(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180065
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】乳化組成物、噴霧製品及びエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
C09K 23/00 20220101AFI20241219BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20241219BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241219BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20241219BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20241219BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20241219BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09K23/00
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/92
A61Q1/00
B01J13/00 A
B01J13/00 G
C08L101/14
C08K7/02
C08L1/00
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099497
(22)【出願日】2023-06-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯本 賢也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 兼司
【テーマコード(参考)】
4C083
4D077
4G065
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AA121
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4J002GB00
4J002GC00
4J002HA07
(57)【要約】
【課題】乳化安定性とスプレー特性とがいずれも優れる、水中油型エマルションを形成する、実質的に界面活性剤を含まない乳化組成物。
【解決手段】機械解繊微細繊維状セルロース、水溶性高分子、油性成分、及び水を含有する乳化組成物であって、該乳化組成物が、該油性成分を含む油相が該水を含む水相に分散した水中油型エマルションを形成し、該乳化組成物が、実質的に界面活性剤を含まないことを特徴とする、乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械解繊微細繊維状セルロース、水溶性高分子、油性成分、及び水を含有する乳化組成物であって、
該乳化組成物が、該油性成分を含む油相が該水を含む水相に分散した水中油型エマルションを形成し、
該乳化組成物が、実質的に界面活性剤を含まないことを特徴とする、乳化組成物。
【請求項2】
前記乳化組成物中の、前記機械解繊微細繊維状セルロースの含有量が、0.005質量%~10.00質量%である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記乳化組成物中の、前記水溶性高分子の含有量が、0.001質量%~1.00質量%である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記水溶性高分子が、カルボキシビニルポリマー、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、ポリビニルアルコール、及びセルロース系高分子からなる群から選択される一以上を含む、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記油性成分が、20℃において液状である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記機械解繊微細繊維状セルロースにおける親水性置換基の導入量が、0mmol/g~0.1mmol/gである、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項7】
噴霧用組成物である、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項8】
乳化組成物が噴霧容器に充填された噴霧製品であって、
該乳化組成物が、請求項1~7のいずれか一項に記載の乳化組成物である、噴霧製品。
【請求項9】
乳化組成物及び噴射剤がエアゾール容器に充填されたエアゾール製品であって、
該乳化組成物が、請求項1~7のいずれか一項に記載の乳化組成物である、エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実質的に界面活性剤を含まない乳化組成物、並びに該乳化組成物を用いた噴霧製品及びエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションは、食品、化粧品、医薬品、家庭用品や工業用品などに広く用いられており、エマルションの分散化安定のためには乳化剤として界面活性剤を用いることが広く知られている。一方、近年、ナチュラル志向の高まりから、アルコールや界面活性剤による刺激による人体への負担を軽減するため、また、省資源化のため、アルコールや界面活性剤を含まない製品に対する要求が高まっている。
【0003】
ここで、適量の油性成分を対象面へ均一に塗布するための手法として、水を分散媒とする水中油型(O/W)エマルションが知られている。例えば、油性成分、水系分散媒、乳化剤(界面活性剤)、及びセルロースナノファイバーにより乳化物を調製する方法が知られている(例えば特許文献1)。そして、上記の要求に応えるために、界面活性剤を含まない水中油型エマルションの開発が行われている。
【0004】
