第2カバー部により覆われていない点、及び、第3カバー部は第2伝動軸が通る軸通過部を有している点により、第1伝動ギヤと第2伝動ギヤとの咬合部分に潤滑油が不足することはない。
【0015】
本発明において、前記第2伝動軸を回転可能に支持するベアリングが前記第3カバー部に設けられていると好適である。
【0016】
本発明によると、第2伝動軸を回転可能に支持するベアリングが設けられる場合、ベアリングが第3カバー部に設けられることにより、第3カバー部がベアリングの支持部材に兼用されるので、構造の簡素化を図ることができる。
【0017】
本発明において、前記第1伝動軸を回転可能に支持する支持部材が備えられ、前記第1カバー部と前記第2カバー部と前記第3カバー部とが、前記支持部材に備えられていると好適である。
【0018】
本発明よると、第1伝動軸を回転可能に支持する支持部材が備えられた場合、第1カバー部と第2カバー部と第3カバー部とが支持部材に備えられることにより、支持部材、第1カバー部、第2カバー部及び第3カバー部の一体化を図ることができて、構造の簡素化を図ることができる。
【0019】
本発明において、前及び後の前記走行装置が備えられ、前の前記走行装置は、右及び左の前輪であり、後の前記走行装置は、右及び左の後輪、又は、右及び左のクローラ走行装置であり、前記後輪又は前記クローラ走行装置に動力を伝達する後部デフ装置が備えられ、前記第1伝動軸は、前後方向に沿って配置され、前記後部デフ装置に動力を伝達するデフ駆動軸であり、前記第2伝動軸は、前後方向に沿って配置され、前記デフ駆動軸の動力を、前記第1伝動ギヤ及び前記第2伝動ギヤから前記前輪に伝達する前輪伝動軸であると好適である。
【0020】
本発明によると、動力が、デフ駆動軸(第1伝動軸)から後部デフ装置を介して、後輪(クローラ走行装置)に伝達されるのであり、デフ駆動軸(第1伝動軸)に伝達された動力が、第1伝動ギヤ及び第2伝動ギヤから、前輪伝動軸(第2伝動軸)を介して、前輪に伝達される。
この場合、前輪伝動軸(第2伝動軸)は、ミッションケースの内部の変速装置等を避ける為に、ミッションケースの内部の下部に設けられることが多いので、第1カバー部及び第2カバー部が無理なく設けられる。
【0021】
本発明において、吸入した前記潤滑油を油圧ポンプに供給する吸入部が、前記ミッションケースの内部において、前記第1カバー部に対して前記第2伝動軸が延出された側とは反対側に設けられていると好適である。
【0022】
作業車では、ミッションケースの潤滑油を作動油として油圧ポンプに供給し、油圧ポンプの作動油を油圧装置等に供給する構成が備えられることが多い。
本発明によると、吸入した潤滑油を油圧ポンプに供給する吸入部が、ミッションケースの内部において、第1カバー部に対して第2伝動軸が延出された側とは反対側に設けられている。
これにより、第2伝動ギヤが回転駆動されることによって、気泡が潤滑油の中に入り込んだとしても、気泡は第1カバー部により吸入部の側に移動し難くなるので、気泡が吸入部から油圧ポンプに入り込むことを少なくすることができる。
【0023】
本発明において、前記吸入部が、前記第1カバー部の下端部及び前記第2カバー部の下端部よりも低い位置に設けられていると好適である。
【0024】
本発明によると、第2伝動ギヤの回転駆動による気泡が、潤滑油の中に入り込み、第1カバー部に対して吸入部の側に移動したとしても、吸入部が第1カバー部の下端部及び第2カバー部の下端部よりも低い位置に設けられていることにより、気泡が下方の吸入部に移動し難い状態となるので、気泡が吸入部から油圧ポンプに入り込むことを少なくすると言う面で有利である。
【0025】
本発明において、前記ミッションケースの底部における前記吸入部の下方の部分に、下方に入り込む凹部が設けられ、前記吸入部が、前記凹部に設けられていると好適である。
【0026】
本発明によると、吸入部がさらに低い位置に設けられ、気泡が下方の吸入部にさらに移動し難い状態となるので、気泡が吸入部から油圧ポンプに入り込むことを少なくすると言う面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】ミッションケースの内部を示す概略図である。
【
図3】出力軸の回転速度と無段変速装置の変速位置との関係を示す図である。
【
図4】ミッションケースにおける支持部材の付近の縦断左側面図である。
