(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180063
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 23/12 20060101AFI20241219BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20241219BHJP
B43L 19/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B43K23/12
B43K29/02 F
B43L19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099493
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 香寿美
(57)【要約】
【課題】部品点数及び製造コストの増大を抑えつつ、摩擦体の非使用時には、摩擦体をキャップ内に収容した状態を安定して維持でき、かつ外観デザイン性を高めることが可能な筆記具を提供する。
【解決手段】キャップ3は、キャップ筒31と、摩擦体32と、キャップ筒31の内部に前後方向に摺動可能に嵌合する摩擦体ホルダー33と、摩擦体ホルダー33またはキャップ筒31に一体に形成される弾性変形部34と、を有し、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合したときに、摩擦体ホルダー33が押し込まれることで、弾性変形部34が弾性変形しつつ摩擦体ホルダー33が塞ぎ端部側へ移動し、摩擦体32がキャップ筒31の外部へ突出され、キャップ3が軸筒1の後端部から取り外されることで、摩擦体ホルダー33の押し込みが解除され、弾性変形部34の復元変形力により摩擦体ホルダー33が開口端部側へ移動し、摩擦体32がキャップ筒31の内部に収容される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って前後方向に延び、前端部にペン先が配置される軸筒と、
筒状をなし、内部に前記軸筒が着脱可能に嵌合するキャップと、を備え、
前記キャップは、
前後方向に延びるキャップ筒と、
前記キャップ筒の内部に設けられ、前記キャップ筒の両端部のうち、開口端部とは反対側の塞ぎ端部に配置される摩擦体と、
前記摩擦体の前記開口端部側に位置して前記摩擦体に接続され、前記キャップ筒の内部に前後方向に摺動可能に嵌合する摩擦体ホルダーと、
前記摩擦体ホルダーまたは前記キャップ筒に一体に形成され、弾性変形により直径寸法が変化し、その復元変形力により前記摩擦体ホルダーを前記開口端部側へ向けて付勢する弾性変形部と、を有し、
前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記後端部によって前記摩擦体ホルダーが押し込まれることで、前記弾性変形部が弾性変形しつつ前記摩擦体ホルダー及び前記摩擦体が前記塞ぎ端部側へ移動し、前記摩擦体が前記塞ぎ端部から前記キャップ筒の外部へ突出され、
前記キャップが前記軸筒の後端部から取り外されることで、前記後端部による前記摩擦体ホルダーの押し込みが解除され、前記弾性変形部の復元変形力により前記摩擦体ホルダー及び前記摩擦体が前記開口端部側へ移動し、前記摩擦体が前記キャップ筒の内部に収容される、
筆記具。
【請求項2】
前記摩擦体ホルダーは、
前記摩擦体に接続されるホルダー本体と、
前記ホルダー本体から前記開口端部側へ向けて延び、径方向に弾性変形可能なホルダー弾性片と、を有し、
前記ホルダー弾性片は、周方向に並んで複数設けられ、
前記弾性変形部は、複数の前記ホルダー弾性片により構成され、
前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記後端部によって前記摩擦体ホルダーが押し込まれることで、前記弾性変形部が弾性変形しつつ縮径する、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記キャップ筒は、前記キャップ筒の内周面に配置され、前記塞ぎ端部側へ向かうに従い内径寸法が小さくなるキャップテーパ面を有し、
複数の前記ホルダー弾性片は、前記キャップテーパ面に径方向内側から接触する、
請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記キャップ筒は、
前記キャップ筒の前記開口端部が配置される筒本体と、
前記筒本体から前記塞ぎ端部側へ向けて延び、径方向に弾性変形可能なキャップ弾性片と、を有し、
前記キャップ弾性片は、周方向に並んで複数設けられ、
前記弾性変形部は、複数の前記キャップ弾性片により構成され、
前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記後端部によって前記摩擦体ホルダーが押し込まれることで、前記弾性変形部が弾性変形しつつ拡径する、
請求項1に記載の筆記具。
【請求項5】
前記摩擦体ホルダーは、前記摩擦体の前記開口端部側に配置され、前記開口端部側へ向かうに従い外径寸法が大きくなるホルダーテーパ面を有し、
複数の前記キャップ弾性片は、前記ホルダーテーパ面に径方向外側から接触する、
請求項4に記載の筆記具。
【請求項6】
前記軸筒は、前記軸筒の外周面のうち後端部に配置される後部突起を有し、
前記キャップ筒は、前記キャップ筒の内周面に配置される係止突起を有し、
前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記係止突起が、前記後部突起に係止される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項7】
前記摩擦体及び前記摩擦体ホルダーは、前記キャップ筒に対して前記開口端部側へ向けて所定以上の力で押されることにより、前記キャップ筒から抜き出し可能である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項8】
前記摩擦体及び前記摩擦体ホルダーが、単一の部材により一体に形成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項9】
前記軸筒の内部に配置され、前記ペン先に熱変色性インキを供給するインキ貯留筒を備え、
前記摩擦体は、前記熱変色性インキで筆記された筆跡に擦り付けられることで、摩擦熱により前記筆跡を熱変色可能である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中心軸に沿って前後方向に延び、前端部にペン先が配置される軸筒と、筒状をなし、内部に軸筒が着脱可能に嵌合するキャップと、を備えた筆記具が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1、2に記載の筆記具では、摩擦体がキャップに出没可能に設けられている。摩擦体は、ペン先で紙面等に筆記した筆跡を、摩擦により消去(消色)するのに用いられる。摩擦体がキャップから突出した状態とされることで、摩擦体を使用することが可能である。また使用時以外においては、摩擦体をキャップ内に収容しておくことで、摩擦体が汚れたり削れたりするような不具合を抑制できる。また、筆記具の外観デザイン性を高めることができる。
【0004】
具体的に、特許文献1に記載の筆記具では、キャップをペンシル本体(軸筒)の筆記先端の側に嵌着した際は、消ゴム(摩擦体)がキャップ内に自重により収納される。また、キャップをペンシル本体の後端部の側に嵌着した際は、後端部の端面が筒状体の下端を押進して、消ゴムが開口より突出される。
【0005】
