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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180066
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/12 20060101AFI20241219BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20241219BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20241219BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F23N5/12 Z
F23N5/24 113Z
F23N5/26 101Z
F23N1/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099498
(22)【出願日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将寛
(72)【発明者】
【氏名】小澤 太郎
【テーマコード(参考)】
3K003
3K005
3K068
【Fターム(参考)】
3K003XB03
3K003XC01
3K003XC03
3K005AB04
3K005AC01
3K005DA02
3K005DA04
3K005EA04
3K005EB02
3K005EB08
3K005FA03
3K068FA01
3K068FB15
3K068FC06
3K068GA07
3K068HA05
3K068NA01
3K068PB02
(57)【要約】
【課題】フレームロッド(15)の劣化を精度良く検知可能な燃焼装置(10)を実現する。
【解決手段】バーナ(120)の着火が検知されると、着火の検知後の劣化判定期間でのフレーム電流の電流値に基づいてフレームロッドの劣化を判定する。バーナの着火後の劣化判定期間でのフレーム電流の電流値には、フレームロッドの劣化の影響が現れる。そして、このフレーム電流の電流値は着火遅れ時間と比べて外乱の影響を受けにくく、計測結果のばらつきが小さい。このため、着火の検知後の劣化判定期間でのフレーム電流の電流値に基づいてフレームロッドの劣化を判定すれば、フレームロッドの劣化を精度良く検知することが可能となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させるバーナと、前記バーナに点火することによって前記燃料の燃焼を開始させる点火装置と、前記燃焼による火炎が前記バーナに形成されると前記火炎が接触することとなる位置に搭載されたフレームロッドとを有し、前記火炎が前記フレームロッドに接触した時に前記フレームロッドに流れるフレーム電流を検出することによって、前記バーナに形成された前記火炎の有無を検知可能な燃焼装置において、
前記点火装置による点火時に、前記フレーム電流の電流値が所定の着火判定値を超えたことを検出することによって、前記バーナの着火を検知する着火検知部と、
前記着火の検知後の所定の劣化判定期間で検出された前記フレーム電流の電流値に基づいて、前記フレームロッドの劣化を判定する劣化判定部と
を備えることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置において、
前記着火判定値と等しいか、前記着火判定値よりも小さな値に設定された所定の失火判定値を記憶しており、前記着火が検知された後に、前記フレーム電流の電流値が前記失火判定値より小さくなったことを検出することによって、前記バーナの失火を検知する失火検知部を備え、
前記劣化判定部は、
前記失火判定値よりも大きな値に設定された所定の劣化判定値を記憶していると共に、
前記劣化判定期間中の前記フレーム電流の電流値が、前記失火判定値よりも大きいが、前記劣化判定値よりも小さくなった場合は、前記フレームロッドが劣化したものと判定する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼装置において、
個別に前記燃料が供給されることによって個別に前記燃料の燃焼を開始し、個別に前記燃料の供給が停止されることによって個別に前記燃料の燃焼を停止可能な複数の前記バーナを備え、
前記フレームロッドは、棒形状に形成されて少なくとも2つの前記バーナの前記火炎が形成される領域に跨って配置されることにより、2つの前記バーナの何れで前記火炎が形成された場合でも前記火炎が接触可能に搭載されており、
前記劣化判定部は、前記フレームロッドで前記火炎を検知可能な前記バーナでの前記着火に伴う前記劣化判定期間中に、前記フレームロッドが前記火炎を検知する前記バーナが変更された場合には、前記劣化判定期間を再設定する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項4】
請求項3記載の燃焼装置において、
前記フレームロッドは、片持ち状態で搭載されており、
前記フレームロッドに前記火炎が接触可能な少なくとも2つの前記バーナには、前記点火装置によって前記燃料の燃焼を開始する点火バーナと、前記点火バーナに形成された前記火炎が火移りすることによって前記燃料の燃焼が開始され、前記点火バーナよりも前記フレームロッドの先端側で前記火炎が接触する火移りバーナとが含まれており、
前記劣化判定部は、前記点火バーナの前記着火に伴う前記劣化判定期間中に、前記燃料を燃焼させる前記バーナが前記点火バーナから前記火移りバーナに切り替わる場合に、前記劣化判定期間を延長する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の燃焼装置において、
前記劣化判定部によって得られた前記劣化の有無に関する判定結果を、所定期間または所定個数を上限として蓄積する判定結果蓄積部と、
前記フレームロッドでの劣化発生を報知する劣化報知部と
を備え、
前記劣化報知部は、前記判定結果蓄積部に蓄積された複数の前記判定結果の中で、前記フレームロッドが劣化したとする前記判定の結果の発生頻度が所定の閾値頻度より高い場合に、前記劣化発生を報知する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃焼装置において、
前記フレームロッドによって前記火炎が検知されている時間である燃焼時間を累積する燃焼時間累積部を備え、
前記劣化報知部は、前記燃焼時間累積部で累積した前記燃焼時間が所定の閾値燃焼時間よりも小さい場合は、前記閾値燃焼時間よりも大きい場合に比べて高い前記閾値頻度を用いて、前記フレームロッドの劣化発生を報知するか否かを判断する
ことを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナに形成された火炎を、フレームロッドを用いて検知することが可能な燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーナで燃料を燃焼させる燃焼装置の中には、バーナに形成された火炎を、フレームロッドを用いて検知しておき、火炎が検知できなくなった場合は、バーナが失火したものと判断して直ちに燃料の供給を止めることによって燃焼を停止するようにしたものが存在する。ここで、フレームロッドとは金属製の電極であり、次のような原理で火炎を検知する。先ず、火炎は電気を通す性質を有することが知られている。そこで、フレームロッドに電圧を印加しておき、フレームロッドに火炎が接触すると、火炎を通ってフレームロッドからバーナに向かって電流が流れる。この電流(以下、フレーム電流)を検出することで火炎を検知することができる。
【0003】
フレームロッドは火炎に晒されて高温になるため、長期に亘って使用しているとフレームロッドの表面に酸化被膜が形成される。酸化皮膜は絶縁性を有しているため、表面に酸化被膜が形成されると、フレームロッドに火炎が接触してもフレーム電流が流れにくくなり、フレーム電流の電流値(以下、フレーム電流値)が小さくなる。このような現象はフレームロッドの劣化と呼ばれる。フレームロッドの劣化が進むと、バーナで火炎が形成されているにも拘わらず火炎を検知できなくなり、その結果、失火と誤判定して燃焼が停止されてしまう虞がある。
【0004】