【
図6】ミッションケースにおける支持部材の付近の縦断背面図である。
【
図7】ミッションケースにおける支持部材の付近の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1~
図8に、作業車の一例であるトラクタが示されている。
図1~
図8において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0029】
(トラクタの全体構成)
図1に示すように、右及び左の前輪6(走行装置に相当)と右及び左の後輪7(走行装置に相当)が機体5に設けられ、前輪6及び後輪7により機体5が支持されている。機体5は、エンジン1(動力源に相当)、エンジン1の後部に連結されたフライホイルハウジング2、フライホイルハウジング2の後部に連結されたミッションケース3、エンジン1の前部に連結された前部フレーム4等を有している。
【0030】
前輪6が前部フレーム4に設けられ、後輪7がミッションケース3の後部に設けられており、ボンネット8によりエンジン1が覆われている。運転部9が機体5に設けられており、運転部9はキャビン12により覆われている。運転座席10と前輪6を操向操作する操縦ハンドル11とが、運転部9に設けられている。
【0031】
各種の作業装置(図示せず)を連結可能なリンク機構13が、機体5の後部に設けられており、作業装置に動力を伝達するPTO軸14が、ミッションケース3の後部に設けられている。
【0032】
(ミッションケースの構成)
図1及び
図2に示すように、ミッションケース3は、前部ケース56、中間ケース57及び後部ケース58が備えられ、前部ケース56と中間ケース57と後部ケース58とがボルト連結されて構成されている。ミッションケース3の内部に、潤滑油が貯留されている。
【0033】
図2に示すように、ミッションケース3の内部に、第1遊星装置40、第2遊星装置50、無段変速装置18、伝動装置19、前後進切換装置20、後輪デフ装置21(後部デフ装置に相当)、前輪変速装置22、PTOクラッチ23及びPTO変速装置24等が設けられている。
【0034】
エンジン1の出力軸15の動力が、ダンパディスク16を介して、ミッションケース3の入力軸17に伝達され、入力軸17から伝動軸25及び伝動軸26に伝達される。伝動軸26の動力が、PTOクラッチ23に伝達され、PTO変速装置24により変速されて、PTO軸14に伝達される。
【0035】
エンジン1の出力軸15の動力が、ダンパディスク16を介して、第1遊星装置40、第2遊星装置50、無段変速装置18及び伝動装置19に伝達され変速されて、出力軸27に伝達される。
【0036】
出力軸27の動力は、伝動軸28から前後進切換装置20に伝達される。前後進切換装置20の動力は、伝動軸26に対して回転可能に取り付けられた円筒状の伝動軸29から伝動軸31(第1伝動軸に相当)(デフ駆動軸に相当)に伝達され、後輪デフ装置21に伝達されて、右及び左の後輪7に伝達される。
【0037】
伝動軸31の動力が、伝動軸32(第2伝動軸に相当)(前輪伝動軸に相当)に伝達され、伝動軸32から伝動軸30を介して前輪変速装置22に伝達される。前輪変速装置22の動力が、前輪出力軸33から伝動軸34を介して前輪デフ装置35に伝達され、右及び左の前輪6に伝達される。
【0038】
(ミッションケースにおける請求項との対応)
以上の構成により、動力源(エンジン1)と、走行装置(前輪6及び後輪7)と、動力源(エンジン1)の動力を走行装置(前輪6及び後輪7)に伝達する第1伝動軸(伝動軸31)及び第2伝動軸(伝動軸32)と、第1伝動軸(伝動軸31)及び第2伝動軸(伝動軸32)を収容し、潤滑油が貯留されたミッションケース3とが備えられている。
【0039】
前及び後の走行装置(前輪6及び後輪7)が備えられ、前の走行装置は、右及び左の前輪6であり、後の走行装置は、右及び左の後輪7、又は、右及び左のクローラ走行装置であり、後輪7又はクローラ走行装置に動力を伝達する後部デフ装置(後輪デフ装置21)が備えられている。
【0040】
(第1遊星装置及び第2遊星装置、無段変速装置の構成)
図2に示すように、第1遊星装置40は、太陽ギヤ41、リングギヤ42及び複数の遊星ギヤ43を有している。第2遊星装置50は、太陽ギヤ51、リングギヤ52及び複数の遊星ギヤ53,54を有している。