また、特許文献2に記載の熱変色性筆記具(筆記具)では、筆記使用時に、キャップを軸筒の尾端部に装着した状態において、軸筒の尾端部が摩擦体を押圧することによって、摩擦体がキャップから外部に突出する。また、非筆記使用時には、キャップを軸筒の尾端部から取り外すことによって、摩擦体に対する押圧が解除され、摩擦体がキャップ内に没入する。詳しくは、キャップ内に摩擦体を付勢する弾発体としての圧縮コイルスプリングが収容されており、キャップを軸筒の尾端部から取り外した状態では、圧縮コイルスプリングの付勢により摩擦体がキャップ内に没入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57-187788号公報
【特許文献2】特開2009-126102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の筆記具では、キャップがペンシル本体の筆記先端の側に嵌着した状態において、キャップが鉛直方向の下側へ向けられた姿勢とされると、消ゴムが自重によりキャップから突出してしまう。このため、消ゴムをキャップ内に収容した状態を安定して維持することができない。
【0008】
また、特許文献2の筆記具では、摩擦体を付勢するための圧縮コイルスプリングが必要であり、その分、部品点数及び製造コストが増大する。
【0009】
本発明は、部品点数及び製造コストの増大を抑えつつ、摩擦体の非使用時においては、摩擦体をキャップ内に収容した状態を安定して維持することができ、これにより摩擦体の汚損や損耗等を抑制でき、かつ外観デザイン性を高めることが可能な筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0011】
〔本発明の態様1〕
中心軸に沿って前後方向に延び、前端部にペン先が配置される軸筒と、筒状をなし、内部に前記軸筒が着脱可能に嵌合するキャップと、を備え、前記キャップは、前後方向に延びるキャップ筒と、前記キャップ筒の内部に設けられ、前記キャップ筒の両端部のうち、開口端部とは反対側の塞ぎ端部に配置される摩擦体と、前記摩擦体の前記開口端部側に位置して前記摩擦体に接続され、前記キャップ筒の内部に前後方向に摺動可能に嵌合する摩擦体ホルダーと、前記摩擦体ホルダーまたは前記キャップ筒に一体に形成され、弾性変形により直径寸法が変化し、その復元変形力により前記摩擦体ホルダーを前記開口端部側へ向けて付勢する弾性変形部と、を有し、前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記後端部によって前記摩擦体ホルダーが押し込まれることで、前記弾性変形部が弾性変形しつつ前記摩擦体ホルダー及び前記摩擦体が前記塞ぎ端部側へ移動し、前記摩擦体が前記塞ぎ端部から前記キャップ筒の外部へ突出され、前記キャップが前記軸筒の後端部から取り外されることで、前記後端部による前記摩擦体ホルダーの押し込みが解除され、前記弾性変形部の復元変形力により前記摩擦体ホルダー及び前記摩擦体が前記開口端部側へ移動し、前記摩擦体が前記キャップ筒の内部に収容される、筆記具。
【0012】
本発明の筆記具では、キャップを軸筒の後端部に嵌合したときに、軸筒の後端部が摩擦体ホルダーを塞ぎ端部側へ押し込み、弾性変形部が弾性変形して縮径または拡径しつつ、摩擦体ホルダーとともに摩擦体が、塞ぎ端部側へ移動する。これにより摩擦体が、キャップ筒から塞ぎ端部側へ向けて外部に突出し、使用可能な状態となる。使用者は、ペン先で紙面等に筆記した筆跡に対して、摩擦体を擦り付けることにより、筆跡を消去(消色)したり、色濃度を変えたり、変色させるなどの作業を行うことができる。
【0013】
また、キャップを軸筒の後端部から取り外すと、軸筒の後端部による摩擦体ホルダーの押し込みが解除され、弾性変形部は復元変形して拡径または縮径する。この復元変形力により、摩擦体ホルダーとともに摩擦体が、開口端部側へ移動する。これにより摩擦体は、キャップ筒の塞ぎ端部内へと収容され、使用不能な状態となる。
【0014】
本発明によれば、キャップを軸筒の後端部に嵌合した状態以外の状態では(例えば、キャップを軸筒の前端部に嵌合した場合などでは)、摩擦体ホルダーが押し込まれたり弾性変形部が弾性変形させられたりすることはなく、摩擦体ホルダーが塞ぎ端部側へ移動することもない。このため、筆記具の姿勢等に関わらず、摩擦体をキャップ筒内に収容した状態を安定して維持することができる。したがって、摩擦体の非使用時において、摩擦体が他の物品等に接触して汚れたり削れたりするような不具合を安定して抑制することができ、かつ、筆記具の外観デザイン性を高めることができる。
【0015】
そして本発明では、弾性変形部と、摩擦体ホルダーまたはキャップ筒とが、単一の部材により一体的に形成されている。このため、キャップの内部に従来のような、摩擦体を付勢するための圧縮コイルスプリング等の別部材を設ける必要はない。本発明の筆記具によれば、部品点数及び製造コストの増大が抑えられ、キャップの組み立てが容易である。
【0016】
〔本発明の態様2〕
前記摩擦体ホルダーは、前記摩擦体に接続されるホルダー本体と、前記ホルダー本体から前記開口端部側へ向けて延び、径方向に弾性変形可能なホルダー弾性片と、を有し、前記ホルダー弾性片は、周方向に並んで複数設けられ、前記弾性変形部は、複数の前記ホルダー弾性片により構成され、前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記後端部によって前記摩擦体ホルダーが押し込まれることで、前記弾性変形部が弾性変形しつつ縮径する、態様1に記載の筆記具。
【0017】
この場合、弾性変形部が、摩擦体ホルダーと一体に形成される。キャップを軸筒の後端部に嵌合したときに、この後端部によって摩擦体ホルダーが押し込まれ、複数のホルダー弾性片が径方向に弾性変形し、これらホルダー弾性片の全体としての直径寸法(つまり弾性変形部の直径寸法)が縮径されつつ、摩擦体ホルダー及び摩擦体が塞ぎ端部側へ移動する。これにより、摩擦体がキャップ筒から外部に突出し、使用可能な状態となる。
【0018】
また、キャップを軸筒の後端部から取り外すと、この後端部による摩擦体ホルダーの押し込みが解除され、複数のホルダー弾性片が復元変形し、これらホルダー弾性片の全体としての直径寸法(弾性変形部の直径寸法)が拡径しつつ元に戻る。この際の弾性変形部の復元変形力によって、摩擦体ホルダー及び摩擦体が開口端部側へ移動する。これにより、摩擦体はキャップ筒の内部に収容されて、使用不能な状態となる。
【0019】
上記構成によれば、弾性変形部を摩擦体ホルダーに一体に形成した場合において、上述した本発明の作用効果が安定して奏功される。
【0020】
〔本発明の態様3〕
前記キャップ筒は、前記キャップ筒の内周面に配置され、前記塞ぎ端部側へ向かうに従い内径寸法が小さくなるキャップテーパ面を有し、複数の前記ホルダー弾性片は、前記キャップテーパ面に径方向内側から接触する、態様2に記載の筆記具。
【0021】
この場合、軸筒の後端部によって摩擦体ホルダーが塞ぎ端部側へ押し込まれたときに、複数のホルダー弾性片が、塞ぎ端部側へ移動しつつキャップテーパ面の傾斜に沿って弾性変形し、これらホルダー弾性片の全体としての直径寸法(つまり弾性変形部の直径寸法)が安定して縮径させられる。
【0022】
また、軸筒の後端部による摩擦体ホルダーの押し込みが解除されたときに、複数のホルダー弾性片が復元変形しつつキャップテーパ面を径方向外側へ押す。この押圧力が、キャップテーパ面の傾斜により前後方向への力に変換されることで、摩擦体ホルダー及び摩擦体が、開口端部側へ移動する。また、これらホルダー弾性片の全体としての直径寸法(弾性変形部の直径寸法)が安定して拡径され、元に戻る。
【0023】
上記構成によれば、弾性変形部を摩擦体ホルダーに一体に形成した場合において、弾性変形部の作用(機能)がより安定する。