そこで、フレームロッドが劣化すると、バーナへの燃料の供給を開始してからフレームロッドで火炎が検知されるまでの時間(着火遅れ時間)が長くなることに着目して、着火遅れ時間に基づいてフレームロッドの劣化を検出する技術が提案されている(特許文献1)。この提案の技術によれば、フレームロッドが火炎を検知できなくなる前の時点でフレームロッドの劣化を検出することができるので、ある日突然に火炎が検知できなくなって、燃焼装置が使えなくなる事態を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-74291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、着火遅れ時間は点火時の僅かな外乱(例えば、燃料ガスの供給圧力の僅かな変動や、点火プラグ周辺の空気の僅かな動きなど)の影響を受けて計測結果がばらつくため、上述した提案されている技術ではフレームロッドの劣化を精度良く検知することができないという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するために成されたものであり、フレームロッドの劣化を精度良く検知することが可能な燃焼装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料を燃焼させるバーナと、前記バーナに点火することによって前記燃料の燃焼を開始させる点火装置と、前記燃焼による火炎が前記バーナに形成されると前記火炎が接触することとなる位置に搭載されたフレームロッドとを有し、前記火炎が前記フレームロッドに接触した時に前記フレームロッドに流れるフレーム電流を検出することによって、前記バーナに形成された前記火炎の有無を検知可能な燃焼装置において、
前記点火装置による点火時に、前記フレーム電流の電流値が所定の着火判定値を超えたことを検出することによって、前記バーナの着火を検知する着火検知部と、
前記着火の検知後の所定の劣化判定期間で検出された前記フレーム電流の電流値に基づいて、前記フレームロッドの劣化を判定する劣化判定部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の燃焼装置においては、バーナの着火が検知されると、着火の検知後の劣化判定期間でのフレーム電流の電流値に基づいて、フレームロッドの劣化を判定する。
【0010】
後述するように、バーナの着火時にはフレーム電流の電流値が急激に増加した後、電流値が減少していくが、減少に転じた後の電流値にはフレームロッドが劣化した影響が現れる。また、バーナの着火後のフレーム電流の電流値は、バーナの着火時の着火遅れ時間に比べて、外乱の影響による計測結果のばらつきが小さくなる。このため、着火の検知後の劣化判定期間でのフレーム電流の電流値に基づいてフレームロッドの劣化を判定してやれば、フレームロッドの劣化を精度良く検知することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の燃焼装置においては、次のようにして、フレームロッドの劣化を判定してもよい。先ず、着火判定値と失火判定値と劣化判定値とを、予め記憶しておく。ここで、失火判定値は着火判定値と等しいか、着火判定値よりも小さな値に設定されており、劣化判定値は失火判定値よりも大きな値に設定されている。そして、劣化判定期間中のフレーム電流の電流値が、失火判定値よりも大きいが、劣化判定値よりも小さくなった場合に、フレームロッドが劣化したものと判定する。また、バーナの着火が検知された後に、フレーム電流の電流値が失火判定値より小さくなった場合には、バーナが失火したものと判断する。
【0012】
フレームロッドが劣化すると、劣化判定期間中のフレーム電流の電流値が小さくなる。また、バーナが失火した場合には、フレーム電流の電流値は更に小さくなる。従って、上述したようにしてフレームロッドの劣化を判定すれば、バーナの失火をフレームロッドの劣化と誤って判断することがないので、フレームロッドの劣化を精度良く判定することができる。
【0013】
また、上述した本発明の燃焼装置においては、次のようにしてもよい。先ず、複数のバーナを備え、それらのバーナは、個別に燃料を供給して個別に燃料の燃焼を開始可能とし、更に、個別に燃料の供給を停止して個別に燃料の燃焼を停止可能としておく。また、フレームロッドは棒形状に形成しておき、複数のバーナの中の少なくとも2つのバーナの火炎が形成される領域に跨るようにフレームロッドを配置することにより、2つのバーナの何れで火炎が形成された場合でも火炎がフレームロッドに接触するようにしておく。そして、フレームロッドが火炎を検知可能なバーナでの着火に伴う劣化判定期間中に、フレームロッドが火炎を検知するバーナが変更された場合には、劣化判定期間を再設定するようにしてもよい。
【0014】
フレーム電流の電流値は、フレームロッドに接触している火炎の位置や面積によって変化する。従って、劣化判定期間中に、燃料を燃焼するバーナが変更されると、そのことによってフレーム電流の電流値が変化してしまい、フレームロッドの劣化を正しく判定できなくなる虞がある。従って、燃焼するバーナが変更された場合には劣化判定期間を再設定してやれば、再設定した劣化判定期間のフレーム電流の電流値に基づいて、フレームロッドの劣化を正しく判定することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明の燃焼装置においては、フレームロッドが片持ち状態で搭載されており、そのフレームロッドには、点火装置によって燃料の燃焼を開始する点火バーナと、点火バーナに形成された火炎が火移りすることによって燃料の燃焼が開始される火移りバーナとを含む少なくとも2つのバーナの火炎が接触するようにしてもよい。そして、火移りバーナが、点火バーナよりもフレームロッドの先端側で火炎が接触する火移りバーナであり、且つ、点火バーナの着火に伴う劣化判定期間中に、燃焼するバーナが点火バーナから火移りバーナに切り替わる場合には、劣化判定期間を延長することとしてもよい。
【0016】
フレームロッドの先端側は、基端側に比べて劣化し易い。従って、こうすれば、燃焼するバーナが点火バーナから、点火バーナよりも火炎がフレームロッドの先端側に接触する火移りバーナに切り替わった場合でも、フレームロッドの劣化を正しく判定することが可能となる。
【0017】
また、上述した本発明の燃焼装置においては、フレームロッドの劣化の有無に関する判定結果を、所定期間または所定個数を上限として蓄積しておき、蓄積した複数の判定結果の中で、フレームロッドが劣化したとする判定の結果の発生頻度が所定の閾値頻度より高い場合に、フレームロッドの劣化発生を報知するようにしてもよい。
【0018】
こうすれば、たとえフレームロッドの劣化を誤って判定することがあっても、誤って判定する頻度が高くならない限り、フレームロッドが劣化したものと誤って報知することがない。このため、報知の信頼性を高めることができる。
【0019】
また、上述した本発明の燃焼装置においては、フレームロッドが火炎を検知している時間を燃焼時間として累積しておき、累積した燃焼時間が所定の閾値燃焼時間よりも小さい場合は、閾値燃焼時間よりも大きい場合に比べて高い閾値頻度を用いて、フレームロッドの劣化発生を報知するか否かを判断してもよい。
【0020】
フレームロッドが火炎を検知している時間が短い場合はフレームロッドが劣化している可能性は小さいと考えられる。従って、累積した燃焼時間が閾値燃焼時間よりも小さい場合は、高い閾値頻度を用いて、フレームロッドの劣化発生を報知するか否かを判断してやれば、誤ってフレームロッドの劣化発生を報知する虞を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施例の燃焼装置10を備える給湯器1を例示した説明図である。
図2】フレームロッド15がバーナ120に形成された火炎を検知する様子を示した説明図である。
図3】フレームロッド15の劣化を判定するためにコントローラ50が備える構成を示した説明図である。
図4】フレームロッド15の劣化を判定する方法を示した説明図である。
図5】フレームロッド15の劣化を判定する他の方法を示した説明図である。
図6】バーナ120の点火後にフレームロッド15の劣化を判定するために実行する劣化判定処理のフローチャートである。
図7】フレームロッド15の劣化発生を報知する劣化発生報知処理のフローチャートである。
図8】直近の判定結果から所定個数の判定結果を読み出すことによって劣化の検知頻度を算出する様子を例示した説明図である。
図9】直近の所定期間の判定結果を読み出すことによって劣化の検知頻度を算出する様子を例示した説明図である。
図10】複数の閾値頻度を切り換えて使用する第1変形例の劣化発生報知処理のフローチャートである。
図11】小バーナ12aの燃焼を開始した後に、中バーナ12bのみが燃焼する状態に切り替える様子を示した説明図である。