水中油型エマルションの乳化安定性のために、界面活性剤の代わりに水溶性高分子を用いる手段が知られている。例えば、水中油型エマルションの調製において、界面活性剤を用いずに、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンを用いてホモジナイザーなどの機械力により乳化させる方法が知られている(例えば特許文献2)。さらに、主鎖であるヒドロキシエチルセルロース(HEC)に、疎水基としてのステアリル基と親水基としてのスルホン酸塩基とを導入した、水溶性の両親媒性高分子(HHM-HEC)によって水中で疎水基の会合によるゲルを形成し、会合増粘機構によって水中油型エマルションを安定化させる方法が知られている(例えば非特許文献1)。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中へステアロイル基を導入し疎水化させた疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースがシリコーンオイルを分散質とする水中油型(O/W)エマルションを安定化させることが知られている(例えば非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-59502号公報
【特許文献2】特開2022-126615号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】秋山 恵里、“両親媒性ポリマーを用いた乳化”、オレオサイエンス、公益社団法人日本油化学会、2012年、第12巻、第8号、p.333-338
【非特許文献2】Masami Kawaguchi,“Silicone oil emulsions atabilized by polymers and solid particles”, Adv.Colloid Interfase Sci.,233(2016)p.186-199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水中油型エマルションを霧状の噴霧製品やエアゾール製品に適用する場合、水中油型エマルションの良好な乳化安定性だけでなく、噴霧粒子径が十分に小さい、噴射範囲(スプレーパターン)が十分に大きい、噴射後の製剤が液だれしない、といった良好なスプレー
特性が求められる。一方で、界面活性剤の代わりに水溶性高分子を用いた水中油型エマルションを噴霧製品やエアゾール製品に適用する場合、エマルションの粘度が増加することにより霧が形成しづらくなるため、スプレー特性に改善の余地がある。このように、界面活性剤フリーの水中油型エマルションを用いた噴霧製品やエアゾール製品において、乳化安定性とスプレー特性の両立は困難であるという問題がある。
【0008】
このような課題に鑑み、本開示は、実質的に界面活性剤を含有していなくとも、乳化安定性とスプレー特性とがいずれも優れる、水中油型エマルションを形成する乳化組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、機械解繊微細繊維状セルロースと水溶性高分子とを乳化組成物に配合することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1]機械解繊微細繊維状セルロース、水溶性高分子、油性成分、及び水を含有する乳化組成物であって、
該乳化組成物が、該油性成分を含む油相が該水を含む水相に分散した水中油型エマルションを形成し、
該乳化組成物が、実質的に界面活性剤を含まないことを特徴とする、乳化組成物。
[2]前記乳化組成物中の、前記機械解繊微細繊維状セルロースの含有量が、0.005質量%~10.00質量%である、[1]に記載の乳化組成物。
[3]前記乳化組成物中の、前記水溶性高分子の含有量が、0.001質量%~1.00質量%である、[1]又は[2]に記載の乳化組成物。
[4]前記水溶性高分子が、カルボキシビニルポリマー、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、ポリビニルアルコール、及びセルロース系高分子からなる群から選択される一以上を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の乳化組成物。
[5]前記油性成分が、20℃において液状である、[1]~[4]のいずれかに記載の乳化組成物。
[6]前記機械解繊微細繊維状セルロースにおける親水性置換基の導入量が、0mmol/g~0.1mmol/gである、[1]~[5]のいずれかに記載の乳化組成物。
[7]噴霧用組成物である、[1]~[6]のいずれかに記載の乳化組成物。
[8]乳化組成物が噴霧容器に充填された噴霧製品であって、
該乳化組成物が、[1]~[7]のいずれかに記載の乳化組成物である、噴霧製品。
[9]乳化組成物及び噴射剤がエアゾール容器に充填されたエアゾール製品であって、
該乳化組成物が、[1]~[7]のいずれかに記載の乳化組成物である、エアゾール製品。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、実質的に界面活性剤を含有していなくとも、乳化安定性とスプレー特性とがいずれも優れる、水中油型エマルションを形成する乳化組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0013】
(乳化組成物)
本発明の一実施形態の乳化組成物(以下、単に「乳化組成物」ともいう。)は、機械解繊微細繊維状セルロース、水溶性高分子、油性成分、及び水を含有する乳化組成物であって、該乳化組成物が、該油性成分を含む油相が該水を含む水相に分散した水中油型エマルションを形成し、且つ実質的に界面活性剤を含まない。このような乳化組成物は、実質的に界面活性剤を含有していなくとも、乳化安定性とスプレー特性とがいずれも優れる。
【0014】
本開示において、界面活性剤とは、分子内に水になじみやすい親水部及び疎水性物質になじみやすい疎水部(すなわち、明確な親水性のヘッドグループ及び疎水性のテールグループ)を有する両親媒性物質であり、親水部が水へ、疎水部が疎水性物質と相互作用する事により水-疎水性物質界面に吸着して、水-疎水性物質界面の界面張力を著しく減少させて、エマルションやサスペンジョンの乳化安定性を向上させることができる物質のことをいう。