【0024】
〔本発明の態様4〕
前記キャップ筒は、前記キャップ筒の前記開口端部が配置される筒本体と、前記筒本体から前記塞ぎ端部側へ向けて延び、径方向に弾性変形可能なキャップ弾性片と、を有し、前記キャップ弾性片は、周方向に並んで複数設けられ、前記弾性変形部は、複数の前記キャップ弾性片により構成され、前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記後端部によって前記摩擦体ホルダーが押し込まれることで、前記弾性変形部が弾性変形しつつ拡径する、態様1に記載の筆記具。
【0025】
この場合、弾性変形部が、キャップ筒と一体に形成される。キャップを軸筒の後端部に嵌合したときに、この後端部によって摩擦体ホルダーが押し込まれ、複数のキャップ弾性片が径方向に弾性変形し、これらキャップ弾性片の全体としての直径寸法(つまり弾性変形部の直径寸法)が拡径されつつ、摩擦体ホルダー及び摩擦体が塞ぎ端部側へ移動する。これにより、摩擦体がキャップ筒から外部に突出し、使用可能な状態となる。
【0026】
また、キャップを軸筒の後端部から取り外すと、この後端部による摩擦体ホルダーの押し込みが解除され、複数のキャップ弾性片が復元変形し、これらキャップ弾性片の全体としての直径寸法(弾性変形部の直径寸法)が縮径しつつ元に戻る。この際の弾性変形部の復元変形力によって、摩擦体ホルダー及び摩擦体が開口端部側へ移動する。これにより、摩擦体はキャップ筒の内部に収容されて、使用不能な状態となる。
【0027】
上記構成によれば、弾性変形部をキャップ筒に一体に形成した場合において、上述した本発明の作用効果が安定して奏功される。
【0028】
〔本発明の態様5〕
前記摩擦体ホルダーは、前記摩擦体の前記開口端部側に配置され、前記開口端部側へ向かうに従い外径寸法が大きくなるホルダーテーパ面を有し、複数の前記キャップ弾性片は、前記ホルダーテーパ面に径方向外側から接触する、態様4に記載の筆記具。
【0029】
この場合、軸筒の後端部によって摩擦体ホルダーが塞ぎ端部側へ押し込まれたときに、塞ぎ端部側へ移動するホルダーテーパ面の傾斜に沿って複数のキャップ弾性片が弾性変形し、これらキャップ弾性片の全体としての直径寸法(つまり弾性変形部の直径寸法)が安定して拡径させられる。
【0030】
また、軸筒の後端部による摩擦体ホルダーの押し込みが解除されたときに、複数のキャップ弾性片が復元変形しつつホルダーテーパ面を径方向内側へ押す。この押圧力が、ホルダーテーパ面の傾斜により前後方向への力に変換されることで、摩擦体ホルダー及び摩擦体が、開口端部側へ移動する。また、これらキャップ弾性片の全体としての直径寸法(弾性変形部の直径寸法)が安定して縮径され、元に戻る。
【0031】
上記構成によれば、弾性変形部をキャップ筒に一体に形成した場合において、弾性変形部の作用(機能)がより安定する。
【0032】
〔本発明の態様6〕
前記軸筒は、前記軸筒の外周面のうち後端部に配置される後部突起を有し、前記キャップ筒は、前記キャップ筒の内周面に配置される係止突起を有し、前記キャップが前記軸筒の後端部に嵌合したときに、前記係止突起が、前記後部突起に係止される、態様1から5のいずれか1つに記載の筆記具。
【0033】
この場合、摩擦体がキャップ筒から外部に突出した状態(摩擦体を使用可能な状態)が、安定して維持される。
【0034】
〔本発明の態様7〕
前記摩擦体及び前記摩擦体ホルダーは、前記キャップ筒に対して前記開口端部側へ向けて所定以上の力で押されることにより、前記キャップ筒から抜き出し可能である、態様1から6のいずれか1つに記載の筆記具。
【0035】
上記構成によれば、例えば、摩擦体が汚損や損耗等により交換が必要となった場合に、簡単な操作によって、摩擦体を新しいものに交換することができる。
【0036】
〔本発明の態様8〕
前記摩擦体及び前記摩擦体ホルダーが、単一の部材により一体に形成される、態様1から7のいずれか1つに記載の筆記具。
【0037】
この場合、キャップの部品点数をより少なく抑えることができ、キャップの組み立てが容易である。
【0038】
〔本発明の態様9〕
前記軸筒の内部に配置され、前記ペン先に熱変色性インキを供給するインキ貯留筒を備え、前記摩擦体は、前記熱変色性インキで筆記された筆跡に擦り付けられることで、摩擦熱により前記筆跡を熱変色可能である、態様1から8のいずれか1つに記載の筆記具。
【発明の効果】
【0039】
本発明の前記態様の筆記具によれば、部品点数及び製造コストの増大を抑えつつ、摩擦体の非使用時においては、摩擦体をキャップ内に収容した状態を安定して維持することができ、これにより摩擦体の汚損や損耗等を抑制でき、かつ外観デザイン性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、第1実施形態の筆記具を示す断面図(縦断面図)であり、詳しくは、非筆記姿勢のキャップが軸筒の前端部に嵌合し、摩擦体が使用不能とされた状態を表している。
【
図2】
図2は、第1実施形態の筆記具の摩擦体及び摩擦体ホルダー(弾性変形部)を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の筆記具を示す断面図(縦断面図)であり、詳しくは、筆記姿勢のキャップが軸筒の後端部に嵌合し、摩擦体が使用可能とされた状態を表している。
【
図4】
図4は、熱変色性インキの変色挙動を説明するグラフである。
【
図5】
図5は、第2実施形態の筆記具を示す断面図(縦断面図)であり、詳しくは、非筆記姿勢のキャップが軸筒の前端部に嵌合し、摩擦体が使用不能とされた状態を表している。
【
図6】
図6は、第2実施形態の筆記具のキャップ筒(弾性変形部)を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の筆記具を示す断面図(縦断面図)であり、詳しくは、筆記姿勢のキャップが軸筒の後端部に嵌合し、摩擦体が使用可能とされた状態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の筆記具10について、
図1~
図4を参照して説明する。本実施形態の筆記具10は、例えばボールペン等である。
【0042】
図1に示すように、筆記具10は、中心軸Cを中心とする概略円柱状をなしている。筆記具10は、中心軸Cに沿って延びる軸筒1と、軸筒1の内部に設けられる筆記部材2と、筒状をなし、内部に軸筒1が着脱可能に嵌合するキャップ3と、を備える。
軸筒1、筆記部材2及びキャップ3は、中心軸Cを共通軸として互いに同軸に配置されている。
【0043】
本実施形態で用いる方向の定義について、説明する。
本実施形態では、筆記具10の中心軸Cが延びる方向、つまり中心軸Cに沿う方向を、前後方向と呼ぶ。各図において、前後方向はY軸方向に相当する。前後方向のうち、前側は-Y側に相当し、後側は+Y側に相当する。なお、前後方向は軸方向と言い換えてもよい。この場合、例えば、前側は軸方向一方側に相当し、後側は軸方向他方側に相当する。
【0044】
中心軸Cと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Cに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Cから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
また、中心軸C回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
【0045】
筆記具10の各構成要素について、説明する。
軸筒1は、中心軸Cを中心とする筒状をなしており、前後方向に延びる。具体的に、軸筒1は、有頂円筒状をなしている。軸筒1は、前後方向に延びる周壁11と、周壁11の後端部に接続される後壁12と、軸筒開口部13と、前部突起14と、後部突起15と、を有する。