図12】第2変形例の劣化判定処理の前半部分のフローチャートである。
図13】第2変形例の劣化判定処理の後半部分のフローチャートである。
図14】点火バーナの着火に伴う劣化判定期間中に、燃焼するバーナ120を小バーナ12aから中バーナ12bに切り替えた場合に得られるフレーム電流値を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.装置構成 :
図1は、燃焼装置10を備える給湯器1を例示した説明図である。給湯器1は、燃焼缶11の内部の下方の位置に燃焼装置10が搭載され、燃焼缶11の内部で燃焼装置10の上方の位置に熱交換器20が搭載された構造となっている。燃焼装置10は、気体の燃料(以下、燃料ガス)を燃焼させる複数の単バーナ12を備えており、これらの単バーナ12は、3つのグループにグループ化されている。尚、本実施例の燃焼装置10は、気体の燃料(すなわち燃料ガス)を燃焼させるものとして説明するが、液体の燃料を燃焼させてもよい。
【0023】
図1に例示した給湯器1の燃焼装置10には、全部で16個の単バーナ12が搭載されており、それらの単バーナ12は、3つの単バーナ12からなるグループ12aと、5つの単バーナ12からなるグループ12bと、8つの単バーナ12からなるグループ12cとにグループ化されている。また、後述するように、同じグループ内の複数の単バーナ12は同時に燃焼を開始し同時に燃焼を終了しており、同じグループ内の複数の単バーナ12は全体として1つのバーナとして機能する。従って、以下では、グループ12aを「小バーナ12a」と称し、グループ12bを「中バーナ12b」と称し、グループ12cを「大バーナ12c」と称する。また、小バーナ12a、中バーナ12b、大バーナ12cを区別する必要が無い場合は、単にバーナ120と表記する。尚、以下では、小バーナ12a、中バーナ12b、大バーナ12cは、複数の単バーナ12によって形成されているものとして説明するが、それぞれを1つのバーナで形成されていてもよい。すなわち、燃焼装置10に火力の異なる3つのバーナを搭載して、火力が最も小さいバーナを小バーナ12a、火力が中ぐらいのバーナを中バーナ12b、火力が最も大きいバーナを大バーナ12cとしてもよい。
【0024】
それぞれの単バーナ12には、燃料ガスを供給するためのガスノズル101が設けられている。これらのガスノズル101は、ガス分配室102aから燃料ガスが供給される3つのガスノズル101と、ガス分配室102bから燃料ガスが供給される5つのガスノズル101と、ガス分配室102cから燃料ガスが供給される8つのガスノズル101の3つのグループにグループ化されている。そして、ガス分配室102aから燃料ガスが供給される3つのガスノズル101は、小バーナ12aを形成する3つの単バーナ12に燃料ガスを供給し、ガス分配室102bから燃料ガスが供給される5つのガスノズル101は、中バーナ12bを形成する5つの単バーナ12に燃料ガスを供給し、ガス分配室102cから燃料ガスが供給される8つのガスノズル101は、大バーナ12cを形成する8つの単バーナ12に燃料ガスを供給する。
【0025】
また、ガス分配室102a,102b,102cには、次のようにして燃料ガスが供給される。先ず、給湯器1のガス通路16には、外部からの燃料ガスが供給されている。ガス通路16には元弁17が搭載されており、元弁17の下流の位置には比例弁18が搭載されている。元弁17を開弁させると燃料ガスがガス通路16内に流入し、その時の燃料ガスのガス流量は、比例弁18の弁開度によって調節することができる。更に、元弁17を閉弁させると、ガス通路16内に流入する燃料ガスの流れを停止させることができる。
【0026】
そして、比例弁18の下流側の位置では、ガス通路16が3つに分岐しており、分岐した3つのガス通路16の中の1つは電磁開閉弁19aを介してガス分配室102aに接続されている。また、残りの2つガス通路16の中の1つは電磁開閉弁19bを介してガス分配室102bに接続され、最後の1つのガス通路16は電磁開閉弁19cを介してガス分配室102cに接続されている。
【0027】
このため、元弁17および比例弁18を開いた状態で、電磁開閉弁19aを開弁するとガス分配室102aを経由して小バーナ12aを形成するそれぞれの単バーナ12に燃料ガスが供給され、電磁開閉弁19aを閉弁すると、小バーナ12aのそれぞれの単バーナ12への燃料ガスの供給が停止される。同様に、元弁17および比例弁18を開いた状態で、電磁開閉弁19bを開弁すると中バーナ12aを形成するそれぞれの単バーナ12に燃料ガスが供給され、電磁開閉弁19bを閉弁すると、中バーナ12aのそれぞれの単バーナ12への燃料ガスの供給が停止される。更に、元弁17および比例弁18を開いた状態で、電磁開閉弁19cを開弁あるいは閉弁すると大バーナ12aを形成するそれぞれの単バーナ12に燃料ガスが供給され、あるいは燃料ガスの供給が停止される。従って、本実施例の燃焼装置10は、小バーナ12a、中バーナ12b、大バーナ12cの中から燃焼させるバーナを選択することで、あるいは燃焼させるバーナの組み合わせを変更することで、燃焼する単バーナ12の個数を段階的に切り替えることができる。本実施例の燃焼装置10では、次のように5段階に切り替えている。先ず、小バーナ12aのみを燃焼させた場合は、燃焼する単バーナ12の個数が3個となって小火力状態が実現され、中バーナ12bのみを燃焼させた場合は、燃焼する単バーナ12の個数は5個となって中小火力状態となる。更に、小バーナ12aと中バーナ12bとを燃焼させた場合は単バーナ12の個数は8個となって中火力状態となり、小バーナ12aと大バーナ12cとを燃焼させた場合は単バーナ12の個数は11個となって中大火力状態となる。そして、小バーナ12aと中バーナ12bと大バーナ12cとを燃焼させた場合は単バーナ12の個数は16個となって大火力状態となる。尚、本明細書では、燃焼させるバーナを変更することを、「火力状態の切り替え」と表記することがある。
【0028】
燃焼缶11の底面には燃焼ファン13が取り付けられており、燃焼ファン13を回転させると、燃料ガスを燃焼させるための空気が、燃焼缶11内のバーナ120に供給されるようになっている。また、燃焼缶11の側面には、小バーナ12aに火花を飛ばして燃料ガスに着火するための点火プラグ14や、小バーナ12aや中バーナ12bで燃料ガスが燃焼することによって形成された火炎を検知するフレームロッド15が搭載されている。ここで、フレームロッド15は金属製で棒形状の電極であり、基端側が燃焼缶11の側面に取り付けられ、先端側が燃焼缶11の内部に突設された片持ち構造となっている。そして、燃焼缶11の内部に突設されたフレームロッド15の先端は中バーナ12bの上方に位置しており、その先端の部分に対して基端側に隣接する部分が、小バーナ12aの上方に位置する状態となっている。尚、本実施例では、点火プラグ14から火花を飛ばすことによって燃料ガスに着火するものとしているが、これに限らず、例えばヒーターを加熱することによって、燃料ガスに着火してもよい。また、本実施例では1つの点火プラグ14を用いて、小バーナ12aにしか火花を飛ばせないものとして説明するが、これに限らず、例えば3つの点火プラグ14を搭載して、小バーナ12a、中バーナ12b、および大バーナ12cの何れに対しても個別に火花を飛ばせるようにしても構わない。本実施例の点火プラグ14は、本発明における「点火装置」に対応する。
【0029】
燃焼缶11の内部には、燃焼装置10の上方の位置に熱交換器20が搭載されており、熱交換器20には、上水が供給される給水通路21と、熱交換器20で生成した湯を給湯するための給湯通路22とが接続されている。また、給水通路21の途中には、熱交換器20に流入する上水の流量を検出する流量センサ23が搭載されている。更に、給湯通路22の端部には、給湯カラン24などが接続されている。
【0030】
また、燃焼装置10には、コントローラ50も搭載されている。コントローラ50は、マイクロコンピュータによって主に構成されており、燃焼ファン13や、点火プラグ14や、フレームロッド15や、元弁17や、比例弁18や、電磁開閉弁19a~19cや、流量センサ23などに接続されている。更に、コントローラ50には、リモコン50aも接続されている。コントローラ50は、ユーザが給湯カラン24を開栓したことを流量センサ23の出力に基づいて検知すると、燃焼ファン13を回転させると共に、元弁17や、比例弁18や、電磁開閉弁19aを開弁させて、点火プラグ14から火花を飛ばす。すると、小バーナ12aが燃焼を開始する。また、リモコン50aで設定された湯温や、流量センサ23で検出された水量に応じた火力に対して、小バーナ12aの燃焼による火力が足らない場合は、その状態で電磁開閉弁19bを開弁させると、小バーナ12aの火炎が中バーナ12bに火移りすることによって中バーナ12bの燃焼が開始を開始することができる。あるいは、電磁開閉弁19cを開弁させると小バーナ12aの火炎が大バーナ12cに火移りすることによって大バーナ12cでの燃焼を開始することができる。更には、燃焼するバーナを切り替えたり比例弁18の開度を調節したりすることで、火力を調節することもできる。