【0015】
例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル、ラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ステアリン酸PEG45、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられる。
【0016】
そのほか、界面活性剤としては以下のものが挙げられる。
アニオン界面活性剤として、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルアミノ酸塩、アシル乳酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルケンスルホン酸塩、アシルイセチオン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル、モノアシルグリセリン硫酸エステル、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩など。
カチオン界面活性剤として、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩、モノアルキル4級アンモニウム塩、ジアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキル4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩、塩化ベンゼトニウム、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩など。
【0017】
ノニオン界面活性剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、プルロニック型界面活性剤など。
【0018】
両性界面活性剤として、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性活性剤、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、アルキルアミンオキサイド、アルキルジメチルアミンオキサイド、アミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルカル
ボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルスルホベタイン、アミドスルホベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインなど。
また、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーンなどのシリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤;レシチン、サポニン、胆汁酸、サーファクチン、スピクリスポール酸、アガリチン酸、長鎖ジカルボン酸、ラムノリピッド、トレハロースリピッド、サクシノイルトレハロースリピッド、オリゴ糖脂肪酸エステル、グリコースリピッドなどの天然界面活性剤が挙げられる。
【0019】
乳化組成物は、実質的に界面活性剤を含まない。本開示において、「実質的に界面活性剤を含有しない」とは、乳化組成物に乳化安定性を高める目的で界面活性剤を添加しないことをいい、乳化組成物の製造において不可避的にわずかに混入する微量の界面活性剤や、製剤の機能性向上(保湿効果、抗炎症効果、防腐効果の付加など)を目的とし配合されるような界面活性物質を含んでいてもよい。例えば、配合されている成分に付随する界面活性剤であって乳化組成物中には乳化安定性を高める効果が発揮されるより少ない量(例えば乳化組成物中の界面活性剤含有量が臨界ミセル濃度以下)しか含まれないような界面活性剤(いわゆるキャリーオーバー成分)は含んでいてもよい。例えば、乳化組成物中の界面活性剤の含有量は、0.10質量%未満であり、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
【0020】
以下、乳化組成物に用いる各成分について説明する。
【0021】
(機械解繊微細繊維状セルロース)
乳化組成物は、機械解繊によって得られる機械解繊微細繊維状セルロースを含有する。微細繊維状セルロースは、植物由来のセルロースを微細繊維化することで調製することができ、機械解繊微細繊維状セルロースと化学処理解繊微細繊維状セルロースに区別できる。乳化組成物が含有する機械解繊微細繊維状セルロースは、化学処理が行われていないセルロースを機械処理で微細繊維状態にしたもので、カルボキシ基などの官能基を導入していない微細繊維状セルロースである。
【0022】
機械解繊微細繊維状セルロースは、化学処理によって得られた化学処理解繊微細繊維状セルロースと比較して、同濃度での粘度が低い。乳化組成物が機械解繊微細繊維状セルロースを含有することにより、水溶性高分子により乳化した油滴を良好に分散させる一方でエマルションの粘度の過度な増加を防ぐことができるため、良好なスプレー特性を発揮でき、さらに乳化安定性も向上させることができる。
【0023】
乳化組成物中の、機械解繊微細繊維状セルロースの含有量は、好ましくは0.005質量%~10.00質量%であり、より好ましくは0.05質量%~7.00質量%であり、さらに好ましくは0.08質量%~5.00質量%であり、さらにより好ましくは0.10質量%~1.5質量%である。機械解繊微細繊維状セルロースの含有量が上記範囲内であることにより、乳化組成物の乳化安定性とスプレー特性とをより向上させることができる。
【0024】
化学処理解繊微細繊維状セルロースを得る場合、微細繊維状セルロース表面に親水性置換基が導入される。親水性置換基は、例えば、カルボキシ基、カルボキシメチル基等のカルボキシアルキル基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン基、ザンテート基、及びアンモニウム基等のカチオン基等からなる群から選択される少なくとも一が挙げられるが、これらに限定されない。化学処理解繊微細繊維状セルロースの市販品として、セレンピアCS-01C(日本製紙株式会社:カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)、レオクリ