【0046】
周壁11は、中心軸Cを中心とする略円筒状をなしている。周壁11の前端部は、前側へ向かうに従い直径寸法が小さくなるテーパ筒部11aと、このテーパ筒部11aよりも後側に配置され、直径寸法が前後方向に沿って略一定の円筒部11bと、を有する。周壁11のうち前端部よりも後側に配置される円筒状の部分11cは、直径寸法が前後方向に沿って略一定である。
【0047】
後壁12は、中心軸Cを中心とする円板状をなしており、中心軸Cと垂直な方向に広がる。後壁12は、周壁11の後端部を塞いでいる。
【0048】
軸筒開口部13は、軸筒1の前端部に配置されている。具体的に、軸筒開口部13は、周壁11の前端部のうちテーパ筒部11aに配置されている。軸筒開口部13は、中心軸Cを中心とする円孔状をなしている。本実施形態では、軸筒開口部13の内径寸法が、周壁11のうち軸筒開口部13以外の部分の内径寸法よりも小さい。
【0049】
前部突起14は、軸筒1の外周面のうち前端部(前側部分)に配置される。具体的に、前部突起14は、周壁11の前端部のうち円筒部11bに配置されている。前部突起14は、周壁11の外周面から径方向外側に突出する。前部突起14は、周方向に延びるリブ状である。本実施形態では前部突起14が、周壁11の外周面上を全周にわたって延びる環状のリブとされている。
【0050】
後部突起15は、軸筒1の外周面のうち後端部(後側部分)に配置される。具体的に、後部突起15は、周壁11の円筒状の部分11cの後端部に配置されている。後部突起15は、周壁11の外周面から径方向外側に突出する。後部突起15は、周方向に延びるリブ状である。本実施形態では後部突起15が、周壁11の外周面上を全周にわたって延びる環状のリブとされている。
【0051】
また特に図示しないが、軸筒1は、円筒状の軸筒本体と、軸筒本体の後端部内に嵌合等によって固定される尾栓と、軸筒本体の前側に配置され、螺着等により軸筒本体に着脱可能に取り付けられるテーパ筒状の口金と、を有していてもよい。すなわち、軸筒1は、複数の部材を組み合わせて構成されていてもよい。この場合、例えば、軸筒本体には、周壁11のうち円筒状の部分11c、及び円筒部11bの後部が含まれる。尾栓には、後壁12が含まれる。口金には、周壁11のうち円筒部11bの前部、及びテーパ筒部11aが含まれる。軸筒本体及び尾栓は、例えば樹脂製等である。口金は、例えば金属製等である。このように軸筒1が、軸筒本体及び尾栓と、口金と、に分割可能に構成されていると、筆記具10の製造及び組み立て、並びに筆記部材2の交換などが容易に行える。
【0052】
筆記部材2は、軸筒1の内部に配置される。また筆記部材2は、軸筒1の内部から取り外し可能である。すなわち、本実施形態の筆記部材2は、交換可能である。筆記部材2は、替芯またはレフィル等と言い換えてもよい。
【0053】
筆記部材2は、中心軸Cを中心とする多段円筒状であり、前後方向に延びる。なお、筆記部材2の内部の詳細な構成については、図示を省略している。筆記部材2は、筆記部材2の前端部に配置されるペン先21と、ペン先21よりも後側に配置されるインキ貯留筒22と、を有する。すなわち、筆記具10は、ペン先21及びインキ貯留筒22を備える。
【0054】
ペン先21は、軸筒1の前端部に配置される。ペン先21は、中心軸Cを中心とする略円筒状であり、前後方向に延びる。ペン先21は、軸筒開口部13に挿入されており、軸筒1の内部と外部とにわたって延びている。ペン先21の前端部は、軸筒1よりも前側に突出する。ペン先21は、筆記部材2のうち最も外径寸法が小さい部分とされている。特に図示しないが、ペン先21は、ペン先21の前端部に配置されるボールと、ボールを保持するホルダーと、を有する。
【0055】
インキ貯留筒22は、軸筒1の内部に配置される。インキ貯留筒22は、中心軸Cを中心とする円筒状であり、前後方向に延びる。インキ貯留筒22の前後方向の寸法は、ペン先21の前後方向の寸法よりも大きく、軸筒1の前後方向の寸法よりも小さい。インキ貯留筒22は、筆記部材2のうち最も外径寸法が大きい部分とされている。
【0056】
インキ貯留筒22の内部には、インキが貯留されており、本実施形態では熱変色性インキが貯留される。インキ貯留筒22の内部とペン先21の内部とは、互いに連通している。インキ貯留筒22は、ペン先21に熱変色性インキを供給する。
【0057】
ここで、熱変色性インキについて説明する。
本実施形態の熱変色性インキは、可逆熱変色性インキであることが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0058】
また、可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(A)電子供与性呈色性有機化合物、(B)電子受容性化合物、及び(C)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0059】
図4は、熱変色性インキの変色挙動を説明するグラフであり、詳しくは、温度変化によるインキの着色濃度(色濃度)の変化をプロットして繋いだ線の形状を表している。
図4に示すように、熱変色性インキは、温度を変色温度域よりも低温側から上昇させていく場合と、これとは逆に変色温度域よりも高温側から下降させていく場合とで、異なる経路を辿って変色する。
【0060】
詳しくは、本実施形態の熱変色性インキには、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2~t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図4において、△Hは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。△Hの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在し得ない。△Hの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0061】
本実施形態では、後述する摩擦体32の摩擦熱による熱変色性インキの変色温度が、25℃~95℃(好ましくは36℃~95℃)に設定される。即ち、本実施形態では、高温側変色点〔完全消色温度(t4)〕を、25℃~95℃(好ましくは、36℃~90℃)の範囲に設定し、低温側変色点〔完全発色温度(t1)〕を、-30℃~+20℃(好ましくは、-30℃~+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦体32による摩擦熱で容易に変色させることができる。
【0062】
より望ましくは、低温側変色点(完全発色温度t1)が-30℃~-10℃の範囲の任意の温度に設定され、高温側変色点(完全消色温度t4)が60℃~80℃の範囲の任意の温度に設定され、ヒステリシス幅△Hが40℃~60℃の範囲を示す可逆熱変色性インキが採用される。
【0063】
キャップ3は、中心軸Cを中心とする筒状をなしており、前後方向に延びる。具体的に、キャップ3は、有底円筒状(有頂円筒状)をなしており、前後方向の両端部のうち、一端部が開口され、他端部が塞がれている。キャップ3の内部には、軸筒1が嵌合可能である。
【0064】
本実施形態では、キャップ3の前後方向の両端部のうち、一端部を開口端部と呼び、他端部を塞ぎ端部と呼ぶ。また、以下のキャップ3に関する説明においては、前後方向のうち、塞ぎ端部から開口端部へ向かう方向を開口端部側と呼び、開口端部から塞ぎ端部へ向かう方向を塞ぎ端部側と呼ぶ場合がある。
【0065】