【0031】
こうしてバーナ120での燃焼が開始されると、燃焼によって生じた高温の燃焼排気が、熱交換器20の内部を通過する際に上水と熱交換することによって湯が生成されて、給湯通路22を通って給湯カラン24から流出する。熱交換器20で上水と熱交換した燃焼排気は、燃焼缶11の上部に形成された排気口2から外部に排出される。また、コントローラ50にはフレームロッド15が接続されているため、小バーナ12aや中バーナ12bで燃焼が開始されると、コントローラ50は小バーナ12aや中バーナ12bに形成された火炎を検知することができる。そして、点火プラグ14から火花を飛ばしてもフレームロッド15で火炎を検知できない場合は、小バーナ12aに点火できていないと考えられるので、再び点火プラグ14から火花を飛ばして小バーナ12aに点火することができる。更には、どうしても点火することができない場合や、点火して燃焼を開始した後に、何らかの理由で火炎が検知できなくなった場合は、元弁17を閉じることによって燃料ガスの供給を停止することもできる。
【0032】
図2は、小バーナ12aや中バーナ12bに形成された火炎をフレームロッド15で検知する様子を示した説明図である。図2(a)に示すように、点火プラグ14から小バーナ12aに向かって火花を飛ばしながら電磁開閉弁19aを開弁すると、図2(b)に示したように小バーナ12aで燃焼が開始されて、小バーナ12aに形成された火炎がフレームロッド15に接触した状態となる。また、この時に電磁開閉弁19bや電磁開閉弁19cも開弁していた場合は、小バーナ12aの火炎が火移りすることによって、中バーナ12bや大バーナ12cでも燃焼が開始されて火炎が形成される。図2(c)には、中バーナ12bおよび大バーナ12cに火炎が形成された状態が示されている。図2(c)に示すように、本実施例の燃焼装置10では、中バーナ12bに形成された火炎もフレームロッド15に接触した状態となる。
【0033】
このように火炎がフレームロッド15に接触すると、フレームロッド15にはフレーム電流と呼ばれる電流が発生する。これは次のような理由による。先ず、燃料ガスの燃焼は、燃料ガスが空気中の酸素と結合して二酸化炭素や水が生成され、これに伴って燃焼熱が放出される一種の化学反応である。しかし、燃料ガスは空気中の酸素と直接結合するわけではなく、燃料ガスの分子が、分子よりも小さく且つ反応性の高い物質(ラジカル、または活性種と呼ばれる)に一旦分解され、それらが空気中の酸素と反応することによって二酸化炭素や水が生成されることが分かっている。また、燃焼熱は、ラジカルが酸素と反応して二酸化炭素や水に変化する過程で放出される。従って、バーナ120に形成された火炎の中では、バーナ120から流出する燃料ガスが次々にラジカルに分解された後、それらのラジカルが酸素と結合して二酸化炭素や水が形成されるという二段階の反応が同時に進行していることになる。
【0034】
また、一般にラジカルは電荷を帯びている。このため、フレームロッド15に電圧を印加した状態で、バーナ120に形成された火炎がフレームロッド15に接触すると、フレームロッド15からバーナ120に向かって流れる電流(フレーム電流)が発生する。従って、バーナ120に火炎が形成されるとその火炎が接触する位置にフレームロッド15を搭載しておき、フレームロッド15に電圧を印加しておけば、フレームロッド15に流れるフレーム電流を検出することで、バーナ120に形成された火炎を検知することが可能となる。
【0035】
ここで、フレームロッド15は電気を通さなければならないために金属製となっている。また、フレームロッド15はバーナ120の火炎に晒されるため、表面が高温となる。このため、フレームロッド15を使用していると表面に酸化被膜が形成され、使用を続けるに従って被膜が次第に厚くなっていく。金属の酸化皮膜は電気を通しにくいため、被膜が厚くなるとフレーム電流が流れにくくなる。そして、フレームロッド15の表面の酸化被膜が厚くなると、バーナ120に火炎が形成されているにも拘らず、フレーム電流を検出することができずに、バーナ120の燃焼が停止されてしまう虞が生じる。尚、フレームロッド15の表面の酸化被膜が厚くなって、フレーム電流を検出することが困難となる現象は、フレームロッド15の劣化と呼ばれる。本実施例の燃焼装置10では、コントローラ50がフレームロッド15の劣化を判定して、フレームロッド15が劣化したものと判定した場合は、リモコン50aの表示部にその旨を表示して、ユーザに報知することができる。
【0036】
図3は、フレームロッド15の劣化を判定可能なコントローラ50が備える構成を示した説明図である。図示されるようにコントローラ50は、燃焼制御部51や、電流値検出部52や、着火検知部53や、失火検知部54や、劣化判定部55や、判定結果蓄積部56や、劣化報知部57や、燃焼時間累積部58などを備えている。尚、これらの「部」は、フレームロッド15の劣化を判定するためにコントローラ50が備える機能を表す抽象的な概念であり、これらの「部」に相当する部品がコントローラ50の内部に搭載されていることを示すわけではない。これらの「部」は、ソフトウェアあるいはハードウェアを用いて実現してもよいし、ソフトウェアとハードウェアとを組み合わせて実現してもよい。
【0037】
燃焼制御部51は、燃焼ファン13や、点火プラグ14や、フレームロッド15や、元弁17や、比例弁18、電磁開閉弁19a~19cや、流量センサ23などに接続されており、点火プラグ14から火花を飛ばしたり、元弁17や、電磁開閉弁19a~19cを開閉したり、比例弁18の弁開度を制御することによって、バーナ120で燃料ガスを燃焼させるための各種の制御を実行する。
【0038】
電流値検出部52はフレームロッド15に接続されており、フレームロッド15に正の電圧を印加すると共に、フレームロッド15に流れるフレーム電流の電流値(以下、フレーム電流値)を検出する。
【0039】
着火検知部53は、燃焼制御部51が点火プラグ14から火花を飛ばすと、電流値検出部52で検出されたフレーム電流値と、所定の着火判定値とを比較する。そして、フレーム電流値が着火判定値よりも大きい場合は、火花によって燃料ガスが着火して小バーナ12aでの燃焼が開始されたものと判断して、その旨を燃焼制御部51に出力する。すると、燃焼制御部51は小バーナ12aでの燃焼が開始されたものと判断して、燃焼運転を継続する。一方、フレーム電流値が着火判定値よりも小さい場合は、着火検知部53は燃料ガスが着火していないものと判断して、その旨を燃焼制御部51に出力する。すると、燃焼制御部51は再び点火プラグ14から火花を飛ばすことによって燃料ガスへの着火を試みる。こうすることで、小バーナ12aで燃料ガスの燃焼を確実に開始することができる。
【0040】
失火検知部54は、小バーナ12aでの燃焼が開始されると、電流値検出部52で検出されたフレーム電流値と、所定の失火判定値とを比較する。そして、フレーム電流値が失火判定値よりも小さい場合は、小バーナ12aが燃焼中に何らかの理由で失火したものと判断して、その旨を燃焼制御部51に出力する。このため燃焼制御部51は、小バーナ12aが失火した場合には、元弁17や電磁開閉弁19aを閉弁させることによって、小バーナ12aへの燃料ガスの供給を停止することができる。尚、本実施例では、失火検知部54の動作を、小バーナ12aでの燃焼を例として挙げて説明しているが、中バーナ12bでの燃焼でも同様である。また、本実施例では、大バーナ12cが燃焼する場合には、必ず小バーナ12aまたは中バーナ12bが同時に燃焼する構成であるため、火力状態の切り替えによって、大バーナ12cが燃焼する場合に、フレーム電流値が失火判定値よりも小さい場合には、電磁開閉弁19cも閉弁させる。尚、本実施例では、失火判定値が前述した着火判定値よりも小さな値に設定されているが、失火判定値は着火判定値と同じ値に設定してもよい。
【0041】