スタC-2SP(第一工業製薬株式会社:TEMPO酸化セルロースナノファイバー)、アウロ・ヴィスコCS(日光ケミカルズ株式会社:リン酸エステル化セルロースナノファイバー)等が挙げられる。
【0025】
機械解繊微細繊維状セルロースにおける親水性置換基の導入量は、好ましくは0.2mmol/g以下であり、より好ましくは0.1mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.05mmol/g以下であり、さらにより好ましくは0.03mmol/g以下であり、特に好ましくは0.01mmol/g以下である。親水性置換基の導入量の下限値は特に限定されないが、0mmol/gであってもよい。親水性置換基の導入量は、例えば、0mmol/g~0.1mmol/gである。親水性置換基の導入量が上記範囲内であることにより、乳化組成物の乳化安定性とスプレー特性とをより向上させることができる。
ここで、親水性置換基の導入量とは、含有量とも読み替えることができる。親水性置換基の導入量(含有量)は、例えば、伝導度滴定法など公知の方法により測定して求めることができる。
【0026】
機械解繊微細繊維状セルロースの数平均繊維径は、1~1000nmである。数平均繊維径が1nm未満では、ナノファイバーのネットワーク構造が脆弱化し、構造保持することができなくなって、エマルションの不安定化を生じることがある。また、1000nmを超えると、サイズが大きくなりすぎてエマルションの安定性を阻害してしまうことがある。機械解繊微細繊維状セルロースの数平均繊維径は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。また、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。機械解繊微細繊維状セルロースの数平均繊維径が上記範囲内であることにより、乳化組成物の乳化安定性とスプレー特性とをより向上させることができる。
【0027】
機械解繊微細繊維状セルロースの長さ加重平均繊維長は、特に限定されないが、好ましくは0.05μm~100μmであり、より好ましくは0.1μm~50μmである。
長さ加重平均繊維長は、例えば、TEM、SEM、AFM等による画像解析など、公知の方法により求めることができる。
機械解繊微細繊維状セルロースの長さ加重平均繊維長は、1000nm以上であることが好ましく、2000nm以上であることがより好ましい。また、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
機械解繊微細繊維状セルロースの数平均繊維径、長さ加重平均繊維長は、例えば、透過型電子顕微鏡観察により繊維の繊維径(繊維幅)及び長さをそれぞれ測定し、その平均値として求めることが可能である。
また、機械解繊微細繊維状セルロースのアスペクト比(長さ加重平均繊維長/数平均繊維径)は、20~10000であることが好ましく、40~5000であることがより好ましく、100~1000であることがより好ましい。
【0028】
機械解繊微細繊維状セルロースの重合度は、特に限定されないが、好ましくは100~1000であり、より好ましくは150~500である。
重合度は、セルロースの最小構成単位であるグルコース単位の連結数であり、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法によって求められる。
【0029】
機械解繊微細繊維状セルロースは、セルロースI型結晶構造を有することが好ましい。セルロース繊維がI型結晶構造を有することは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイル(広角X線回折像)において、走査角2θ=14~17°付近と2θ=22~23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
【0030】
機械解繊微細繊維状セルロースは、原料セルロースを機械解繊して得られるが、機械解繊する方法としては、パルプをビーターやリファイナーで所定の長さとして、高圧ホモジナイザー、グラインダー、衝撃粉砕機、ビーズミル等を用いて、フィブリル化又は微細化する方法等が挙げられる。
【0031】
機械解繊微細繊維状セルロースは、直径0.1~0.8mmの噴射ノズルを介して、100~245MPaの高圧噴射処理により、原料セルロースの分散流体を衝突用硬質体に衝突させるか、又は互いに噴射衝突させて原料セルロースを微細化させて得られたものであることが好ましい。この解繊手法は、市販されている高圧ホモジナイザーのように、分散流体を高圧低速で狭い流路を通過させ、解放時に均質化させるせん断力だけではなく、分散流体を衝突用硬質体に衝突させることによる衝突力や、キャビテーションを利用した、高圧での連続処理が可能である。これらウォータージェット(WJ)のせん断力、衝突力、キャビテーションを利用した解繊手法をWJ法と定義する。また、衝突処理を1回行うことを1パスとして、均一なナノファイバーを得るには、1~30パスの繰り返し衝突を行うことが好ましく、5~20パスの繰り返し衝突を行うことがより好ましい。
【0032】
(水溶性高分子)
乳化組成物は、水溶性高分子を含有する。乳化組成物が水溶性高分子を含有することにより、乳化安定性及びスプレー特性を向上させることができる。
【0033】
水溶性高分子としては、例えば、以下のものが挙げられる。
セルロースガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウムなどのセルロース系高分子;
アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天などの植物系増粘剤;
デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン類;
アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系ポリマー;
ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコールなどの合成高分子;
高重合ポリエチレングリコール(高重合PEG、好ましくは平均重合度2000~150000)、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリウレタン、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマーなどの重合系ポリマーなどが挙げられる。
これらの水溶性高分子は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
水溶性高分子は公知の製造方法に従って製造して用いてもよく、市販の製品を用いることもできる。市販の製品としては、三菱ケミカル株式会社より販売されている「ゴーセノール(商標) EG-05C」(ポリビニルアルコール)、大同化成工業株式会社より販売されている「サンジェロース60L」(ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル)、Lubrizolより販売されている「Carbopol ETD 2050 Polymer」(カルボキシビニルポリマー)、「Pemulen TR-2
Polymeric Emulsifier」((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)、「Pemulen EZ-4U Polymeric Emulsifier」((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)
)クロスポリマー)、信越化学工業株式会社より販売されている「メトローズ 60SH-06」(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)等が例示できる。
【0035】
水溶性高分子は、カルボキシビニルポリマー、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、ポリビニルアルコール、及びセルロース系高分子からなる群から選択される一以上を含むことが好ましい。
乳化組成物が上記の水溶性高分子を含むことにより、乳化組成物の乳化安定性とスプレー特性とをより向上させることができる。
【0036】
乳化組成物中の、水溶性高分子の含有量は、好ましくは0.001質量%~1.00質量%であり、より好ましくは0.002質量%~0.7質量%であり、さらに好ましくは0.003質量%~0.5質量%であり、さらにより好ましくは0.005質量%~0.3質量%である。
水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、乳化組成物の乳化安定性とスプレー特性とをより向上させることができる。
【0037】
(油性成分)
乳化組成物は、油性成分を含有する。また、乳化組成物は、油性成分を含む油相が水を含む水相に分散した水中油型(O/W)エマルションを形成する。油性成分としては、特に制限されず、水に不溶な(水と相分離する)公知のものを広く用いることができる。「水に不溶」とは、例えば、25℃において、100gの水への溶解度が1.0g以下であることを指す。
【0038】
油性成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。
杏仁油、椿油、アルガン油、大豆油、オリーブ油、ひまし油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、ごま油、ホホバ油、綿実油、なたね油、アマニ油、ローズヒップ油、ヒマワリ油、精油、アボカド油、アルモンド油、米ヌカ油、サフラワー油、トウモロコシ油、グレープシード油、ヤシ油、アルガニアスピサノ核油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、ククイナッツ油、クランベアビシニカ種子油、アサ種子油、落花生油、サザンカ油、月見草油、ピスタチオ油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、カカオ脂、シアバター、モクロウなどの植物性油脂;
エミュー油、馬油、牛脂、豚脂、羊脂、ミンク油、卵黄脂肪油、コイ脂、マグロ脂、メンヘーデン脂などの動物性油脂;
軽質イソパラフィン、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、ドデカン、テトラデカン、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン、セレシン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、水添ポリイソパラフィン、リモネン、テレビン油などの炭化水素油;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、オキシステアリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレイン酸、ウンデシレン酸などの(好ましくは炭素数6以上40以下、より好ましくは炭素数12以上30以下の)脂肪酸;
カプロイルアルコール、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、コレステロール、フィトステロールなどの高級アルコール;
ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチルなどの直鎖脂肪酸と低級アルコールのエステル;
ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ステアリン酸ステアリルなどの直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;
ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸エチルヘキシルなどの直鎖脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;
イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピルなどの分枝脂肪酸と低級アルコールとのエステル;
エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシルなどの分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;
ジカプリル酸PG、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルなどの脂肪酸と多価アルコールとのエステル;
ネオペンタン酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリルなどの分枝脂肪酸と分枝アルコールとのエステル;
乳酸ラウリル、クエン酸トリ2-エチルヘキシル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのヒドロキシカルボン酸とアルコールとのエステル;
アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルなどの2塩基酸のエステルなどのエステル油;
ホホバ油、ホホバ脂、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、セラック、ラノリン、ミツロウ、モンタンロウ、鯨ロウ、オレンジラフィー油、サトウキビロウ、パームロウ、虫白ロウ、羊毛脂などのロウエステル;
キミルアルコール、バチルアルコール、セラキルアルコールなどの多価アルコールと一価アルコールとのエーテル;
イソステアリン酸バチル、ステアリン酸バチル;
アルキル変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン(ジメチコン))、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサンなどのシリコーン類;
紫外線吸収剤(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、t-ブチルメトキシベンゾイルメタン、サリチル酸エチルヘキシル、ポリシリコーン-15)、ディート、イカリジン、香料などの油性の有効成分などが挙げられる。
これらの油性成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
油性成分は、乳化安定性及び調製時のハンドリングの観点から、20℃において液状であることが好ましい。
油性成分は、炭化水素油、植物性油脂、分枝脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、シリコーン類、及び脂肪酸と多価アルコールとのエステルからなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましい。
【0040】
乳化組成物中の、油性成分の含有量は、好ましくは0.05質量%~50.00質量%であり、より好ましくは0.10質量%~40.00質量%であり、さらに好ましくは0.20質量%~20.00質量%であり、さらにより好ましくは0.30質量%~10.00質量%である。
【0041】
(水)
乳化組成物は、水を含有する。乳化組成物中の水の含有量は、特に制限されないが、好ましくは50.00質量%~99.85質量%であり、より好ましくは60.00質量%~99.50質量%であり、さらに好ましくは70.00質量%~99.30質量%である。
【0042】
(その他の添加剤)
乳化組成物には、上記効果を損なわない程度に、水に混和する(相分離しない)有効成分、香料、酸化防止剤、防腐剤などの添加剤を含有させてもよい。例えば、アルコールなどを含有させてもよい。具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
低級アルコール(例えばエタノール等の炭素数1~3の脂肪族一価アルコール);多価
アルコール(例えばグリセリン、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,3-ブチレングリコールなどのブチレングリコール、);pH調整剤(例えばクエン酸、乳酸、トリエタノールアミン、KOH、NaOH);防錆剤(例えばアンモニア水、安息香酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム);防腐剤(例えばパラベン類、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル);尿素;カルシウム、鉄、ナトリウムなどのミネラル;顔料;色素;抗炎症剤(例えばグリチルリチン酸ジカリウム);紫外線吸収剤(例えばテレフタリリデンジカンフルスルホン酸)など。
【0043】
(乳化組成物の粘度)
25℃での乳化組成物の粘度は、好ましくは1000mPa・s~50000mPa・sであり、より好ましくは2000mPa・s~15000mPa・sであり、さらに好ましくは2500mPa・s~12000mPa・sである。ここでの粘度は、B型粘度計(TVB-10:東機産業株式会社)を用い、No.M2のローターを用いて、回転速度6rpm、測定時間3分で測定し、測定値が測定上限値(5000mPa・s)を超える場合は、No.M3のローターを用いて、回転速度6rpm、測定時間1分で測定した値である。
25℃での乳化組成物の粘度が上記範囲内であることにより、液だれしにくく、噴射した際に噴霧粒子径が十分に小さく噴射範囲が十分大きい乳化組成物となる。
【0044】
(乳化組成物の製造方法)
乳化組成物の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、機械解繊微細繊維状セルロース、水溶性高分子、油性成分、及び水、並びに必要に応じてその他の成分を任意の割合で混合し、回転式ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、又は超音波乳化機などを用いて乳化させ、水中油型(O/W)エマルションを形成する方法が挙げられる。
【0045】