【0041】
第1遊星装置40及び第2遊星装置50の共有のキャリア55が設けられている。第1遊星装置40において、遊星ギヤ43は、太陽ギヤ41及びリングギヤ42と咬合しており、キャリア55に回転可能に取り付けられている。
【0042】
第2遊星装置50において、遊星ギヤ53,54は、互いに一体回転可能に連結されており、キャリア55に回転可能に取り付けられている。遊星ギヤ54は遊星ギヤ43と咬合しており、遊星ギヤ53は太陽ギヤ51及びリングギヤ52と咬合している。
【0043】
入力軸17の動力が、伝動軸36を介して第1遊星装置40のリングギヤ42に伝達される。入力軸17の動力が、伝動軸25と伝動軸26とを連結する伝動ギヤ37から、伝動軸38を介して無段変速装置18に伝達される。
【0044】
無段変速装置18は、静油圧式に構成されており、正転動力及び逆転動力を出力する。無段変速装置18の正転動力及び逆転動力が、出力軸39から第1遊星装置40の太陽ギヤ41に伝達される。
【0045】
伝動軸38の動力により、油圧ポンプ65及びチャージポンプ66(油圧ポンプに相当)が駆動される。油圧ポンプ65は、リンク機構13を昇降操作する油圧シリンダ93(
図1参照)等で使用される作動油を供給する。チャージポンプ66は、無段変速装置18に作動油を供給する。
【0046】
エンジン1から無段変速装置18を介して第1遊星装置40の太陽ギヤ41に伝達された動力と、エンジン1から無段変速装置18を介さずに第1遊星装置40のリングギヤ42に伝達された動力とが、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成される。
【0047】
第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、第2遊星装置50のリングギヤ52から円筒状の出力軸44に伝達され、キャリア55から円筒状の出力軸45に伝達され、第2遊星装置50の太陽ギヤ51から円筒状の出力軸46に伝達される。
【0048】
(伝動装置の構成)
図2に示すように、伝動装置19は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第4クラッチCL4及び出力軸27等を有している。第1クラッチCL1~第4クラッチCL4は、油圧多板型式に構成されて、遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることにより伝動状態に操作される。
【0049】
出力軸44の出力ギヤ44aと第1クラッチCL1の入力ギヤ61とが咬合している。出力軸46の出力ギヤ46aと第2クラッチCL2の入力ギヤ62とが咬合しており、出力軸46の出力ギヤ46bと第4クラッチCL4の入力ギヤ64とが咬合している。出力軸45の出力ギヤ45aと第3クラッチCL3の入力ギヤ63とが咬合している。
【0050】
第1クラッチCL1が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、第2遊星装置50のリングギヤ52から、出力軸44の出力ギヤ44a及び入力ギヤ61、第1クラッチCL1を介して出力軸27に伝達される。
【0051】
第2クラッチCL2が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、第2遊星装置50の太陽ギヤ51から、出力軸46の出力ギヤ46a及び入力ギヤ62、第2クラッチCL2を介して出力軸27に伝達される。
【0052】
第3クラッチCL3が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、キャリア55から、出力軸45の出力ギヤ45a及び入力ギヤ63、第3クラッチCL3を介して出力軸27に伝達される。
【0053】
第4クラッチCL4が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、第2遊星装置50の太陽ギヤ51から、出力軸46の出力ギヤ46b及び入力ギヤ64、第4クラッチCL4を介して出力軸27に伝達される。
【0054】
(無段変速装置及び伝動装置による変速の概要)