劣化判定部55は、着火検知部53で着火が検知されると、所定の劣化判定期間に亘って電流値検出部52からフレーム電流値を取得することによって、フレームロッド15の劣化の有無を判定する。尚、劣化の有無ではなく、劣化の程度を判定してもよい。フレームロッド15の劣化の有無あるいは劣化の程度を判定する方法については後述する。
【0042】
判定結果蓄積部56は、劣化判定部55で得られた判定結果を蓄積する。判定結果の蓄積は、所定の上限個数に達するまでは判定結果を蓄積し、上限個数に達した後は古い判定結果を破棄することによって、上限個数の判定結果を蓄積するようにしてもよい。あるいは、上限個数は設けずに、過去の所定期間に得られた全ての判定結果を蓄積してもよい。
【0043】
劣化報知部57は、判定結果蓄積部56に蓄積されている判定結果に基づいて、フレームロッド15が劣化したと判定される頻度を取得して、その頻度が所定の閾値頻度よりも高い場合は、リモコン50aにフレームロッド15が劣化した旨を示す表示を行うことによって、ユーザに対してフレームロッド15が劣化した旨を報知する。尚、劣化報知部57は、劣化判定部55でフレームロッド15が劣化したと判定されたら、フレームロッド15が劣化した旨を直ちにリモコン50aに表示して劣化の発生を報知してもよいが、フレームロッド15が劣化したと判定される頻度に基づいて劣化の発生を報知すれば、誤った内容を報知してしまう虞を排除することができる。
【0044】
燃焼時間累積部58は、バーナ120の燃焼時間を累積する。本実施例では、フレームロッド15が火炎を検知している間(すなわち、小バーナ12aまたは中バーナ12bが燃焼している間)はバーナ120が燃焼しているものとして、フレームロッド15が火炎を検知している時間を燃焼時間として累積する。そして、上述した劣化報知部57は、フレームロッド15が劣化したと判定される頻度と閾値頻度とを比較する際に、累積した燃焼時間が大きくなるほど、低い閾値頻度と比較する。フレームロッド15が火炎に晒されている時間(すなわち燃焼時間)が小さい間は、フレームロッド15が劣化している可能性は小さい。従って、累積した燃焼時間が小さい間は高い閾値頻度と比較することとしておけば、フレームロッド15が劣化した旨が報知されにくくなるため、フレームロッド15が劣化した旨を誤ってユーザに報知することを抑制することができる。
【0045】
B.フレームロッド15の劣化を判定する基本原理 :
図4は、本実施例の燃焼装置10に搭載されたコントローラ50がフレームロッド15の劣化を判定する方法を示した説明図である。図4には、点火プラグ14から火花を飛ばした後に、フレームロッド15で検出されるフレーム電流値の時系列データが示されている。点火プラグ14は時間0で火花を飛ばしている。図示されるようにフレーム電流値は、点火プラグ14で火花を飛ばしてから1秒程度経過した時点で急激に増加した後、直ぐに減少に転じる。そして、減少開始後は時間の経過と共に減少速度が小さくなり、減少開始から2秒程度の時間が経過すると今度はゆっくりと電流値が増加するようになる。フレーム電流値が、図中に一点鎖線で示した着火判定値を超えると、小バーナ12aに火炎が形成されて着火したものと判断される。
【0046】
ここで、点火プラグ14で火花を飛ばしてからフレーム電流値が増加するまでの間に1秒よりも少し短い時間が経過しているのは、燃料ガスの濃度が燃焼範囲に達するまでに時間がかかるためと考えられる。すなわち、コントローラ50は点火プラグ14から火花を飛ばすのとほぼ同時に、元弁17および電磁開閉弁19a(図1参照)を開弁して小バーナ12aに燃料ガスを供給しているが、電磁開閉弁19aを開弁してから小バーナ12aから流出した燃料ガスの濃度が燃焼範囲に達するまでには、ある程度の時間が必要なためである。
【0047】
また、図4に示したように、フレーム電流値は急激に増加した後、一旦減少してから再びゆっくりと増加するが、本願の発明者らは、フレーム電流値が減少する程度に、フレームロッド15の劣化の影響が現れることを見い出した。例えば、フレーム電流値が減少した最小値(以下、最小電流値FCmin)は、フレームロッド15の使用時間が長くなるに従って小さくなる。図4には、長期に亘って使用された後のフレームロッド15で得られるフレーム電流値が破線で示されている。図4では図示が省略されているが、破線のフレーム電流の最小電流値は、図中に実線で示した新品時のフレーム電流の最小電流値FCminよりも小さな値となる。
【0048】
そこで、フレーム電流値が着火判定値を超えた時点(バーナ120の着火が検知された時点)から所定時間(ここでは5秒間)の劣化判定期間を設定し、劣化判定期間でのフレーム電流の最小電流値FCminを検出する。そして、最小電流値FCminが所定の劣化判定値を下回った場合は、フレームロッド15が劣化したものと判断する。尚、劣化判定値は着火判定値よりも小さな値に設定されている。図4では、劣化判定値は二点鎖線で表されており、着火判定値は一点鎖線で表されている。また、フレーム電流値が図4中に破線で示した失火判定値を下回った場合は、バーナ120が失火したものと判定される。
【0049】
尚、フレームロッド15の劣化が進むほどフレーム電流の最小電流値FCminは小さくなるから、フレーム電流の最小電流値FCminに基づいてフレームロッド15の劣化の程度を検出するようにしてもよい。あるいは、複数の劣化判定値を設定しておき、フレーム電流の最小電流値FCminが小さな値の劣化判定値を下回るほど、フレームロッド15の劣化が進行しているものと判定してもよい。
【0050】
図5に示した例では、劣化判定値1と、劣化判定値1よりも小さな値の劣化判定値2の2つの劣化判定値が設定されており、フレーム電流の最小電流値FCminが劣化判定値1よりは小さいが劣化判定値2よりは大きい場合は、フレームロッド15の劣化が始まっていると判断できるため、交換用のフレームロッド15を準備した方が良い旨をユーザに報知する。また、フレーム電流の最小電流値FCminが劣化判定値2よりも小さい場合は、フレームロッド15の劣化が進んでいると判断できるため、できるだけ早くフレームロッド15を交換した方が良い旨をユーザに報知することができる。
【0051】
図4および図5を用いて説明したように、劣化判定期間でのフレーム電流値に基づいてフレームロッド15の劣化の有無あるいは劣化の程度を判定する方法は、従来から提案されている判定方法に比べて、フレームロッド15の劣化を精度良く判定することができる。従来から提案されていた判定方法は、バーナへの燃料の供給を開始してからフレームロッドが火炎を検知するまでの時間(着火遅れ時間)を利用するが、着火遅れ時間はばらつきが大きい。この理由は、前述したように着火遅れ時間は、元弁17および電磁開閉弁19aを開弁してから小バーナ12aでの燃料ガスの濃度が燃焼範囲に達するまでの時間に起因していると考えられる。そして、燃料ガスの濃度が燃焼範囲に達するまでの時間は燃料ガスのガス圧の変化や、燃焼ファン13の劣化や、燃焼装置10内の抵抗(熱交換器20の抵抗や排気口2に加わる外風など)といった様々な要因で変動し得る。その結果、従来から提案されている判定方法では、フレームロッド15の劣化を精度良く判定することは困難となっている。
【0052】
これに対して、図4を用いて前述した本実施例の判定方法では、フレーム電流値が増加して着火判定値を超えて着火を検知した後に、電流値が減少していく現象に着目してフレームロッド15の劣化を判定するので、外乱の影響で着火を検知するまでの時間が変動しても、何ら影響を受けることなくフレームロッド15の劣化を判定することができる。また、フレーム電流が最小電流値FCminとなる付近では電流値はゆっくりと変化するので、たとえ計測したフレーム電流値にノイズが載っていた場合でも、ローパスフィルタを用いてノイズを除去することで正確な最小電流値FCminを検出することができる。その結果、本実施例の判定方法では、従来から提案されている判定方法に比べて、フレームロッド15の劣化を精度良く判定することが可能となる。
【0053】
C.劣化判定処理 :
図6は、本実施例の燃焼装置10に搭載されたコントローラ50が小バーナ12aの点火後にフレームロッド15の劣化を判定するために実行する劣化判定処理のフローチャートである。劣化判定処理では、先ず始めに、点火プラグ14から火花を飛ばすことによって小バーナ12aに点火し(STEP10)、続いて、小バーナ12aが着火したか否かを判断する(STEP11)。図2を用いて前述したように、点火プラグ14から火花を飛ばしながら電磁開閉弁19aを開弁させると、通常の場合は小バーナ12aで燃料ガスの燃焼が開始され、フレームロッド15によって火炎が検知される。従って、フレームロッド15で火炎が検知されていれば着火したと判断することができ、火炎が検知されていなければ着火していないと判断することができる。尚、本実施例では、フレームロッド15で検出されたフレーム電流値が所定の着火判定値を超えると、火炎が検知されたものと判断している(図4参照)。