乳化組成物は、特に制限されないが、人体用品、家庭用品、工業用品などに用いることができる。乳化組成物は、好ましくはエアゾール組成物又は噴霧用組成物である。
乳化組成物は、公知の容器に充填して使用することができる。公知の容器としては、具体的には、チューブ、ポンプ、エアゾール容器などを使用できる。容器からの吐出形態は、特に制限されないが、例えばローション状、ジェル状、泡状、又はスプレー状とすることができる。また、不織布等のシートに乳化組成物を含浸させたシート剤等の形態で使用することもできる。
【0046】
(噴霧製品)
本発明の一実施形態の噴霧製品(以下、単に「噴霧製品」ともいう。)は、上記乳化組成物が噴霧容器に充填された噴霧製品である。
噴霧製品は、バルブなどの吐出口からの内容物の吐出が、スプレー状又はミスト状に噴霧できるものであればよい。圧縮ガスなどの高圧ガスにより噴霧するものでもよいし、電動又は手動で噴霧するものでもよい。噴霧製品に用いる噴霧容器としては、特に制限されず、公知のエアゾール容器、ポンプスプレー容器、トリガースプレー容器、ポンプ式ディスペンサー、トリガー式ディスペンサーなどが挙げられる。
【0047】
(エアゾール製品)
本発明の一実施形態のエアゾール製品(以下、単に「エアゾール製品」ともいう。)は、上記乳化組成物及び噴射剤がエアゾール容器に充填されたエアゾール製品である。
エアゾール製品に用いるエアゾール容器は、耐圧容器としては公知の種々の容器を利用することができる。また、耐圧容器の種類に応じて、バルブ装置を装着するための構造を適宜選定することができる。
【0048】
エアゾール製品は、乳化組成物をエアゾール容器、すなわちエアゾール用バルブ(噴射バルブ)を備えた耐圧容器内に充填することによって製造される。例えば、乳化組成物を調製し、得られた乳化組成物と噴射剤とをエアゾール容器に充填することによってエアゾール製品が製造される。耐圧容器内にさらに内容器を設け、噴射剤と乳化組成物とを内容器により隔離した、いわゆる二重容器を採用してもよい。
【0049】
乳化組成物と噴射剤の混合比率は、液化ガスの場合、液化ガスの含有量は、乳化組成物100質量部に対して、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは2~10質量部である。
圧縮ガスについては、エアゾール容器内に充填されたときの容器内の圧力(ゲージ圧力)が、25℃で、0.1MPa~1.0MPaとなるように充填することが好ましく、0.2MPa~0.9MPaとなるように充填することがより好ましい。
【0050】
エアゾール製品の吐出形態は特に制限されないが、ミスト状であることが好ましい。乳化組成物は、ミスト状に噴射される噴霧用組成物であることが好ましい。エアゾール製品の吐出機構も特に制限されず、ミスト状に噴霧しうる、公知のアクチュエーターを採用しうる。例えば、アクチュエーター内部の流路を乳化組成物が通過することで、乳化組成物の旋回流を発生させ、ミスト状に吐出するものが挙げられる。
【0051】
噴射剤は特段限定されず、液化ガス又は圧縮ガスを使用してもよく、液化ガスと圧縮ガスを併用してもよい。エアゾール製品は、好ましくは圧縮ガスを含む。
圧縮ガスは特に制限されず、エアゾール製品に使用しうる公知のものを用いることができる。圧縮ガスは、好ましくは炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アルゴン、ヘリウム及び圧縮空気などからなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは炭酸ガス及び窒素ガスからなる群から選択される少なくとも一である。
液化ガスは特に制限されず、エアゾール製品に使用しうる公知のものを用いることができる。例えば、LPGやLNGやイソペンタンなどの炭化水素、ジメチルエーテル、HFO-1234zeなどのハイドロフルオロオレフィンなどが挙げられる。
【実施例0052】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0053】
<実施例1~16及び比較例1~14>
表1~表4に示す処方(質量%)にてガラスビーカーに合計100gの各原料を採取して混合した後、ローター式ホモジナイザー(プライミクス株式会社製:ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて25℃で7000rpm、3分間乳化を行い、実施例1~16及び比較例1~14の乳化組成物を得た。
【0054】
さらに、得られた乳化組成物と噴射剤(窒素ガス)とを耐圧容器に充填し、エアゾール製品を得た。窒素ガスの充填量は、製品の内圧が0.75MPa及び0.3MPaとなるように調整した。なお、吐出機構には「D91W 0381T”4”-A」(株式会社三
谷バルブ)を用いた。
さらに、得られた乳化組成物及びエアゾール製品を用いて、後述する評価を行った。結果を表1~4に示す。
【0055】
(1)乳化組成物の粘度測定
得られた乳化組成物の粘度(mPa・s)を、B型粘度計(TVB-10:東機産業株式会社)を用いて測定した。測定はローター:No.M2、回転速度:6rpm、測定時間:3分又はローター:No.M3、回転速度:6rpm、測定時間:1分で行った。
【0056】
(2)乳化組成物の耐流れ性評価
得られた乳化組成物を、0.5mL人工皮膚へのせた。その後、人工皮膚を30°傾け、原液が10cm流れるまでの時間(s)を、以下の評価基準に従って評価した。
【0057】
[評価基準]
A:60秒以上
B:40秒以上60秒未満
C:20秒以上40秒未満
D:20秒未満
【0058】
(3)乳化組成物の乳化安定性評価
得られた乳化組成物をガラス瓶にて室温、7日間保存し、乳化組成物の外観を目視観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0059】
[評価基準]
A:クリーミングがなく安定。
B:わずかにクリーミングするが分散状態を維持。
C:下層が透明又は半透明となりクリーミング層が確認される。
【0060】
(4)噴霧粒子径測定
得られたエアゾール製品を用いて、噴射距離15cm、噴射時間3秒で噴射した。噴霧された粒子の粒子径を、レーザー回折式粒度分布測定機(スプレーテック:Malvarn社)にて測定し、以下の評価基準に従って評価した。