図1に示すように、キャップ3の開口端部が後側(+Y側)を向く姿勢において、キャップ3は、軸筒1に対して前側(-Y側)から嵌合可能である。本実施形態では、キャップ3の開口端部が後側を向く姿勢を、「筆記時以外の姿勢」や「非筆記姿勢」などと呼ぶ場合がある。非筆記姿勢とされたキャップ3は、軸筒1の前端部に着脱可能に嵌合する。
【0066】
また
図3に示すように、キャップ3の開口端部が前側(-Y側)を向く姿勢において、キャップ3は、軸筒1に対して後側(+Y側)から嵌合可能である。本実施形態では、キャップ3の開口端部が前側を向く姿勢を、「筆記時の姿勢」や「筆記姿勢」などと呼ぶ場合がある。筆記姿勢とされたキャップ3は、軸筒1の後端部に着脱可能に嵌合する。
【0067】
図1~
図3に示すように、キャップ3は、キャップ筒31と、摩擦体32と、摩擦体ホルダー33と、弾性変形部34と、を有する。
【0068】
キャップ筒31は、中心軸Cを中心とする筒状であり、本実施形態では円筒状をなしている。キャップ筒31は、前後方向に延びる。キャップ筒31は、キャップ3の本体部分を構成する筒状部材である。キャップ筒31の塞ぎ端部の内径寸法は、キャップ筒31の開口端部の内径寸法よりも小さい。キャップ筒31の内部には、開口端部側から軸筒1が着脱可能に嵌合する。キャップ筒31は、例えば樹脂製等である。
【0069】
キャップ筒31は、係止突起31aと、抜止め突起31bと、キャップテーパ面31cと、段部31dと、を有する。
【0070】
係止突起31aは、キャップ筒31の内周面から径方向内側に突出する。本実施形態では係止突起31aが、キャップ筒31の内周面のうち、前後方向において開口端部と塞ぎ端部との間に位置する中間部分に配置されている。係止突起31aは、周方向に延びるリブ状をなしている。本実施形態では係止突起31aが、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。
【0071】
図1に示すように、非筆記姿勢とされたキャップ3が、軸筒1の前端部に嵌合したときに、係止突起31aは、前部突起14に対して後側から接触し、係止される。使用者が、軸筒1に対してキャップ3を所定以上の力で前側へ移動させることにより、係止突起31aは、前部突起14を前側へ乗り越え可能である。すなわち、使用者の操作により、係止突起31aと前部突起14との係止状態は解除可能とされている。
【0072】
図3に示すように、筆記姿勢とされたキャップ3が、軸筒1の後端部に嵌合したときに、係止突起31aは、後部突起15に対して前側から接触し、係止される。使用者が、軸筒1に対してキャップ3を所定以上の力で後側へ移動させることにより、係止突起31aは、後部突起15を後側へ乗り越え可能である。すなわち、使用者の操作により、係止突起31aと後部突起15との係止状態は解除可能とされている。
【0073】
抜止め突起31bは、キャップ筒31の内周面の塞ぎ端部に配置される。抜止め突起31bは、キャップ筒31の内周面から径方向内側に突出する。抜止め突起31bは、周方向に延びるリブ状である。本実施形態では抜止め突起31bが、キャップ筒31の内周面上を全周にわたって延びる環状のリブとされている。抜止め突起31bの内径寸法は、キャップ筒31のうち抜止め突起31b以外の部分の内径寸法よりも小さい。すなわち、抜止め突起31bは、キャップ筒31の中で最も内径寸法が小さくされている。
【0074】
キャップテーパ面31cは、キャップ筒31の内周面に配置されている。キャップテーパ面31cは、前後方向において、係止突起31aと抜止め突起31bとの間に位置する。キャップテーパ面31cは、塞ぎ端部側へ向かうに従い内径寸法が小さくなるテーパ面状をなしている。
本実施形態では
図3に示すように、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合した状態で、軸筒1の後端外周部(後壁12の外周部)が、キャップテーパ面31cに隙間をあけて対向し、または接触する。
【0075】
段部31dは、キャップ筒31の内周面に配置され、塞ぎ端部側を向く段差状の面である。段部31dは、中心軸Cを中心とする環状の面であり、本実施形態では、中心軸Cと垂直な方向に広がる環状の平面とされている。段部31dは、キャップテーパ面31cの開口端部側の端部に接続されている。
【0076】
図1に示すように、摩擦体32は、キャップ筒31の内部に設けられ、キャップ筒31の両端部のうち、開口端部とは反対側の塞ぎ端部に配置される。摩擦体32は、中心軸Cを中心とする筒状をなしており、前後方向に延びる。具体的に、摩擦体32は、有底円筒状(有頂円筒状)をなしている。
【0077】
また、
図3に示すように、摩擦体32は、後述する摩擦体ホルダー33とともにキャップ筒31内を前後方向に移動し、キャップ筒31から塞ぎ端部側へ向けて突出可能である。摩擦体32は、熱変色性インキで筆記された筆跡に擦り付けられることで、摩擦熱によりこの筆跡を熱変色可能である。
【0078】
図2及び
図3に示すように、摩擦体32は、周壁32aと、鍔部32bと、塞ぎ壁32cと、を有する。
周壁32aは、中心軸Cを中心とする円筒状をなしており、前後方向に延びる。塞ぎ壁32cは、中心軸Cを中心とする円板状をなしており、中心軸Cと垂直な方向に広がる。塞ぎ壁32cは、周壁32aの塞ぎ端部側の端部に接続される。塞ぎ壁32cは、周壁32aの塞ぎ端部側の開口を塞ぐ。
【0079】
鍔部32bは、周壁32aの外周面のうち開口端部側の端部に配置される。鍔部32bは、周壁32aの外周面から径方向外側に突出し、周方向に延びる。鍔部32bは、周壁32aの開口端部側の端部から径方向外側に広がるフランジ状である。本実施形態では鍔部32bが、中心軸Cを中心とする円環板状をなしている。
【0080】
鍔部32bは、キャップ筒31の抜止め突起31bよりも開口端部側に配置されている。鍔部32bの外径寸法は、抜止め突起31bの内径寸法よりも大きい。鍔部32bは、抜止め突起31bに対して開口端部側から接触可能である。この接触により、摩擦体32が、キャップ筒31内から塞ぎ端部側へ向けて意図せず外部に抜け出すようなことが抑えられる。
【0081】
摩擦体32は、キャップ筒31よりも軟質の材料により構成されている。摩擦体32の構成材料としては、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、具体的には、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0082】
本実施形態において、摩擦体32を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に消しカス(摩耗屑)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。摩擦体32の構成材料には、複数のエラストマーが含まれていてもよい。また、摩擦体32の構成材料には、エラストマーと、比較的弾性が小さい合成樹脂と、の混合物が含まれていてもよい。
【0083】
摩擦体ホルダー33は、キャップ筒31の内部に設けられる。摩擦体ホルダー33は、中心軸Cを中心とする略円筒状をなしている。摩擦体ホルダー33は、摩擦体32の開口端部側に位置し、摩擦体32に接続される。摩擦体ホルダー33は、摩擦体32を保持している。摩擦体ホルダー33は、キャップ筒31の内部に前後方向に摺動可能に嵌合する。摩擦体ホルダー33及び摩擦体32は、キャップ筒31内を一体的に前後方向に移動する。
【0084】
摩擦体ホルダー33は、摩擦体32に接続されるホルダー本体33aと、ホルダー本体33aから開口端部側へ向けて延び、径方向に弾性変形可能なホルダー弾性片33bと、を有する。
【0085】