図1に示すように、変速ペダル94が運転部9に設けられている。変速ペダル94は、停止位置から最高速位置まで踏み操作可能であり、停止位置に付勢されている。変速ペダル94の停止位置と最高速位置の間の操作範囲において、停止位置から最高速位置に亘って、1速レンジ、2速レンジ、3速レンジ、4速レンジが設定されている。
【0055】
図3に、1速レンジ~4速レンジにおける無段変速装置18と第1クラッチCL1~第4クラッチCL4との関係が示されており、出力軸27の回転速度V、無段変速装置18の中立位置N、正転最高速位置FMAX及び逆転最高速位置RMAXが示されている。
【0056】
変速ペダル94が停止位置、1速レンジ~4速レンジ、最高速位置に踏み操作されることにより、無段変速装置18及び第1クラッチCL1~第4クラッチCL4が、以下の説明のように操作される。
【0057】
(無段変速装置及び伝動装置による変速状態)
図3に示すように、変速ペダル94が停止位置に操作されると、第1クラッチCL1~第4クラッチCL4が遮断状態に操作されて、機体5は停止する。変速ペダル94が停止位置から少し踏み操作された1速レンジにおいて、第1クラッチCL1が伝動状態に操作される。
【0058】
図2に示すように、第1クラッチCL1が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、第2遊星装置50のリングギヤ52から第1クラッチCL1を介して、出力軸27に伝達される。
【0059】
この状態において、
図3の1速レンジに示すように、変速ペダル94により無段変速装置18が逆転最高速位置RMAXと正転最高速位置FMAXとに亘って操作され、出力軸27の回転速度Vが零速度と速度V1との間で無段階に変速操作される。
【0060】
変速ペダル94が1速レンジから少し踏み操作された2速レンジにおいて、第2クラッチCL2が伝動状態に操作される。
図2に示すように、第2クラッチCL2が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、第2遊星装置50の太陽ギヤ51から第2クラッチCL2を介して、出力軸27に伝達される。
【0061】
この状態において、
図3の2速レンジに示すように、変速ペダル94により無段変速装置18が逆転最高速位置RMAXと正転最高速位置FMAXとに亘って操作され、出力軸27の回転速度Vが速度V1と速度V2との間で無段階に変速操作される。
【0062】
変速ペダル94が2速レンジから少し踏み操作された3速レンジにおいて、第3クラッチCL3が伝動状態に操作される。
図2に示すように、第3クラッチCL3が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、キャリア55から第3クラッチCL3を介して、出力軸27に伝達される。
【0063】
この状態において、
図3の3速レンジに示すように、変速ペダル94により無段変速装置18が逆転最高速位置RMAXと正転最高速位置FMAXとに亘って操作され、出力軸27の回転速度Vが速度V2と速度V3との間で無段階に変速操作される。
【0064】
変速ペダル94が3速レンジから少し踏み操作された4速レンジにおいて、第4クラッチCL4が伝動状態に操作される。
図2に示すように、第4クラッチCL4が伝動状態に操作されると、第1遊星装置40及び第2遊星装置50により合成された動力が、第2遊星装置50の太陽ギヤ51から第4クラッチCL4を介して、出力軸27に伝達される。
【0065】
この状態において、
図3の4速レンジに示すように、変速ペダル94により無段変速装置18が逆転最高速位置RMAXと正転最高速位置FMAXとに亘って操作され、出力軸27の回転速度Vが速度V3と速度V4との間で無段階に変速操作される。
【0066】
(前後進切換装置の構成)
図2に示すように、前後進切換装置20は、前進クラッチCLF及び後進クラッチCLR、伝動軸28,29等を有している。前進クラッチCLF及び後進クラッチCLRが伝動軸28に設けられており、出力軸27の動力が伝動軸28に伝達される。
【0067】
伝動ギヤ48,59が伝動軸29に連結され、伝動ギヤ47が伝動軸31に連結されている。伝動ギヤ60が伝動軸31に連結されており、伝動ギヤ59と伝動ギヤ60とが咬合している。前進クラッチCLFの出力ギヤ96と伝動ギヤ48とが咬合しており、後進クラッチCLRの出力ギヤ97と伝動ギヤ47とが咬合している。