【0054】
その結果、小バーナ12aが着火していない場合は(STEP11:no)、再び点火プラグ14から火花を飛ばした後(STEP10)、小バーナ12aが着火したか否かを判断する(STEP11)。STEP11で着火したと判断した場合は(STEP11:yes)、着火を検知してから所定時間(本実施例では5秒間)を劣化判定期間として設定した後(STEP12)、新たに劣化判定を開始した旨を記憶する(STEP13)。尚、本実施例では、劣化判定を開始した日付および時刻を記憶するものとするが、時刻を記憶する代わりに、日付毎に開始した順番を記憶してもよい。あるいは、日付も記憶せずに開始した順番のみを記憶しておき、記憶した個数が所定の上限個数(たとえば20個)に達したら、最も古い記憶を破棄して新たな劣化判定の開始を記憶してもよい。
【0055】
続いて、劣化判定期間が終了したか否か(本実施例では、着火を検知してから5秒間が経過したか否か)を判断する(STEP14)。STEP12で劣化判定期間を設定した直後は、劣化判定期間が終了していない(STEP14:no)と判断されるから、フレームロッド15のフレーム電流値が所定の劣化判定値よりも小さいか否かを判断する(STEP15)。ここで、劣化判定値は着火判定値よりも小さく、失火判定値よりも大きな値に設定されている。また、図4を用いて前述したように、小バーナ12aの着火時はフレーム電流値がピーク状に増加するから、通常の場合は、劣化判定期間の初期ではフレーム電流値が劣化判定値よりも大きいと判断されて(STEP15:no)、再び、劣化判定期間が終了したか否かを判断する(STEP14)。そして、劣化判定期間が終了していなければ(STEP14:no)、フレーム電流値が劣化判定値よりも小さいか否かを判断して(STEP15)、フレーム電流値が劣化判定値よりも大きい場合は(STEP15:no)、再び、劣化判定期間が終了したか否かを判断する(STEP14)。
【0056】
このような処理を繰り返している間に、劣化判定期間が終了したと判断した場合は(STEP14:yes)、フレームロッド15は劣化していないと判断できるので、後述する劣化判定処理(STEP20)を実行した後、図6の劣化判定処理を終了する。これに対して、劣化判定期間内で(STEP14:no)且つフレーム電流値が劣化判定値を下回った場合は(STEP15:yes)、フレームロッド15が劣化しているものと判断できる。そこでこの場合は、フレームロッド15の劣化が検知された旨を、STEP13で記憶した新たな劣化判定の開始に対応付けた状態で記憶する(STEP16)。そして、後述する劣化発生報知処理を行った後(STEP20)、図6の劣化判定処理を終了する。尚、図示しないが、着火を検知した後は、フレーム電流値が失火判定値よりも小さいか否かの判断を常時行っている。そして、フレーム電流値が失火判定値よりも小さい場合は、何らかの理由でバーナ120が失火したものと考えられるため、電磁開閉弁19a~19cおよび元弁17を閉弁させる。このように本実施例の劣化判定処理では、バーナ120の着火が検知される度に(STEP11:yes)、劣化判定を開始した旨を記憶し(STEP13)、更に、フレームロッド15が劣化していた場合は(STEP16:yes)、開始した劣化判定によって劣化が検知された旨を記憶する(STEP17)。そして、以下に説明する劣化発生報知処理(STEP20)では、これらの記憶内容に基づいて、給湯器1のユーザに対してフレームロッド15の劣化発生を報知する。尚、本実施例のSTEP15では、フレーム電流値が劣化判定値を下回るか否かを判断しているが、フレーム電流値が所定期間(たとえば1秒間)継続して劣化判定値を下回るか否かを判断してもよい。こうすれば、たとえばノイズ等の影響によりフレーム電流値が極短時間劣化判定値を下回った場合でも、フレームロッド15が劣化していると誤って判断してしまうことを防止することができる。
【0057】
D.劣化発生報知処理 :
図7は、給湯器1のユーザに対してフレームロッド15の劣化発生を報知する劣化発生報知処理のフローチャートである。図示したように、劣化発生報知処理では先ず初めに、直近に行った所定回数分の劣化判定についての判定結果を取得する(STEP21)。本実施例では、直近の20回分の判定結果を取得する。そして、取得した劣化の判定結果の中で劣化が検知された頻度(以下、劣化の検知頻度)が、所定の閾値頻度以上であるか否かを判断する(STEP22)。その結果、劣化の検知頻度が閾値頻度に達していない場合は(STEP22:no)、劣化の発生を報知することなく劣化発生報知処理を終了するが、劣化の検知頻度が閾値頻度に達していた場合は(STEP22:yes)、ユーザに対して劣化の発生を報知した後(STEP23)、劣化発生報知処理を終了する。
【0058】
図8は、劣化発生報知処理で劣化発生を報知するか否かを判断する具体例を示した説明図である。図8(すなわち図8(a)および図8(b))に示した丸印は、劣化判定を行ったことを表している。また、図8の中の黒い丸印は、劣化判定によって劣化が検知されたことを表している。すなわち、図6に示した劣化判定処理の中で新たな劣化判定の開始を記憶されると(STEP13)、図8に示す白い丸印が1つ記憶され、更に、劣化が検知されると(STEP15:yes)、その白い丸印が黒い丸印に変更される(STEP16)。
【0059】
図8(a)に示した例では、日付が今日の丸印は1つであり、その丸印は白い丸印となっている。これは、今日はまだ1回しか劣化の判定を行っておらず、劣化の判定では劣化が検知されなかったことを表している。また、日付が1日前の丸印は4つであり、その内の2つは白い丸印で、残りの2つは黒い丸印となっている。これは、昨日は劣化の判定を4回行って、2回は劣化が検知されなかったが、2回は劣化が検知されたことを表している。同様に、2日前および3日前には、それぞれ5回ずつの劣化判定を行って、その内の1回では劣化が検知されたが、残りの4回では劣化は検知されていないことを表している。更に、4日前は3回、5日前は4回の劣化判定を行って、何れも劣化は検知されなかったことを表している。
【0060】
劣化発生報知処理のSTEP21では、このような劣化の判定結果を、直近から所定個数(本実施例では20個)分だけ読み出す。図8(a)に一点鎖線の矩形で囲った部分は、このようにして読み出された判定結果を表している。そして、読み出した20個の判定結果の中で、劣化が検知された判定結果(黒い丸印)が5個以上であった場合は、STEP22では「yes」と判断して、劣化の発生を報知する。図8(a)に示した例では、一点鎖線の矩形で囲った20個の判定結果の中で黒い丸印は4個であるから、STEP22では「no」と判断されるため、劣化の発生を報知することなく、そのまま劣化発生報知処理を終了する。また、図8(b)に例示したように、今日2回目の劣化判定を行って、劣化が検知された場合は、図中に一点鎖線の矩形で囲ったように、直近の判定結果から所定個数(20個)分の判定結果を読み出すと、劣化が検知されたことを示す黒い丸印の個数が5個となる。従って、図7のSTEP22では「yes」と判断されて、劣化発生が報知されることになる(STEP23)。本実施例の燃焼装置10では、フレームロッド15が劣化した旨を、リモコン50aで表示することによって報知するが、スピーカから所定の音声や効果音を発生させるなど、他の方法を用いて報知してもよい。
【0061】
尚、図7に示した劣化発生報知処理では、直近の判定結果から所定個数分の判定結果を読み出しているが、所定個数分ではなく所定期間内の判定結果を読み出すようにしてもよい。例えば、図9に例示したように、今日から3日前までの判定結果を読み出すことによって、劣化を報知するか否かを判断してもよい。
【0062】
以上に説明したように、本実施例の燃焼装置10は、バーナ120の着火を検知すると劣化判定期間を設定し、その劣化判定期間で検出したフレーム電流値に基づいて、フレームロッド15の劣化を判定する。図4を用いて前述したように、劣化判定期間のフレーム電流値は、着火遅れ時間に比べて計測値のばらつきが小さいので、本実施例の方法では、着火遅れを利用する従来の方法に比べて、フレームロッド15の劣化を精度良く判定することができる。
【0063】