ホルダー本体33aは、中心軸Cを中心とする多段円筒状をなしており、前後方向に延びる。ホルダー本体33aは、摩擦体32が嵌合する嵌合筒部33cを有する。嵌合筒部33cは、中心軸Cを中心とする有底円筒状(有頂円筒状)をなしている。摩擦体32は、嵌合筒部33cの外側に嵌合する。嵌合筒部33cの直径寸法は、ホルダー本体33aのうち摩擦体32よりも開口端部側に位置する筒状部分の直径寸法よりも小さい。また、ホルダー本体33aの前記筒状部分の外径寸法(最大寸法)は、キャップ筒31の抜止め突起31bの内径寸法よりも大きい。
【0086】
ホルダー弾性片33bは、ホルダー本体33aのうち摩擦体32よりも開口端部側に位置する筒状部分から、開口端部側へ向けて突出している。また、ホルダー弾性片33bは、ホルダー本体33aから開口端部側へ向かうに従い、径方向外側へ向けて延びている。
【0087】
ホルダー弾性片33bは、板状をなしており、その一対の板面が径方向を向く。ホルダー弾性片33bは、中心軸Cと垂直な断面の形状が、周方向に延びる湾曲した円弧状をなしている。
【0088】
ホルダー弾性片33bは、摺動突起33dを有する。摺動突起33dは、ホルダー弾性片33bの外周面のうち開口端部側の端部から径方向外側に突出し、周方向に延びている。摺動突起33dは、リブ状をなしている。
【0089】
ホルダー弾性片33bは、摩擦体ホルダー33に、周方向に並んで複数設けられる。複数のホルダー弾性片33bは、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。本実施形態ではホルダー弾性片33bが、周方向において等ピッチで3つ設けられている。
【0090】
複数のホルダー弾性片33bは、キャップ筒31のキャップテーパ面31cに径方向内側から接触する。詳しくは、複数のホルダー弾性片33bの各摺動突起33dが、それぞれ、キャップテーパ面31cに対して前後方向に摺動可能に接触する。
【0091】
図1に示すように、ホルダー弾性片33bのうち開口端部側を向く端面は、キャップ筒31の段部31dに離間可能に接触する。すなわち、摩擦体ホルダー33の開口端部側の端部は、段部31dに対して塞ぎ端部側から接触する。
【0092】
この接触によって、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が、キャップ筒31内でそれ以上に開口端部側へ移動することが規制される。すなわち、キャップ3が軸筒1から取り外された際に、前記接触によって、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が、キャップ筒31内から開口端部側へ意図せず抜け出して脱落するようなことが抑えられる。
【0093】
本実施形態では、上述のようにホルダー弾性片33bの開口端部側を向く端面と、キャップ筒31の段部31dとが接触した状態で、使用者が、摩擦体32の塞ぎ壁32cを開口端部側へ向けて所定以上の力で押し込むことにより、ホルダー弾性片33bは、弾性変形しつつ段部31dを開口端部側へ乗り越え可能である。
【0094】
これにより、摩擦体32及び摩擦体ホルダー33を、キャップ筒31内から開口端部側へ抜き出して、キャップ外部に取り出すことができる。すなわち、キャップ3が軸筒1から取り外された状態で、摩擦体32及び摩擦体ホルダー33は、キャップ筒31に対して開口端部側へ向けて所定以上の力で押されることにより、キャップ筒31から抜き出し可能とされている。
【0095】
摩擦体ホルダー33は、例えば、摩擦体32よりも硬質の材料により構成されている。摩擦体ホルダー33の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエステル(PEs)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、及びナイロン6,6等の合成樹脂、または金属等が挙げられる。また、摩擦体ホルダー33の構成材料として、例えば、Hytrel(登録商標)等のポリエステル系熱可塑性エラストマー、SEBS、PCABS等を用いてもよい。
【0096】
弾性変形部34は、摩擦体ホルダー33またはキャップ筒31に一体に形成される。本実施形態では弾性変形部34が、摩擦体ホルダー33に一体に形成されている。
図2に示すように、弾性変形部34は、摩擦体ホルダー33の複数のホルダー弾性片33bにより構成される。弾性変形部34は、中心軸Cを中心とする略環状(略筒状)をなしている。
【0097】
詳しくは、
図1及び
図3に示すように、複数のホルダー弾性片33bが、キャップテーパ面31cに摺接しつつ前後方向に移動することで径方向に弾性変形し、これにより、弾性変形部34は弾性変形する。弾性変形部34は、弾性変形により直径寸法が変化し、その復元変形力により摩擦体ホルダー33を開口端部側へ向けて付勢する。
【0098】
具体的には、
図3に示すように、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合したときに、この後端部によって摩擦体ホルダー33が押し込まれることで、弾性変形部34が弾性変形しつつ、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が塞ぎ端部側へ移動する。これにより、摩擦体32は、キャップ筒31の塞ぎ端部からキャップ筒31の外部へ突出される。なお本実施形態ではこのとき、弾性変形部34が弾性変形しつつ縮径する。
また、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合したときに、係止突起31aが後部突起15を前側へ乗り越え、これらの突起31a,15同士が係止される。
【0099】
また、キャップ3が軸筒1の後端部から取り外されることで、この後端部による摩擦体ホルダー33の押し込みが解除され、弾性変形部34の復元変形力により、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が開口端部側へ移動する。これにより、摩擦体32は、キャップ筒31の内部に収容される(
図1を参照)。なお本実施形態ではこのとき、弾性変形部34が復元変形しつつ拡径する。
【0100】
また
図1に示すように、キャップ3が軸筒1の前端部に嵌合したときに、摩擦体32がキャップ筒31内に収容された状態は維持される。本実施形態では、キャップ3が軸筒1の前端部に嵌合した状態で、この前端部と摩擦体ホルダー33との間には隙間が設けられており、これらが接触することはない。なおこの状態において、軸筒1の前端部のうちテーパ筒部11aが、複数のホルダー弾性片33b(つまり弾性変形部34)に、径方向内側から接触していてもよい。
また、キャップ3が軸筒1の前端部に嵌合したときに、係止突起31aが前部突起14を後側へ乗り越え、これらの突起31a,14同士が係止される。
【0101】
以上説明した本実施形態の筆記具10では、キャップ3を軸筒1の後端部に嵌合したときに、軸筒1の後端部が摩擦体ホルダー33を塞ぎ端部側へ押し込み、弾性変形部34が弾性変形して縮径しつつ、摩擦体ホルダー33とともに摩擦体32が、塞ぎ端部側へ移動する。これにより摩擦体32が、キャップ筒31から塞ぎ端部側へ向けて外部に突出し、使用可能な状態となる。使用者は、ペン先21で紙面等に筆記した筆跡に対して、摩擦体32を擦り付けることにより、筆跡を消去(消色)したり、色濃度を変えたり、変色させるなどの作業を行うことができる。
【0102】
また、キャップ3を軸筒1の後端部から取り外すと、軸筒1の後端部による摩擦体ホルダー33の押し込みが解除され、弾性変形部34は復元変形して拡径する。この復元変形力により、摩擦体ホルダー33とともに摩擦体32が、開口端部側へ移動する。これにより摩擦体32は、キャップ筒31の塞ぎ端部内へと収容され、使用不能な状態となる。
【0103】