【0068】
前後進切換装置20において、前進クラッチCLFが伝動状態に操作されると、伝動軸28の動力が、前進クラッチCLF、伝動ギヤ48、伝動軸29、伝動ギヤ59,60を介して、前進状態で伝動軸31に伝達され、伝動軸31から後輪デフ装置21に伝達される。
【0069】
前後進切換装置20において、後進クラッチCLRが伝動状態に操作されると、伝動軸28の動力が、後進クラッチCLR及び伝動ギヤ47を介して、後進状態で伝動軸31に伝達され、伝動軸31から後輪デフ装置21に伝達される。
【0070】
(前輪変速装置の構成)
図2に示すように、前輪変速装置22は、標準クラッチCLT、増速クラッチCLH、伝動軸32及び前輪出力軸33等を有している。
【0071】
伝動ギヤ71(第1伝動ギヤに相当)が伝動軸31に連結され、伝動ギヤ72(第2伝動ギヤに相当)が伝動軸32に連結されており、伝動ギヤ71と伝動ギヤ72とが咬合している。伝動軸32と伝動軸30とが連結されており、伝動軸31の動力が、伝動ギヤ71,72、伝動軸32を介して伝動軸30に伝達される。
【0072】
前輪6が直進位置から右及び左の設定角度の範囲内に操作されると、前輪変速装置22において、標準クラッチCLTが伝動状態に操作される。この状態において、伝動軸30の動力が、標準クラッチCLTを介して前輪出力軸33に伝達され、伝動軸34及び前輪デフ装置35を介して前輪6に伝達されるのであり、前輪6及び後輪7が同じ速度で駆動される。
【0073】
前輪6が右(左)の設定角度を越えて右(左)に操向操作されると、前輪変速装置22において、増速クラッチCLHが伝動状態に操作される。この状態において、伝動軸30の動力が、増速クラッチCLHを介して前輪出力軸33に伝達され、伝動軸34及び前輪デフ装置35を介して前輪6に伝達されるのであり、前輪6が後輪7よりも高速で駆動される。
【0074】
(支持部材の概要)
図2及び
図4に示すように、伝動軸26,28,29,31,32を支持する支持部材80が、ミッションケース3の内部に取り付けられている。
図8に示すように、支持部材80は、一体的に形成された本体部67及び壁部68,69と、別部材の第1カバー部81とが備えられている。
【0075】
(支持部材における本体部及び壁部の構成)
図5及び
図8に示すように、支持部材80において、本体部67は、左右方向及び上下方向に沿って配置されている。
【0076】
壁部68が、本体部67の上端部に設けられて、後方に向けて延出されている。右及び左の壁部69が、本体部67の右端部及び左端部に設けられて、後方に向けて延出されている。本体部67の下端部に、壁部68,69は設けられていない。壁部68の右部及び左部に、取付部68aが設けられ、右及び左の壁部69の下部に、取付部69aが設けられている。
【0077】
ホルダ部70及び開口部73が、本体部67の上部に設けられている。ホルダ部76及び開口部77が、本体部67の上部の左部に設けられている。ホルダ部76において、後述する第4カバー部84に隣接する右下部分が、切り欠かれて開放されている。
【0078】
ホルダ部74及び開口部75、第4カバー部84が、本体部67の上下中間部に設けられている。第4カバー部84は、リング状(円筒状)に形成されており、第4カバー部84の下部は切り欠かれて開放されている。
【0079】
第2カバー部82及び第3カバー部83が、本体部67の下部に設けられている。第2カバー部82は、リング状(円筒状)に形成されており、第2カバー部82の上部が切り欠かれて開放されている。
【0080】
第2カバー部82の上部の開放された部分と、第4カバー部84の下部の開放された部分とは、第2カバー部82及び第4カバー部84の共通の開放部78となっている。
第3カバー部83は、第2カバー部82の前部に接続されており、ホルダ部83a及び開口部83b(軸通過部に相当)が、第3カバー部83に備えられている。
【0081】
本体部67において、第2カバー部82の上部における右部及び左部に隣接する部分、第2カバー部82の下部における右部及び左部に隣接する部分に、取付部67aが設けられている。右上の取付部67aと左下の取付部67aとを結ぶ対角線と、左上の取付部67aと右下の取付部67aとを結ぶ対角線とにおいて、2本の対角線は背面視(正面視)でX字状に交差している(
図6及び
図7参照)。
【0082】