加えて、フレームロッド15の劣化が検知されても直ちに報知するのではなく、所定個数の判定結果、あるいは所定期間で得られた複数の判定結果に基づいて、劣化を報知するか否かを判断している。このため、何らかの理由で誤って劣化が検知されたとしても、そのことで直ちに劣化の発生が報知されることがない。その結果、より一層高い信頼性で、劣化の発生を報知することが可能となる。
【0064】
E.第1変形例 :
上述した劣化発生報知処理では、劣化を報知するか否かの判断に用いる閾値頻度は固定されているものとして説明した。しかし、異なる値を有する複数の閾値頻度を切り換えてもよい。
【0065】
図10は、複数の閾値頻度を切り換えて使用する第1変形例の劣化発生報知処理のフローチャートである。この処理は、図6の劣化判定処理の中で前述した劣化発生報知処理(STEP20)の代わりに実行される。
【0066】
図10に示すように、第1変形例の劣化発生報知処理でも、図7を用いて前述した本実施例の劣化発生報知処理と同様に、先ず初めに、直近に行った所定回数(ここでは20回)分の劣化判定についての判定結果を取得する(STEP31)。
【0067】
続いて、第1変形例の劣化発生報知処理では、燃焼装置10の累積燃焼時間が所定の閾値燃焼時間(ここでは2000時間)に達したか否かを判断する(STEP32)。第1変形例の燃焼装置10では、フレームロッド15で火炎が検知されている時間(すなわち、フレーム電流値が失火判定値よりも大きな値となっている時間)を累積して、累積燃焼時間として記憶している。
【0068】
その結果、累積燃焼時間が閾値燃焼時間に達していた場合は(STEP32:yes)、閾値頻度を第1の閾値頻度に設定する(STEP33)。第1の閾値頻度は、前述した本実施例の劣化発生報知処理の閾値頻度と同様な値(すなわち、20回中の5回の頻度)に設定されている。これに対して、累積燃焼時間が閾値燃焼時間に達していない場合は(STEP32:no)、閾値頻度を、第1の閾値頻度よりも高い頻度の第2の閾値頻度に設定する(STEP34)。ここでは、第2の閾値頻度は、20回中の10回の頻度に設定されている。
【0069】
その後、STEP31で取得した劣化の判定結果の中で劣化が検知された頻度(劣化の検知頻度)が、閾値頻度以上であるか否かを判断して(STEP35)、劣化の検知頻度が閾値頻度に達していた場合は(STEP35:yes)、ユーザに対して劣化の発生を報知した後(STEP36)、第1変形例の劣化発生報知処理を終了する。これに対して、劣化の検知頻度が閾値頻度に達していない場合は(STEP35:no)、劣化の発生を報知することなく劣化発生報知処理を終了する。
【0070】
以上に説明した第1変形例の劣化発生報知処理では、累積燃焼時間が閾値燃焼時間に達するまでは、閾値頻度が高めの頻度に設定されるので、劣化の発生が報知され難くなる。累積燃焼時間が小さい間はフレームロッド15が劣化しているとは考えにくいので、閾値頻度を高めの頻度に設定しておくことで、劣化の発生を誤報知してしまう事態を抑制することができる。その一方で、フレームロッド15が本当に劣化している場合は、高い頻度で劣化が検知されるので、劣化の発生を報知することが可能となる。
【0071】
尚、上述した第1変形例の劣化発生報知処理では、1つの閾値燃焼時間を記憶しておき、閾値燃焼時間に対する累積燃焼時間の大小関係を判断することによって、第1の閾値頻度または第2の閾値頻度に切り替えるものとして説明した。しかし、複数の閾値燃焼時間と複数の閾値頻度とを記憶しておき、閾値燃焼時間に対する累積燃焼時間の大小関係を判断することにより、累積燃焼時間が小さくなるほど、低い閾値頻度に切り替えるようにしてもよい。
【0072】
F.第2変形例 :
上述した本実施例および第1変形例では、点火プラグ14で小バーナ12aを着火させた後、劣化判定期間中は中バーナ12bが燃焼を開始しないものとして説明した。しかし実際には、小バーナ12aが着火したことによる劣化判定期間中に、例えば給湯器1のユーザが給湯カラン24(図1参照)を更に開くなどしたために、燃焼するバーナが小バーナ12aから中バーナ12bに切り替わったり、小バーナ12aと中バーナ12bとが同時に燃焼したりすること(これらは、前述した火力状態の切り替えに相当する)が起こり得る。尚、小バーナ12aが本発明の「点火バーナ」に対応し、中バーナ12bが本発明の「火移りバーナ」に対応する。
【0073】
図11は、小バーナ12aでの燃焼を開始した後に、燃焼させるバーナを中バーナ12bに切り替える様子(小火力状態→中小火力状態)を示した説明図である。小バーナ12aでの燃焼を開始するためには、先ず始めに、図11(a)に示すように点火プラグ14から火花を飛ばすことによって、小バーナ12aに着火させる。すると、図11(b)に示したように、小バーナ12aに火炎が形成されて燃焼が開始される。この状態から、電磁開閉弁19bを開弁すると、中バーナ12bから燃料ガスが流出するため、図11(c)に示すように、小バーナ12aの火炎が中バーナ12bに火移りする。その結果、図11(d)に示すように、中バーナ12bでの燃焼が開始される。また、中バーナ12bでの燃焼が開始された後は、電磁開閉弁19aを閉弁させて小バーナ12aの燃焼を停止させることによって、燃焼するバーナ120の切り替えが完了する。
【0074】
ここで、フレームロッド15に流れるフレーム電流は、フレームロッド15に接触している火炎の位置や面積によって変化する。そのため、火力状態の切り替え(例えば、小バーナ12aから中バーナ12bへの切り替えなど)が発生すると、フレームロッド15に接触している火炎の位置や面積が、劣化判定期間中に変化してしまうので、フレームロッド15の劣化を正しく検知することができなくなる虞がある。しかし、このような場合でも、次のような方法を用いれば、フレームロッド15の劣化を正しく検知することができる。
【0075】
図12および図13は、第2変形例の劣化判定処理のフローチャートである。この処理も、図6を用いて前述した本実施例の劣化判定処理と同様に、燃焼装置10に搭載されたコントローラ50によって実行される。第2変形例の劣化判定処理でも、先ず始めに、点火プラグ14から火花を飛ばすことによって小バーナ12aに点火し(STEP40)、小バーナ12aが着火したか否かを判断する(STEP41)。その結果、小バーナ12aが着火していない場合は(STEP41:no)、再び小バーナ12aに点火して(STEP40)、着火したか否かを判断するが(STEP41)、小バーナ12aが着火していた場合は(STEP41:yes)、所定時間(ここでは5秒間)の劣化判定期間を設定した後(STEP42)、新たに劣化判定を開始した旨を記憶する(STEP43)。
【0076】
続いて、劣化判定期間が終了したか否かを判断し(STEP44)、劣化判定期間が終了していない場合は(STEP44:no)、火力状態の切り替えを行うか否かを判断する(STEP45)。図12および図13の劣化判定処理を実行するコントローラ50は、各バーナ120での燃焼開始や燃焼停止も制御しているため、火力状態の切り替えを行うか否かを判断することができる。その結果、火力状態の切り替えを行う場合は(STEP45:yes)、劣化判定期間を再設定する(STEP46)。例えば、劣化判定期間を5秒間とすると、小バーナ12aを着火させてから3秒が経過した時点で、小バーナ12aから中バーナ12bに切り替える場合(小火力状態から中小火力状態に切り替える場合)には、その時点で5秒間の劣化判定期間が再設定される結果、全体では劣化判定期間が8秒間に延長されることになる。
【0077】
こうして劣化判定期間を再設定した後は(STEP46)、STEP44に戻って、劣化判定期間が経過したか否かを判断する。これに対して、火力状態の切り替えを行わない場合は(STEP45:no)、劣化判定期間は再設定することなく、フレームロッド15のフレーム電流値が劣化判定値よりも小さいか否かを判断する(STEP47。そして、フレーム電流値が劣化判定値よりも大きい場合は(STEP47:no)、STEP44に戻って、劣化判定期間が経過したか否かを判断する。
【0078】