本実施形態によれば、キャップ3を軸筒1の後端部に嵌合した状態以外の状態では(例えば
図1に示すように、キャップ3を軸筒1の前端部に嵌合した場合などでは)、摩擦体ホルダー33が押し込まれたり弾性変形部34が弾性変形させられたりすることはなく、摩擦体ホルダー33が塞ぎ端部側へ移動することもない。このため、筆記具10の姿勢等に関わらず、摩擦体32をキャップ筒31内に収容した状態を安定して維持することができる。したがって、摩擦体32の非使用時において、摩擦体32が他の物品等に接触して汚れたり削れたりするような不具合を安定して抑制することができ、かつ、筆記具10の外観デザイン性を高めることができる。
【0104】
そして本実施形態では、弾性変形部34と、摩擦体ホルダー33とが、単一の部材により一体的に形成されている。このため、キャップ3の内部に従来のような、摩擦体32を付勢するための圧縮コイルスプリング等の別部材を設ける必要はない。本実施形態の筆記具10によれば、部品点数及び製造コストの増大が抑えられ、キャップ3の組み立てが容易である。
【0105】
具体的に、本実施形態では弾性変形部34が、摩擦体ホルダー33のうち、弾性変形可能な複数のホルダー弾性片33bにより構成される。
キャップ3を軸筒1の後端部に嵌合したときに、この後端部によって摩擦体ホルダー33が押し込まれ、複数のホルダー弾性片33bが径方向に弾性変形し、これらホルダー弾性片33bの全体としての直径寸法(つまり弾性変形部34の直径寸法)が縮径されつつ、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が塞ぎ端部側へ移動する。これにより、摩擦体32がキャップ筒31から外部に突出し、使用可能な状態となる。
【0106】
また、キャップ3を軸筒1の後端部から取り外すと、この後端部による摩擦体ホルダー33の押し込みが解除され、複数のホルダー弾性片33bが復元変形し、これらホルダー弾性片33bの全体としての直径寸法(弾性変形部34の直径寸法)が拡径しつつ元に戻る。この際の弾性変形部34の復元変形力によって、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が開口端部側へ移動する。これにより、摩擦体32はキャップ筒31の内部に収容されて、使用不能な状態となる。
【0107】
上記構成によれば、弾性変形部34を摩擦体ホルダー33に一体に形成した場合において、上述した本実施形態の作用効果が安定して奏功される。
【0108】
また本実施形態では、キャップ筒31が、キャップ筒31の内周面に配置され、塞ぎ端部側へ向かうに従い内径寸法が小さくなるキャップテーパ面31cを有しており、複数のホルダー弾性片33bは、キャップテーパ面31cに径方向内側から接触する。
この場合、軸筒1の後端部によって摩擦体ホルダー33が塞ぎ端部側へ押し込まれたときに、複数のホルダー弾性片33bが、塞ぎ端部側へ移動しつつキャップテーパ面31cの傾斜に沿って弾性変形し、これらホルダー弾性片33bの全体としての直径寸法(つまり弾性変形部34の直径寸法)が安定して縮径させられる。
【0109】
また、軸筒1の後端部による摩擦体ホルダー33の押し込みが解除されたときに、複数のホルダー弾性片33bが復元変形しつつキャップテーパ面31cを径方向外側へ押す。この押圧力が、キャップテーパ面31cの傾斜により前後方向への力に変換されることで、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が、開口端部側へ移動する。また、これらホルダー弾性片33bの全体としての直径寸法(弾性変形部34の直径寸法)が安定して拡径され、元に戻る。
【0110】
上記構成によれば、弾性変形部34を摩擦体ホルダー33に一体に形成した場合において、弾性変形部34の作用(機能)がより安定する。
【0111】
また本実施形態では、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合したときに、係止突起31aが、後部突起15に係止される。
この場合、摩擦体32がキャップ筒31から外部に突出した状態(摩擦体32を使用可能な状態)が、安定して維持される。
【0112】
また本実施形態では、キャップ3が軸筒1の前端部に嵌合したときに、係止突起31aが、前部突起14に係止される。
したがって、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合したとき、及び、軸筒1の前端部に嵌合したときに、それぞれ、キャップ筒31の共通の構成要素である係止突起31aを用いて、軸筒1に対するキャップ3の取付姿勢を安定させることができる。キャップ筒31の構造を簡素化しつつ、上述の作用効果を得ることができる。
【0113】
また本実施形態では、摩擦体32及び摩擦体ホルダー33が、キャップ筒31に対して開口端部側へ向けて所定以上の力で押されることにより、キャップ筒31から抜き出し可能である。
上記構成によれば、例えば、摩擦体32が汚損や損耗等により交換が必要となった場合に、簡単な操作によって、摩擦体32を新しいものに交換することができる。
【0114】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の筆記具20について、
図5~
図7を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また、方向の定義やキャップ3の姿勢の定義についても、前述の実施形態と同様である。
【0115】
本実施形態の筆記具20は、前述の実施形態で説明した筆記具10とは、キャップ3の各構成が異なる。
図5~
図7に示すように、本実施形態では、キャップ3のキャップ筒31が、筒本体31eと、キャップ弾性片31fと、を有する。
【0116】
筒本体31eは、中心軸Cを中心とする略円筒状をなしており、前後方向に延びる。筒本体31eには、キャップ筒31の開口端部が配置される。筒本体31eの前後方向の寸法は、例えば、キャップ筒31の前後方向の全長寸法の半分以上の大きさとされている。キャップ3が軸筒1の端部(前端部または後端部)に取り付けられたときに、筒本体31eは、軸筒1の端部に嵌合され、この端部を径方向外側から周方向の全周にわたって囲う。
【0117】
キャップ弾性片31fは、筒本体31eから塞ぎ端部側へ向けて延び、径方向に弾性変形可能である。キャップ弾性片31fは、筒本体31eから塞ぎ端部側へ向かうに従い、径方向内側へ向けて延びている。
【0118】
キャップ弾性片31fは、板状をなしており、その一対の板面が径方向を向く。キャップ弾性片31fは、中心軸Cと垂直な断面の形状が、周方向に延びる湾曲した円弧状をなしている。
【0119】
キャップ弾性片31fは、キャップ筒31に、周方向に並んで複数設けられる。複数のキャップ弾性片31fは、周方向に互いに間隔をあけて配置されている。本実施形態ではキャップ弾性片31fが、周方向において等ピッチで4つ設けられている。複数のキャップ弾性片31fは、摩擦体ホルダー33の後述するホルダーテーパ面33fに径方向外側から接触する。
【0120】
本実施形態では、キャップ3の摩擦体ホルダー33が、摩擦体32に接続されるホルダー本体33aを有し、ホルダー弾性片33bは有していない。
ホルダー本体33aは、摩擦体32が嵌合する嵌合筒部33cと、嵌合筒部33cの開口端部側に配置される筒状部分33eと、を有する。筒状部分33eは、摩擦体32よりも開口端部側に位置している。筒状部分33eの直径寸法は、嵌合筒部33cの直径寸法よりも大きい。筒状部分33eの外周面は、摩擦体32の周壁32aの外周面と、段差なく滑らかに連なっている。
【0121】
本実施形態の摩擦体ホルダー33は、さらに、ホルダーテーパ面33fと、内周テーパ面33gと、を有する。