(支持部材における第1カバー部の構成)
図5,6,8に示すように、第1カバー部81は、本体部81a、ホルダ部81b、取付部81c等が備えられて、一体的に形成されている。本体部81aは円板状に形成されており、底部を有する凹部状のホルダ部81bが本体部81aに設けられている。
【0083】
本体部81aの上部における右部及び左部、本体部81aの下部における右部及び左部に、取付部81cが設けられている。右上の取付部81cと左下の取付部81cとを結ぶ対角線と、左上の取付部81cと右下の取付部81cとを結ぶ対角線とにおいて、2本の対角線は背面視(正面視)でX字状に交差している(
図6参照)。
【0084】
第1カバー部81において、右上の取付部81cと左上の取付部81cとの間の部分(ホルダ部81bの上部に隣接する部分)は、本体部81aが設けられていない開放部81dとなっている。
【0085】
第1カバー部81の取付部81cが本体部67の取付部67aにボルト連結されて、第1カバー部81が本体部67に取り付けられる。第1カバー部81は、第2カバー部82に対して第3カバー部83の反対側に設けられ、第2カバー部82及び第4カバー部84の開放部78と、第1カバー部81の開放部81dとが互いに前後方向に隣接する。
【0086】
(ミッションケースの内部における支持部材の取り付け状態)
図4,6,7に示すように、ミッションケース3の中間ケース57及び後部ケース58において、中間ケース57の後端部の外周部にフランジ部57aが形成され、後部ケース58の前端部の外周部にフランジ部58aが形成されており、中間ケース57のフランジ部57aと後部ケース58のフランジ部58aとがボルト連結されている。
【0087】
後部ケース58のフランジ部58aに、取付部58bが後部ケース58の内部に向けて設けられている。支持部材80がミッションケース3の内部に配置されて、支持部材80(壁部68,69)の取付部68a,69aが、後部ケース58の取付部58bにボルト連結されている。
【0088】
支持部材80は、後部ケース58に連結されて、中間ケース57の内部に配置される(
図4参照)。支持部材80の外周部と、中間ケース57及び後部ケース58のフランジ部57a,58aとの間に、空隙79が形成されており、ミッションケース3の内部の潤滑油は、空隙79を通って前後方向に移動可能である。
【0089】
(支持部材における伝動軸の支持状態)
図4~
図8に示すように、伝動軸28(
図2参照)が、支持部材80の開口部77を通っており、伝動軸28を支持するベアリング95が、支持部材80のホルダ部76に取り付けられている。
【0090】
伝動軸26,29(
図2参照)が、支持部材80の開口部73を通っており、伝動軸28を支持するベアリング85が、支持部材80のホルダ部70に取り付けられている。伝動ギヤ59(
図2参照)のギヤ歯の外周部が、支持部材80の壁部68,69により囲まれている。
【0091】
伝動軸31(
図2参照)が、支持部材80の開口部75を通って、支持部材80から後方に向けて延出されており、伝動軸31を支持するベアリング86が、支持部材80のホルダ部74に取り付けられている。
【0092】
伝動ギヤ71(
図2参照)のギヤ歯の外周部が、第2カバー部82及び第4カバー部84の開放部78(
図8参照)の部分を除いて、第4カバー部84により覆われている。伝動ギヤ60及び伝動ギヤ47(
図2参照)が、伝動ギヤ59及び出力ギヤ97と咬合しており、伝動ギヤ60及び伝動ギヤ47のギヤ歯の外周部が、支持部材80の壁部69により囲まれている。伝動ギヤ60及び伝動ギヤ47が、第1カバー部81の開放部81d(
図8参照)に入り込んでいる。
【0093】
伝動軸32(
図2参照)が、支持部材80の第1カバー部81、第2カバー部82及び第3カバー部83の内部に配置されている。伝動軸32を支持するベアリング87が、第1カバー部81のホルダ部81bに取り付けられ、伝動軸32を支持するベアリング88が、第3カバー部83のホルダ部83aに取り付けられている。伝動軸32は、伝動軸31に対して下側に配置されており、支持部材80から、第3カバー部83の開口部83bを通って前方に向けて延出される。
【0094】
伝動ギヤ72(