このように第2変形例の劣化判定処理では、小バーナ12aの着火に伴う劣化判定期間中に、火力状態の切り替えが行われた場合には劣化判定期間が再設定されるが、その他の点については、図6を用いて前述した本実施例の劣化判定処理と同様である。すなわち、小バーナ12aの着火に伴って劣化判定期間を設定し(STEP42)、新たな劣化判定の開始を記憶した後は(STEP43)、劣化判定期間が経過するか(STEP44:yes)、フレーム電流値が劣化判定値よりも小さくなるまで(STEP47:yes)、STEP44やSTEP47判断を繰り返す。尚、火力状態の切り替えが行われるか否かを判断している理由は、火力状態が切り替えられると、劣化判定期間中にフレームロッド15が火炎を検知するバーナ120が変更されたと推定されるためである。しかし本実施例では、たとえば小火力状態から中大火力状態への火力状態の切り替えを行う場合には、フレームロッド15に接触する火炎を形成するバーナ120は小バーナ12aから変化しない。従って、実際にフレームロッド15が火炎を検知するバーナが変更される火力状態の切り替えを行う場合(たとえば、小火力状態から中火力状態への切り替えや、中小火力状態から小火力状態への切り替え)にのみ劣化判定期間の再設定を行い、フレームロッド15が火炎を検知するバーナが変更されない火力状態の切り替えを行う場合(たとえば、小火力状態から中大火力状態への切り替えや、中火力状態から大火力状態への切り替え)には、劣化判定期間の再設定を行わないようにしてもよい。
【0079】
このような処理を繰り返している間に、劣化判定期間が終了したと判断した場合は(STEP44:yes)、前述した劣化判定処理(STEP20)を実行した後、第2変形例の劣化判定処理を終了する。これに対して、フレーム電流値が劣化判定値を下回った場合は(STEP47:yes)、フレームロッド15が劣化しているものと判断できるので、フレームロッド15の劣化が検知された旨を記憶した後(図13のSTEP48)、前述した劣化発生報知処理を行う(STEP20)。尚、劣化発生報知処理は、図7を用いて前述した本実施例の劣化発生報知処理(STEP20)の代わりに、図10を用いて前述した第1変形例の劣化発生報知処理(STEP30)を実行してもよい。そして、本実施例の劣化発生報知処理(STEP20)、または第1変形例の劣化発生報知処理(STEP30)を実行したら、第2変形例の劣化判定処理を終了する。尚、上述した第2変形例では、点火時のバーナが小バーナ12aであり、その小バーナ12aから中バーナ12bに切り替える場合に、劣化判定期間を再設定するものとして説明した。しかし、これに限らず、点火時のバーナが小バーナ12aおよび中バーナ12bであり、小バーナ12aおよび中バーナ12bが燃焼する状態から中バーナ12bが燃焼する状態に切り替える場合にも、劣化判定期間中にフレーム電流値が変化するのでフレームロッド15の劣化を正しく判定できない虞が生じる。従って、このような切り替えを行う場合にも、劣化判定期間を再設定するようにしてもよい。
【0080】
図14は、小バーナ12aの着火に伴う劣化判定期間中に、火力状態を小火力状態から中小火力状態に切り替えた場合、すなわち、燃焼するバーナ12を小バーナ12aから中バーナ12bに切り替えた場合に得られるフレーム電流値を示した説明図である。図中に実線で示すように、フレーム電流値には2つのピークが生じているが、1つめのピークは小バーナ12aの着火に伴うピークであり、2つめのピークが中バーナ12bの着火に伴うピークとなる。図14に示した例では、小バーナ12aの着火に伴う劣化判定期間中に2つめのピークが生じているため、フレームロッド15の劣化を正しく判定することが困難となるが、再設定した劣化判定期間についてはこうしたことがないので、フレームロッド15の劣化を正しく判定することが可能となる。
【0081】
尚、上述したように劣化判定期間を再設定すると、実質的には劣化判定期間が延長されたことになる。図14に示した例では、小バーナ12aの着火が検知されてから1.5秒が経過した時点で中バーナ12bへの切り替えが発生して劣化判定期間が再設定されているので、5秒間の劣化判定期間が実質的には6.5秒間に延長されている。また、延長された劣化判定期間が終了するまでに再び火力状態の切り替えが行われた場合には、更に劣化判定期間が延長されることになる。しかし、劣化判定期間があまりに長くなるのは好ましいことではない。何故なら、劣化判定期間が長くなると、たとえばフレームロッド15に接触していた火炎が風の影響で短時間だけフレームロッド15から離れるなどしてフレーム電流値が減少し、フレームロッド15が劣化したものと誤って判定する可能性が生じるためである。そこで、劣化判定期間に、例えば10秒の上限時間を設けておき、劣化判定期間が再設定された場合でも、実質的な劣化判定期間が上限時間を超えないようにしてもよい。または、劣化判定期間の再設定を行う回数に上限回数を設けておき、上限回数に達した場合には、火力状態の切り替えが行われた場合でも劣化判定期間の再設定を行わないようにしてもよい。
【0082】
あるいは、小バーナ12aの火炎がフレームロッド15に接触する位置と、中バーナ12bの火炎がフレームロッド15に接触する位置とを比較した時に、中バーナ12bの火炎の方が小バーナ12aの火炎よりも、フレームロッド15の先端側に接触する場合において、小バーナ12aにて点火後、燃焼するバーナが中バーナ12bに切り替わる場合、すなわち火力状態が小火力状態から中小火力状態に切り替わる場合にだけ、劣化判定期間を再設定するようにしてもよい。例えば、図11に示した例では、図11(b)と図11(d)とを比較すれば明らかなように、中バーナ12bの火炎は小バーナ12aの火炎よりもフレームロッド15の先端側に接触するので、このような場合において、小バーナ12aに点火後、火力状態が小火力状態から中小火力状態に切り替わる場合にだけ劣化判定期間を再設定するようにしてもよい。こうする理由は次のようなものである。
【0083】
図1を用いて前述したようにフレームロッド15は金属製の棒形状の部材であり、基端側が燃焼缶11の側面に取り付けられ、先端側が燃焼缶11の内部に突設された片持ち構造となっている。そして、燃焼缶11の内部に突設されたフレームロッド15の先端は中バーナ12bの上方に位置しており、その先端の部分に対して基端側に隣接する部分が、小バーナ12aの上方に位置する状態となっている。このため、小バーナ12aや中バーナ12bを燃焼させると、フレームロッド15の基端側よりも先端側の方が高温となって表面に酸化膜が形成され易いため、フレームロッド15は基端側よりも先端側の方が早く劣化する。
【0084】
そのため、火力状態が小火力状態から中小火力状態に切り替わる場合、劣化判定期間を再設定しなければ、劣化し易いフレームロッド15の先端側での劣化を検知できなくなる。これに対して、たとえば、火力状態が小火力状態から中火力状態に切り替わる場合、すなわち、燃焼するバーナが小バーナ12aから小バーナ12aおよび中バーナ12bに変更される場合には、先端側よりも劣化のしにくい基端側に近い小バーナ12aの火炎が継続してフレームロッド15に接触しているため、劣化判定期間を再設定する必要性が小さい。また、上記の実施例とは異なり、フレームロッドの先端側に位置するバーナで点火し、劣化判定期間中に、燃焼するバーナが、フレームロッドの先端側に位置するバーナからフレームロッドの基端側に近いバーナに変更される場合においても、フレーム電流値は検出し易くなるため、劣化判定期間を再設定する必要性は小さい。
【0085】
以上のような理由から、小バーナ12aの火炎がフレームロッド15の基端側に接触し、中バーナ12bの火炎がフレームロッド15の先端側に接触する場合において、小バーナ12aにて点火後、燃焼するバーナが中バーナ12bに切り替わる場合、すなわち、火力状態が小火力状態から中小火力状態に切り替わる場合には、劣化判定期間を再設定することで、フレームロッド15の先端側での劣化を検知可能となるメリットと、実質的に劣化判定期間が延長されることによるデメリットとを、良好にバランスさせることが可能となる。
【0086】
以上、各種の実施例および各種の変形例について説明したが、本発明は上記の実施例および各種の変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…給湯器、 2…排気口、 10…燃焼装置、 11…燃焼缶、
12…単バーナ、 12a…小バーナ、 12b…中バーナ、 12c…大バーナ、
13…燃焼ファン、 14…点火プラグ、 15…フレームロッド、
16…ガス通路、 17…元弁、 18…比例弁、
19a~19c…電磁開閉弁、 20…熱交換器、 21…給水通路、
22…給湯通路、 23…流量センサ、 24…給湯カラン、
50…コントローラ、 50a…リモコン、 51…燃焼制御部、
52…電流値検出部、 53…着火検知部、 54…失火検知部、
55…劣化判定部、 56…判定結果蓄積部、 57…劣化報知部、
58…燃焼時間累積部、 101…ガスノズル、
102a~102c…ガス分配室、 120…バーナ。
図1
図2
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