ホルダーテーパ面33fは、ホルダー本体33aの筒状部分33eの外周面に配置されている。ホルダーテーパ面33fは、摩擦体32の開口端部側に配置され、開口端部側へ向かうに従い外径寸法が大きくなるテーパ面状をなしている。ホルダーテーパ面33fは、各キャップ弾性片31fの径方向内側を向く板面(内面)に、前後方向に摺動可能に接触する。
【0122】
内周テーパ面33gは、筒状部分33eの内周面のうち、開口端部側の端部に配置されている。内周テーパ面33gは、開口端部側へ向かうに従い内径寸法が大きくなるテーパ面状をなしている。
図5に示すように、キャップ3が軸筒1の前端部に嵌合したときに、軸筒1の前端部のうちテーパ筒部11aが、内周テーパ面33gに径方向内側から接触する。
【0123】
本実施形態では弾性変形部34が、キャップ筒31に一体に形成されている。
図6に示すように、弾性変形部34は、キャップ筒31の複数のキャップ弾性片31fにより構成される。弾性変形部34は、中心軸Cを中心とする略環状(略筒状)をなしている。
【0124】
詳しくは、
図5及び
図7に示すように、摩擦体ホルダー33のホルダーテーパ面33fが、複数のキャップ弾性片31fに摺接しつつ前後方向に移動することで、各キャップ弾性片31fが径方向に弾性変形し、これにより、弾性変形部34は弾性変形する。弾性変形部34は、弾性変形により直径寸法が変化し、その復元変形力により摩擦体ホルダー33を開口端部側へ向けて付勢する。
【0125】
具体的には、
図7に示すように、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合したときに、この後端部によって摩擦体ホルダー33が押し込まれることで、弾性変形部34が弾性変形しつつ、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が塞ぎ端部側へ移動する。これにより、摩擦体32は、キャップ筒31の塞ぎ端部からキャップ筒31の外部へ突出される。なお本実施形態ではこのとき、弾性変形部34が弾性変形しつつ拡径する。また、キャップ3が軸筒1の後端部に嵌合したときに、軸筒1の後端部は、ホルダー本体33aの筒状部分33eの開口端部側の端部に、前側から接触する。
【0126】
また、キャップ3が軸筒1の後端部から取り外されることで、この後端部による摩擦体ホルダー33の押し込みが解除され、弾性変形部34の復元変形力により、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が開口端部側へ移動する。これにより、摩擦体32は、キャップ筒31の内部に収容される(
図5を参照)。なお本実施形態ではこのとき、弾性変形部34が復元変形しつつ縮径する。
【0127】
以上説明した本実施形態の筆記具20によっても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0128】
具体的に、本実施形態では弾性変形部34が、キャップ筒31のうち、弾性変形可能な複数のキャップ弾性片31fにより構成される。
キャップ3を軸筒1の後端部に嵌合したときに、この後端部によって摩擦体ホルダー33が押し込まれ、複数のキャップ弾性片31fが径方向に弾性変形し、これらキャップ弾性片31fの全体としての直径寸法(つまり弾性変形部34の直径寸法)が拡径されつつ、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が塞ぎ端部側へ移動する。これにより、摩擦体32がキャップ筒31から外部に突出し、使用可能な状態となる。
【0129】
また、キャップ3を軸筒1の後端部から取り外すと、この後端部による摩擦体ホルダー33の押し込みが解除され、複数のキャップ弾性片31fが復元変形し、これらキャップ弾性片31fの全体としての直径寸法(弾性変形部34の直径寸法)が縮径しつつ元に戻る。この際の弾性変形部34の復元変形力によって、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が開口端部側へ移動する。これにより、摩擦体32はキャップ筒31の内部に収容されて、使用不能な状態となる。
【0130】
上記構成によれば、弾性変形部34をキャップ筒31に一体に形成した場合において、上述した本実施形態の作用効果が安定して奏功される。
【0131】
また本実施形態では、摩擦体ホルダー33が、摩擦体32の開口端部側に配置され、開口端部側へ向かうに従い外径寸法が大きくなるホルダーテーパ面33fを有しており、複数のキャップ弾性片31fは、ホルダーテーパ面33fに径方向外側から接触する。
この場合、軸筒1の後端部によって摩擦体ホルダー33が塞ぎ端部側へ押し込まれたときに、塞ぎ端部側へ移動するホルダーテーパ面33fの傾斜に沿って複数のキャップ弾性片31fが弾性変形し、これらキャップ弾性片31fの全体としての直径寸法(つまり弾性変形部34の直径寸法)が安定して拡径させられる。
【0132】
また、軸筒1の後端部による摩擦体ホルダー33の押し込みが解除されたときに、複数のキャップ弾性片31fが復元変形しつつホルダーテーパ面33fを径方向内側へ押す。この押圧力が、ホルダーテーパ面33fの傾斜により前後方向への力に変換されることで、摩擦体ホルダー33及び摩擦体32が、開口端部側へ移動する。また、これらキャップ弾性片31fの全体としての直径寸法(弾性変形部34の直径寸法)が安定して縮径され、元に戻る。
【0133】
上記構成によれば、弾性変形部34をキャップ筒31に一体に形成した場合において、弾性変形部34の作用(機能)がより安定する。
【0134】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0135】
特に図示しないが、第1実施形態において、キャップテーパ面31cの代わりに、キャップ筒31の内周面に突起等を設け、ホルダー弾性片33bを突起等に接触させつつ、キャップ筒31と前後方向に相対移動させることで、弾性変形及び復元変形させる構成としてもよい。
【0136】
また、第2実施形態において、ホルダーテーパ面33fの代わりに、摩擦体ホルダー33の外周面に突起等を設け、キャップ弾性片31fを突起等に接触させつつ、摩擦体ホルダー33と前後方向に相対移動させることで、弾性変形及び復元変形させる構成としてもよい。
【0137】
また、第1、第2実施形態において、摩擦体32及び摩擦体ホルダー33が、単一の部材により一体に形成されていてもよい。
この場合、キャップ3の部品点数をより少なく抑えることができ、キャップ3の組み立てが容易である。
【0138】
また、第1、第2実施形態では、筆記具10,20としてボールペンを例に挙げて説明したが、これに限らない。本発明の筆記具は、ボールペン以外の例えばキャップ付き鉛筆等であってもよい。この場合、摩擦体は消しゴムであってもよい。
【0139】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の筆記具によれば、部品点数及び製造コストの増大を抑えつつ、摩擦体の非使用時においては、摩擦体をキャップ内に収容した状態を安定して維持することができ、これにより摩擦体の汚損や損耗等を抑制でき、かつ外観デザイン性を高めることができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0141】
1…軸筒、3…キャップ、10,20…筆記具、15…後部突起、21…ペン先、22…インキ貯留筒、31…キャップ筒、31a…係止突起、31c…キャップテーパ面、31e…筒本体、31f…キャップ弾性片、32…摩擦体、33…摩擦体ホルダー、33a…ホルダー本体、33b…ホルダー弾性片、33f…ホルダーテーパ面、34…弾性変形部、C…中心軸