図2参照)は、支持部材80の第1カバー部81、第2カバー部82及び第3カバー部83の内部に配置されている。伝動ギヤ72は、伝動ギヤ71と咬合しており、伝動ギヤ71と伝動ギヤ72との咬合部分は、支持部材80の開放部78(
図8参照)に位置している。
【0095】
伝動ギヤ72における伝動軸32が延出された側とは反対側の側面部が、第1カバー部81により覆われ、伝動軸32の端部が、第1カバー部81により覆われている。伝動ギヤ72のギヤ歯の外周部が、第2カバー部82及び第4カバー部84の開放部78(
図8参照)の部分を除いて、第2カバー部82により覆われている。伝動ギヤ72における伝動軸32が延出される側の側面部が、第3カバー部83により覆われている。
【0096】
(支持部材における請求項との対応)
以上の構成により、第1伝動軸(伝動軸31)は、前後方向に沿って配置され、後部デフ装置(後輪デフ装置21)に動力を伝達するデフ駆動軸である。
第2伝動軸(伝動軸32)は、前後方向に沿って配置され、デフ駆動軸(伝動軸31)の動力を、第1伝動ギヤ(伝動ギヤ71)及び第2伝動ギヤ(伝動ギヤ72)から前輪6に伝達する前輪伝動軸である。
【0097】
ミッションケース3の内部において、第2伝動軸(伝動軸32)が第1伝動軸(伝動軸31)に対して下側に配置され、第1伝動軸(伝動軸31)に取り付けられた第1伝動ギヤ(伝動ギヤ71)と、第2伝動軸(伝動軸32)の端部に取り付けられた第2伝動ギヤ(伝動ギヤ72)とが咬合している。
【0098】
第2伝動ギヤ(伝動ギヤ72)における第2伝動軸(伝動軸32)が延出された側とは反対側の部分を覆い、且つ、第2伝動軸(伝動軸32)の端部を覆う第1カバー部81が備えられている。
【0099】
第1伝動ギヤ(伝動ギヤ71)と第2伝動ギヤ(伝動ギヤ72)との咬合部分を除いて第2伝動ギヤ(伝動ギヤ72)の外周部に対して第2伝動ギヤ(伝動ギヤ72)の径方向の外方側の部分を覆う第2カバー部82が備えられている。
【0100】
第2伝動ギヤ(伝動ギヤ72)における第2伝動軸(伝動軸32)が延出される側の部分を覆い、第2伝動軸(伝動軸32)が通る軸通過部(開口部83b)を有する第3カバー部83が備えられている。
【0101】
第2伝動軸(伝動軸32)を回転可能に支持するベアリング87が第1カバー部81に設けられている。
第2伝動軸(伝動軸32)を回転可能に支持するベアリング88が第3カバー部83に設けられている。
第1伝動軸(伝動軸31)を回転可能に支持する支持部材80が備えられ、第1カバー部81と第2カバー部82と第3カバー部83とが、支持部材80に備えられている。
【0102】
(油圧ポンプ及びチャージポンプへの供給系の構成)
図4,6,7に示すように、ミッションケース3の内部において、後部ケース58の底部58cが、中間ケース57の底部57bよりも少し低い位置に設けられている。後部ケース58の底部58cにおいて、後部ケース58のフランジ部58aの直後の部分に、下方に入り込む凹部58dが設けられている。
【0103】
後部ケース58の右の横側部58eにおいて凹部58dの横部に相当する部分に、2個の吸入口89(吸入部に相当)が、前後方向に沿って並ぶように設けられている。2個のストレーナ90(吸入部に相当)が、吸入口89に取り付けられており、後部ケース58の凹部58dの内部に左右方向に沿って設けられている。
【0104】
吸入口89及びストレーナ90(後部ケース58の凹部58d)は、支持部材80に対して後側に設けられ、支持部材80及び中間ケース57の底部57bよりも低い位置に設けられている。吸入口89及びストレーナ90(後部ケース58の凹部58d)と、伝動軸28,31との間に、比較的大きな空間が設けられている。
【0105】
ミッションケース3の内部において、潤滑油の液面L1の位置(オイルレベル)は、伝動ギヤ71と伝動ギヤ72との咬合部分(支持部材80における第2カバー部82及び第4カバー部84の開放部78)の高さ付近に設定されている。
【0106】
これにより、支持部材80の第1カバー部81、第2カバー部82及び第3カバー部83の略全ての部分が、潤滑油の液面L1よりも下側に位置しており、伝動ギヤ72の略全ての部分が、潤滑油の液面L1よりも下側に位置している。
【0107】
図2に示すように、ミッションケース3の外部において、供給油路91が油圧ポンプ65と吸入口89とに亘って接続され、供給油路92がチャージポンプ66と吸入口89とに亘って接続されている。ミッションケース3に貯留された潤滑油が、ストレーナ90を通り吸入口89に吸入され、供給油路91,92を介して、作動油として油圧ポンプ65及びチャージポンプ66に供給される。