【0061】
[評価基準-製品内圧0.75MPaの場合]
A:DV(50)の値が75μm未満。
B:DV(50)の値が75μm以上~85μm未満。
C:DV(50)の値が85μm以上~95μm未満。
D:DV(50)の値が95μm以上。
【0062】
[評価基準-製品内圧0.3MPaの場合]
A:DV(50)の値が95μm未満。
B:DV(50)の値が95μm以上~105μm未満。
C:DV(50)の値が105μm以上~130μm未満。
D:DV(50)の値が130μm以上。
【0063】
(スプレーパターン評価)
得られたエアゾール製品を用いて、15cmの距離から水反応紙に1秒間噴霧し、スプレーパターンの直径を計測し、以下の評価基準に従って評価した。
【0064】
[評価基準(製品内圧に関わらず評価基準は同様)]
A:200mm以上
B:150mm以上200mm未満。
C:100mm以上150mm未満。
D:100mm未満。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表中、使用した原料は以下の通りである。
(水)
水:精製水(東洋エアゾール工業株式会社)
【0070】
(水溶性高分子)
カルボキシビニルポリマー:Carbopol ETD 2050 Polymer(Lubrizol Corporation)
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(1):Pemulen TR-1 Polymeric Emulsifier(Lubrizol Corporation)
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(2):Pemulen EZ-4U Polymeric Emulsifier(Lubrizol
Corporation)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル:サンジェロース 60L(大同化成工業株式会社)
ポリビニルアルコール:ゴーセノール EG-05C(三菱ケミカル株式会社)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:メトローズ 60SH-06(信越化学工業株式会社)
【0071】
(微細繊維状セルロース)
セルロースガム、水(カルボキシメチル化セルロースナノファイバー):セレンピア C
S-01C(日本製紙株式会社)(粉体である微細繊維状セルロース製品。該微細繊維状セルロースは、カルボキシメチル化されたセルロースの機械解繊によって得られたものである。)
結晶セルロース、水(TEMPO酸化セルロースナノファイバー分散体):レオクリスタ
C-2SP(第一工業製薬株式会社)(2質量%の微細繊維状セルロースを水中に含む製品。該微細繊維状セルロースは、TEMPO酸化されたセルロースの機械解繊によって得られたものであり、親水性置換基(カルボキシ基)の導入量は1.64mmol/gであり、数平均繊維径は3nmである。)
セルロース、水(リン酸エステル化セルロースナノファイバー分散体):アウロ・ヴィスコCS(日光ケミカルズ株式会社)(2質量%の微細繊維状セルロースを水中に含む製品。該微細繊維状セルロースは、リン酸エステル化されたセルロースの機械解繊によって得られたものである。)
セルロース、水(機械解繊セルロースナノファイバー分散体):BiNFi-s AFo(株式会社スギノマシン)(2質量%の機械解繊微細繊維状セルロースを水中に含む製品。該機械解繊微細繊維状セルロースは、化学処理が行われていないセルロースの機械解繊によって得られたものであり、親水性置換基の導入量は0~0.1mmol/gであり、数平均繊維径は10~50nmである。)
【0072】
(油性成分)
流動パラフィン:Carnation(Sonneborn LLC)
アンズ核油:NIKKOL 杏仁油(日光ケミカルズ株式会社)
エチルヘキサン酸セチル:NIKKOL CIO(日光ケミカルズ株式会社)
ジメチコン:KF-96-2cs(信越化学工業株式会社)
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:NIKKOL トリエスター F-810(日光ケミカルズ株式会社)
ホホバ種子油:NIKKOL ホホバ油S (日光ケミカルズ株式会社)
【0073】
(添加剤(pH調整剤))
トリエタノールアミン:トリエタノールアミン99(ダウ・ケミカル日本株式会社)
1,3-ブチレングリコ―ル:1,3-ブチレングリコ―ル-P (KHネオケム)
パラオキシ安息香酸メチル:パラオキシ安息香酸メチル(上野製薬)
【0074】
<実施例17及び比較例15>
表5に示す処方(質量%)にてガラスビーカーに合計100gの各原料を採取して混合した後、ローター式ホモジナイザー(プライミクス株式会社製:ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて25℃で7000rpm、3分間乳化を行い、実施例17及び比較例15の乳化組成物を得た。
【0075】
さらに、得られた乳化組成物をポンプスプレーに充填し、噴霧製品を得た。得られた乳化組成物を用いて、前述した粘度測定、耐流れ性評価及び乳化安定性評価を行った。加えて得られた噴霧製品を用いて、前述の評価方法でスプレーパターン、及び噴霧粒子径の測
定を行った。
【0076】
<実施例18~19>
表5に示す処方(質量%)にてガラスビーカーに合計100gの各原料を採取して混合した後、ローター式ホモジナイザー(プライミクス株式会社製:ホモミクサーMARK II 2.5型)を用いて25℃で7000rpm、3分間乳化を行い、実施例18~19の乳化組成物を得た。
【0077】
得られた各エアゾール組成物100.00質量部に対し、噴射剤(LPG又はDME)を、噴射バルブ装置を備えた耐圧容器に充填し、吐出機構には「D91W 0381T”
4”-A」(株式会社三谷バルブ)を装着し実施例18~19のエアゾール製品を得た。乳化組成物を用いて、前述した粘度測定、耐流れ性評価及び乳化安定性評価を行った。加えて得られたエアゾール製品を用いて、前述の評価方法でスプレーパターン、及び噴霧粒子径の測定を行った。
【0078】