【0108】
吸入口89及びストレーナ90が後部ケース58の底部58cの凹部58dに設けられることにより、機体5が傾斜した場合に、潤滑油の液面L1が吸入口89及びストレーナ90に対して下側に位置することが避けられ、気泡が吸入口89及びストレーナ90に入ることが避けられる。
【0109】
(油圧ポンプ及びチャージポンプへの供給系における請求項との対応)
以上の構成により、吸入した潤滑油を油圧ポンプ(油圧ポンプ65及びチャージポンプ66)に供給する吸入部(吸入口89及びストレーナ90)が、ミッションケース3の内部において、第1カバー部81に対して第2伝動軸(伝動軸32)が延出された側とは反対側に設けられている。
【0110】
吸入部(吸入口89及びストレーナ90)が、第1カバー部81の下端部及び第2カバー部82の下端部よりも低い位置に設けられている。
ミッションケース3(後部ケース58)の底部58cにおける吸入部(吸入口89及びストレーナ90)の下方の部分に、下方に入り込む凹部58dが設けられ、吸入部(吸入口89及びストレーナ90)が、凹部58dに設けられている。
【0111】
(発明の実施の第1別形態)
支持部材80において、第1カバー部81及び第2カバー部82が備えられ、第3カバー部83が廃止されてもよい。
【0112】
(発明の実施の第2別形態)
図2~
図7に示す構成では、伝動軸31が支持部材80から後方に向けて延出され、伝動軸32が支持部材80から前方に向けて延出されている。
これに対して、伝動軸31,32が支持部材80から同じ後方に向けて延出されてもよく、伝動軸31,32が支持部材80から同じ前方に向けて延出されてもよい。
【0113】
(発明の実施の第3別形態)
エンジン1に代えて、モータ(図示せず)が動力源として備えられてもよい。
エンジン1とモータ(図示せず)とが組み合わされたハイブリッド型式の動力源が備えられてもよい。
【0114】
(発明の実施の第4別形態)
後輪7に代えて、クローラ走行装置が後の走行装置として備えられてもよい。この構成によると、前の走行装置である右及び左の前輪6と、後の走行装置である右及び左のクローラ走行装置が備えられる。
【0115】
(発明の実施の第5別形態)
前輪6及び後輪7が廃止されて、右及び左のクローラ走行装置が走行装置として備えられてもよい。
前述の構成によると、動力源の動力が、伝動軸31(第1伝動軸)から伝動軸32(第2伝動軸)に伝達され、伝動軸32(第2伝動軸)からクローラ走行装置に伝達されるように構成されてもよい。動力源の動力が、伝動軸32(第2伝動軸)から伝動軸31(第1伝動軸)に伝達され、伝動軸31(第1伝動軸)からクローラ走行装置に伝達されるように構成されてもよい。
【0116】
(発明の実施の第6別形態)
ミッションケース3(後部ケース58)の凹部58dが廃止されてもよい。
前述の構成において、吸入口89及びストレーナ90が、第1カバー部81に対して伝動軸32(第2伝動軸)が延出された側とは反対側に設けられ、第1カバー部81及び第2カバー部82と略同じ高さの位置(第1カバー部81の下端部及び第2カバー部82の下端部よりも上側の位置)に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、トラクタばかりではなく、コンバインや乗用型田植機等の農業用の作業車にも適用でき、バックホウやホイルローダ等の建設用の作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0118】
1 エンジン(動力源)
3 ミッションケース
6 前輪(走行装置)
7 後輪(走行装置)
21 後輪デフ装置(後部デフ装置)
31 伝動軸(第1伝動軸)(デフ駆動軸)
32 伝動軸(第2伝動軸)(前輪伝動軸)
58c 底部
58d 凹部
65 油圧ポンプ
66 チャージポンプ(油圧ポンプ)
71 伝動ギヤ(第1伝動ギヤ)
72 伝動ギヤ(第2伝動ギヤ)
80 支持部材
81 第1カバー部
82 第2カバー部
83 第3カバー部
83b 開口部(軸通過部)
87 ベアリング
88 ベアリング
89 吸入口(吸入部)
90 ストレーナ(吸入部)